説明

冷却風導入構造

【課題】ダクトの導入口付近に異物が付着、堆積すること又はダクトの導入口付近への異物の付着、堆積状態が維持されることを抑制することができる冷却風導入構造を得る。
【解決手段】冷却風導入構造10は、自動車Vが走行するための駆動力を発生するパワーユニット12と、車体に対し相対変位可能に支持されパワーユニット12が配置されたパワーユニット室14を車両下方から覆うアンダカバー26と、パワーユニット12に対する車両後方に配置された冷却ユニット22と、アンダカバー26におけるパワーユニット12と冷却ユニット22との間で路面Rを向けて開口された導入口26Aから冷却ユニット22に空気を導くダクト28と、アンダカバー26に設けられて導入口26Aからダクト28内への異物の侵入を抑制する各フラップ36と、パワーユニット12の振動を前記アンダカバー26に伝達するトルクロッド42及び脚部45と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却風をパワーユニット後方の冷却ユニットに導くための冷却風導入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アンダーカバーに設けたダクトによりインタークーラーに冷却風を導く構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−301528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダクトの開口部に雪や泥などの異物が付着すると、該ダクトへ冷却風が導入されにくくなる。
【0005】
本発明は、ダクトの導入口付近に異物が付着、堆積すること又はダクトの導入口付近への異物の付着、堆積状態が維持されることを抑制することができる冷却風導入構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る冷却風導入構造は、車両が走行するための駆動力を発生するパワーユニットと、車体に対し相対変位可能に支持され、前記パワーユニットが配置されたパワーユニット用空間を車両下方から覆うアンダカバーと、前記パワーユニットに対する車両後方に配置された冷却ユニットと、前記アンダカバーにおける前記パワーユニットと前記冷却ユニットとの間で路面を向けて開口された導入口から、前記冷却ユニットに空気を導くダクトと、前記アンダカバーに設けられ、前記導入口から前記ダクト内への異物の侵入を抑制する異物侵入抑制構造と、前記パワーユニットの振動を前記アンダカバーに伝達する振動伝達手段と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の冷却風導入構造では、導入口から取り入れられた空気がダクトを通じて冷却風として冷却ユニットに導かれる。冷却ユニットでは、ダクトを通じて導入された空気との熱交換によって冷媒が冷却される。アンダカバーには異物侵入抑制構造が設けられているので、導入口からダクトへの異物の侵入が抑制される。一方、この異物侵入抑制構造には、雪や泥などの異物が付着される場合がある。
【0008】
ここで、本冷却風導入構造では、振動伝達手段がパワーユニットの振動(強制変位又は強制力(起振力))をアンダカバーに伝達する。車体に対し相対変位可能に支持されているアンダカバーは、パワーユニットからの振動で車体に対し振動する。この振動によって、アンダカバーにおける導入口、異物侵入抑制構造の付近への異物の付着が抑制され、又は付着、堆積された異物が落とれされる。
【0009】
このように、請求項1記載の冷却風導入構造では、ダクトの導入口付近に異物が付着、堆積すること又はダクトの導入口付近への異物の付着、堆積状態が維持されることを抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1記載の冷却風導入構造において、一端側が前記車体に接続されると共に他端側が前記パワーユニットに接続され、前記パワーユニットの前記車体に対する変位を抑制するためのトルクロッドをさらに備え、前記振動伝達手段は、前記トルクロッドにおける前記パワーユニットとの接続側部分を前記アンダカバーに接続することで構成されている。
【0011】
請求項2記載の冷却風導入構造では、トルクロッドにおけるパワーユニットとの接続側がアンダカバーにも接続されることで、該パワーユニットの振動がトルクロッドの他端側を介してアンダカバーに伝達される。この構成では、トルクロッドにおける車体との接続側がアンダカバーに接続される構成と比べて、アンダカバーを大きく又は強く振動させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1又は請求項2記載の冷却風導入構造において、前記冷却ユニットは、前記車体に対し相対変位可能に支持された配管を通じて前記パワーユニットとの間を循環する冷媒を、前記ダクトにより導かれた空気との熱交換によって冷却する機能を有し、前記振動伝達手段は、前記配管を前記アンダカバーに接続することで構成されている。
