説明

冷却装置

【課題】発熱源を安定して冷却できる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却部30へ冷媒を循環させて冷却部30内の発熱源を冷却する冷却装置1は、冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器14と、熱交換器14から冷却部30へ流れる液状の冷媒を貯留する気液分離器40と、気液分離器40から冷却部30へ流れる冷媒の経路に並列に接続されたポンプ70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、発熱源へ冷媒を循環させて発熱源を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の一つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。このような車両において、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータおよびバッテリなどの電気機器は、電力の授受によって発熱する。そのため、これらの電気機器を冷却する必要がある。
【0003】
そこで、車両用空調装置として使用される蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、発熱体を冷却する技術が提案されている。たとえば特開平11−23081号公報(特許文献1)には、冷凍サイクルの中間圧力の冷媒が発熱機器を冷却するように構成された冷却器と、この冷却器の上流側および下流側にそれぞれ配置され、外部信号により弁開度が制御可能な電気膨張弁を設け、中間圧力の冷媒で発熱機器の冷却を行なう装置が開示されている。
【0004】
特開2005−90862号公報(特許文献2)には、空調用の冷凍サイクルの減圧器、蒸発器および圧縮機をバイパスするバイパス通路に、発熱体を冷却するための発熱体冷却手段を設けた、冷却システムが開示されている。特開2007−69733号公報(特許文献3)には、膨張弁から圧縮機へ至る冷媒通路に、空調用の空気と熱交換する熱交換器と、発熱体と熱交換する熱交換器と、を並列に配置し、空調装置用の冷媒を利用して発熱体を冷却するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−23081号公報
【特許文献2】特開2005−90862号公報
【特許文献3】特開2007−69733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2,3に開示されている冷却装置では、電気機器などの発熱源を冷却するための冷却経路が蒸気圧縮式冷凍サイクル内に組み入れられており、発熱源を冷却するとき、減圧器を通過した後の気液二相状態の冷媒が発熱源を冷却する冷媒経路に導入される。発熱源を冷却するための冷媒の流量が減少すると、発熱源の冷却性能が低下してしまう問題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、発熱源を安定して冷却できる、冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷却装置は、発熱源へ冷媒を循環させて発熱源を冷却する冷却装置であって、冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器と、熱交換器から発熱源へ流れる液状の冷媒を貯留する蓄液器と、蓄液器から発熱源へ流れる冷媒の経路に並列に接続されたポンプと、を備える。
【0009】
上記冷却装置において好ましくは、ポンプから吐出され経路へ戻る冷媒の流れ方向を、蓄液器から発熱源へ向かう方向に規制する、流れ規制部を備える。
【0010】
上記冷却装置において好ましくは、ポンプから吐出された冷媒が経路へ戻る位置に配置されたアスピレータを備え、冷媒はアスピレータを経由して経路へ流入する。
【0011】
上記冷却装置において好ましくは、発熱源を冷却した後の冷媒の状態を示すデータを取得するセンサを備え、ポンプは、当該データに基づいて起動または停止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷却装置によると、発熱源へ流れる冷媒の流量を確保できるので、発熱源の冷却能力の低下を抑制し、発熱源を安定して冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】冷却装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すアスピレータの構成の詳細を示す模式図である。
