冷媒配管の取付構造
【課題】被冷却部品に冷媒配管を容易に着脱することができ、しかも製造コストの安価な冷媒配管の取付構造を提供する。
【解決手段】冷媒配管の取付構造5は、冷媒配管1が位置決めされる台座部7を基部9から突出した伝導部材11と、伝導部材11の基部9から延出した弾性部材13とを備える。弾性部材13は、バネ鋼から成る板状クリップ27を対にして配置したものであり、伝導部材11の基部9にビス29で固定される固定部31、及び先端を折り返してなる頭部33を有する。板状クリップ27がその固定部31から傾斜面35まで延びる寸法は、伝導部材11の基部9から台座部7の突出する高さよりも長くなるよう設定されている。
【解決手段】冷媒配管の取付構造5は、冷媒配管1が位置決めされる台座部7を基部9から突出した伝導部材11と、伝導部材11の基部9から延出した弾性部材13とを備える。弾性部材13は、バネ鋼から成る板状クリップ27を対にして配置したものであり、伝導部材11の基部9にビス29で固定される固定部31、及び先端を折り返してなる頭部33を有する。板状クリップ27がその固定部31から傾斜面35まで延びる寸法は、伝導部材11の基部9から台座部7の突出する高さよりも長くなるよう設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の導入される冷媒配管を被冷却部品に取付ける冷媒配管の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールのように発熱する電装部品の冷却を、冷媒が導入される冷媒配管を用いて行う場合、電装部品と冷媒配管との間の伝熱は、次のような取付構造によって実現される。即ち、図11に示すように、アルミニウム等の金属製の取付板101に冷媒配管103を接合してなる冷媒ジャケット105に、伝熱板107の一面をビス109で接合し、伝熱板107の他面に電装部品111をビス113で固定する。伝熱板107は、支持体115を介してプリント基板117に支持される。
【0003】
しかしながら、ビス109,113を多用するため、冷媒ジャケット105と伝熱板107、及び伝熱板107と電装部品111との着脱作業が煩雑である。また、冷媒配管103が図に表れていない空調機の筐体に固定された状態で、冷媒ジャケット105は、電装部品111がプリント基板117に実装される位置に覆い重なる。このため、電装部品111を取り扱うのに冷媒ジャケット105が邪魔になる。
【0004】
また、冷媒ジャケット105と電装部品111との間に伝熱板107を介在させたのは、空調機を組み立てる製造ラインにおいて、取付板101と伝熱板107との接合、及び伝熱板107と電装部品111との接合を個別の工程で行えるようにするためである。しかしながら、空調機を組み立てる作業数が増大し、また冷媒ジャケット105と伝熱板107の両方が不可欠であるため、空調機がコスト高になることは避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−335091号公報
【特許文献2】実開平04−074494号公報
【特許文献3】特開2006−157042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、被冷却部品に冷媒配管を容易に着脱することができ、しかも製造コストの安価な冷媒配管の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、前記冷媒配管が位置決めされる台座部を、前記被冷却部品に接合される基部から突出した伝導部材と、前記伝導部材の基部から延出し、前記冷媒配管を前記台座部に押付ける弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記弾性部材が、前記伝導部材の基部に掛止される爪部を有し、前記冷媒配管を相互に挟む一対の板状クリップであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記冷媒配管を支持する支持板を、前記伝導部材の台座部に対向させ、前記支持板に、前記伝導部材の基部から延出する弾性部材が進入できる開口部を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、前記伝導部材に掛止する爪部を有し、前記冷媒配管を前記伝導部材に押付ける弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、前記伝導部材に前記冷媒配管を挟んで対向する支持板と、前記支持板から延出し、前記冷媒配管を前記伝導部材と共に前記支持板に押付ける弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、冷媒配管を弾性部材によって伝導部材の台座部に押付けるので、ビス等を用いることなく、パワーモジュール等の被冷却部品が接合される伝導部材に冷媒配管を取付け、被冷却部品から冷媒配管に熱を導く良好な伝熱性能を確保することができる。しかも、当該取付構造は、従来のように冷媒ジャケットが不要であるため、プリント基板等に実装された被冷却部品の取り扱いが容易であり、また冷媒ジャケットが不要である分、当該取付構造の製造コストを低減することができる。
【0013】
また、弾性部材が冷媒配管を相互に挟む一対の板状クリップである場合、これらの間に冷媒配管を押し込むだけで、一対の板状クリップの間隔が広がるように弾性部材を弾性変形させ、弾性部材に冷媒配管を容易に挟着させることができる。これにより、冷媒配管を伝導部材に取付ける作業が完了する。反対に、一対の板状クリップの間から冷媒配管を引き抜くだけで、冷媒配管を伝導部材から容易に取り外すことができる。また、弾性部材が伝導部材の基部に掛止される爪部を有する場合、弾性部材を伝導部材に接合するのにもビス等を用いなくて良い。
【0014】
更に、本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、伝導部材がその基部から台座部を突出させ、弾性部材が伝導部材の基部から延出しているので、伝導部材の基部から冷媒配管に接する位置まで延びる弾性部材の寸法が比較的長くなる。このため、上記のような弾性部材の弾性変形が容易になるので、冷媒配管の着脱作業を行う者は冷媒配管に過度の力を加えなくて済むので、冷媒配管の外力による変形、又は折損を未然に防止することができる。しかも、当該取付構造によれば、弾性部材が冷媒配管を挟着するための所望の保持力が得られるという利点がある。
