説明

冷却装置

【課題】スリットノズルから吐出される冷却水の水量分布をスリットノズルの長手方向で均一にする。
【解決手段】冷却装置1は、長手方向に複数の供給孔5が形成された冷却水供給管2を有している。冷却水供給管2の外側には、この冷却水供給管2を取り囲むヘッダー6が設けられ、ヘッダー6の上面には冷却水の流出口8が形成されている。ヘッダー6の流出口8側には、スリットノズル9の側面9aがヘッダー6の側面6aに接して設けられ、スリットノズル9の上端には冷却水の流入口13が形成されている。流出口8と流入口13は冷却水流路15で接続されている。冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止している間でも、ヘッダー6の内部に滞留している冷却水によって、スリットノズル9を冷却することができる。なお、スリットノズル9は、ヘッダー6の内部に設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理後の高温の鋼材を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば熱間圧延後に高温で搬出される鋼材を冷却する場合、従来より、水平方向に複数配置されたパイプから鋼材上に冷却水を吐出する、いわゆるパイプラミナーノズルが使用されている。このパイプラミナーノズルを使用した場合、鋼材に対して点状に冷却水が噴射されるために、また各パイプからの水量自体も変化しやすいために、鋼材を均一に冷却することができなかった。
【0003】
そこで、鋼材の幅方向にスリット状の吐出口を有して、鋼材を均一に冷却するスリットノズルが提案されている。図10に示すように、このスリットノズル100は、内管101と外管102の二重構造を有する本体部と、本体部の下部に設けられた液溜部103と、液溜部103の下部に設けられ、スリット状の吐出口を有するノズル先端部104とを有している。液溜部103は、細長い箱形状で上面が開口し、外管102の下部に形成された液流出部102aを開口上面が取り囲むように外管102に取り付けられる。開口上面に対向する液溜部103の底面は、液溜部103の長手方向に沿って2列に配した整流孔103bを有する整流板103aを形成している。そして、外管102の液流出部102aから流出した冷却水は一旦液溜部103内に滞留し、その間に実質的に均一に圧縮された後、整流孔103bから整流されて排出される。この排出された冷却水は、ノズル先端部104の吐出口から鋼材に吐出される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−28537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼材の製造工程において、鋼材の厚み、品種によっては、従来のスリットノズル100下を鋼材が移動中でも、鋼材に冷却水を吐出しない場合がある。すなわち、スリットノズル100に冷却水を通水させないことがある。この場合、高温の鋼材からの輻射熱により、スリットノズル100のノズル先端部104が歪み、ノズル先端部104から吐出される冷却水の水量分布がスリットノズル100の長手方向で不均一になるおそれがあった。そしてこの場合、鋼材を均一に冷却することができなかった。
【0006】
またスリットノズル100のスリット幅が狭ければ、鋼材の冷却の際に吐出する冷却水の水量を減少させることができ、鋼材に応じて冷却水の吐出流量を制御しやすくなる。しかしながら、スリット幅が狭い場合、鋼材からの輻射熱によるノズル先端部104の歪みは、スリット幅が広い場合と比べてさらに大きくなるので、スリット幅の狭いスリットノズル100は実現されていなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、スリットノズルのスリット幅を狭くしても、当該スリットノズルから吐出される冷却水の水量分布をスリットノズルの長手方向で均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明の冷却装置は、
鋼材に冷却水を吐出して、当該鋼材を冷却する冷却装置であって、
冷却水の供給孔を有する冷却水供給管と、
前記冷却水供給管を取り囲み、冷却水の流出口が上部に形成されたヘッダーと、
前記流出口から流出した冷却水の流入口が上部に形成され、流入した冷却水を鋼材に吐出するスリット状の吐出口が下部に形成されたスリットノズルと、
前記ヘッダーの流出口と前記スリットノズルの流入口とを接続する冷却水流路と、
を有し、

前記スリットノズルの側面の少なくとも一部が、前記ヘッダーの側面と接しており、
