説明

冷房装置及び垂直壁面熱交換器

【課題】エネルギーの観点から、地球環境の課題として現在の電動式圧縮機を持った冷凍サイクルで室内を冷暖房するシステムに対し、太陽熱や燃料電池の排熱で作動することができる冷暖房装置の実現は過去多くの技術検討や提案がなされてきた。最も製品価格が安い方式としての吸着式除湿を生かした冷房機ではそのエネルギー効率はCOP=0.5程度であり、莫大な熱源量が必要で、装置の大きさが大きすぎるという基本的課題があった。
【解決手段】熱源を消費する吸着式除湿機と合わせて、50%以上の熱量割合を占める冷却用に極めて簡単な構造で高性能な水蒸発式冷却器の技術を開発した。これと吸着式除湿器との組み合わせの最適化を実現し上記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽熱、燃料電池の排熱、ガスエンジン発電装置の排熱など、低温度の熱源を利用して室内空気を除湿し、且つ換気による空気の温度と湿度を高めて排気させることにより冷却し、これらを巧みに組み合わせることにより高いエネルギー効率で冷房を行うことが可能な熱源を利用した空気調和装置を実現させるためのキー技術について提案している。この分野の冷房装置としては吸収式冷凍機、吸着式冷房装置、デシカント除湿装置などが既に実現されて利用されているが何れもエネルギー効率が低い。換気との巧みな組み合わせによる優れた冷房装置の事例は見られない。
【0002】
従来の吸収式などの熱源を利用した冷房乃至は冷凍装置では85℃程度の比較的高温度の低温熱源を利用するもので、太陽熱など60℃程度の低温度熱源を利用して高性能で経済性で有効な装置を実現することが出来なかったため、高温度の工場排熱、特殊熱機器排熱などの破棄すべき排熱があるところ、乃至はガス燃料などを消費することが許されるところで利用されるものが多く、その市場は限定的であった。この為、装置の生産台数は限定的で1000台/年規模の事業者が数社であり、電動式の圧縮冷凍サイクル方式の通常のエアコンの事業者、例えば中国の事業者が1000万台/年もの多量な生産をしている多数の事業者と比較して製品のコストの差異は大きな隔たりがあった。
【0003】
しかも、熱源を利用した冷凍装置や冷房装置では複雑な特殊構造な冷凍装置など、例えば二重効用、三重効用吸収式冷凍機など、を除いて、一般に冷房に用いられる吸着式除湿機や冷房機などに於いてはエネルギー効率(冷房能力と消費熱源熱量の比)を示すCOPは0.5程度と低く、即ち熱源熱量1に対し0.5程度の冷房能力の熱量しか得られず、必要な冷房能力を得るのに熱源熱量が多量に必要であるという欠点があった。また装置の容積の点でも電動式圧縮機を用いた空調装置に比べ2倍以上と大きく、従って製品コストも極めて高額にならざるを得なかった。
これを打開するための有効な手段として低温度の熱源を用いたデシカント除湿機構と、エネルギー消費を最小限に抑えて作動することができる換気の排熱を巧みに利用した冷房機構の組みあわせは有効な方式である点に着目し、この方式の具体化、実現化の技術が本発明の技術分野である。
【背景技術】
【0004】
特許文献1及び2には何れも換気の排熱の空気の温湿度即ちエンタルピーを高めてその結果室内空間を冷房する方式ではあるが、何れも加熱源乃至は冷却源などを用いている。即ち外部エネルギーを利用して換気冷房乃至は換気除湿を行っている事例であり、そのエネルギー効率は優れているとは云えない。確かに、これらの技術は建物の内部空間から単純に室内空気を排気する方式に比べて換気による空調エネルギーの損失が減少する効果を生じている。しかも何れも換気エレメント乃至は全熱交換器と呼ばれる室内外空気間の温度と湿度即ち全熱の交換器を設置して換気によるエネルギー損失を低減させている効果も有しているし、デシカント除湿機能や除湿運転機能を備えている点では湿度制御による空調の快適性確保という点でも優れたシステムである。
【0005】
しかしながら、前述した加熱乃至は冷却にエネルギー源を消費している事に加え、デシカント除湿機能と排気を利用した換気空調の間には相乗効果が無く、消費エネルギー削減効果が限定的である。即ち特許文献1では冷却器と再熱器の実現に多大なエネルギーを消費しており、特許文献2では冷却器6、7と加熱再手段4にやはり多大なエネルギーを消費している。即ち除湿の機能のためには兎も角、冷却機能にエネルギー消費を押さえた技術は見ることが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−123444号広報
