説明

冷却用材および冷却材セット

【課題】冷却および冷感効果の持続性に優れた冷却用材を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの断熱層を含む2層以上の積層構造を有する、冷却剤を適用するための冷却用材および該冷却用材と冷却スプレー剤とを組み合わせた冷却材セットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却剤を適用するための冷却用材および該冷却用材と冷却スプレー剤とを組み合わせた冷却材セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化により大気の平均気温が上昇する傾向にあり、暑さを凌ぐことが年々厳しくなっており、熱中症の患者数も増加傾向にある。熱中症は体温を調節する機能がコントロールを失い、体温が上昇する機能障害である。その一方で、地球温暖化を抑制するために、クールビズが奨励されているが、軽装になれない場合もある。
【0003】
このような暑さを凌ぐための製品として、局所的に冷感を付与して一時的に暑さを和らげるための冷却スプレーおよび冷感化粧料等が知られている(特許文献1〜4)。また、衣類に適用して身体と接触させることによる衣類用冷感付与剤が開発されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−239142号公報
【特許文献2】特開2007−131539号公報
【特許文献3】特開2002−80335号公報
【特許文献4】特開平04−103526号公報
【特許文献5】特開2010−84269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された技術によれば、肌に直接適用するため、べたつき、肌荒れを起こす等の問題があった。さらに、汗により冷却成分が流れ落ちたり、揮発性の冷却成分を用いた場合には体温で常に冷却成分が揮発され、冷感が持続しないという問題もあった。
【0006】
また、特許文献5に開示された技術によれば、冷感効果が一定時間得られるものの、長時間に亘り、冷却および冷感効果を持続させることは困難であった。
【0007】
したがって、本発明は、冷却および冷感効果の持続性に優れた冷却用材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鑑みて種々鋭意検討した結果、少なくとも1つの断熱層を含む2層以上の積層構造を有する冷却用材に冷却剤を適用することにより、冷却効果および冷感効果の持続性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.少なくとも1つの断熱層を含む2層以上の積層構造を有する、冷却剤を適用するための冷却用材。
2.更にダブルラッセル構造を有する層を含む、前項1に記載の冷却用材。
3.冷却剤が冷却スプレー剤である前項1または2に記載の冷却用材。
4.冷却スプレー剤が乳酸メンチルを含有する、前項3に記載の冷却用材。
5.冷却スプレー剤がジェル状のエアゾールスプレーである、前項4に記載の冷却用材。
6.前項1または2に記載の冷却用材と、乳酸メンチルを含有する冷却スプレー剤とを組み合わせた、冷却材セット。
7.冷却スプレー剤がジェル状のエアゾールスプレーである、前項6に記載の冷却材セット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷却用材は、少なくとも1つの断熱層を含むことにより、外からの熱を内側に伝えにくく、内側に適用する冷却剤による冷たさを外へ逃がしにくいため、優れた冷却効果の持続性を得ることができる。
【0011】
また、好ましい態様として、本発明の冷却用材は、冷却剤を適用する面をダブルラッセル構造を有する素材とし、冷却剤として冷却スプレー剤を用いることにより、優れた冷感効果の持続性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】冷却用材に冷却スプレー剤1を適用した場合の冷却用材の温度変化を示す図である。
【図2】冷却用材に冷却スプレー剤2を適用した場合の冷却用材の温度変化を示す図である。
