説明

冷却板

【課題】 大きな設備あるいは複雑な設備を用いることなく、ペット等に容易に快適な涼感を与えることが可能な冷却手段を提供する。
【解決手段】 水への溶解時に吸熱を生ずる無機塩類から選ばれる1種または2種以上の塩類と、水とが混合されてなる保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋を、少なくとも上板と下板を有する偏平状収納具に、前記上板及び下板と接触するように挟持して収納した冷却板とする。また、好ましくは、下板の上側に凸部を設けるとともに、非透水性の樹脂製袋の前記凸部に合った位置に、前記凸部の形状に合った凹部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却板に関するものである。更に詳細には、使用面である上面を効率よく冷却することが可能な冷却板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、頭部、眼部等を冷やす目的で、保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋が保冷袋として使用されている。保冷剤としては、水への溶解時に吸熱を生ずる無機塩類、例えば、燐酸水素2ナトリウム、燐酸2水素ナトリウム、燐酸3ナトリウム等の燐酸塩、燐酸水素アンモニウムナトリウム、燐酸水素2アンモニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸3アンモニウム等のアンモニウム塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸クロムナトリウム、炭酸スカンジウムナトリウム、炭酸セリウムナトリウム等の炭酸塩が用いられている。
【0003】
これらの無機塩類は、水に混合されて保冷剤とされ、通常は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソシアネート等の可撓製フィルムからなる収納袋に収納された形態である。使用前においては、室温の比較的低い領域、例えば10〜25℃のような温度で結晶を析出させ、使用時には体温により温度が上昇する領域、例えば20〜28℃のような温度で析出した結晶が吸熱を生じながら溶解しうるように塩類の濃度、混合割合が適宜定められている。
【特許文献1】特開平7−48565号公報
【特許文献2】特開平7−213548号公報
【特許文献3】特開平8−34975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のような保冷剤が充填された保冷袋は、人体の一部を冷やすには適しているが、例えばペット等の動物は人の意思に反して動くので、このような保冷袋を取付けることが困難な場合があった。また、収納袋に空気が入った場合、体が冷えるように収納袋を動かすことができないので、冷却効率が悪くなることがあった。
また、ペットケース等に冷却装置を設けることも考えられるが、大きくて複雑なものになるという不都合があった。
従って、本発明が解決しようとする課題は、大きな設備あるいは複雑な設備を用いることなく、ペット等に容易に快適な涼感を与えることが可能な冷却手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、前記のような保冷剤が充填された保冷袋において、少なくとも上板と下板を有する偏平状収納具に、これを上板及び下板と接触するように挟持して収納することにより、大きな設備あるいは複雑な設備を用いることなく、ペット等がその上に乗るだけで容易に快適な涼感が得られること等を見出し本発明の冷却板に到達した。
すなわち本発明は、水への溶解時に吸熱を生ずる無機塩類から選ばれる1種または2種以上の塩類と、水とが混合されてなる保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋を、少なくとも上板と下板を有する偏平状収納具に、該上板及び下板と接触するように挟持して収納したことを特徴とする冷却板である。
【0006】
本発明は、主にペット等の動物を快適に冷やすための冷却板に適用される。
以下、本発明の冷却板を、図1〜図7に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
図1〜図4は、本発明の冷却板の例を示す縦断面図である。図5、図6は、各々本発明における保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋の例を示す縦断面図、平面断面図である。また、図7は、図1の冷却板の平面構成図である。
本発明の冷却板は、図1〜図4に示すように、保冷剤1が充填された非透水性の樹脂製袋2を、少なくとも上板3と下板4を有する偏平状収納具6に、上板3及び下板4と接触するように挟持して収納した冷却板である。
【0007】