【0013】
請求項3記載の冷却風導入構造では、パワーユニットを冷却して加熱された冷媒が配管を通じて循環する冷却ユニット(の一部)にて冷却される。この配管がパワーユニットの振動により振動されることで、アンダカバーが振動される。また、配管には比較的高温の冷媒が流れるので、雪等の異物を溶かして除去することにも寄与する。特に、配管が異物侵入抑制構造を介してアンダカバーに接続された構成や配管が導入口に臨む構成とすれば、配管の熱が雪等の異物に伝わりやすく、雪等の異物を溶かして除去する効果が得られやすい。
【0014】
請求項4記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の冷却風導入構造において、前記アンダカバーは、蛇腹状に形成された変形容易部において前記車体に接続されることで、該車体に対し相対変位可能に支持されている。
【0015】
請求項4記載の冷却風導入構造では、アンダカバーは、その変形容易部において車体に接続されており、パワーユニットの振動により振動される。この構造では、アンダカバーを車体に対し効率的に(強く又は大きく)振動させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明に係る冷却風導入構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の冷却風導入構造において、前記導入口は、車輪の路面との接触部位に対する車両前後方向の後側に位置する部分を含む。
【0017】
請求項5記載の冷却風導入構造では、車輪の路面との接触部位の後側に導入口の一部又は全部が配置されており、この車輪の路面との接触部位よりも後側に位置する導入口の部分には車輪が跳ね上げた異物が付着しやすい。この異物は、アンダカバーがパワーユニットにより振動されることで、導入口、異物侵入抑制構造の付近に付着、堆積することが抑制される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明に係る冷却風導入構造は、ダクトの導入口付近に異物が付着、堆積すること又はダクトの導入口付近への異物の付着、堆積状態が維持されることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る冷却風導入構造を示す側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る冷却風導入構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る冷却風導入構造を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る冷却風導入構造を示す側断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る冷却風導入構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る冷却風導入構造を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る冷却風導入構造を構成するラジエータホースの変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る冷却風導入構造10について、図1〜図3に基づいて説明する。先ず、冷却風導入構造10が適用された自動車Vの車体11の構成を説明し、次いで、冷却風導入構造10の具体的な構成を説明することとする。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示す。
【0021】
(車体の概略構成)
図1には、冷却風導入構造10が適用された自動車Vの前部が模式的な側断面図にて示されている。この図に示される如く、自動車Vの車両前後方向の前端側には、パワーユニット12が配設されたパワーユニット用空間としてのパワーユニット室14が配置されている。この実施形態におけるパワーユニット12は、それぞれフロントホイールWfを駆動するための駆動源として内燃機関であるエンジンと電動モータとを含んで構成されている。したがって、自動車Vは、2つの駆動源を有するハイブリッド自動車とされている。
【0022】
