説明

冷却装置及び冷却水の漏洩検出方法

【課題】冷却水の漏洩を検出可能な冷却装置及び冷却水の漏洩検出方法を提供する。
【解決手段】冷却装置1の熱交換器10から冷凍機24へ冷却水を送給する第2送給管32に膨張タンク22及び冷却水の温度を計測する温度計51が接続されている。この膨張タンク22には、タンク内の圧力を計測する圧力計50が設けられている。
冷却装置1の算出部31は、温度計51から出力された温度の計測値TMに基づいて、当該計測値TMにおける冷却水の圧力の推定値PEを算出する。続いて、当該推定値PEに対する所定割合の値を算出し、推定値PEから所定割合の値を減算して、第1閾値Pthを算出する。漏洩判定部34は、冷却水の圧力の計測値PMと第1閾値Pthとを比較して、冷却水の圧力の計測値PMが第1閾値Pth以下の場合に、冷却水が漏洩していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気口から吸い込まれた吸入空気内に冷却水を流して吸入空気を冷却する冷却装置及びその冷却水の漏洩検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスタービンは、圧縮機に吸い込まれる吸入空気の温度によって影響を受けて出力が変動する。具体的には、吸入空気の温度が高くなるほど出力が低下する。このような出力低下を抑止するため、特許文献1には、圧縮機への空気供給ラインに吸入空気を冷却する冷却装置を設ける方法が開示されている。この冷却装置は、吸入空気の通路内に伝熱管を設け、この伝熱管内に冷凍機から供給された冷却水を流すことによって、吸入空気を冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−259737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷却装置では、伝熱管等の伝熱部が熱交換器内で破損して熱交換器内に冷却水が漏洩すると、この冷却水が吸入空気の流れによってガスタービンの圧縮機内に流入し、圧縮機の動翼や静翼等に衝突する。冷却水が動翼や静翼等に衝突するとエロージョンが生じ、耐久性に悪影響を及ぼしてしまう。また、冷却装置は冷却水を循環させる閉回路を形成しており、漏水によって水量が低下すると冷却水を熱交換器に供給する送水ポンプ内に水が無い状態になり、この状態のまま送水ポンプを駆動させると故障するため、直ちに冷却装置を停止する必要がある。そのためには、熱交換器内で冷却水の漏洩が生じた場合には、それを直ちに検出することが望ましいが、冷却水の漏洩を検出するための手段が無いという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決するものであって、冷却水の漏洩を検出可能な冷却装置及び冷却水の漏洩検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明に係る冷却装置は、吸気口から吸い込まれて吸気通路内を吸気流れ方向に流れる吸入空気を冷却する冷却装置であって、
前記吸気通路内に設けられ、内部を流れる冷却水との熱交換によって前記吸入空気を冷却する伝熱部と、
前記伝熱部に接続されて前記冷却水が流通する冷却水流路と、
前記冷却水流路に設けられ、前記冷却水流路内における前記冷却水の体積変化を吸収する膨張タンクと、
前記膨張タンク内の圧力を計測する圧力計と、
前記圧力計の計測値に基づいて、前記伝熱部からの前記冷却水の漏洩の有無を判定する漏洩判定部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このように、圧力計及び漏洩判定部を備えているので、膨張タンク内の圧力を計測し、当該圧力の計測値に基づいて冷却水が漏洩しているか否かを判定することで、冷却水の漏洩を検出することができる。また、圧力計の計測値に基づいて漏洩を判定するため、冷却水の漏洩を精度良く検出することができる。
【0008】
また、前記漏洩判定部は、前記圧力計の計測値が第1閾値以下である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断することとしてもよい。このとき、前記第1閾値は、予め設定された一定の設定値としてもよい。
【0009】
このように、冷却水の漏洩の判定は、圧力の計測値が第1閾値以下か否かで判定するため、漏洩の判定を速やかに行うことができる。
【0010】
また、前記冷却水の温度を計測する温度計と、
前記温度計の計測値から算出される前記冷却水の圧力の推定値よりも小さくなるように、前記第1閾値を前記温度計の計測値に応じて決定する算出部とをさらに備えてもよい。
【0011】
