説明

冷却装置およびこれを搭載する車両並びに冷却装置の制御方法

【課題】電動ファンをより確実に起動すると共に電動ファンの起動直後の動作音の高まりを抑制する。
【解決手段】冷却ファン制御ルーチンの開始からファンモータの回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至るまで(S110)、冷却ファンの制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが高いほど指令デューティ比Dが小さくなるようにスイッチング回路を介してファンモータを制御する(S120〜S150,S190)。これにより、ファンモータをより確実に起動すると共にファンモータの起動時にファンモータの回転数Nfmが必要以上に高まることに起因した冷却ファンの動作音の高まりを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置およびこれを搭載する車両並びに冷却装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されてファンの作動によりバッテリを冷却する装置として、バッテリの温度が規定上限温度以下であるときに、バッテリの温度や発熱量から要求される制御デューティ比を車両速度に基づくファンの作動音の聴感上許容できるノイズレベルを考慮した制御デューティ比により制限してファンを駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、この種のバッテリ冷却装置としては、バッテリの温度に加えて車速やエンジン回転数に基づく騒音を考慮したデューティ比を用いてファンを駆動するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−178815号公報
【特許文献2】特開2005−184979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような冷却装置では、バッテリなどの冷却対象を冷却すべきときにファンが確実に起動されるようにする必要がある。しかしながら、ファンを確実に起動させるためにファン起動時のデューティ比を大きく設定すると、ファンの回転数が必要以上に高まって動作音が大きくなってしまうことがある。
【0004】
本発明の冷却装置、これを搭載する車両および冷却装置の制御方法は、電動ファンをより確実に起動すると共に電動ファンの起動直後の動作音の高まりを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の本発明の冷却装置、これを搭載する車両および冷却装置の制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の冷却装置は、
電源と、該電源からの電力により駆動されて所定の冷却対象を冷却するように空気を送風可能な電動ファンとを有する冷却装置であって、
前記電源と前記電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段と、
前記電源の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記冷却対象を冷却すべきときに前記電動ファンから空気が送風されるように前記スイッチング手段を制御すると共に、前記電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、該起動条件の成立時に前記電圧検出手段により検出された電圧が高いほどデューティ比が小さくなるように前記スイッチング手段を制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の冷却装置では、冷却対象を冷却すべきときに電源からの電力により駆動される電動ファンから空気が送風されるように電源と電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段を制御すると共に、電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、起動条件の成立時の電源の電圧が高いほどデューティ比が小さくなるようにスイッチング手段を制御する。これにより、電動ファンの起動条件の成立時における電源の電圧が比較的低いときには電動ファンを駆動する電力の実効電圧を確保して電動ファンの起動時の出力トルクが小さくなりすぎるのを抑えると共に、電動ファンの起動条件の成立時における電源の電圧が比較的高いときには電動ファンを駆動する電力の実効電圧が大きくなるのを抑制して電動ファンの起動時の出力トルクが大きくなりすぎるのを抑えることができる。したがって、この本発明の冷却装置では、電動ファンをより確実に起動すると共に電動ファンの起動直後に電動ファンの回転数が必要以上に高まることに起因した電動ファンの動作音の高まりを抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の冷却装置において、前記冷却対象の温度を取得する温度取得手段と、前記温度取得手段により取得された温度に基づいて前記電動ファンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、を更に備え、前記起動条件は、前記温度取得手段により取得された温度が所定温度以上になると成立する条件であり、前記解除条件は、前記電動ファンの回転数が前記目標回転数よりも低い所定回転数に達すると成立する条件である、ものとすることもできる。また、この態様の本発明の冷却装置において、前記制御手段は、前記解除条件が成立した後に前記電動ファンの回転数が前記設定された目標回転数に一致するようにデューティ比を設定し、設定したデューティ比に基づいて前記スイッチング手段を制御する手段である、ものとすることもできる。これにより、電動ファンの起動直後に電動ファンの回転数が必要以上に高まることに起因した動作音の高まりを抑制し、電動ファンの回転数がある程度高まってから回転数を速やかに目標回転数に到達させることができる。
