説明

冷却媒体提供装置、プロジェクターおよび電子機器

【課題】 より簡易な構成で所望の冷却対象への冷却媒体の提供量を変化させることが可能な冷却媒体提供装置等を提供すること。
【解決手段】 冷却媒体提供装置180が、DC−DC変換回路114に関する電流に応じて第1の電磁力が変化する電磁石121と、第1の電磁力に応じて、提供部材124が変形することにより、DC−DC変換回路114に対する冷却媒体の提供量と、AC−DC変換回路112に対する冷却媒体の提供量との割合を変化させる冷却ファン150を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却媒体提供装置、プロジェクターおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の電子機器の内部ではファン等を用いた冷却が行われている。冷却が必要なすべての箇所に対応してファン等を設けると、電子機器の大きさが大きくなってしまう上、製造費用も高くなってしまう。例えば、特開平5−322299号公報では、駆動用モーターの回転角度に応じて風向変更板を駆動させることにより、風向を変更する方式が提案されている。しかし、この方式では、駆動用モーターを用いる必要があるため、大きさや製造費用の問題を適切に解決することができない。また、特開2004−233796号公報では、使用モードや筐体内部の温度に応じて、電磁力を用いて風導板によって開口状態を調整するプロジェクターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−322299号公報
【特許文献2】特開2004−233796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特開2004−233796号公報の手法は、筐体内部を全体的に冷却する手法であるため、冷却対象を変更したり、複数の冷却対象の発熱状態に応じて冷却したりすることはできない。
【0005】
本発明にかかるいくつかの態様は、上記課題を解決することにより、より簡易な構成で所望の冷却対象への冷却媒体の提供量を変化させることが可能な冷却媒体提供装置、プロジェクターおよび電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つである冷却媒体提供装置は、第1の冷却対象に関する電流に応じて第1の電磁力が変化する第1の電磁部と、前記第1の電磁力に応じて、冷却媒体の提供部材が変形し、あるいは、前記提供部材が移動することにより、前記第1の冷却対象に対する前記冷却媒体の提供量と、第2の冷却対象に対する前記冷却媒体の提供量との割合を変化させる冷却媒体提供部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の態様の1つであるプロジェクターおよび電子機器は、前記冷却媒体提供装置と、前記第1の冷却対象と、前記第2の冷却対象と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、冷却媒体提供装置等は、電磁力に応じて提供部材が変形等することによって、第1の冷却対象に対する冷却媒体の提供量と、第2の冷却対象に対する冷却媒体の提供量との割合を変化させることができるため、より簡易な構成で所望の冷却対象への冷却媒体の提供量を変化させることができる。
【0009】
また、前記第1の冷却対象は、前記第2の冷却対象よりも稼働率が低い装置であって、前記第1の電磁力が所定値未満の状態における前記第2の冷却対象への冷却媒体の提供量は、前記第1の電磁力が所定値以上の状態と比べて多く、前記第1の電磁力に応じて、前記提供部材が変形し、あるいは、前記提供部材が移動することにより、前記第2の冷却対象への冷却媒体の提供量が前記第1の電磁力が所定値未満の状態と比べて減少してもよい。これによれば、冷却媒体提供装置等は、通常は稼働率の高い第2の冷却対象に冷却媒体をより多く提供し、第1の冷却対象が稼働すると第1の冷却対象にも冷却媒体を提供することにより、第1の冷却対象の稼働状況に応じて冷却媒体を提供することができる。
【0010】
また、前記冷却媒体提供装置は、前記第2の冷却対象に関する電流に応じて第2の電磁力が変化する第2の電磁部を含み、前記提供部材は、前記第1の電磁力および前記第2の電磁力に応じて、変形し、あるいは、移動してもよい。これによれば、冷却媒体提供装置等は、複数の装置の稼働状況に応じて、適切な装置に冷却媒体を提供することができる。
【0011】
また、前記冷却媒体提供部は、前記冷却媒体として空気を提供するためのファンを含み、前記提供部材は、板状の部材であって、かつ、前記ファンからの前記空気の提供路に設けられ、前記第1の電磁力による吸引または反発によって変形することにより、前記空気の進行方向を変化させてもよい。これによれば、冷却媒体提供装置等は、空冷を行う際に簡易な構成で適切な冷却を行うことができる。