このように、温度計の計測値から冷却水の圧力の推定値を算出し、当該推定値よりも小さくなるように、第1閾値を設定することで、温度計での計測値に誤差が含まれていても、冷却水の漏洩を精度良く検出することができる。
【0012】
また、前記漏洩判定部は、前記圧力計の計測値の変化速度が第2閾値以上である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断してもよい。
【0013】
このように、冷却水の漏洩の判定は、圧力の計測値が第2閾値以上か否かで判定するため、漏洩の判定を速やかに行うことができる。
【0014】
また、前記伝熱部に前記冷却水を供給する冷凍機と、
前記冷凍機と前記伝熱部との間を前記冷却水が循環するように形成された閉回路の冷却水流路と、
前記冷却水流路に冷却水を補充する冷却水補充部とをさらに備え、
前記漏洩判定部によって前記冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、前記冷却水補充部から冷却水を前記冷却水流路に補充して所定期間運転を継続してもよい。
【0015】
このように、冷却水が漏洩しても冷却水を補充することで、所定期間、冷却装置の運転を続けることができる。
【0016】
また、前記所定期間の終期は、漏洩した前記冷却水によって前記吸気通路の下流側に配置された圧縮機の翼にエロージョンが発生する時点よりも前に設定されていてもよい。
【0017】
このように、冷却水が漏洩しても直ちに冷却装置を停止せずに、圧縮機の翼にエロージョンが発生する時点よりも前まで冷却装置を運転し続けるため、圧縮機を有するタービン等の出力効率の低下を防止することができる。
【0018】
そして、本発明に係る冷却水の漏洩検知方法は、吸気口から吸い込まれた吸入空気が吸気流れ方向に流れる吸気通路内において、前記吸入空気を熱交換器内の伝熱部の内部を流れる冷却水と熱交換させて冷却する冷却装置の前記伝熱部からの冷却水の漏洩を検知する方法であって、
前記伝熱部に接続されて前記冷却水が流通する冷却水流路に設けられ、該冷却水流路内における前記冷却水の体積変化を吸収する膨張タンク内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記膨張タンク内の圧力の計測値に基づいて、前記伝熱部からの前記冷却水の漏洩の有無を判定する漏洩判定ステップとを備えることを特徴とする。
【0019】
このように、膨張タンク内の圧力を計測し、当該圧力の計測値に基づいて冷却水が漏洩しているか否かを判定することで、冷却水の漏洩を検出することができる。また、圧力計の計測値に基づいて漏洩を判定するため、冷却水の漏洩を精度良く検出することができる。
【0020】
また、前記漏洩判定ステップでは、前記膨張タンク内の圧力の計測値が第1閾値以下である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断してもよい。さらに、前記第1閾値は、予め設定された一定の設定値としてもよい。
【0021】
このように、冷却水の漏洩の判定は、圧力の計測値が第1閾値以下か否かで判定するため、漏洩の判定を速やかに行うことができる。
【0022】
また、前記冷却水の温度を計測する温度計測ステップと、
前記冷却水の温度の計測値から算出される前記冷却水の圧力の推定値よりも小さくなるように、前記第1閾値を前記冷却水の温度の計測値に応じて決定する第1閾値決定ステップとをさらに備えることとしてもよい。
【0023】
このように、温度計の計測値から冷却水の圧力の推定値を算出し、当該推定値よりも小さくなるように、第1閾値を設定することで、温度計での計測値に誤差が含まれていても、冷却水の漏洩を精度良く検出することができる。
【0024】
また、前記漏洩判定ステップでは、前記膨張タンク内の圧力の計測値の変化速度が第2閾値以上である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断してもよい。
【0025】
このように、冷却水の漏洩の判定は、圧力の計測値が第2閾値以上か否かで判定するため、漏洩の判定を速やかに行うことができる。
【0026】
また、前記冷却装置は、前記伝熱部に前記冷却水を供給する冷凍機と、該冷凍機と前記伝熱部との間を前記冷却水が循環するように形成された閉回路の冷却水流路とを有し、
前記漏洩判定ステップにおいて前記冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、前記冷却水流路に冷却水を補充して所定期間運転を継続してもよい。
【0027】
このように、冷却水が漏洩しても冷却水を補充することで、所定期間、冷却装置の運転を続けることができる。
【0028】