【0009】
本発明の車両は、上述の何れかの態様の本発明の冷却装置を搭載し、走行用の動力を出力する電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な前記冷却対象としての蓄電手段と、を備えるものとすることもできる。この本発明の車両では、上述したいずれかの態様の本発明の冷却装置を搭載するから、本発明の冷却装置が奏する効果、例えば、電動ファンの起動直後の動作音の高まりを抑制することができる効果などと同様な効果を奏することができ、電動ファンの起動直後の動作音により乗員に不快感を与えるのを抑制することができる。
【0010】
本発明の冷却装置の制御方法は、
電源と、該電源からの電力により駆動されて所定の冷却対象を冷却するように空気を送風可能な電動ファンと、前記電源と前記電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段と、を有する冷却装置の制御方法であって、
前記冷却対象を冷却すべきときに前記電動ファンから空気が送風されるように前記スイッチング手段を制御すると共に、前記電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、該起動条件の成立時の前記電源の電圧が高いほどデューティ比が小さくなるように前記スイッチング手段を制御する、
ことを要旨とする。
【0011】
この本発明の冷却装置の制御方法では、冷却対象を冷却すべきときに電源からの電力により駆動される電動ファンから空気が送風されるように電源と電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段を制御すると共に、電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、起動条件の成立時の電源の電圧が高いほどデューティ比が小さくなるようにスイッチング手段を制御する。これにより、電動ファンの起動条件の成立時における電源の電圧が比較的低いときには電動ファンを駆動する電力の実効電圧を確保して電動ファンの起動時の出力トルクが小さくなりすぎるのを抑えると共に、電動ファンの起動条件の成立時における電源の電圧が比較的高いときには電動ファンを駆動する電力の実効電圧が大きくなるのを抑制して電動ファンの起動時の出力トルクが大きくなりすぎるのを抑えることができる。したがって、この本発明の冷却装置の制御方法では、電動ファンをより確実に起動すると共に電動ファンの起動時に電動ファンの回転数が必要以上に高まることに起因した電動ファンの動作音の高まりを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例である冷却装置を搭載した車両としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、モータMG1およびMG2と電力をやり取り可能なバッテリ50と、このバッテリ50を冷却するための電動式の冷却ファン55と、バッテリ50の管理および冷却ファン55のコントロールを行なうバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECU52という)と、ハイブリッド自動車20全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという)70とを備える。
【0014】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0015】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0016】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0017】
冷却ファン55は、例えばDCブラシレスモータであるファンモータ55aおよびファンモータ55aの回転軸に取り付けられたファンブレード55bにより構成されており、ファンブレード55bの回転により空気を送風してバッテリ50を冷却可能なものである。ファンモータ55aは、スイッチング回路56を介して、例えば定格出力電圧が12Vの鉛蓄電池として構成された補機バッテリ57と接続され、スイッチング回路56のスイッチングによりデューティ制御される。
【0018】
バッテリECU52は、CPU52aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52aの他に処理プログラムや各種マップなどを記憶するROM52bとデータを一時的に記憶するRAM52cと、図示しない入出力ポートとを備えている。このバッテリECU52は、バッテリ50を管理すると共にスイッチング回路56を介してファンモータ55aを制御する。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50に接続された図示しない電圧センサからの端子間電圧やバッテリ50に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からのバッテリ温度Tbや、冷却ファン55を制御するために必要な信号、例えば、補機バッテリ57の出力端子間に接続された電圧センサ58からの補機バッテリ電圧Vbや、ファンモータ55aに取り付けられた回転数センサ59からのファンモータ55aの回転数Nfmなどが入力ポートを介して入力される。バッテリECU52からは、冷却ファン55を制御するためのスイッチング回路56へのスイッチング制御信号などが出力される。また、バッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70に出力する。