【図3】冷却用材に保冷剤を適用した場合の冷却用材の温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、本発明の冷却用材が有する「冷却効果」とは、冷却用材と接触した部位の温度を低下させることを指す。また、本発明の冷却用材が有する「冷感効果」とは、本発明の冷却用材を身体に接触させた際にひんやりとした気持ちよい冷たさを感じることを指す。
【0014】
(冷却用材)
本発明の冷却用材とは、予め冷却剤を適用した後に目的の使用部位に固定して冷却効果を供するものである。本発明の冷却用材は、少なくとも1つの断熱層を含み、かつ断熱層の少なくとも一方の側に冷却スプレー剤を適用するための素材を積層した2層以上の構造を有する。
【0015】
1)断熱層
本発明において、「断熱層」とは、空気を含む断熱材からなり、外からの熱を伝えにくく、内側の冷たさを外へ逃がさない効果を持つ層をいう。
【0016】
断熱層を構成する断熱材としては、例えば、繊維系断熱材およびプラスチック系断熱材が挙げられる。これらの中でも、柔軟性の観点から、繊維系断熱材が好ましい。
【0017】
繊維系断熱材は、細かな繊維の隙間に空気を保持することで、断熱効果を確保することができる。繊維系断熱材としては、例えば、ポリエステル不織布、グラスウール、ロックウール、羊毛断熱材、セルロースファイバーおよび炭化コルクが挙げられる。これらの中でも、コストおよび繰り返し使用の観点から、ポリエステル不織布が好ましい。
【0018】
プラスチック系断熱材は、気泡膜に閉じ込めた空気の断熱性能により断熱効果を発揮することができる。プラスチック系断熱材の主体をなす合成樹脂としては、例えば、ポリエステル発砲体、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアヌレート、尿素樹脂、ポリウレタンおよび熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0019】
断熱材の目付は用いる素材により異なるが、30〜300g/mであることが好ましく、50〜100g/mであることがより好ましい。この範囲とすることにより、断熱効果と通気性が良好である。
【0020】
断熱材の厚みは、1〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。この範囲とすることにより、柔軟性が良好である。
【0021】
断熱材としては、市販のものを用いることができ、例えば、バイウォーム(バイリーン株式会社製)、クランボン(倉敷繊維加工株式会社製)およびベースタップ(岩崎産業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
2)ダブルラッセル構造を有する層
本発明の冷却用材における、冷却スプレー剤を適用する面としては、冷感効果の持続性および通気性の観点から、ダブルラッセル構造を有する素材を用いることが好ましい。本明細書においてダブルラッセル構造とは、表面および裏面の二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成された、多数の孔を有する立体編物を指す。
【0023】
ダブルラッセル構造を有する面に冷却スプレー剤を噴霧することにより、ダブルラッセル構造の多数の孔に冷却成分を一時的に保持することができ、高い冷感効果の持続性が得られるとともに、冷却用材の通気性および弾力性も向上することができる。
【0024】
ダブルラッセル構造を有する素材の表面の構造としては、例えば、メッシュおよびスムース構造が挙げられる。表面の構造における孔の面積は、1〜80mmであることが好ましく、3〜10mmであることがより好ましい。また、表面の構造における孔の内径は、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。孔の面積および内径を当該範囲とすることで、冷却スプレー剤から噴霧された冷却成分を多量に保持することができ、かつ使用部位への放出量も多いため、冷感効果を長時間持続することができる。また、冷却スプレー剤から噴霧された冷却成分が身体上に滴り落ちることもないので、使用時に不快感を与えることもない。
【0025】
表面を構成する素材としては、例えば、ポリエステルが挙げられる。その他、合成繊維、化学繊維および天然繊維を適宜配合してもよい。
【0026】