【図3】ポンプの運転制御を示すフローチャートである。
【図4】変形例のアスピレータの構成の詳細を示す模式図である。
【図5】図4中に示すV−V線に沿うアスピレータの断面模式図である。
【図6】他の変形例のアスピレータの構成の詳細を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
図1は、冷却装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、冷却装置1は、熱交換器14と、冷却部30と、気液分離器40とを備える。冷却装置1はまた、熱交換器14と気液分離器40とを連通する冷媒通路22と、気液分離器40と冷却部30とを連通する冷媒通路34と、冷却部30と熱交換器14とを連通する冷媒通路36と、を含む。冷却装置1は、熱交換器14、気液分離器40および冷却部30が、冷媒通路22,34および36によって連結されて構成される。
【0016】
冷媒は、熱交換器14と冷却部30と気液分離器40とが冷媒通路22,34,36によって順次接続された冷媒循環流路を通って、冷却装置1内を循環する。なお、冷却装置1を循環して流れる冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニア、フロン類または水などを用いることができる。
【0017】
熱交換器14は、冷媒蒸気を、外部媒体へ放熱させることにより冷媒液とする。熱交換器14は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器14の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器14は、車両の走行によって発生する自然の通風またはエンジン冷却用のラジエータファンなどの冷却ファンからの強制通風によって供給された冷却風と冷媒との間で、熱交換を行なう。熱交換器14における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0018】
気液分離器40は、熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒の経路上に配置されている。気液分離器40は、熱交換器14から流出する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する。気液分離器40の内部には、液相冷媒である冷媒液と、気相冷媒である冷媒蒸気と、が蓄蔵されている。気液分離器40には、冷媒通路22,34と、後述する吸込経路74とが連結されている。
【0019】
熱交換器14の出口側において冷媒は、飽和液と飽和蒸気とが混合した気液二相状態の湿り蒸気の状態にある。熱交換器14から流出した冷媒は、冷媒通路22を通って気液分離器40へ供給される。冷媒通路22から気液分離器40へ流入する気液二相状態の冷媒は、気液分離器40の内部において気相と液相とに分離される。気液分離器40は、熱交換器14によって凝縮された冷媒を液体状の冷媒液とガス状の冷媒蒸気とに分離して、一時的に蓄える。
【0020】
分離された冷媒液は、冷媒通路34を経由して、気液分離器40の外部へ流出する。気液分離器40内の液相中に配置された冷媒通路34の端部は、液相冷媒の気液分離器40からの流出口を形成する。気液分離器40の内部では、冷媒液が下側、冷媒蒸気が上側に溜まる。気液分離器40から冷媒液を導出する冷媒通路34の端部は、気液分離器40の底部に連結されている。冷媒通路34を経由して、気液分離器40の底側から冷媒液のみが気液分離器40の外部へ送り出される。これにより、気液分離器40は、気相冷媒と液相冷媒との分離を確実に行なうことができる。
【0021】
冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるHV(Hybrid Vehicle)機器と、冷媒が流通する配管である冷却通路とを含む。HV機器は、発熱源の一例である。冷却通路の一方の端部は、冷媒通路34に接続される。冷却通路の他方の端部は、冷媒通路36に接続される。冷媒通路34は、気液分離器40から冷却部30に、液相の冷媒を流通させるための通路である。冷媒通路36は、冷却部30から熱交換器14に冷媒を流通させるための通路である。
【0022】