【0019】
ハイブリッドECU70は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶する図示しないROMと、データを一時的に記憶する図示しないRAMと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッドECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0020】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクが計算され、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に冷却ファン55によりバッテリ50を冷却するときの動作について説明する。図2は、バッテリECU52により実行される冷却ファン制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、温度センサ51により検出されるバッテリ50のバッテリ温度Tbが所定の制御開始温度以上になってからバッテリ温度Tbが例えば制御開始温度よりも低い制御終了温度未満になるまで所定時間毎に繰り返し実行される。
【0022】
冷却ファン制御ルーチンが実行されると、バッテリECU52のCPU52aは、まず、回転数センサ59からのファンモータ55aの回転数Nfmを入力する処理を実行し(ステップS100)、入力したファンモータ55aの回転数Nfmを予め定められた制御切換回転数Nchと比較する(ステップS110)。ここで、制御切換回転数Nchは、冷却ファン55の制御方式を切り換えるときの回転数であって、制御方式の切換の前後で回転数が急変しないように実験結果等に基づいて定められる。実施例では、制御切換回転数Nchとして、ファンモータ55aが確実に起動したと判断できる回転数よりも大きく且つ後述する目標回転数Nfm*の最小値よりも小さい回転数を用いている。
【0023】
ファンモータ55aの回転数Nfmを制御切換回転数Nchと比較し、回転数Nfmが制御切換回転数Nch以下のときには、ファンモータ55aの回転数Nfmが値0か否かを判定し(ステップS120)、ファンモータ55aの回転数Nfmが値0のとき、即ち、冷却ファン55の制御が開始されるときには、電圧センサ58からの補機バッテリ電圧Vbを入力すると共に(ステップS130)、補機バッテリ電圧Vbに基づいて冷却ファン55の制御を開始する際の指令デューティ比Dを設定する(ステップS140)。そして、設定したデューティ比Dでファンモータ55aが駆動されるようにスイッチング回路56にスイッチング制御信号を送信して(ステップS190)、冷却ファン制御ルーチンを一旦終了する。ここで、ステップS140で設定される指令デューティ比Dは、補機バッテリ電圧Vbに応じて確実にファンモータ55aが起動できるデューティ比Dの下限値またはこの下限値よりも若干大きい値に設定される。実施例では、補機バッテリ電圧Vbと指令デューティ比Dとの関係を予め定めた指令デューティ比設定用マップがROM52bに記憶されており、補機バッテリ電圧Vbが与えられると記憶されたマップから対応する指令デューティ比Dが設定される。図3に指令デューティ比設定用マップの一例を示す。図3に示す実施例の指令デューティ比設定用マップは、補機バッテリ電圧Vbに拘わらずファンモータ55aの駆動開始時の実効電圧が概ね一定になるように補機バッテリ電圧Vbが大きくなるほど指令デューティ比Dが小さくなる傾向に指令デューティ比Dを設定するものとして作成されている。このような指令デューティ比設定用マップを用いることにより、ファンモータ55aの駆動開始時の回転数Nfmも補機バッテリ電圧Vbに拘わらず概ね一定となる。したがって、冷却ファン55の制御開始時に、補機バッテリ電圧Vbが比較的小さいとき(例えば、9Vのとき)にはファンモータ55aを駆動する電力の実効電圧を確保してファンモータ55aの出力トルクが小さくなりすぎるのを抑えることができると共に、補機バッテリ電圧Vbが比較的大きいとき(例えば、15Vのとき)にはファンモータ55aを駆動する電力の実効電圧が大きくなるのを抑制してファンモータ55aの起動時の出力トルクが大きくなりすぎるのを抑えることができる。
【0024】
こうしてファンモータ55aの制御が開始され、ステップS120においてファンモータ55aの回転数Nfmが値0より大きいと判定されると、本ルーチンの前回実行時に設定した指令デューティ比D(前回デューティ比D)に所定のレート値αを加算した値を指令デューティ比Dに設定し(ステップS150)、設定した指令デューティ比Dでファンモータ55aが駆動されるようにスイッチング回路56にスイッチング制御信号を送信して(ステップS190)、冷却ファン制御ルーチンを一旦終了する。ここで、レート値αは、実験結果等に基づいてファンモータ55aの回転数Nfmがレート処理により徐々に大きくなるように定めることができる。このように指令デューティ比Dを設定することにより、ステップS150の処理が実行される間、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが大きいほど小さい値に指令デューティ比Dが設定されるから、ファンモータ55aの回転数Nfmが必要以上に高まることを抑えることができ、これに起因するファンモータ55aやファンブレード55bの動作音の高まりを抑えて、乗員に不快感を与えるのを抑制することができる。