【0015】
更に、本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、冷媒配管が板金等の支持板に支持される場合、弾性部材を開口部に進入させた状態で、冷媒配管を弾性部材によって伝導部材の台座部に押付けることができる。このため、ビス等を用いることなく、被冷却部品を接合される伝導部材に、冷媒配管を取付けることができる。また、伝導部材の台座部と支持板とが互いに対向するので、上記のように弾性部材を弾性変形させるときの反力を支持体が受け止め、上記の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【0016】
更に、本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、伝導部材に冷媒配管を挟んで対向する支持板から弾性部材を延出し、冷媒配管を弾性部材によって伝導部材と共に支持板に押付けるので、弾性部材を伝導部材に接合する必要がない。また、弾性部材の冷媒配管を押し付ける力を支持体が受け止め、支持体が媒配管を補強することにより、上記の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る冷媒配管の取付構造をその長手方向に破断した断面図、(b)はその幅方向に破断した断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の分解斜視図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の組立工程を(a)〜(c)の順に示す側面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の一の変形例の組立工程を(a)〜(c)の順に示す側面図。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の他の変形例の側面図、(b)はその更なる変形例の側面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の組立工程を(a),(b)の順に示す側面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の一の変形例の組立工程を(a),(b)の順に示す側面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の他の変形例の組立工程を(a),(b)の順に示す側面図。
【図9】(a)は本発明の第4の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の側面図、(b)はその変形例の側面図。
【図10】(a)は伝熱試験のサンプルとして適用された冷媒配管の取付構造の側面図、(b)はその比較例の側面図、(c)は伝熱試験の結果を示すグラフ。
【図11】(a)は従来例の冷媒配管の取付構造をその長手方向に破断した断面図、(b)はその幅方向に破断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施形態として、冷媒配管1を被冷却部品3に取付ける冷媒配管の取付構造5を示している。冷媒配管の取付構造5は、冷媒配管1が位置決めされる台座部7を基部9から突出した伝導部材11と、伝導部材11の基部9から延出した弾性部材13とを備える。矢印L,Wは、以下に記す長手方向、及び幅方向をそれぞれ指している。
【0019】
伝導部材11は、熱伝導性に優れたアルミニウム等を材料として、板状の基部9と凸形の台座部7とを一体に形成したものである。また、伝導部材11は、支持体15を介してプリント基板17に支持されている。台座部7は、冷媒配管1に密接する面積を積極的に広げるために、冷媒配管1の外周面と略同じ曲率の凹部19を形成している。凹部19は必須ではなく、伝導部材11の基部9を平坦な形状とし、これに密接する扁平な形状になるよう冷媒配管1を成形しても良い。被冷却部品3の一例として、プリント基板17に実装されたパワーモジュールを示している。被冷却部品3は、伝導部材11の基部9の冷媒配管1と反対側の接合面21にビス23で接合しても良い。符号25は、ドライバー等を差し込むための挿通孔を指している。
【0020】
弾性部材13は、バネ鋼から成る板状クリップ27を対にして配置したものであり、伝導部材11の基部9にビス29で固定される固定部31、及び先端を折り返してなる頭部33を有する。一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の間隔が冷媒配管1の直径よりも少し狭くなるように、伝導部材11の基部9に位置決めされている。また、一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の内側を互いに略ハ字形に対向する傾斜面35としている。一対の板状クリップ27の間に冷媒配管1を挟着させた状態で、一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、冷媒配管1は、傾斜面35により冷媒配管1は伝導部材11の台座部7に押付けられる。冷媒配管1と台座部7の間には、後述の熱伝導シート、又は熱伝導グリースを介在させることが好ましい。
【0021】
伝導部材11から冷媒配管1を取り外すときは、一対の板状クリップ27の間から冷媒配管1を図中の上方へ引き抜くだけで良い。この力により、一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の間隔の広がる方向へ弾性変形するので、冷媒配管1は一対の板状クリップ27のそれぞれの頭部33の間を通過し、一対の板状クリップ27から離脱する。また、冷媒配管1を伝導部材11に取付けるには、冷媒配管1を一対の板状クリップ27の間に押し込むだけで良い。これにより、一対の板状クリップ27は上記と同様に弾性変形するので、冷媒配管1は、一対の板状クリップ27のそれぞれの頭部33の間を通過し、台座部7の凹部19に突き当たる。
