説明

冷却装置

【課題】強制空冷式の冷却装置に適したヒートシンクを押出し成形により製造する際に、フィンを精度良く形成することが可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置10は、上面に発熱素子4が載置されるベースプレート14とベースプレート14の下面に形成された複数の平行なフィン16を備えるヒートシンク12を備えている。複数のフィン16は、ベースプレート14の下面で偏在して配置されている。複数のフィン16の直上が発熱素子4の配置領域になっている。平行に並んだ複数のフィン16のうち両端のフィン16aは、他のフィン16bに比べて厚く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、発熱素子を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や燃料電池自動車などの電動車両においては、バッテリから供給される直流電力をインバータ装置によって交流電力に変換し、これにより交流モータを回転させて、駆動力を生成する。インバータ装置を構成するスイッチング素子としては、IGBTや還流ダイオードと呼ばれるダイオードが用いられる。これらの素子には大電流が流れるため、電気抵抗は小さいものの発熱量が大きい。そのため、これらの素子は発熱素子と呼ばれることがある。本明細書でも、IGBTなどの発熱量の大きいスイッチング素子を発熱素子と称する。発熱に伴ってこれらの素子が高温となり過ぎると、素子の熱破壊を招いてしまう。
【0003】
発熱素子を過熱による熱破壊から保護するために、フィン付きヒートシンクを備えており、ブロワ(ファン)から送風される冷却用の空気によって発熱素子を冷却する、強制空冷式の冷却装置が用いられる。このような強制空冷式の冷却装置が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
強制空冷式の冷却装置では、上面に発熱素子が搭載されるベースプレートと、ベースプレートの下面に形成された複数のフィンを備えるヒートシンクが用いられる。このようなヒートシンクは、生産性の高い押出し成形によって製造することが一般的である。
【0006】
上記のようなヒートシンクでは、熱容量を確保するために、ベースプレートは厚く形成される。他方、フィンからの放熱性を確保するために、個々のフィンは薄く形成され、フィンピッチも狭く形成される。このような形状のヒートシンクを押出し成形によって製造する場合、ベースプレートの面内方向に材料が流動しやすく、フィンの面内方向(すなわちベースプレートの板厚方向)に材料が流動しにくくなる。その結果、フィンの先端まで材料が十分に流動せず、フィンを精度良く形成することが困難となる。このような傾向は、ベースプレートの下面においてフィンが一方に偏在しており、ヒートシンクの断面形状が左右非対称となっている場合に、特に顕著となる。なお、ベースプレートの中心ではなく偏った位置に発熱素子を配置する予定の場合に、発熱素子の配置に合わせて、フィンが一方に偏在するヒートシンクが採用されることになる。
【0007】
本明細書では、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、強制空冷式の冷却装置に適したヒートシンクを押出し成形により製造する際に、フィンを精度良く形成することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、発熱素子を冷却する冷却装置を開示する。その冷却装置は、上面に発熱素子が載置されるベースプレートとベースプレートの下面に形成された複数の平行なフィンを備えるヒートシンクを備えている。複数のフィンは、ベースプレートの下面で偏在して配置されている。別言すれば、フィン群の中心がベースプレートの中心から外れた場所に位置する。複数のフィンの直上が発熱素子の配置領域となっている。平行に並んだ複数のフィンのうち両端のフィンは、他のフィンに比べて厚く形成されている。
【0009】
上記の冷却装置では、ベースプレートの下面に形成される平行に並んだ複数のフィンのうち、両端のフィンが厚く形成されている。これにより、ベースプレートの面内方向への材料の流動性とフィンの面内方向(ベースプレートの板厚方向)への材料の流動性のバランスが取れ、フィンの先端まで材料が十分に流動させることができる。これにより、フィンを精度良く形成することができる。
【0010】
また、上記の冷却装置では、両端のフィンのみを厚く形成し、他のフィンを薄く形成している。従って、フィンの間に形成される冷却用空気の通路の断面積を必要以上に狭めてしまうことがない。
【0011】
上記の冷却装置では、複数のフィンを覆う平板状のカバーをさらに備えており、カバーが締結部材を介して両端のフィンに固定されていることが好ましい。
【0012】
ブロワ(ファン)から送風される冷却用空気の通路を形成するために、フィンをカバーで覆うことがある。このようなカバーは、締結部材によってヒートシンクに固定される。一般に、上面に載置される発熱素子を保護するために、ベースプレートには貫通孔を設けることができない。従って、カバーを固定するための締結部材を締結する穴をベースプレートに形成する場合には、その穴が貫通しないようにベースプレートを厚くする必要がある。これに対して、上記の冷却装置では、ベースプレートに穴を形成する必要がないので、ベースプレートを不必要に厚くする必要がない。
【発明の効果】
【0013】
本明細書が開示する技術によれば、強制空冷式の冷却装置に適したヒートシンクを押出し成形により製造する際に、フィンを精度良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】冷却装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】冷却装置10の底面図である。
【図3】冷却装置10の図2のIII−III断面で見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1−図3は、本実施例の冷却装置10の構成を示している。冷却装置10は、パワー半導体モジュール2を冷却するために用いられる。本実施例では、冷却装置10およびパワー半導体モジュール2は、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車などの電動車両に使用される。本実施例のパワー半導体モジュール2は、電動車両のバッテリとモータジェネレータの間で電力を変換するインバータ装置の一部である。パワー半導体モジュール2は、IGBT等のスイッチング素子といった発熱量の大きな発熱素子の回路(発熱素子回路4)と、制御用ICといった発熱量の小さな非発熱素子の回路(非発熱素子回路6)を備えている。
