説明

冷却系部品の支持構造

【課題】 簡単な構造で、車体を大型化することなく軽衝突時に冷却系部品を確実に保護することができる冷却系部品の支持構造を得る。
【解決手段】 冷却ユニットの支持構造10では、フロントバンパ14を構成するバンパリインフォースメント16の後方に配置された冷却ユニット12は、その上端がバンパリインフォースメント16の後方に配置されると共に、その下端近傍が第1支持部22によって車体Sに対し車幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に支持されている。また、前端にバンパリインフォースメント16が架け渡された左右のサイドメンバ20と冷却ユニット12との間には、該冷却ユニット12の第1支持部16廻りの回動を阻止する第2支持部30が設けられており、第2支持部30は、所定値以上の後向きの荷重がバンパリインフォースメント16から冷却ユニット12に入力されると、上記冷却ユニット10の回動を阻止する支持状態が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車体前部においてラジエータや空調用コンデンサ等の冷却系部品を支持するための冷却系部品の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、ラジエータと空調用コンデンサとを一体化した冷却ユニットがエンジンルームの前部に配置されている。従来の冷却ユニットの支持構造では、ラジエータの下端から突設した係止突起がラジエータサポートのロアクロスメンバの支持孔に挿入されると共に、ラジエータの上端がラジエータサポートのアッパメンバにブラケットを介して接続されることで、車体に対し支持されている。この冷却ユニットの前方には、フロントバンパのバンパリインフォースメントが配設されている。バンパリインフォースメントは、左右のサイドメンバの前端を架け渡すように設けられている。車両の前突時には、バンパリインフォースメントが後方に変位しつつ、衝撃を吸収するようになっている。
【0003】
しかしながら、上記の如くラジエータの上下端をそれぞれ車体構造部材であるラジエータサポートに変位不能に支持する構造では、車両の軽衝突時にバンパリインフォースメントが冷却ユニットに干渉して冷却ユニットを破損してしまう恐れがある。この対策として、冷却ユニットとバンパリインフォースメントとの車両前後方向に沿う間隔(スペース)を大きくすると、車両のフロントオーバハングを短縮することができなくなる。
【0004】
そこで、衝突時に該コンデンサやインタクーラを保護するための支持構造が考えられている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。特許文献1記載の支持構造では、コンデンサの左右両端にそれぞれエアガイドが一体的に取り付けられており、各エアガイドの下端から突設した左右一対の矩形ピンを車体のロアパネルの矩形孔にそれぞれ挿入すると共に、各エアガイドの上端から突設した左右一対の円形ピンを車体のアッパパネルの円形孔に挿入して、コンデンサをアッパパネルとロアパネルとの間に挟持している。各エアガイドにおける前方に伸びて車外から導入した空気をコンデンサに導く平板部の上下方向中間部に形成された切欠部には、フロントバンパのバンパリインフォースメントが入り込んでいる。また、各矩形ピン及び各円形ピンは、それぞれ上記平板部よりも車幅方向内側に位置しており、各矩形ピンはそれぞれ脆弱構造とされている。
【0005】
そして、車両の軽衝突時には、バンパリインフォースメントからの衝撃荷重がエアガイドの平板部に入力され、このエアガイドにおける平板部よりも車幅方向内側に位置する各矩形ピンが捩れて破断し、コンデンサの下端は車体に対し自由になる。バンパリインフォースメントがさらに後方に移動すると、コンデンサは、各エアガイドの円形ピンを介し車体に保持されつつ、左右の円形ピンを結ぶ仮想直線を軸線として車体に対し回動して後方に退避することで、破損が防止される。
【特許文献1】特開2002−286392号公報
【特許文献2】特開平7−47845号公報
【特許文献3】特開2001−158223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の如き従来のコンデンサの支持構造は、バンパリインフォースメントがコンデンサの高さ方向中央部に位置しているため、バンパリインフォースメントからの荷重によってコンデンサに大きな回転モーメントを付与し難い構成であった。そこで、この支持構造では、軽衝突時の荷重によってコンデンサの後方への退避を可能とするために、鉛直軸廻りに回動して破断する矩形ピンをエアガイドに設けなければならず、構造が複雑であり、またエアガイドの平板部を上記軽衝突時の荷重に耐える構造としなければならなかった。