説明

冷却風導入構造

【課題】被冷却体を効率的に冷却することができる冷却風導入構造を得る。
【解決手段】車両前部には、第一冷却風通路44及び第二冷却風通路50が設けられている。第一冷却風通路44は、パワーユニット室14の前端部において車両前向きに開口された第一導入口44Aから空冷式熱交換器30に空気を導く。これに対して、第二冷却風通路50は、アンダカバー40において路面Rに向けて開口された第二導入口50Aから空冷式熱交換器30に空気を導く。ここで、第二冷却風通路50には、第二導入口50Aよりも空冷式熱交換器30側において上壁部54と下壁部56とが車両上下方向にオーバーラップするオーバーラップ部58が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却風をパワーユニットの車両後方側の被冷却体に導くための冷却風導入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーユニットがエンジンルーム(パワーユニット室)内に配置されると共に、パワーユニットの車両後方側に被冷却体が配置された構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/097890号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような構造では、車両前端の開口部及びアンダカバーの開口部を通じてそれぞれ冷却風を被冷却体に導く場合がある。しかしながら、車両前端の開口部を通じて導かれた冷却風と、アンダカバーの開口部を通じて導かれた冷却風とが干渉してしまうと、被冷却体を冷却する性能が下がるため、被冷却体を効率的に冷却する観点からは改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、被冷却体を効率的に冷却することができる冷却風導入構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の冷却風導入構造は、車両前部に設けられたパワーユニット室内に配置され、車両が走行するための駆動力を発生するパワーユニットと、前記パワーユニット室内の空間を車両下方側から覆うアンダカバーと、前記パワーユニットに対して車両後方側に配置され、空気との熱交換によって冷却される被冷却体と、前記パワーユニット室の前端部において車両前向きに開口された第一導入口から前記被冷却体に空気を導く第一冷却風通路と、前記アンダカバーにおいて路面に向けて開口された第二導入口から前記被冷却体に空気を導くと共に、前記第二導入口よりも前記被冷却体側において上壁部と下壁部とが車両上下方向にオーバーラップするオーバーラップ部が形成された第二冷却風通路と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の冷却風導入構造によれば、例えば車両走行やファンの作動等によって、パワーユニット室の前端部の前方から第一導入口を通じて第一冷却風通路に導入された空気流が冷却風として被冷却体に導かれる。また、アンダカバーの下方から第二導入口を通じて第二冷却風通路に導入された空気流が冷却風として被冷却体に導かれる。このように2つのダクト部が設けられているので、何れか一方のダクト部だけを経由して被冷却体に車外から冷却風を導く構成と比べて、空気流の流量の確保が容易になる。
【0008】
ここで、第二冷却風通路は、第二導入口よりも被冷却体側において上壁部と下壁部とが車両上下方向にオーバーラップするオーバーラップ部が形成されている。このため、第二冷却風通路を経由した空気は、オーバーラップ部を通過することで空気流の方向が略車両後方側へ向かう方向に規制されるので、その空気流は、第一冷却風通路を経由した空気流と交差しにくい。従って、冷却風同士の干渉による圧力低下が抑えられるので、被冷却体が効率的に冷却される。
【0009】
請求項2に記載する本発明の冷却風導入構造は、請求項1記載の構成において、前記オーバーラップ部では、車両幅方向に並列配置された複数のリブによって、前記上壁部と前記下壁部とが車両上下方向に連結されている。
【0010】
請求項2に記載する本発明の冷却風導入構造によれば、オーバーラップ部では、車両幅方向に並列配置された複数のリブによって、上壁部と下壁部とが車両上下方向に連結されているので、車両走行時における第二冷却風通路の変形が抑えられる。このため、アンダカバーの下方から第二導入口を通じて導入された空気が安定的に流れて被冷却体に導かれる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の冷却風導入構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二導入口における車両後方側の端縁部には、車両幅方向に延在しかつ車両下方側に突出した突出部が設けられている。