気液分離器40において気液分離された冷媒のうち、液相の冷媒液が、気液分離器40から冷媒通路34を経由して、冷却部30へ向かって流通する。冷却部30へ流通し、冷却通路を経由して流れる冷媒は、発熱源としてのHV機器から熱を奪って、HV機器を冷却させる。冷却部30は、気液分離器40において分離され冷媒通路34を経由して冷却通路へ流れる液相の冷媒を用いて、HV機器を冷却する。冷却部30において、冷却通路内を流通する冷媒と、HV機器と、が熱交換することにより、HV機器は冷却され、冷媒は加熱される。
【0023】
冷却部30は、冷却通路においてHV機器と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部30は、たとえば、HV機器の筐体に冷却通路の外周面が直接接触するように形成された冷却通路を有する。冷却通路は、HV機器の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路を流通する冷媒と、HV機器との間で、熱交換が可能となる。
【0024】
HV機器は、冷却装置1を循環する冷媒の経路の一部を形成する冷却通路の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路の外部にHV機器が配置されるので、冷却通路の内部を流通する冷媒の流れにHV機器が干渉することはない。そのため、冷却装置1を循環する冷媒に作用する圧力損失を増大させることなく、HV機器を冷却することができる。
【0025】
代替的には、冷却部30は、HV機器と冷却通路との間に介在して配置された任意の公知のヒートパイプを備えてもよい。この場合HV機器は、冷却通路の外周面にヒートパイプを介して接続され、HV機器から冷却通路へヒートパイプを経由して熱伝達することにより、冷却される。HV機器をヒートパイプの加熱部とし冷却通路をヒートパイプの冷却部とすることで、冷却通路とHV機器との間の熱伝達効率が高められるので、HV機器の冷却効率を向上できる。たとえばウィック式のヒートパイプを使用することができる。
【0026】
ヒートパイプによってHV機器から冷却通路へ確実に熱伝達することができるので、HV機器と冷却通路との間に距離があってもよく、HV機器に冷却通路を接触させるために冷却通路を複雑に配置する必要がない。その結果、HV機器の配置の自由度を向上することができる。
【0027】
HV機器は、電力の授受によって発熱する電気機器を含む。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
【0028】
冷媒通路22は、冷媒を熱交換器14から気液分離器40に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路22を経由して、熱交換器14と気液分離器40との間を、熱交換器14の出口から気液分離器40の入口へ向かって流れる。冷媒通路34は、冷媒を気液分離器40から冷却部30に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路34を経由して、気液分離器40と冷却部30との間を、気液分離器40の出口から冷却部30の入口へ向かって流れる。冷媒通路36は、冷媒を冷却部30から熱交換器14に流通させるための通路である。冷媒は、冷媒通路36を経由して、冷却部30と熱交換器14との間を、冷却部30の出口から熱交換器14の入口へ向かって流れる。
【0029】
冷媒は、HV機器を冷却するとき、HV機器から蒸発潜熱を受けて蒸発する。HV機器との熱交換により気化された冷媒蒸気は、冷媒通路36を経由して、熱交換器14へ流れる。熱交換器14において、車両の走行風またはエンジン冷却用のラジエータファンからの通風により、冷媒蒸気は冷却されて凝縮する。熱交換器14で液化した冷媒液は、冷媒通路22,34を経由して、冷却部30へ戻る。
【0030】
冷却部30と熱交換器14とを経由する環状の経路によって、HV機器を加熱部とし熱交換器14を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。ヒートパイプを利用してHV機器の冷却が行なわれるので、HV機器の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。そのため、HV機器の冷却装置1のために必要な構成を低減でき、装置構成を単純にできるので、冷却装置1の製造コストを低減することができる。加えて、HV機器の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、HV機器の冷却のための消費動力を低減することができる。
【0031】
図1には、地面60が図示されている。地面60に対して垂直な鉛直方向において、冷却部30は、熱交換器14よりも下方に配置されている。熱交換器14と冷却部30との間に冷媒を循環させる環状の経路において、冷却部30が下方に配置され、熱交換器14が上方に配置される。熱交換器14は、冷却部30よりも高い位置に配置される。