本発明に用いられる保冷剤としては、水への溶解時に吸熱を生ずる無機塩類から選ばれる1種または2種以上の塩類と、水とが混合されてなるものである。このような無機塩類としては、例えば、燐酸水素2ナトリウム、燐酸2水素ナトリウム、燐酸3ナトリウム、燐酸2水素カリウム、燐酸水素カルシウム等の燐酸塩、燐酸水素アンモニウムナトリウム、燐酸水素2アンモニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸3アンモニウム等のアンモニウム塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸クロムナトリウム、炭酸スカンジウムナトリウム、炭酸セリウムナトリウム等の炭酸塩、硫酸ナトリウム等の硫酸塩、及びこれらの塩の水和物等を挙げることができる。
【0008】
また、前記の保冷剤を密封する非透水性の樹脂製袋としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソシアネート、またはこれらの複合フィルムからなる袋を挙げることができる。本発明においては、前記のようなフィルムからなる袋を用いることができるので、保冷剤を前記のようなフィルムからなる袋に密封するとともに袋の開口部を容易にヒートシールことができ、袋の中に空気が入らないようにすることが可能である。このように空気を入れないことにより冷却効率が向上し、この点で硬いプラスチック容器を用いた冷却手段よりも優れている。
【0009】
本発明の冷却板は、前記のような保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋を、少なくとも上板と下板を有する偏平状収納具に、上板及び下板と接触するように挟持して収納したものであるが、その構造は、図1に示すように、上板と下板の間隔を調整することが可能な支持柱5により非透水性の樹脂製袋を固定するものでもよく、図2に示すように、全体が箱型になっており、例えば上板を蓋のように開けて樹脂製袋を収納するようなものでもよい。但し、これらは、ペット等の体重を充分に支えることができる強度が必要である。
【0010】
本発明に用いられる上板の構成材料としては、例えば、樹脂、金属板、または金属を含む成形物等を挙げることができるが、快適な涼感が得られる点で金属を含んだものが好ましい。また、さらに、上板の下面と上面を各々別々の構成材料とするとともに、上面を金属箔あるいは金属網で構成することもできる。下板、側面、あるいは支持柱の構成材料としても、上板と同様のものを用いることができる。
【0011】
また、本発明の冷却板においては、保冷剤が充填された樹脂製袋と、上板、下板が密着した状態で使用されるが、特に樹脂製袋が動いて保冷剤が偏ることを緩和するため、及び上板の密着性を向上させるために、図3に示すように、下板4の上側に凸部7を設けることが好ましい。凸部は1個でも2個以上でもよい。さらに、図5に示すように、保冷剤が充填された樹脂製袋2において、前記下板4の凸部7に合った位置に、前記凸部7の形状に合った凹部8を設けることが好ましい。このような凹部は、例えば樹脂製袋を構成する上側のフィルムと下側のフィルムを、加熱融着することにより得られる。このようにすることにより、保冷剤の偏りが緩和され、上板と保冷剤が充填された樹脂製袋の密着性が向上し、上板を迅速かつ均一に冷却することが可能となる。尚、凸部、凹部の大きさや形状には特に限定されることはないが、形状は通常は円錐台、角錐台、円柱、または角柱である。
【0012】
本発明において、偏平状収納具の上板及び下板に挟持して収納される保冷剤が充填された樹脂製袋は、図1〜図3に示すように1個でもよく、図4に示すように2個以上でもよい。また、樹脂製袋は、偏平状収納具に固定されていても、簡単に取外しができるようにされていてもよい。しかし、前述のような無機塩類は、使用後、冷却して結晶を生成させることにより繰返して用いることができるので、簡単に取外しができるようにされている方が好ましい。尚、本発明に用いられる保冷剤は、析出した結晶が吸熱を生じながら溶解するので、長時間所望の温度を維持することができる。この点で氷のう等の保冷剤より優れており、直接的にペット等に涼感を与えることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却板は、保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋を、少なくとも上板と下板を有する偏平状収納具に挟持して収納したものである。本発明においては、前記の樹脂製袋の構成を、フィルムからなる袋とすることができるので、保冷剤を前記のようなフィルムからなる袋に密封するとともに袋の開口部を容易にヒートシールことができ、袋の中に空気が入らないようにすることが可能である。このように空気を入れないことにより冷却効率が向上し、この点で硬いプラスチック容器を用いた冷却手段よりも優れている。
【0014】
また、本発明に使用される保冷剤は、水への溶解時に吸熱を生ずる無機塩類から選ばれる1種または2種以上の塩類と、水とが混合されてなる保冷剤であるので、快適な涼感が得られる温度を長時間にわたり維持することが可能である。さらに、このような保冷剤が充填された樹脂製袋を、使用面である上板と接触するように挟持しているので、快適な涼感を直接ペット等に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