また、前記所定期間の終期は、漏洩した前記冷却水によって前記吸気通路の下流側に配置された圧縮機の翼にエロージョンが発生する時点よりも前に設定されていてもよい。
【0029】
このように、冷却水が漏洩しても直ちに冷却装置を停止せずに、圧縮機の翼にエロージョンが発生する時点よりも前まで冷却装置を運転し続けるため、圧縮機を有するタービン等の出力効率の低下を防止することができる。
【0030】
また、前記伝熱部は複数のモジュールからなっており、
前記漏洩判定ステップで前記冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、各モジュールへの前記冷却水の供給の有無による前記膨張タンク内の圧力の変化に基づいて、前記冷却水が漏洩しているモジュールを特定する漏洩箇所特定ステップをさらに備えていてもよい。
【0031】
このように、漏洩判定ステップで冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、膨張タンク内の圧力を計測しながら各モジュールごとに冷却水を停止すると、冷却水が漏洩していないモジュールへの冷却水の供給を停止しても圧力の低下は止まらないが、冷却水が漏洩しているモジュールへの冷却水の供給を停止すると、圧力の低下が停止する。これによって、圧力の低下が停止したときに、冷却水の供給を停止していたモジュールから漏洩していることを特定できる。
また、モジュールで冷却水の漏洩が生じても、この漏洩しているモジュールへの冷却水の供給を停止し、漏洩していないモジュールへの冷却水の供給を続けることで、吸入空気を冷却し続けることができる。
そして、モジュールで冷却水の漏洩が生じても、モジュールごと交換することができるため、修理作業を短時間、且つ容易に実施して冷却装置を迅速に復旧させることができる。
【0032】
また、前記漏洩箇所特定ステップにより特定された前記モジュールへの冷却水の供給を停止する供給停止ステップをさらに備えてもよい。
【0033】
このように、漏洩箇所特定ステップにより特定されたモジュールへの冷却水の供給を停止することで、大量の冷却水が冷却装置内に漏洩することを防止できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、冷却装置の冷却水の漏洩を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガスタービン吸気の冷却装置の系統図である。
【図2】冷却水の圧力変化の一例を示す図である。
【図3】モジュールの斜視図である。
【図4】冷却水の漏洩検出手順を示すフロー図である。
【図5】冷却水の他の漏洩検出手順を示すフロー図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るガスタービン吸気の冷却装置の系統図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係るガスタービン吸気の冷却装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る冷却装置について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明では、冷却装置をガスタービンの上流側に設けた場合について説明するが、これに限定されるものではなく、一般的な冷却装置にも適用することができる。また、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0037】
図1は、本発明の第一実施形態に係るガスタービン吸気の冷却装置の系統図である。
図1に示すように、冷却装置1は、ガスタービン2の圧縮機4の上流側に設けられた熱交換器10と、熱交換器10に送る水を冷却する冷凍機24とを備えている。熱交換器10の吸気口11から吸い込まれた吸入空気は、熱交換器10によって冷却されて冷却空気となり、ミストエリミネータ6を介して圧縮機4に流入する。圧縮機4に流入した冷却空気は圧縮空気となり、当該圧縮空気と燃料とが燃焼器8へ導入されて燃焼する。この燃焼によって燃焼器8で燃焼ガスが発生し、燃焼ガスによってタービン9が駆動される。
【0038】
熱交換器10と冷凍機24とは、冷凍機24から熱交換器10へ冷却水を送給する第1送給管30及び熱交換器10から冷凍機24へ冷却水を送給する第2送給管32で接続されており、冷却水が循環可能な閉回路を形成している。また、第1送給管30の冷凍機24側の端部に、冷凍機24で冷却された冷却水を熱交換器10に供給する循環用ポンプ26が接続されている。
【0039】
また、第2送給管32の冷凍機24側の端部に、冷却水の温度変化による体積変動を吸収する密閉式の膨張タンク22が接続されている。
