説明

冷却貯蔵庫

【課題】 本発明の課題は、庫口での断熱性を高めながら組み付け作業を容易にし、更に取り付け強度を向上させた庫口モールを備えた冷却貯蔵庫を提供することにある。
【解決手段】 断熱パネル2を接合して箱形に組み立てられる貯蔵室1の前面に、断熱扉5によって開閉される庫口4を形成した冷却貯蔵庫において、庫口4を形成するパネル2の端部に凹部10cを形成し、この凹部10cを塞ぐ平面部12aと、凹部10cの内底部に接地する脚部12bと、凹部10cの内面に係合する爪片部12cとを備えた庫口モール12を取り付けたものである。この庫口モール12は、爪片部12cを脚部12bと略平行に垂下形成しており、爪片部12cと脚部12bとの間に断熱パッキン13を挟み込んだ形状としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物等の貯蔵物を冷蔵保存するのに適した冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却貯蔵庫の庫口における外気の流入や庫内冷気の漏出を防止するための構成として、これまでに幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献1では、庫口枠となる側板パネルの端面に凸部もしくは凹部が形成され、庫口モールをこのパネルの凸部もしくは凹部のどちらにも取り付けられるように、凸部に合致する凹所を備えた形状とし、凹部に取り付ける場合には、パネル凹部と庫口モール凹所との間に断熱性のスペーサを介在させるように構成したものが提案されている。また、特許文献2では、庫口モールとパネル内側端面との密着性を高めるため、シールパッキンを備えたものが提案されている。
【0003】
こうした庫口モールの構成は、庫口を構成するパネルの端面にねじ止め固定されるので、組み立て作業が面倒となる。また、この庫口モールを庫口枠の下端面に用いた場合、パネルの端面に取り付ける構造上、枠材が床面から突出した状態となるため、貯蔵室に物品を出納する際に踏み付けられたりすると、接合部分が剥離する可能性があり、この隙間から庫内冷気が流出するという問題が生じてしまう。
【特許文献1】特開平8−145540号
【特許文献2】特開2005−180879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、庫口での断熱性を高めながら組み付け作業を容易にし、更に取り付け強度を向上させた庫口モールを備えた冷却貯蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、断熱パネルを接合して箱形に組み立てられる貯蔵室の前面に、断熱扉によって開閉される庫口を形成した冷却貯蔵庫において、庫口を構成するパネルの端部に凹部が設けられ、この凹部に庫口モールを取り付けて庫口枠を形成するものであり、庫口モールは、凹部の開口面を塞ぐ平面部と、凹部の内底部に接地する脚部と、凹部の内面に係合する爪片部とを備え、脚部と爪片部との間に断熱パッキンを挟み込んだ形状としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、庫口枠を構成するパネル端部の凹部に、この凹部を塞ぐ平面部と、凹部の内底部に接地する脚部と、凹部の内面に係合する爪片部とを一体形成した庫口モールを取り付けるようにしたので、取り付け作業が非常に容易になる。また、庫口枠に段差ができず、貯蔵物の出納時に破損して剥離するといった事態がなくなるので、庫内外との断熱効果が継続的に保たれる。更に、凹部の内底部に接地する補強用の脚部により、庫口モールの踏み付けによる破損も防止することができる。
【0007】
また、補強用の脚部と取付固定用の爪片との間に断熱パッキンを挟持させたので、凹部内が断熱空間として機能し、庫内と庫外との熱交換を更に低減させることができる。更に、庫口モールは、庫口枠を構成するパネル端部の凹部に嵌合する構成となっているため、前面パネルを3以上配列した大型の貯蔵庫を形成した場合に、庫口のレイアウトを任意に設定できるようになり、設計上の制約が少ない。
【実施例】
【0008】
以下、図面を基に本発明の実施例について説明する。図1は実施例の冷却貯蔵庫の外観図、図2は組立分解図、図3は平面断面図、図4は側面断面図である。図5は図3におけるA部の拡大図、図6は図3におけるB部拡大図、図7は図4におけるC部拡大図である。
