説明

冷涼感の強化をもたらすパーソナルケア組成物

1つ以上の冷感剤を含む香味/香料系を含有する、毛髪、皮膚、口腔、咽喉及びその他の粘膜表面で使用されるパーソナルケア組成物が開示されており、ここで冷感剤によってもたらされる心地よい冷涼及び清涼感は、より速い発現、より大きい強さ若しくはインパクト、及び/又はより長い持続時間の観点で強化され、それによって消費者に対する組成物の魅力及び受容性が改善される。一実施形態では、本発明は、
(a)1つ以上の非メントール冷感剤及び任意に1つ以上の更なる香味成分を含む、香味組成物と、
(b)冷感剤によってもたらされる冷涼及び清涼感を増強及び/又は調節するのに十分なカルシウムイオン源及び/又はカルシウム移動剤と、
(c)経口で受容可能なキャリアと、を含む、口腔ケア組成物を提供する。
口腔に適用すると、この組成物は、約15分間より長く持続する冷涼感を直ちに発現し、それによって長続きする清潔で新鮮な口の印象を提供し、ユーザーコンプライアンス及び組成物の繰り返し使用を促す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の冷感剤を含む香味/香料系を含有する口腔ケア及びスキンケア組成物などのパーソナルケア組成物に関し、ここで、冷感剤によりもたらされる心地よい冷涼感は、より速い発現、より大きい強さ若しくはインパクト、及び/又はより長い持続時間の観点で強化され、それによって消費者に対する組成物の魅力及び受容性が改善される。特に、口腔ケア製品に関しては、これらの製品の使用が、最大有効性のために口内でのかなり長い滞留時間及び繰返し使用を伴い得るので、味及び口当たりの特徴は、消費者の受容性のみならずコンプライアンスのためにも重要である。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤及び口内リンス剤などの口腔ケア製品は、口腔ケア衛生レジメンの一部として、消費者により日常的に使用される。口腔ケア製品が消費者に、治療上及び美容上両方の健康法の利点を提供できることは周知である。治療的効果としては、典型的には様々なフッ化物塩の使用により実現される虫歯予防、トリクロサン、フッ化スズ、若しくは精油などの抗微生物剤の使用による歯肉炎予防、又は塩化ストロンチウム又は硝酸カリウムなどの成分の使用による知覚過敏症の抑制が挙げられる。口腔ケア製品により提供される美容的効果としては、歯垢及び結石形成の抑制、歯の着色汚れの除去及び予防、歯の白色化、呼気の清涼化、及び食感の感性として広く特徴付けられ得る食感の印象の全体的改善が挙げられる。結石及び歯垢は、行動要因及び環境要因とともに、歯の美的外観に著しく影響を与える歯の着色汚れの形成に繋がる。歯の着色汚れ傾向の一因となる行動要因及び環境要因としては、コーヒー、紅茶、コーラ又はタバコ製品の常用、並びに、カチオン性抗微生物剤及び金属塩類などの、着色汚れを促進する成分を含有する特定の口腔用製品の使用もまた挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、自宅での日々の口腔ケアには、抗う食、抗菌、抗歯肉炎、抗プラーク、抗結石及び抗浸食、並びに抗悪臭、口の清涼化、着色汚れ除去、着色汚れ抑制及び歯の白色化を含む、完全な範囲の治療的かつ美的利益を提供するように、異なる作用によって働く複数の成分を有する製品が必要である。歯磨剤及びリンス剤などの毎日使用するための口腔ケア製品により完全な口腔ケアを提供するために、活性物質と添加剤を組み合わせることが必要であり、これらの多くは使用中、マイナスの美的特徴、具体的には不快な味及び感覚並びに着色汚れ促進の原因となるという不利点を有する。不快な味及び口内感覚は、苦み、金属感、渋み、塩辛み、しびれ、刺痛、熱感、穿痛、及び更に刺激性局面のうちの1つ以上を有すると記載されている。これらの美的マイナス側面に関連付けられる口腔ケアに用いるための典型的な成分としては、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、スズ塩類及び亜鉛塩類などの抗微生物剤;過酸化物類などの歯の漂白剤;ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩及びヘキサメタリン酸塩などの抗歯石剤;並びに重曹及び界面活性剤などの賦形剤が挙げられる。これらの成分から美的マイナス側面を軽減させるために、口腔ケア製品は通常、できるだけ良い味にし心地よい経験を提供するための着香剤、甘味剤、及び冷感剤と共に処方される。特に、口腔ケア製品が使用中及び使用後に爽やかな冷涼感を提供することが望ましい。
【0004】
このように、一態様では、本発明は、冷感剤化学物質の1つ又は混合物と組み合わせた従来の香味成分を含む香味系を含む口腔ケア組成物を提供し、ここで、冷感剤によりもたらされる冷涼及び清涼感は、発現、強さ若しくはインパクト、及び/又は持続時間の観点で増強される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、皮膚、毛髪、口腔、及びその他の粘膜表面で使用されることを意図するパーソナルケア製品、並びにそのようなパーソナルケア製品で使用される、活性が強化された1つ以上の冷感剤を含む香味及び香料組成物を目的とする。一実施形態では、本発明は、
(a)メントール以外の1つ以上の冷感剤及び任意に1つ以上の更なる香味成分を含む香味組成物と、
(b)冷感剤によってもたらされる冷涼及び清涼感を増強及び/又は調節するのに十分なカルシウムイオン源又はカルシウム移動剤と、
(c)経口で受容可能なキャリアと、を含む、口腔ケア組成物を提供する。
【0006】
口腔に適用すると、この口腔ケア組成物は、約15分より長く持続する冷涼感を直ちに発現し、それによって長続きする清潔で新鮮な口当たりを提供し、ユーザーコンプライアンス(利用者順守)及び組成物の繰り返し使用を促す。
【0007】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、次の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書は、本発明を具体的に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、以下の記載から更に十分に理解されるものと考えられる。
【0009】
本明細書の以下で使用される全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量を基準とする。本明細書で言及される成分の百分率、比率及び濃度は、特に指示がない限り全て成分の実際の量に基づき、市販製品として成分と組み合わされている可能性がある溶媒、充填剤、又はその他の物質を包含しない。
【0010】
本明細書で参照されている全ての測定は、特に指定がない限り、25℃で行なわれる。
【0011】
本明細書にて、「含む」という用語及びその変形は、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び他の成分の追加が可能であることを意味する。これらの用語には、「からなる」及び「から本質的になる」という用語が包含される。
【0012】
本明細書で使用するとき、単語「包含する」及びその変形は、挙げられている項目の詳細説明が、本発明の材料、組成物、装置、及び方法に同様に有用であると考えられる他の類似の項目を除外しないように、非限定的であることを意図している。
【0013】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」及びその変形は、一定の条件下において一定の効果をもたらす本発明の実施形態に関する。しかしながら、同じ又は他の状況下において、他の実施形態もまた好ましい可能性がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0014】
「口腔ケア組成物」とは、通常の使用過程において、特定の治療剤を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、経口作用を目的として実質的に全ての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持される製品を意味する。口腔ケア組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きゲル、歯肉縁下用ゲル、口内リンス剤、ムース、フォーム、マウススプレー、ドロップ、咀しゃく錠、チューインガム、又は義歯製品などの様々な形態であってよい。口腔ケア組成物は、口腔表面に直接適用又は取り付けるためにストリップ又はフィルムに組み込まれてもよい。
【0015】
本明細書で使用する時、「歯磨剤」という用語は、特に指定がない限り、ペースト、ゲル、又は液体製剤を含む。歯磨剤組成物は、単一相組成物であってもよいし、又は2つ以上の別々の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、ペーストを囲むゲルを有する、深い縞状、表面的な縞状、多層状、又はこれらのいずれかの組み合わせのような、いずれの所望の形態であってもよい。2つ以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサーの物理的に分離された区画内に収容され、同時に投与されてもよい。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「ディスペンサー」とは、歯磨剤などの組成物を分配するのに好適なあらゆるポンプ、チューブ、又は容器を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「歯」とは、天然歯、並びに人工歯又は歯科補綴物を指す。
【0018】
用語「経口で受容可能なキャリア又は賦形剤」とは、フッ化物イオン源、抗結石又は抗歯石剤、緩衝剤、シリカなどの研磨剤、アルカリ金属重炭酸塩、増粘物質、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味料、甘味剤、キシリトール、着色剤、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない、口腔ケア組成物に使用される安全且つ有効な物質及び従来の添加剤を含む。
【0019】
