説明

冷却装置

【課題】小型化及び低コスト化が可能で、冷却効率が高い冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却対象物2を収容可能な冷却用ハウジング10と、冷却用ハウジング10内を冷却し、冷却用ハウジング10外に放熱するように冷却面32及び放熱面34が配置された熱電素子30と、熱電素子30の冷却面32近傍の冷気が冷却対象物2に当たるように、冷却用ハウジング10内の空気を流動させる冷却用ファン44と、熱電素子30の放熱面34近傍の空気を流動させる放熱用ファン46とを備え、冷却用ファン44に回転駆動を伝達する回転軸48には、該冷却用ファン44への回転駆動の伝達を解除可能なクラッチ49が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電素子を利用して冷却対象物を冷却させる冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2以上の成分を含有する試料から各成分を分離させる方法として、各成分の沸点の違いを利用して分留する蒸留方法が知られている(特許文献1参照)。この蒸留方法は、2以上の成分を含有する試料を徐々に加熱して沸点の低い成分から順に蒸留させることで、各成分を分離させる方法である。
【0003】
近年、この蒸留方法により2以上の成分を含有する試料から各成分を分留する蒸留装置に、例えば図5に示すような、試料を収容する試料管を加熱させる蒸留用加熱装置が用いられている。この蒸留用加熱装置200は、試料管を挿脱可能な開口222aを有する有底円筒状のヒータ管220と、ヒータ管220から発した熱を断熱するために設けられ、ヒータ管220を収容可能な開口231aを有する有底円筒状の断熱管230と、断熱管230にヒータ管220が収容された状態で、ヒータ管220及び断熱管230の開口222a、231a側を固定する固定部240と、ヒータ管220の開口222aを開放及び閉塞可能なシャッタ部材250と、ヒータ管220内の温度を検知する温度センサ260とを備えている。
【0004】
この蒸留用加熱装置200のヒータ管220は、有底円筒状のヒータ管本体222と、ヒータ管本体222の外周を覆うヒータ層224と、ヒータ管本体222の軸方向の両端部にそれぞれ設けられた電極225、226とを備えており、この電極225、226に電圧が印加されることにより、ヒータ層224に電流が流れ、ヒータ管220が発熱するようになっている。また、断熱管230は、内管232及び外管234の二重構造からなり、外管234の開口側端部が内管232の外周上に重なるように一体成形されることにより、内管232と外管234との間が真空状態にされている。これらヒータ管220のヒータ管本体222及び断熱管230は、外部から試料管内の試料を視認可能にするために、透明性を有するガラスや石英などから形成されている。
【0005】
この蒸留用加熱装置200に用いられる試料管としては、例えば図5に示すような試料管210が用いられており、この試料管210は、概ね球体状に形成され、試料を収容する試料球212と、試料球212よりも小さい径の球体状に形成された冷却球214、215、216、217と、試料球212及び冷却球214、215、216、217よりも小さい径の筒状に形成され、隣接する試料球212及び冷却球214、215、216、217同士を連通させるジョイント218と、冷却球217と真空ラインを連通させるセンタージョイント219とを備えている。
【0006】
このように構成された従来の蒸留用加熱装置200を用いて蒸留する場合には、まず、試料管210の試料球212に試料を入れると共に、分離した成分を回収させたい冷却球217を蒸留用加熱装置200のヒータ管220の開口222aよりも外側に配置した状態で、試料管210をヒータ管220内に挿入し、ヒータ管220の開口222aをシャッタ部材250により閉塞する。次に、ヒータ管220の電極225、226に通電することによりヒータ層224を発熱させ、所定の温度でヒータ管220内の試料管210を加熱すると共に、図示しない減圧手段によって試料管210内を減圧することにより、沸点の低い成分を気化させる。気化した成分は、試料管210の開口側(図5中右側)に向けて流動するが、この際、図示しない回転手段により試料管210を軸回転させると共に、冷却装置によってこの冷却球217を冷却することにより、気化した成分を冷却球217内において液化させて回収する。沸点の低い成分の回収を終えた後は、シャッタ部材250によりヒータ管220の開口222aを開放させると共に、次に分離した成分を回収させたい冷却球(例えば冷却球216)がヒータ管220の開口222aの外側に配置されるように試料管210を移動させ、再度シャッタ部材250によりヒータ管220の開口222aを閉塞させる。その後、ヒータ管220の加熱温度を段階的に上昇させると共に、上記手順を繰り返すことにより、沸点の低い成分から冷却球217→冷却球216→冷却球215→冷却球214の順に回収することができる。