【特許文献2】特開2000−111096号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとしている課題は、動力源乃至は熱源をほとんど消費することなく 室内空間を冷却できる装置の実現と、極めて広範囲に獲得できる低温度の熱源、即ち太陽熱で得られる様な60℃前後の温熱や、70℃程度の低温度作動型の燃料電池の65℃前後の排熱など、比較的低温度の温熱エネルギーや自然エネルギーを利用して作動ができる除湿装置の実現、さらにはその双方を組み合わせて効果を高める事ができる冷房システムの実現である。その狙いとは総合エネルギー効率であるCOPが1.2以上の高効率であり、冷房運転による室内空間の温湿度及び空気の流れなどによって影響される冷房快適性であり、且つコンパクトで民生用機器として実用性に耐える経済性を持ったシステムの実現である。
【0008】
具体的な課題として、上記の熱源を利用した装置として現在実現されているデシカント冷房装置のエネルギー効率COPは0.5程度で消費熱量に対し50%の冷房熱量しか得られないため、必要な冷房熱量を得るには多量のエネルギーが必要で装置の容積は実用性が失われてしまうほど大型となるという問題がある。この問題を解消するには、COPが高いエネルギー効率の性能を有する装置であることが重要であり、発明者らはその目標値を1.2に設定している。例えば住宅用の5000KCal/h(5.8KW)の冷房装置を考えた場合、現在実現されている民生用のCOP0.5レベルのデシカント吸着式冷房装置と、本発明が目標としているCOP1.2以上の高性能な冷房装置を運転するときに必要となる太陽熱温水装置の容量の違いは大きなものがある。
【0009】
即ちそのパネルの太陽熱の集熱特性が平均的な特性である400W/平米の場合、その必要なパネルの総面積は12平米対29平米と2.4倍の差があり、COP0.5のままではパネルの面積が大きいために生じるコスト増加、屋根など設置場所の制約、工事費の増加などに直接結びつくという問題がある。同時に装置は大型になり、製品コストは高くなり、このため普及が進まないでいる。
さらに重要な課題として、装置の容積とコストが挙げられる。デシカント冷房装置の全体のコストを考えると、装置を小型化することによる材料費の低減と同時に、デシカントに利用する吸着材を塗布した吸着材エレメントの材料費の低減が重要である。従って、この吸着材エレメントを如何に小型化してその材料費を低減させ、冷房装置を小型化してコストの低減を図り、その状態で冷房能力を確保することが重要な課題となる。
【0010】
その目標値としては、現在普及している圧縮機と冷凍サイクル持った電気モーターを駆動源としたエアコンに匹敵する小容積となるが、具体的には現状の室内機と室外機に分離された所謂スプリット型エアコンの室外ユニットの2倍の容積を目標としたい。
以上の課題を解決するにはこの吸着剤エレメントの容積ベースの性能向上とコストダウンが必要であり、その構造機構の工夫が課題のひとつであると言える。
前述した様に、本発明では吸着材による除湿機能を活かすと同時に、動力や熱量などのエネルギーを必要としない新しい冷却方式を発明して提案する。さらに吸着剤の除湿方式とこの新しい冷却方式の両者を組み合わせて新しい冷房方式を構成するという技術を発明として提示して、前述した課題を解決しようとするものである。従って最も重要な課題は
この冷却方式を実現するためにその方式と細部構造、材料を具体化することであるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1には圧縮機を組み込んだ冷凍サイクルを用いずに空間の空気を冷却する冷房機の原理を提案している。従来から、吸着装置を用いて処理空気の湿気を吸着して高温度化し、その後に屋外空気によってそれを冷却して常温に戻す方式の除湿器は実用化されている。さらにこの除湿した空気に水分を蒸発させてこれを冷却する。これがデシカント式冷房機の原理である。しかしながら、これでは冷房された処理空気の吹き出し温度は電動式冷凍サイクル利用冷房機(エアコン)の半分程度しか冷却できない。即ち、27℃の室温空気の冷房後の吹き出し温度は電動エアコンが17℃程度であるのに対し、22℃程度が普通である。