【0012】
請求項3に記載する本発明の冷却風導入構造によれば、第二導入口における車両後方側の端縁部には、車両幅方向に延在しかつ車両下方側に突出した突出部が設けられているので、路面側を流れる走行風が突出部に当たって効果的に第二冷却風通路に導入される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の冷却風導入構造によれば、被冷却体を効率的に冷却することができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2に記載の冷却風導入構造によれば、第二導入口を通じて導入された冷却風を安定的に被冷却体に導くことができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3に記載の冷却風導入構造によれば、路面側を流れる走行風を突出部によって一層効果的に第二冷却風通路に導入することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却風導入構造が適用された車両の前部を外観視で示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る冷却風導入構造のアンダカバー等を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る冷却風導入構造の第二冷却風通路の構成部分を拡大しかつ部分的に破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る冷却風導入構造10について、図1〜図4に基づいて説明する。ここでは、先ず、冷却風導入構造10が適用された自動車Aの前部構成を説明し、次いで、冷却風導入構造10の具体的な構成を説明することとする。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。
【0018】
図1には、冷却風導入構造10が適用された自動車(車両)Aの前部が外観斜視図にて示されており、図2には、図1の2−2線に沿った拡大断面図が示されている。
【0019】
(車両の概略構成)
図2に示されるように、自動車Aの前部には、パワーユニット室(本実施形態の場合には「エンジンコンパートメント」としても把握される要素である。)14が配設され、パワーユニット室14内にはパワーユニット12が配置されている。パワーユニット12は、自動車Aが走行するための駆動力を発生するようになっており、この実施形態では、それぞれフロントホイールWf(図1参照)を駆動するための駆動源として内燃機関であるエンジンと電動モータとを含んで構成されている。したがって、自動車Aは、2つの駆動源を有するハイブリッド自動車とされている。また、フロントホイールWf(図1参照)は、ステアリングギア16に連結されており、ステアリングホイール(図示省略)の操舵による転舵が可能とされている。
【0020】
パワーユニット12は、車両幅方向に沿ったクランクシャフトを有する横置きのエンジンと、該エンジンに動力伝達可能に連結されたトランスアクスルとを主要部として構成されている。トランスアクスルは、電動モータ、図示しないジェネレータ、動力分割機構、無段変速機等である変速機等を含んで構成されている。また、この実施形態では、トランスアクスルには、例えば電動モータ、ジェネレータ、及びバッテリに電気的に接続されたインバータを含んで構成されている。したがって、この実施形態に係るパワーユニットは、パワープラントとして捉えることも可能である。
【0021】
内燃機関であるエンジンを含んで構成されるパワーユニット12が配設されたパワーユニット室14は、所謂エンジンルームとして捉えることができ、上方側がフード18(図1及び図2参照)によって開閉可能に覆われている。パワーユニット室14の車両前後方向の後端部は、車室Cとの間がダッシュパネル(車体客室前壁)20によって隔てられている。ダッシュパネル20は、フロアパネル22の車両前後方向の前端部に接合されている。パワーユニット室14の車両前後方向の前端部には、フロントバンパ26が配置されている。フロントバンパ26は、バンパリインフォースメント26Aと、バンパリインフォースメント26Aを車両前方側から覆うバンパカバー26Bとを主要部として構成されている。
【0022】
