説明

冷媒圧縮機の電着塗装方法及び保護カバー

【課題】筐体の電着塗装時に、電源接続端子は塗装されないように保護し、端子台は塗装することができる冷媒圧縮機の電着塗装方法を得ること。
【解決手段】冷媒圧縮機の筐体の外部へ突出する端子台115に保持され、該端子台115から外部へ突出する複数の電源接続端子116を、前記端子台115を露出させて保護カバー118の凹部118a内に収容するステップと、前記筐体及び端子台115を電着塗装するステップと、を含む。前記保護カバー118の凹部118a内に前記電源接続端子116を収容するとき、前記端子台115と保護カバー118の凹部118aの開口端部との間の間隙を、0.5〜2.0mmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置や空気調和機等の冷凍サイクルに使用される、スクロール式、ロータリ式、レシプロ式等の冷媒圧縮機の電着塗装方法及び保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電着塗装により防錆処理を施す冷媒圧縮機について、キャップ状に形成され開口部が前記冷媒圧縮機の端子台に外嵌めされ、外側片面にのみ亜鉛メッキ等の防錆処理を施した冷媒圧縮機の保護カバーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−22685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、保護カバーが端子台に外嵌めされるので、冷媒圧縮機の筐体の電着塗装時に、端子台と筐体の合せ目部分が塗装されず筐体の一部が未塗装となり錆が発生することがある。そこで、端子台と筐体の合せ目部分を塗装して筐体の塗装を完全にするために、人手により塗料の刷毛塗りを行なわなければならない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、筐体の電着塗装時に、電源接続端子は塗装されないように保護し、筐体は完全に塗装することができる冷媒圧縮機の電着塗装方法及び保護カバーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、冷媒圧縮機の筐体の外部へ突出する端子台に保持され、該端子台から外部へ突出する複数の電源接続端子を、前記端子台を露出させて保護カバーの凹部内に収容するステップと、前記筐体及び端子台を電着塗装するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる冷媒圧縮機の電着塗装方法及び保護カバーは、筐体の電着塗装時に、端子は塗装されないように保護し、筐体及び端子台を完全に塗装することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明にかかる冷媒圧縮機の電着塗装方法により塗装される冷媒圧縮機の実施例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる冷媒圧縮機の電着塗装方法により塗装される冷媒圧縮機の端子台及び電源接続端子を示す部分縦断面図である。
【図3−1】図3−1は、本発明にかかる保護カバーの実施例1を示す下面図である。
【図3−2】図3−2は、実施例1の保護カバーの縦断面図である。
【図3−3】図3−3は、実施例1の保護カバーを電源接続端子に被せた状態を示す横断面図である。
【図3−4】図3−4は、実施例1の保護カバーを電源接続端子に被せた状態を示す縦断面図である。
【図4−1】図4−1は、本発明にかかる保護カバーの実施例2を示す下面図である。
【図4−2】図4−2は、図4−1のA−A線に沿う断面図である。
【図4−3】図4−3は、実施例2の保護カバーの上面図である。
【図4−4】図4−4は、実施例2の保護カバーを電源接続端子に被せた状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる冷媒圧縮機の電着塗装方法及び保護カバーの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明にかかる冷媒圧縮機の電着塗装方法により塗装される冷媒圧縮機の実施例を模式的に示す縦断面図であり、図2は、本発明にかかる冷媒圧縮機の電着塗装方法により塗装される冷媒圧縮機の端子台及び電源接続端子を示す部分縦断面図であり、図3−1は、本発明にかかる保護カバーの実施例1を示す下面図であり、図3−2は、実施例1の保護カバーの縦断面図であり、図3−3は、実施例1の保護カバーを電源接続端子に被せた状態を示す横断面図であり、図3−4は、実施例1の保護カバーを電源接続端子に被せた状態を示す縦断面図である。
【0011】
図1に示すように、冷媒圧縮機1は、ロータリ式圧縮機であり、密閉された縦置き円筒状の筐体10の下部に設置された冷媒圧縮部12と、筐体10の上部に設置され、回転軸15を介して冷媒圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0012】