【0022】
以上に述べた冷媒配管の取付構造5によれば、ビス等を用いることなく、被冷却部品3が接合される伝導部材11に冷媒配管1を取付け、被冷却部品3から冷媒配管1に熱を導く良好な伝熱性能を確保することができる。しかも、従来のような冷媒ジャケットが不要であるため、プリント基板17に実装された被冷却部品3を取り扱うのが容易であり、また冷媒配管の取付構造5の製造コストを低減することができる。
【0023】
更に、板状クリップ27が、伝導部材11の基部9に固定された固定部31から冷媒配管1に接する傾斜面35まで延びる寸法は、伝導部材11の台座部7が基部9から突出する高さよりも長く設定されている。これは、弾性部材13が冷媒配管1を挟着する保持力を抑えることなく、上記のように弾性変形する板状クリップ27が容易に撓めるようにするためである。これにより、冷媒配管1の着脱作業を行う者が冷媒配管1に過度の力を加えなくて済むので、冷媒配管1の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【0024】
本発明の他の実施形態について、以下に冷媒配管の取付構造5との相違点を述べる。また、冷媒配管の取付構造5と同様の要素には、その説明の有無に関わらず、引き続き同じ呼称、又は符号を用いるものとする。
【0025】
図2に示す冷媒配管の取付構造37は本発明の第2の実施形態である。冷媒配管の取付構造37は、2条の溝部39を台座部7を挟む位置に形成した伝導部材41と、溝部39に掛止される爪部43を有する板状クリップ45を対にして配置した弾性部材47とを備える。
【0026】
伝導部材41の溝部39は、その内側面に鉤となる段差49を形成し長手方向に延びている。板状クリップ45は、その頭部33と反対側の端部を折り返すことにより、幅方向に突出する爪部43を形成している。図3(a)に示すように、一対の板状クリップ45を伝導部材41に取付けるには、爪部43を溝部39に押し込むだけで良い。これにより、爪部43が幅方向に収縮するよう弾性変形しながら溝部39の奥方へ進入する。同図(b)に示すように、爪部43が段差49に掛止された状態で、板状クリップ45が伝導部材41から離脱することはない。このため、図1(b)に示したビス29が不要であり、冷媒配管の取付構造37の部品点数を少なくすることができる。
【0027】
更に、冷媒配管1を一対の板状クリップ45の間に押し込むことにより、図3(c)に示すように、冷媒配管1を伝導部材41に取付けできる。この状態で、冷媒配管1が傾斜面35から受ける下向きの力の反作用として、板状クリップ45の頭部33と爪部43との間に張力が派生する。この張力によって爪部43と段差49との摩擦力が増大し、板状クリップ45が溝部39に対して長手方向に滑ることのないよう固定される。
【0028】
図4(a)に示すように、板状クリップ51の頭部33と反対側の端部をL字形に折り返すことにより根部53を板状クリップ51に形成し、伝導部材55に根部53が嵌入するL字形のスリット部57を形成しても良い。ここでL字形とは、伝導部材55の厚み方向、及び幅方向にそれぞれ延びる形状を意味する。この場合、同図(b)に示すように、伝導部材55を厚み方向にプレスする等してスリット部57を絞ると、根部53がスリット部57に圧着される。これにより、板状クリップ51を伝導部材55に強固に固定することがき、更に同図(c)に示すように、冷媒配管1を一対の板状クリップ51で挟着することができる。
【0029】
また、既述の板状クリップは必ずしも対にしなくても良い。図5(a)に示すように、台座部を省略した伝導部材59に凹部19を形成し、伝導部材59の凹部19から幅方向に隔たる位置に溝部39を形成する。弾性部材として適用される板状クリップ61は、その爪部43を溝部39に掛止され、爪部43から延出した先端部63を伝導部材59の凹部19に対面させている。先端部63と凹部19との間に冷媒配管1を挟着させた状態で、板状クリップ61は、その先端部63と伝導部材59との間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、冷媒配管1は、先端部63により冷媒配管1は伝導部材59の凹部19に押付けられる。同図(b)は、溝部39を冷媒配管1に向けて解放した例を示している。
【0030】
図6(a),(b)に示す冷媒配管の取付構造65は本発明の第3の実施形態である。冷媒配管の取付構造65は、冷媒配管1を支持する支持板67を、伝導部材41の台座部7に対向させ、支持板67に、伝導部材41の基部9から延出する弾性部材である一対の板状クリップ45の頭部33が進入できる開口部69を形成したものである。支持板67は、鋼板等の薄板であれば良く限定される要素ではないが、例えば空調機の筐体に納められた冷媒配管や圧縮機を覆うための板金(仕切板)を、支持板67として適用しても良い。また、バンド等の留め具を用いて、冷媒配管1を支持板67に固定しても良い。
【0031】
冷媒配管1を伝導部材41に取付けるには、一対の板状クリップ45を伝導部材41と共に冷媒配管1に押付け、一対の板状クリップ45の間に冷媒配管1を進入させる。一対の板状クリップ45が冷媒配管1に押付けられる力を、支持板67が受け止め、また冷媒配管1を伝導部材41から取り外すときの力も支持板67が受け止める。このように支持板67が冷媒配管1を補強するので、上記の力による冷媒配管1の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【0032】
図7(a),(b)に示すように、支持板67の冷媒配管1に接する箇所に、冷媒配管1の外周面に沿う湾曲部71を形成しても良い。この場合、支持板67の湾曲部71に冷媒配管1を嵌め付けることができるので、バンド等の留め具を用いることなく、冷媒配管1を直に支持板67に位置決めすることができる。
【0033】
図8(a),(b)に示すように、支持板67の湾曲部71に冷媒配管1を嵌め付け、これらを伝導部材59の凹部19と板状クリップ61の先端部63との間に挟着しても良い。この状態で、板状クリップ61は、その先端部63と伝導部材59との間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、冷媒配管1は、先端部63により伝導部材59の凹部19に押付けられる。
