説明

冷房システム

【課題】冷房システム稼働時の電力消費量を低減すること。
【解決手段】冷房システム100は、太陽光パネル101で太陽光を集光し、集光された太陽光の熱エネルギーによって熱媒を加熱し、熱媒の蒸気を発生させる。そして、蒸気の熱エネルギーによってコンデンサー105を駆動し、気体状の冷媒を圧縮する。冷媒はさらに冷却されて液体状となり、この液体状の冷媒を気化する際の気加熱によって周囲の空気を冷却して冷房をおこなう。冷房システム100は、太陽光の熱エネルギーによって太陽光の熱エネルギーを用いて蒸気を発生させ、蒸気の熱エネルギーによってコンプレッサー104を駆動させるので、稼働時の電力消費量を大きく低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内や車両内部の空気を冷却する冷房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の室内や車両内部の空気を冷却する冷房システムが普及している。たとえば、下記特許文献1には、冷房装置の作動を停止させて冷媒を循環させていないときに、冷房装置の冷媒放出手段を極力作動させないようにした車両用冷房装置が開示されている。また、特許文献2では、冷媒液を蒸発して周囲の空気を冷却する室内機と、冷媒ガスを圧縮する圧縮機および圧縮された冷媒ガスを外気で冷却して凝縮する凝縮器を有する室外機と、室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統と、室内機で生成する凝縮水を排出する排水系統を備えた空冷式冷房装置において、室外機に散水手段を設け、その散水手段に排水系統の排水を供給して凝縮器に散水することで、凝縮器の熱交換能力を高めた空冷式冷房装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−055929号公報
【特許文献2】特開2004−190877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、冷房システムは、電力を動力源として稼働しており、冷房システム(いわゆるエアコン)の電力消費量は、家庭における電力消費量に大きな割合を占める。一方で、昨今地球環境への意識の高まりから、省エネルギー化への要請が高まっており、冷房システムについても電力消費量を低減することが望ましい。また、緊急時や電力不足時においては、電力供給が停止され、冷房システムを稼働させることができない状態が起こりえるという問題点がある。しかし、現在の住居環境において夏場に冷房が使用できないことは、特に高齢者や子供などにとって過酷な状況であり、電力供給の有無にかかわらず冷房を使用できることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、建物の室内や車両内部の空気を冷却する冷房システムにおいて、稼働時の電力消費量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる冷房システムは、太陽光を集光する集光手段と、前記集光手段に集光された前記太陽光の熱エネルギーによって熱媒を加熱し、前記熱媒の蒸気を発生させる加熱手段と、前記加熱手段で発生された前記蒸気の熱エネルギーによって駆動し、気体状の冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記圧縮手段で圧縮された前記冷媒を冷却し、液体状にする冷媒冷却手段と、前記冷媒冷却手段で冷却された液体状の前記冷媒を気化して、前記冷媒の気化熱によって周囲の空気を冷却する空気冷却手段と、前記空気冷却手段で冷却された空気を室内に供給する送風手段と、を備え、前記熱媒は、前記圧縮手段に前記熱エネルギーを供給した後、再度前記加熱手段に戻り、前記冷媒は、前記空気冷却手段によって気化された後、再度前記圧縮手段に戻ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、太陽光の熱エネルギーを用いて蒸気を発生させ、蒸気の熱エネルギーによって圧縮手段を駆動させる。通常、圧縮手段は電力によって駆動され、冷房システムの中でも特に電力消費量が多い構成部である。このため、請求項1の発明にかかる冷房システムによれば、圧縮手段の駆動に電力を用いないことによって、冷房システム稼働時の電力消費量を大きく低減させることができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、蒸気の熱エネルギーによって低沸点冷媒を気化して発電機を駆動させ、発電した電力を用いて冷房システムの構成部を稼働させる。このため、冷房システム稼働時の電力消費量をさらに低減させることができる。また、冷房システムで必要なすべての電力を発電機で発電することができれば、停電などによって商用電力が供給されない場合でも、冷房システムを稼働させることができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、集光手段を建物の屋根や側壁に設けることによって、本冷房システムを建物内の冷房に適用することが可能となる。建物においては、比較的大きな面積に集光手段を設けることができ、また、建物の向きや周辺環境などを考慮して、効率的に太陽光を集光することができる。また、集光手段が断熱材となり、日中における建物内の温度上昇を低減させることができる。