また、フロアパネル22における車両幅方向の中央部には、正面断面視で車両上下方向の下向きに開口する逆U字形状を成すフロアトンネル24が形成されている。そして、冷却風導入構造10が適用された自動車Aでは、フロアトンネル24の車両前後方向の前側の開口端24Aを概ね塞ぐように、被冷却体としての空冷式熱交換器30が設けられている。空冷式熱交換器30は、パワーユニット12及びフロントホイールWf(図1参照)の回転中心に対して車両後方側に配置されている。
【0023】
空冷式熱交換器30は、空気との熱交換によって冷却されるようになっており、ラジエータ30R及びコンデンサ(凝縮器)30Cを含んで構成されている。ラジエータ30Rは、水冷式のパワーユニット12(のエンジンや電気モータ)との間で冷媒としての冷却水を循環させてパワーユニット12を冷却する熱交換器である。また、コンデンサ30Cは、図示しない空調装置(の冷凍サイクル)を構成する熱交換器である。この実施形態では、空冷式熱交換器30は、上端側が下端側よりも車両前側に位置するように傾斜(前傾)して配置されている。なお、この実施形態では、空冷式熱交換器30がラジエータ30Rとコンデンサ30Cの両者を含んで構成されているが、被冷却体は、これらの一方のみを含んで構成されていてもよい。
【0024】
コンデンサ30Cの外周側は詳細後述するシュラウド38によって覆われており、空冷式熱交換器30に対して車両後方側には、ファン(送風機)32が配置されている。なお、本実施形態では、ファン32は、空冷式熱交換器30と一体化され、空冷式熱交換器30及びシュラウド38と共に冷却ユニット28を構成している。ファン32は、その作動によって空冷式熱交換器30を通過する空気流(冷却風)を生成するようになっている。すなわち、ファン32の作動によって空冷式熱交換器30には、冷却水等との熱交換を行う冷却風が車両前方側から車両後方側に向けて通過するようになっている。冷却水等との熱交換を行った後の冷却風は、フロアトンネル24の下向き開口端24Bを通じてフロア下方側に排出されるようになっている。
【0025】
ファン32は冷却ECU34(広義には「制御手段」として把握される要素である。)に電気的に接続されている。冷却ECU34は、パワーユニット12の高負荷時にファン32を作動させると共に、パワーユニット12の低負荷時にはファン32を停止させる構成とされている。具体的には、冷却ECU34は、冷却水温を検出する水温計36からの情報に基づいて、冷却水温が第1閾値を超えた場合にファン32を作動させ、冷却水温が第1閾値以下である第2閾値を下回った場合にファン32を停止させるようになっている。換言すれば、この制御は、ファン32を作動しない状態での冷却能力に対する負荷(発熱)が高い場合に、ファン32を作動させる制御として捉えることができる。
【0026】
以下、空冷式熱交換器30にて冷媒(冷却水、エアコン冷媒)と熱交換を行う冷却風を導くための冷却風導入構造10について詳細に説明することとする。
【0027】
(冷却風導入構造の構成)
冷却風導入構造10は、パワーユニット室14内の空間を車両下方側から覆うアンダカバー40を備えている。なお、本実施形態のアンダカバー40は、大型のフルアンダカバーとされている。パワーユニット室14には、アンダカバー40を下壁部とする第一冷却風通路44が設けられている。第一冷却風通路44は、パワーユニット室14の前端部であるバンパカバー26Bの下部において車両前向きに開口された第一導入口44Aから、パワーユニット12とアンダカバー40との間を経て空冷式熱交換器30に空気(冷却風)を導くための通路である。第一導入口44Aの開口幅(車両幅方向に沿った幅)、及び第一冷却風通路44の流路幅(車両幅方向に沿った幅)は、空冷式熱交換器30の車両幅方向に沿った幅と同等以上に設定されている。なお、第一導入口44Aには、その上縁部と下縁部とを連結して車両幅方向に並列配置された複数の立壁部42が設けられている。
【0028】
第一冷却風通路44の上壁部は、バンパカバー26Bにおける第一導入口44Aの上端縁部から車両後方側に延設された上壁部26B1と、パワーユニット12の下面部12Aと、シュラウド38の上壁部38Aと、を含んで構成されている。そして、第一冷却風通路44は、パワーユニット12の下面部12Aが上壁部を成す部分で上下の間隔が狭められ、その車両前方側及び車両後方側では上下の間隔が広げられている。すなわち、第一冷却風通路44は、車両前後方向の中間部が上下に絞られた絞り構造46となっている。このような絞り構造46により、第一冷却風通路44を通過する空気流の流速が上げられるようになっている。
【0029】