【0040】
膨張タンク22内には、高圧ガスが封入された袋状のブラダ23が設けられている。膨張タンク22は、例えば、冷却水の5℃から35℃までの温度変化による体積変動を吸収することができる。この膨張タンク22には、タンク内の圧力を計測する圧力計50が設けられている。また、膨張タンク22と冷凍機24との間の第2送給管32に冷却水の温度を計測する温度計51が接続されている。
冷却水路内を流れる冷却水の温度が上昇すると冷却水の体積及び圧力も増加しようとする。このとき、ブラダ23内のガス圧力と冷却水の圧力とがつり合うまでブラダ23が収縮する(図1中に点線で示す)。これにより、冷却水の圧力変動は吸収される。また、冷却水路内を流れる冷却水の温度が低下すると冷却水の体積及び圧力も減少しようとする。このとき、ブラダ23内のガス圧力と冷却水の圧力とがつり合うまでブラダ23が膨張する(図1中に一点鎖線で示す)。これにより、冷却水の圧力変動は吸収される。
【0041】
図2は、冷却水の圧力変化の一例を示す図である。図2に示すように、停止状態の冷凍機24を駆動してから暫くの期間は、冷却水が冷却されて冷却水の温度が次第に低くなるにつれて、膨張タンク22内の圧力も次第に低くなる。そして、閉回路内を循環する冷却水の温度が安定してほぼ一定状態を保つと、膨張タンク22内の圧力もほぼ一定となる。
【0042】
図1に示すように、膨張タンク22と冷凍機24との間の第2送給管32には、冷却水補充部40が接続されている。冷却水補充部40は、冷却水を貯留するタンク42と、タンク42内の冷却水を供給する補充用ポンプ44とを備えている。
【0043】
熱交換器10内に冷却水を流す伝熱管13(伝熱部に相当)は、複数のモジュール12から構成されている。各モジュール12の伝熱管13には、複数の伝熱板14(伝熱部に相当)が接続されている。
各伝熱管13の一端は、複数系統に分割された第1送給管30の一端側枝部に接続されている。また、各伝熱管13の他端は、複数系統に分割された第2送給管32の一端側枝部に接続されている。冷凍機24から供給された冷却水は、第1送給管30を通過して各伝熱管13内にそれぞれ分配して供給される。そして、熱交換器10で温められた後、第2送給管32に集水され、膨張タンク22を通過して、冷凍機24に戻る。
【0044】
図3は、モジュール12の斜視図である。
図3に示すように、複数の伝熱板14間を吸入空気が通過すると冷却されて、伝熱板14に凝縮水が付着する。伝熱板14に付着した凝縮水は重力で下方へ流下し、熱交換器10の下部に設けられたドレン板16に流れ落ちる。ドレン板16に流れ落ちた凝縮水は、一箇所に集められて、ドレン水として集中ドレンライン18にて排出される。
【0045】
また、図1に示すように、伝熱板14に付着した凝縮水のごく一部は霧状になって冷却空気とともに飛散し、ミストエリミネータ6に流入する。飛散した霧状の水分は、ミストエリミネータ6で捕集されて、集中ドレンライン18に送給される。
【0046】
冷却装置1は、圧力計50及び温度計51からの出力を受信して演算処理する算出部31と、算出部31で算出された結果に基づいて熱交換器10内で冷却水が漏洩しているか否かを判定する漏洩判定部34と、漏洩判定部34の判定結果に基づいて冷却水補充部40等を制御する制御部35とを備えている。算出部31、漏洩判定部34及び制御部35は、熱交換器10から離れた位置に設置されている管理室のコントローラ33内に設けられている。
【0047】
ここで、冷却水の容量および温度に対する密度(または熱膨張率)と、伝熱管13、第1送給管30、第2送給管32、膨張タンク22などの配管系統の容積および材料の弾性係数と熱膨張率などとから、冷却水の温度と圧力PMとの関係式を予め求めておくことができる。この関係式を用いて、算出部31は、温度計51から出力された温度の計測値TMに基づいて、当該計測値TMにおける冷却水の圧力の推定値PEを算出する。なお、実際の冷却装置1の運転時における冷却水の温度と圧力の実測値に基づいて、冷却水の温度と圧力との関係式を修正しても良い。
そして、算出された冷却水の圧力の推定値PE(例えば、1.00atm)に対する所定割合の値(例えば、所定割合が10%のとき0.10atm)を算出し、冷却水の圧力の推定値PEから所定割合の値を減算して、第1閾値Pth(例えば、0.90(=1.00−0.10)atm)を算出する。なお、本実施形態では、冷却水の圧力の推定値PEから所定割合の値を減算して第1閾値Pthを算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、冷却水の圧力の推定値PEから予め設定された所定値を減算して第1閾値Pthとしてもよい。
