説明

冷却装置

【課題】電子機器の内部に強制対流を発生することができる薄型の冷却装置1を提供する。
【解決手段】通電される電力に応じて伸縮もしくは膨張する圧電素子4,5の動力を利用して強制対流を発生させる冷却装置1において、少なくとも一方に開口した開口部7を有する容器と、該容器の少なくとも一つの壁面が可撓壁面2(3)とされ、該可撓壁面2(3)に設けられかつ交流電流が通電されることにより振動する圧電素子4(5)とを備え、前記圧電素子4(5)を振動させることにより、前記容器の内部に介在する空気を圧縮・膨張させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、強制対流を生じさせることにより電子機器を冷却する冷却装置に関するものであり、特に通電される電力により伸縮あるいは膨張する圧電素子により強制対流を生じさせて電子機器を冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の内部に外気を取り込む開口部と電子機器の内部の空気を外部に排出する開口部とを電子機器に形成することにより、電子機器の内部に自然対流を生じさせて、チップセットやマイクロプロセッサなどにより発熱された熱を外部に排出して冷却する方法が知られている。一方、携帯電話や携帯型パーソナルコンピュータなどの携帯型の電子機器は高出力のものが開発されており、そのため、その出力の増大に伴って発熱量が増加してしまうので、電子機器の内部にモータと、そのモータの出力軸に連結されたファンと、それらモータとファンとを収容するケースとによって構成された送風機構が種々開発されている。これらの送風機構は、モータによりファンを回転させることによって、ケースの一方に形成された開口部と他方に形成された開口部との圧力に差を生じさせて、空気の流れを発生させること、すなわち強制対流を発生させることができる。
【0003】
それらのファンは、通常、電子機器の側面から空気を取り込みもしくは排出するように構成されるものであり、そのため、ファンを搭載する電子機器の厚みは、フィンが回転することができる厚み以上となり、携帯型電子機器への搭載性に劣る。そのため、薄型の電子機器に搭載することができ、かつ強制対流を発生させることができるように構成された冷却装置が種々開発されている。その一例として、特許文献1に記載された冷却装置は、一方の端部を一対の圧電素子に挟持された弾性体と、その弾性体の他方の端部に連結された振動板と、それら圧電素子、弾性体および振動板を収容し、空気の吸入口と排出口とが形成されたケースとによって構成されている。このように構成された冷却装置は、それぞれの圧電素子に位相をずらした交流を通電することにより、弾性体が振動し、その弾性体の振動が振動板に伝達されるので、振動板が上下動して強制対流を発生させることができ、そのため、特許文献1に記載された冷却装置は、振動板が振動することができる程度の厚みとすることができる。
【0004】
また、特許文献2および特許文献3に記載された冷却装置は、振動板の上面に圧電セラミックを接着し、その振動板の振動が伝達される羽根と、それら振動板と羽根とを収容し、空気の吸入口と排出口とが形成されたケースとによって構成されている。このように構成された冷却装置は、圧電素子に交流電流を通電することにより、圧電セラミックが伸縮・膨張を繰り返すため、圧電セラミックが接着された振動板および羽根が振動するので、強制対流を発生することができ、そのため、特許文献2および特許文献3に記載された冷却装置は、振動板が振動することができる程度の厚みとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−130199号公報
【特許文献2】特開2002−364599号公報
【特許文献3】特開2002−134975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した各特許文献1,2,3に記載された冷却装置は、羽根に伝達された圧電素子の振動を増幅させて強制対流を発生させるように構成されているので、ケースの厚みを振動板や羽根の先端部が上下する幅以上に形成しなければならない。また、振動板や羽根の振幅をより増大させるためには、特許文献1に記載されたように振動板の一つの端部を支持することとなる。すなわち片持ち支持となる。そのため、特許文献1に記載された冷却装置では、振動板を支持する圧電素子の強度を増大させなければならず、その結果、圧電素子の厚みが増大してしまい、ひいては冷却装置全体としての厚みが増大してしまう可能性がある。