【0025】
こうした冷却ファン55の制御(ステップS100〜S150,S190)が繰り返されて、ファンモータ55aの回転数Nfmが制御切換回転数Nchより大きくなると(ステップS110)、冷却ファン55の制御方式を切り換えるべきと判定して、温度センサ51からのバッテリ温度Tbを入力すると共に(ステップS160)、バッテリ温度Tbに基づいてファンモータ55aの目標回転数Nfm*を設定し(ステップS170)、目標回転数Nfm*と回転数Nfmとに基づく次式(1)により指令デューティ比Dを設定する(ステップS180)。実施例では、バッテリ温度Tbと目標回転数Nfm*との関係を予め定めた目標回転数設定用マップがROM52bに記憶されており、バッテリ温度Tbが与えられると記憶されたマップから対応する目標回転数Nfm*が導出、設定される。図4に目標回転数設定用マップの一例を示す。図示するように、目標回転数Nfm*は、実施例では、バッテリ温度Tbが比較的低いときにはバッテリ温度Tbが大きくなるほど大きくなる傾向に設定されると共にファンモータ55aの特性を考慮してバッテリ温度Tbが所定温度以上に至るとバッテリ温度Tbに拘わらず一定の値となるように設定される。また、式(1)は、ファンモータ55aを目標回転数Nfm*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(1)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。そして、指令デューティ比Dを設定すると、ファンモータ55aが指令デューティ比Dで駆動されるようにスイッチング回路56に制御信号を送信して(ステップS190)、冷却ファン制御ルーチンを一旦終了する。これにより、回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至った後には、ファンモータ55aは、回転数Nfmが目標回転数Nfm*に一致するようにフィードバック制御されることになる。したがって、ファンモータ55aの回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至った後は、回転数Nfmを速やかに目標回転数Nfm*に到達させることができると共に、ファンモータ55aをバッテリ温度Tbに応じた目標回転数Nfm*で回転させてバッテリ50を冷却することができる。
【0026】
D=前回D+k1(Nfm*-Nfm)+k2∫(Nfm*-Nfm)dt (1)
【0027】
図5に、上述の冷却ファン制御ルーチンが実行されたときの指令デューティ比Dとファンモータ55aを駆動する電力の実効電圧と回転数Nfmとの時間変化の一例を示す。図中実線で示すように、時間t0において冷却ファン制御ルーチンの実行が開始されると、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが比較的小さいとき(例えば、9Vのとき)には、指令デューティ比Dは、補機バッテリ電圧Vbと図3の指令デューティ比設定用マップとに基づいて補機バッテリ電圧Vbが比較的小さくてもファンモータ55aを確実に起動できるように比較的大きい値D9に設定され、回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至る時間t1までレート処理により徐々に大きくなるよう設定される。そして、指令デューティ比Dは、時間t1以降には徐々に回転数Nfmが目標回転数Nfm*に近づくようフィードバック制御により設定される。一方、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが比較的大きいとき(例えば、15Vのとき)には、指令デューティ比Dは、補機バッテリ電圧Vbと図3の指令デューティ比設定用マップとに基づいて値D9よりも小さい値D15に設定され、回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至る時間t1までレート処理により徐々に大きくなるよう設定される。そして、指令デューティ比Dは、時間t1以降には徐々に回転数Nfmが目標回転数Nfm*に近づくようフィードバック制御により設定される。何れにしても、冷却ファン55の制御開始時に指令デューティ比Dは、補機バッテリ電圧Vbに拘わらずファンモータ55aの実効電圧が概ね一定となるように設定され、その後のレート処理により回転数Nfmが制御切換回転数Nchに達するまで、補機バッテリ電圧Vbに拘わらずファンモータ55aの実効電圧は概ね一定となる。したがって、実施例では、ファンモータ55aをより確実に起動すると共にファンモータ55aの起動時の動作音の高まりを抑制することができるのである。なお、図中の破線で示すように、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが比較的大きいときに、指令デューティ比Dとして補機バッテリ電圧Vbが比較的小さくてもファンモータ55aを確実に起動可能とする値D9を用いたときには、実効電圧が大きくなると共にファンモータ55aの回転数Nfmが急上昇して目標回転数Nfmを超えてしまうことがあり、これに伴い動作音が大きくなって乗員に不快感を与えることがある。