【0032】
この場合、冷却部30で加熱され気化した冷媒蒸気は、環状の経路内を上昇して熱交換器14へ到達し、熱交換器14において冷却され、凝縮されて液冷媒となり、重力の作用により環状の経路内を下降して冷却部30へ戻る。つまり、冷却部30と、熱交換器14と、これらを連結する冷媒の経路とによって、サーモサイフォン式のヒートパイプが形成される。ヒートパイプを形成することで冷却部30から熱交換器14への熱伝達効率を向上することができるので、動力を加えることなく、HV機器をより効率よく冷却することができる。
【0033】
気液分離器40の内部には、飽和液状態の冷媒液が貯留されている。気液分離器40は、その内部に液状の冷媒である冷媒液を一時的に貯留する蓄液器として機能する。気液分離器40内に所定量の冷媒液が溜められることにより、負荷変動時にも気液分離器40から冷却部30へ流れる冷媒の流量を維持できる。気液分離器40が液だめ機能を有し、負荷変動に対するバッファとなり負荷変動を吸収できるので、HV機器の冷却性能を安定させることができる。
【0034】
気液分離器40の出口から冷却部30の入口へ向かって流れる冷媒が流通する経路は、気液分離器40と冷却部30とを連通する冷媒通路34と、ポンプ70に冷媒液を流通させるための吸込経路74および吐出経路76と、を含む。
【0035】
吸込経路74は、気液分離器40とポンプ70とを連通し、気液分離器40で分離された液相冷媒をポンプ70に流通させるための経路である。冷媒は、吸込経路74を経由して、気液分離器40とポンプ70との間を、気液分離器40の出口からポンプ70の入口へ向かって流れる。
【0036】
冷媒通路34と吐出経路76との合流する位置には、アスピレータ80が設けられている。吐出経路76は、ポンプ70とアスピレータ80とを連通し、ポンプ70から吐出された冷媒をアスピレータ80を経由して冷媒通路34へ流通させるための経路である。冷媒は、吐出経路76を経由して、ポンプ70とアスピレータ80との間を、ポンプ70の出口からアスピレータ80へ向かって流れる。
【0037】
気液分離器40から直接アスピレータ80に至る、冷媒通路34の一部を構成する経路は、第一通路を形成する。吸込経路74、ポンプ70および吐出経路76を含み、気液分離器40からポンプ70を経由してアスピレータ80に至る経路は、第二通路を形成する。第一通路と第二通路とは、並列に接続されている。冷却装置1は、気液分離器40からアスピレータ80へ至る複数の経路を備え、当該複数の経路は並列に接続されている。ポンプ70は、並列に接続された複数の経路のうちの一方の経路である、第二通路上に設けられている。
【0038】
冷却部30に対して冷媒の流れの下流側には、冷却部30から流出する冷媒の温度を計測するための温度センサ71が配置されている。温度センサ71を用いて、冷却部30から流出する冷媒の温度を示すデータを取得することにより、発熱源であるHV機器の冷却状態を把握する。温度センサ71で取得されたデータは、配線72を経由して、ポンプ70に伝達される。ポンプ70は、当該データに基づいて起動または停止するように、制御される。
【0039】
冷却部30から流出する冷媒の温度が所定のしきい値を下回っていれば、HV機器は十分に冷却されていると判断され、ポンプ70は停止する。一方、冷却部30から流出する冷媒の温度が所定のしきい値以上であれば、HV機器の冷却が不十分であると判断され、ポンプ70を起動する。ポンプ70の起動によって、吐出経路76を経由して冷媒通路34に冷媒液が強制的に供給され、冷媒通路34から冷却部30に供給される冷媒液の流量を増加させる。冷却部30の冷却通路を流れる冷媒液を増加させることにより、HV機器の冷却能力を向上させる。
【0040】
このようにすれば、ポンプ70が停止している状態においてHV機器の冷却能力が不足していると判断されたときに、直ちにポンプ70を起動させて冷媒液を強制輸送し、冷却部30に液相冷媒を供給できる。そのため、HV機器の冷却能力を早期に回復でき、HV機器の温度を低下させることができるので、HV機器が過熱する不具合を回避することができる。たとえば、車両の登坂時などに、HV機器の負荷が急激に上昇してHV機器の発熱量が急上昇した場合に、ポンプ70から強制的に冷媒液を冷却部30に供給して、HV機器の冷却能力を向上させることができる。
【0041】