本明細書に有用な活性物質及び他の成分は、美容的及び/若しくは治療的な効果、又はそれらが要求される作用様式若しくは機能によって、本明細書中で分類又は記述することができる。ただし、本明細書に有用な活性物質及び他の成分が、場合によっては美容的及び/若しくは治療的な1を超える効果をもたらすこと、又は1を超える作用様式で作用することもあることを理解すべきである。したがって、本明細書での分類は便宜上実施されるものであり、成分を列挙される具体的に規定した作用又は活性に制限しようとするものではない。
【0020】
本明細書において、用語「歯石(tartar及びcalculus)」は、同義的に使用され、石灰化された歯垢バイオフィルムを指す。
【0021】
本組成物の必須及び任意構成成分を、以下の項に記載する。
【0022】
冷感剤(Coolant(s))
冷感剤又は特に口腔及びその他の粘膜表面並びに皮膚に対して生理学的冷涼効果を有する化合物は、食用組成物及びパーソナルケア製品などの広範囲にわたる製品、並びにそのような製品で使用される香味又は香料組成物において共通した成分である。食用組成物の例としては、菓子類、飴、チョコレート、チューインガム、飲料及び経口薬が挙げられる。皮膚、毛髪、及び粘膜表面への局所適用のための組成物には、ローション又はクリーム、皮膚クレンザー、シャンプー及びコンディショナー、ワイプ及びウェットティッシュ、並びに口紅及びファンデーションなどの化粧品が挙げられる。本発明に関連する、局所適用される組成物の特定の部類は、口腔ケア及び咽喉ケアに関するものであり、これには、粉末、ペースト又は液体形態の製品が挙げられ、使用されると表面及び口腔、鼻腔、又は咽頭の内部粘膜に接触するのに十分な時間維持される。そのような製品には、例えば、口内洗浄剤、歯科用あめ及び喉あめ、うがい薬、チューインガム、歯磨剤又は練り歯磨き、楊枝、歯科用錠剤及び粉末、並びに歯科処置において適用するための局所用溶液、並びに咳止めシロップ、チュアブル制酸薬及び消化促進製剤が挙げられる。
【0023】
冷感剤によってもたらされる心地よい冷涼感は、製品の魅力及び受容性の一因となる。特に、歯磨剤及び口内洗浄剤などの口腔ケア製品は、冷感剤と共に処方されるが、それは、冷感剤が、呼気の清涼化効果及び口内の清潔、冷涼、新鮮な感じをもたらすからである。
【0024】
冷涼又は冷たいという感覚は、低温又は化学冷感剤などの刺激による末梢神経繊維での受容体の活性化によるということが、今や確立されている。この冷感剤は脳へ移動する電気化学信号を作り出し、次いで到着信号を解釈し、整理し、知覚又は感覚に統合する。異なる部類の受容体が、哺乳類の知覚神経繊維において冷温又は化学冷感剤の刺激を感じることに関係していると見なされてきた。それらの受容体のうち、寒冷を感知することに関与する主要な候補は、寒冷感受性及びメントール感受性の受容体(CMR1)又はTRPM8であることが特定されかつ指定されている。受容体のTRPM8という専門用語は、低温、メントール、及びその他の化学冷感剤を含む刺激により活性化される一過性受容体電位(TRP)ファミリーの非選択的カチオンチャネルとしてのその特徴付けから来ている。しかしながら、皮膚又は口腔表面上での心地よい冷涼感の知覚に潜在する正確な機構は、現在明確には理解されていない。TRPM8受容体がメントール及びその他の冷感剤により活性化されることが立証されている一方で、知覚される全体的な感覚が心地よく、冷涼感があり、清涼であるために、他のどの受容体が関与している可能性があり、それらの受容体がどの程度刺激される又は場合によっては抑制される必要があるのかについては、完全には理解されていない。例えば、メントールは冷感剤として広く使用されているが、メントールはその他の感覚、例えばヒリヒリする感じ、灼熱感、穿痛感、及び刺すような感覚、並びにミントの匂い及び苦い味も生じさせ得る。したがって、メントールは寒冷、温熱、痛み及び味覚受容体などの多くの異なる受容体に作用することが推測される。しかしながら、苦味又は刺激などの望ましくない感覚のない心地よい冷涼などの特定の感覚をどの受容体活性がもたらすかの分離方法は容易には識別できない。特定の知覚剤の使用から望ましい感覚だけが引き出されるように冷感剤又はその他の知覚剤の活性をどのように制御するかも明らかではない。したがって、本発明は、知覚物質、即ち「知覚剤(sensates)」、特に以下に記載されるものなどの冷感剤化合物の活性を強化及び/又は調節するのに使用できる剤の発見に基づいている。
【0025】
天然起源又は合成起源の多くの冷感剤化合物が説明されてきた。最もよく知られている化合物は、メントール、とりわけl−メントールであり、これは特にハッカ(Mentha arvensis)L及びミドリハッカ(Mentha viridis)Lのペパーミント油にもともと見られる。メントールの異性体のうち、l−異性体が最も広く自然に存在し、通常は、冷感剤特性を有するメントールという名称で呼ばれるものである。L−メントールは独特のペパーミントの香りを有し、かつ清潔でさわやかな味を有し、皮膚及び粘膜表面に適用された際に冷涼感を与える。メントールのその他の異性体(ネオメントール、イソメントール、及びネオイソメントール)は、ある程度類似しているが同一ではない香り及び味を有する(即ち、いくらかは、土のような、樟脳、かび臭いとして表される、好ましくない雰囲気を有する)。異性体の中で最大の違いは、その冷涼効力である。L−メントールは最も強力な冷涼をもたらす、即ち約800ppbの最低冷涼閾値を有し、即ちこれは冷涼効果をはっきりと認識できる濃度である。この濃度において、他の異性体では冷涼効果がない。例えば、d−ネオメントールは約25,000ppb、l−ネオメントールは約3,000ppbの冷涼閾値を有することが報告されている[R.Emberger及びR.Hopp、「Synthesis and Sensory Characterization of Menthol Enantiomers and Their Derivatives for the Use in Nature Identical Peppermint Oils」、Specialty Chemicals(1987)、7(3)、193〜201]。この研究は、冷涼及び新鮮さ並びにこれらの分子の活性に対する立体化学の影響の観点からl−メントールの優れた知覚特性を実証した。
【0026】
合成冷感剤のうち、多くは、メントールの誘導体であるか、又はメントールと構造的に関連する。即ち、シクロヘキサン部分を含有し、カルボキサミド、ケタール、エステル、エーテル及びアルコールを含む官能基で誘導体化される。その例としては、「WS−3」として知られるN−エチル−ρ−メンタン−3−カルボキサミドなどのρ−メンタンカルボキサミド化合物、並びにWS−5(N−エトキシカルボニルメチル−ρ−メンタン−3−カルボキサミド)、WS−12[N−(4−メトキシフェニル)−ρ−メンタン−3−カルボキサミド]及びWS−14(N−tert−ブチル−ρ−メンタン−3−カルボキサミド)などの同シリーズのその他が挙げられる。メンタンカルボキシエステルの例には、WS−4及びWS−30が挙げられる。メントールと構造的に無関係の合成カルボキサミド冷感剤の例は、「WS−23」として既知のN,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタナミドである。合成冷感剤の更なる例としては、TK−10として知られる3−(1−メトキシ)−プロパン−1,2−ジオール、イソプレゴール(商標名Coolact P)及びρ−メンタン−3,8−ジオール(商標名Coolact 38D)などのアルコール誘導体(全てTakasagoから入手可能);MGAとして知られるメントングリセロールアセタール;メンチルアセテート、メンチルアセトアセテート、Frescolat(登録商標)として知られHaarmann and Reimerにより供給されるメンチルラクテート、及びV.Maneからの商標名Physcoolのモノメンチルスクシネートなどのメンチルエステルが挙げられる。TK−10は、米国特許第4,459,425号(Amanoら)に記載されている。その他のアルコール及びメントールのエーテル誘導体は、英国特許第1,315,626号、並びに米国特許第4,029,759号、同第5,608,119号及び同第6,956,139号に記載されている。WS−3及び他のカルボキサミド冷感剤は、例えば、米国特許第4,136,163号、第4,150,052号、第4,153,679号、第4,157,384号、第4,178,459号及び第4,230,688号に記載されている。追加のN−置換ρ−メンタンカルボキサミドは国際公開特許第2005/049553A1号に記載されており、N−(4−シアノメチルフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミド、N−(4−スルファモイルフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミド、N−(4−シアノフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミド、N−(4−アセチルフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミド、N−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミド、及びN−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミドが挙げられる。その他のN−置換ρ−メンタンカルボキサミドには、N−((5−メチル−2−(1−メチルエチル)シクロヘキシル)カルボニル)グリシンエチルエステル及びN−((5−メチル−2−(1−メチルエチル)シクロヘキシル)カルボニル)アラニンエチルエステルなど、国際公開特許第2006/103401号、並びに米国特許第4,136,163号、同第4,178,459号及び同第7,189,760号に開示されているものなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。メンチルエステルには、例えば欧州特許第310,299号、並びに米国特許第3,111,127号、同第3,917,613号、同第3,991,178号、同第5,5703,123号、同第5,725,865号、同第5,843,466号、同第6,365,215号、同第6,451,844号、及び同第6,884,903号に開示されている、グリシン及びアラニンなどのアミノ酸のものが挙げられる。ケタール誘導体は、例えば米国特許第5,266,592号、同第5,977,166号及び同第5,451,404号に記載されている。構造的にはメントールに関連していないが類似の生理学的冷却効果を有することが報告されている更なる剤としては、米国特許第6,592,884号に記載されている、3−メチル−2−(1−ピロリジニル)−2−シクロペンテン−1−オン(3−MPC)、5−メチル−2−(1−ピロリジニル)−2−シクロペンテン−1−オン(5−MPC)、及び2,5−ジメチル−4−(1−ピロリジニル)−3(2H)−フラノン(DMPF)などの、α−ケトエナミン誘導体;WeiらのJ.Pharm.Pharmacol.(1983)、35:110〜112に記載されているイシリン(AG−3−5としても知られており、化学名は1−[2−ヒドロキシフェニル]−4−[2−ニトロフェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン)が挙げられる。メントール及び合成冷感剤の冷感剤活性に関する概説としては、H.R.WatsonらのJ.Soc.Cosmet.Chem.(1978)、29、185〜200及びR.EcclesのJ.Pharm.Pharmacol.(1994)、46、618〜630が挙げられる。