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、電子機器の内部に強制対流を発生することができる薄型の冷却装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、通電される電力に応じて伸縮もしくは膨張する圧電素子の動力を利用して強制対流を発生させる冷却装置において、少なくとも一方に開口した開口部を有する容器と、該容器の少なくとも一つの壁面が可撓壁面とされ、該可撓壁面に設けられかつ交流電流が通電されることにより振動する圧電素子とを備え、前記圧電素子を振動させることにより、前記容器の内部に介在する空気を圧縮・膨張させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記開口部が被冷却物に向けて開口していることを特徴とする冷却装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、少なくとも一方に開口した開口部を有する容器と、その容器の少なくとも一つの壁面が可撓壁面とされ、該可撓壁面に設けられかつ交流電流が通電されることにより振動する圧電素子とを備えている。そのため、圧電素子に交流電流を通電することにより、圧電素子が振動するので、その圧電素子が設けられた可撓壁面が振動して、対向する壁面に繰り返し接近および離隔する。その結果、容器の内部に介在する空気を圧縮して外部に排出することにより、もしくは容器の内部に介在する空気が膨張して低圧となり外部から空気を吸入することにより、強制対流を発生させることができ、また冷却装置の厚みを薄くすることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、開口部が被冷却対象に向けて開口しているので、容器の内部に介在する空気を圧縮した際に排出される、もしくは空気を膨張させた際に吸入される空気を被冷却物の近傍に限ることができ、その結果、被冷却物の近傍に効率良く強制対流を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る冷却装置の構成の一例を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)におけるc-c線に沿う断面図である。
【図2】その冷却装置の作用を説明するための断面図であり、空気を排出している状態を示す図である。
【図3】その冷却装置の作用を説明するための断面図であり、空気を吸入している状態を示す図である。
【図4】その冷却装置が冷却対象に向けて空気を排出している状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のb-b線に沿う断面図である。
【図5】その冷却装置が発熱部とは異なった位置に強制対流を発生させる例を説明するための図であり、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎにこの発明に係る冷却装置の構成の一例について説明する。図1に示す冷却装置1は、互いに対向して配置された一対の板2,3と、それら板2,3の外面に設けられた圧電素子4,5と、それぞれの板2,3の周縁部2a,2b,2c(3a,3b,3c)に設けられた樹脂部材6a,6b,6cとによって構成されている。このように構成された冷却装置1は、通電される電力に応じて圧電素子4,5が伸縮もしくは膨張することにより、その圧電素子4(5)が設けられた板2(3)が撓み変形する。そのため、各板2,3の間に介在する空気が圧縮されもしくは膨張することにより、冷却装置1から空気が排出されもしくは吸入されて強制対流を発生させることができる。
【0014】
上述したように一対の板2,3は圧電素子4,5とともに伸縮・膨張することができるものであり、図に示す例では、鋼材を主体とした材料によって構成されている(以下、一対の板2,3を鋼板2,3と記す。)。それら鋼板2,3は、方形に形成されており、また上述したように圧電素子4,5の伸縮・膨張により撓み変形するものであるため、その厚みは薄く形成されている。つまり、各鋼板2,3が可撓壁面となっている。また、各鋼板2,3の外面、すなわち互いに対向する面とは反対側の面の中央部に、円形に形成された圧電素子4,5が接着もしくは溶接して貼付されている。この圧電素子4,5は、従来知られたものであって、水晶やセラミックなどの部材を挟んで電極を設け、その電極に通電することによって伸縮・膨張するように構成されている。