前記スリットノズルの内部に鉛直方向に延びる複数の格子状またはハニカム状の構造の通孔によって冷却水の流れを整流する整流器が設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明の冷却装置によれば、ヘッダーの上部に冷却水の流出口が形成されているので、冷却水供給管への冷却水の供給を停止している間でも、ヘッダーの内部には冷却水が滞留する。そしてスリットノズルの側面の少なくとも一部がヘッダーの側面と接しているので、ヘッダー内部に滞留している冷却水によって、ヘッダーと接するスリットノズルの側面が冷却される。この冷却の効果は、スリットノズル全体に伝播し、スリットノズルの先端部も冷却される。それ故、従来のように高温の鋼材からの輻射熱によってスリットノズルの先端部が歪むことがないので、スリット幅がスリットノズルの長手方向で均一にすることができる。したがって、スリットノズルから吐出される冷却水の水量分布をスリットノズルの長手方向で均一にすることができる。
【0010】
またスリット幅を狭くした場合でも、上述のようにスリットノズルの先端部が冷却される。したがって、スリット幅の狭いスリットノズルを使用して鋼材を冷却することもできるので、鋼材の冷却の際に吐出する冷却水の水量を減少させることができ、鋼材に応じて冷却水の吐出流量を制御しやすくなる。
【0011】
また鋼材を冷却する際に、鋼材の温度制御が必要な場合には、冷却水をできるだけ早く吐出する、あるいは冷却水の吐出をできるだけ早く停止する必要がある。本発明の冷却装置によれば、冷却水供給管からの冷却水の供給を停止しても、ヘッダーの内部の冷却水はスリットノズルから吐出されない。したがって、冷却水供給管からの冷却水の供給を停止すると、直ちにスリットノズルからの冷却水の吐出を停止することができる。また、冷却水供給管からの冷却水の供給を停止している間でも、ヘッダーの内部には冷却水が滞留しているので、再度冷却水の供給を開始する場合、ヘッダーの内部に滞留している冷却水が押し流されてスリットノズルから吐出される。したがって、冷却水供給管から冷却水を供給すると、直ちにスリットノズルから冷却水を吐出することができる。
【0012】
前記スリットノズルと前記ヘッダーが接する側面は、それぞれ銅または銅合金からなっていてもよい。このように熱伝導率の良い銅または銅合金を使用することにより、スリットノズルの側面をより効率よく冷却することができる。
【0013】
前記ヘッダーの鉛直断面形状は、四角形であってもよい。このように断面形状が四角形であればヘッダーとスリットノズルが接する面積が大きくなるので、スリットノズルの冷却効果を向上させることができる。
【0014】
別の観点による本発明の冷却装置は、鋼材に冷却水を吐出して、当該鋼材を冷却する冷却装置であって、
冷却水の供給孔を有する冷却水供給管と、
前記冷却水供給管を取り囲み、冷却水の流出口が上部に形成されたヘッダーと、
前記流出口から流出した冷却水の流入口が上部に形成され、流入した冷却水を鋼材に吐出するスリット状の吐出口が下部に形成されたスリットノズルと、
前記ヘッダーの流出口と前記スリットノズルの流入口とを接続する冷却水流路と、
を有し、
前記スリットノズルは前記ヘッダーの内部に設置され、
前記スリットノズルの先端部は前記ヘッダーの下部から突出しており、
前記スリットノズルの内部に鉛直方向に延びる複数の格子状またはハニカム状の構造の通孔によって冷却水の流れを整流する整流器が設けられていることを特徴としている。
本発明の冷却装置によれば、スリットノズルはヘッダーの内部の冷却水内に浸漬されるので、スリットノズルの両側面を冷却することができ、スリットノズルの冷却効果をより向上させることができる。
【0015】
前記スリットノズルの流入口は、前記ヘッダーの流出口と同一又はそれより高い位置に形成されていてもよい。これによって、冷却水供給管から冷却水を供給すると、直ちにスリットノズルから冷却水を吐出することができる。また冷却水供給管からの冷却水の供給を停止すると、直ちにスリットノズルからの冷却水の吐出を停止することができる。
【0016】
前記ヘッダー内部の前記スリットノズルの側面は、銅または銅合金からなっていてもよい。このように熱伝導率の良い銅または銅合金を使用することにより、スリットノズルの側面をより効率よく冷却することができる。
【0017】
前記供給孔は、前記冷却水供給管の鉛直断面から見て、当該冷却水供給管の鉛直中心軸から中心角が45度以内の下端側の外周面に形成されていてもよい。発明者らが調べたところ、この範囲の外周面に供給孔が形成されていれば、供給孔から供給される冷却水をヘッダーの内部に滞留させることなく、ヘッダーの流出口へ流すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スリットノズルをヘッダー内の冷却水によって冷却できるので、スリットノズルのスリット幅を狭くしてもスリットノズルの先端部が歪まず、当該スリットノズルから吐出される冷却水の水量分布をスリットノズルの長手方向で均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態にかかる冷却装置の側面図である。