(保冷剤が充填された樹脂製袋の製作)
ナイロン及びポリエチレンからなる複合フィルム(厚さ:0.14mm)2枚を、ポリエチレンの面が互いに向い合うように重ね合せ、長さ350mm、幅270mmに切断し、3方の周辺部を加熱融着することにより貼り合せて袋状に成形し非透水性の樹脂製袋を製作した。次に、図6に示すような加熱融着部の位置4箇所において、2枚の複合フィルムを円形に加熱融着して、形状が円錐台の凹部を形成した。加熱融着部は、直径が10mmとなるようにした。
【0017】
次に、保冷剤(構成成分:無水燐酸水素2ナトリウム、無水燐酸水素2アンモニウム、無水燐酸2水素カリウム、2水燐酸1水素カルシウム、吸水性ポリマー、水)650gを、前記の樹脂製袋に注入し、残る1辺を空気が入らないように加熱融着することにより貼り合せて、縦断面が図5のような保冷剤が充填された樹脂製袋を製作した。尚、貼り合せ部の幅は5mmとした。
【0018】
(冷却板の製作)
長さ380mm、幅300mm、厚さ1.0mmの塩化ビニル樹脂板の上面に、形状が円錐台の発泡ポリエチレン製のクッション材(厚さ:3.0mm)を、前記の保冷剤が充填された樹脂製袋の凹部の位置に合うように、接着剤により固定して凸部を設け下板とした。また、前記と同様の塩化ビニル樹脂板を上板として用いた。下板の上に、下板の凸部と樹脂製袋の凹部が合わさるように、樹脂製袋を乗せ、さらに樹脂製袋の上に上板を乗せた後、これらの四隅を支持柱により固定して冷却板を製作した。
【0019】
(冷却板の評価)
前述のように製作した冷却板を、温度が20℃に設定された環境室に8時間放置して、保冷剤に含まれる無機塩類の結晶を充分に析出させた後、温度が37℃に設定された試験室に置き、上板の上面中央部の温度変化を測定した。その結果を図8のグラフに実線で示す。
【0020】
(比較例1)
実施例1の冷却板の製作において、保冷剤の代わりに水を用いたほかは実施例1と同様にして冷却板を製作した。
この冷却板を、温度が20℃に設定された環境室に8時間放置した後、温度が37℃に設定された試験室に置き、上板の上面中央部の温度変化を測定した。その結果を図8のグラフに点線で示す。
【0021】
以上のように、本発明の実施例の冷却板は、快適な涼感が得られる温度を長時間にわたり維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の冷却板の例を示す縦断面図
【図2】本発明の図1以外の冷却板の例を示す縦断面図
【図3】本発明の図1、図2以外の冷却板の例を示す縦断面図
【図4】本発明の図1〜図3以外の冷却板の例を示す縦断面図
【図5】保冷剤が充填された樹脂製袋の例を示す縦断面図
【図6】保冷剤が充填された樹脂製袋の例を示す平面断面図
【図7】図1の冷却板の平面構成図
【図8】実施例1及び比較例1の冷却板の評価結果(温度変化)を示すグラフ
【符号の説明】
【0023】
1 保冷剤
2 非透水性の樹脂製袋
3 上板
4 下板
5 支持柱
6 偏平状収納具
7 凸部
8 凹部
9 貼り合せ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解時に吸熱を生ずる無機塩類から選ばれる1種または2種以上の塩類と、水とが混合されてなる保冷剤が充填された非透水性の樹脂製袋を、少なくとも上板と下板を有する偏平状収納具に、該上板及び下板と接触するように挟持して収納したことを特徴とする冷却板。
【請求項2】
下板の上側に凸部を有する請求項1に記載の冷却板。
【請求項3】
下板の上側に凸部を有するとともに、非透水性の樹脂製袋の前記凸部に合った位置に、前記凸部の形状に合った凹部を有する請求項1に記載の冷却板。
【請求項4】
凸部の形状が、円錐台、角錐台、円柱、または角柱である請求項2または請求項3に記載の冷却板。
【請求項5】
非透水性の樹脂製袋が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソシアネートまたは、これらの複合フィルムからなる請求項1に記載の冷却板。
【請求項6】
偏平状収納具の上板が、樹脂、金属板、または金属を含む成形物で構成される請求項1に記載の冷却板。
【請求項7】
偏平状収納具の上板の上面が、金属箔、金属網で構成される請求項1に記載の冷却板。
【請求項8】
動物を上板に乗せて冷やすためのものである請求項1に記載の冷却板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−46753(P2006−46753A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226565(P2004−226565)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【出願人】(390006677)菱有工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】