【0007】
この試料管210の冷却球214、215、216、217を冷却する冷却装置として、例えば図6に示すような冷却装置が知られている。この冷却装置300は、大気と連通し、冷却対象物(例えば冷却球217)を収容可能な冷却用ハウジング310と、大気と連通した放熱用ハウジング320と、これら冷却用ハウジング310及び放熱用ハウジング320の間に設けられ、冷却面332が伝熱材336aを介して冷却用ハウジング310と接触し、放熱面334が伝熱材336bを介して放熱用ハウジング320と接触するように配置された熱電素子330とを備えている。
【0008】
この冷却用ハウジング310には、熱電素子330の冷却面332近傍の冷気が冷却球217に当たるように、冷却用ハウジング310内の空気を流動させる冷却用ファン312と、この冷却用ファン312を駆動するように構成された冷却側電動機314と、冷却用ファン312により流動する空気の流路に設けられ、冷却用ハウジング310内を流動する空気を更に冷却する複数の冷却フィン316と、冷却球217を冷却用ハウジング310内に挿脱可能とする開閉可能な蓋部材318とが設けられている。
【0009】
放熱用ハウジング320には、熱電素子330の放熱面334近傍の空気を流動させる放熱用ファン322と、この放熱用ファン322を駆動するように構成された放熱側電動機324と、放熱用ファン322により流動する空気の流路に設けられ、放熱用ハウジング320内を流動する空気を吸熱する複数の放熱フィン326とが設けられている。これら冷却用ハウジング310と放熱用ハウジング320との間には、熱電素子330の冷却面332及び放熱面334以外の面を覆う断熱材338が設けられている。
【0010】
このように構成された冷却装置300は、熱電素子330に電流を供給すると、熱電素子330の冷却面332によって冷却用ハウジング310内の空気が冷却され、この冷気が冷却用ファン312により冷却球217に向かって流動し、冷却フィン316により更に冷却された状態で冷却球217に当たることにより、冷却球217を冷却するものである。また、熱電素子330の放熱面334から放熱用ハウジング320内に放出された熱は、放熱用ファン322により放熱用ハウジング320内を流動し、放熱フィン326により吸熱された状態で大気に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−210101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の冷却装置300は、冷却用ファン312と放熱用ファン322とを駆動する電動機がそれぞれ別々に設けられているため、冷却装置が大型化し、また、2台の電動機をそれぞれ別々に制御しなければならないため、コントロール基板が複雑化するという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、小型化及び低コスト化が可能で、冷却効率が高い冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するため、本発明に係る冷却装置は、冷却対象物を収容可能な冷却用ハウジングと、前記冷却用ハウジング内を冷却し、該冷却用ハウジング外に放熱するように冷却面及び放熱面が配置された熱電素子と、前記熱電素子の冷却面近傍の冷気が前記冷却対象物に当たるように、前記冷却用ハウジング内の空気を流動させる冷却用ファンと、前記熱電素子の放熱面近傍の空気を流動させる放熱用ファンとを備える冷却装置であって、前記冷却用ハウジングには、前記冷却対象物を該冷却用ハウジング内に挿入可能とする開口部が形成されていると共に、該開口部を開閉可能な蓋部材が設けられ、前記冷却用ファン及び前記放熱用ファンは、回転軸を介して同一の駆動源から回転駆動が伝達されるように構成され、前記冷却用ファンに回転駆動を伝達する前記回転軸には、該冷却用ファンへの回転駆動の伝達を解除可能なクラッチが設けられていることを特徴とする。
【0015】
このように、本発明に係る冷却装置によれば、冷却用ファン及び放熱用ファンが、回転軸を介して同一の駆動源から回転駆動が伝達されるように構成されていることにより、1台の電動機で冷却用ファン及び放熱用ファンを駆動させることができるため、装置の小型化を図ることができると共に、電動機を制御するためのコントロール基板がコンパクトになるため、コストの低減を図ることができる。また、冷却用ファンに回転駆動を伝達する回転軸に、冷却用ファンへの回転駆動の伝達を解除可能なクラッチが設けられていることにより、冷却対象物を冷却用ハウジング内に挿脱する際に冷却用ファンの回転駆動を停止させることができるため、冷却用ハウジング内への大気の吸引を効果的に防止し、冷却対象物の挿脱に起因する冷却効率の低下を防止することができる。