シュラウド38は、パワーユニット12よりも車両後方側に配置され、車両正面視で下向きに開口する逆U字形状を成しており、下端開口部がアンダカバー40の上面に突き当てられている。すなわち、シュラウド38は、車両幅方向に対向する左右一対の側壁部38Bと、一対の側壁部38Bの上縁部同士を連結する上壁部38Aとを有しており、空冷式熱交換器30及びファン32と一体に取り扱い可能にユニット化(モジュール化)されている。このように、シュラウド38における一対の側壁部38B及び上壁部38Aと、アンダカバー40とで、第一冷却風通路44の後端部が構成され、シュラウド38とアンダカバー40とで囲まれた空間に冷却風が流通するようになっている。
【0030】
また、アンダカバー40には、第一冷却風通路44の後部における車両下方側に第二冷却風通路50が設けられている。第二冷却風通路50は、アンダカバー40において路面Rに向けて開口された第二導入口50Aから、空冷式熱交換器30に空気(冷却風)を導くための通路であり、車両正面視で第一冷却風通路44とオーバーラップしている。第二導入口50Aは、アンダカバー40の車両幅方向中間部に設けられて(図3参照)、アンダカバー40と路面Rとの間を流れる走行風を第二冷却風通路50内に導入するための開口部であり、左右のフロントホイールWf(図1参照)間に形成されている。
【0031】
図3に示されるように、第二導入口50Aの車両幅方向の両端縁部からは左右一対の側壁部52が立設されており、第二冷却風通路50は、左右一対の側壁部52同士の間を通路内側空間としている。側壁部52は、車両側面視で三角形状を成しており、側壁部52の上縁部は、車両後方側へ向けて車両上方側へ傾斜している。また、一対の側壁部52の上縁部は上壁部54によって連結されている。上壁部54は、その前下端部が第二導入口50Aの前端縁部に連続して平板状に形成されており、車両後方側へ向けて車両上方側へ傾斜している。
【0032】
図2に示されるように、第二冷却風通路50の出口である導出口50Bは、空冷式熱交換器30の下部に対して車両前方側に対向配置されており、導出口50Bの下端部は、第二導入口50Aの車両後方側の端縁部よりも車両後方側の位置に設定されている。また、第二冷却風通路50の下壁部56は、第二導入口50Aよりも車両後方側(空冷式熱交換器30側)に形成されており、アンダカバー40の後端一般部と連続している。そして、第二冷却風通路50において、第二導入口50Aよりも車両後方側となる空冷式熱交換器30側には上壁部54と下壁部56とが車両上下方向にオーバーラップするオーバーラップ部58が形成されている。なお、以下の説明においては、上壁部54の後端部で下壁部56と車両上下方向にオーバーラップする部位を上壁ラップ部54Aという。
【0033】
また、本実施形態では、上壁ラップ部54Aは、その板厚が車両後方側へ向けて徐々に厚くなっている。上壁ラップ部54Aの下面は、上壁ラップ部54Aの上面よりも水平方向に対する傾斜角度が小さく設定されて略水平状とされている。これにより、第二導入口50Aから上壁部54の下面に沿って流れる走行風と、第一導入口44Aから上壁部54の上面に沿って流れる走行風とが、より干渉しにくい構成となっている。
【0034】
図4に示されるように、上壁部54の上壁ラップ部54Aと下壁部56とは、車両幅方向に並列配置された複数(本実施形態では三個)のリブ60によって車両上下方向に連結されている。リブ60は、第二冷却風通路50を補強すると共に、第二冷却風通路50を異物が通過するのを抑制するフラップとして機能している。各リブ60は、車両前後方向及び車両上下方向に延在する平板状部とされている。また、車両幅方向に並列配置された三個のリブ60のうち(並列方向中央に配置されたものを除く)左右両側の二個のリブ60(60S)には、車両前方側に延設されて上壁部54と一体化された延設部60Aが設けられている。これらの延設部60Aの下端部は、直線状とされ、その前端が上壁部54の下端まで延びている。なお、本実施形態の変形例として、このような延設部60Aは、すべてのリブ60に設けられてもよいし、すべてのリブ60に設けられなくてもよい。また、他の変形例として、並列方向中央に配置されたリブ60のみに設けられる等、本実施形態の構成以外の構成となるような任意のリブ60に設けられてもよい。
【0035】
また、第二導入口50Aにおける車両後方側の端縁部には、車両下方側に突出したフラップ62が設けられている。フラップ62は、車両側面視で逆L字形状の屈曲板状部材であり、第二導入口50Aにおける車両後方側の端縁部に沿って車両幅方向に延在している。フラップ62は、第二導入口50Aにおける車両後方側の端縁部から車両下方側に突出した突出部としての導風部62Aを備えると共に、導風部62Aの上端部から曲げられて車両後方側へ延設された取付部62Bを備えている。取付部62Bは、第二冷却風通路50における下壁部56の前端下面部に固定されている。