【0034】
図9(a)に示す冷媒配管の取付構造73は本発明の第4の実施形態である。冷媒配管の取付構造73は、台座部75を有する伝導部材77と、伝導部材77に冷媒配管1を挟んで対向する支持板79と、支持板79から延出した弾性部材81とを備える。
【0035】
台座部75の両側面83は、台座部75が基部9から突出する方向へ向かうに従い互いに互いに離れるよう傾斜している。弾性部材81は、掛止部85を形成した板状クリップ87を対にして配置したものである。一対の板状クリップ87は、それぞれの掛止部85の間隔が台座部7の幅よりも少し狭くなるように、支持板79に位置決めされている。また、一対の板状クリップ87は、それぞれの掛止部85の内側を両側面83に沿って傾斜する傾斜面89としている。一対の板状クリップ87の間に台座部75を挟着させた状態で、一対の板状クリップ87は、それぞれの掛止部85の間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、伝導部材77が傾斜面89から図中で下向きの力を受けることにより、伝導部材77と共に冷媒配管1が支持板79に押付けられる。
【0036】
図9(b)に示すように、台座部を省略した伝導部材91を冷媒配管の取付構造73に適用しても良い。この場合、一対の板状クリップ93は、それぞれの掛止部85の間隔が伝導部材91の全幅よりも少し狭くなるように、支持板79に配置される。一対の板状クリップ93の間に伝導部材91を挟着させた状態で、伝導部材91が傾斜面89から図中で下向きの力を受けることにより、伝導部材91と共に冷媒配管1が支持板79に押付けられる。
【0037】
次に、熱抵抗の測定試験について説明する。図10(a)に示すように、伝導部材91の台座部7と直径6.4mmの冷媒配管95との間に熱伝導シート97を介在させ、板状クリップ61で冷媒配管95を伝導部材91に押付けた第1のサンプルを準備する。板状クリップ61は、その基部を伝導部材91にネジ等で固定されている。熱伝導シート97は、熱の伝導に優れたゴム等の弾性材料を厚さ0.5mmの帯状に成形したものである。同図(b)に示すように、伝導部材99と冷媒配管95との間に熱伝導シート97を介在させ、一対の板状クリップ27で冷媒配管95を伝導部材99に押付けた第2のサンプルを準備する。
【0038】
第1のサンプルと第2のサンプルのそれぞれの冷媒配管95に25℃の水を流し、第1のサンプルの伝導部材91と冷媒配管95との間の熱抵抗、及び第2のサンプルの伝導部材99と冷媒配管95との間の熱抵抗の値を測定したところ、同図(c)のグラフにA線、B線で示す結果が得られた。A線が示す第1のサンプルの熱抵抗は、B線が示す第2のサンプルの熱抵抗よりも少し高いが、これらに大きな差は認められない。また、A線、B線は、冷媒配管95を流れる水の流量の増加する程、熱抵抗の減少する傾向を示している。
【0039】
続いて、熱伝導シート97を熱伝導グリースに置き換える。即ち、第1のサンプルの冷媒配管95と伝導部材91の台座部7との間、及び第2のサンプルの冷媒配管95と伝導部材99との間に、熱伝導グリースを介在させる。そして、上記と同様にして熱抵抗を測定したところ、C線、D線で示す結果が得られた。C線が示す第1のサンプルの熱抵抗と、D線が示す第2のサンプルの熱抵抗に大きな差は認められないが、A線とC線、及びB線とD線をそれぞれ比較すると、熱伝導グリースを適用したときに、熱抵抗を半減できることが分かる。
【0040】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。例えば、既述の伝導部材、及び弾性部材のそれぞれの材質、形状、又は寸法が限定されることはない。また、被冷却部品の発熱量、又は被冷却部品の大きさ等を考慮して、互いに直径の異なる多種の冷媒配管を準備し、これらの冷媒配管の中から選択できる冷媒配管を、本発明の実施形態に係る冷媒配管の取付構造に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、発熱する電装部品を実装されたあらゆる機器に、電気部品を冷却するための冷媒配管を装備するのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0042】
1,95…冷媒配管、3…被冷却部品、5,37,65,73…冷媒配管の取付構造、7,75…台座部、9…基部、11,41,55,59,77,91,99…伝導部材、13,47,81…弾性部材、15…支持体、17…プリント基板、19…凹部、21…接合面、23,29…ビス、27,45,51,61,87,93…板状クリップ、31…固定部、33…頭部、35,89…傾斜面、39…溝部、43…爪部、49…段差、53…根部、57…スリット部、63…先端部、67,79…支持板、69…開口部、71…湾曲部、83…両側面、85…掛止部、97…熱伝導シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の導入される冷媒配管を被冷却部品に取付ける冷媒配管の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールのように発熱する電装部品の冷却を、冷媒が導入される冷媒配管を用いて行う場合、電装部品と冷媒配管との間の伝熱は、次のような取付構造によって実現される。即ち、図11に示すように、アルミニウム等の金属製の取付板101に冷媒配管103を接合してなる冷媒ジャケット105に、伝熱板107の一面をビス109で接合し、伝熱板107の他面に電装部品111をビス113で固定する。伝熱板107は、支持体115を介してプリント基板117に支持される。
【0003】
しかしながら、ビス109,113を多用するため、冷媒ジャケット105と伝熱板107、及び伝熱板107と電装部品111との着脱作業が煩雑である。また、冷媒配管103が図に表れていない空調機の筐体に固定された状態で、冷媒ジャケット105は、電装部品111がプリント基板117に実装される位置に覆い重なる。このため、電装部品111を取り扱うのに冷媒ジャケット105が邪魔になる。
【0004】