【0016】
本発明に係る冷却装置において、前記クラッチは、前記冷却用ハウジングの開口部が開口状態の際に、前記冷却用ファンへの回転駆動の伝達を解除状態とするように構成されていることが好ましく、このように、冷却用ハウジングの開口部が開口状態の際に、冷却用ファンへの回転駆動の伝達を解除状態とするクラッチを備えることにより、冷却対象物を冷却用ハウジング内に挿脱する際に冷却用ファンの回転駆動を自動で停止させることができるため、冷却用ハウジング内への大気の吸引を確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る冷却装置において、前記冷却用ハウジングには、前記冷却用ファンにより流動する空気の流路に設けられ、該冷却用ハウジング内を流動する空気を冷却可能な少なくとも1つの冷却フィンが設けられることが好ましく、このように、冷却フィンが設けられることにより、冷却用ハウジング内を流動する空気を更に冷却することができるため、冷却効率を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明に係る冷却装置において、前記冷却フィンは、前記冷却用ファンにより流動する空気の流動方向に対して斜めに傾けられて設けられていることが好ましく、これにより、冷却用ファンにより流動する空気と冷却フィンとの接触面積を広くすることができるため、冷却効率を向上させることができる。
【0019】
またさらに、本発明に係る冷却装置において、前記冷却用ハウジングには、前記冷却用ファンにより流動する空気の流動する方向を規制する方向板が更に設けられることが好ましい。
【0020】
またさらに、本発明に係る冷却装置において、前記冷却用ハウジングは、前記蓋部材により前記開口部が閉塞された際に密閉空間を形成し、前記冷却用ファンにより流動して前記冷却対象物に当たった空気が循環するように形成されることが好ましい。このように、冷却用ハウジングが、冷却対象物に当たった空気が循環するように形成されることにより、冷却装置を小型化し、空気を冷却するための十分な流路を確保できない場合であっても、十分な冷却効果を得ることができる。また、本発明に係る冷却装置において、前記回転軸は、熱を伝達しにくい材料から形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、小型化及び低コスト化が可能で、冷却効率が高い冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却装置を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る冷却装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る冷却装置を蒸留用加熱装置に取り付けた状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る冷却装置を示す断面図である。
【図5】従来の蒸留用加熱装置を示す断面図である。
【図6】従来の冷却装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係る冷却装置について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る冷却装置1は、図1及び図2に示すように、冷却対象物2を収容可能な冷却用ハウジング10と、大気と連通された空間からなる放熱用ハウジング20と、冷却用ハウジング10内を冷却し、放熱用ハウジング20内に放熱するように冷却面32及び放熱面34が配置された熱電素子30と、冷却用ハウジング10及び放熱用ハウジング20内の空気を流動させる駆動装置40と、熱電素子30に供給する電流の制御及び駆動装置40の制御などを行なう制御部50とを備えている。
【0024】
冷却用ハウジング10は、密閉された空間からなり、図1に示すように、一の側面側(図1中左側)に形成され、後述する駆動装置40の冷却用ファン44を収容可能な冷却用ファン収容室10aと、他の側面側(図1中右側)に形成され、冷却対象物2を収容可能な冷却対象物収容室10bと、冷却用ファン44により冷却用ファン収容室10aから冷却対象物収容室10bに向けて空気を流動させる往流路10cと、冷却用ファン44により冷却対象物収容室10bから冷却用ファン収容室10aに向けて空気を流動させる復流路10dとを備えている。この冷却用ハウジング10は、後述する伝熱材36aが接触している領域を除く全領域の外側が、断熱材38により覆われている。冷却用ハウジング10の底面(図1中下側)には、冷却用ハウジング10内に蓄積されたほこりや結露水などを外部に排出するためのドレン口11が形成されており、通常、このドレン口11は、塞がれている。