【0012】
また、前記提供部材は、板状の部材であって、かつ、前記冷却媒体の提供路に設けられ、前記第1の電磁力による吸引または反発によってスライド移動することにより、前記冷却媒体の提供路の開閉を行ってもよい。これによれば、冷却媒体提供装置等は、冷却媒体の提供路の開閉を簡易に行うことができるため、水冷等を行う場合にも適切に対応することができる。
【0013】
また、前記提供部材は、内部に前記冷却媒体を収納して移動させることが可能な棒状の部材であって、かつ、前記冷却媒体の提供路に設けられ、前記第1の電磁力による吸引または反発によって長手軸の向きが変化することにより、前記冷却媒体の進行方向を変化させてもよい。これによれば、冷却媒体提供装置等は、冷却対象範囲が狭い場合であっても所望の冷却対象を適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施例におけるプロジェクターのハードウェアブロックを示す図である。
【図2】第1の実施例における電源ユニットと冷却媒体提供装置の関係を示す図である。
【図3】第2の実施例における電磁力が発生していない場合の提供部材の状態を示す図である。
【図4】第2の実施例における電磁力が発生している場合の提供部材の状態を示す図である。
【図5】第3の実施例における電源ユニットと冷却媒体提供装置の関係を示す図である。
【図6】第4の実施例における電源ユニットと冷却媒体提供装置の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をプロジェクターに適用した実施例について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施例は、特許請求の範囲に記載された発明の内容を何ら限定するものではない。また、以下の実施例に示す構成のすべてが、特許請求の範囲に記載された発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0016】
(第1の実施例)
図1は、第1の実施例におけるプロジェクター100のハードウェアブロックを示す図である。プロジェクター100は、電源ユニット110と、ランプ192と、ランプ192を駆動するバラストユニット140と、ランプ192からの光が入射する照明光学系194と、照明光学系194からの光が入射する液晶ライトバルブ196と、液晶ライトバルブ196からの光をスクリーン10に投射するレンズ198を含んで構成されている。また、プロジェクター100は、液晶ライトバルブ196に形成される画像を生成する画像処理回路160と、音声処理回路170と、スピーカー174と、音声処理回路170からの音声を増幅してスピーカー174に出力するアンプ172と、電源ユニット110等を冷却する冷却ファン150と、バラストユニット140、冷却ファン150、画像処理回路160等を制御するCPU130と、電磁石121を含んで構成されている。なお、本実施例では、電源ユニット110に含まれる回路の一部が電磁石121に電気的に接続され、電磁石121に電流が流れることにより、冷却ファン150からの空気の流れが変化する。ここで、電源ユニット110と冷却媒体提供装置180の関係について説明する。
【0017】
図2は、第1の実施例における電源ユニット110と冷却媒体提供装置180の関係を示す図である。プロジェクター100の電源コード118は家庭用のコンセントに差し込まれ、電源ユニット110に含まれる第2の冷却対象であるAC−DC変換回路112は、電源コード118からの電気を交流100Vから直流100Vに変換し、電源ユニット110に含まれる第1の冷却対象であるDC−DC変換回路114は、AC−DC変換回路112からの直流100Vを直流5Vに変換する。
【0018】
DC−DC変換回路114からの直流5Vは、電磁石121を経由して音声処理回路170に送られる。すなわち、音声処理回路170は音声出力が行われない場合は動作しないため、AC−DC変換回路112のほうがDC−DC変換回路114よりも稼働率が高い装置である。冷却ファン150からの空気は、提供路184によってAC−DC変換回路112に提供され、提供路185によってDC−DC変換回路114に提供される。提供路184の形状は、例えば、冷却ファン150側とAC−DC変換回路112側が開口した円筒形状等である。また、提供路185の形状は、例えば、冷却ファン150側とDC−DC変換回路114側が開口した円筒形状等である。
【0019】
なお、提供路184における提供路185に接続する部分には、変形可能な薄い金属板の提供部材124が設けられ、冷却ファン150から提供路185への空気の流れを遮断している。また、電磁石121、提供部材124、冷却ファン150、提供路184、提供路185は、AC−DC変換回路112等に冷却媒体である空気を提供する冷却媒体提供装置180を構成している。さらに、電磁石121は、DC−DC変換回路114に関する電流に応じて第1の電磁力が変化する第1の電磁部として機能し、提供部材124、提供路184、185および冷却ファン150は、DC−DC変換回路114に対する冷却媒体の提供量と、AC−DC変換回路112に対する冷却媒体の提供量との割合を変化させる冷却媒体提供部として機能する。