【0010】
請求項4の発明によれば、集光手段を車両の屋根に設けることによって、本冷房システムを車両内の冷房に適用することが可能となる。車両においては、建物と比較して空間体積が小さいので、本冷房システムで十分な冷房能力を得られる可能性が高い。また、車両のボディー部は鋼板などの熱吸収率が高い素材でできているため、加熱手段における加熱効率が向上し、より効率的に蒸気を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1にかかる冷房システム100の構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態2にかかる冷房システム200の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる冷房システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる冷房システム100の構成を示す説明図である。冷房システム100は、太陽光パネル(集光手段)101、加熱部(加熱手段)102、気水分離器103、コンプレッサー(圧縮手段)104、コンデンサー(冷媒冷却手段)105、コンデンサーファン106、レシーバー107、エキスバンションバルブ108、エバボレーター(空気冷却手段)109、ブロアファン(送風手段)110、送風口111によって構成される。冷房システム100の各構成部は、1つの躯体内に設けられていてもよいし、たとえば、室外機と室外機のように複数の躯体内に分けて設けられていてもよい。
【0014】
太陽光パネル101は、冷房システム100が冷却対象とする建物の屋根や側壁、または車両の屋根などに設けられ、太陽光を集光する。太陽光パネル101は、たとえば、太陽熱温水システムに用いられる集熱器部分を用いることができ、たとえば、平板型集熱器、真空管型集熱器、集光型集熱器などを用いることができる。
【0015】
加熱部102は、太陽光パネル101に集光された太陽光の熱エネルギーによって熱媒を加熱し、熱媒の蒸気を発生させる。以下の実施の形態では、熱媒として水を用いるものとする。熱媒としては、水の他、たとえば水より沸点が低い低沸点溶媒を用いてもよい。また、図1では、加熱部102と太陽光パネル101とを一体として図示しているが、これに限らず、加熱部102と太陽光パネル101とを分離して設けてもよい。
【0016】
気水分離器103は、加熱部102で加熱された熱媒の蒸気と液体部分とを分離する。本実施の形態では、気水分離器103において、水蒸気と熱水とが分離される。このうち、水蒸気はコンプレッサー104に供給される。また、熱水(およびコンプレッサー104に熱を供給した後の水蒸気(または飽和水))は再び加熱部102へと戻される。すなわち、加熱部102と気水分離器103との間では、水蒸気および熱水が循環する水蒸気・熱水サイクルが形成される。
【0017】
コンプレッサー104は、気水分離器103から供給される蒸気の熱エネルギーによって駆動し、気体状の冷媒(エアコンガス)を圧縮する。コンプレッサー104は、たとえば、蒸気をシリンダに導き、ピストンを動かして往復運動をさせて気体状の冷媒を圧縮する。また、たとえば、蒸気で羽根車を回転させ、この回転をピストンの往復運動に変換して気体状の冷媒を圧縮するようにしてもよい。コンプレッサー104によって圧縮された冷媒は、高温高圧の半液体状の状態でコンデンサー105へと供給される。また、上述したように、コンプレッサー104に熱エネルギーを供給した水蒸気(または飽和水)は、再び加熱部102へと戻される。
【0018】
コンデンサー105は、コンプレッサー104で圧縮された冷媒を冷却し、液体状にする。コンデンサー105では、内部に供給された冷媒に対してコンデンサーファン106によって発生させた風を当てることによって冷却をおこなう。コンデンサー105内の冷媒では、冷却によって液化が進む。コンデンサー105で冷却された冷媒は、レシーバー107へと供給される。
【0019】
レシーバー107は、液化された冷媒と、液化できずに気体状のままの冷媒とを分離する。また、レシーバー107では、乾燥材やストレーナーなどによって、冷媒から水分や不純物を取り除く。レシーバー107で分離された液化冷媒は、エキスバンションバルブ108へと供給される。
【0020】