【0025】
冷却用ハウジング10には、金属などの熱伝導率の良い材質からなる板状の冷却フィン16が、往流路10cから冷却対象物収容室10bに亘って、空気の流動方向に等間隔をおいて並列して複数設けられている。冷却フィン16は、伝熱材36aを介して熱電素子30の冷却面32と熱伝導可能な状態で接続されており、流動する空気との接触面積が広くなるように、流動する空気の流動方向に対して斜めに傾けて設けられている。
冷却用ハウジング10の冷却用ファン収容室10aには、駆動装置40の冷却用ファン44により流動する空気が冷却フィン16に当たるように流動方向を規制する方向板15が設けられている。
【0026】
この冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bには、冷却対象物2を冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10b内に挿脱可能とする開口部が形成されていると共に、この開口部を開放及び閉塞可能な蓋部材12が設けられている。この蓋部材12の先端には、フックなどの係合部材12aが設けられており、この係合部材12aを冷却用ハウジング10の外壁に設けられた係合部材12bに係合させることにより、冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bの開口部の閉塞状態を維持するように構成されている。また、冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bには、蓋部材12の開閉状態を検知可能な開口検知手段13と、冷却対象物2の周辺の温度を検知可能な温度センサ14とが設けられている。この開口検知手段13は、例えば、マイクロスイッチ、静電センサ及び距離センサなどの周知の検知手段を用いることができる。
【0027】
このように構成された冷却用ハウジング10は、熱電素子30の冷却面32及び冷却フィン16によって冷却された空気が、駆動装置40の後述する冷却用ファン44によって冷却用ファン収容室10aから往流路10cを介して冷却対象物収容室10bに流動して冷却対象物2に当たった後、冷却対象物収容室10bから復流路10dを介して冷却用ファン収容室10aに流動し、それを繰り返すことによって循環するように構成されている。
【0028】
放熱用ハウジング20は、一の側面側(図1中左側)かつ冷却用ハウジング10の冷却用ファン収容室10aと上下方向に整合する位置に形成され、駆動装置40の後述する放熱用ファン46を収容可能な放熱用ファン収容室20aと、他の側面側(図1中右側)に形成され、放熱用ハウジング20内を流動する空気を大気に放出させる流出口20bと、駆動装置40の後述する放熱用ファン46により放熱用ファン収容室20aから流出口20bに向けて空気を流動させる流路20cとを備えている。放熱用ハウジング20の放熱用ファン収容室20aには、放熱用ハウジング20内に大気を流入させる流入口21が形成されている。
【0029】
放熱用ハウジング20の流路20cには、金属などの熱伝導率の良い材質からなる板状の放熱フィン26が、空気の流動方向に等間隔をおいて並列して複数設けられている。放熱フィン26は、伝熱材36bを介して熱電素子30の放熱面34と熱伝導可能な状態で接続されており、流動する空気との接触面積が広くなるように、流動する空気の流動方向に対して斜めに傾けて設けられている。
放熱用ハウジング20の放熱用ファン収容室20aには、駆動装置40の放熱用ファン46により流動する空気が放熱フィン26に当たるように流動方向を規制する方向板25が設けられており、放熱用ハウジング20の流出口20bには、大気中に放出される空気の流動方向を規制する方向板24が設けられている。
【0030】
このように構成された放熱用ハウジング20は、熱電素子30の放熱面34によって加熱された空気が、駆動装置40の後述する放熱用ファン46により流路20cを流動し、放熱フィン26によって放熱された後に、流出口20bから大気に放出されるように構成されている。
【0031】