また、説明は省略したが、特許文献3記載の構成では、フロントパンパへの軽衝突時にコンデンサは、車体への支持状態が解除されず、後方に退避して保護されることがない。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、簡単な構造で、車体を大型化することなく軽衝突時には冷却系部品を保護することができる冷却系部品の支持構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、フロントバンパの骨格部材の後方に配置された冷却系部品を車体に対し支持する冷却系部品の支持構造であって、前記冷却系部品における前記骨格部材よりも上又は下に位置する部分を、車体に対し車幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に支持する第1支持部と、前記冷却系部品における前記骨格部材の後方にオーバラップする部分又は該オーバラップ部分よりも前記第1支持部側の部分と車体との間に設けられ、該冷却系部品を車体に対する前記第1支持部廻りの回動不能に支持し、前記骨格部材から前記冷却系部品に所定値以上の後向き荷重が作用すると該支持状態が解除される第2支持部と、を備えている。
【0009】
請求項1記載の冷却系部品の支持構造では、冷却系部品は、通常は、第1支持部によって車幅方向に沿う軸線廻りの回動が許容されるように支持されると共に、第2支持部によって該回動が阻止された状態で支持されている。車両の前突によってフロントバンパの骨格部材が冷却系部品に当接し、該冷却系部品に所定値以上の後向きの荷重が作用すると、第2保持部による冷却系部品の上記支持状態が解除される。その後、冷却系部品は、骨格部材から入力された回動力にて第1支持部廻りに回動する。これにより、上記第2支持部の支持状態を解除する荷重の所定値が、冷却系部品を損傷する荷重よりも小さく設定されいれば、冷却系部品の損傷が防止される。このため、骨格部材と冷却系部品とを軽衝突時に干渉するに配置しても冷却系部品が損傷することがなく、該骨格部材と冷却軽部品との車体前後方向に沿う間隔を小さく設定することができる。
【0010】
ここで、第2支持部が、冷却系部品における骨格部材の後方にオーバラップする部分、又は該オーバラップ部分よりも第1支持部側に位置するため、換言すれば、冷却系部品における後向きの荷重入力部又は該荷重入力部よりも回動中心側に第2支持部が位置するため、軽衝突時の比較的小さい荷重によって第2支持部による上記支持状態を確実に解除することができる。これにより、骨格部材から冷却系部品に直接的に荷重が入力される簡単な構成としても、軽衝突時に冷却系部品を確実に保護することができる。
【0011】
このように、請求項1記載の冷却系部品の支持構造では、簡単な構造で、車体を大型化することなく軽衝突時に冷却系部品を確実に保護することができる。なお、本発明におけるフロントバンパの骨格部材は、独立した骨格部材の他、例えばカバー部材やクッション部材と一体化されたものの強度部材相当部分(のうち、水平に後方に移動して冷却系部品に当接する部分)を含む。また、本発明におけるオーバラップ部分は、冷却系部品における骨格部材が水平方向に投影される部分(水平に相対移動した場合に骨格部材に当接する部分)である。
【0012】
請求項2記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項1記載の冷却系部品の支持構造において、前記冷却系部品は、上端部が前記骨格部材の後方に位置すると共に、下端部が前記第1支持部によって車体に対し支持されている。
【0013】
請求項2記載の冷却系部品の支持構造では、下端部が第1支持部によって車体に対し回転可能に支持された冷却系部品は、車両の前突時には、その上端部が骨格部材によって後方に押圧される。このため、冷却系部品における第1支持部から荷重入力部位までの長さ、すなわち冷却系部品を第1支持部廻りに回動させるモーメントの腕が長く、骨格部材から冷却系部品に入力される一層小さい荷重によって、第2支持部による支持状態を解除することができる。
【0014】
請求項3記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項2記載の冷却系部品の支持構造において、前記骨格部材は、車体を構成する左右のサイドメンバの先端間に架け渡されており、前記第2支持部は、前記冷却系部品の上端を前記サイドメンバに対し支持している。
【0015】