【0048】
また、漏洩判定部34は、算出部31から出力された冷却水の圧力の計測値PMと、算出部31から出力された第1閾値Pthとを比較して、冷却水の圧力の計測値PMが第1閾値Pth以下の場合に、冷却水が漏洩していると判定する。
一方、冷却水の圧力の計測値PMが第1閾値Pthよりも大きい場合には、冷却水は漏洩していないと判定する。
【0049】
漏洩判定部34は、冷却水が漏洩していると判定すると、その旨を制御部35に出力する。その出力を受け付けた制御部35は、警報装置36の警報を鳴らすとともに、供給補充用ポンプ44を駆動して閉回路内に冷却水を供給する。そして、冷却水を閉回路内に供給し続けて、閉回路内の水量を一定に保つ。
【0050】
また、漏洩判定部34は、冷却水が漏洩していると判定すると、その旨をタイマー37にも出力する。その出力を受け付けたタイマー37は、冷却水が漏洩していると判定された時点からの経過時間tを計測する。そして、タイマー37は、その経過時間tが所定期間tthに達すると、制御部35にその所定期間tthに達した旨を出力する。この出力を受け付けた制御部35は、供給補充用ポンプ44を停止する。
所定期間tthは、圧縮機4の動翼や静翼等に水によるエロージョンが発生したり、コーティングが剥離したりするまでとする。なお、ガスタービン2の場合においては、日中運転して夜間停止するDSS(Daily Start and Stop)や平日運転して週末停止するWSS(Weekly Start and Stop)等の断続的な運転を行うときがある。係る場合には、所定期間tthを、例えば、朝から夕方までと設定したり、月曜日の朝から金曜日の夕方までと設定したりしてもよい。
【0051】
次に、漏洩判定部34による冷却水の漏洩検出手順について説明する。
【0052】
図4は、冷却水の漏洩検出手順を示すフロー図である。
図4に示すように、まず、冷却水の温度及び圧力をそれぞれ温度計51及び圧力計50にて計測する(ステップS10)。
【0053】
次に、算出部31は、温度計51から出力された計測値TMに基づいて、冷却水の圧力の推定値PEを算出する(ステップS20)。
【0054】
また、算出部31は、算出された冷却水の圧力の推定値PEに基づいて、第1閾値Pthを算出する(ステップS30)。
【0055】
次に、漏洩判定部34は、第1閾値Pthと、圧力計50から出力された冷却水の圧力の計測値PMとを比較して、冷却水の漏洩を判定する(ステップS40)。ここで、冷却水の圧力の計測値PMが第1閾値Pth以下の場合は、冷却水が漏洩していると判定する。
【0056】
冷却水が漏洩していると判定された場合、タイマー37が経過時間tの計測を開始する(ステップS50)。続いて、制御部35は、警報機36の警報を鳴らす(ステップS60)。
【0057】
また、制御部35は、補充用ポンプ44を駆動して冷却水を閉回路に供給する(ステップS70)。
【0058】
次に、タイマー37は、その経過時間tが所定期間tthに達するか否かを判定する(ステップS80)。ここで、その経過時間tが所定期間tth以上の場合、制御部35が補充用ポンプ44を停止して冷却水の供給を止める(ステップS90)。経過時間tが所定期間tth未満の場合は、経過時間tの計測を継続する。
【0059】
一方、ステップS40において、冷却水の圧力の計測値PMが第1閾値Pthより大きい場合には、ステップS20に戻って冷却水の圧力の推定値PEを算出する。
【0060】
上述したように、本実施形態の冷却装置1は、冷却水の圧力の推定値PEに基づいて第1閾値Pthを算出し、冷却された圧力の計測値PMが第1閾値Pth以下の場合に、冷却水が漏洩していると判定することで、冷却水の漏洩を検出することができる。このとき、温度計の計測値TMに基づいて第1閾値Pthを決定したり、判定の際に圧力計の計測値PMを用いたりするため、冷却水の漏洩を精度良く検出することができる。
また、漏水を判定する際は、第1閾値Pth以下か否かを判定することで、速やかに判定を行うことができる。