【0027】
理想的には、冷感剤は、メントールによって生じるものと似た冷涼感又は新鮮感を生じさせるべきである。ただし、特に高濃度における、香味の改質、苦い後味、異臭、悪臭及び灼熱感又は刺激感などのメントールに関連するいくつかの欠点がないことである。使用後かなりの時間、例えば15分より長い時間、効果をまだ感じることができるために、冷感剤化合物は、独特の匂い又は香味を辛うじて有するが、長い持続時間心地よい新鮮な冷涼感をもたらすのが望ましい。メントールは通常、最初に強い冷涼インパクトをもたらすが、その効果は、冷涼感が使用後数分以内に急激に低下するという点で、若干一時的なものである。対照的に、多くのより長続きする冷感剤化合物は、特に低濃度で使用した際に、直ちに、即ち適用から数秒以内に冷涼の知覚をもたらすことができない。したがって、冷涼感の早期発現、特に低濃度での冷涼感の強化、並びにメントールが提供するものよりも長続きする冷涼感及び新鮮感の提供の観点で冷感剤化学物質の活性を増強させる手段が依然として必要である。
【0028】
本発明は、以下の項に記載される冷感剤の活性を増強及び/又は調節する手段の発見に関する。
【0029】
冷感剤活性の増強/調節
本発明者らは、受容体細胞におけるカルシウムイオンフラックス又はモービリゼーションの増加が、発現、強さ又はインパクト、及び持続時間の観点で冷感剤の活性を強化することを発見した。この発見は、温熱受容体の活性の上昇及び寒冷受容体の活性の低下におけるカルシウムの効果に関する先の報告を考えれば、とりわけ予想外である[H.Hensel and K.Schafer、「Effects of Calcium on Warm and Cold Receptors」、Pflugers Arch.(1974)352:87〜90]。それに続くネコの鼻腔領域における温熱受容体及び寒冷受容体に関するSchafer及びその他の電気生理学的研究は、カルシウム−キレート剤EDTAの投与により引き起こされる受容体周囲の外部カルシウム濃度の低下が寒冷受容体の活性を上昇させることを立証した。また、カルシウム濃度の低下が寒冷受容体の活性を強化することも報告されている[J.Neurophysiol.(1982)47:1017〜1028;Physiol.Res.(1992)41:71〜75]。更に、ヒトへのカルシウム溶液の静脈注射が温覚の拡散感を引き起こすことが報告されている。[J.Hirschsohn及びH.Maendl Wien.Arch.Inn.Med.(1922)4:379〜414]。これらの研究から、カルシウムの効果は、寒冷感剤の活性を阻害し、加温剤の活性を強化することであることが予想される。したがって、冷感剤活性に対するカルシウムの増強作用のこの発見は驚くべきものであり、予想外のものである。
【0030】
以下に述べられる知覚研究で立証されるように、カルシウムイオンの増強作用は、カルシウムイオン及び冷感剤の濃度、冷感剤の化学的性質、並びに使用中の冷感剤の可溶化などの多くの要因によって決まる。冷感剤、特に合成メンタン誘導体におけるカルシウムイオンの増強効果は、メントールの存在下で更に強化されることもわかっている。理論に束縛されるものではないが、メントールがこの強化効果をもたらすのは、特定の温度受容体を直ちに刺激し、カルシウムイオンのモービリゼーションのためにこれらのイオンチャネルを開けるその活性のためであると考えられている。
【0031】
冷却活性の知覚評価研究はM.C.Meilgaardら、Sensory Evaluation Techniques、4th Ed.(2007)に記載される技術に倣って作られた方法を使用して行なわれた。1つの研究では、11人の訓練された知覚専門家の試験員が、冷感剤を含有する歯磨剤で歯を磨き、続いてカルシウムイオン源を含有する水性リンス剤ですすいだ後に経験した冷涼感を評価した。官能試験員は、1.5グラムの試験歯磨剤(冷感剤を含有)又は対照物(冷感剤なし)で歯を磨き、次いで吐き出した。歯を磨いて吐き出した後、官能試験員は、冷涼の強さを評価して、0(冷涼なし)〜60(強い冷涼)の数字を割り当てた。次に官能試験員は、15mLの水性リンス剤(カルシウムあり又はなし)で口内をすすぎ、吐き出した。リンス剤を吐き出した後、官能試験員は同じ0〜60の等級によって冷涼強さを評価した。評価は、5分、15分、30分、45分、60分などの時点で行なわれた。各評価において、官能試験員は口をすぼめて息を吸い、全体的な冷涼感を評価するよう指示された。このテストで、7.5という数値スコアは、有意な又は確かな冷涼を意味する。結果を以下の表1にまとめる。
【表1】

スペアミント油中7.5%溶液としてGivaudanにより供給されるG−180。
【0032】
全体的に、カルシウムイオンを提供することにより、特に冷涼の強さ及び持続時間に対する効果が増強した。この効果は、Givaudanによりスペアミント又はペパーミントなどの香味油中の7.5%溶液として供給される、MGAと表される冷感剤である化学的メントングリセロールアセタール、及びG−180冷感剤である化学的N−(4−シアノメチルフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミドで特に明らかである。カルシウムイオンを加えると、75ppmのG−180処方の冷却効果が150ppmのG−180処方の冷涼効果にまで上昇し、それにより、より低濃度の冷感剤を有する製品を処方することが可能になる。この発見は、G−180などの冷感剤に特に重要であり、官能試験員は、特に高濃度で使用したときに「灼熱」感をもたらすとして表現した。カルシウムの効果は、投与量によって決まるようであり、G−180に関して試験された濃度では、カルシウムの濃度が高いほど、より大きい冷涼強化をもたらす。しかしながら、データが示すように、その効果は、冷感剤の濃度及び化学構造並びにカルシウム対冷感剤の重量比によっても左右される。研究された数多くの冷感剤に関しては、使用された冷感剤及びカルシウムの濃度では、カルシウムの顕著な増強効果は見られなかった。カルシウムの増強効果は、低濃度の冷感剤で、及びカルシウム対冷感剤の最適化された比率にて、より明白であろうと考えられる。高濃度の冷感剤では、カルシウムはどちらかというと、冷感剤からの強すぎる感覚、灼熱感、鋭い感覚、又は苦い感覚を和らげるなどの調節効果をもたらしている可能性がある。カルシウムと冷感剤との重量比は、少なくとも約0.5:1、好ましくは少なくとも1:1以上である。
【0033】
カルシウム強化効果は、1500ppmの濃度でMGAに関しても見られた;即ち、冷涼が、15分の時点以降で見られた。1500ppmの濃度のメントールでは、同じカルシウム強化効果は見られなかった。対照的に、カルシウムは、G−180の冷涼持続時間を60分まで延長させた。しかしながら、メントールをカルシウム及びG−180と組み合わせることによって、特にカルシウムと冷感剤とのより高い比にて、冷涼の強さ及び冷涼経験の持続時間が向上した。この点で、メントールは増強剤として作用している。
【0034】
外部カルシウムイオン源の添加は、受容体細胞内でのカルシウムイオンフラックスを増大させる一手段である。カルシウムイオン源は、無機塩若しくは有機塩、例えばハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物)、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、次亜塩素酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、グリセロリン酸塩、酪酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、ペプチド、ホスホペプチドなどの任意の生理学的に許容できるカルシウム化合物であってもよいし、又はカルシウムの酸化物若しくは水酸化物からであってもよい。カルシウムイオン源は、水溶性、難溶性、又は不溶性であってよく、増強活性のために最低濃度である少なくとも約10ppm〜最高約10,000ppmのカルシウムイオンを提供することができる。好ましくは、添加されるカルシウム源は、少なくとも約50ppm、より好ましくは少なくとも約150ppm〜約500ppmのカルシウムイオンを提供する。カルシウムイオン源の濃度は、当然ながら、組成物の感性及び安定性などの二次的考察によっても決まる。いくつかのカルシウム化合物は、組成物の全体的な味を、例えば「粉っぽい」として説明されるように変える場合があり、したがってそのような効果を生じさせる濃度では望ましくない。
【0035】
受容体内でのカルシウムイオンフラックスを増大させることがわかっている別の手段は、リン酸塩化合物など、例えばフィチン酸塩、ポリリン酸塩、及び有機リン酸塩などのカルシウム可溶化剤を添加することによる。そのような化合物はカルシウムキャリア若しくは移動剤として作用して、外部カルシウムを受容体に届けるか、又は冷感剤活性化中に細胞内カルシウム貯蔵から放出されるカルシウムイオンを移動させるのを助けると考えられている。以下の研究は、TRPM8受容体内での細胞内カルシウムイオン(Ca+2)の濃度に関する様々な口腔ケア製剤成分の効果を比較したものである。