1は貯蔵庫本体で、図2〜4に示すように、床面パネル2a・背面パネル2b,2c・側面パネル2d,2e・前面パネル2f,2g・天面パネル2hを所定容量の箱状に接合して組み立てられ、天面パネル2hの上面に冷却ユニット3を装備し、内部に収容された貯蔵物(米・野菜等)を所望の温度に冷却貯蔵する。本体1の前面には、収容物の出納を行うための庫口4が形成されており、断熱扉5によって開閉される。
【0009】
各パネル2は、図5に示すように、鋼板製の外皮6と内皮7で囲まれる空間にウレタン等の断熱材8を発泡充填した断熱パネルで構成され、凹凸接合により各パネルの接合が図られる。この凹凸接合について、図5を用いて説明する。
【0010】
9は凹凸接合の凸側となる凸型枠材で、パネル外皮6の端縁部が嵌る断面U字形の係合溝9aと、パネル内皮7の端縁部が嵌る断面U字形の係合溝9bによってパネルの外周端部に取り付けられ、先端部にやや先細りに傾斜した凸部9cが形成されている。このように構成する凸型枠材9は、背面パネル2bにおける全ての外周縁、背面パネル2cにおける背面パネル2bとの接合縁以外の外周縁、側面パネル2d,2eにおける上端縁及び下端縁、前面パネル2f,2gにおける庫口側以外の外周縁に取り付けられる。
【0011】
10は凹凸接合の凹側となる凹型枠材で、パネル外皮6の端縁部が嵌る断面U字形の係合溝10aと、パネル内皮7の端縁部が嵌る断面U字形の係合溝10bによってパネルの外周端部もしくは内縁部に取り付けられ、凸型枠材9の凸部9cが嵌合する凹部10cが形成されている。凹部10cの内側面には、内底面に向かって傾斜したリップ10dが凸型枠材9の取付方向に沿って上下に形成されているとともに、該リップ10dよりも上部に後述する庫口モールを取り付けるための凹陥部10eが形成されている。尚、凸型枠材9及び凹型枠材10は、ともに熱伝導性の低い樹脂製の成型品であり、接合部での熱交換を低減して外気の流入や庫内冷気の漏出を防止する役割を果たすものである。このように構成する凹型枠材10は、床面パネル2aにおける上面周縁、背面パネル2cにおける背面パネル2bとの接合縁、側面パネル2d,2eにおける左右内縁、天面パネル2hにおける下面周縁に取り付けられる。
【0012】
尚、前面パネル2f,2gは、床面パネルの前面に取り付けた状態で、パネル間に庫口4を形成する間隙が生じる幅寸法を有している。そして、前面パネル2f,2gの庫口側外周縁には、図6に示すように、庫口4の枠材となる平面枠材11が取り付けられる。平面枠材11は、パネル外皮6の端縁部が嵌る断面U字形の係合溝11aと、パネル内皮7の端縁部が嵌る断面U字形の係合溝11bによってパネルの外周端部に取り付けられ、先端部は平面形状となっている。
【0013】
このように構成する各パネルの組み立て方について説明する。尚、文中における左右・上下・前後といった方向を示す表現は、貯蔵庫本体1の正面視を基準している。
大まかな作業手順として、床面パネル2aを水平に設置した後、床面パネル2aの周縁に、側面パネル2d→背面パネル2b→背面パネル2c→側面パネル2e→前面パネル2f→前面パネル2gを取り付け、最後に天面パネル2hを取り付けて箱形の本体1を形成する。
【0014】
このパネルの組み立て作業について詳細に説明する。
まず、左側面パネル2d下端縁の凸型枠材9を、床面パネル2aの左側面部分の凹型枠材10に嵌合する。次に、背面パネル2b下端縁の凸型枠材9を、床面パネル2aの背面側の凹型枠材10に嵌合した後、その凹型枠材10内をスライドさせながら、背面パネル2b左端縁の凸型枠材9を側面パネル2d後方内縁の凹型枠材10に嵌合する。次に、背面パネル2c下端縁の凸型枠材9を、床面パネル2aの背面側の凹型枠材10に嵌合した後、その凹型枠材10内をスライドさせながら、背面パネル2c左端縁の凹型枠材10と背面パネル2b右内側周縁の凸型枠材9を嵌合する。次に、背面パネル2c右端縁の凸型枠材9に、右側面パネル2e左内側周縁の凹型枠材10を嵌合させてから右側面パネル2d下端縁の凸型枠材9を、床面パネル2aの右側面部分の凹型枠材10に嵌合する。次に、前面パネル2f下端縁の凸型枠材9を、床面パネル2aの前面側の凹型枠材10に嵌合した後、その凹型枠材10内をスライドさせながら、前面パネル2d左端縁の凸型枠材9を、側面パネル2d前方内縁の凹型枠材10に嵌合する。次に、前面パネル2g下端縁の凸型枠材9を、床面パネル2aの前面側の凹型枠材10に嵌合した後、その凹型枠材10内をスライドさせながら、前面パネル2d右端縁の凸型枠材9を、側面パネル2e前方内縁の凹型枠材10に嵌合する。最後に、背面パネル2b,2c・側面パネル2d,2e・前面パネル2f,2gの上端縁の凸型枠材9を、天面パネル2h下面周縁の凹型枠材10に嵌合する。