具体的には、パワーユニットは、車幅方向に沿ったクランクシャフトを有する横置きのエンジンと、該エンジンに動力伝達可能に連結されたトランスアクスルとを主要部として構成されている。トランスアクスルは、電動モータ、図示しないジェネレータ、動力分割機構、無段変速機等である変速機等を含んで構成されている。また、この実施形態では、トランスアクスルには、例えば電動モータ、ジェネレータ、及びバッテリに電気的に接続されたインバータを含んで構成されている。したがって、この実施形態に係るパワーユニットは、パワープラントとして捉えることも可能である。なお、トランスアクスルとしては、例えば、マニュアルトランスミッション(MT)、トルコン式等の自動変速機(AT)、無断変速機(CVT)等の通常のトランスアクスルとしても良い。
【0023】
パワーユニット12は、車体の骨格を成すサブフレーム(サスペンションメンバ)15に、後述するトルクロッド42を介して連結されている。これにより、パワーユニット12は、車体に対するロール方向の相対変位が抑制されるようになっている。横置きのエンジンを含むパワーユニット12は、車幅方向に沿った軸がロール軸とされており、該ロール軸周り(図1の矢印A方向)の相対角変位が抑制されるようになっている。
【0024】
上記の通り内燃機関であるエンジンを含んで構成されるパワーユニット12が配設されたパワーユニット室14は、所謂エンジンルームとして捉えることができる。パワーユニット室14の車両前後方向の後端部は、車室Cとの間を隔てるダッシュパネル16にて規定されている。ダッシュパネル16は、フロアパネル18の車両前後方向の前端部に接合されている。フロアパネル18における車幅方向の中央部には、正面断面視で車両上下方向に下向きに開口する[コ」字状を成すフロアトンネル20が形成されている。
【0025】
そして、冷却風導入構造10が適用された自動車Vでは、フロアトンネル20の車両前後方向の前側の開口端20Aを塞ぐように、冷却ユニット22が設けられている。したがって、この実施形態では、冷却ユニット22がパワーユニット12に対する車両前後方向の後側に配置されている。冷却ユニット22は、パワーユニット12(のエンジンや電気モータ)との間で冷却水を循環させて該パワーユニット12を冷却する空冷式の熱交換器であるラジエータ、及び図示しない空調装置(の冷凍サイクル)を構成する空冷式の熱交換器であるコンデンサ(凝縮器)の少なくとも一方(この実施形態では双方)を含んで構成されている。
【0026】
また、冷却ユニット22の車両前後方向の後面側には、ファンユニット24が設けられている。このファンユニット24の作動によって、冷却ユニット22には、車両前後方向の前面側から後面側に向けて、冷却水との熱交換を行う冷却風が通過するようになっている。冷却水との熱交換を行った後の冷却風は、フロアトンネル20の下向き開口端20Bを通じてフロア下に排出されるようになっている。
【0027】
以下、この冷却ユニット22に冷媒(ラジエータを循環する冷却水、エアコン冷媒)との熱交換を行う冷却風を導くための冷却風導入構造10について詳細に説明することとする。
【0028】
(冷却風導入構造の構成)
図1に示される如く、冷却風導入構造10は、パワーユニット室14を車両上下方向の下側から覆うアンダカバー26を備えている。アンダカバー26には、路面Rとの間を流れる走行風を車体内に導入するための開口部である導入口26Aが形成されている。この実施形態では、導入口26Aは、図2及び図3に示される如く、導入口26Aは、左右のフロントホイールWf間、及び左右のフロントホイールWf間の部分に対する車両後方位置で開口されている。換言すれば、導入口26Aは、フロントホイールWfの路面Rとの接触部Sに対する車両後側の部分、すなわちフロントホイールWfの回転に伴い異物が跳ね飛ばされる範囲を含んで開口している。なお、図3では、後述するシュラウド30の図示を省略している。
【0029】
また、冷却風導入構造10は、導入口26Aと冷却ユニット22の前面(開口端20A)との間にダクト28を形成するシュラウド30を備えている。すなわち、シュラウド30は、その一端側開口部がダクト28の入口である26Aに一致されると共に、その他端側開口部がダクト28の出口である導出口30Aとされている。
【0030】
シュラウド30は、車幅方向に対向する左右一対の側壁32と、一対の側壁32の車両上下方向の上縁をつなぐ天壁34とを有し、これら一対の側壁32と天壁34とでダクト28を規定している。すなわち、ダクト28は、導入口26Aと導出口30Aとの間で一対の側壁32と天壁34とで囲まれた空間が冷却風流路とされている。図示は省略するが、この実施形態におけるシュラウド30は、冷却ユニット22及びファンユニット24と一体に取り扱い可能にユニット化(モジュール化)されている。
【0031】