請求項3記載の冷却系部品の支持構造では、第2支持部は、先端に骨格部材が架け渡された左右のサイドメンバと冷却系部品の上端との間に設けられている。すなわち、第2支持部は、冷却系部品における第1支持部から上下方向にもっとも離間して位置する、骨格部材の後方にオーバラップする部分に配置されている。このため、通常時に第2支持部が冷却系部品の第1支持部廻りの回動を阻止するために生じさせるモーメントの腕も長くなり、第2支持部は、サイドメンバと冷却系部品との間で作用させる保持力が小さくても、通常時には、冷却系部品の第1支持部廻りの回動を確実に阻止することができる。また、サイドメンバは、剛性が高く、骨格部材から冷却系部品に荷重が入力された際の変位(変形量)が少ないので、第2支持部が支持状態を解除するときの反力を良好に支持する。このため、第2支持部は、骨格部材から冷却系部品に所定値以上の荷重が入力されると、その支持状態を確実に解除する。以上により、第2支持部を小型かつ簡単な構造で構成することが可能になる。
【0016】
請求項4記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項2又は請求項3記載の冷却系部品の支持構造において、前記冷却系部品を、上端が下端よりも前方に位置するように傾斜して配置した。
【0017】
請求項4記載の冷却系部品の支持構造では、冷却系部品は、骨格部材の後方に位置する上端が第1支持部に支持された下端よりも前方に位置するように傾斜している。これにより、冷却系部品の上端を骨格部材に近接させて冷却系部品の後方空間を確保したり、比較的背の高い冷却系部品を配置したりすることが可能となる。
【0018】
請求項5記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の冷却系部品の支持構造において、前記第2支持部は、前記冷却系部品に設けられた被保持部と、前記車体に設けられ前記被保持部を保持する保持部とを有しており、かつ前記被保持部と保持部とは、前記骨格部材から前記冷却系部品に所定値以上の後向き荷重が作用したときに破損することなく分離するように着脱可能に構成されている、ことを特徴としている。
【0019】
請求項5記載の冷却系部品の支持構造では、通常は被保持部が保持部に保持(装着)されて冷却系部品の第1支持部廻りの回動が阻止されている。そして、骨格部材から冷却系部品に後向きの荷重が入力されると、保持部と被保持部とは、互いに損傷することなく分離(離脱)する。第2支持部による支持状態が解除された冷却系部品は、第1支持部廻りに回動して上記のとおり保護される。ここで、保持部と被保持部とは、衝突時に破損することなく分離するため、再使用することができ、修理費用が抑制される。特に、冷却系部品の車体に対する取り外し作業が不要となるため、修理費用の低減効果が大きい。
【0020】
請求項6記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項5記載の冷却系部品の支持構造において、前記被保持部及び保持部の何れか一方は、車幅方向に沿うピン部材であり、前記被保持部及び保持部の他方は、前記ピン部材を入り込ませて保持する収容部と、該収容部に連通され前記ピン部材との分離方向に開口した切欠部とを有し、前記骨格部材から前記冷却系部品に所定値以上の後向き荷重が作用すると弾性変形しつつ前記収容部内の前記ピン部材を前記切欠部から離脱させる弾性保持部材である。
【0021】
請求項6記載の冷却系部品の支持構造では、通常はピン部材が弾性保持部材の収容部に入り込むことで、冷却系部品の第1支持部廻りの回動が阻止されている。そして、骨格部材から冷却系部品に後向きの荷重が入力されると、ピン部材が弾性保持部材に対し相対移動しようと係合することに伴い弾性保持部材が弾性変形し、弾性保持部材におけるピン部材の分離方向に開口した切欠部をピン部材が通過する。このように、第2支持部は、ピン部材と弾性保持部材とを有する簡単な構造で、通常は冷却系部品の回動を阻止し、衝突時に損傷することなく冷却系部品の回動を許容する機能が実現される。
【0022】
請求項7記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の冷却系部品の支持構造において、前記第1支持部は、前記冷却系部品及び前記車体の何れか一方に設けられた軸部材と、前記冷却系部品及び前記車体の他方に設けられ前記軸部材を回転自在に軸支する軸受部材とを有し構成されている。
【0023】
請求項7記載の冷却系部品の支持構造では、第1支持部は、軸部材と、この軸部材を回転可能に軸支する軸受部材とを含んで構成され、冷却系部品を軸部材廻りに回動自在に軸支している。このため、軽衝突時の冷却系部品の回動に伴って、車体との間に設けた部材や車体自体が塑性変形したり破損等したりすることがない。すなわち、軽衝突後に修理が必要になる部位又は部品が生じることが防止される。
【0024】
請求項8記載の発明に係る冷却系部品の支持構造は、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の冷却系部品の支持構造において、前記第1支持部は、車両の左右の前輪を連結してロールを抑制するためのスタビライザと、前記冷却系部品の下端部に設けられ前記スタビライザに回転可能に嵌合する軸支持部とで構成されている。