【0015】
こうして各パネルを箱形に組み立てた後、仕上げとして、3枚のパネルが交差する部分を固定ブラケット15で強固にねじ止め固定する。
【0016】
さて、前面パネル2f,2gの間には、貯蔵物を出納する庫口4が形成されることになる。この庫口4の縦縁には、前面パネル2f,2gの平面枠材11が現れるが、床面パネル2a及び天面パネル2hにおける庫口4の相当部位は、凹型枠材10が露出したままとなる。そのため、この凹型枠材10に庫口の枠材となる庫口モール12が取り付けられる。
【0017】
庫口モール12は、図7に示すように、凹型枠材10の凹部10cを覆う平面部12aと、凹部10cの内底部に接地する脚部12bとで断面T字形に形成され、脚部12bを挟んで先端に係止爪を形成した爪片12c,12cを垂下形成している。また、庫口モール12の脚部12bと爪片12c,12cとの間には、パッキン13,13が嵌着保持されている。これにより、庫口モール12を凹型枠材10の凹部10cに取り付けることで、凹部空間の断熱性が図られ、庫内外の熱交換を阻害できるようになっている。
【0018】
この庫口モール12は、爪片12c,12cの係止爪を凹型枠材10の凹陥部10eに嵌め込むようにして取り付けられ、取付状態において、前面パネル2f,2gの平面枠材11と合わせて庫口枠材を形成するものである。
【0019】
こうして庫口4が形成された後は、この庫口4の前面に断熱扉5が取り付けられる。断熱扉5は、各パネルと同様に外皮と内皮で囲まれる空間にウレタン等の断熱材を発泡充填して形成されており、裏面周縁には、庫口4の開口縁と密着するマグネットパッキン14が取り付けられている。また、前面にはロック機能付きの取手16が設けられ、庫口4を密閉するものである。
【0020】
以上のように、本実施例の構成によれば、庫口4内縁の上下枠に露出する凹型枠材10に庫口モール12を取り付けるようにしたので、庫内と庫外との熱交換が低減され、庫口付近での結露発生が抑制されるとともに、効率の良い冷却貯蔵が可能になる。また、庫口モール12には、凹型枠材10の内底部に接地する補強用の脚部12bと、取付固定用の爪片12cとが略平行に垂下形成され、その間に断熱パッキン13を挟持させたので、凹型枠材10に庫口モール12を取り付けることで、凹型枠材10の凹部10c内部も断熱空間として機能することになり、庫内と庫外との熱交換を更に低減させることとなる。更に、庫口モール12は、凹型枠材10に嵌合する構成となっているため、前面パネルを3以上配列した大型の貯蔵庫を形成した場合に、庫口のレイアウトを任意に設定できるようになり、設計上の制約が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の冷却貯蔵庫の外観図である。
【図2】実施例の冷却貯蔵庫の組立分解図である。
【図3】実施例の冷却貯蔵庫の平面断面図である。
【図4】実施例の冷却貯蔵庫の側面断面図である。
【図5】図3におけるA部の拡大図である。
【図6】図3におけるB部拡大図である。
【図7】図4におけるC部拡大図である。
【符号の説明】
【0022】
1 貯蔵庫本体
2a 床面パネル
2b 背面パネル
2c 背面パネル
2d 側面パネル
2e 側面パネル
2f 前面パネル
2g 前面パネル
2h 天面パネル
4 庫口
5 断熱扉
9 凸型枠材
10 凹型枠材
10c 凹部
11 平面枠材
12 庫口モール
12a 平面部
12b 脚部
12c 爪片
13 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱パネルを接合して箱形に組み立てられる貯蔵室の前面に、断熱扉によって開閉される庫口を形成した冷却貯蔵庫において、
前記庫口を構成するパネルの端部に凹部が設けられ、該凹部に庫口モールを取り付けて庫口枠を形成するものであり、
前記庫口モールは、前記凹部の開口面を塞ぐ平面部と、前記凹部の内底部に接地する脚部と、前記凹部の内面に係合する爪片部とを備え、前記脚部と爪片部との間に断熱パッキンを挟み込んだことを特徴とする冷却貯蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−309363(P2008−309363A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155688(P2007−155688)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】