【図2】図1の冷却装置をA−A方向から見た側面図である。
【図3】図1の冷却装置のB−B方向の縦断面図である。
【図4】冷却水供給管の側面図である。
【図5】ヘッダーの側面図である。
【図6】冷却水供給管の供給孔の位置を示す説明図である。
【図7】冷却水供給管の供給孔の大きさを変化させた冷却水供給管の側面図である。
【図8】スリットノズルをヘッダーの内部に配置した冷却装置の縦断面図である。
【図9】図8の冷却装置をC−C方向から見た横断面図である。
【図10】従来のスリットノズルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1及び図2は本実施の形態にかかる冷却装置1の側面図であり、図3は冷却装置1の縦断面図である。
【0021】
冷却装置1は、図1〜図3に示すように円管の冷却水供給管2を有している。冷却水供給管2の長手方向の一端には、冷却水が供給される開口部3が形成され、開口部3には、図示しない冷却水供給源が接続されている。冷却水供給管2の他端は、サイドプレート4によって塞がれている。冷却水供給管2の外周面には、図4に示すように複数の同一径を有する供給孔5が長手方向に一列に形成されている。図4は、斜め下方から見た冷却水供給管2の側面図である。供給孔5は、図3に示すように、例えば冷却水供給管2の鉛直中心軸Xから中心角αが45度の下端側の外周面であって、後述するヘッダー6の流出口8とヘッダー6の対角線方向に対向する位置に形成されている。
【0022】
冷却水供給管2の外側には、図1〜図3に示すように冷却水供給管2を取り囲むヘッダー6が設けられている。ヘッダー6の内部の冷却水供給管2は、図3に示すように、ヘッダー6の中央に配置されている。ヘッダー6は中空の筒であり、その鉛直断面形状は正方形となっている。ヘッダー6の長手方向の両端は、サイドプレート4、7によって塞がれており、サイドプレート7には冷却水供給管2が挿通している。ヘッダー6の上面には、図3及び図5に示すように、ヘッダー6内の冷却水を流出させる流出口8がヘッダー6の長手方向に複数形成されている。図5は、上方から見たヘッダー6の側面図である。また流出口8は、図3に示すように、冷却水供給管2の供給孔5とヘッダー6の対角線方向に対向する位置に形成されている。
【0023】
ヘッダー6の流出口8側には、図3に示すように鋼材に冷却水を吐出するスリットノズル9が設けられている。スリットノズル9のヘッダー6側の側面9aは、ヘッダー6の流出口8側の側面6aと接している。スリットノズル9は、その先端部10でヘッダー6側に細くなっている。すなわち、スリットノズル9の側面9aは平板状であるのに対し、側面9aに対向する側面9bは中心付近から下方がヘッダー6側に折れ曲がっている。スリットノズル9の先端部10の下端は開口して冷却水を吐出するスリット状の吐出口11を形成し、吐出口11の長手方向の長さは、鋼材の幅よりも大きくなっている。吐出口11は、スリットノズル9と接するヘッダー6の側面6aに近接し、ヘッダー6の下面付近に形成されている。スリットノズル9の内部には、冷却水の流れを整流する整流器12が設けられている。整流器12には、例えば鉛直方向に延びる複数の格子状またはハニカム状の構造の通孔が用いられ、冷却水は通孔を通過することでその流れが整流される。スリットノズル9の上端は開口して、ヘッダー6の流出口8から流出した冷却水が流入する流入口13を形成している。流入口13は、流出口8と同じ高さに形成されている。
【0024】
ヘッダー6とスリットノズル9の上方には、図3に示すように、直方体形状のブロック体14が設けられている。ブロック体14の下部には断面形状が略長方形の溝が形成されており、この溝がヘッダー6の流出口8とスロットノズル9の流入口13を覆って、流出口8と流入口13を接続する冷却水流路15を形成している。
【0025】
なお、上述した冷却水供給管2、ヘッダー6、スリットノズル9、ブロック体14の材質には、例えばステンレス鋼あるいは普通鋼が用いられる。
【0026】
本実施の形態にかかる冷却装置1は以上のように構成されており、次にこの冷却装置1で行われる鋼材の冷却について説明する。なお、図3中の矢印は冷却水の流れの向きを示している。
【0027】
先ず、開口部3から冷却水供給管2の内部に冷却水が供給される。冷却水供給管2の内部の冷却水は、供給孔5からヘッダー6の内部に流入する。供給孔5から流入した冷却水は、上下2方向に分かれ、冷却水供給管2の外周面とヘッダー6の側面の間を通って流出口8へ流れる。流出口8から流出した冷却水は、冷却水流路15を通って、流入口13からスリットノズル9の内部に流入する。スリットノズル9内の冷却水は、整流器12でその流れが整流され、吐出口11から鋼材に向けて吐出される。