【0020】
提供部材124は、電磁石121に電流が流れて電磁力による引力が発生することにより、先端(空気の進行方向が基準)が電磁石121に吸引されることによって曲がり、冷却ファン150から提供路185への流路を開放する。すなわち、プロジェクター100においては、通常は音声出力が行われないため、DC−DC変換回路114から音声処理回路170への電流は生じず、AC−DC変換回路112のみが冷却されている。音声出力が行われる場合、DC−DC変換回路114から音声処理回路170への電流が生じ、電磁石121が提供部材124を吸引することにより、冷却ファン150からの空気の一部が提供路185を経由してDC−DC変換回路114に提供され、通常稼働するAC−DC変換回路112だけでなく、音声処理時に稼働することによって温度が上昇するDC−DC変換回路114も冷却される。
【0021】
以上のように、本実施例によれば、プロジェクター100は、電磁力に応じて提供部材124が変形することによって、DC−DC変換回路114に対する冷却媒体の提供量と、AC−DC変換回路112に対する冷却媒体の提供量との割合を変化させることができるため、より簡易な構成で所望の冷却対象への冷却媒体の提供量を変化させることができる。すなわち、本実施例では、DC−DC変換回路114の温度が上昇する場合であっても、プロジェクター100は、DC−DC変換回路114に対する風量を増加させることができるため、DC−DC変換回路114を適切かつ効率的に冷却することができる。
【0022】
また、本実施例によれば、プロジェクター100は、風向を変えるために専用の電力や高価な部材を用いなくて済む上、簡易な構成であるため、省エネルギー化を図ることができ、製造費用を抑制することができ、故障しにくい上、風向変更用の動作音もモーター駆動等と比べて抑制することができる。
【0023】
また、本実施例によれば、プロジェクター100は、通常は稼働率の高いAC−DC変換回路112に冷却媒体をより多く提供し、DC−DC変換回路114が稼働するとDC−DC変換回路114にも冷却媒体を提供することにより、DC−DC変換回路114の稼働状況に応じて冷却媒体を提供することができる。さらに、本実施例によれば、プロジェクター100は、空冷を行う際に簡易な構成で適切な冷却を行うことができる。
【0024】
(第2の実施例)
第1の実施例では、板状の提供部材124が変形することによって冷却媒体の流路が変化したが、第2の実施例では、板状の提供部材がスライド移動することによって冷却媒体の流路が変化する例について説明する。
【0025】
図3は、第2の実施例における電磁力が発生していない場合の提供部材125の状態を示す図である。また、図4は、第2の実施例における電磁力が発生している場合の提供部材125の状態を示す図である。図2に示すDC−DC変換回路114への冷却媒体の提供路185に設けられる金属板状の提供部材125は、下半分に開口部が存在するが、上半分には開口部が存在していない。また、提供部材125の上方に電磁石121が位置しているものとする。なお、第2の実施例の構成は、これらの構成を除いて第1の実施例の構成と同様である。
【0026】
図3に示すように、電磁石121に電磁力が発生していない(あるいは電磁力が所定値未満、以下の実施例も同様)場合の提供部材125は、重力によって下半分が提供路185よりも下に下がっており、上半分が提供路185と接することによって提供路185を遮断し、DC−DC変換回路114への空気の流れを遮断している。なお、上記所定値は、適用する部材等によって適宜変化する値である。一方、電磁石121に電磁力が発生している(あるいは電磁力が上記所定値以上、以下の実施例も同様)場合の提供部材125は、電磁力による引力が重力よりも大きくなることによって上半分が提供路185よりも上に上がり、開口した下半分が提供路185と接することによって提供路185を開放し、DC−DC変換回路114に空気を提供できるようになる。
【0027】
以上のように、本実施例によっても、プロジェクター100は、第1の実施例と同様の作用効果を奏する。また、本実施例によれば、プロジェクター100は、重力と電磁力による引力を組み合わせることにより、簡易な構成で冷却媒体の流路を変化させることができる。
【0028】
(第3の実施例)