そして、冷却ユニット22は、フロアトンネル20の前側開口端20Aとダクト28の導出口30Aとの間にシール状態で介在されている。すなわち、ダクト28(自動車Vと路面Rとの間)とフロアトンネル20とが冷却ユニット22(の空気側流路)を介して連通されている。なお、冷却ユニット22は、一部又は全部がフロアトンネル20内の前部に配置された構成としても良く、一部又は全部がダクト28内の後部に配置された構成としても良い。すなわち、冷却ユニット22は、ダクト28とフロアトンネル20とで形成される空間(空気流路)の中間部に配置されていれば良い。
【0032】
また、この実施形態では、冷却ユニット22は、車両上端側が下端側よりも車両前側に位置するように傾斜(前傾)して配置されている。導入口26Aにおける車両前後方向の後端、導出口30Aにおける車両上下方向の下端の位置は、冷却ユニット22における車両上下方向の下端の位置に略一致されている。この配置によって、冷却ユニット22(の空気側流路)には、冷却ユニット22の前面(傾斜方向)との略直交方向(図1に示す矢印FA参照)に沿って冷却風が通過する構成とされている。
【0033】
以上説明した冷却ユニット22は、フロアトンネル20の下向き開口端20Bを車幅方向に架け渡した支持部材としてのユニットサポート(ラジエータサポート)35によって下方から支持されている。
【0034】
さらに、冷却風導入構造10は、ダクト28内への異物の侵入を抑制する異物侵入抑制構造としてのフラップ36を備えている。この実施形態では、車両前後方向に長手とされた複数のフラップ36が車幅方向に並列されている。より具体的には、各フラップ36は、車両前後方向及び車両上下方向に延在する平壁(平板状部材)とされており、図3に示される如く、アンダカバー26における導入口26Aの前縁26Bと後縁26Cと架け渡している。
【0035】
またさらに、冷却風導入構造10では、アンダカバー26におけるダクト28の車両前側に傾斜壁としてのベンチュリ壁38が形成されている。ベンチュリ壁38は、アンダカバー26におけるダクト28(導入口26A)の前縁26Bに対する車両前後方向の前側部分を、車両前後方向の前端側よりも後端側の方が路面Rに近接するように傾斜させることで形成されている。ベンチュリ壁38は、車幅方向においては少なくともダクト28(導入口26A)の設置範囲の車両前後方向の前側に形成されれば良いが、この実施形態では、アンダカバー26の前部は、車幅方向の略全幅に亘り傾斜壁であるベンチュリ壁38とされている。
【0036】
このベンチュリ壁38は、路面Rとの間に形成される空間を、車両後端側に向かうほど上下幅が狭まる(流路断面が絞られる)ベンチュリ形状とする構成である。この実施形態では、ベンチュリ壁38と路面Rとの間に形成された空間におけるダクト28の前縁部(導入口26Aの前縁26B)に対する車両上下方向のほぼ直下の部分が、流路断面が最も絞られたのど部とされている。このベンチュリ壁38を備えた冷却風導入構造10では、車両後方に向かう走行風が、導入口26Aに対する車両前方で生じるベンチュリ壁38のベンチュリ効果によって車両上方に導かれ、上記した矢印FA方向に沿ってダクト28に流入されやすい(走行風が、冷却ユニット22に至る前に、路面Rに対し矢印FA方向に近い角度でダクト28に流れ込む)構成とされている。
【0037】
以上説明したアンダカバー26は、その後端側で側面視蛇腹状(波板状)形成された変形容易部(変形促進部)40の後端部において車体に接続されている。具体的には、アンダカバー26は、図2に示される如く左右一対の変形容易部40を有しており、各変形容易部40の後端部がユニットサポート35に固定されている。これにより、アンダカバー26は、車体に対し略上下方向(ユニットサポート35周りの回転方向)に相対変位可能に(相対変位しやすく)支持されている。なお、アンダカバー26は、樹脂材によって、各フラップ36、変形容易部40を含む各部が一体に形成されている。
【0038】
そして、冷却風導入構造10は、振動伝達手段としてのトルクロッド42を介してパワーユニット12に連結されている。先ず、トルクロッド42について補足すると、トルクロッド42は、それぞれ内筒と外筒との間にゴムが充填されて構成されたパワーユニット側接続42A及びサブフレーム側接続部42Bを有する。パワーユニット側接続42Aは、外筒に固定されたブラケット44を介してパワーユニット12に固定されており、サブフレーム側接続部42Bは内筒においてサブフレーム15に固定されている。パワーユニット側接続42Aの内筒とサブフレーム側接続部42Bの外筒とは、ロッド部材42Cにて連結されている。これにより、トルクロッド42は、パワーユニット12をサブフレーム15に対し弾性的に支持しており、パワーユニット12の車体に対するロール軸周りの相対変位を抑制、減衰するようになっている。