【0028】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50を冷却すべきときに冷却ファン55から空気が送風されるようにスイッチング回路56を介してファンモータ55aを制御すると共に、冷却ファン制御ルーチンの開始条件成立時であるバッテリ温度Tbが制御開始温度以上に至ったときからファンモータ55aの回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至るまで、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが高いほど指令デューティ比Dが小さくなるようにスイッチング回路56を制御する。これにより、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが比較的低いときにはファンモータ55aを駆動する電力の実効電圧を確保してファンモータ55aの起動直後の出力トルクが小さくなりすぎるのを抑えると共に、冷却ファン55の制御開始時の補機バッテリ電圧Vbが比較的高いときにはファンモータ55aを駆動する電力の実効電圧が大きくなるのを抑制してファンモータ55aの起動直後の出力トルクが大きくなりすぎるのを抑えることができる。したがって、ファンモータ55aをより確実に起動すると共にファンモータ55aの起動時にファンモータ55aの回転数Nfmが必要以上に高まることに起因した冷却ファン55の動作音の高まりを抑制でき、乗員に不快感を与えるのを抑制することができる。また、ファンモータ55aの回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至った後にファンモータ55aの回転数Nfmが目標回転数Nfm*に一致するようにフィードバック制御により指令デューティ比Dを設定するから、制御切換回転数Nchに至った後には、ファンモータ55aの回転数Nfmを速やかに目標回転数Nfm*に到達させると共にファンモータ55aを目標回転数Nfm*で回転させてバッテリ50を冷却することができる。
【0029】
実施例のハイブリッド自動車20では、ファンモータ55aには補機バッテリ57から電力が供給されるが、バッテリ50から電力が供給されてもよい。この場合、バッテリ50からの電力をコンバータにより電圧変換してファンモータ55aに供給すればよい。
【0030】
実施例のハイブリッド自動車20では、ファンモータ55aの回転数Nfmが制御切換回転数Nchに至ったときに制御方式を切り換えているが、冷却ファン制御ルーチンが開始されてから所定時間が経過したときに制御方式を切り換えてもよい。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図6に例示する変形例のハイブリッド自動車120のように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図6における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0032】
また、本発明の車両は、図7に示す変形例の電気自動車220のように、駆動軸37を介して駆動輪63a,63bと接続された同期発電電動機であるモータMGと、モータMGを駆動する駆動回路としてのインバータ43と、モータMGに電力を供給するバッテリ50とを備える電気自動車の形態としてもよい。
【0033】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、補機バッテリ57が「電源」に相当し、ファンモータ55aとファンブレード55bとからなる冷却ファン55が「電動ファン」に相当し、補機バッテリ57とファンモータ55aとの間に設けられたスイッチング回路56が「スイッチング手段」に相当し、電圧センサ58が「電圧検出手段」に相当し、冷却ファン制御ルーチンのステップS100〜S150,S190の処理を実行するバッテリECU52が「制御手段」に相当する。
【0034】
ここで、「電源」としては、定格出力電圧が12Vの鉛蓄電池として構成された補機バッテリ57に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池など如何なるタイプの電源であっても構わない。「電動ファン」としては、補機バッテリ57から電力が供給されるファンモータ55aおよびファンモータ55aの回転軸に取り付けられたファンブレード55bにより構成され、ファンブレード55bの回転により空気を送風してバッテリ50を冷却する冷却ファン55に限定されるものではなく、コンバータを介してバッテリ50と接続されるものなど、電源からの電力により駆動されて所定の冷却対象を冷却するように空気を送風可能な電動ファンであれば如何なるものとしても構わない。「スイッチング手段」としては、ファンモータ55aを駆動するスイッチング回路56に限定されるものではなく、電源と電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段であれば如何なるものとしても構わない。「電圧検出手段」としては、補機バッテリ57の端子間に接続された電圧センサ58に限定されるものではなく、電源の電圧を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、冷却ファン制御ルーチンのステップS100〜S150,S190の処理を実行するバッテリECU52に限定されるものではなく、冷却対象を冷却すべきときに電動ファンから空気が送風されるようにスイッチング手段を制御すると共に、電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、起動条件の成立時に電圧検出手段により検出された電圧が高いほどデューティ比が小さくなるようにスイッチング手段を制御するものであれば、如何なるものとしても構わない。