上述した各実施例の提供部材124、125は、板状であったが、形状は任意であり、例えば、内部に前記冷却媒体を収納して移動させることが可能な棒状の部材等であってもよい。図5は、第3の実施例における電源ユニット110と冷却媒体提供装置181の関係を示す図である。電源ユニット110は、DC−DC変換回路114と同様のDC−DC変換回路(第2の冷却対象)115を含んで構成されている。DC−DC変換回路115はDC−DC変換回路114よりも稼働率が高く、優先的に冷却される。冷却媒体提供装置181は、電磁石121と、提供部材126と、冷却ファン151と、冷却ファン151と提供部材126とを接続する提供路186を含んで構成されている。なお、DC−DC変換回路114、115の出力電圧は任意である。
【0029】
冷却ファン151からDC−DC変換回路115への空気の提供路186の先端に、内部が空洞で棒状の金属製の提供部材126が設けられている。提供部材126は、空気の進行方向を基準として後端に回転軸部128が設けられ、電磁石121によって吸引されることにより、回転軸部128を回転軸として長手軸の向きが変わるように形成されている。
【0030】
なお、提供部材126、回転軸部128、提供路186および冷却ファン151は、DC−DC変換回路114に対する冷却媒体の提供量と、DC−DC変換回路115に対する冷却媒体の提供量との割合を変化させる冷却媒体提供部として機能し、これらの各部と電磁石121は冷却媒体提供装置181として機能する。
【0031】
図5に示すように、電磁石121に電磁力が発生していない場合の提供部材126は、提供部材126の長手軸がDC−DC変換回路115に向いており、提供部材126の内部を通って空気がDC−DC変換回路115に提供される。一方、電磁石121に電磁力が発生している場合の提供部材126は、電磁力による引力によって提供部材126が回転し、提供部材126の長手軸がDC−DC変換回路114に向いており、提供部材126の内部を通って空気がDC−DC変換回路114に提供される。
【0032】
以上のように、本実施例によっても、プロジェクター100は、上述した各実施例と同様の作用効果を奏する。特に、本実施例によれば、プロジェクター100は、内部が空洞である棒状の提供部材126を用いることにより、冷却対象範囲が狭い場合であっても所望の冷却対象を適切に冷却することができる。さらに、本実施例によれば、プロジェクター100は、複数の冷却対象を完全に切り替えながら所望の冷却対象を適切に冷却することができる。
【0033】
(第4の実施例)
電磁石121の個数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。図6は、第4の実施例における電源ユニット110と冷却媒体提供装置182の関係を示す図である。冷却媒体提供装置182は、電磁石121、122と、提供部材127と、冷却ファン151と、提供路187を含んで構成されている。なお、提供部材127、回転軸部129、提供路187および冷却ファン151は、DC−DC変換回路114に対する冷却媒体の提供量と、DC−DC変換回路115に対する冷却媒体の提供量との割合を変化させる冷却媒体提供部として機能し、これらの各部と電磁石121、122は冷却媒体提供装置182として機能する。
【0034】
DC−DC変換回路(第2の冷却対象)115に関する電流に応じて第2の電磁力が変化する第2の電磁部である電磁石122は、DC−DC変換回路115から3D画像処理回路162への電流の経路に設けられている。また、提供部材127は、板状の金属部材であり、提供部材127の中心にある回転軸部129を回転軸として回転可能に形成されている。また、提供路188は、DC−DC変換回路114、115に冷却ファン151からの空気を提供可能な形状である。さらに、提供部材127の先端(空気の流れを基準とする)側かつDC−DC変換回路114側に電磁石121が設けられ、提供部材127の先端側かつDC−DC変換回路115側に電磁石122が設けられている。
【0035】
例えば、電磁石121、122に電流が流れていないか、あるいは、同じ電磁力であれば、提供部材127は回転せず、提供部材127の長手軸は冷却ファン151からの空気の進行方向と一致し、冷却ファン151からの空気はDC−DC変換回路114、115に均等に提供される。
【0036】
音声出力が行われ、3D画像表示が行われない場合、電磁石121の電磁力に応じた引力によって提供部材127が回転する。これにより、提供部材127の先端が電磁石121に近付き、提供部材127の後端がDC−DC変換回路115への流路を塞ぐように移動する。したがって、この場合、DC−DC変換回路114への風量が増加し、DC−DC変換回路115への風量が減少する。
【0037】
一方、3D画像表示が行われ、音声出力が行われない場合、電磁石122の電磁力に応じた引力によって提供部材127が回転する。これにより、提供部材127の先端が電磁石122に近付き、提供部材127の後端がDC−DC変換回路114への流路を塞ぐように移動する。したがって、この場合、DC−DC変換回路115への風量が増加し、DC−DC変換回路114への風量が減少する。