【0028】
次に鋼材への冷却水の吐出を停止する場合、開口部3から冷却水供給管2の内部への冷却水の供給を停止する。そうするとヘッダー6内の冷却水の流れが停止し、冷却水流路15の内部とスリットノズル9の内部にある冷却水のみが吐出口11から吐出される。したがって、スリットノズル9からの冷却水の吐出を停止している間は、冷却水供給管2とヘッダー6の内部に冷却水が滞留している。なお、このように冷却水供給管2への冷却水の供給を停止している間でも、スリットノズル9の下方を鋼材が搬送されている場合があり、かかる場合スリットノズル9は鋼材からの輻射熱を受ける。そしてヘッダー6の内部に滞留している冷却水によって、ヘッダー6の側面6aと接するスリットノズル9の側面9aが冷却される。
【0029】
そして再び鋼材への冷却水の吐出を開始する場合、開口部3から冷却水供給管2の内部に冷却水が供給される。そして供給された冷却水がヘッダー6内に滞留している冷却水を押し流し、冷却水は冷却水流路15、スリットノズル9の内部を通って、吐出口11から鋼材に吐出される。
【0030】
以上のように、スリットノズル9の吐出口11からの冷却水の吐出あるいは吐出の停止を行い、一連の鋼材の冷却が行われる。
【0031】
以上の実施の形態によれば、ヘッダー6の上面に流出口8が形成されているので、冷却水供給管2への冷却水の供給を停止している間でも、ヘッダー6の内部には冷却水が滞留する。そしてスリットノズル9の側面9aがヘッダー6の側面6aと接しているので、ヘッダー6の内部に滞留している冷却水によって、スリットノズル9の側面9aが冷却される。このときヘッダー6の鉛直断面が正方形であるので、ヘッダー6の側面6aとスリットノズル9の側面9aが接する面積が大きく、側面9aの冷却効果は大きい。そしてこの冷却の効果は、スリットノズル9の全体に伝播し、スリットノズル9の吐出口11は、ヘッダー6内の冷却水が先端部10を冷却するようにヘッダー6の側面6aに近接しているので、スリットノズル9の先端部10も冷却される。それ故、従来のように高温の鋼材からの輻射熱によってスリットノズル9の先端部10が歪むことがなく、吐出口11のスリット幅がスリットノズル9の長手方向で均一にすることができる。したがって、スリットノズル9から吐出される冷却水の水量分布をスリットノズル9の長手方向で均一にすることができる。
【0032】
また吐出口11のスリット幅を狭くした場合でも、上述のようにスリットノズル9の先端部10が冷却される。したがって、スリット幅の狭いスリットノズル9を使用して鋼材を冷却することもできるので、鋼材の冷却の際に吐出する冷却水の水量を減少させることができ、鋼材に応じて冷却水の吐出流量を制御しやすくなる。
【0033】
また吐出口11から鋼材への冷却水の吐出を停止する場合に、冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止すると、冷却水流路15の内部とスリットノズル9の内部にある冷却水のみが吐出口11から吐出され、ヘッダー6の内部の冷却水は吐出されない。したがって、冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止すると、直ちに吐出口11からの冷却水の吐出を停止することができる。また、冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止中にヘッダー6の内部に冷却水が滞留しているので、再度冷却水の供給を開始する場合に、ヘッダー6の内部に滞留している冷却水が押し流されて吐出口11から吐出される。したがって、冷却水供給管2から冷却水を供給すると、直ちに吐出口11から冷却水を吐出することができる。このように鋼材への冷却水の吐出、あるいは吐出の停止に対して冷却装置1の応答性が高いので、鋼材の正確な温度制御が可能になる。
【0034】
またスリットノズル9の内部に整流器12を設けているので、吐出口11から吐出される冷却水の流れに乱流や縮流が生じない。したがって、冷却水を鋼材に対して均一に吐出することができる。
【0035】
以上の実施の形態では、ヘッダー6とスリットノズル9にステンレス鋼が用いられていたが、ヘッダー6とスリットノズル9が接する側面6a、9aの材質に例えば銅または銅合金を用いてもよい。このように熱伝導率の良い銅または銅合金を側面に使用することにより、スリットノズル9の側面9aをより効率よく冷却することができる。
【0036】
以上の実施の形態では、冷却水供給管2の供給孔5は、冷却水供給管2の鉛直中心軸Xから中心角αが45度の下端側の外周面であって、ヘッダー6の流出口8とヘッダー6の対角線方向に対向する位置に形成されていたが、図6に示すように、供給孔5は、冷却水供給管2の鉛直中心軸Xから中心角αが45度以内の下端側の外周面であれば、どの位置に形成されていてもよい。発明者らが調べたところ、前記範囲の外周面に供給孔5が形成されていれば、供給孔5から供給される冷却水を、ヘッダー6の内部に滞留させることなく、流出口8へ流すことができる。また、供給孔5がヘッダー6の側面6a側に形成された場合、側面6a側に多量の冷却水を流すことができるので、スリットノズル9の冷却効果を向上させることができる。