エキスバンションバルブ108は、図示しない微小なノズル穴からエバボレーター109内に液化冷媒を噴射する。これにより、エバボレーター109内で液化冷媒が一気に気化する。このとき、エバボレーター109周辺の空気の熱エネルギーが、冷媒の気化熱として奪われ、エバボレーター109が冷却される。そして、エバボレーター109に対して、ブロアファン110で発生させた風を通過させて、冷風を発生させる。この冷風は、送風口111から建物または車両の室内に供給され、室内の冷却がおこなわれる。
【0021】
なお、エバボレーター109で気化された冷媒は、再びコンプレッサー104に戻される。すなわち、コンプレッサー104、コンデンサー105、レシーバー107、エキスバンションバルブ108、エバボレーター109との間では、冷媒が循環する冷媒サイクルが形成される。
【0022】
以上説明したように、実施の形態1にかかる冷房システム100は、太陽光の熱エネルギーを用いて蒸気を発生させ、蒸気の熱エネルギーによってコンプレッサー104を駆動させる。通常、コンプレッサー104は、電力によって駆動され、冷房システムの中でも特に電力消費量が多い構成部である。このため、冷房システム100によれば、コンプレッサー104の駆動に電力を用いず、稼働時の電力消費量を大きく低減させることができる。
【0023】
冷房システム100を建物に設ける場合、比較的大きな面積に太陽光パネル101を設けることができ、また、建物の向きや周辺環境などを考慮して、効率的に太陽光を集光することができる。また、太陽光パネル101が断熱材となり、日中における建物内の温度上昇を低減させることができる。また、冷房システム100を車両に設ける場合、建物と比較して車両は空間体積が小さいので、冷房システム100で十分な冷房能力を得られる可能性が高い。また、車両のボディー部は鋼板などの熱吸収率が高い素材でできているため、加熱部102における加熱効率が向上し、より効率的に蒸気を発生させることができる。
【0024】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2にかかる冷房システム200の構成を示す説明図である。実施の形態2にかかる冷房システム200では、太陽光の熱エネルギーによって発生させた蒸気によって低沸点溶媒を気化し、気化した低沸点溶媒によって発電機を駆動して、冷房システムの稼働に必要な電力を発電する。これにより、冷房システム200の駆動に商用電源を用いる必要がなく、停電時など商用電源が使用できない場合でも室内の冷房をおこなうことができる。なお、図2において、実施の形態1にかかる冷房システム200と同様の箇所については図1と同じ符号を付している。また、以下の説明においても、実施の形態1と同様の箇所については詳細な説明を省略する。
【0025】
実施の形態2にかかる冷房システム200は、実施の形態1にかかる冷房システム100と同様の構成である、太陽光パネル101、加熱部102、気水分離器103、コンプレッサー104、コンデンサー105、コンデンサーファン106、レシーバー107、エキスバンションバルブ108、エバボレーター109、ブロアファン110、送風口111に加えて、プレヒーター201、蒸発器(気化手段)202、蒸気タービン203、発電機(発電手段)204、復水器205、冷却ファン206、循環ポンプ207が設けられている。プレヒーター201、蒸発器202、蒸気タービン203、復水器205の間では、低沸点溶媒が循環し、溶媒サイクルが形成されている。
【0026】
プレヒーター201は、蒸発器202に先立って、気水分離器103で分離された熱水によって後述する低沸点溶媒を加熱する。プレヒーター201に熱エネルギーを供給した熱水は、再び加熱部102へと戻される。また、後述する蒸発器202に熱エネルギーを供給した蒸気(または水)についても、プレヒーター201を介して加熱部102に戻される。
【0027】
蒸発器202は、気水分離器103で分離された蒸気によって低沸点溶媒を加熱して、低沸点媒体を気化する。すなわち、蒸発器202は、蒸気の熱エネルギーによって低沸点媒体を気化する。低沸点溶媒とは、比較的沸点温度が低い溶媒であり、たとえば、ペンタン(C5H12、沸点温度36℃)などを用いることができる。低沸点溶媒を利用することによって、媒体の加熱源が低温の蒸気や熱水であっても蒸気を発生させることができる。蒸発器202で気化された低沸点溶媒(溶媒蒸気)は、蒸気タービン203に供給される。
【0028】
蒸気タービン203は、溶媒蒸気のもつエネルギーを、タービン(羽根車)と軸を介して回転運動へと変換する。より詳細には、蒸気タービン203では、蒸発器202によって高温高圧となった溶媒蒸気がノズルから噴射される。これにより、媒体蒸気の圧力や温度が低下すると同時に、媒体蒸気の速度が増加する。媒体蒸気をタービンブレードに当てることによってタービンブレードに力が加わり、この力がトルクとなって軸を回転させ、後述する発電機204を駆動する。
【0029】