【0038】
以上のように、本実施例によっても、プロジェクター100は、第3の実施例と同様に、複数の装置の稼働状況に応じて、適切な装置に冷却媒体を提供することができる。
【0039】
(その他の実施例)
なお、本発明の適用は上述した実施例に限定されず、変形が可能である。例えば、上述した各実施例の構成は適宜組み合わせることが可能である。例えば、第4の実施例において、提供部材127に代え、第1の実施例の提供部材124を適用してもよい。また、冷却媒体提供装置180〜182の構成は、上述した各実施例の構成に限定されない。例えば、提供路184〜187がない状態でも、冷却ファン150、151は、提供部材124〜127によって風向を変えることが可能である。
【0040】
また、上述した各実施例における提供部材124〜127は、電磁石121、122によって発生される電磁力による吸引によって変形したり、移動したりしたが、電磁力による反発によって変形したり、移動したりしてもよい。具体的には、例えば、図6において、電磁石121を提供部材127の後端付近に移動させ、電磁石121に電流が流れることによる電磁力(斥力)で提供部材127の長手軸をDC−DC変換回路114に向けることにより、DC−DC変換回路114に対する冷却媒体の提供量を増加させることが可能である。また、提供部材は、金属製に限定されず、電荷を帯びた様々な素材を適用可能である。さらに、提供部材124〜127に電磁力が作用する部分に当該電磁力を強化するために永久磁石が設けられてもよい。
【0041】
また、第2の実施例は、提供部材125が垂直方向に移動する例であるが、提供部材125の移動方向は垂直方向に限定されない。例えば、提供部材125は、通常状態では巻きバネ等によって一方に引っ張られた状態で、電磁石121による引力によって逆方向に引っ張られることにより、水平方向等にも移動可能である。また、上述した各実施例における冷却対象は2つであるが、冷却対象は3つ以上であってもよい。例えば、図6において、DC−DC変換回路114とDC−DC変換回路115の間にAC−DC変換回路112を配置すれば、プロジェクター100は、AC−DC変換回路112、DC−DC変換回路114、115の3つの冷却対象に対する冷却媒体の提供割合を変化させながら冷却することが可能である。
【0042】
また、上述した各実施例における冷却対象はDC−DC変換回路114等に限定されず、例えば、CPU130、無線LAN用の通信回路、光路、光源等の電源ユニット110以外の回路等であってもよい。また、各実施例における冷却媒体は、空気に限定されず、空気以外の水素等の気体であってもよいし、水、液体窒素等の液体であってもよい。また、各実施例における冷却媒体提供装置を実装可能な装置はプロジェクターに限定されず、例えば、PC(Personal Computer)等の電子機器であってもよい。すなわち、空冷方式ではなく、水冷方式のプロジェクターや電子機器にも本発明を適用可能である。より具体的には、例えば、水冷式のPCは、上述した各実施例の構成を水冷用の提供路に適用することにより、通常はCPUに対して冷却用の水を提供し、音声を出力する場合のみ音声処理回路に対しても当該冷却用の水の一部を提供するといったことが可能である。
【0043】
また、上述した各実施例において、第1の冷却対象に関する電流および第2の冷却対象に関する電流は、冷却対象である装置に電気的に接続された経路における電流に限定されない。すなわち、電流を発生する装置と、冷却対象は一致していなくてもよい。例えば、図6において、冷却ファン151は、3D画像処理回路162に接続されたDC−DC変換回路115からの電流による電磁力に応じて、3D画像処理回路162を冷却してもよい。さらに、第1の冷却対象に関する電流および第2の冷却対象に関する電流は、上述した各実施例のような直接的な電流に限定されず、例えば、光電変換された電流等であってもよい。すなわち、プロジェクター100における光路の光を、太陽電池等の仕組みを用いて電流に変換し、当該電流に応じて電磁石121等の電磁力を変化させることにより、当該光路に対する冷却媒体の提供量を変化させてもよい。
【0044】