【0039】
このトルクロッド42のパワーユニット側接続42Aを構成する外筒からは、脚部45が下向きに突出するように設けられて(垂下されて)おり、脚部45の下端はアンダカバー26に接続されている。この実施形態では、脚部45の下端は、例えばボルトナット等の締結手段によってアンダカバー26における導入口26Aに対する車両前側部分すなわちベンチュリ壁38に固定的に接続されている。
【0040】
これにより、冷却風導入構造10では、パワーユニット12が車体に対しロール軸周りに変位するか、パワーユニット12のロール軸周りの強制力が作用すると、この変位又は強制力がトルクロッド42のパワーユニット側接続42Aを介してアンダカバー26に伝達される構成とされている。そして、変形容易部40を介してユニットサポート35に接続されているアンダカバー26は、パワーユニット12からのロールに伴う変位又は強制力によって、主に車体に対し略上下方向に振動(相対変位)するようになっている。
【0041】
また、冷却風導入構造10では、ファンユニット24が図示しない制御手段としての冷却ECUに電気的に接続されている。冷却ECUは、車速センサからの信号に基づいて、自動車Vの車速が所定の速度以下でかつ冷却水温が所定の温度以上である場合にはファンユニット24を作動させ、自動車Vの車速が所定の速度を超える場合にはファンユニット24の作動を停止又は禁止するようになっている。
【0042】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0043】
上記構成の冷却風導入構造10が適用された自動車Vでは、その走行の際に、パワーユニット12と冷却ユニット22とを冷却水が循環する。この冷却水は、冷却ユニット22において空気との熱交換により冷却される。また、空調装置を作動時には、冷媒が冷却ユニット22、膨張弁、エバポレータ、コンプレッサの順で循環して冷凍サイクルが形成される。冷却ユニット22は、空気との熱交換により冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサとして機能する。
【0044】
この冷却ユニット22での熱交換は、自動車Vの走行風、又はファンユニット24の作動により生じる空気流(冷却風)が冷却ユニット22の空気側流路を流れることで行われる。なお、冷却ECUは、自動車Vの車速が所定の車速以下でかつ冷却水温が所定の温度以上であると判断すると、ファンユニット24を作動させる。すると、ファンユニット24の吸引力によって床下の空気が導入口26Aを通じて自動車Vのダクト28内に流入し、この空気がダクト28によって冷却ユニット22に導かれる。
【0045】
一方、自動車Vの車速が所定の車速を超えたと判断した冷却ECUは、ファンユニット24を停止させる。すると、図1に示される如く自動車Vの走行風Fhが車両上向きのベクトル成分を持ってダクト28に流入し、冷却ユニット22を通過する。この際、走行風Fhは、ベンチュリ壁38によって導入口26Aの前方で生じるベンチュリ効果によって車両上方に導かれ、多量の空気が導入口26Aを通じてダクト28に導入される。
【0046】
ここで、冷却風導入構造10では、導入口26AがフロントホイールWfの路面Rとの接触部Sよりも車両後方に位置する部分を含む。このため、回転しているフロントホイールWfのタイヤが例えば小石、砂、泥等の異物を踏む(路面との間に挟む)と、この異物が、車両上向き、車幅方向内向き、かつ車両後方に向けて飛ばされる場合がある。冷却風導入構造10では、導入口26Aに沿ってフラップ36が設けられているので、上記の如くタイヤに飛ばされた異物は、フラップ36に当たり、冷却ユニット22への到達が阻害される。このため、冷却ユニット22は異物に対し保護される。このため、冷却ユニット22の損傷や汚れ(性能低下)が防止又は効果的に抑制される。また、異物はフラップ36に当たって勢いが弱くなるので、仮に冷却ユニット22に到達したとしても、該冷却ユニット22の損傷が防止又は効果的に抑制される。しかも、冷却風導入構造10では、フラップ36が車幅方向に並列して複数設けられているので、異物のダクト28への侵入(冷却ユニット22への到達)抑制効果が高い。
【0047】
さらに、冷却風導入構造10では、フラップ36が車幅方向に並列して複数設けられているので、ダクト28に導入される空気流の整流効果が得られる。すなわち、フラップ36が設けられていない比較例では、側壁32で空気流の剥離が生じることに起因して、ダクト28すなわち冷却ユニット22の車幅方向中央部に集中してしまう。これに対して冷却風導入構造10では、フラップ36によってダクト28の導入口26Aで(側壁32で剥離が生じる前に)流路が車幅方向に複数に分割されるので、各流路にほぼ均等に空気流が生じる。しかも、自動車Vの高速走行時に整流効果が大きいので、自動車Vの走行抵抗の低減(燃費の向上)にも寄与する。