そして、冷却水補充部40を備えているため、冷却水が漏洩しても水を補充することで、所定期間tth、冷却装置1の運転を続けることができる。さらに、冷却水が漏洩しても直ちに冷却装置1を停止せずに、圧縮機4の回転翼にエロージョンが発生したり、圧縮機4内のコーティングが剥離したりするまで、或いはガスタービン2の定期点検時まで冷却装置1を運転し続けるため、ガスタービン2の出力効率の低下を防止することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1閾値Pthの決定方法として、冷却水の温度の計測値TMに基づいて第1閾値Pthを算出する方法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、予め設定された一定の圧力値を第1閾値Pthとしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、冷却水の漏洩を判定する方法として、冷却水の温度の計測値TMに基づいて第1閾値Pthを算出し、計測値PMと比較する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、冷却水の圧力の計測値PMの変化率Hpを算出し、当該変化率Hpと、予め設定された圧力変化率である第2閾値Hthとを比較して、冷却水が漏洩しているか否かを判定してもよい。以下に、圧力の計測値PMの変化率Hpを算出し、当該変化率Hpと、予め設定された第2閾値Hthとを比較する場合の判定方法について説明する。以下の説明において、上記の実施例に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0063】
図5は、冷却水の他の漏洩検出手順を示すフロー図である。
図5に示すように、まず、時刻t、時刻t+1における冷却水の圧力及び温度をそれぞれ圧力計50及び温度計51にて計測する(ステップS100)。冷却水の圧力及び温度は、冷却装置1が稼働しているときは、常時、測定されている。
次に、算出部31は、圧力計50から出力された時刻t、時刻t+1における計測値PMt、PMt+1に基づいて、圧力の変化率Hpを算出する(ステップS110)。
また、算出部31は、温度計51から出力された時刻t、時刻t+1における計測値TMt、TMt+1に基づいて、冷却水の圧力の推定値PEt、PEt+1を算出する。続いて、冷却水の圧力の推定値PEt、PEt+1に基づいて、圧力の推定値の変化率を算出し、当該変化率を第2閾値Hthとして用いる。なお、第2閾値Hthは、予め設定されている値を用いてもよい。
次に、漏洩判定部34は、算出部31から出力された圧力の変化率Hpと第2閾値Hthとを比較して、圧力の変化率Hpが第2閾値Hth以上の場合に、冷却水が漏洩していると判定する(ステップS120)。一方、圧力の変化率Hpが第2閾値Hthよりも小さい場合には、冷却水は漏洩していないと判定する。
次に、冷却水が漏洩していると判定された場合は、上述したステップS50〜S90を実施する。一方、冷却水が漏洩していないと判定された場合は、ステップS110に戻って圧力の変化率Hp等を算出する。
【0064】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
本発明の第二実施形態に係る冷却装置は、第一実施形態の第1送給管30の一端側枝部に複数のバルブを新たに設けたものである。
【0065】
図6は、本発明の第二実施形態に係るガスタービン吸気の冷却装置の系統図である。
図6に示すように、本実施形態に係る冷却装置61は、第1送給管30の各一端側枝部に接続されたモジュール12の入口側のバルブ62と、第2送給管32の各一端側枝部に接続されたモジュール12の出口側のバルブ64とを備えている。このバルブ62、64は、モジュール12と同じ数だけ複数設けられている。各バルブ62、64は、制御部35から出力された信号によって開閉可能である。
漏洩判定部34によって冷却水が漏洩していると判定され、かつ、漏洩しているモジュール12が特定されている場合において、制御部35は、冷却水が漏れているモジュール12のバルブ62、64を閉じる。また、バルブ64を閉じることで、バルブ62を閉じた際に、モジュール12の出口側からモジュール12内へ冷却水が逆流することを防止する。
一方、冷却水が漏洩していると判定されても、漏洩しているモジュール12が特定されていない場合は、漏洩箇所を特定するステップを実施する(図示しない)。当該ステップでは、圧力計50で膨張タンク22内の圧力を計測しながら、各モジュール単位でバルブ62、64を閉じることで当該バルブ62、64の間に位置するモジュール12への冷却水の供給を停止する。冷却水の供給を停止する作業は各モジュール単位で交互に行う。このとき、漏洩していないモジュール12への冷却水の供給を停止しても膨張タンク22内の圧力は低下し続けるが、漏洩しているモジュール12への冷却水の供給を停止すると、圧力の低下が停止する。これによって、圧力の低下が停止したときに、冷却水の供給を停止していたモジュール12から漏水していることを特定できる。漏水しているモジュール12が特定できたら、冷却水が漏れているモジュール12のバルブ62、64を閉じる。
【0066】