【0015】
さらに、各鋼板2,3は、樹脂部材6a,6b,6cにより鋼板2,3同士に所定の隙間が空くように連結されている。図に示す例では、断面形状が半円状の樹脂部材6a,6b,6cが、その円弧面が各鋼板2,3の周縁部から突出するように各鋼板2,3の3つの周縁部2a,2b,2c(3a,3b,3c)に連結されている。これは、鋼板2,3が撓み変形することを樹脂部材6a,6b,6cが阻害しないようにするとともに、各鋼板2,3同士の隙間を気密状態にするため、言い換えれば、樹脂部材6a,6b,6cが設けられている箇所から外部に空気が漏洩もしくは外部から空気が供給されないようにするためである。なお、この樹脂部材6a,6b,6cは、鋼板2,3が撓み変形することを阻害しないように弾性係数の小さいゴムなどの樹脂材料で形成することが好ましい。上記のように樹脂部材6a,6b,6cを設けることにより、互いに対向した鋼板2,3および樹脂部材6a,6b,6cにより一方にのみ開口した容器が形成され、その結果、鋼板2,3が撓み変形することにより、一方にのみ開口した開口部7から容器の内部の空間Sに空気が供給もしくは排出される。
【0016】
上述した各圧電素子4,5には、その圧電素子4,5に電力を供給する図示しない電源が電気的に連結されており、その電源から各圧電素子4,5に供給される交流電流の電力や周波数を制御する図示しない電子制御装置が設けられている。この電子制御装置は、それぞれの圧電素子4,5に供給する電力やその周波数を制御するものである。したがって、電子制御装置により圧電素子4,5に供給される電力や周波数を変化させることにより、各圧電素子4,5の伸縮・膨張の変位量を制御したり、その変位する周波数、すなわち圧電素子4,5が振動する周波数を制御したりすることができる。
【0017】
ここで、上述した冷却装置1の作用について説明する。まず、それぞれの圧電素子4,5に電気的に連結された電源から交流電流が通電される。この交流電流の電力や周波数は、冷却量あるいは強制対流を生じさせる風量などに基づいて任意に定めることができる。ついで、通電された電力に応じて圧電素子4,5が伸縮・膨張する。言い換えれば、圧電素子4,5に通電される交流電流の周波数に応じて圧電素子4,5が振動する。また、上述したように各鋼板2,3の外面に圧電素子4,5が貼付されているので、圧電素子4,5と一体に各鋼板2,3が振動する。この発明に係る冷却装置1は、鋼板2,3の撓み変形により、容器の内部に介在する空気を圧縮・膨張させることによって強制対流を生じさせるものであり、そのため、上述した各圧電素子4,5同士の振動周波数の位相は、各鋼板2,3が互いに離隔するようにもしくは互いに接近するように制御されている。なお、図2および図3は、鋼板2,3が振動している状態を示したものであり、図2は鋼板2,3同士が接近する方向に撓み変形することにより、容器の内部の空間Sから空気が排出されている状態を示し、図3は鋼板2,3同士が離隔する方向に撓み変形することにより、容器の内部の空間Sに介在する空気の圧力が低下することにより、その空間Sに空気が吸入されている状態を示している。
【0018】
したがって、図2および図3に示すように容器の内部の空間Sに介在する空気を繰り返し圧縮・膨張させることによって、開口部7から空気を繰り返し排出および吸入することができる。また、その圧電素子4,5の振動周波数を短くすることにより、連続して空気を排出もしくは吸入することができる。その結果、開口部7を冷却対象に向けることにより、その冷却対象の近傍の空気を強制的に流動させること、すなわち強制対流を生じさせることができる。つまり、冷却対象を強制対流により冷却することができる。図4は、チップセット8を冷却対象として、そのチップセット8の上面に一体化されたヒートスプレッダー9の上面に向けて冷却装置1から空気を排出している状態を示している。また、上述した冷却装置1は、圧電素子4,5が伸縮・膨張することにより強制対流を生じさせることができ、その冷却装置1の厚みの変位量は、その圧電素子1が最大に膨張する範囲内である。その結果、冷却装置1全体としての厚みを薄くすることができるので、携帯型の電子機器などの薄型の電子機器を冷却する装置として用いることができる。
【0019】