【0048】
ところで、自動車Vが雪道や泥道等を走行する場合には、路面Rに向けて開口する導入口26Aに設けられた各フラップ36には、雪や泥などの異物が付着、堆積することが考えられる。特に、上記の通りフロントホイールWfと路面Rとの接触部Sよりも車両後側で開口する部分を含む導入口26Aでは、フロントホイールWfが跳ね上げた雪や泥等が各フラップ36に付着しやすい。フラップ36に雪や泥などの異物が付着、堆積すると、冷却ユニット22に導かれる風量が不足し、該冷却ユニット22において所要の冷却性能が得られにくくなることが懸念される。
【0049】
ここで、冷却風導入構造10では、アンダカバー26がトルクロッド42を介してパワーユニット12に連結されているため、該パワーユニット12の運転(ロール)に伴ってアンダカバー26が略上下方向に振動(車体に対し相対変位)される。このため、冷却風導入構造10では、各フラップ36への雪や泥などの異物の付着が抑制され、またフラップ36に付着、堆積した異物が振動により落下される。
【0050】
このように、本実施形態に係る10では、ダクト28の入口である導入口26A付近に異物が付着、堆積すること又は導入口26A付近への異物の付着、堆積状態が維持されることを抑制することができる。
【0051】
また、冷却風導入構造10では、トルクロッド42におけるパワーユニット側接続42Aがアンダカバー26に接続されているので、サブフレーム側接続部42Bがアンダカバー26に接続された比較例と比べて、アンダカバー26を大きく又は強く振動させることができる。このため、上記比較例と比べて各フラップ36(導入口26Aの付近)への異物の付着抑制効果、付着した異物の落下促進効果が大きい。
【0052】
特に、冷却風導入構造10では、変形容易部40において車体に接続されているアンダカバー26は、変形容易部40を有しない比較例に係るアンダカバーと比べて、車体に対し相対変位しやすく過大な負荷を受けることが防止又は抑制される。このため、トルクロッド42を介して伝達されるパワーユニット12からの振動(変位、強制力)により、破損が防止又は効果的に抑制されながら、比較例に係るアンダカバーと比べて大きく又は強く振動される。
【0053】
しかも、アンダカバー26の変形容易部40による変形容易(促進)方向と、トルクロッド42を介してパワーユニット12のロールによる変位又は強制力が伝達される方向とが略一致しているので、アンダカバー26はパワーユニット12のロールに伴い略上下方向に大きく振動することとなる。これらにより、冷却風導入構造10では、各フラップ36(導入口26Aの付近)への異物の付着抑制効果、付着した異物の落下促進効果が大きい。
【0054】
以上により、冷却風導入構造10では、ダクト28への冷却風の導入が雪や泥などの異物によって阻害されることが防止又は効果的に抑制されるので、冷却ユニット22による所要の冷却性能が確保される。このため、冷却風導入構造10は、適用された自動車の燃費の向上にも寄与する。
【0055】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る冷却風導入構造50について、図4〜図6に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
図4〜図6に示される如く、冷却風導入構造50は、振動伝達手段として、トルクロッド42に代えて、配管であるラジエータホース52を利用している。したがって、図4〜図6では図示を省略したトルクロッド42には、アンダカバー26と接続される脚部45は設けられていない。一方、ラジエータホース52は、パワーユニット12と冷却ユニット22(のうちラジエータとして機能する熱交換器)との間で冷却水を循環する循環路を形成するものであって、図1〜図3では、ラジエータホースの図示を省略している。さらに、シュラウド30の天壁34には、ラジエータホース52を通すための窓部34A(図1〜図3では、図示省略)が形成されている。
【0057】
ラジエータホース52は、パワーユニット12から冷却ユニット22へ冷却水を導入する導入側ホース54と、冷却ユニット22からパワーユニット12へ冷却水を戻す導出側ホース56とを有する。ラジエータホース52と導入側ホース54とは、車体骨格には支持されず、それぞれ車体に対し相対変位可能に組み付けられている。冷却風導入構造50では、導出側ホース56が各フラップ36(を介してアンダカバー26)に保持されている。具体的には、図4及び図5に示される如く、各フラップ36には上向きに開口する嵌合凹部58が形成されており、導出側ホース56は各フラップ36の嵌合凹部58にそれぞれ嵌合されている。