上述したように、本実施形態における冷却装置61によれば、第一実施形態の効果に加えて、各モジュール12への冷却水の供給を停止可能なバルブ62、64が設けられているため、圧力計50で膨張タンク22内の圧力を計測しながら、各モジュール12を1台ずつ交互に停止することで、冷却水が漏洩しているモジュール12を特定できる。また、冷却水が漏洩しているモジュール12のバルブ62、64を閉止することで、冷却水の漏洩を止めることができる。そして、冷却水が漏洩していないモジュール12には冷却水を供給することで、冷却装置61を稼働し続けることができる。
また、漏洩が生じても、モジュール12ごと交換することができるため修理作業を短時間、且つ容易に実施できる。これによって、冷却装置61を迅速に復旧させることができる。
なお、本実施形態では、漏洩しているモジュール12を特定する方法として、バルブ62、64をモジュール単位で交互に閉じる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0067】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
本発明の第三実施形態に係る冷却装置は、第一実施形態の第1送給管30の他端部にバルブ62を設け、冷却水補充部40を取り除いたものである。
【0068】
図7は、本発明の第三実施形態に係るガスタービン吸気の冷却装置の系統図である。
図7に示すように、本実施形態に係る冷却装置81は、第1送給管30の他端部に接続されたバルブ62を備えている。また、冷却装置81は、第一実施形態の冷却装置1から冷却水補充部40を取り除いたものである。
本実施形態に係る冷却装置81の漏洩判定部34で、冷却水が漏洩していると判定した場合、制御部35はバルブ62を閉じるとともに、循環用ポンプ26を停止して、熱交換器10への冷却水の供給を停止する。
【0069】
上述したように、本実施形態における冷却装置81によれば、第一実施形態の効果に加えて、第1送給管30の他端部にバルブ62が設けられているため、冷却水の漏洩が生じても、このバルブ62を閉止することで、すべてのモジュール12への冷却水の供給を停止することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 冷却装置
2 ガスタービン
4 圧縮機
6 ミストエリミネータ
8 燃焼器
9 タービン
10 熱交換器
12 モジュール
13 伝熱管(伝熱部)
14 伝熱板(伝熱部)
16 ドレン板
18 集中ドレンライン
22 膨張タンク
23 ブラダ
24 冷凍機
26 循環用ポンプ
30 第1送給管
31 算出部
32 第2送給管
33 コントローラ
34 漏洩判定部
35 制御部
36 警報装置
37 タイマー
40 冷却水補充部
42 タンク
44 補充用ポンプ
50 圧力計
51 温度計
61 第2実施形態の冷却装置
62 バルブ
81 第3実施形態の冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口から吸い込まれて吸気通路内を吸気流れ方向に流れる吸入空気を冷却する冷却装置であって、
前記吸気通路内に設けられ、内部を流れる冷却水との熱交換によって前記吸入空気を冷却する伝熱部と、
前記伝熱部に接続されて前記冷却水が流通する冷却水流路と、
前記冷却水流路に設けられ、前記冷却水流路内における前記冷却水の体積変化を吸収する膨張タンクと、
前記膨張タンク内の圧力を計測する圧力計と、
前記圧力計の計測値に基づいて、前記伝熱部からの前記冷却水の漏洩の有無を判定する漏洩判定部とを備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記漏洩判定部は、前記圧力計の計測値が第1閾値以下である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1閾値は、予め設定された一定の設定値であることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却水の温度を計測する温度計と、
前記温度計の計測値から算出される前記冷却水の圧力の推定値よりも小さくなるように、前記第1閾値を前記温度計の計測値に応じて決定する算出部とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記漏洩判定部は、前記圧力計の計測値の変化速度が第2閾値以上である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記伝熱部に前記冷却水を供給する冷凍機と、
前記冷凍機と前記伝熱部との間を前記冷却水が循環するように形成された閉回路の冷却水流路と、
前記冷却水流路に冷却水を補充する冷却水補充部とをさらに備え、