【0036】
この研究では、ヒトのTRPM8で安定にトランスフェクトしたHEK−23(ヒト胎児腎臓)細胞を、5%のCOに設定された哺乳類細胞培養インキュベーター内で75CMのフラスコ内の15mLの増殖培地[10%のFBS(ウシ胎児血清)、100ug/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、5μg/mLのブラスチシジン、及び100μg/mLのゼオシンで補完された高グルコースDMEM(Dulbecco’s Modification of Eagle’s Medium)で3日間、37℃にて増殖させた。2mLのトリプシン−EDTA緩衝剤(GIBCO(登録商標)25200、Invitrogen)を約2〜3分間加えて、細胞を分離させた。8mLの増殖培地を加えて、トリプシンを不活性化した。細胞を50mLの管に移し、850rpmで3分間遠心分離させて、培地を除去した。遠心分離後、細胞のペレットが管の底に形成されて、上清溶液から分離した。上清を廃棄し、細胞のペレットを1mLの新しい増殖培地に懸濁させ、そこに5uL(12.5ug)のFluo−4 AM(Molecular Probes,Inc.)カルシウムインジケータを加え、緩やかに振盪させながら30分間インキュベートした。(Fluo−4は、100nM〜1microMの範囲の細胞のCa2+濃度を定量化するのに使用される蛍光染料である。)30分間の終わりに、45mLのアッセイ緩衝剤[1xHBSS(Hank’s Balanced Salt Solution)、20mMのHEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)]を加えて、細胞を洗浄し、次いで得られた混合物を850rpmで3分間遠心分離させて、余分な緩衝剤及びFluo−4 AMカルシウムインジケータを除去した。ペレットの細胞を10mLのアッセイ緩衝剤に再懸濁させ、1ウェルにつき90uLのアリコート(およそ50,000細胞)を10uLの試験化合物(アッセイ緩衝剤中1mM、最終濃度100uM)又は緩衝剤対照を含有する96ウェルのアッセイプレートに撒き、室温にて30分間インキュベートした。30分後、プレートを蛍光測定画像解析用プレートリーダー(Molecular DevicesからのFLIPR384)に入れ、定常蛍光度を記録した(励起波長488nm及び発光波長510nm)。細胞内カルシウムの濃度の変化を検知するために、FLIPRアッセイは一般に認められた方法である。次に、アッセイ緩衝剤中37.5uMのTRPM8作動薬G−180冷感剤20uL(最終濃度6.25uM)を加え、蛍光度を記録した。TRPM8に対する試験化合物の直接効果を判断するために、各化合物の添加直後に蛍光度が測定された。結果を以下の表2にまとめる。試験された化合物のうち、冷感剤G−180は、対照と比べてカルシウムイオンフラックスの顕著な増加によって示されるようにTRPM8受容体を活性化させた。1つの試験では、G−180活性の正の調節がフィチン酸で見られ、これは、G−180だけと比較して組み合わせでは、カルシウム蛍光度における23.36%の増大によって示された。同じプロトコルを使用する別の実験では、正の調節がフィチン酸に確認され、無機ポリリン酸塩及び有機リン酸塩などのその他のリン酸塩化合物に関して、並びに無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(Gantrez(登録商標)として入手可能)などのポリカルボン酸塩に関して立証された。
【表2】

【表3】

【0037】
このように、本発明による組成物は、冷感剤によりもたらされる冷涼感及び清涼感を強化する増強剤として、カルシウムイオン源及び/又はカルシウムイオンキャリア若しくは移動剤を含む。一実施形態では、この組成物は、カルシウム塩、フィチン酸塩、又はその他のリン酸塩化合物若しくはカルボン酸塩化合物のうちの1つ以上を、非メントール冷感剤、好ましくはメンタンカルボキサミド型のものと組み合わせて含む。この組成物は好ましくはメントールも含有し、これは、単一の又は精製された化学物質として、並びに/あるいはペパーミント及びコーンミントなどのメントールを含有する天然油又は抽出物の添加により、組成物中に供給されることができる。カルシウムイオンキャリアとして好適なフィチン酸塩化合物、リン酸塩化合物、及びカルボキシ化合物は、組成物において少なくとも約0.1重量%の濃度の歯直接剤及びキレート剤として以下に詳述される。本発明で使用するのに有効なカルシウムイオンキャリアは、TRPM8受容体を介して移動させる可溶性生成物を生成するカルシウムを結合する種の歯直接剤及びキレート剤である。
【0038】
香味系
冷感剤及び任意にメントールは、通常、香味系の一部であり、好ましくは、抗微生物活性物質又は過酸化物などの組成物の特定な成分による不快な味及び感覚を効果的に覆うものである。好ましい味の組成物は、口腔ケア製品の指示又は推奨された使用に対するユーザのコンプライアンスを改善する。本発明の香味系は、特に、通常の口腔ケア製品キャリア材料又は賦形剤の存在下で比較的安定である従来の香味成分を含んでもよい。選択された香味成分と冷感剤との組み合わせは、調和のとれた香味特性を有する強いインパクトのある清涼感をもたらす。
【0039】
口腔ケア組成物は、約0.001重量%〜1.5重量%の非メントール冷感剤を含む。存在する場合、最終組成物中のメントールの濃度は、通常、約0.010%〜最大約2.0%の範囲である。
【0040】
上記の冷感剤に加えて、香味系は、ペパーミンント油、コーンミント油、スペアミント油、ウィンターグリーン油、クローブ芽油、カシア、セージ、パセリ油、マジョラム、レモン、ライム、オレンジ、シスジャスモン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、バニリン、エチルバニリン、アニスアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド;シンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、α−メチルシンナムアルデヒド、オルト−メトキシシンナムアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、プロペニルグエトール、ヘリオトロピン、4−シスヘプテナール、ジアセチル、メチル−ρ−tert−ブチルフェニルアセテート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、1−メンチルアセテート、オキサノン、α−イリソン、メチルシンナメート、エチルシンナメート、ブチルシンナメート、エチルブチラート、エチルアセテート、メチルアントラニレート、イソアミルアセテート、イソアミルブチラート、アリルカプロエート、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、ケイ皮アルコール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、β−ダマセノン、イオノン、γ−デカラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、及びこれらの混合物などの更なる香味成分を含んでもよいが、これらに限定されない。一般に好適な香味成分は、酸化還元反応される傾向が少ない構造的特徴及び官能基を含有するものである。これらには、飽和した香味化学物質の誘導体、又は安定な芳香環、若しくはエステル基を含有する香味化学物質の誘導体が挙げられる。多少の酸化又は分解を受ける場合があっても香味の特徴又はプロフィールに著しい変化を生じない香味化学物質もまた好適である。香味成分は、単一若しくは精製化学物質として供給されるか、又は、天然油又は抽出物の添加によって構成成分中に供給されてもよい(相対的に不安定で所望の香味プロファイルを劣化又は変える恐れがあり、その結果、感覚刺激の観点からはあまり許容できない生成物を生じる構成成分が、精製によって天然油又は抽出物から取り除かれていることが好ましい)。着香剤は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0041】
香味系は、典型的には、甘味剤を含む。好適な甘味剤としては、天然甘味剤及び人工甘味剤の両方を含む、当該技術分野において周知のものが挙げられる。好適な水溶性甘味剤としては、キシロース、リボース、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、ショ糖(砂糖)、マルトース、転化糖(フルクトースとショ糖由来のグルコースとの混合物)、部分的に加水分解したデンプン、コーンシロップ固形物、ジヒドロカルコン類、モネリン、ステビオシド類、及びグリチルリチンのような単糖類、二糖類、及び多糖類が挙げられる。好適な水溶性人工甘味剤としては、可溶性サッカリン塩類、即ち、サッカリンナトリウム又はカルシウム塩類、シクラメート塩類、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム塩、アンモニウム塩、又はカルシウム塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのカリウム塩(アセスルファム−K)、サッカリンの遊離酸型等が挙げられる。他の好適な甘味剤としては、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)及び米国特許第3,492,131号に記載された物質のようなL−アスパラギン酸由来の甘味剤、L−α−アスパルチル−N−(2,2,4,4−テトラメチル−3−チエタニル)−D−アラニンアミド水和物、L−アスパルチル−L−フェニルグリセリン及びL−アスパルチル−L−2,5,ジヒドロフェニル−グリシンのメチルエステル、L−アスパルチル−2,5−ジヒドロ−L−フェニルアラニン、L−アスパルチル−L−(1−シクロヘキシエン)−アラニン等のようなジペプチド系甘味剤が挙げられる。例えば、スクラロースの製品銘柄で既知である通常の砂糖(スクロース)の塩素化誘導体のような、天然素材の水溶性甘味剤由来の水溶性甘味剤、並びにタウマトコッカス・ダニエリ(thaumatoccous danielli)(タウマチンI及びII)のようなタンパク質系甘味剤が使用できる。組成物は、組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の甘味剤を含有するのが好ましい。