そこで、請求項1では、空間外空気(通常は室外空気)によって一端冷却された処理空気(通常は室内空気)に対し、冷房機として十分な温度まで冷却する方法を提示している。例えば、処理空気の20%程度を分離しそこに散水して加湿させることにより冷却し、この低温度の空気を用いて残りの80%の空気をさらに冷却する技術である。この冷却機構を実現するには極めて高性能な空気対空気熱交換器が必要である。
【0012】
ここで用いる熱交換器は連続する平面の伝熱壁面によって熱交換させるべき空気と空気の間を分離して且つ相互に効率良く熱交換させること、及びこの伝熱面の片方の表面に散水した水が水膜を形成し、この蒸発熱をこの伝熱壁面を介してさらに効率良く熱交換させるものである。
この為に使用される高性能な熱交換器の技術を請求項5に示し、その最適な実施例を図1に示す。最大の特徴技術は伝熱面が垂直で連続する平坦面を繰り返しジグザグに櫛形に折りたたんだもので、その伝熱性能に寄与する莫大な表面積とその全ての表面積が垂直状態に設置することが可能で、冷却のためにそこに散水した水が伝熱面を濡らしながら自由に落下するため伝熱面表面に水玉が堆積し憎いことであり、この結果空気流量が減少することが少なく高い性能の空気対空気間の熱交換性能を実現するものである。空間内空気の湿度の低いとき乃至は湿度の低い地域では吸着工程を利用せずにこの熱交換器の作動のみで冷房運転ができるという効果を有する。図1に示す様に処理空気は冷却される空気として図中左下から熱交換器のFP1のすき間に入り込み上部に上昇しながら冷却されて図中左の矢印の様に流出し、通常は室内空間に吹き出される。一方通常は室外空気である冷却する側の空気は図中右側の上の流入口から入り水道水散水ノズル4から吹きつけられる水道水ミストと混じり合って冷却されながら垂直壁面熱交換器のFP2の寸法のすき間を流れ、垂直壁面を濡らして水膜を形成し、この冷却熱で伝熱壁面を通して処理空気を冷却する。散水された水は壁面に付着し重力と冷却用空気の流れに従って壁面を流れ落ちる。これが高性能な水蒸発式空気対空気熱交換器を実現する。
【0013】
FP2は壁面の水膜の分だけFP1より寸法を大きくしてあり、図の例ではFP1は2mm、FP2は3mmとなっている。
請求項1により処理空気を冷却する上で、処理空気から分離した一部の空気で分離前の処理空気を冷却するときにその冷却効果を増す技術を請求項2、3に提示している。即ち請求項2はこの冷却源となる分離する一部の空気を処理空気から分離させるポイントを冷却されて空間内に吹き出される前とすることであり、請求項3はこの一部の空気と処理空気を対向流に流す技術である。空間内に吹き出される処理空気は冷却されて除湿されているから、これの一部を分離して処理空気と対向流に熱交換させれば、高エンタルピ(温度湿度が高い)の処理空気は散水して最も低温度になった低エンタルピの分離された一部の空気に冷却されて空間内に吹き出される。一方、一部の空気は散水状態で処理空気を冷却して熱を受け取り高温高湿の高エンタルピ空気となる。以上の現象は冷却空気として最も低エンタルピの空気を用いたこと、及び散水効果、及び対向流の効果が重なって生じた効果である。
【0014】
この冷房装置の状態の変化を図3の湿り空気線図で説明する。A:処理空気(室内空気)は吸着工程で等エンタルピ吸湿されてB点に至る。即ちたとえば27℃が34.5℃まで加熱除湿される。この状態で請求項7に記載の技術によりC点まで冷却される。このとき
冷却源となる室外空気は室内空気と熱交換してb点からc点に加湿され、加熱される。即ち室内空気はBからCへ冷却され、室外空気はb点からc点へ加熱される。C点の室内空気は請求項4の技術により冷却されてD点に至る。D点にて20%程度の空気が分離されてその空気がC点の空気をD点まで冷却するわけである。20%の分離された空気は散水された水と接触してE点に至り、請求項4の技術により加熱加湿されてF点に至る。即ち相互に熱交換して処理空気はCからDへ冷却され、冷却空気はEからFへ加熱されてる。しかして室内空気A点は冷却除湿されてD点に至る。これは電動圧縮機を持った冷凍サイクル冷房機の蒸発気における冷却の結果I点にいたるエアコンとほぼ同等のエンタルピ低減効果、即ち冷房効果を達成することができることを意味する。