また、上述した冷却装置1は、圧電素子4,5の振動により強制対流を発生させるものであるので、その圧電素子4,5の振動の振幅を増大させることにより携帯電話などのバイブレーションとして機能させることができる。すなわち、携帯電話を通常使用している場合には、圧電素子4,5に通電する交流電流の電力を低くして冷却装置1の振幅を小さくし、かつ周波数を短くして断続的な振動を外部に伝達させないことにより、冷却装置1として機能させることができ、その電力を増大させて冷却装置1の振幅を大きくし、かつ周波数を長くして断続的な振動を外部に伝達することにより、冷却装置1としての機能に加えバイブレーション発生装置として機能させることができる。その結果、この発明に係る冷却装置1を設けることによって、従来搭載されていたバイブレーション発生装置を設けることによる搭載性の低下を抑制もしくは防止することができる。
【0020】
なお、この発明に係る冷却装置1は、上述したようにチップセット8などの発熱部に直接強制対流を発生させるように構成されていなくてもよい。図5にその構成の一例を示しており、従来知られた平板型のヒートパイプ10の一端をヒートスプレッダー9の上面に配置し、その平板型のヒートパイプ10の他端にヒートシンク11を設け、そのヒートシンク11に向けて空気が排出されるようにこの発明に係る冷却装置1を設けている。平板型のヒートパイプ10は、従来知られたように発熱部から伝達された熱を潜熱として放熱部に熱輸送して放熱するものである。そのため、図に示すように構成することにより、その放熱部に一体に形成されたヒートシンク11に向けてこの発明に係る冷却装置1から空気を排出して強制対流を発生させることにより、平板型のヒートパイプ11の放熱部の放熱性能を向上させることができ、その結果、平板型のヒートパイプ11の熱輸送効率、ひいては発熱部の冷却効率を向上させることができる。すなわち、この発明に係る冷却装置1の冷却対象は、チップセット8のように発熱する部材であってもよく、上記ヒートシンク11のように発熱部から熱伝達された部材であってもよい。
【0021】
なお、この発明に係る冷却装置1は、圧電素子4,5が伸縮・膨張することにより、容器の内部に介在した空気が圧縮もしくは膨張して強制対流を発生させることができればよいので、上述したように冷却対象の一方にのみ開口した冷却装置1でなく、例えば、互いに対向する側壁部に供給口と排出口とを設けた構成であってもよい。すなわち、鋼板2,3同士が離隔する方向に移動することによって開口する弁を空気供給口に設け、鋼板2,3同士が接近する方向に移動することによって開口する弁を排出口に設けた構成、言い換えると、吸入時に排出口を封止する弁と排出時に供給口を封止する弁とを設けた構成としてもよい。このように構成することにより、冷却対象の近傍の空気を吸入することがなく、すなわち高温の空気を吸入することがなく、その結果、冷却対象の冷却効率をより向上することができる。また、圧電素子4,5や鋼板2,3あるいは樹脂部材6a,6b,6cの形状は、上述した形状に限定されず、例えば圧電素子4,5が方形であってもよく、鋼板2,3が円形であってもよい。さらに、上述した例では、上下それぞれの鋼板2,3に圧電素子4,5を設けた例を挙げて説明したが、いずれか一方の鋼板2(3)に圧電素子4(5)が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0022】
1…冷却装置、 2,3…鋼板、 2a,2b,2c(3a,3b,3c)…周縁部、 4,5,…圧電素子、 6a,6b,6c…樹脂部材、 7・・・開口部、 8…チップセット、 9…ヒートスプレッダー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電される電力に応じて伸縮もしくは膨張する圧電素子の動力を利用して強制対流を発生させる冷却装置において、
少なくとも一方に開口した開口部を有する容器と、
該容器の少なくとも一つの壁面が可撓壁面とされ、該可撓壁面に設けられかつ交流電流が通電されることにより振動する圧電素子と
を備え、
前記圧電素子を振動させることにより、前記容器の内部に介在する空気を圧縮・膨張させるように構成されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記開口部が被冷却物に向けて開口していることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80765(P2013−80765A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218991(P2011−218991)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】