また、冷媒ジャケット105と電装部品111との間に伝熱板107を介在させたのは、空調機を組み立てる製造ラインにおいて、取付板101と伝熱板107との接合、及び伝熱板107と電装部品111との接合を個別の工程で行えるようにするためである。しかしながら、空調機を組み立てる作業数が増大し、また冷媒ジャケット105と伝熱板107の両方が不可欠であるため、空調機がコスト高になることは避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−335091号公報
【特許文献2】実開平04−074494号公報
【特許文献3】特開2006−157042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、被冷却部品に冷媒配管を容易に着脱することができ、しかも製造コストの安価な冷媒配管の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、前記冷媒配管が位置決めされる台座部を、前記被冷却部品に接合される基部から突出した伝導部材と、前記伝導部材の基部から延出し、前記冷媒配管を前記台座部に押付ける弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記弾性部材が、前記伝導部材の基部に掛止される爪部を有し、前記冷媒配管を相互に挟む一対の板状クリップであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記冷媒配管を支持する支持板を、前記伝導部材の台座部に対向させ、前記支持板に、前記伝導部材の基部から延出する弾性部材が進入できる開口部を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、前記伝導部材に掛止する爪部を有し、前記冷媒配管を前記伝導部材に押付ける弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、前記伝導部材に前記冷媒配管を挟んで対向する支持板と、前記支持板から延出し、前記冷媒配管を前記伝導部材と共に前記支持板に押付ける弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、冷媒配管を弾性部材によって伝導部材の台座部に押付けるので、ビス等を用いることなく、パワーモジュール等の被冷却部品が接合される伝導部材に冷媒配管を取付け、被冷却部品から冷媒配管に熱を導く良好な伝熱性能を確保することができる。しかも、当該取付構造は、従来のように冷媒ジャケットが不要であるため、プリント基板等に実装された被冷却部品の取り扱いが容易であり、また冷媒ジャケットが不要である分、当該取付構造の製造コストを低減することができる。
【0013】
また、弾性部材が冷媒配管を相互に挟む一対の板状クリップである場合、これらの間に冷媒配管を押し込むだけで、一対の板状クリップの間隔が広がるように弾性部材を弾性変形させ、弾性部材に冷媒配管を容易に挟着させることができる。これにより、冷媒配管を伝導部材に取付ける作業が完了する。反対に、一対の板状クリップの間から冷媒配管を引き抜くだけで、冷媒配管を伝導部材から容易に取り外すことができる。また、弾性部材が伝導部材の基部に掛止される爪部を有する場合、弾性部材を伝導部材に接合するのにもビス等を用いなくて良い。
【0014】
更に、本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、伝導部材がその基部から台座部を突出させ、弾性部材が伝導部材の基部から延出しているので、伝導部材の基部から冷媒配管に接する位置まで延びる弾性部材の寸法が比較的長くなる。このため、上記のような弾性部材の弾性変形が容易になるので、冷媒配管の着脱作業を行う者は冷媒配管に過度の力を加えなくて済むので、冷媒配管の外力による変形、又は折損を未然に防止することができる。しかも、当該取付構造によれば、弾性部材が冷媒配管を挟着するための所望の保持力が得られるという利点がある。
【0015】
更に、本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、冷媒配管が板金等の支持板に支持される場合、弾性部材を開口部に進入させた状態で、冷媒配管を弾性部材によって伝導部材の台座部に押付けることができる。このため、ビス等を用いることなく、被冷却部品を接合される伝導部材に、冷媒配管を取付けることができる。また、伝導部材の台座部と支持板とが互いに対向するので、上記のように弾性部材を弾性変形させるときの反力を支持体が受け止め、上記の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【0016】
更に、本発明に係る冷媒配管の取付構造によれば、伝導部材に冷媒配管を挟んで対向する支持板から弾性部材を延出し、冷媒配管を弾性部材によって伝導部材と共に支持板に押付けるので、弾性部材を伝導部材に接合する必要がない。また、弾性部材の冷媒配管を押し付ける力を支持体が受け止め、支持体が媒配管を補強することにより、上記の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る冷媒配管の取付構造をその長手方向に破断した断面図、(b)はその幅方向に破断した断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の分解斜視図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の組立工程を(a)〜(c)の順に示す側面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の一の変形例の組立工程を(a)〜(c)の順に示す側面図。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の他の変形例の側面図、(b)はその更なる変形例の側面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の組立工程を(a),(b)の順に示す側面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の一の変形例の組立工程を(a),(b)の順に示す側面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の他の変形例の組立工程を(a),(b)の順に示す側面図。