ポンプ70は、冷媒通路34に対し並列に接続された冷媒の経路に配置されるので、ポンプ70の停止中に、気液分離器40から冷媒通路34を通って冷却部30へ向かう冷媒の流れに対する障害物となることがない。そのため、冷却部30で気化した冷媒蒸気の浮力と熱交換器14で液化した冷媒液に作用する重力とを駆動力とした、外部動力を必要とせずに冷却装置1内を循環する、冷媒の流れを形成できる。したがって、ヒートパイプの原理で冷却部30から熱交換器14へ熱を伝達できるので、省動力化を阻害することなく、自然回流式の冷却システムによって発熱源を確実に冷却することができる。
【0042】
一方、自然回流による冷媒の循環のみでは発熱源の冷却能力が不足する場合には、ポンプ70を起動して、冷却部30に供給される冷媒液の流量を増加させる。たとえば、車両が停止中でHV機器の発熱がなく冷媒流動が殆どない状態から、車両の急加速など急に大きな冷却要求が生じることがあると、自然回流のみでは冷媒流れの応答遅れが生じてHV機器の冷却が不足するので、このような場合にポンプ70を起動することができる。これにより冷媒量不足を補って発熱源を冷却する能力を向上できるので、発熱源の冷却不足を早期に解消することができる。かつ、ポンプ70を備えることにより、冷却装置1の最大冷却性能を向上することができる。
【0043】
なお、温度センサ71によって冷却部30の出口の温度を監視することのほか、圧力センサを冷却部30の出口に配置して、冷却部30から流出する冷媒の圧力を監視することにより、ポンプ70による冷却部30への冷媒液の供給が必要か否かを判断してもよい。HV機器を冷却した後の冷却部30の下流側の冷媒の状態を示すデータを取得することにより、当該データを用いてポンプ70の起動または停止を制御できるのであれば、温度、圧力のほか、冷媒の状態を示す任意のデータをセンサにより取得してもよい。
【0044】
図2は、図1に示すアスピレータ80の構成の詳細を示す模式図である。図2に示すように、ポンプ70から吐出された冷媒液が流れる吐出経路76は、直立管77と平行管78とを有する。直立管77は、冷媒通路34の延在方向に対し交差(典型的には直交)して延在するように、配置される。直立管77は、冷媒通路34の内部と外部とに亘って延在するように、冷媒通路34を貫通して配置される。平行管78は、冷媒通路34の内部に配置される。平行管78は、冷媒通路34の延在方向と平行に配置される。
【0045】
ポンプ70により吐出されて、平行管78の内部を流れて開口79を経由して冷媒通路34内へ流入する冷媒液の流れを、図2中の実線矢印A1で示す。気液分離器40から冷媒通路34へ流れアスピレータ80に到達する冷媒液の流れを、図2中の点線矢印A2で示す。平行管78の内部を流れる冷媒の流れ方向と、冷媒通路34の内部を流れる冷媒の流れ方向と、が平行になるように、冷媒通路34に対する平行管78の位置決めが行なわれる。
【0046】
平行管78は、冷媒の流れ方向を規制する流れ規制部として機能する。平行管78が適切に配置されることにより、ポンプ70から吐出され冷媒通路34へ戻る冷媒は、気液分離器40から冷媒通路34を通って直接冷却部30へ向かう冷媒の流れ方向に沿って流れるように、その流れ方向を規制される。流れ規制部を設けて冷媒通路34へ戻る冷媒の流れ方向を規制することにより、ポンプ70から吐出された冷媒が冷媒通路34へ流れるときの圧力損失を抑制できる。そのため、ポンプ70の起動により冷却部30への冷媒液の流量を増大させる効果を、より高めることができる。加えて、吐出経路76から冷媒通路34へ噴出する冷媒流れの粘性によって冷媒通路34内の冷媒液の流れを促進させる効果を、より高めることができる。
【0047】
流れ規制部は、たとえば冷媒通路34と吐出経路76との合流地点よりも冷媒流れの上流側に逆止弁を設けるなど、任意の構成を有してもよい。しかしながら、本実施の形態では、冷媒通路34内の冷媒の流れ方向に沿うように平行管78を延在させ、冷媒の流れ方向の下流側の開口79から冷媒を冷媒通路34内に流入させることによって、冷媒通路34へ戻る冷媒の流れ方向を規制している。このようにすれば、簡単で安価な構成にでき、かつ、冷媒通路34を流通する冷媒の圧力損失の増加を抑制できるので、より好適な流れ規制部を形成することができる。
【0048】
アスピレータ80は、ポンプ70から吐出された冷媒が冷媒通路34へ戻る位置に配置されている。吐出経路76の平行管78から冷媒通路34内へ冷媒液が噴出して、冷媒通路34内に噴流を形成する。この噴流により、冷媒通路34の内部の、当該噴流の周辺に、負圧が発生する。これにより、冷媒液の流れを利用して冷媒通路34内に減圧状態を作り出す、アスピレータ80の機能が達成される。
【0049】