【0042】
更に香味系は、唾液分泌剤、温感剤、及び麻酔剤を含んでよい。これらの剤は組成物中に、組成物の約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の濃度で存在する。好適な唾液分泌剤としては、Takasagoにより製造されているJambu(登録商標)が挙げられる。好適な麻酔剤には、ベンゾカイン、リドカイン、クローブの芽の油、及びエタノールが挙げられる。加温剤の例としては、エタノール、トウガラシ、及びニコチン酸ベンジルのようなニコチン酸エステルが挙げられる。加温効果を有する剤の使用は、当然のことながら、冷感剤の冷涼効果を改変する可能性があり、特に冷感剤の濃度を最適化する上で配慮する必要がある。
【0043】
上述した構成成分に加え、本発明の組成物は、以下の項で記載する、経口で受容可能なキャリア物質と集合的に呼ばれる追加の任意成分を含んでもよい。
【0044】
経口で受容可能なキャリア物質
経口で受容可能なキャリアは、局所口腔投与に好適な1つ以上の混和性のある固体若しくは液体賦形剤、又は希釈剤を含む。本明細書で使用するとき、「混和性のある」とは、組成物の構成成分が、安定性及び/又は有効性を実質的に低減させるような相互作用なしに、混合され得ることを意味する。
【0045】
本発明のキャリア又は賦形剤は、歯磨剤、非研磨剤ゲル、歯肉縁下用ゲル、口内洗浄剤又はリンス剤、口内スプレー、チューインガム、薬用キャンディー、及び口臭予防用ミント、の通常及び従来の構成成分を含むことができるが、それについては以下に、より詳細に説明する。
【0046】
使用されるキャリアの選択は、基本的に、組成物が口腔内に導入される方法によって決定される。練り歯磨き、歯用ゲルなどのためのキャリア物質には、米国特許第3,988,433号(ベネディクト(Benedict))に開示されているような研磨剤物質、起泡剤、結合剤、保湿剤、着香剤及び甘味剤などが挙げられる。二相性歯磨剤製剤用のキャリア物質は米国特許第5,213,790号、同第5,145,666号及び同第5,281,410号(全てLukacovicら)並びに米国特許第4,849,213号及び同第4,528,180号(Schaeffer)に開示されている。口内洗浄剤、リンス剤、又は口内スプレーキャリア物質としては典型的に、例えば米国特許第3,988,433号(ベネディクト)に開示されているように、水、香味剤及び甘味剤等が挙げられる。トローチ剤キャリア物質は典型的に、キャンディーベースを包含し;チューインガムキャリア物質は、例えば、米国特許第4,083,955号(グラベンシュテッター(Grabenstetter)ら)のようにガムベース、着香剤及び甘味剤を包含する。子袋のキャリア物質には、典型的には、子袋、着香剤、及び甘味剤が挙げられる。歯周ポケットの中又は歯周ポケットの周りに活性物質を送達するために使用される歯肉縁下用ゲルの場合、例えば、米国特許第5,198,220号及び同第5,242,910号(ともにDamani)に開示されているように、「歯肉縁下用ゲルキャリア」が選択される。本発明の組成物の調製に好適なキャリアは、当該技術分野において周知である。それらの選択は、味、価格、及び貯蔵安定性などのような二次的考察によって左右される。
【0047】
本発明の組成物はまた、非研磨剤ゲル及び歯肉縁下用ゲルの形態であってよく、これは水性であっても非水性であってもよい。更に別の態様では、本発明は、本発明の組成物を含浸させた歯科用器具を提供する。歯科用器具は、歯及び口腔内のその他の組織に接触するための器具を含み、前記器具には、本発明の組成物が含浸されている。歯科用器具は、デンタルフロス又はテープ、チップ、ストリップ、フィルム及びポリマー繊維を含む、含浸された繊維であってもよい。
【0048】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、練り歯磨き、歯磨きゲル及び歯磨き粉のような歯磨剤の形態である。これらの練り歯磨き及び歯用ゲルの成分は一般に、歯の研磨剤(約6%〜約50%)、界面活性剤(約0.5%〜約10%)、増粘剤(約0.1%〜約5%)、保湿剤(約10%〜約55%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、着色剤(約0.01%〜約0.5%)、及び水(約2%〜約45%)を1つ以上包含する。このような練り歯磨き又は歯磨きジェルはまた、抗カリエス剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)、及び抗結石剤(約0.1%〜約13%)を1つ以上含んでもよい。歯磨き粉はもちろん、実質的にすべての非液体の構成成分を含有する。
【0049】
本発明の他の実施形態は液体製品であり、口内洗浄剤又はリンス剤、口腔スプレー、歯科用溶液及び洗浄液が挙げられる。そのような口内洗浄剤及び口内スプレーの構成成分は、典型的には、1つ以上の、水(約45%〜約95%)、エタノール(約0%〜約25%)、保湿剤(約0%〜約50%)、界面活性剤(約0.01%〜約7%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、及び着色剤(約0.001%〜約0.5%)を包含する。このような口内洗浄剤及び口内スプレーはまた、抗虫歯剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)及び抗結石剤(約0.1%〜約3%)の1つ以上を含む。歯科用溶液の構成成分は、一般に、水(約90%〜約99%)、防腐剤(約0.01%〜約0.5%)、増粘剤(0%〜約5%)、香味剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、及び界面活性剤(0%〜約5%)の1以上を包含する。
【0050】
本発明の組成物に含まれていてもよい経口で受容可能なキャリア又は賦形剤の種類は、特定の非限定的な例とともに、次の項で述べられている。
【0051】
フッ化物供給源
組成物中にフッ化物イオン濃度をもたらすのに十分な量で、水溶性フッ化物化合物を歯磨剤及び他の口腔用組成物中に存在させることは一般的であり、及び/又はそれが約0.0025重量%〜約5.0重量%、好ましくは0.005重量%〜約2.0重量%で用いられた場合に、抗カリエス効果を提供する。多種多様なフッ化物イオン生成物質が、本発明の組成物中の可溶性フッ化物の供給源として使用され得る。好適なフッ化物生成物質の例は、Brinerらの米国特許第3,535,421号及びWidderらの米国特許第3,678,154号に見られる。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化インジウム、フッ化アミン及び多くの他のものが挙げられる。
【0052】
研磨剤
本発明の組成物において有用な歯研磨剤には、種々様々な物質が含まれる。選択される物質は、対象組成物中で混和性があり、象牙質を過度に削らないものでなければならない。好適な研磨剤には、例えば、ゲル及び沈殿物を包含するシリカ、不溶性のポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、炭酸カルシウム、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、及び尿素とホルムアルデヒドの粒子状縮合生成物のような樹脂性研磨剤物質が挙げられる。
【0053】
本組成物に用いられる別の部類の研磨剤は、米国特許第3,070,510号(Cooley及びGrabenstetter)に説明される粒子状熱硬化性重合樹脂である。好適な樹脂には、例えば、メラミン類、フェノール樹脂、尿素類、メラミン−尿素類、メラミン−ホルムアルデヒド類、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド類、架橋エポキシド類、及び架橋ポリエステル類が挙げられる。
【0054】
様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に研磨させない優れた歯の洗浄及び艶出性能という独特の効果があるので好ましい。他の研磨剤と同様に、本明細書のシリカ研磨艶出物質は、一般に、約0.1ミクロンと約30ミクロンの間、好ましくは約5ミクロン〜約15ミクロンの範囲の平均粒径を有する。研磨剤は、米国特許第3,538,230号(Paderら)及び米国特許第3,862,307号(DiGiulio)に記載されている沈澱シリカ、又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルであってよい。例として、W.R.Grace & Company,Davison Chemical Divisionから商標名「Syloid」で販売されているシリカゼロゲル、及び、J.M.Huber Corporationから商標名Zeodent(登録商標)で販売されているもの、具体的には、Zeodent(登録商標)119、Zeodent(登録商標)118、Zeodent(登録商標)109、及びZeodent(登録商標)129という名称のシリカなどの沈殿シリカが挙げられる。本発明の練り歯磨きに有用なシリカ歯科用研磨剤のタイプは、Wasonの米国特許第4,340,583号(1982年7月29日発行)、並びに同一譲受人に譲渡された米国特許第5,603,920号、同第5,589,160号、同第5,658,553号、同第5,651,958号、及び同第6,740,311号に、より詳細に記述されている。
【0055】
上に列挙された様々な等級のZeodent(登録商標)シリカ研磨剤の混合物など、研磨剤の混合物を用いることができる。本発明の歯磨剤組成物中の研磨剤の合計量は、典型的には約6重量%〜約70重量%であり、練り歯磨きは、好ましくは組成物の約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含有する。本発明の歯科用溶液、口内スプレー、口内洗浄剤、及び非研磨剤ゲル組成物は、典型的には、少量の研磨剤を含む、又は研磨剤を含まない。
【0056】
過酸化物供給源