【図9】(a)は本発明の第4の実施形態に係る冷媒配管の取付構造の側面図、(b)はその変形例の側面図。
【図10】(a)は伝熱試験のサンプルとして適用された冷媒配管の取付構造の側面図、(b)はその比較例の側面図、(c)は伝熱試験の結果を示すグラフ。
【図11】(a)は従来例の冷媒配管の取付構造をその長手方向に破断した断面図、(b)はその幅方向に破断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施形態として、冷媒配管1を被冷却部品3に取付ける冷媒配管の取付構造5を示している。冷媒配管の取付構造5は、冷媒配管1が位置決めされる台座部7を基部9から突出した伝導部材11と、伝導部材11の基部9から延出した弾性部材13とを備える。矢印L,Wは、以下に記す長手方向、及び幅方向をそれぞれ指している。
【0019】
伝導部材11は、熱伝導性に優れたアルミニウム等を材料として、板状の基部9と凸形の台座部7とを一体に形成したものである。また、伝導部材11は、支持体15を介してプリント基板17に支持されている。台座部7は、冷媒配管1に密接する面積を積極的に広げるために、冷媒配管1の外周面と略同じ曲率の凹部19を形成している。凹部19は必須ではなく、伝導部材11の基部9を平坦な形状とし、これに密接する扁平な形状になるよう冷媒配管1を成形しても良い。被冷却部品3の一例として、プリント基板17に実装されたパワーモジュールを示している。被冷却部品3は、伝導部材11の基部9の冷媒配管1と反対側の接合面21にビス23で接合しても良い。符号25は、ドライバー等を差し込むための挿通孔を指している。
【0020】
弾性部材13は、バネ鋼から成る板状クリップ27を対にして配置したものであり、伝導部材11の基部9にビス29で固定される固定部31、及び先端を折り返してなる頭部33を有する。一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の間隔が冷媒配管1の直径よりも少し狭くなるように、伝導部材11の基部9に位置決めされている。また、一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の内側を互いに略ハ字形に対向する傾斜面35としている。一対の板状クリップ27の間に冷媒配管1を挟着させた状態で、一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、冷媒配管1は、傾斜面35により冷媒配管1は伝導部材11の台座部7に押付けられる。冷媒配管1と台座部7の間には、後述の熱伝導シート、又は熱伝導グリースを介在させることが好ましい。
【0021】
伝導部材11から冷媒配管1を取り外すときは、一対の板状クリップ27の間から冷媒配管1を図中の上方へ引き抜くだけで良い。この力により、一対の板状クリップ27は、それぞれの頭部33の間隔の広がる方向へ弾性変形するので、冷媒配管1は一対の板状クリップ27のそれぞれの頭部33の間を通過し、一対の板状クリップ27から離脱する。また、冷媒配管1を伝導部材11に取付けるには、冷媒配管1を一対の板状クリップ27の間に押し込むだけで良い。これにより、一対の板状クリップ27は上記と同様に弾性変形するので、冷媒配管1は、一対の板状クリップ27のそれぞれの頭部33の間を通過し、台座部7の凹部19に突き当たる。
【0022】
以上に述べた冷媒配管の取付構造5によれば、ビス等を用いることなく、被冷却部品3が接合される伝導部材11に冷媒配管1を取付け、被冷却部品3から冷媒配管1に熱を導く良好な伝熱性能を確保することができる。しかも、従来のような冷媒ジャケットが不要であるため、プリント基板17に実装された被冷却部品3を取り扱うのが容易であり、また冷媒配管の取付構造5の製造コストを低減することができる。
【0023】
更に、板状クリップ27が、伝導部材11の基部9に固定された固定部31から冷媒配管1に接する傾斜面35まで延びる寸法は、伝導部材11の台座部7が基部9から突出する高さよりも長く設定されている。これは、弾性部材13が冷媒配管1を挟着する保持力を抑えることなく、上記のように弾性変形する板状クリップ27が容易に撓めるようにするためである。これにより、冷媒配管1の着脱作業を行う者が冷媒配管1に過度の力を加えなくて済むので、冷媒配管1の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【0024】
本発明の他の実施形態について、以下に冷媒配管の取付構造5との相違点を述べる。また、冷媒配管の取付構造5と同様の要素には、その説明の有無に関わらず、引き続き同じ呼称、又は符号を用いるものとする。
【0025】
図2に示す冷媒配管の取付構造37は本発明の第2の実施形態である。冷媒配管の取付構造37は、2条の溝部39を台座部7を挟む位置に形成した伝導部材41と、溝部39に掛止される爪部43を有する板状クリップ45を対にして配置した弾性部材47とを備える。
【0026】
伝導部材41の溝部39は、その内側面に鉤となる段差49を形成し長手方向に延びている。板状クリップ45は、その頭部33と反対側の端部を折り返すことにより、幅方向に突出する爪部43を形成している。図3(a)に示すように、一対の板状クリップ45を伝導部材41に取付けるには、爪部43を溝部39に押し込むだけで良い。これにより、爪部43が幅方向に収縮するよう弾性変形しながら溝部39の奥方へ進入する。同図(b)に示すように、爪部43が段差49に掛止された状態で、板状クリップ45が伝導部材41から離脱することはない。このため、図1(b)に示したビス29が不要であり、冷媒配管の取付構造37の部品点数を少なくすることができる。
【0027】
更に、冷媒配管1を一対の板状クリップ45の間に押し込むことにより、図3(c)に示すように、冷媒配管1を伝導部材41に取付けできる。この状態で、冷媒配管1が傾斜面35から受ける下向きの力の反作用として、板状クリップ45の頭部33と爪部43との間に張力が派生する。この張力によって爪部43と段差49との摩擦力が増大し、板状クリップ45が溝部39に対して長手方向に滑ることのないよう固定される。