【0015】
請求項4は処理空気と冷却空気即ち処理空気から20%程度を分離した空気との間の熱交換をさらに効率良く行わせて処理空気を最大限冷却する技術を提示している。即ち薄い且つ垂直な伝熱壁面から成る図1に示される様な空気対空気熱交換器を用い、冷却空気となる役割の分離した一部の空気を下向きに流しつつそこに散水して壁面に水膜を形成させる。図1から分かる通り伝熱壁面はFP2で示される間隔でアルミの薄板が折重ねられた稠密な構造で且つ冷却空気が下向きの流れであるから散水した水の落下を促進し、伝熱壁面上に水球となって停留することを防ぎ、伝熱面には薄い水膜を形成し易く、伝熱壁を冷却する。この状態で処理空気を上向きに対交流に流して図1のFP1で示される狭い流路内を流すことにより相互の空気のコンタクトファクタを上げる。即ち相手方空気温度への到達割合を向上させる。この結果処理空気はこの熱交換工程で十分に冷却されるという効果が得られる。
【0016】
請求項5に提示される熱交換器は伝熱面はアルミの薄板であるが、請求項8の様に樹脂にして生産性を向上させることの有効である。また請求項9の様に散水を行う方のFP2をFP1より大きな寸法にして水膜や水滴が形成されても通風路を確保することは全体の性能を向上させる上で有効である。また、伝熱面のうち、水膜を形成する側にはその表面に水ガラスなど、親水性に富んだ皮膜をコーティングすることにより薄い水膜の形成に有効であり、ひいては全体の熱交換性能の向上に有効である。さらには伝熱面の腐食防止、水スケールなどの付着や汚染の防止にも有効である。
【0017】
請求項6は本発明の冷房装置の空気対空気熱交換器として請求項5の垂直壁面熱交換器を用いることを提示しており、この垂直壁面熱交換器の伝熱性能の優位性によって、当該冷房装置の性能、小型化、低価格化が図れることになる。
請求項7は以上述べてきた処理空気から一部分離した冷却空気を図3に示したように高いエンタルピにした後、室外など、空間外に排気させるもので、図でわかる通り、a
点で示される室外空気のエンタルピとこの排気空気F点のエンタルピはほとんど等しく、従って換気によるエネルギーロスが無いという特徴がある。一般に室内空気を換気により屋外に排気するときはその双方のエンタルピ差により、換気エネルギーロスが大きくなるという問題があるが、本発明の冷房装置による冷房はそのロスがほとんど無く、大量の換気量が必要な空間、即ちホテル、劇場、老人施設などでは省エネルギーの点では特に有効である。
【0018】
請求項11はこの垂直壁面熱交換器を請求項3、及び4に記載している第二ステップにおける処理空気を空間外空気で冷却する場合に用いることを提示している。この場合、空間外空気側に散水するので垂直壁面熱交換器の全ての技術効果が有効になる。今まで述べてきた第三ステップで用いる垂直壁面熱交換器とここで提示している第二ステップの垂直壁面熱交換器を一体で構成させ一つの熱交換器の株で第二ステップの、上部で第一ステップの熱交換を行わせる方法は全体の冷房装置の小型化、低コスト化に有効であり、実用性の高い技術である。
【0019】
本冷房装置の大きな課題の一つは水蒸発冷却器における水道水カルキの発生と固着及び同部分での汚染やカビの発生、さらには匂いの発生である。そこで請求項12では散水した水量のうち一定割合を廃棄させることがこれらの課題の防止になる。さらには請求項14に示したように雨水を用いることが有効であり、水道代の節約という点でも有効である。このため雨水を貯留してこの冷房装置が作動する時に使用することが有効となる。
【0020】
請求項13ではこの水をさらに有効利用するために請求項1、2、3、4に示した冷房機の最初のステップの吸着除湿工程でも活用しようとする技術である。即ち水蒸発冷却器で散水され蒸発することにより処理空気を冷却し、垂直壁面熱交換器の最低部に落下したこの水をドレンパンで集め、図2に示す様に16ドレんホースを介して3及び15吸着材付き熱交換器の管内に連通し、管外の薄肉フィンを通じてフィン表面に接合した吸着材を冷却して吸着効果の再生を図る上で有効であることを示している。