【0025】
請求項8記載の冷却系部品の支持構造では、第1支持部は、スタビライザを冷却系部品の下端部に設けた軸支持部に嵌合させることで、冷却系部品を車体に対するスタビライザ廻りの回動自在に軸支している。このため、軽衝突時の冷却系部品の回動に伴って、車体との間に設けた部材や車体自体が塑性変形したり破損等したりすることがない。すなわち、軽衝突後に修理が必要になる部位又は部品が生じることが防止される。また、冷却系部品の質量を利用してサスペンションの振動を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明に係る冷却系部品の支持構造では、簡単な構造で、車体を大型化することなく軽衝突時には冷却系部品を確実に保護することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る冷却系部品の支持構造を自動車に適用した例である冷却ユニットの支持構造10について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、図中矢印FRは車体の前方向を、矢印UPは車体の上方向を、矢印INは車幅内側方向をそれぞれ示す。
【0028】
図1には、冷却ユニットの支持構造10が適用された自動車車体(以下、単に車体という)Sの前部を構成するエンジンルーム内の概略の構造が斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体Sは、冷却系部品としての冷却ユニット12を備えている。本第1の実施形態では、冷却ユニット12は、ラジエータ12Aと該ラジエータ12Aの前方に配置された空調用コンデンサ12Bと、ラジエータ12Aの背面側に取り付けられたファンユニット12Cとで構成されている。
【0029】
この冷却ユニット12の前方には、フロントバンパ14を構成する骨格部材としてのバンパリインフォースメント16が配設されている。バンパリインフォースメント16は、車幅方向に長手とされ、左右両端が後方に向けて湾曲(又は屈曲)して構成されている。このため、図2及び図3に示される如く、冷却ユニット12は、左右方向中央部よりも両端部の方がバンパリインフォースメント16に近接している。
【0030】
このバンパリインフォースメント16における冷却ユニット12よりも車幅方向外側に位置する左右両端近傍は、それぞれ車体骨格部材である左右のサイドメンバ20(各図において一方のサイドメンバ20のみを図示している)の先端に、直接的に又は図示しないクラッシュボックス等を介して固定されている。すなわち、バンパリインフォースメント16は、左右のサイドメンバ20の先端間に架け渡されており、これら各サイドメンバ20と同じ高さに位置している。
【0031】
図3に示される如く、本第1の実施形態では、バンパリインフォースメント16は、冷却ユニット12の上端の前方にオーバラップして位置している。したがって、左右のサイドメンバ20は、冷却ユニット12の上端を挟むように位置している。このバンパリインフォースメント16がフロントバンパカバー18にて覆われてフロントバンパ14が構成されている。また、この図に示される如く、冷却ユニット12は、その上端と下端との前後方向の位置がほぼ一致するように、略直立している。本第1の実施形態の冷却ユニット12は、上下方向に沿う高さが比較的低い型式とされている。
【0032】
この冷却ユニット12は、第1支持部22によって、図3に想像線にて示すように、車体に対し車幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に支持されている。具体的には、第1支持部22は、ラジエータ12Aの左右両側部の下端近傍からそれぞれ車幅方向に沿って同軸的に突設された左右一対の軸部材24と、車体の下部骨格部材26に固定され各軸部材24をそれぞれ回転自在に軸支する左右一対の軸受部材28とで構成されている。これにより、冷却ユニット12は、車体に対して、その下端近傍に位置する軸部材24の軸心廻りに回動可能とされている。車体の下部骨格部材26は、例えば、ラジエータサポートロアクロスメンバや井型サスペンションメンバ(井型サブフレーム)等とされる。
【0033】
そして、冷却ユニット12は、第2支持部30によって車体に対し支持され、通常は上記軸部材24(第1支持部22)の軸心廻りの回動が規制される構成とされている。具体的には、第2支持部30は、左右のサイドメンバ20からそれぞれ車幅方向に沿って突設された保持部又は被保持部としての左右一対の取付ピン32と、ラジエータ12Aの左右両側部の上端近傍に設けられ各取付ピン32を入り込ませる左右一対のブッシュ部材34とで構成されている。
【0034】