【0058】
この実施形態では、各フラップ36における車両前後方向の前側部分における該前後方向の同じ位置に嵌合凹部58が形成されており、導出側ホース56における各フラップ36に保持された部分は車幅方向に延在されている。また、この実施形態におけるアンダカバー26は、変形容易部40を有せず、その後端部においてユニットサポート35に支持されている。冷却風導入構造50における他の構成は、図示しない部分を含め冷却風導入構造10の対応する構成と同様に構成されている。
【0059】
したがって、第2の実施形態に係る冷却風導入構造50によっても、基本的に第1の実施形態に係る冷却風導入構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。この点を補足すると、冷却風導入構造50では、パワーユニット12の振動が導出側ホース56を介してアンダカバー26に伝達され、これにより、雪や泥等の異物がダクト28の入口である導入口26A付近に付着、堆積すること又は導入口26A付近への異物の付着、堆積状態が維持されることを抑制することができる。なお、冷却風導入構造50においては、各フラップ36がアンダカバー26を介して振動される冷却風導入構造10とは異なり、雪や泥等の異物が付着されやすい各フラップ36が、導出側ホース56によって直接的に振動されると捉えることも可能である。
【0060】
また、冷却風導入構造50では、高温の冷却水が流れる導出側ホース56が各フラップ36に接触されているので、該各フラップ36への雪の付着が効果的に抑制されると共に、各フラップ36に付着、堆積した雪が溶かされて効果的に除去される。また、導出側ホース56が導入口26Aから外部に臨む構成であるため、ダクト28に侵入した雪を付着、堆積前に効率的に溶かして付着防止すことができる。すなわち、導出側ホース56は、ベンチュリ壁38等においてアンダカバー26に接続されても良いが、異物侵入抑制構造を成す各フラップ36に接続されることで、上記した熱を利用した雪の付着防止、融解効果を得ることができる。
【0061】
さらに、冷却風導入構造50では、導出側ホース56が各フラップ36に嵌合保持されているので、各フラップ36の剛性を向上させることができる。これにより、各フラップ36は安定した姿勢で、小石、砂、泥等の異物のダクト28への侵入を抑制したり、冷却風の整流作用を果たしたりすることができる。
【0062】
またさらに、冷却風導入構造50では、導出側ホース56がダクト28の前下部に車幅方向に沿って配置されているので、該ダクト28への冷却風の導入、ダクト28に導入された冷却風が冷却ユニット22の各部へ分散されることが導出側ホース56によって阻害されにくい。特に、図7に示される変形例の如く、導出側ホース56における各フラップ36に保持された部分を、整流を考慮した形状とすることで、ダクト28内での冷却風の整流効果を向上させることが可能である。
【0063】
なお、上記した第2の実施形態では、アンダカバー26が変形容易部40を有しない例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、アンダカバー26が変形容易部40においてユニットサポート35に接続される構成としても良い。また、第1、第2の実施形態において、蛇腹状に一体形成された変形容易部40に代えて、例えば、アンダカバー26が、ゴム等の弾性変形しやすい別部材より成る変形容易部を介して車体に接続(支持)される構成としても良い。
【0064】
また、上記した各実施形態では、車幅方向に並列された複数のフラップ36にて異物侵入抑制構造が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、導入口26Aの車幅方向両縁を架け渡すと共に各フラップ36をつなぐ横フラップを設けることで、平面視で格子状の異物侵入抑制構造を構成しても良い。又、本発明は、フラップ36が複数設けられた構成に限定されないことは言うまでもない。
【0065】
さらに、上記した各実施形態では、複数のフラップ36がアンダカバー26に一体に形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、各フラップ36をアンダカバー26とは別部材として構成しても良い。この場合、アンダカバー26の導入口26Aは、後端が開口された切欠部として構成されても良い。
【0066】