【0037】
以上の実施の形態では、複数の供給孔5は同一の径を有していたが、図7に示すように、開口部3からサイドプレート4の方向に供給孔5の径を小さくしていってもよい。開口部3から供給されて冷却水供給管2の内部を流れる冷却水は、冷却水供給管2内での水流側分布により、サイドプレート4側の供給孔5からの吐出水量が多くなる。このような水量分布を補正するために開口部3側の供給孔5の径を大きくすることにより、供給孔5から流出する冷却水の水量分布を冷却水供給管2の長手方向により均一にすることができる。
【0038】
以上の実施の形態では、スリットノズル9はヘッダー6の外部に設けられていたが、図8に示すようにスリットノズル20をヘッダー6の内部に設けてもよい。スリットノズル20の対向する側面20a及び20bは中心付近から下方がスリットノズル20の中心方向にそれぞれ折れ曲がり、スリットノズル20の先端部21は細くなっている。先端部21はヘッダー6の下部から突出しており、先端部21の下端が開口して形成されたスリット状の吐出口22から冷却水を吐出できるようになっている。スリットノズル20の内部には、冷却水の流れを整流する例えば格子状またはハニカム状の構造の整流器23が設けられている。スリットノズル9の上部はヘッダー6の上部から突出しており、その上端が開口して冷却水が流入する流入口24を形成している。
【0039】
ヘッダー6の流出口8は、スリットノズル20より冷却水供給管2側の上面に形成されている。ヘッダー6の上方には、ヘッダー6の流出口8とスリットノズル20の流入口24を覆う略直方体のカバー25が設けられている。このカバー25が、流出口8と流入口24を接続する冷却水流路26を形成している。またヘッダー6の上面には、流出口8と同一形状の流出口27が、スリットノズル20を挟んで流出口8と対向する位置に形成されている。そして上述のカバー25によって、流出口27と流入口24を接続する冷却水流路28が形成されている。また、ヘッダー6の長手方向の長さは、図9に示すように、スリットノズル20の長手方向の長さよりも長くなっている。そしてスリットノズル20の両端側のヘッダー6内の空間によって、冷却水供給管2から、スリットノズル20を挟んで冷却水供給管2と対向するヘッダー6内の空間29への冷却水流路30が形成されている。すなわち、冷却水供給管2から供給された冷却水の一部は、冷却水流路30を通ってヘッダー6内の空間29に流入し、冷却水流路28を通ってスリットノズル20に流入する。なお、ヘッダー6の長手方向の長さは、スリットノズル20の長手方向の長さより微かでも長ければよく、ほぼ同等の長さとすることもできる。
【0040】
冷却水供給管2の供給孔5は、例えば冷却水供給管2の鉛直中心軸X上の下端側の外周面に設けられている。なお、供給孔5は、冷却水供給管2の鉛直中心軸Xから中心角αが45度以内の下端側の外周面であれば、どの位置に形成されていてもよい。この場合、供給孔5から供給される冷却水を、ヘッダー6の内部に滞留させることなく、流出口8へ流すことができる。
【0041】
かかる例によれば、冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止した場合、ヘッダー6の内部に滞留する冷却水によって、スリットノズル20は両側面20a及び20bから冷却される。したがって、スリットノズル20の冷却効果を向上させることができる。また、冷却水供給管2から冷却水が供給されている間では、流出口27によって、スリットノズル20を挟んで冷却水供給管2と対向する空間29を冷却水が通水するので、スリットノズル20の側面20aと側面20bを同一温度に冷却することができる。
【0042】
また、スリットノズル20の上部はヘッダー6の上部から突出しており、スリットノズル20の流入口24は、ヘッダー6の流出口8よりも高い位置にあるので、冷却水供給管2の冷却水の供給を停止すると、ヘッダー6の内部の冷却水は吐出されない。したがって、冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止すると、直ちに吐出口22からの冷却水の吐出を停止することができる。また、冷却水供給管2からの冷却水の供給を停止中にヘッダー6の内部に冷却水が滞留しているので、再度冷却水の供給を開始する場合に、ヘッダー6の内部に滞留している冷却水が押し流されて吐出口22から吐出される。したがって、冷却水供給管2からの冷却水の供給と、直ちに吐出口22から冷却水を吐出することができる。