図4(A)に示される如く、ブッシュ部材34は、内径が取付ピン32の外径に略対応し該取付ピン32を入り込ませる収容部34Aと、収容部に連通するピン離脱用切欠部34Bとを有し、本第1の実施形態では全体として前方に開口する略C字状に形成されている。そして、このブッシュ部材34は、ゴムや樹脂等の弾性材にて、ピン離脱用切欠部34Bの開口幅が取付ピン32の外径よりも若干小となるように構成されている。これにより、第2支持部30は、ブッシュ部材34の収容部34A内に取付ピン32を入り込ませることで、通常は冷却ユニット12の上記軸部材24廻りの回動を規制する構成とされている。
【0035】
一方、第2支持部30は、冷却ユニット12に後向きの所定値以上の荷重が作用すると、ブッシュ部材34が、その収容部34A内面に係合する取付ピン32との相対変位によってピン離脱用切欠部34Bを広げるように弾性変形し、図4(B)に示す如く取付ピン32から離脱するようになっている。すなわち、ブッシュ部材34と取付ピン32とは、冷却ユニット12に作用する所定値以上の後向きの荷重(に基づく軸部材24廻りのモーメント)によって、互いに破損や破断等の損傷を負うことなく分離する着脱(再使用)可能な構成とされている。この荷重の所定値は、冷却ユニット12の強度上問題のない(破損に至ることのない)荷重として設定されている。
【0036】
次に、本第1の実施形態の作用を説明する。
【0037】
上記構成の冷却ユニットの支持構造10が適用された自動車では、通常冷却ユニット12は、第1支持部22及び第2支持部30にそれぞれ支持されることで、車体Sに対し変位することなく、例えばエンジン冷却水やエアコン用冷媒の冷却を行なう。
【0038】
この自動車のフロントバンパ14に前方から衝突物C(図2参照)が軽く衝突すると(軽衝突すると)、バンパリインフォースメント16は、変形して後方に移動し、冷却ユニット12に当接しつつ該冷却ユニット12を後方に押圧する。このとき、冷却ユニット12に作用する後向きの荷重が所定値以上であると、第2支持部30は、冷却ユニット12側のブッシュ部材34が変形して車体S側の取付ピン32から分離する。
【0039】
すると、冷却ユニット12は、第1支持部22の軸部材24廻りの回動可能な状態となり、バンパリインフォースメント16から入力する荷重を回動力として該軸部材24廻りに後方に回動する。すなわち、冷却ユニット12が後方に退避する。これにより、冷却ユニット12は、衝突に伴い上記所定値(ブッシュ部材34が取付ピン32から分離するときの実荷重)を超える荷重が作用することがなく、衝撃に対し保護される。
このように、冷却ユニット12を、軽衝突時にバンパリインフォースメント16が干渉するように配置しても該冷却ユニット12が保護されるので、これらの間隔を小さくしてフロントオーバハングを小さく抑えることができる。
【0040】
ここで、第2支持部30が、冷却ユニット12におけるバンパリインフォースメント16骨格部材の後方にオーバラップする部分と車体との間に設けられているため、換言すれば、冷却ユニット12における後向きの荷重入力部に第2支持部30が位置するため、従来の如くコンデンサの上下の支持部間に荷重が入力する構成と比較して、小さい荷重によって第2支持部30による上記支持状態を確実に解除することができる。
【0041】
特に、冷却ユニット12は、その下端近傍が第1支持部22にて回動可能に支持されると共に、その上端にバンパリインフォースメント16から荷重が入力される構成であるため、冷却ユニット12を軸部材24廻りに回動するためのモーメント腕が長い。このため、バンパリインフォースメント16から冷却ユニット12に入力する一層小さい荷重によって、第2支持部30による支持状態を解除することができる。
【0042】
また、第2支持部30を介し冷却ユニット12の上端を支持するサイドメンバ20は、剛性が高く(軽衝突程度の荷重に対し十分な剛性を有し)、バンパリインフォースメント16から冷却ユニット12に荷重が入力された際の変位(変形量)が少ないので、第2支持部30が支持状態を解除する(取付ピン32とブッシュ部材34とが分離する)際の反力を良好に支持する。このため、第2支持部30は、バンパリインフォースメント16から冷却ユニット12に所定値(単に取付ピン32とブッシュ部材34とを分離するのに要する荷重)以上の荷重が入力されると、その支持状態を確実に解除する。
【0043】
以上により、バンパリインフォースメント16から冷却ユニット12に直接的に荷重が入力される簡単な構成としても、軽衝突時に冷却ユニット12を確実に保護することができる。すなわち、従来の如く、矩形ピン等を有するエアガイドを設けたり、該エアガイドの平板部を強固に構成したりする必要のない簡単な構造によって、冷却ユニット12を軽衝突に対し確実に保護することができる。また、バンパリインフォースメント16が冷却ユニット12を直接的に押圧する構成によって、例えば、ポール衝突等のバンパリインフォースメント16の長手方向に局部的に荷重が入力される衝突形態であっても、冷却ユニット12は第2支持部30による支持状態が確実に解除されて軸部材24廻りに回動し、上記のとおり保護される。