【0028】
図4(a)に示すように、板状クリップ51の頭部33と反対側の端部をL字形に折り返すことにより根部53を板状クリップ51に形成し、伝導部材55に根部53が嵌入するL字形のスリット部57を形成しても良い。ここでL字形とは、伝導部材55の厚み方向、及び幅方向にそれぞれ延びる形状を意味する。この場合、同図(b)に示すように、伝導部材55を厚み方向にプレスする等してスリット部57を絞ると、根部53がスリット部57に圧着される。これにより、板状クリップ51を伝導部材55に強固に固定することがき、更に同図(c)に示すように、冷媒配管1を一対の板状クリップ51で挟着することができる。
【0029】
また、既述の板状クリップは必ずしも対にしなくても良い。図5(a)に示すように、台座部を省略した伝導部材59に凹部19を形成し、伝導部材59の凹部19から幅方向に隔たる位置に溝部39を形成する。弾性部材として適用される板状クリップ61は、その爪部43を溝部39に掛止され、爪部43から延出した先端部63を伝導部材59の凹部19に対面させている。先端部63と凹部19との間に冷媒配管1を挟着させた状態で、板状クリップ61は、その先端部63と伝導部材59との間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、冷媒配管1は、先端部63により冷媒配管1は伝導部材59の凹部19に押付けられる。同図(b)は、溝部39を冷媒配管1に向けて解放した例を示している。
【0030】
図6(a),(b)に示す冷媒配管の取付構造65は本発明の第3の実施形態である。冷媒配管の取付構造65は、冷媒配管1を支持する支持板67を、伝導部材41の台座部7に対向させ、支持板67に、伝導部材41の基部9から延出する弾性部材である一対の板状クリップ45の頭部33が進入できる開口部69を形成したものである。支持板67は、鋼板等の薄板であれば良く限定される要素ではないが、例えば空調機の筐体に納められた冷媒配管や圧縮機を覆うための板金(仕切板)を、支持板67として適用しても良い。また、バンド等の留め具を用いて、冷媒配管1を支持板67に固定しても良い。
【0031】
冷媒配管1を伝導部材41に取付けるには、一対の板状クリップ45を伝導部材41と共に冷媒配管1に押付け、一対の板状クリップ45の間に冷媒配管1を進入させる。一対の板状クリップ45が冷媒配管1に押付けられる力を、支持板67が受け止め、また冷媒配管1を伝導部材41から取り外すときの力も支持板67が受け止める。このように支持板67が冷媒配管1を補強するので、上記の力による冷媒配管1の変形、又は折損を未然に防止することができる。
【0032】
図7(a),(b)に示すように、支持板67の冷媒配管1に接する箇所に、冷媒配管1の外周面に沿う湾曲部71を形成しても良い。この場合、支持板67の湾曲部71に冷媒配管1を嵌め付けることができるので、バンド等の留め具を用いることなく、冷媒配管1を直に支持板67に位置決めすることができる。
【0033】
図8(a),(b)に示すように、支持板67の湾曲部71に冷媒配管1を嵌め付け、これらを伝導部材59の凹部19と板状クリップ61の先端部63との間に挟着しても良い。この状態で、板状クリップ61は、その先端部63と伝導部材59との間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、冷媒配管1は、先端部63により伝導部材59の凹部19に押付けられる。
【0034】
図9(a)に示す冷媒配管の取付構造73は本発明の第4の実施形態である。冷媒配管の取付構造73は、台座部75を有する伝導部材77と、伝導部材77に冷媒配管1を挟んで対向する支持板79と、支持板79から延出した弾性部材81とを備える。
【0035】
台座部75の両側面83は、台座部75が基部9から突出する方向へ向かうに従い互いに互いに離れるよう傾斜している。弾性部材81は、掛止部85を形成した板状クリップ87を対にして配置したものである。一対の板状クリップ87は、それぞれの掛止部85の間隔が台座部7の幅よりも少し狭くなるように、支持板79に位置決めされている。また、一対の板状クリップ87は、それぞれの掛止部85の内側を両側面83に沿って傾斜する傾斜面89としている。一対の板状クリップ87の間に台座部75を挟着させた状態で、一対の板状クリップ87は、それぞれの掛止部85の間隔の広がる方向へ僅かに撓むよう弾性変形し、伝導部材77が傾斜面89から図中で下向きの力を受けることにより、伝導部材77と共に冷媒配管1が支持板79に押付けられる。
【0036】
図9(b)に示すように、台座部を省略した伝導部材91を冷媒配管の取付構造73に適用しても良い。この場合、一対の板状クリップ93は、それぞれの掛止部85の間隔が伝導部材91の全幅よりも少し狭くなるように、支持板79に配置される。一対の板状クリップ93の間に伝導部材91を挟着させた状態で、伝導部材91が傾斜面89から図中で下向きの力を受けることにより、伝導部材91と共に冷媒配管1が支持板79に押付けられる。
【0037】
次に、熱抵抗の測定試験について説明する。図10(a)に示すように、伝導部材91の台座部7と直径6.4mmの冷媒配管95との間に熱伝導シート97を介在させ、板状クリップ61で冷媒配管95を伝導部材91に押付けた第1のサンプルを準備する。板状クリップ61は、その基部を伝導部材91にネジ等で固定されている。熱伝導シート97は、熱の伝導に優れたゴム等の弾性材料を厚さ0.5mmの帯状に成形したものである。同図(b)に示すように、伝導部材99と冷媒配管95との間に熱伝導シート97を介在させ、一対の板状クリップ27で冷媒配管95を伝導部材99に押付けた第2のサンプルを準備する。
【0038】
第1のサンプルと第2のサンプルのそれぞれの冷媒配管95に25℃の水を流し、第1のサンプルの伝導部材91と冷媒配管95との間の熱抵抗、及び第2のサンプルの伝導部材99と冷媒配管95との間の熱抵抗の値を測定したところ、同図(c)のグラフにA線、B線で示す結果が得られた。A線が示す第1のサンプルの熱抵抗は、B線が示す第2のサンプルの熱抵抗よりも少し高いが、これらに大きな差は認められない。また、A線、B線は、冷媒配管95を流れる水の流量の増加する程、熱抵抗の減少する傾向を示している。