【0016】
冷却装置10は、ヒートシンク12を備えている。ヒートシンク12は、平板状のベースプレート14と、ベースプレート14の下面に形成されたフィン16を備えている。ベースプレート14の上面には、発熱素子回路4と非発熱素子回路6が載置されている。本実施例では、発熱素子回路4は、ベースプレート14の上面の一方側(図1の左上側)に偏在しており、非発熱素子回路6は、ベースプレート14の上面の他方側(図1の右下側)に偏在している。フィン16は、発熱素子回路4の直下に配置されている。従って、発熱素子回路4と同様に、フィン16はベースプレート14の下面の一方側に偏在している。フィン16は互いに平行に直線状に伸びる複数の凸条により構成されている。フィン16のうち、両端に位置するフィン16aは、他のフィン16bに比べて、厚く形成されている。ヒートシンク12は、アルミニウム製であって、押出し成形によって製造される。ベースプレート14の上面の領域のうち、発熱素子回路4が載置される領域が、素子の配置領域に相当する。
【0017】
本実施例のように、ベースプレート14とフィン16を備えるヒートシンク12を押出し成形によって製造する場合、押出し成形時のフィン16への材料の流動性を確保する必要がある。一般的なヒートシンク12では、熱容量を確保するために、ベースプレート14は厚く形成される。他方、フィン16からの放熱性を確保するために、個々のフィン16は薄く形成され、フィンピッチも狭く形成される。このような形状のヒートシンク12を押出し成形によって製造する場合、ベースプレート14の面内方向(図3の左右方向)に材料が流動しやすく、フィン16の面内方向(図3の上下方向)に材料が流動しにくくなり、フィン16を精度良く形成することが困難となる。このような傾向は、ベースプレート14の下面においてフィン16が一方に偏在しており、ヒートシンク12の断面形状が左右非対称となっている場合に、特に顕著となる。なお、断面形状が左右非対称であるとは、典型的には、フィン16の長手方向に交差する断面において、平行なフィン16群の中心がベースプレート14の中心から外れていることである。本実施例では、両端のフィン16aを厚く形成することで、フィン16の面内方向(図3の上下方向)にも材料が流動しやすくしている。これにより、フィン16を精度良く形成することができる。
【0018】
ヒートシンク12の下面には、フィン16を覆うように、ダクトカバー18が取り付けられている。ダクトカバー18は、樹脂製であって、射出成形によって製造される。ダクトカバー18は、ボルト18aを介して両端のフィン16aに固定されている。発熱素子回路4の直下には、ダクトカバー18の内面と、ベースプレート14の下面と、フィン16の外面により区画された複数の空気通路20が形成される。空気通路20の端部には、空気流入口20aと空気流出口20bが形成される。
【0019】
本実施例の冷却装置10では、両端のフィン16aのみを厚く形成し、他のフィン16bを薄く形成している。従って、空気通路20の断面積を必要以上に狭めてしまうことがない。
【0020】
本実施例の冷却装置10では、両端のフィン16aが厚く形成されているので、両端のフィン16aにボルト18aを締結するためのボルト穴18bを形成することができる。一般に、発熱素子回路4や非発熱素子回路6を保護するために、ベースプレート14には貫通孔を設けることができない。従って、ダクトカバー18を固定するためのボルト穴をベースプレート14に形成する場合には、ボルト穴が貫通しないようにベースプレート14を厚くする必要がある。これに対して、本実施例の冷却装置10では、ベースプレート14にボルト穴を形成する必要がないので、ベースプレート14を不必要に厚くする必要がない。
【0021】
冷却装置10は、ブロワ22を備えている。ブロワ22によって送風された冷却用空気は、フィン16へ送られる。
【0022】
なお、ブロワ22は、ベースプレート14の下方の、フィン16の側方のスペース(図3においてフィン16の右側のスペース)に配置し、U字型の空気流路によってブロワ22からの空気をフィン16に送る構成としてもよい。このような構成とすることで、ベースプレート14の下面でフィン16が形成されていない箇所をデッドスペースとすることなく、有効に活用することができる。ブロワ22をこのように配置することによって、冷却装置10のサイズを小さくすることができる。
【0023】
冷却装置10の動作について説明する。発熱素子回路4が発熱して高温となると、その熱はヒートシンク12へ伝達する。この際に、ブロワ22を回転駆動することにより、空気流入口20aを介して、空気通路20に冷却用空気が流入する。空気通路20に流れ込んだ空気は、フィン16と熱交換した後、空気流出口20bから排出される。これによって、ヒートシンク12が冷却されて、発熱素子回路4が冷却される。
【0024】
なお、上記では発熱素子回路4を備えるパワー半導体モジュール2がインバータ装置の一部である場合について説明したが、パワー半導体モジュール2は、DC/DCコンバータ等の他の装置の一部であってもよい。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
2 パワー半導体モジュール
4 発熱素子回路
6 非発熱素子回路
10 冷却装置
12 ヒートシンク
14 ベースプレート
16 フィン
16a 両端のフィン
16b 他のフィン
18 ダクトカバー
18a ボルト
18b ボルト穴
20 空気通路
20a 空気流入口
20b 空気流出口
22 ブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子を冷却する冷却装置であって、
上面に前記発熱素子が載置されるベースプレートと、前記ベースプレートの下面に形成された複数の平行なフィンを備えるヒートシンクと、
前記複数のフィンは、前記ベースプレートの下面で偏在して配置されており、
前記複数のフィンの直上が前記発熱素子の配置領域であり、
平行に並んだ前記複数のフィンのうち両端のフィンが他のフィンに比べて厚く形成されている冷却装置。
【請求項2】
前記複数のフィンを覆う平板状のカバーをさらに備えており、
前記カバーが締結部材を介して前記両端のフィンに固定されている請求項1の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−110186(P2013−110186A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252406(P2011−252406)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】