前記漏洩判定部によって前記冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、前記冷却水補充部から冷却水を前記冷却水流路に補充して所定期間運転を継続することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記所定期間の終期は、漏洩した前記冷却水によって前記吸気通路の下流側に配置された圧縮機の翼にエロージョンが発生する時点よりも前に設定されていることを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
吸気口から吸い込まれた吸入空気が吸気流れ方向に流れる吸気通路内において、前記吸入空気を熱交換器内の伝熱部の内部を流れる冷却水と熱交換させて冷却する冷却装置の前記伝熱部からの冷却水の漏洩を検知する方法であって、
前記伝熱部に接続されて前記冷却水が流通する冷却水流路に設けられ、該冷却水流路内における前記冷却水の体積変化を吸収する膨張タンク内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記膨張タンク内の圧力の計測値に基づいて、前記伝熱部からの前記冷却水の漏洩の有無を判定する漏洩判定ステップとを備えることを特徴とする冷却水の漏洩検知方法。
【請求項9】
前記漏洩判定ステップでは、前記膨張タンク内の圧力の計測値が第1閾値以下である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断することを特徴とする請求項8に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項10】
前記第1閾値は、予め設定された一定の設定値であることを特徴とする請求項9に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項11】
前記冷却水の温度を計測する温度計測ステップと、
前記冷却水の温度の計測値から算出される前記冷却水の圧力の推定値よりも小さくなるように、前記第1閾値を前記冷却水の温度の計測値に応じて決定する第1閾値決定ステップとをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項12】
前記漏洩判定ステップでは、前記膨張タンク内の圧力の計測値の変化速度が第2閾値以上である場合、前記冷却水が前記伝熱部から漏洩していると判断することを特徴とする請求項8に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項13】
前記冷却装置は、前記伝熱部に前記冷却水を供給する冷凍機と、該冷凍機と前記伝熱部との間を前記冷却水が循環するように形成された閉回路の冷却水流路とを有し、
前記漏洩判定ステップにおいて前記冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、前記冷却水流路に冷却水を補充して所定期間運転を継続することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項14】
前記所定期間の終期は、漏洩した前記冷却水によって前記吸気通路の下流側に配置された圧縮機の翼にエロージョンが発生する時点よりも前に設定されていることを特徴とする請求項13に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項15】
前記伝熱部は複数のモジュールからなっており、
前記漏洩判定ステップで前記冷却水の漏洩が発生したと判定された場合、各モジュールへの前記冷却水の供給の有無による前記膨張タンク内の圧力の変化に基づいて、前記冷却水が漏洩しているモジュールを特定する漏洩箇所特定ステップをさらに備えることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の冷却水の漏洩検知方法。
【請求項16】
前記漏洩箇所特定ステップにより特定された前記モジュールへの冷却水の供給を停止する供給停止ステップをさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の冷却水の漏洩検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−15047(P2013−15047A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147308(P2011−147308)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)