説明

冷却装置

【課題】天板とフィンの波の頂部との接合を確保すると共に冷却性能を向上させる。
【解決手段】コルゲートフィン30の波の頂部32に外側(上側)に突出して先端部が内側(下側)に向くよう屈曲する突出屈曲片36を複数形成しておく。底板と天板とによってコルゲートフィン30を挟持して装置を構成すると、突出屈曲片36の屈曲部が天板に当接するから、この屈曲部が天板と波の頂部32とのロー付けの起点となり、天板とコルゲートフィン30の波の頂部32との接合をより確実に行なうことができる。また、突出屈曲片36は、屈曲部が天板に当接して押さえられ、先端部が更に内側(下側)に向くように変形するから、冷却媒体の流れを乱し、冷却媒体の熱の拡散を良好なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、詳しくは、波板状のフィンを底板と天板とによって挟持した状態でフィンと底板と天板とをロー付けし、底板と天板との間のフィンの隙間に冷却媒体を通流することによって天板上に取り付けられた発熱体を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却装置としては、冷却板を構成する薄肉平板の冷媒流路に、突起を形成した薄板を内挿するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように突起を形成した薄板を内挿することにより、冷媒流路を流れる冷媒の流れ方向に、冷却板内面に向かう方向成分を発生させて、冷却板内面と冷媒間の対流熱伝達率を向上させるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−250753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車両や電気自動車のモータを駆動するインバータの冷却装置として、波板状のフィンを底板と天板で挟持した状態でロー付けし、底板と天板との間のフィンの隙間に冷却媒体を流して天板状に取り付けられたインバータを冷却するものを用いる場合、冷却性能を確保するためには、天板とフィンの波の頂部との接合が確実に行なわれている必要があるが、天板の製造誤差やフィンの製造誤差などにより天板とフィンの波の頂部との接合が十分に確保できない場合が生じ、冷却性能を低下させてしまう。
【0005】
本発明の冷却装置は、天板とフィンの波の頂部との接合を確保すると共に冷却性能を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の冷却装置は、
波板状のフィンを底板と天板とによって挟持した状態で前記フィンと前記底板と前記天板とをロー付けし、前記底板と前記天板との間のフィンの隙間に冷却媒体を通流することによって前記天板上に取り付けられた発熱体を冷却する冷却装置において、
前記フィンは、少なくとも前記天板側にロー付けされる側の波の頂部には、頂部が連続する方向に外側に突出して先端が内側に向くよう屈曲する突出屈曲片が複数形成されてなる、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の冷却装置では、波板状のフィンを底板と天板とによって挟持して底板と天板に圧力を作用すると、フィンの天板側に波の頂部に形成された複数の突出屈曲片の外側に突出して先端が内側に向くよう屈曲する屈曲部が天板に当接し、作用された圧力により突出屈曲片の先端を内側に突出させる。この状態でロー付けすれば、突出屈曲片の屈曲部が天板に当接しているから、天板とフィンの波の頂部との接合を確保することができる。この結果、冷却性能を確保することができる。また、突出屈曲片は、先端が内側に突出するから、突出屈曲片によって底板と天板との間のフィンの隙間に流れる冷却媒体の流れを乱すことによって装置の冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としての冷却装置20を分解して示す分解斜視図である。
【図2】コルゲートフィン30の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】コルゲートフィン30の突出屈曲片36を含む波の頂部32の断面を示す断面図である。
【図4】実施例の冷却装置20の冷却媒体が流れる様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としての冷却装置20を分解して示す分解斜視図である。実施例の冷却装置20は、図示するように、インバータのスイッチング素子などの発熱素子10(n)を基盤12(n)を介して間接的に冷却する装置として構成されており、熱伝導性に優れた材料(例えば、ステンレスやアルミなどの金属)により形成された底板26と、同じく熱伝導性に優れた材料(例えば、ステンレスやアルミなどの金属)により形成された天板28と、同じく熱伝導性に優れた材料(例えば、ステンレスやアルミなどの金属)により波状に形成され底板26と天板28とに挟持されるコルゲートフィン30と、水やオイルなどの冷却媒体を底板26と天板28とによって形成される箱体に供給したり排出したりする供給管22および排出管24と、によって構成されている。発熱素子10(n)は、供給管22に供給されコルゲートフィン30の波の隙間を通って排出管24から排出される冷却媒体によりコルゲートフィン30,天板28,基盤12(n)を介して冷却される。