また、上述した各実施例において、DC−DC変換回路114等の付近にサーミスター等の温度測定部を設け、CPU130等の制御部が、当該温度測定部による温度に応じて冷却ファン150等の風量を調整してもよい。例えば、第1の実施例において、当該制御部は、DC−DC変換回路114の付近に設けられたサーミスターの値(温度)が上昇すれば、冷却ファン150の回転数を上げることによって風量を増加させることにより、DC−DC変換回路114に送風する割合が増える場合であっても、AC−DC変換回路112にも冷却に十分な送風を行うことができる。また、当該制御部は、電磁石121等の電磁力、電磁石121等の設けられた経路における電流、提供部材127等の回転角度等に応じて冷却ファン150等の風量を調整してもよい。具体的には、例えば、第4の実施例において、当該制御部は、提供部材127が所定角度以上回転した場合にはほとんど回転していない場合と比べて冷却ファン151の回転速度を低下させることによって風量を減少させてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 スクリーン、100 プロジェクター、110 電源ユニット、112 AC−DC変換回路(第2の冷却対象)、114 DC−DC変換回路(第1の冷却対象)、115 DC−DC変換回路(第2の冷却対象)、118 電源コード、121 電磁石(第1の電磁部)、122 電磁石(第2の電磁部)、124〜127 提供部材(冷却媒体提供部)、128、129 回転軸部(冷却媒体提供部)、130 CPU、140 バラストユニット、150、151 冷却ファン(冷却媒体提供部)、160 画像処理回路、162 3D画像処理回路、170 音声処理回路、172 アンプ、174 スピーカー、180〜182 冷却媒体提供装置、184〜187 提供路(冷却媒体提供部)、192 ランプ、194 照明光学系、196 液晶ライトバルブ、198 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の冷却対象に関する電流に応じて第1の電磁力が変化する第1の電磁部と、
前記第1の電磁力に応じて、冷却媒体の提供部材が変形し、あるいは、前記提供部材が移動することにより、前記第1の冷却対象に対する前記冷却媒体の提供量と、第2の冷却対象に対する前記冷却媒体の提供量との割合を変化させる冷却媒体提供部と、
を含む冷却媒体提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却媒体提供装置であって、
前記第1の冷却対象は、前記第2の冷却対象よりも稼働率が低い装置であって、
前記第1の電磁力が所定値未満の状態における前記第2の冷却対象への冷却媒体の提供量は、前記第1の電磁力が所定値以上の状態と比べて多く、
前記第1の電磁力に応じて、前記提供部材が変形し、あるいは、前記提供部材が移動することにより、前記第2の冷却対象への冷却媒体の提供量が前記第1の電磁力が所定値未満の状態と比べて減少する、
冷却媒体提供装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷却媒体提供装置であって、
前記第2の冷却対象に関する電流に応じて第2の電磁力が変化する第2の電磁部を含み、
前記提供部材は、前記第1の電磁力および前記第2の電磁力に応じて、変形し、あるいは、移動する、
冷却媒体提供装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の冷却媒体提供装置であって、
前記冷却媒体提供部は、前記冷却媒体として空気を提供するためのファンを含み、
前記提供部材は、板状の部材であって、かつ、前記ファンからの前記空気の提供路に設けられ、前記第1の電磁力による吸引または反発によって変形することにより、前記空気の進行方向を変化させる、
冷却媒体提供装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の冷却媒体提供装置であって、
前記提供部材は、板状の部材であって、かつ、前記冷却媒体の提供路に設けられ、前記第1の電磁力による吸引または反発によってスライド移動することにより、前記冷却媒体の提供路の開閉を行う、
冷却媒体提供装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の冷却媒体提供装置であって、
前記提供部材は、内部に前記冷却媒体を収納して移動させることが可能な棒状の部材であって、かつ、前記冷却媒体の提供路に設けられ、前記第1の電磁力による吸引または反発によって長手軸の向きが変化することにより、前記冷却媒体の進行方向を変化させる、
冷却媒体提供装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の冷却媒体提供装置と、
前記第1の冷却対象と、
前記第2の冷却対象と、
を含むプロジェクター。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の冷却媒体提供装置と、
前記第1の冷却対象と、
前記第2の冷却対象と、
を含む電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114126(P2013−114126A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261500(P2011−261500)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】