ダブルラッセル構造を有する素材の裏面の構造としては、表面と同様に、メッシュおよびスムース構造が挙げられる。裏面を構成する素材としては、例えば、ポリエステルが挙げられる。その他、合成繊維、化学繊維および天然繊維を適宜配合してもよい。
【0027】
表面と裏面の連結部分の構造としては、例えば、筋違構造、クロス構造およびトラス構造が挙げられる。連結部分に用いる糸としては、モノフィラメントが好ましい。また、連結部分を構成する素材としては、例えば、ポリエステルが挙げられる。その他、合成繊維、化学繊維および天然繊維を適宜配合してもよい。
【0028】
ダブルラッセル構造を有する素材の厚みは、柔軟性の観点から、1〜10mmであることが好ましく、2〜5mmであることがより好ましい。
【0029】
ダブルラッセル構造を有する素材の通気性は、使用感の観点から、50〜500cc/cm/秒とすることが好ましく、100〜300cc/cm/秒とすることがより好ましい。
【0030】
ダブルラッセル構造を有する素材の目付は、使用感の観点から、100〜300g/mとすることが好ましく、200〜250g/mとすることがより好ましい。
【0031】
ダブルラッセル構造を有する素材としては、市販のものを用いることができ、例えば、フュージョン(旭化成株式会社製)およびテトロン(東レ株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
3)その他の層
その他の層を構成する素材としては、例えば、ニット、不織布および織布等が挙げられる。これらの中でも、吸水性と速乾性の観点から、ニットが好ましい。
【0033】
本発明の冷却用材における積層順としては、本発明の効果に影響が無ければ特に限定されないが、例えば、身体に接触する面を第一層とした場合、第一層をダブルラッセル構造を有する層とし、第二層を断熱層とし、第三層(外側)を吸汗速乾の性能を有する層とすることが好ましい。
【0034】
前記の例示した構成とすることで、冷却スプレー剤を冷却用材に適用した際に、ダブルラッセル構造の中に冷却成分が多量に保持されるとともに、断熱層による断熱効果も伴って、冷却効果の持続性を得ることができる。また、保冷剤を冷却用材に適用した際には、冷たくなりすぎない、という効果も得ることができる。
【0035】
本発明の冷却用材において、各素材を積層する方法としては、例えば、各素材を接着剤または粘着剤を用いて接着する方法、および各素材を積層した後に縫い合わせる方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の冷却用材は全身に使用することができる。使用部位としては、例えば、首、手、手首、腕、おでこ、足、脚、足首、頭、わきおよび体幹が挙げられる。冷却用材の形状としては、例えば、アイス枕、帽子、首巻、サンバイザー、手首用バンド、足首用バンド、頭用バンド、腕用カバーおよびワイシャツの襟等が挙げられる。
【0037】
本発明の冷却用材に保冷剤を適用する場合、ダブルラッセル構造を有する層と断熱層の間に保冷剤を保持させるのが好ましく、その場合、冷却用材をバッグ形状のものに縫製し、上部に開閉用のスライドファスナー等を取り付けて密閉可能にすると冷却効果が長時間持続されるため好ましい。
【0038】
(冷却材セット)
本発明の冷却用材と冷却スプレー剤とを組み合わせて冷却材セットとすることができる。冷却材セットに用いる冷却スプレー剤を、乳酸メンチルを含む冷却スプレー剤、更に好ましくはジェル状のエアゾールスプレーとすることにより、優れた冷却効果の持続性を向上することができる。また、冷却材セットに用いる冷却用材は断熱層を含み、更に身体側にダブルラッセル構造を有する素材を用いることが、冷却効果を長時間持続させる観点から好ましい。
【0039】
(冷却剤)
本発明において、冷却または保冷機能を有する材料を「冷却剤」と称する。本発明の冷却用材は、冷却剤を適用するためのものである。本発明に用いる冷却剤としては、例えば、冷却スプレー剤および保冷剤が挙げられるが、使用時の簡便性の観点から、冷却スプレー剤が好ましい。
【0040】
1)冷却スプレー剤
本発明に用いる冷却スプレー剤とは、冷却用材に噴霧適用するものである。本発明の冷却スプレー剤は乳酸メンチルを含有し、更にメントール、エタノール、水および増粘剤を含有することが好ましい。
【0041】