本組成物は、口腔に対する多くの利点ゆえに過酸化物源を任意に含有してよい。過酸化水素及び他の過酸素含有剤は、虫歯、歯垢、歯肉炎、歯周炎、口臭、歯の着色汚れ、慢性再発性アフタ、義歯の炎症、歯列矯正装置の損傷、抜歯後及び歯根膜手術後、外傷性口腔病変、並びに粘膜感染症、ヘルペス口内炎等に対する治療及び/又は予防的処理に有効であると長い間認められてきた。口腔内で過酸化物含有剤は、組織と唾液酵素との相互作用により生成される、何千もの小さな酸素の気泡を発生させる化学機械的作用を及ぼす。口内リンス剤を口の中でガラガラする動作により、この特有の化学機械的作用が強化される。かかる動作は、感染した歯肉溝に他の剤を送達するために推奨されている。過酸化物口内リンス剤は、歯周病に関連していることが既知である嫌気性細菌の定着及び増殖を防ぐ。しかしながら、過酸化水素又は他の過酸化物放出化合物を含有する組成物は、一般に、不快な味及び口内感覚をもたらす。これらの感覚は、舌が、ピリッとした香味又はソーダ水のような強炭酸液体に接触した際に経験する感覚に類似する、刺痛、穿痛、及び刺激性として記載されている。更に、過酸化物はその中で他の一般的な賦形剤と相互作用し、保管中不安定である傾向があり、比較的短期間に活性物質又は発生期の酸素を放出する能力を持続的に失い、かかる賦形剤の所望の機能を低下又は無効にする傾向がある。このような賦形剤のうち、口腔ケア製品の受容性を向上させるために添加されるのは、香味、知覚物質、及び着色剤である。
【0057】
過酸化物源としては、過酸化物化合物類、過ホウ酸塩類、過炭酸塩類、ペルオキシ酸類、過硫酸塩類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な過酸化化合物類としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、過酸化亜鉛及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい過炭酸塩は、過炭酸ナトリウムである。好ましい過硫酸塩はオキソンである。歯磨剤製剤に使用するために好ましい過酸化物源としては、過酸化カルシウム及び過酸化尿素が挙げられる。過酸化水素及び過酸化尿素は、口内リンス剤製剤で用いるために好ましい。以下の量は過酸化物原料物質の量を示すが、過酸化物源は過酸化物原料物質以外の成分を含有してもよい。本組成物は、組成物の約0.01重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約5重量%の過酸化物源を含有してよい。
【0058】
抗結石剤
本組成物は、キレート化活性を有する抗結石剤、例えばピロリン酸イオン源としてのピロリン酸塩を任意に含んでもよい。キレート剤は、歯石形成を妨害し、歯石形成後はそれを除去することで、当該技術分野において知られている。結石の抑制に対する化学的手法は、一般にカルシウムイオンのキレート化、及び/又は結石の形成を防止する結晶の成長抑制、及び/又はカルシウムの除去による成熟した結石の分解を含む。更に、キレート剤は、歯の表面に結合し、それにより色素体又は色素原(chromagen)を置換することによって、原理上は着色汚れを除去することができる。本組成物に有用なピロリン酸塩としては、ピロリン酸二アルカリ金属塩、ピロリン酸四アルカリ金属塩、及びこれらの混合物が挙げられる。無水和物並びに水和物の形の二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)が好ましい種である。本発明の組成物において、ピロリン酸塩は次の3通りのうちの1つの形態で存在してもよい:即ち、主に溶解した形態、主に溶解していない形態、又は溶解した形態と溶解していない形態のピロリン酸塩の混合物のいずれかである。
【0059】
主に溶解しているピロリン酸塩を含む組成物とは、少なくとも1つのピロリン酸イオン源が、少なくとも約1.0%の遊離ピロリン酸イオンを提供するのに十分な量である組成物を指す。遊離ピロリン酸イオン量は、約1%〜約15%、一つの実施形態においては約1.5%〜約10%、及び、他の実施形態では約2%〜約6%としてもよい。遊離ピロリン酸イオンは、組成物のpHに依存して多様なプロトン化状態で存在してもよい。
【0060】
主に溶解していないピロリン酸塩を含む組成物とは、組成物中に溶解している約20%以下の合計ピロリン酸塩、好ましくは組成物中に溶解している約10%未満の合計リン酸塩を含有する組成物を指す。ピロリン酸四ナトリウム塩は、これらの組成物中の好ましいピロリン酸塩である。ピロリン酸四ナトリウムは、無水塩形態若しくは十水和物の形態、又は歯磨剤組成物中において固体形態で安定なその他のいずれの種であってもよい。塩はその固体粒子状形態であり、その結晶性及び/又は非晶性状態であってもよく、その塩の粒径は、好ましくは、審美的に受け入れられるように、そして使用時に容易に溶解するように十分に小さい。これらの組成物の製造に有用なピロリン酸塩の量は、歯石抑制に有効な任意の量であり、一般に、歯磨剤組成物の約1.5重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、最も好ましくは約3重量%〜約8重量%である。
【0061】
組成物はまた、溶解したピロリン酸塩と溶解していないピロリン酸塩との混合物を含んでもよい。前述のピロリン酸塩のいずれを用いてもよい。
【0062】
ピロリン酸塩は、Kirk−Othmerの「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(第3版、第17巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)、1982年)に、より詳細に記載されている。
【0063】
ピロリン酸塩の代わりに又はピロリン酸塩と組み合わせて用いられる任意の剤としては、合成アニオン性ポリマーとして既知の物質などが挙げられ、それには例えば米国特許第4,627,977号(ガファー(Gaffar)ら)に記載されているポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、ガントレッツ(Gantrez))、並びに、例えばポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、ジホスホネート(例えば、EHDP;AHP)、ポリペプチド(ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸など)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
歯直接剤(Tooth Substantive Agent)
本発明は、高分子界面活性剤(PMSA)のような歯直接剤を含んでよく、これは高分子電解質であり、より具体的にはアニオン性ポリマーである。PMSAは、アニオン基、例えば、リン酸塩、ホスホン酸塩、カルボキシ、又はこれらの混合物を含有し、従って、カチオン性又は正に荷電した実体と相互作用する能力を有する。「ミネラル」記述子は、ポリマーの界面活性又は持続性がリン酸カルシウムミネラル又は歯のようなミネラル表面に向かうことを伝えることを意図する。
【0065】
PMSAは、着色汚れ防止などの数多くの効果のため、本組成物において有用である。PMSAは、その反応性又は直接性により、無機質又は歯の表面に着色汚れ予防効果をもたらし、望ましくない吸着外被タンパク質、具体的には、歯を着色させる色素体の結合、結石の発達、及び望ましくない微生物種の誘引と関連するものの一部を脱離させると考えられる。これらのPMSAの歯上への定着はまた、歯の表面上の色素体の結合部位を壊すため、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0066】
PMSAの、スズイオン及びカチオン性抗微生物剤のような口腔ケア製品の着色汚れ促進成分に結合する能力もまた、有用であると考えられる。PMSAはまた、表面熱力学特性及び表面フィルム特性に望ましい影響を与える歯表面調節効果を提供し、これは洗浄又はブラッシング中、及び最も重要なことに洗浄又はブラッシング後の両方に、改善された清浄感の感性を付与する。これらの剤の多くもまた、口腔用組成物に含まれる際、歯石抑制効果をもたらし、したがって消費者に歯の外観及びそれらの触感の改善をもたらすことが予想される。
【0067】
望ましい表面効果としては、1)処理直後に、親水性の歯表面を形成すること、並びに2)ブラッシング後又は口内洗浄後及びより長い期間を含む、製品の使用後の長期間にわたって、表面コンディショニング効果及び外被フィルムの制御を維持することが挙げられる。親水性の増大した表面を形成することによる効果は、水の接触角の相対的な減少の点で測定できる。親水性表面は、重要なことに、製品使用後、長期間にわたって歯の表面に保持される。
【0068】
PMSAとしては、歯表面に強い親和性を有し、ポリマー層又はコーティングを歯表面に沈着させ、所望の表面改質効果を生み出す任意の剤が挙げられる。かかるポリマーの好適な例は、縮合リン酸化ポリマーのような高分子電解質;ポリホスホン酸塩;リン酸塩若しくはホスホン酸塩含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー及びアミノ酸のような他のモノマーとのコポリマー、又はタンパク質、ポリペプチド、多糖類、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)、及びポリ(ビニルベンジルクロライド)のような他のポリマーとのコポリマー;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;並びにこれらの混合物である。好適なポリマー無機質界面活性剤としては、米国特許第5,292,501号、同第5,213,789号、同第5,093,170号、同第5,009,882号、及び同第4,939,284号(全てDegenhardtら)に記載されるカルボキシ置換アルコールポリマー、並びに米国特許第5,011,913号(Benedictら)のジホスホネート誘導体化されたポリマー;例えば米国特許第4,627,977号(Gaffarら)に記載されるような、ポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーを含む合成アニオン性ポリマー(例えば、Gantrez)が挙げられる。好ましいポリマーは、ジホスホネート変性ポリアクリル酸である。活性を有するポリマーは、薄膜タンパク質を脱着しかつエナメル質表面に結合したままにするのに十分な表面結合性を有しなければならない。歯の表面では、末端又は側鎖にリン酸塩又はホスホン酸塩官能基を有するポリマーが好ましいが、無機質結合活性を有する他のポリマーも吸着親和性に依存して有効であることを示す場合がある。