熱電素子30は、例えばペルチェ素子などからなり、電流が供給されることにより、冷却面32を冷却し、放熱面34を加熱するように構成されている。この熱電素子30は、冷却用ハウジング10と放熱用ハウジング20との間において、冷却面32が冷却用ハウジング10の上面と対向し、放熱面34が放熱用ハウジング20の下面と対向するように配置されている。この熱電素子30の冷却面32と冷却用ハウジング10の上面との間には、冷却用ハウジング10の往流路10c及び冷却対象物収容室10bに対応する領域の上側を覆う伝熱材36aが設けられている。また、熱電素子30の放熱面34と放熱用ハウジング20の下面との間には、放熱用ハウジング20の流路20cに対応する領域の下面を覆う伝熱材36bが設けられている。これら伝熱材36a、36bは、熱伝導率の良い材質から形成されている。熱電素子30の冷却面32及び放熱面34以外の面は、冷却用ハウジング10を覆う断熱材38により覆われている。
【0032】
このように、熱電素子30の冷却面32が、冷却用ハウジング10の往流路10c及び冷却対象物収容室10bに対応する領域を覆う伝熱材36aを介して冷却用ハウジング10の上面と接触していることにより、熱電素子30の冷却面32の冷却効果を冷却用ハウジング10の往流路10c及び冷却対象物収容室10bに与えることができるため、冷却用ハウジング10内を効率良く冷却させることができる。また、熱電素子30の放熱面34が、放熱用ハウジング20の流路20cに対応する領域を覆う伝熱材36bを介して放熱用ハウジング20の下面と接触していることにより、熱電素子30の放熱面34から放出された熱を放熱用ハウジング20の流路20cの全域に分散させることができるため、放熱効率を向上させることができる。
【0033】
駆動装置40は、放熱用ハウジング20の放熱用ファン収容室20aの上部(図1中上側)に設けられた載置台41と、載置台41に載置された電動機42と、冷却用ハウジング10の冷却用ファン収容室10aに収容された冷却用ファン44と、放熱用ハウジング20の放熱用ファン収容室20aに収容された放熱用ファン46と、一端が電動機42の出力軸と接続されると共に、軸上に放熱用ファン46及び冷却用ファン44が並列して設けられ、電動機42の回転駆動を放熱用ファン46及び冷却用ファン44に伝達可能な回転軸48と、回転軸48の放熱用ファン46と冷却用ファン44との間に設けられ、電動機42から冷却用ファン44への回転駆動の伝達を解除可能なクラッチ49とを備えている。
【0034】
回転軸48は、樹脂やセラミックなどの熱を極力伝達しない材料から形成されている。冷却用ファン44は、電動機42の回転駆動が、熱を極力伝達しない材料から形成された回転軸48によって伝達されることにより回転し、断熱材38で覆われた冷却用ハウジング10内における熱電素子30の冷却面32近傍の冷気、すなわち冷却用ハウジング10の往流路10c及び冷却対象物収容室10bの冷気が、効率よく冷却フィン16によりさらに冷却された後に冷却対象物2に当たるように、冷却用ハウジング10内の空気を流動させるものである。また、放熱用ファン46は、電動機42の回転駆動が回転軸48によって伝達されることにより回転し、放熱用ハウジング46内における熱電素子30の放熱面34近傍の熱気、すなわち放熱用ハウジング20の流路20cの熱気が放熱フィン26により吸熱された後に流出口20bから大気に放出されるように、放熱用ハウジング20内の空気を流動させるものである。クラッチ49は、例えば電磁クラッチであり、制御部50の命令に基づいて接続及び解放が行なわれるように構成されている。
【0035】
制御部50は、図2に示すように、制御部50の電源として機能する電源装置58と、駆動装置40の電動機42の回転数などを設定入力可能な入力部57とを備えている。
この制御部50は、駆動装置40のクラッチ49及び冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bに設けられた開口検知手段13と接続されており、開口検知手段13によって冷却用ハウジング10の蓋部材12の開放が検知された際に、クラッチ49を解放させて、電動機42から冷却用ファン44への回転駆動の伝達を解除させるように構成されている。
また、制御部50は、熱電素子30及び冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bに設けられた温度センサ14と接続されており、操作者により入力された指示及び温度センサ14により感知された温度に基づいて、熱電素子30に供給する電流の供給量を制御するように構成されている。
さらに、制御部50は、駆動装置40の電動機42と接続されており、入力部57により入力された回転数に基づいて、電動機42の回転数を制御するように構成されている。
【0036】