モータ11のステータ111は、筐体10の内周面に固定されている。モータ11のロータ112は、ステータ111の中央部に配置され、モータ11と冷媒圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に固定されている。
【0013】
モータ11が作動して回転軸15が回転すると、冷媒圧縮部12は、図示しないアキュムレータ及び低圧連絡管31を介して、冷凍サイクルの低圧側から連続的に冷媒ガスを吸入して圧縮し、筐体10内及びシステム接続管107を通して冷凍サイクルの高圧側に吐出する。
【0014】
図1及び図2に示すように、筐体10の天板10aには、モータ11のステータ巻線の電源接続端子116を保持する端子台115が、内側から外側に嵌入されて固着されている。端子台115には、複数(3本)のピン端子116aが貫通して保持され、ピン端子116aの外部突出側及び内部側には、電線をハンダ付けするための孔開き板状のタブ116bが固着されている。タブ116bが固着されたピン端子116aを、電源接続端子116と呼ぶ。ピン端子116aと端子台115との間は、絶縁シール材(例えば、ガラス)117により絶縁シールされている。
【0015】
図3−1〜図3−4に示すように、実施例1の保護カバー118は、シリコンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロプレンゴム等(亀裂性、耐熱性、耐薬品性の点からシリコンゴムが最適である。)の弾性体により、外形が円柱状に形成され、内部に、凹部としての環状溝118aが形成されている。環状溝118aの開口端部は、面取り118b、118cがなされている。
【0016】
環状溝118aの深さH(図3−2参照)は、端子台115からの電源接続端子116の突出高さH(図3−4参照)より小さく形成され、電源接続端子116を保護カバー118の環状溝118aに収容し、電源接続端子116の先端を環状溝118aの天井に当接させたとき、端子台115の上面と保護カバー118の開口端部との間に間隙Hができるようにする。間隙Hは、0.5〜2.0mmとするのが望ましい。
【0017】
また、図3−3に示すように、電源接続端子116が環状溝118aに収容されるとき、電源接続端子116の側部の複数個所が、環状溝118aの側壁に圧接され、側壁が少し弾性変形するように、複数の電源接続端子116の大きさと配置に合わせて環状溝118aの形状寸法を決める。
【0018】
冷媒圧縮機1の機種により、複数の電源接続端子116の端子台115上のレイアウトが異なる場合があるが、保護カバー118を弾性体で形成すること、凹部を環状溝118aとすること及び環状溝118aの溝幅を大きくすることにより、共通の保護カバー118で、複数機種に対応することができる。
【0019】
次に、冷媒圧縮機1の実施例1の電着塗装方法について説明する。まず、冷媒圧縮機1の筐体10の外部へ突出する複数の電源接続端子116を、端子台115を露出させて保護カバー118の凹部としての環状溝118a内に収容する。このとき、電源接続端子116の側部の複数個所が、環状溝118aの側壁に圧接されるので、保護カバー118は、電源接続端子116に保持される。環状溝118aの開口端部は、面取り118b、118cがなされているので、電源接続端子116を挿入しやすい。
【0020】
次に、筐体10を洗浄し、後工程での塗装が着き易いように、化成処理を行なう。洗浄と化成処理は、必要に応じて行えばよく、いずれか1つを行なってもよいし、両方行ってもよいし、2つとも省略してもよい。
【0021】
次に、筐体10及び端子台115を電着塗装する。端子台115の上面と保護カバー118の開口端部との間に間隙Hを設け、端子台115及び端子台115と筐体10の合せ目を露出させているので、端子台115及び端子台115と筐体10の合せ目には、塗料が正常に付着し、筐体10を完全に塗装することができる。また、万が一、環状溝118a内に洗浄剤や塗料が浸入しても、間隙Hから流出させることができる。
【実施例2】
【0022】
図4−1は、本発明にかかる保護カバーの実施例2を示す下面図であり、図4−2は、図4−1のA−A線に沿う断面図であり、図4−3は、実施例2の保護カバーの上面図であり、図4−4は、実施例2の保護カバーを電源接続端子に被せた状態を示す横断面である。
【0023】
図4−1〜図4−4に示すように、実施例2の保護カバー218は、実施例1の保護カバー118と同様に、シリコンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロプレンゴム等の弾性体により、外形が円柱状に形成され、内部に、凹部としての複数(3つ)の穴218aが形成されている。
【0024】