【0021】
請求項14ではこの冷房機の吸着材の再生に用いる加熱源となる熱源を提示している。太陽熱は勿論燃料電池の排熱、厨房の料理排熱燃焼ガス排熱、ヒートポンプ冷房機の排熱その他60℃以上の温熱を利用できる。特に空間内温度の高い厨房や多くの換気量の必要な劇場などでは本冷房装置の持つ換気機能は冷房効果を高める上で有効である。
【発明の効果】
【0022】
以上の発明により以下の様な効果を期待できる。
1、水蒸発潜熱を有効に使って、ファンモータと水ポンプ以外に熱源や動力源を使わずに室内空気の冷却を行う空気調和装置を提供できる。
2、以上の装置に熱源を利用したデシカント除湿器を組み込んで除湿と冷却の双方を効率よく行う空気調和装置を提供できる。
3、室内空気湿度を検知して湿度が低い時乃至は湿度が低い地域ではデシカント除湿器の作動を停止して乃至はデシカント部分が無い装置で冷房が可能となり、熱源の使用量が少ない又は無い空気調和装置を提供できる。
4、以上の空気調和装置は圧縮機や冷凍サイクルを用いた従来の空気調和装置に比べ、製造減価の低減が期待でき、また一次エネルギー使用量の少ない空気調和装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の垂直壁面熱交換器の外観図
【図2】本発明による代表的な空気調和装置の構造図
【図3】本発明の処理空気と冷却空気の作動を示す湿り空気線図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以上の発明を具体化したパッケイジ型の高効率空気調和装置の代表事例を図2に示す。この装置は下部のデシカント除湿装置、上部の水蒸発冷却装置で構成されている。デシカント除湿装置の中心はデシカント除湿器3及び15であり、フィンチューブ熱交換器のフィンの外表面に吸着材であるゼラチンの結晶を焼き付けて湿気を吸収できる構造になっている。
ドレンホース16から25℃の水がデシカント除湿器3、15の銅管内に送られると送風切り替えダンパ7でガイドされた室内空気はその湿度分をデシカント除湿器の吸着材に吸着される。この運転を5分程度継続すると、デシカント切り替えダンパが切り替えられて室外空気が導入され、同時に太陽熱温水管路5に太陽熱温水器で暖められた60℃の温熱媒体である温水が送られる。この結果デシカント除湿器3、15の吸着材から放湿され、この放湿作業は5分程度継続される。これを繰り返して室内空気を除湿し、その湿分は室外空気へと放湿される。
【0025】
この除湿運転は室内空気(図3ではA点27℃)の温湿度が温湿度センサーによって検知され、湿度が高く運転すべきと判定された時のみ運転され、それ以外では除湿運転は行われない。以上で除湿されて高温度になった室内空気は図3中でB点に達し34.5℃まで高温度になる。
この空気は図2の室内送風機9により上部の水蒸発冷却装置に送られる。これが図2中で室内空気経路17で示される経路で垂直壁面熱交換器1の中を通り抜ける。
このとき、まづは12で示される散水されて冷却された室外空気によって冷却され、それが次の様な仕掛けでさらに冷却される。 即ち冷却されたこの室内空気はそのうち約80%が室内へと吹き出される。一方残りの20%は図2最上部に示した処理空気から分離した冷却空気18に示される様に垂直面熱交換器の右側に回り込み、水道水散水ノズル4で散水噴霧されたミストと混合され垂直壁面熱交換器の壁面を冷却し室外冷却送風機11により室外へと排気される。 この結果、伝熱壁面を通して17で示される室内空気を冷却する。
【0026】
水蒸発冷却装置での室内空気と室外空気の作動を図3の湿り空気線図上で説明する。B点まで除湿され高温度化した室内空気は図2の垂直壁面熱交換器1の下半分で室外空気により冷却され図のC点まで冷却される。これが通常のデシカント冷房機である。このとき冷却空気としての室外空気は逆に図中でb点からc点に加熱加湿される。 本冷房機ではさらに処理空気から20%程度分離された冷却空気18によって冷却されてD点に至る。その吹き出し温度は22.1℃である。その湿度は70%程度であるから、冷房機の吹き出し口には図示していないが水道水利用加湿装置を設置してさらに加湿冷却する方法がとられる。
【0027】