【0035】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0036】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、冷却装置またはこれを搭載する車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例である冷却装置を搭載した車両としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】バッテリECU52により実行される冷却ファン制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】指令デューティ比設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】目標回転数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】実施例の冷却ファン制御ルーチンが実行されたときの指令デューティ比Dとファンモータ55aを駆動する電力の実効電圧と回転数Nfmとの時間変化の一例を示す説明図である。
【図6】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図7】変形例の電気自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0039】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 駆動軸、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42,43 インバータ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、52a CPU、52b ROM、52c RAM、54 電力ライン、55 冷却ファン、55a ファンモータ、55b ファンブレード、56 スイッチング回路、57 補機バッテリ、58 電圧センサ、59 回転数センサ、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、220 電気自動車、MG,MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、該電源からの電力により駆動されて所定の冷却対象を冷却するように空気を送風可能な電動ファンとを有する冷却装置であって、
前記電源と前記電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段と、
前記電源の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記冷却対象を冷却すべきときに前記電動ファンから空気が送風されるように前記スイッチング手段を制御すると共に、前記電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、該起動条件の成立時に前記電圧検出手段により検出された電圧が高いほどデューティ比が小さくなるように前記スイッチング手段を制御する制御手段と、
を備える冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記冷却対象の温度を取得する温度取得手段と、
前記温度取得手段により取得された温度に基づいて前記電動ファンの目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、
を更に備え、
前記起動条件は、前記温度取得手段により取得された温度が所定温度以上になると成立する条件であり、前記解除条件は、前記電動ファンの回転数が前記目標回転数よりも低い所定回転数に達すると成立する条件である、
冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記解除条件が成立した後に前記電動ファンの回転数が前記設定された目標回転数に一致するようにデューティ比を設定し、設定したデューティ比に基づいて前記スイッチング手段を制御する手段である請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つの請求項に記載の冷却装置を搭載した車両であって、
走行用の動力を出力する電動機と、
前記電動機と電力をやり取り可能な前記冷却対象としての蓄電手段と、
を備える車両。
【請求項5】
電源と、該電源からの電力により駆動されて所定の冷却対象を冷却するように空気を送風可能な電動ファンと、前記電源と前記電動ファンとの間に設けられたスイッチング手段と、を有する冷却装置の制御方法であって、
前記冷却対象を冷却すべきときに前記電動ファンから空気が送風されるように前記スイッチング手段を制御すると共に、前記電動ファンの起動条件が成立してから所定の解除条件が成立するまで、該起動条件の成立時の前記電源の電圧が高いほどデューティ比が小さくなるように前記スイッチング手段を制御する、
冷却装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−146920(P2010−146920A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324549(P2008−324549)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】