【0069】
ポリマー無機質界面活性剤を含有する好適なホスホネートの更なる例としては、抗結石剤として米国特許第4,877,603号(Degenhardtら)に開示されたジェミナルジホスホネートポリマー;米国特許第4,749,758号(Durschら)及び英国特許第1,290,724号(何れもHoechstへ譲渡)に開示された、洗剤及び洗浄剤組成物での使用に好適なコポリマーを含有するホスホネート基;並びに歯石及び腐食阻害、コーティング、セメント及びイオン交換樹脂などの用途に有用であるとして、米国特許第5,980,776号(Zakikhaniら)及び米国特許第6,071,434号(Davisら)に開示されたコポリマー及びコテロマーが挙げられる。追加のポリマーとしては、英国特許第1,290,724号に開示されているビニルホスホン酸、アクリル酸及びこれらの塩類の水溶性コポリマーが挙げられ、これらのコポリマーは、約10重量%〜約90重量%のビニルホスホン酸及び約90重量%〜約10重量%のアクリル酸を含有し、より詳細にはこれらのコポリマーはビニルホスホン酸とアクリル酸との重量比が70%ビニルホスホン酸対30%アクリル酸;50%ビニルホスホン酸対50%アクリル酸;又は30%ビニルホスホン酸対70%アクリル酸である。他の好適なポリマーとしては、1つ以上の不飽和C=C結合を有するジホスホネート又はポリホスホネートモノマー(例えば、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸及び2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸)と、不飽和C=C結合を有する少なくとも1つの更なる化合物(例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマー)と、を共重合することにより調製される、Zakikhani及びDavisにより開示された水溶性ポリマーが挙げられ、これらは以下の構造を有するものなどである。
1.以下の構造を有する、アクリル酸と2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸とのコテロマー:
【化1】

2.以下の構造を有するアクリル酸とビニルジホスホン酸とのコポリマー:
【化2】

【0070】
好適なポリマー類としては、Rhodiaから表記ITC 1087(平均分子量3000〜60,000)及びポリマー1154(平均分子量6000〜55,000)として供給されているジホスホネート/アクリレートポリマー類が挙げられる。
【0071】
好ましいPMSAは、イオン性フッ化物及び金属イオンのような口腔ケア組成物の他の成分に対して安定である。高含水製剤において加水分解が制限され、したがって単純な単一相歯磨剤又は口内リンス製剤を可能にするポリマーもまた好ましい。PMSAがこれらの安定特性を有していない場合、1つの選択肢は、フッ化物又は他の不混和性成分から分離された高分子ミネラル界面活性剤を含む二相製剤である。別の選択肢は、非水性、実質的に非水性又は限定的な水分の組成物を配合し、PMSAと他の成分との間の反応を最低限に抑えることである。
【0072】
1つの好ましいPMSAは、ポリリン酸塩である。ポリリン酸塩は一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のリン酸塩分子からなると理解されているが、幾つかの環状誘導体が存在する場合もある。ピロリン酸塩(n=2)は理論的にはポリリン酸塩であるが、所望のポリリン酸塩は、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のリン酸塩官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、およそ3以上のホスフェート基を有するものである。所望の無機ポリリン酸塩類としては、特に、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩が挙げられる。テトラポリリン酸塩よりも大きいポリリン酸塩類は、通常は無定形のガラス状物質として生じる。本組成物で好ましいのは、以下の式:
XO(XPO)nX
(式中、Xはナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであり、nの平均は約3〜約125である)を有する直鎖ポリリン酸塩である。好ましいポリリン酸塩は、ソダホス(Sodaphos)(n≒6)、ヘキサホス(Hexaphos)(n≒13)、及びグラス(Glass)H(n≒21)として市場で知られているもの、並びにFMCコーポレーション(FMC Corporation)及びアスタリス(Astaris)により製造されているような平均して約6〜約21のnを有するものである。これらのポリリン酸塩類は単独で又は組み合わせて用いることができる。ポリリン酸塩類は、酸性pH、具体的にはpH 5未満で、高含水製剤中の加水分解の影響を受けやすい。したがって、長鎖ポリリン酸塩、具体的には、平均鎖長が約21のGlass Hを使用することが好ましい。かかる長鎖ポリリン酸塩類は、加水分解を受けている際、依然として歯上に沈着し、着色汚れ予防効果を提供するのに有効な短鎖ポリリン酸塩類を生成すると考えられている。
【0073】
他のポリリン酸化化合物を、ポリリン酸塩、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸);ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物に加えて又はその代わりに用いてよい。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸又はイノシトール六リン酸及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」は、フィチン酸及びその塩、並びにその他ポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。
【0074】
歯直接剤として有用な更に他の界面活性有機リン酸塩化合物には、以下の一般構造:
【化3】

(式中、Z、Z、又はZは、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1つは有機部分であり、好ましくは6〜22個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアルケニル基から選択され、所望により1つ以上のホスフェート基;アルコキシル化アルキル若しくはアルケニル、多糖類、ポリオール又はポリエーテル基で置換される)で表されるリン酸モノ、ジ又はトリエステルが挙げられる。
【0075】
いくつかの好ましい薬剤には、以下の構造:
【化4】

(式中、Rは、1つ以上のホスフェート基によって任意に置換される6〜22個の炭素原子の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル若しくはアルケニル基を表し、n及びmは、個々かつ別個に2〜4であり、a及びbは、個々かつ別個に0〜20であり、Z及びZは、同一でも異なっていてもよく、それぞれは、水素、アルカリ金属、アンモニウム、プロトン化アルキルアミン若しくはプロトン化官能アルキルアミン、例えばアルカノールアミン、又はR−(OC2n(OC2m−基を表す)によって表されるアルキル又はアルケニルリン酸エステルが含まれる。好ましい剤の例としては、モノ、ジ、及びトリアルキル及びアルキル(ポリ)アルコキシホスフェート、例えばリン酸ドデシル、リン酸ラウリル;ラウレス1リン酸;ラウレス3リン酸;ラウレス9リン酸;ジラウレス10リン酸;トリラウレス4リン酸;C12〜18 PEG−9リン酸及びそれらの塩が挙げられる。多くは、Croda、Rhodia、Nikkol Chemical、Sunjin、Alzo、Huntsman Chemical、Clariant and Cognisなどの供給元から市販されている。幾つかの好ましい剤は、例えば、高分子部分としての反復アルコキシ基、特に3つ以上のエトキシ、プロポキシイソプロポキシ、又はブトキシ基を含有する高分子のものである。
【0076】
更なる好適な高分子有機リン酸薬剤としては、リン酸デキストラン、リン酸ポリグルコシド、リン酸アルキルポリグルコシド、リン酸ポリグリセリル、リン酸アルキルポリグリセリル、リン酸ポリエーテル、及びリン酸アルコキシル化ポリオールが挙げられる。いくつかの特定の例は、PEGリン酸、PPGリン酸、アルキルPPGリン酸、PEG/PPGリン酸、アルキルPEG/PPGリン酸、PEG/PPG/PEGリン酸、リン酸ジプロピレングリコール、PEGリン酸グリセリル、PBGリン酸(ポリブチレングリコール)、PEGリン酸シクロデキストリン、PEGリン酸ソルビタン、PEGリン酸アルキルソルビタン、及びPEGリン酸メチルグルコシドである。
【0077】
好適な更なる非高分子リン酸塩としては、リン酸アルキルモノグリセリド、リン酸アルキルソルビタン、リン酸アルキルメチルグルコシド、リン酸アルキルスクロースが挙げられる。
【0078】
歯直接剤の量は、典型的には、総口腔用組成物の約0.1重量%〜約35重量%である。歯磨剤製剤では、該量は好ましくは約2%〜約30%、より好ましくは約5%〜約25%、最も好ましくは約6%〜約20%である。口内リンス剤組成物では、歯直接剤の量は好ましくは約0.1%〜5%、より好ましくは約0.5%〜約3%である。
【0079】
表面改質効果を形成することに加えて、歯持続剤はまた、不溶性塩を可溶化するように機能してもよい。例えば、グラスHは不溶性スズ塩類を可溶化することが見出されている。したがって、例えばフッ化スズを含有する組成物では、Glass Hはスズによる着色汚れの低下の一因となる。
【0080】
キレート剤
本組成物は、金属イオン封鎖剤とも呼ばれるキレート剤を任意に含有してもよく、その多くは抗結石活性も有する。口腔ケア製品においてキレート剤を使用することは、細菌の細胞壁に見られるようなカルシウムを錯体化する能力のために有利である。キレート剤はまた、このバイオマスが損なわれないように保持するのを助けるカルシウムの架橋からカルシウムを取り除くことにより歯垢を崩壊させることができる。しかしながら、カルシウムが高すぎる親和性を有するキレート剤を用いることは結果として歯の脱鉱質化をもたらす可能性があり、これは本発明の目的及び意図に反するために、望ましくない。好適なキレート剤は、通常はカルシウム結合定数が約10〜10であり、洗浄を改善し、歯垢及び結石の形成を減少させる。キレート剤はまた、金属イオンと錯体を形成することができ、それにより、安定性又は製品の外観に対する弊害を予防するのに役立つ。鉄又は銅などのイオンのキレート化により、最終製品の酸化による変質抑制に役立つ。