20%の冷却空気は図3のF点まで加熱加湿された状態で室外へと放出され、それは換気空気となる。通常の建物で必要な換気量を歓喜する時のエネルギーロスはほぼゼロになるから換気の無い電導式冷凍サイクルエアコンの場合に生じる換気ロスは省エネの観点上
極めて有効な装置と言える。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上の説明でわかる通り、極めて広い市場での地球環境に優れた空調機を提供できるから、従来の電動圧縮機式の空調機の広大な世界市場である約4兆円の市場に浸透していくことが期待される。その10%でも4000億円の事業を構成することができるから、産業上の視点でも極めて重要な発明であると認識している。
【符号の説明】
【0029】
1 垂直壁面熱交換器
2 冷房装置
3 デシカント除湿器2
4 水道水散水ノズル
5 太陽熱温水管路
6 温水切換え弁
7 送風切換えダンパ
8 室外送風機
9 室内送風機
10 ドレンパン
11 室外冷却送風機
12 室外空気経路
14 散水
15 デシカント除湿器1
16 ドレンホース
17 室内空気経路
18 処理空気から分離された冷却空気


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内の空気を処理空気として装置に取り込んで、吸着器により除湿し、次に空間外空気によってこれを冷却し、次に連続する平面状の薄い仕切り壁を伝熱面として該伝熱面の両側を流れる空気同士を熱交換させる空気対空気熱交換器を使って前記処理空気から分離した一部空気に乃至は該空気が流れる側の前記伝熱面に散水することにより低温度化した当該空気乃至は当該伝熱面により当該伝熱面の裏側の伝熱面に接して流れる前記処理空気をさらに冷却することにより処理空気を除湿及び冷却することを特徴とする冷房装置。
【請求項2】
空間内の空気を処理空気として装置に取り込んで、吸着器により除湿し、次に空間外空気によって冷却し、次に連続する薄い平面状の仕切り壁を伝熱面として該伝熱面の両側を流れる空気同士を熱交換させる空気対空気熱交換器を使って前記処理空気が空間内に吹き出される前にその一部空気を分離し、該分離した一部空気に乃至は該空気が流れる側の前記伝熱面に散水することにより低温度化した当該空気乃至は当該伝熱面により当該伝熱面の裏側の伝熱面に接して前記処理空気を流してこれをさらに冷却することにより処理空気を除湿及び冷却することを特徴とする冷房装置。
【請求項3】
空間内の空気を装置内に取り込んで処理空気となし、この処理空気を第一ステップで吸着剤と接触させて吸着除湿し、さらに第二ステップとしてこの処理空気を空間外空気と熱交換させてこれを冷却し、さらに第三ステップとしてこの処理空気を垂直の薄い平面状の伝熱壁面からなる空気対空気熱交換器の当該壁面の表面に沿って流してさらにこれを冷却してその一部の空気を除いた大部分の空気を空間に吹き出すとともに、空間に吹き出す前の当該処理空気のうち当該一部の空気を前記垂直の伝熱壁面の反対面に沿って前記大部分の空気と対向流に流すとともに、該反対面には薄い水膜が生成できるように散水させ、この散水された水が蒸発することにより該一部の空気を加湿して湿球温度近くまで冷却させると同時に該垂直の伝熱壁面を冷却し、この壁面の表面に接して流れる前記処理空気を冷却させ、この三つのステップにより空間に吹き出す処理空気を除湿・冷却し、空間に吹き出さなかった前記一部の空気を空間外に排気して換気空気としたことを特徴とした冷房装置。
【請求項4】
空間内の空気を装置内に取り込んで処理空気となし、この処理空気を第一ステップで吸着剤と接触させて吸着除湿し、さらに第二ステップとしてこの処理空気を空間外空気と熱交換させてこれを冷却し、さらに第三ステップとしてこの処理空気を垂直の伝熱壁面からなる空気対空気熱交換器の当該壁面の表面に沿って流してこれを冷却して空間に吹き出す過程で、空間に吹き出す前の当該処理空気のうち一部の空気を分離してこの空気を前記垂直の伝熱壁面の反対面に沿って前記大部分の空気と対向流に且つ下向きに流すとともに、該反対面には薄い水膜が生成できるように前記一部の空気内に散水させ、この散水された水が蒸発することにより該一部の空気を加湿して湿球温度近くまで冷却させると同時に該垂直の伝熱壁面に水膜を形成してこれを冷却し、この壁面の反対の表面に接して上向きに流れる前記処理空気を冷却させるというステップを構成し、この三つのステップにより空間に吹き出す処理空気を除湿・冷却し、空間に吹き出さなかった前記一部の空気を空間外に排気して換気空気としたことを特徴とした冷房装置。