【0044】
このように、本実施の形態に係る冷却ユニットの支持構造10では、簡単な構造で、車体を大型化することなく軽衝突時には冷却ユニット12を確実に保護することができる。
【0045】
さらに、第2支持部30が冷却ユニット12の上端とサイドメンバ20との間に設けられているため、通常時に第2支持部30が冷却ユニット12の軸部材24廻りの回動を阻止するためのモーメントの腕も長い。このため、第2支持部30は、サイドメンバ20と冷却ユニット12と(取付ピン32とブッシュ部材34と)の間で作用させる保持力が小さくても、通常時には、冷却ユニット12の軸部材24廻りの回動を確実に阻止することができる。これにより、本冷却ユニットの支持構造10では、第2支持部30を取付ピン32とブッシュ部材34とで構成する小型かつ簡単な構造が実現されている。
【0046】
すなわち、この第2支持部30を、取付ピン32と、該取付ピン32を入り込ませる収容部34A及びピン離脱用切欠部34Bを有する弾性変形可能なブッシュ部材34とで構成したため、第2支持部30は、簡単な構造で、通常は冷却ユニット12の回動を阻止し、軽衝突時に分離して冷却ユニット12の回動を許容し、軽衝突後に再度取付状態に復帰するという各機能を実現している。これにより、軽衝突後における修理費用が安くなる。特に、この第2支持部30を再利用可能とする構成によって、修理の際に冷却ユニット12を車体から取り外す作業が不要となるため、修理費用の低減効果が大きい。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る冷却ユニット12の支持構造50について、図5に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図5に示される如く、冷却ユニット12の支持構造50は、冷却ユニット12が前傾状態で支持されている点で、冷却ユニット12を略直立状態で支持する第1の実施形態とは異なる。具体的には、サイドメンバ20における第2支持部30を構成する取付ピン32の取付位置を、上記第1の実施形態における同位置よりも前方に配置することで、冷却ユニット12は、その上端が下端よりも前方に位置する前傾姿勢にて支持されている。したがって、冷却ユニット12は、バンパリインフォースメント16の背面に対し、より近接して位置している。冷却ユニット12の支持構造50の他の構成は、上記第1の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造10と全く同様である。
【0049】
本冷却ユニット12の支持構造50では、上記ように冷却ユニット12を前傾することにより、例えば、冷却ユニット12の後方に大きなスペースを確保して部品レイアウトの自由度を高めたり、冷却ユニット12を通過した空気の排出抵抗を減じたり、比較的背の高い冷却ユニット12を搭載したりすることが可能になるメリットがある。
【0050】
そして、この冷却ユニット12を第1支持部22と第2支持部30とで車体Sに対し支持しているため、上記のように冷却ユニット12の上端がバンパリインフォースメント16の背面に近接する本構成においても、上記第1の実施形態と同様に、軽衝突時に冷却ユニット12を確実に保護することができる。すなわち、本発明に係る冷却系部品の支持構造が、冷却ユニット12を前傾して上記各メリットを得る構成に良好に適用される。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る冷却ユニット12の支持構造60について、図6及び図7に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図6に示される如く、冷却ユニット12の支持構造60は、冷却ユニット12の下端がフロントサスペンションを構成するスタビライザ62に支持されている点で、冷却ユニット12の下端が第1支持部22を介して車体Sの下部骨格部材26にされている第1及び第2の実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0053】
スタビライザ62は、長手方向が車幅方向と略一致した捩れ部62Aと、捩れ部62Aの左右両単からそれぞれ略後方に向けて延設された左右一対の連結部62Bとを有し、平面視で後方に開口する略コ字状に形成されている。各連結部62Bの先端は、それぞれ対応するロアアーム(左右の車輪)64に連結されている。また、中実円柱状に形成された捩れ部62Aの端部近傍は、それぞれ支持部材66を介して略井型に形成されたサスペンションメンバ(サブフレーム)68に支持されている。これにより、スタビライザ62は、左右の車輪が逆位相の動きをすると捩れ部62Aが捩れて反力を生じるようになっており、ロール剛性を向上する構成である。