乳酸メンチルは冷感を付与するために冷却スプレー剤に配合する。冷却スプレー剤における乳酸メンチルの含有量は、冷感効果の持続性の観点から、0.2〜1.0質量%であることが好ましく、0.5〜0.8質量%であることがより好ましい。
【0042】
メントールは冷感を付与するために冷却スプレー剤に配合する。冷却スプレー剤におけるメントールの含有量は、冷感効果の速効性の観点から、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましい。
【0043】
メントールとしては、例えば、単離された、l−メントール、d−メントールおよびdlメントール等が挙げられる。これらの中でもl−メントールが好ましい。
【0044】
なお、乳酸メンチルとメントールの配合比率は、例えば、乳酸メンチル1質量部に対してメントールを0.1〜2.0質量部とすることが好ましく、0.5〜1.0質量部とすることがより好ましい。
【0045】
エタノールは溶媒として冷却スプレー剤に配合する。冷却スプレー剤におけるエタノールの含有量は、安定性と冷感効果の観点から、5.0〜46.0質量%であることが好ましく、15.0〜25.0質量%であることがより好ましい。エタノールとしては、純度95%以上のものを用いることが好ましい。
【0046】
水は溶媒として冷却スプレー剤に配合する。冷却スプレー剤における水の含有量は、安定性の観点から、50.0〜91.0質量%であることが好ましく、70.0〜80.0質量%であることがより好ましい。
【0047】
増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリレーツコポリマー、ヒドロキシエチルセルロースおよびキサンタンガム等が挙げられる。冷却スプレー剤における増粘剤の含有量は、冷却効果の持続性および吐出性状の観点から、0.1〜1.0質量%であることが好ましく、0.25〜0.65質量%であることがより好ましい。
【0048】
冷却スプレー剤には、上記成分以外にも身体に悪影響を及ぼさない成分を適宜配合することができる。冷却スプレー剤に配合するその他の成分としては、保湿剤、界面活性剤、粘度調整剤、防腐剤、キレート剤、油性成分、高級アルコール、天然および合成高分子、紫外線吸収剤、各種抽出液、無機および有機顔料、無機および有機粘土鉱物、金属石鹸処理またはシリコーン類で処理された無機および有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、カチオン性金属イオン、消臭剤並びに除菌剤等が挙げられる。
【0049】
冷却スプレー剤は、上記各成分を所定量混合することで得られる。混合の方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0050】
冷却スプレー剤の種類は、本発明の冷却用材に噴霧適用できる剤型であれば特に限定されないが、冷却効果の観点から、エアゾールスプレーであることが好ましい。更にエアゾールスプレーは、内容物の吐出性状により液状、氷状およびジェル状のタイプに分けられるが、本発明の冷却用材への適用にはジェル状のエアゾールスプレーが最も好ましい。ジェル状のエアゾールスプレーを用いることにより、液状および氷状のものと比較して、上記ダブルラッセル構造を有する面に適用した際に、ダブルラッセル構造の中に保持される冷却成分の量を増加させることができ、優れた冷感効果の持続性を得ることができる。
【0051】
前記ジェル状のエアゾールスプレーは、乳酸メンチルを含むジェル状原液と噴射剤とを耐圧容器に密封、充填することにより得ることができる。噴射剤としては、ジメチルエーテルが好ましい。ジメチルエーテルは単独で用いてもよく、また、ジメチルエーテルと液化天然ガス、炭酸ガスおよびフロンガス等の他の噴射剤を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ジェル状原液と噴射剤との混合充填比率は、原液/噴射剤=90/10〜10/90(質量比)とすることが好ましく、80/20〜50/50とすることがより好ましく、60/40とすることが特に好ましい。
【0053】
前記ジェル状原液の粘度は、5000〜45000cp(センチポイズ)であることが好ましく、10000〜30000cpであることがより好ましい。ジェル状原液の粘度を上記範囲内とすることにより、本発明の冷却用材のダブルラッセル構造中に多量に保持され、冷感効果が長時間持続される。