アスピレータ80により形成された負圧発生領域に向かって、冷媒通路34内の冷媒液が図2中の右向き方向へ流れる。これにより、冷媒通路34の内部の冷媒液の流れが促進される。加えて、平行管78から噴出する噴流の粘性によっても、冷媒通路34内部の冷媒液の流れが促進される。吐出経路76の平行管78から噴出する冷媒を駆動流として、冷媒通路34内を冷却部30へ向かう冷媒の流れが形成される。この冷媒通路34内の冷媒の流れが、冷却装置1内を自然回流しようとする冷媒の流れとなる。
【0050】
ポンプ70を起動させることにより、冷媒通路34内に駆動流を発生させ、冷媒通路34から冷却部30へ向かって流れる冷媒の流量を確保することができる。その後、ポンプ70を停止させたときには、冷却装置1内部を循環する冷媒の流れが形成されているので、自然回流式の冷却システムにスムーズに移行することができる。
【0051】
図3は、ポンプ70の運転制御を示すフローチャートである。図3を参照して、温度センサ71によって取得される冷却部30の出口の冷媒温度と連動させた、ポンプ70の運転制御について説明する。
【0052】
まずステップ(S10)において、HV機器を冷却した後の冷却部30の出口の冷媒温度を、温度センサ71で検出する。冷媒温度の計測値が、目標とする冷媒温度のしきい値以上であるかどうかを判断する。冷媒温度の計測値が目標値以上であると判断された場合、続いてステップ(S20)において、ポンプ70を起動させ、ポンプ70から吐出経路76に冷媒液を吐出させる。ポンプ70の運転によって冷媒液にエネルギーが与えられ、吐出経路76、冷媒通路34を経由して、冷却部30へ冷媒液が移送される。
【0053】
次にステップ(S30)において、冷媒温度の計測値が、目標とする冷媒温度のしきい値以上であるかどうかを、再度判断する。冷媒温度の計測値が依然として目標値以上であると判断されれば、ポンプ70の運転が続行される。冷却部30の出口の冷媒温度の計測値が目標値未満であると判断されれば、続いてステップ(S40)において、ポンプ70を停止する。つまり、ポンプ70の運転は、冷却部30の出口の冷媒温度の計測値が目標値未満にまで低下したと判断されるまで、続行される。
【0054】
その後制御フローはリターンされ、再度ステップ(S10)での冷却部30の出口の冷媒温度の監視へと戻る。ステップ(S10)において冷媒温度の計測値が目標値未満であると判断された場合もまた、制御フローはリターンされ、冷却部30の出口の冷媒温度の監視が続けられる。
【0055】
冷却部30の出口における冷媒の状態を監視して、HV機器の冷却が不十分であると判断された場合にのみポンプ70を運転し、HV機器が十分に冷却されていると判断された場合にはポンプ70の運転を行なわない。このような簡単な制御によって、ポンプ70を起動または停止させることができる。加えて、ポンプ70を設けるための構成は、ポンプ70自身、ポンプ70へ冷媒液を供給するための吸込経路74、およびポンプ70から冷媒通路34へ冷媒液を戻すための吐出経路76のみの、非常にシンプルかつコンパクトな構成である。したがって、簡単で安価な構成によって、冷却装置1内を循環する自然回流式の冷却システムと、ポンプ70を利用した強制対流式の冷却システムとを両立でき、両システムのメリットを享受することができる。
【0056】
図1に示すように、本実施の形態では、吸込経路74の上流側の端部は、気液分離器40内の液相の冷媒を貯留する液溜め部に接続されている。このような構成とすれば、十分な量の液相の冷媒を貯留する気液分離器40から直接冷媒液を吸込経路74へ流出させ、確実に冷媒液をポンプ70に供給することができる。そのため、液体を移送する仕様のポンプ70のトラブルを抑制することができるので望ましい。一方、冷媒通路34の途中から吸込経路74を分岐させてもよく、この場合、吸込経路74の長さを短くできるので簡単で安価な構成にすることができ、また吸込経路74の配置計画もより容易になる。
【0057】
図4は、変形例のアスピレータ80の構成の詳細を示す模式図である。図5は、図4中に示すV−V線に沿うアスピレータ80の断面模式図である。図2に示すアスピレータ80では、吐出経路76の直立管77および平行管78が冷媒通路34の内部に配置されたが、この構成に限られるものではない。たとえば図4に示すように、平行管78を冷媒通路34よりも大径の配管とし、冷媒通路34を周方向に囲う形状に平行管78を配置し、平行管78の内部に冷媒通路34が挿通されてもよい。
【0058】
このような構成としても、ポンプ70の起動時に、冷媒通路34から冷却部30へ流れる冷媒の流量を確保できる。かつ、ポンプ70から吐出される冷媒液の平行管78から冷媒通路34内への噴流によって、冷媒通路34内に負圧を発生させ、冷媒通路34内部の冷媒液の流れを促進させることができる。これにより冷却装置1内部を循環する冷媒の流れが形成されるので、ポンプ70を停止させたときに、自然回流式の冷却システムにスムーズに移行することができる。