【0039】
続いて、熱伝導シート97を熱伝導グリースに置き換える。即ち、第1のサンプルの冷媒配管95と伝導部材91の台座部7との間、及び第2のサンプルの冷媒配管95と伝導部材99との間に、熱伝導グリースを介在させる。そして、上記と同様にして熱抵抗を測定したところ、C線、D線で示す結果が得られた。C線が示す第1のサンプルの熱抵抗と、D線が示す第2のサンプルの熱抵抗に大きな差は認められないが、A線とC線、及びB線とD線をそれぞれ比較すると、熱伝導グリースを適用したときに、熱抵抗を半減できることが分かる。
【0040】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。例えば、既述の伝導部材、及び弾性部材のそれぞれの材質、形状、又は寸法が限定されることはない。また、被冷却部品の発熱量、又は被冷却部品の大きさ等を考慮して、互いに直径の異なる多種の冷媒配管を準備し、これらの冷媒配管の中から選択できる冷媒配管を、本発明の実施形態に係る冷媒配管の取付構造に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、発熱する電装部品を実装されたあらゆる機器に、電気部品を冷却するための冷媒配管を装備するのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0042】
1,95…冷媒配管、3…被冷却部品、5,37,65,73…冷媒配管の取付構造、7,75…台座部、9…基部、11,41,55,59,77,91,99…伝導部材、13,47,81…弾性部材、15…支持体、17…プリント基板、19…凹部、21…接合面、23,29…ビス、27,45,51,61,87,93…板状クリップ、31…固定部、33…頭部、35,89…傾斜面、39…溝部、43…爪部、49…段差、53…根部、57…スリット部、63…先端部、67,79…支持板、69…開口部、71…湾曲部、83…両側面、85…掛止部、97…熱伝導シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、
前記冷媒配管が位置決めされる台座部を、前記被冷却部品に接合される基部から突出した伝導部材と、
前記伝導部材の基部から延出し、前記冷媒配管を前記台座部に押付ける弾性部材と、
を備えることを特徴とする冷媒配管の取付構造。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記伝導部材の基部に掛止される爪部を有し、前記冷媒配管を相互に挟む一対の板状クリップであることを特徴とする請求項1に記載の冷媒配管の取付構造。
【請求項3】
前記冷媒配管を支持する支持板を、前記伝導部材の台座部に対向させ、前記支持板に、前記伝導部材の基部から延出する弾性部材が進入できる開口部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷媒配管の取付構造。
【請求項4】
冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、
前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、
前記伝導部材に掛止する爪部を有し、前記冷媒配管を前記伝導部材に押付ける弾性部材と、
を備えることを特徴とする冷媒配管の取付構造。
【請求項5】
冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、
前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、
前記伝導部材に前記冷媒配管を挟んで対向する支持板と、
前記支持板から延出し、前記冷媒配管を前記伝導部材と共に前記支持板に押付ける弾性部材と、
を備えることを特徴とする冷媒配管の取付構造。
【請求項1】
冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、
前記冷媒配管が位置決めされる台座部を、前記被冷却部品に接合される基部から突出した伝導部材と、
前記伝導部材の基部から延出し、前記冷媒配管を前記台座部に押付ける弾性部材と、
を備えることを特徴とする冷媒配管の取付構造。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記伝導部材の基部に掛止される爪部を有し、前記冷媒配管を相互に挟む一対の板状クリップであることを特徴とする請求項1に記載の冷媒配管の取付構造。
【請求項3】
前記冷媒配管を支持する支持板を、前記伝導部材の台座部に対向させ、前記支持板に、前記伝導部材の基部から延出する弾性部材が進入できる開口部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷媒配管の取付構造。
【請求項4】
冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、
前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、
前記伝導部材に掛止する爪部を有し、前記冷媒配管を前記伝導部材に押付ける弾性部材と、
を備えることを特徴とする冷媒配管の取付構造。
【請求項5】
冷媒配管に被冷却部品を取付ける冷媒配管の取付構造であって、
前記冷媒配管と前記被冷却部品との間に介在する伝導部材と、
前記伝導部材に前記冷媒配管を挟んで対向する支持板と、
前記支持板から延出し、前記冷媒配管を前記伝導部材と共に前記支持板に押付ける弾性部材と、
を備えることを特徴とする冷媒配管の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−2079(P2011−2079A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147666(P2009−147666)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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