【0054】
冷却スプレー剤は、本発明の冷却用材における、身体に接触する面に適当量噴霧することにより、冷却成分が該面上に一定時間保持され、身体と接触することによって、冷感を付与し得るものである。具体的な噴霧量としては、例えば、2.0〜17.0g/5秒であることが好ましく、3.5〜11.5g/5秒であることがより好ましい。
【0055】
2)保冷剤
本発明に用いる保冷剤とは、水、不凍液、ゲル化剤および防腐剤等を含み、これらが容器または袋体等に充填してあり、使用前に冷凍庫中で凍らせてから、本発明の冷却用材に適用して保冷に供するものである。ここで、不凍液としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリンおよびエタノール等が挙げられる。ゲル化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースおよびゼラチン等が挙げられる。防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、二酸化塩素およびデヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。なお保冷剤としては、市販されているものをそのまま、あるいは加工して用いることができる。
【実施例】
【0056】
<製造例1:冷却用材(ダブルラッセル/断熱材/ニット)の製造>
ポリエステル製のダブルラッセル(*1、商品名:テトロンFT7200、東レ株式会社製)とポリエステル製の不織布(商品名:バイウォーム YNE−80、バイリーン株式会社製)とポリエステル製のニット(商品名:SOFRECHミスター介護士MR−888、旭化成株式会社製)の順で重ね合わせた3層の冷却用材(7cm×25cm)を作成した。
【0057】
<製造例2:冷却用材(ダブルラッセル/ニット)の製造>
ポリエステル製のダブルラッセル(*1、商品名:テトロンFT7200、東レ株式会社製)とポリエステル製のニット(商品名:SOFRECHミスター介護士MR−888、旭化成株式会社製)を重ね合わせた2層の冷却用材(7cm×25cm)を作成した。
【0058】
*1・・・以下の規格のものを使用
孔の内径:2mm、厚み:1.5mm、目付:230g/m
【0059】
<製造例3:冷却スプレー剤1の製造>
表1に示す処方の原液を調製した後、原液を60質量%、ジメチルエーテル(噴射剤)を40質量%の割合で耐圧容器に充填して、ジェルタイプの冷却スプレー剤1を製造した。
【0060】
【表1】

【0061】
<試験例1>
製造例1および2で得た冷却用材について、以下の方法で冷却効果の持続性を確認した。
【0062】
i)冷却用材に冷却スプレー剤を適用した場合
製造例1および2で得た冷却用材のニット面を垂直に固定した厚紙の片側に付着させ、該冷却用材のダブルラッセル面に製造例3で得たジェルタイプの冷却スプレー剤1と市販の氷状タイプの冷却スプレー剤2(商品名:どこでもアイスノンEXシャーベットスプレー、成分:LPG、水、PPG−8セテス−20、タルク、フェノキシエタノール、ヒドロキシエチルセルロース、株式会社白元製)を約1秒間スプレーした。
【0063】
その後、冷却用材を付着した反対側から50cm離れた位置から卓上用のセラミックファンヒーター(日栄電機産業株式会社製)を用いて50℃の熱風を送風し続け、ダブルラッセル面における温度上昇を、小型熱画像センサー(株式会社チノー製)を用いて測定した。その結果を図1および図2に示す。
【0064】
図1および2に示すように、冷却スプレー剤1および2を適用したいずれの場合においても、断熱層を含む冷却用材を用いた場合は、断熱層を含まない冷却用材を用いた場合と比較して、冷却効果の持続性が高いことが分かった。
【0065】
また、乳酸メンチルを含む冷却スプレー剤1は、乳酸メンチルを含まない冷却スプレー剤2と比較して、冷却効果の持続性が高いことが分かった。
【0066】
ii)冷却用材に保冷剤を適用した場合
予め冷凍庫で凍らせた保冷剤(商品名:熱さまひんやりヘアバンド、小林製薬株式会社製)を製造例1の冷却用材ではダブルラッセル層と断熱層の間に、製造例2の冷却用材ではダブルラッセル層とニットの間に挿入して、上記i)と同様な条件でダブルラッセル面の温度上昇を測定した。その結果を図3に示す。