またさらに、上記した各実施形態では、既存部品(他の機能を有する部品)であるトルクロッド42、ラジエータホース52(導出側ホース56)を利用してパワーユニット12の振動がアンダカバー26に伝達される例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、専用の部品を用いてパワーユニット12とアンダカバー26とを振動伝達可能に連結しても良く、また例えば、脚部45をパワーユニット12に直接設けた構成としても良い。
【0067】
また、上記した各実施形態では、ダクト28、62の車両前方にベンチュリ壁38が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ダクト28の前方のアンダカバー26を平坦(路面Rに対し略平行に)形成しても良い。さらに、ベンチュリ壁38と共に又はベンチュリ壁38に代えて、ダクト28に走行風Fhを流入させる空力構造を設けても良い。このような空力構造として、例えば冷却ユニット22の下端からフロア下に突出したスパッツ等の導風部材を設けることができる。また、この導風部材は、例えば車速に応じて形状や姿勢を変化させるものとしても良い。
【0068】
さらに、上記した各実施形態では、内燃機関及びモータを含むパワーユニット12が車室Cの前方に位置するパワーユニット室14に配置された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、パワーユニット12がモータを含まない構成(一般的なFF車、FR車、4WD車等のエンジン車)としても良く、内燃機関を含むパワーユニット12が車室Cの後方に位置するパワーユニット室に配置される構成としても良く、パワーユニットが内燃機関を含まない構成としても良い。
【0069】
その他、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
10 冷却風導入構造
12 パワーユニット
14 パワーユニット室(パワーユニット用空間)
15 サブフレーム(車体)
22 冷却ユニット
26 アンダカバー
26A 導入口
28 ダクト
35 ユニットサポート(車体)
36 フラップ(異物侵入抑制構造)
40 変形容易部
42 トルクロッド(振動伝達手段)
45 脚部(振動伝達手段)
50 冷却風導入構造
52 ラジエータホース(配管)
56 導出側ホース(配管、振動伝達手段)
58 嵌合凹部
V 自動車(車両)
Wf フロントホイール(車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するための駆動力を発生するパワーユニットと、
車体に対し相対変位可能に支持され、前記パワーユニットが配置されたパワーユニット用空間を車両下方から覆うアンダカバーと、
前記パワーユニットに対する車両後方に配置された冷却ユニットと、
前記アンダカバーにおける前記パワーユニットと前記冷却ユニットとの間で路面を向けて開口された導入口から、前記冷却ユニットに空気を導くダクトと、
前記アンダカバーに設けられ、前記導入口から前記ダクト内への異物の侵入を抑制する異物侵入抑制構造と、
前記パワーユニットの振動を前記アンダカバーに伝達する振動伝達手段と、
を備えた冷却風導入構造。
【請求項2】
一端側が前記車体に接続されると共に他端側が前記パワーユニットに接続され、前記パワーユニットの前記車体に対する変位を抑制するためのトルクロッドをさらに備え、
前記振動伝達手段は、前記トルクロッドにおける前記パワーユニットとの接続側部分を前記アンダカバーに接続することで構成されている請求項1記載の冷却風導入構造。
【請求項3】
前記冷却ユニットは、前記車体に対し相対変位可能に支持された配管を通じて前記パワーユニットとの間を循環する冷媒を、前記ダクトにより導かれた空気との熱交換によって冷却する機能を有し、
前記振動伝達手段は、前記配管を前記アンダカバーに接続することで構成されている請求項1又は請求項2記載の冷却風導入構造。
【請求項4】
前記アンダカバーは、蛇腹状に形成された変形容易部において前記車体に接続されることで、該車体に対し相対変位可能に支持されている請求項1〜請求項3の何れか1項記載の冷却風導入構造。
【請求項5】
前記導入口は、車輪の路面との接触部位に対する車両前後方向の後側に位置する部分を含む請求項1〜請求項4の何れか1項記載の冷却風導入構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−240827(P2011−240827A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114780(P2010−114780)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】