【0043】
なお、ヘッダー6の内部にあるスリットノズル20の両側面20a及び20bの材質に例えば銅または銅合金を用いてもよい。冷却水に浸漬している両側面20a及び20bに熱伝導率のよい銅または銅合金を用いることにより、スリットノズル20の両側面20a及び20bをより効率よく冷却することができる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば熱処理後の高温の鋼材を冷却する冷却装置に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 冷却装置
2 冷却水供給管
3 開口部
5 供給孔
6 ヘッダー
6a スリットノズルと接するヘッダーの側面
8 流出口
9a ヘッダーと接するスリットノズルの側面
9 スリットノズル
10 先端部
11 吐出口
12 整流器
13 流入口
14 ブロック体
15 冷却水流路
20 スリットノズル
20a スリットノズル側面(冷却水供給管側)
20b スリットノズル側面(冷却水供給管と反対側)
21 先端部
22 吐出口
23 整流器
24 流入口
25 カバー
26 冷却水流路
27 流出口
28 冷却水流路
29 スリットノズルを挟んで冷却水供給管と対向するヘッダー内の空間
30 冷却水流路
α 中心角
S ヘッダーの側面6aと冷却水供給管の鉛直中心軸との間の水平距離
T ヘッダーの側面6bと冷却水供給管の鉛直中心軸との間の水平距離
X 冷却水供給管の鉛直中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材に冷却水を吐出して、当該鋼材を冷却する冷却装置であって、
冷却水の供給孔を有する冷却水供給管と、
前記冷却水供給管を取り囲み、冷却水の流出口が上部に形成されたヘッダーと、
前記流出口から流出した冷却水の流入口が上部に形成され、流入した冷却水を鋼材に吐出するスリット状の吐出口が下部に形成されたスリットノズルと、
前記ヘッダーの流出口と前記スリットノズルの流入口とを接続する冷却水流路と、
を有し、
前記スリットノズルの側面の少なくとも一部が、前記ヘッダーの側面と接しており、
前記スリットノズルの内部に鉛直方向に延びる複数の格子状またはハニカム状の構造の通孔によって冷却水の流れを整流する整流器が設けられていることを特徴とする、冷却装置。
【請求項2】
前記スリットノズルと前記ヘッダーが接する側面は、それぞれ銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記ヘッダーの鉛直断面形状は、四角形であることを特徴とする、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
鋼材に冷却水を吐出して、当該鋼材を冷却する冷却装置であって、
冷却水の供給孔を有する冷却水供給管と、
前記冷却水供給管を取り囲み、冷却水の流出口が上部に形成されたヘッダーと、
前記流出口から流出した冷却水の流入口が上部に形成され、流入した冷却水を鋼材に吐出するスリット状の吐出口が下部に形成されたスリットノズルと、
前記ヘッダーの流出口と前記スリットノズルの流入口とを接続する冷却水流路と、
を有し、
前記スリットノズルは前記ヘッダーの内部に設置され、
前記スリットノズルの先端部は前記ヘッダーの下部から突出しており、
前記スリットノズルの内部に鉛直方向に延びる複数の格子状またはハニカム状の構造の通孔によって冷却水の流れを整流する整流器が設けられていることを特徴とする、冷却装置。
【請求項5】
前記スリットノズルの流入口は、前記ヘッダーの流出口と同一又はそれより高い位置に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ヘッダー内部の前記スリットノズルの側面は、銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項4又は5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記供給孔は、前記冷却水供給管の鉛直断面から見て、当該冷却水供給管の鉛直中心軸から中心角が45度以内の下端側の外周面に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−13937(P2013−13937A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173623(P2012−173623)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2007−106768(P2007−106768)の分割
【原出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】