穴218aの深さH(図4−2参照)は、端子台115からの電源接続端子116の突出高さH(図3−4参照)より小さく形成され、複数の電源接続端子116を、保護カバー218の夫々の穴218aに収容し、電源接続端子116の先端を穴218aの天井に当接させたとき、端子台115の上面と保護カバー218の開口端部との間に間隙H(図3−4参照)ができるようにする。間隙Hは、0.5〜2.0mmとするのが望ましい。
【0025】
また、図4−4に示すように、複数の電源接続端子116が、夫々の穴218aに収容されるとき、電源接続端子116の側部の複数個所が、穴218aの側壁に圧接され、側壁が少し弾性変形するように、複数の電源接続端子116の大きさと配置に合わせて穴218aの形状寸法を決める。
【0026】
次に、冷媒圧縮機1の実施例2の電着塗装方法について説明する。まず、冷媒圧縮機1の筐体10の外部へ突出する複数の電源接続端子116を、端子台115(図3−4参照)を露出させて保護カバー218の凹部としての夫々の穴118a内に収容する。複数の電源端子116に保護カバー218を被せるとき、複数の穴118aに対応させて保護カバー218の上面に設けた位置合わせマーク218dにより、夫々の穴118aの位置を夫々の電源接続端子116の位置に合わせることができる。また、電源接続端子116の側部の複数個所が、穴218aの側壁に圧接されるので、保護カバー218は、電源接続端子116に保持される。
【0027】
次に、筐体10を洗浄し、後工程での塗装が着き易いように、化成処理を行なう。洗浄と化成処理は、必要に応じて行えばよく、いずれか1つを行なってもよいし、両方行ってもよいし、2つとも省略してもよい。
【0028】
次に、筐体10及び端子台115を電着塗装する。端子台115の上面と保護カバー218の開口端部との間に間隙H(図3−4参照)を設け、端子台115及び端子台115と筐体10の合せ目を露出させているので、端子台115及び端子台115と筐体10の合せ目には、塗料が正常に付着し、筐体10を完全に塗装することができる。また、万が一、穴218a内に洗浄剤や塗料が浸入しても、間隙Hから流出させることができる。
【0029】
本実施例では、冷媒圧縮機1をロータリ式圧縮機としたが、冷媒圧縮機1は、スクロール式やレシプロ式であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 冷媒圧縮機
10 筐体
11 モータ
12 冷媒圧縮部
15 回転軸
31 低圧連絡管
107 システム接続管
111 ステータ
112 ロータ
115 端子台
116 電源接続端子
116a ピン端子
116b タブ
117 絶縁シール材
118 保護カバー
118a 環状溝(凹部)
118b、118c 面取り
218 保護カバー
218a 穴
218d 位置合わせマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮機の筐体の外部へ突出する端子台に保持され、該端子台から外部へ突出する複数の電源接続端子を、前記端子台を露出させて保護カバーの凹部内に収容するステップと、
前記筐体及び端子台を電着塗装するステップと、
を含むことを特徴とする冷媒圧縮機の電着塗装方法。
【請求項2】
前記保護カバーの凹部内に前記電源接続端子を収容するとき、前記端子台と保護カバーの凹部の開口端部との間の間隙を、0.5〜2.0mmとすることを特徴とする請求項1に記載の冷媒圧縮機の電着塗装方法。
【請求項3】
前記電源接続端子が、前記保護カバーの凹部内に収容されるとき、前記電源接続端子の側部の複数個所が、前記凹部の側壁に圧接されることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷媒圧縮機の電着塗装方法。
【請求項4】
弾性体により形成され、冷媒圧縮機の筐体の外部へ突出する端子台に保持され、該端子台から外部へ突出する複数の電源接続端子を収容する凹部を有する保護カバーであって、
前記凹部の深さは、前記端子台からの前記電源接続端子の突出高さより小さく、
前記凹部は、前記電源接続端子が該凹部に収容されるとき、前記電源接続端子の側部の複数個所が、前記凹部の側壁に圧接されるような形状寸法となっていることを特徴とする保護カバー。
【請求項5】
前記凹部は、環状溝であることを特徴とする請求項4に記載の保護カバー。
【請求項6】
前記凹部は、前記複数の電源接続端子の夫々を収容する複数の穴であることを特徴とする請求項4に記載の保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【公開番号】特開2012−201902(P2012−201902A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64982(P2011−64982)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)