【0067】
図3に示すように、断熱層を含む冷却用材は、断熱層を含まない冷却用材と比較して、保冷剤の冷却効果を、より長時間持続できることが分かった。
【0068】
<製造例4:冷却用材(ニット/ニット)の製造>
ポリエステル製のニット(商品名:SOFRECHミスター介護士MR−888、旭化成株式会社製)を2枚重ね合わせて2層の冷却用材(7cm×25cm)を作成した。
【0069】
<試験例2>
製造例1、2および4で得た冷却用材について、男女6名に対して以下の基準で冷感効果を評価した。その結果を表2に示す。
【0070】
冷却スプレー剤を適用した場合の評価基準:
気持良い冷感を感じる・・・5点
冷感を感じる・・・4点
少し冷感を感じる・・・3点
ほとんど冷感を感じない・・・2点
全く冷感を感じない・・・1点
保冷剤を適用した場合の評価基準:
気持良い冷感を感じる・・・1点
全く冷感を感じない・・・0点
冷感が強すぎる・・・−1点
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示すように、冷却スプレー剤を適用した場合、ダブルラッセル層を含む製造例1および2の冷却用材はダブルラッセル層を含まない製造例4の冷却用材と比較して、冷感効果の持続性が高いことが分かった。更に、乳酸メンチルを含む冷却スプレー剤1のほうが、乳酸メンチルを含まない冷却スプレー剤2と比べて冷感効果の持続性が高いことが分かった。また、保冷剤を適用した場合、ダブルラッセル層を含む製造例2の冷却用材はダブルラッセル層を含まない製造例4の冷却用材と比較して、冷たくなりすぎないことも分かった。
【0073】
<試験例3>
製造例2および4で得た冷却用材について、製造例3で得たジェルタイプの冷却スプレー剤1と市販の氷状タイプの冷却スプレー剤2(商品名:どこでもアイスノンEXシャーベットスプレー、株式会社白元製)を用いて、以下の方法で各冷却用材から放出される冷却成分の量を測定した。
【0074】
冷却スプレー剤1を各冷却用材(製造例2の冷却用材はダブルラッセル側)に約1秒間噴射した後、噴射した部分を電子天秤(型式:BJ610、ザルトリウス株式会社製)に約3秒間押し当て、電子天秤に付着した量を測定した。その結果を表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
同様に、冷却スプレー剤2を各冷却用材に(製造例2の冷却用材はダブルラッセル側)に約2秒間噴射した後、噴射した部分を電子天秤(型式:BJ610、ザルトリウス株式会社製)に約10秒間押し当て電子天秤に付着した量を測定した。その結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
表3および4に示す結果から、ダブルラッセル構造を有する製造例2の冷却用材は、ニット素材を用いた製造例4の冷却用材と比較して、冷却成分をより多く放出できることが分かった。また、ジェルタイプの冷却スプレー剤のほうが、氷状タイプの冷却スプレー剤と比較して、冷却用材に保持される量が多いことも分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの断熱層を含む2層以上の積層構造を有する、冷却剤を適用するための冷却用材。
【請求項2】
更にダブルラッセル構造を有する層を含む、請求項1に記載の冷却用材。
【請求項3】
冷却剤が冷却スプレー剤である請求項1または2に記載の冷却用材。
【請求項4】
冷却スプレー剤が乳酸メンチルを含有する、請求項3に記載の冷却用材。
【請求項5】
冷却スプレー剤がジェル状のエアゾールスプレーである、請求項4に記載の冷却用材。
【請求項6】
請求項1または2に記載の冷却用材と、乳酸メンチルを含有する冷却スプレー剤とを組み合わせた、冷却材セット。
【請求項7】
冷却スプレー剤がジェル状のエアゾールスプレーである、請求項6に記載の冷却材セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144478(P2012−144478A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4040(P2011−4040)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】