【0054】
そして、図7にも示される如く、冷却ユニット12は、第1支持部70によって車体に対し後方への回動可能に支持されている。具体的には、第1支持部70は、スタビライザ62の捩れ部62Aと、冷却ユニット12の下端から突設された軸支持部72とで構成されている。本第3の実施形態では、軸支持部72は冷却ユニット12の左右両端近傍にそれぞれ1つずつ設けられている。各軸支持部72は、それぞれスタビライザ62の外周面に倣う円弧状のガイド面74Aを有する前後一対の支持片74を有し、全体としては下方に開口する略C字状に形成されている。
【0055】
各支持片74は、互いの開口端の間隔を拡縮するように弾性変形可能とされており、該開口端を上方からスタビライザ62の捩れ部62Aに押し付けることで、該スタビライザ62に取り付けられる構成である。これにより、冷却ユニット12は、スタビライザ62の捩れ部62Aの弾性的な捩れ変形を阻害することなく、該スタビライザ62(車体に対する)回動自在に軸支されている。
【0056】
なお、図示は省略するが、冷却ユニット12の上端が、バンパリインフォースメント16の後方にオーバラップして位置し、第2支持部30を介してサイドメンバ20に支持される点は、上記第1又は第2実施形態と同様である。また、冷却ユニット12は、第1実施形態のように略直立状態で支持されても良く、第2実施形態のように前傾状態に支持されても良い。
【0057】
本冷却ユニット12の支持構造60では、上記第1又は第2の実施形態と同様の効果が得られる他、以下に示す効果を有する。先ず、スタビライザ62に冷却ユニット12を支持させるため、フロントサスペンション(サスペンションメンバ68やスタビライザ62)が構成する振動系のマスダンパ(質量要素)として機能し、振動振幅を抑えることが出きる。また、下部骨格部材26を廃止して、部品点数の削減、軽量化を図ることが可能となる。以上のように、冷却ユニット12の下端を回動自在に支持する構成を採用することで、該冷却ユニット12の支持部材としてスタビライザ62を用いることが可能となり、この構成によって上記各種効果を得ることが実現される。
【0058】
なお、上記各実施形態では、冷却ユニット12は、上端がバンパリインフォースメント16の後方に位置すると共に、下端が軸部材24廻りに回動可能に支持される構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、冷却ユニット12の上端を回動可能支持すると共に、冷却ユニット12の下端又は高さ方向中間部にバンパリインフォースメント16が当接するようにしても良い。
【0059】
また、上記各実施形態では、冷却ユニット12とサイドメンバ20との間に第2支持部30を配設した構成としたが、本発明はこれに限定されず、第2支持部30は、冷却ユニット12におけるバンパリインフォースメントとのオーバラップ部分よりも第1支持部22側に位置しても良い。したがって、例えば、第2支持部30をラジエータサポートサイド等とラジエータ12Aの左右両側部との間に設けても良く、第2支持部30を軸部材24廻りに配設しても良い。さらに、第2支持部30は、取付ピン32とブッシュ部材34とから成る構成に限定されることはなく、各種構成を採用することができ、冷却ユニット12へ所定値以上の荷重入力時に破断して支持状態を解除するものであっても良い。このように破断する構成であっても、例えば、サイドメンバ20とラジエータ12Aの側面との間に第2支持部30を設けることで、修理に際して冷却ユニット12を車体Sから取り外す必要のない構成とすることが可能である。また、第2支持部30は、ブッシュ部材34をサイドメンバ20に設けると共に、取付ピン32をラジエータ12Aに設けることで構成されても良いことは言うまでもない。
【0060】
さらに、上記各実施形態では、冷却ユニット12が、軸部材24と軸受部材28とから成る第1支持部22又はスタビライザ62と軸支持部70とによって、車体Sに対する回動自在に支持される構成としたが、本発明はこれに限定されず、冷却ユニット12を車体に対し回動可能に支持する各種構造を採用することが可能である。したがって例えば、車体Sの下部骨格部材26に取り付けた軸部材をラジエータ12Aの側壁に設けた孔に回動可能に挿入する構造を採用したり、冷却ユニット12の回動に伴って復元力や減衰力等の反力を生じさせる構成を採用したりすることができる。
【0061】