発電機204は、蒸気タービン203の回転によって電力を発生させる。すなわち、発電機204は、蒸発器202で気化された低沸点媒体の熱エネルギーによって蒸気タービン203を駆動し、電力を発生させる。発電機204で発電された電力は、たとえば、コンデンサーファン106、エキスバンションバルブ108、ブロアファン110、さらに冷却ファン206、循環ポンプ207など、冷房システム200の構成部のうち、電力を必要とする構成部の駆動に用いることができる。
【0030】
復水器205は、冷却ファン206によって外部の空気を取り込み、発電機204に熱エネルギーを供給した媒体蒸気を冷却することによって、低沸点溶媒を液体状(低圧の飽和液)へと戻す。復水器205によって液体状に戻された低沸点媒体は、プレヒーター201を介して再び蒸発器202へと戻される。
【0031】
循環ポンプ207は、低沸点媒体に圧力を加えて、上述した媒体サイクル内において低沸点媒体を循環させる。
【0032】
以上説明したように、実施の形態2にかかる冷房システム200では、実施の形態1にかかる冷房システム100の効果に加えて、蒸気の熱エネルギーによって低沸点冷媒を気化して発電機204を駆動させ、発電した電力を用いて冷房システム200の構成部を稼働させる。このため、冷房システム稼働時の電力消費量をさらに低減させることができる。
【0033】
また、冷房システム200で必要なすべての電力を発電機204で発電することができれば、停電などによって商用電力が供給されない場合でも、冷房システム200を稼働させることができる。特に、高齢者や子供などにとっては、夏場に冷房が使用できない状況は非常に過酷であり、電力供給の有無にかかわらず冷房を使用できることが望ましい。冷房システム200によれば、太陽光が得られる時間帯(すなわち、最も冷房の需要が高い時間帯)においては、商用電源の使用可否にかかわらず、安定的に冷房を供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、太陽光が得られる場所における冷房システムに有効であり、特に、建物や車両の室内の冷房をおこなう冷房システムに適している。
【符号の説明】
【0035】
100,200……冷房システム、101……太陽光パネル、102……加熱部、103……気水分離器、104……コンプレッサー、105……コンデンサー、106……コンデンサーファン、107……レシーバー、108……エキスバンションバルブ、109……エバボレーター、110……ブロアファン、111……送風口、201……プレヒーター、202……蒸発器、203……蒸気タービン、204……発電機、205……復水器、206……冷却ファン、207……循環ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集光する集光手段と、
前記集光手段に集光された前記太陽光の熱エネルギーによって熱媒を加熱し、前記熱媒の蒸気を発生させる加熱手段と、
前記加熱手段で発生された前記蒸気の熱エネルギーによって駆動し、気体状の冷媒を圧縮する圧縮手段と、
前記圧縮手段で圧縮された前記冷媒を冷却し、液体状にする冷媒冷却手段と、
前記冷媒冷却手段で冷却された液体状の前記冷媒を気化して、前記冷媒の気化熱によって周囲の空気を冷却する空気冷却手段と、
前記空気冷却手段で冷却された空気を室内に供給する送風手段と、を備え、
前記熱媒は、前記圧縮手段に前記熱エネルギーを供給した後、再度前記加熱手段に戻り、
前記冷媒は、前記空気冷却手段によって気化された後、再度前記圧縮手段に戻ることを特徴とする冷房システム。
【請求項2】
前記蒸気の熱エネルギーによって低沸点媒体を気化する気化手段と、
前記気化手段で気化された前記低沸点媒体の熱エネルギーによって蒸気タービンを駆動し、電力を発生させる発電機と、をさらに備え、
前記低沸点冷媒は、前記発電機に熱エネルギーを供給した後、再度前記気化手段に戻り、
前記冷媒冷却手段、前記空気冷却手段、および前記送風手段のうち、少なくとも1つは、前記発電手段で発電された前記電力で駆動することを特徴とする請求項1に記載の冷房システム。
【請求項3】
前記集光手段は、建物の屋根または側壁の少なくともいずれかに設けられ、
前記送風手段は、前記建物内の前記室内に冷却された前記空気を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の冷房システム。
【請求項4】
前記集光手段は、車両の屋根に設けられ、
前記送風手段は、前記車両内に冷却された前記空気を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の冷房システム。

【図1】
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【図2】
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