【0036】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
図2に示される冷却風導入構造10が適用された自動車Aでは、その走行の際に、パワーユニット12とラジエータ30R(空冷式熱交換器30)とを冷却水が循環する。この冷却水は、ラジエータ30Rにおいて空気との熱交換により冷却される。また、空調装置を作動時には、冷媒がコンデンサ30C(空冷式熱交換器30)、膨張弁、エバポレータ、コンプレッサの順で循環して冷凍サイクルが形成される。コンデンサ30Cは、空気との熱交換により冷媒を冷却して凝縮させる。
【0038】
空冷式熱交換器30(ラジエータ30R及びコンデンサ30C)での熱交換は、自動車Aの走行風、又はファン32の作動により生じる空気流が冷却風として空冷式熱交換器30を通過することで行われる。なお、冷却ECU34は、水温計36により検出した冷却水温が第1閾値を超えた場合、ファン32を作動させる。すると、ファン32の前後における圧力差によって(車両走行時にはこれに加えて自動車Aの走行に伴う走行風によって)、外部空気が第一導入口44A及び第二導入口50Aを通じてパワーユニット室14内に導入される。一方、冷却ECU34は、水温計36により検出した冷却水温が第1閾値を超えていない場合、ファン32を停止状態にする。この場合には、自動車Aの走行に伴う走行風によって、外部空気が第一導入口44A及び第二導入口50Aを通じてパワーユニット室14内に導入される。このため、停車時、低速時、及び高速時のいずれであっても、必要に応じて外部空気がパワーユニット室14内に導入される。
【0039】
そして、パワーユニット室14の前端部の前方から第一導入口44Aを通じて第一冷却風通路44に導入された空気流は冷却風として空冷式熱交換器30の上部及び上下方向中間部に導かれる(矢印Fr1参照)。また、アンダカバー40の下方から第二導入口50Aを通じて第二冷却風通路50に導入された空気流は冷却風として空冷式熱交換器30の下部に導かれる(矢印Fr2参照)。
【0040】
このように2つのダクト部が設けられているので、何れか一方のダクト部だけを経由して被冷却体に車外から冷却風を導くような対比構造と比べて、空気流の流量の確保が容易になる。なお、本実施形態では、第一冷却風通路44はアンダカバー40とパワーユニット12との間に流路を形成しているので、第一導入口44Aからの空気流はパワーユニット12の周囲を通過せずに、すなわちパワーユニット12の熱の影響を受けることを抑制されつつ、空冷式熱交換器30に導かれる。
【0041】
また、第二冷却風通路50は、第二導入口50Aよりも空冷式熱交換器30側に上壁部54と下壁部56とが車両上下方向にオーバーラップするオーバーラップ部58が形成されている。このため、第二冷却風通路50を経由した空気は、オーバーラップ部58を通過することで空気流の方向が略車両後方側へ向かう方向に規制(制御)されるので、その空気流は、第一冷却風通路44を経由した空気流と交差しにくい。すなわち、第一導入口44Aからの空気流と第二導入口50Aからの空気流とは、その下流側において合流しないように直進して別々に空冷式熱交換器30に導かれる。従って、冷却風同士の干渉による圧力低下が抑えられるので、空冷式熱交換器30が効率的に冷却される(冷却性能の向上)。
【0042】
また、上壁ラップ部54A及び下壁部56が車両上下方向に互いにオーバーラップしていることで、小石、砂、泥等の異物や洗車時における水等が第二冷却風通路50を通過して空冷式熱交換器30に至ることが抑制される。すなわち、異物等が斜め方向を含む車両前方側から第二導入口50Aを通じて入っても上壁ラップ部54Aに当たることで空冷式熱交換器30への侵入が抑制され(遮断性能の向上)、ひいては空冷式熱交換器30への付着が抑制される。
【0043】
また、オーバーラップ部58では、車両幅方向に並列配置された複数のリブ60によって、上壁ラップ部54Aと下壁部56とが車両上下方向に連結されているので(図3参照)、車両走行時における第二冷却風通路50の変形が抑えられる。このため、アンダカバー40の下方から第二導入口50Aを通じて導入された空気が安定的に流れて空冷式熱交換器30に導かれる。よって、空冷式熱交換器30に安定的に冷却風が供給され、空冷式熱交換器30が安定的に冷却される。
【0044】
また、上壁ラップ部54Aと下壁部56とが複数のリブ60によって連結されていることで、小石、砂、泥等の異物が第二冷却風通路50を通過して空冷式熱交換器30に至ることが効果的に抑制される。すなわち、異物が第二導入口50Aから入ってもリブ60に当たることで空冷式熱交換器30への侵入が抑制される。