次に、本実施形態に係る冷却装置1の使用例について説明する。本実施形態に係る冷却装置1は、例えば図3に示すような蒸留用加熱装置100の試料管110を挿脱する開口側(図3中右側)に装着されて使用される。図3は、本実施形態に係る冷却装置1を蒸留用加熱装置100に取り付けた状態を示す説明図である。この蒸留用加熱装置100は、試料管110を挿脱可能な開口(図示せず)を有し、発熱可能な有底円筒状のヒータ管120と、ヒータ管120から発した熱を断熱するために設けられ、ヒータ管120を収容可能な開口(図示せず)を有する有底円筒状の断熱管130と、断熱管130にヒータ管120が収容された状態で、ヒータ管120及び断熱管130の開口側を固定する固定部140と、ヒータ管120の開口を開放及び閉塞可能なシャッタ部材150と、ヒータ管120内の温度を検知する温度センサ160と、断熱管130の外側に設けられた火傷防止用のカバー部材170とを備えている。この蒸留用加熱装置100に使用される試料管110は、従来の蒸留用加熱装置200に用いられている試料管210と同様のものを用いることができる。
【0037】
このように構成された蒸留用加熱装置100を用いて蒸留する場合には、まず、試料管110の試料球112に試料を入れると共に、分離した成分を回収させたい冷却球(例えば冷却球117)を蒸留用加熱装置100のヒータ管120の開口よりも外側に位置させると共に、本実施形態に係る冷却装置1の冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bに挿入させる。この試料管110の挿入は、冷却装置1の冷却用ハウジング10の蓋部材12を開けて、冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bの開口部を開放させることにより行なうことができる。また、試料管110の試料球112及び他の冷却球をヒータ管120内に挿入し、ヒータ管120の開口をシャッタ部材150により閉塞する。
次に、ヒータ管120を発熱させ、所定の温度でヒータ管120内の試料管110を加熱すると共に、図示しない減圧手段によって試料管110内を減圧することにより、沸点の低い成分を気化させる。
気化した成分は、試料管110の開口側(図3中右側)に向けて流動するが、この際、図示しない回転手段により試料管110を軸回転させると共に、本実施形態に係る冷却装置1によって試料管110の冷却球117を冷却することにより、気化した成分を冷却球117内において液化させて回収する。
沸点の低い成分の回収を終えた後は、シャッタ部材150によりヒータ管120の開口を開放させると共に、次に分離した成分を回収させたい他の冷却球を本実施形態に係る冷却装置1の冷却用ハウジング10の冷却対象物収容室10bに挿入させ、再度シャッタ部材150によりヒータ管120の開口を閉塞させる。その後、ヒータ管120の加熱温度を段階的に上昇させると共に、上記手順を繰り返すことにより、沸点の低い成分から順に異なる冷却球にそれぞれ回収することができる。
【0038】
本実施形態に係る冷却装置1は、制御部50が開口検知手段13の検知結果に基づいてクラッチ49を制御することにより、冷却対象物2(例えば冷却球117)を冷却用ハウジング10内に挿脱する際に冷却用ファン44の回転駆動を停止させることができるため、冷却用ハウジング10内への大気の吸引を防止して大気中の水分が冷却フィン16に付着することを抑制し、冷却対象物の挿脱に起因する冷却効率の低下を防止することができる。
また、本実施形態に係る冷却装置1は、制御部50が操作者により入力された指示及び温度センサ14の感知結果に基づいて熱電素子30に供給する電流の供給量を制御することにより、熱電素子30の冷却面32の温度を変化させて冷却用ハウジング10内の温度をコントロールすることができ、また、熱電素子30に供給する電流を逆に流すことにより、冷却面32と放熱面34とを反転させ、冷却装置1の長時間の連続動作により冷却用ハウジング10内に生じた結露等を除去することができる。
さらに、本実施形態に係る冷却装置1は、入力部57により入力された回転数に基づいて電動機42の回転数を制御することにより、例えば冷却用ハウジング10内の冷却温度が下がらない場合などに、電動機42の回転数を上げて冷却用ファン44の回転数を上げ、冷却用ハウジング10内の温度を下げることができる。
【0039】
本発明に係る冷却装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。例えば、本実施形態に係る冷却装置1において、駆動装置40は、放熱用ハウジング20の放熱用ファン収容室20aの上部に載置されるとしたが、これに限定されず、例えば図4に示すように、冷却用ハウジング10と放熱用ハウジング20との間に介在されるとしても良い。
【0040】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、クラッチ49は、電磁クラッチであり、開口検知手段13が冷却用ハウジング10の蓋部材12の開放を検知した際に、制御部50の命令に基づいて、電動機42から冷却用ファン44への回転駆動の伝達を解除させるように構成されているとしたが、これに限定されず、操作者が任意のタイミングで、電動機42から冷却用ファン44への回転駆動の伝達を解除することができる手動クラッチであるとしても良い。