【請求項5】
空気流路が平坦な連続するアルミの薄板を繰り返しジグザグに折り畳んで多数のフィンピッチを構成した伝熱面で二つに仕切られた熱交換器で、全ての伝熱面が垂直になるように、即ち水平切断面形状が前記ジグザグの形状となる様に配置して、前記垂直の伝熱面を挟んだ両側の流路に夫々の空気を流して相互に伝熱させる方式の空気対空気熱交換器に於いて、
一方の空気は下から上へと該伝熱面の片方の面に沿って流し、他方の空気は上から下へと該伝熱面の他方の面に沿って流し、且つ何れかの空気乃至は及び伝熱面表面に散水して該伝熱面の表面に水膜を形成して該伝熱面が水膜で被われて濡れている状態となし、該伝熱面の温度をその面を流れる空気の湿球温度に近い温度まで冷却させることにより、該伝熱面を介して反対側の面に接して流れる前記一方の空気を冷却することを特徴とする冷房装置用の垂直壁面熱交換器。
【請求項6】
前記垂直壁面熱交換器を前記空気対空気熱交換器として用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の冷房装置。
【請求項7】
空間内から取り込んだ空気に空間外の空気を取り込んで一体化して前記処理空気となし、空間外から取り込んだ当該空気量と前記排気空気の空気量とを大略一致させたことを特徴とする請求項3、4の何れか一項に記載の冷房装置。
【請求項8】
伝熱壁面を樹脂により形成したことを特徴とする請求項5に記載の垂直壁面熱交換器。
【請求項9】
伝熱壁面の形状は、水膜を形成する伝熱面の側の壁面間ピッチを水膜を形成しない反対面側の壁面間ピッチより大きな寸法としたことを特徴とした請求項5、8の何れか一項に記載の垂直壁面熱交換器。
【請求項10】
伝熱壁面は、水膜を形成する伝熱面の側の壁面表面に親水性塗膜を形成したことを特徴とした請求項5、8、9の何れか一項に記載の垂直壁面熱交換器。
【請求項11】
前記垂直壁面熱交換器を前記処理空気を前記空間外空気で冷却する時の熱交換装置として用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の冷房装置。
【請求項12】
前記冷房装置を運転し、前記伝熱面に散水する水をその含有カルキ濃度乃至は運転時間など一定の基準に基づいてその基準を満たした時にその一部または一定量を乃至は連続的または断続的に一定割合の水量を前記冷房装置から廃棄させることを特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11の何れか一項に記載の冷房装置。
【請求項13】
前記冷房装置を運転し、前記伝熱面に散水する水を、前記吸着装置に備えた冷却配管の中に連通させることによりこれを冷却し、前記空気対空気熱交換器で蒸発効果を発揮させると共に前記吸着装置の吸着特性の向上にも寄与させたことを特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12の何れか一項に記載の冷房装置。
【請求項14】
水の再利用と雨水利用
前記、伝熱面に散水する水を空間周辺の雨水を貯留した水を用いたことを特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13の何れか一項に記載の冷房装置。
【請求項15】
太陽熱、厨房熱
前記吸着除湿する工程で吸着材の再生のために使用する熱源として太陽熱乃至は燃料電池発電装置の排熱乃至はレストランの厨房における料理に使われた燃焼ガスの排熱乃至は冷房運転する電動式ヒートポンプエアコンの排熱を利用したことを特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14の何れか一項に記載の冷房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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