【0059】
さらに、平行管78を冷媒通路34の外側に配置することにより、冷媒通路34の内部の障害物を低減できるので、冷却装置1を自然循環する冷媒液の流れに対する圧力損失を低減できる。したがって、冷媒液をより流れ易くした、好適な自然回流式冷却システムを提供することができる。
【0060】
図6は、他の変形例のアスピレータ80の構成の詳細を示す模式図である。図6に示すように、冷媒通路34の外部に、冷媒通路34の延在方向に沿って平行管78を配置し、冷媒通路34の一部に形成された開口部を経由して平行管78から冷媒通路34へ噴出する冷媒液の流れを形成してもよい。このような構成としても、上述した変形例のアスピレータ80と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、これまでの実施の形態においては、HV機器を例として車両に搭載された電気機器を冷却する冷却装置1について説明した。電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、インバータ、モータジェネレータなどの例示された電気機器に限定されるものではなく、任意の電気機器であってもよい。冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
【0062】
冷却装置1は、発熱源を冷却部30で冷却するための装置として単独で設けられてもよい。または冷却装置1は、圧縮機、凝縮器、減圧器および蒸発器を備え室内用空調装置として使用される、蒸気圧縮式冷凍サイクルに組み込まれて設けられ、圧縮機の運転中および停止中の両方において確実に発熱源を冷却できるシステムを構成してもよい。この場合、凝縮器を熱交換器14として使用してもよい。凝縮器が複数設けられるのであれば、上流側の第一の凝縮器を熱交換器14とし、複数の凝縮器間を流通する冷媒で発熱源を冷却するように冷却部30を配置し、第一の凝縮器の上流側と冷却部30の下流側とを連通する冷媒の経路を設けてもよい。
【0063】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の冷却装置は、モータジェネレータおよびインバータなどの電気機器を搭載するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの車両における、電気機器の冷却に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0065】
1 冷却装置、14 熱交換器、22,34,36 冷媒通路、30 冷却部、40 気液分離器、60 地面、70 ポンプ、71 温度センサ、72 配線、74 吸込経路、76 吐出経路、77 直立管、78 平行管、79 開口、80 アスピレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源へ冷媒を循環させて前記発熱源を冷却する冷却装置であって、
前記冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器から前記発熱源へ流れる液状の前記冷媒を貯留する蓄液器と、
前記蓄液器から前記発熱源へ流れる前記冷媒の経路に並列に接続されたポンプと、を備える、冷却装置。
【請求項2】
前記ポンプから吐出され前記経路へ戻る前記冷媒の流れ方向を、前記蓄液器から前記発熱源へ向かう方向に規制する、流れ規制部を備える、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記ポンプから吐出された前記冷媒が前記経路へ戻る位置に配置されたアスピレータを備え、
前記冷媒は前記アスピレータを経由して前記経路へ流入する、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記発熱源を冷却した後の前記冷媒の状態を示すデータを取得するセンサを備え、
前記ポンプは、前記データに基づいて起動または停止する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36674(P2013−36674A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172866(P2011−172866)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】