【0041】
さらに、本実施形態に係る冷却装置1において、冷却用ハウジング10の往流路10c及び冷却対象物収容室10bに冷却フィン16が設けられ、放熱用ハウジング20の流路20cに放熱フィン26が設けられるとしたが、これに限定されず、これら冷却フィン16及び放熱フィン26を設けない構成としても良い。
【0042】
またさらに、本実施形態に係る冷却装置1において、冷却用ハウジング10及び放熱用ハウジング20には、空気の流動方向を規制する方向板15、24、25が設けられるとしたが、これに限定されず、これら方向板15、24、25は、設けられていなくても良い。
【0043】
またさらに、本実施形態に係る冷却装置1は、放熱用ハウジング20を備える構成としたが、これに限定されず、放熱用ハウジング20を備えない構成としても良い。この場合、熱電素子30の放熱面34からの放熱は、吸熱せずに大気に放出させる構成とすることができる。
【0044】
本実施形態に係る冷却装置1は、冷却用ハウジング10内において空気を循環させる構成とすることにより、冷却装置を小型化し、空気を冷却するための十分な流路を確保できない場合であっても、十分な冷却を可能とすることができるが、これに限定されず、復流路10dを備えず、冷却対象物2に当たった空気を大気に放出させる構成としても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 冷却装置、10 冷却用ハウジング、12 蓋部材、20 放熱用ハウジング、30 熱電素子、32 冷却面、34 放熱面、40 駆動装置、44 冷却用ファン、46 放熱用ファン、48 回転軸、49 クラッチ、50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象物を収容可能な冷却用ハウジングと、前記冷却用ハウジング内を冷却し、該冷却用ハウジング外に放熱するように冷却面及び放熱面が配置された熱電素子と、前記熱電素子の冷却面近傍の冷気が前記冷却対象物に当たるように、前記冷却用ハウジング内の空気を流動させる冷却用ファンと、前記熱電素子の放熱面近傍の空気を流動させる放熱用ファンとを備える冷却装置であって、
前記冷却用ハウジングには、前記冷却対象物を該冷却用ハウジング内に挿入可能とする開口部が形成されていると共に、該開口部を開閉可能な蓋部材が設けられ、
前記冷却用ファン及び前記放熱用ファンは、回転軸を介して同一の駆動源から回転駆動が伝達されるように構成され、
前記冷却用ファンに回転駆動を伝達する前記回転軸には、該冷却用ファンへの回転駆動の伝達を解除可能なクラッチが設けられている
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記クラッチは、前記冷却用ハウジングの開口部が開口状態の際に、前記冷却用ファンへの回転駆動の伝達を解除状態とするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却用ハウジングには、前記冷却用ファンにより流動する空気の流路に設けられ、該冷却用ハウジング内を流動する空気を冷却可能な少なくとも1つの冷却フィンが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却フィンは、前記冷却用ファンにより流動する空気の流動方向に対して斜めに傾けられて設けられていることを特徴とする請求項3記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却用ハウジングには、前記冷却用ファンにより流動する空気の流動する方向を規制する方向板が更に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷却用ハウジングは、前記蓋部材により前記開口部が閉塞された際に密閉空間を形成し、前記冷却用ファンにより流動して前記冷却対象物に当たった空気が循環するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の冷却装置。
【請求項7】
前記回転軸は、熱を伝達しにくい材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242102(P2011−242102A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117150(P2010−117150)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)