【0045】
また、第二導入口50Aにおける車両後方側の端縁部には、車両幅方向に延在しかつ車両下方側に突出した導風部62A(フラップ62)が設けられているので、路面R側を流れる走行風が導風部62Aに当たって効果的に第二冷却風通路50に導入される。このため、第二冷却風通路50を通過する冷却風によって空冷式熱交換器30が効果的に冷却される。また、走行風が第二冷却風通路50により効果的に導入できるので、第二導入口50Aの開口面積が抑えられ、その結果として、第二冷却風通路50への異物等の侵入量も抑えられる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る冷却風導入構造10によれば、空冷式熱交換器30を効率的に冷却することができる。
【0047】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、パワーユニット12が内燃機関及びモータを含む構成とされているが、パワーユニットは、モータを含まない構成(エンジン車)としてもよいし、内燃機関を含まない構成(電気自動車)としてもよい。
【0048】
また、上記実施形態の変形例として、空冷式熱交換器30(被冷却体)は、その全部がフロアトンネル24の前側の開口端24Aよりも車両前方側に配置されていてもよいし、その全部がフロアトンネル24の前側の開口端24Aよりも車両後方側に配置されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態の変形例として、(上壁ラップ部54Aと下壁部56とを連結する)複数のリブ60が設けられていない構成とすることも可能である。また、他の変形例として、各リブ60と交差しつつ一対の側壁部52を架け渡すような連結部(横リブ)が設けられてもよい。
【0050】
また、上記実施形態の変形例として、第二導入口における車両後方側の端縁部に設けられた突出部は、導風部62Aと同様の形状とされて第二冷却風通路50の下壁部56と一体に形成されたもの等のような他の突出部であってもよい。また、他の変形例として、冷却風導入構造は突出部としての導風部62Aを備えない構造とすることも可能である。
【0051】
また、上記実施形態のファン32に代えてブロワ(送風機)が適用されてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 冷却風導入構造
12 パワーユニット
14 パワーユニット室
30 空冷式熱交換器(被冷却体)
40 アンダカバー
44 第一冷却風通路
44A 第一導入口
50 第二冷却風通路
50A 第二導入口
54 上壁部
56 下壁部
58 オーバーラップ部
60 リブ
62A 導風部(突出部)
A 自動車(車両)
R 路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられたパワーユニット室内に配置され、車両が走行するための駆動力を発生するパワーユニットと、
前記パワーユニット室内の空間を車両下方側から覆うアンダカバーと、
前記パワーユニットに対して車両後方側に配置され、空気との熱交換によって冷却される被冷却体と、
前記パワーユニット室の前端部において車両前向きに開口された第一導入口から前記被冷却体に空気を導く第一冷却風通路と、
前記アンダカバーにおいて路面に向けて開口された第二導入口から前記被冷却体に空気を導くと共に、前記第二導入口よりも前記被冷却体側において上壁部と下壁部とが車両上下方向にオーバーラップするオーバーラップ部が形成された第二冷却風通路と、
を有する冷却風導入構造。
【請求項2】
前記オーバーラップ部では、車両幅方向に並列配置された複数のリブによって、前記上壁部と前記下壁部とが車両上下方向に連結されている、請求項1記載の冷却風導入構造。
【請求項3】
前記第二導入口における車両後方側の端縁部には、車両幅方向に延在しかつ車両下方側に突出した突出部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の冷却風導入構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107469(P2013−107469A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253075(P2011−253075)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】