【0012】
図2はコルゲートフィン30の一部を拡大して示す部分拡大図であり、図3はコルゲートフィン30の波の頂部32に沿った断面を示す断面図である。図2,3に示すように、コルゲートフィン30は、波の頂部32と波の底部34とが交互に繰り返す波状に形成されており、波の頂部32には、付け根部37から波の頂部32より外側(上側)に突き出して屈曲部38で屈曲し更に先端部39が波の頂部32より内側(下側)に突き出す突出屈曲片36が形成されている。
【0013】
図4は、実施例のコルゲートフィン30を用いて冷却装置20を構成したときのコルゲートフィン30の波の頂部32に沿った断面を用いて冷却媒体により発熱素子10(n)を冷却している様子を示す説明図である。図示するように、突出屈曲片36は、外側(上側)に突出した屈曲部38が天板28に当接して押さえられることにより、先端部39が更に内側(下側)に向くように付け根部37から変形する。実施例の冷却装置20では、この状態で天板28とコルゲートフィン30とをロー付けする。このとき、コルゲートフィン30に形成された突出屈曲片36の屈曲部38は天板28に当接しているから、この屈曲部38が天板28とコルゲートフィン30の波の頂部32とのロー付けの起点となり、天板28とコルゲートフィン30の波の頂部32との接合をより確実に行なうものとすることができる。突出屈曲片36の先端部39は、冷却媒体の流れを乱すから、冷却媒体の熱の拡散を良好なものとし、冷却装置20の冷却性能を向上させることができる。
【0014】
以上説明した実施例の冷却装置20によれば、コルゲートフィン30の波の頂部32に外側(上側)に突出して先端部39が内側(下側)に向くよう屈曲する突出屈曲片36を複数形成しておき、底板26と天板28とによってコルゲートフィン30を挟持して装置を構成することにより、突出屈曲片36の屈曲部38と天板28とを当接させ、この屈曲部38を天板28とコルゲートフィン30の波の頂部32とのロー付けの起点とすることにより、天板28とコルゲートフィン30の波の頂部32との接合をより確実に行なわせることができる。この結果、天板28とコルゲートフィン30との熱伝導を良好なものとし、冷却装置20の冷却性能を向上させることができる。また、突出屈曲片36は、屈曲部38が天板28に当接して押さえられ、先端部39が更に内側(下側)に向くように変形するから、冷却媒体の流れを乱し、冷却媒体の熱の拡散を良好なものとすることができる。この結果、冷却装置20の冷却性能を更に向上させることができる。
【0015】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、コルゲートフィン30が「フィン」に相当し、底板26が「底板」に相当し、天板28が「天板」に相当する。また、コルゲートフィン30に形成された突出屈曲片36が「突出屈曲片」に相当し、発熱素子10(n)および基盤12(n)が「発熱体」に相当する。
【0016】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0017】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、冷却装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
10(n) 発熱素子、12(n) 基盤、20 冷却装置、22 供給管、24 排出管、26 底板、28 天板、30 コルゲートフィン、32 頂部、34 底部、36 突出屈曲片、37 付け根部、38 屈曲部、39 先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波板状のフィンを底板と天板とによって挟持した状態で前記フィンと前記底板と前記天板とをロー付けし、前記底板と前記天板との間のフィンの隙間に冷却媒体を通流することによって前記天板上に取り付けられた発熱体を冷却する冷却装置において、
前記フィンは、少なくとも前記天板側にロー付けされる側の波の頂部には、頂部が連続する方向に外側に突出して先端が内側に向くよう屈曲する突出屈曲片が複数形成されてなる、
ことを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105842(P2013−105842A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247711(P2011−247711)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】