さらにまた、上記各実施形態では、フロントバンパ14がバンパリインフォースメント16とバンパカバ18とで構成されている例を示したが、本発明はこれに限定されず、本は名が適用される車両は、骨格部材として把握される部材(部分)を有する如何なる形式のフロントバンパを備えて構成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造を構成する第2支持部を拡大して示す図であって、(A)は支持状態の断面図、(B)は支持解除状態の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造の側面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る冷却ユニットの支持構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る冷却ユニットの要部を拡大して示す側断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 冷却ユニットの支持構造(冷却系部品の支持構造)
12 冷却ユニット(冷却系部品)
14 フロントバンパ
16 バンパリインフォースメント(骨格部材)
20 サイドメンバ(車体)
22 第1支持部
24 軸部材
28 軸受部材
30 第2支持部
32 取付ピン(ピン部材、保持部、被保持部)
34 ブッシュ部材(弾性保持部材、被保持部、保持部)
34A 収容部
34B ピン離脱用切欠部(切欠部)
50・60 冷却ユニットの支持構造(冷却系部品の支持構造)
62 スタビライザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパの骨格部材の後方に配置された冷却系部品を車体に対し支持する冷却系部品の支持構造であって、
前記冷却系部品における前記骨格部材よりも上又は下に位置する部分を、車体に対し車幅方向に沿う軸線廻りに回動可能に支持する第1支持部と、
前記冷却系部品における前記骨格部材の後方にオーバラップする部分又は該オーバラップ部分よりも前記第1支持部側の部分と車体との間に設けられ、該冷却系部品を車体に対する前記第1支持部廻りの回動不能に支持し、前記骨格部材から前記冷却系部品に所定値以上の後向き荷重が作用すると該支持状態が解除される第2支持部と、
を備えた冷却系部品の支持構造。
【請求項2】
前記冷却系部品は、上端部が前記骨格部材の後方に位置すると共に、下端部が前記第1支持部によって車体に対し支持されている、請求項1記載の冷却系部品の支持構造。
【請求項3】
前記骨格部材は、車体を構成する左右のサイドメンバの先端間に架け渡されており、
前記第2支持部は、前記冷却系部品の上端を前記サイドメンバに対し支持している、
請求項2記載の冷却系部品の支持構造。
【請求項4】
前記冷却系部品を、上端が下端よりも前方に位置するように傾斜して配置した、請求項2又は請求項3記載の冷却系部品の支持構造。
【請求項5】
前記第2支持部は、前記冷却系部品に設けられた被保持部と、前記車体に設けられて前記被保持部を保持する保持部とを有しており、
かつ前記被保持部と保持部とは、前記骨格部材から前記冷却系部品に所定値以上の後向き荷重が作用したときに破損することなく分離するように着脱可能に構成されている、
請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の冷却系部品の支持構造。
【請求項6】
前記被保持部及び保持部の何れか一方は、車幅方向に沿うピン部材であり、
前記被保持部及び保持部の他方は、前記ピン部材を入り込ませて保持する収容部と、該収容部に連通され前記ピン部材との分離方向に開口した切欠部とを有し、前記骨格部材から前記冷却系部品に所定値以上の後向き荷重が作用すると弾性変形しつつ前記収容部内の前記ピン部材を前記切欠部から離脱させる弾性保持部材である、
請求項5記載の冷却系部品の支持構造。
【請求項7】
前記第1支持部は、前記冷却系部品及び前記車体の何れか一方に設けられた軸部材と、前記冷却系部品及び前記車体の他方に設けられ前記軸部材を回転自在に軸支する軸受部材とを有し構成されている、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の冷却系部品の支持構造。
【請求項8】
前記第1支持部は、車両の左右の前輪を連結してロールを抑制するためのスタビライザと、前記冷却系部品の下端部に設けられ前記スタビライザに回転可能に嵌合する軸支持部とで構成されている、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の冷却系部品の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−36039(P2006−36039A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219080(P2004−219080)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】