【0081】
キレート剤はカルシウムを結合するため、組成物中に存在することにより、冷感剤増強効果をもたらすカルシウムイオンの有用性に影響を及ぼし得る。したがって、組成物におけるカルシウム源の濃度は、使用されるキレート剤に応じて調整されなければならない場合がある。本組成物に理想的なキレート剤は、カルシウム結合能力を有し、レセプターイオンチャネルを介してカルシウム可溶化及び移動剤としても作用する剤である。そのような剤には、上述したような3つ以上のホスフェート基を有するフィチン酸塩及び直鎖ポリリン酸塩などの、可溶性リン酸塩化合物が含まれ、とりわけトリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩が挙げられる。好ましいポリリン酸塩は、平均約6〜約21のホスフェート基の数nを有するもの、例えばSodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に知られているものである。組成物中のキレート剤の量は、使用されるキレート剤に依存し、通常は、少なくとも約0.1%〜約20%、好ましくは約0.5%〜約10%、より好ましくは約1.0%〜約7%である。
【0082】
カルシウムを結合、可溶化、及び移動させる能力のために本明細書で有用な更に他のリン酸塩化合物は、有機リン酸モノ、ジ、又はトリエステルを含む歯直接剤として有用な上述の界面活性有機リン酸塩化合物である。
【0083】
キレート剤のその他の例は、グルコン酸又はクエン酸のナトリウム又はカリウム、クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩混合物、酒石酸二ナトリウム、酒石酸二カリウム;酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム、及びこれらの混合物である。
【0084】
本発明で使用するのに好適な更に別のキレート剤は、陰イオン性高分子ポリカルボキシレートである。こうした物質は当該技術分野において周知であり、その遊離酸又は部分的に若しくは好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)若しくはアンモニウム塩の形態で使用される。例としては、無水マレイン酸又はマレイン酸と、別の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、好ましくは約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)との1:4〜4:1のコポリマーである。これらのコポリマーは、例えばGAF Chemicals CorporationのGantrez(登録商標)AN 139(分子量500,000)、AN 119(分子量250,000)、及びS−97 Pharmaceutical Grade(分子量70,000)として入手可能である。
【0085】
他の有効な高分子ポリカルボキシレートには、無水マレイン酸とエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン又はエチレンとの1:1コポリマーであって、後者は、例えばモンサント(Monsanto)EMA No.1103、分子量10,000及びEMA等級61として入手可能であるもの、及びアクリル酸とメチル若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、メチル若しくはエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマー等が挙げられる。
【0086】
追加的な有効な高分子ポリカルボキシレートは、1979年2月6日のガファル(Gaffar)への米国特許第4,138,477号、及び1980年1月15日のガファル(Gaffar)らへの米国特許第4,183,914号に開示されているが、無水マレイン酸とスチレン、イソブチレン又はエチルビニルエーテルのコポリマー;ポリアクリル酸、ポリイタコン酸及びポリマレイン酸;並びにユニロイヤル(Uniroyal)ND−2として入手可能な、分子量が1,000ほどに低いスルホアクリルオリゴマー(sulfoacrylic oligomer)が挙げられる。
【0087】
その他の活性剤
本組成物は、所望により、抗微生物剤のようなその他の活性剤を含んでもよい。そのような剤としては、非水溶性非カチオン性の抗微生物剤、例えばハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体を含むフェノール化合物、モノ及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル、並びにハロゲン化カルバニリドが挙げられる。水溶性抗微生物剤としては、四級アンモニウム塩及びビス−ビクアニド塩、並びにトリクロサンモノホスフェートが挙げられる。四級アンモニウム剤には、四級窒素上の置換基のうちの一つ又は二つが炭素原子約8〜約20個、典型的には約10〜約18個の炭素鎖長(典型的にはアルキル基)を有する一方、残りの置換基(典型的にはアルキル基又はベンジル基)は、炭素原子約1〜約7個などの、より少ない炭素原子数、典型的にはメチル基又はエチル基を有するものが挙げられる。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、臭化ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化メチルベンゼトニウムは、典型的な四級アンモニウム抗菌剤の代表例である。その他の化合物は、米国特許第4,206,215号(Bailey)に開示されるようなビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカンである。銅塩、亜鉛塩、及びスズ塩のような他の抗微生物剤を含んでもよい。エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、及びこれらの混合物を含む酵素も有用である。そのような剤は、米国特許第2,946,725号(Norrisら)及び米国特許第4,051,234号(Gieskeら)に開示されている。好ましい抗微生物剤としては、亜鉛塩類、スズ塩類、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、及びチモールのような香油が挙げられる。トリクロサン及びこの種の他の剤は、米国特許第5,015,466号(パラン・ジュニア(Parran、Jr.)ら)及び米国特許第4,894,220号(ナビ(Nabi)ら)に記載されている。これらの剤は、抗歯垢効果を提供し、典型的には、組成物の約0.01重量%〜約5.0重量%の濃度で存在する。
【0088】
本組成物に添加してよい別の任意の活性剤は、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩及び硫酸塩を含む、カリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、及びスズ塩のような過敏性を制御する象牙質減感剤である。
【0089】
界面活性剤
本組成物はまた、一般的に起泡剤とも呼ばれる界面活性剤を含んでもよい。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって適度に安定で泡立つものである。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、陽イオン性、又はこれらの混合物であってもよい。
【0090】
本明細書で有用な陰イオン性界面活性剤としては、アルキルラジカルに8個〜20個の炭素原子を有するアルキルスルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類の陰イオン性界面活性剤の例である。他の好適な陰イオン性界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなサルコシネートである。陰イオン性界面活性剤の混合物も使用できる。多くの好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458(Agricolaら)、によって開示されている。本組成物は、通常、約0.025%〜約9%、ある実施形態では約0.05%〜約5%、別の実施形態では約0.1%〜約1%の濃度で陰イオン性界面活性剤を含む。
【0091】
別の好適な界面活性剤は、サルコシネート界面活性剤、イセチオネート界面活性剤及びタウレート界面活性剤からなる群から選択されるものである。本明細書で用いるのに好ましいのは、サルコシン酸ラウロイル、サルコシン酸ミリストイル、サルコシン酸パルミトイル、サルコシン酸ステアロイル、及びサルコシン酸オレオイル。サルコシン酸界面活性剤は、本発明の組成物中に、総組成物の約0.1重量%〜約2.5重量%、好ましくは約0.5重量%〜約2.0重量%で存在してもよい。
【0092】
本発明に有用な陽イオン性界面活性剤には、約8個〜18個の炭素原子を含有する1つのアルキル長鎖を有する脂肪族四級アンモニウム化合物の誘導体、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジ−イソブチルフェノキシエチル−ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ココナツアルキルトリメチルアンモニウムニトライト、セチルピリジニウムフルオリドなどが挙げられる。好ましい化合物は、ブリナーら(Briner)らによって米国特許第3,535,421号で説明されているフッ化四級アンモニウムであり、フッ化四級アンモニウムは洗剤特性を有する。特定の陽イオン性界面活性剤はまた、本明細書に開示された組成物中で殺菌剤としても作用することができる。クロルヘキシジンのようなカチオン性界面活性剤は、本発明に用いられるのに好適であるが、口腔の硬組織を着色する可能性があるために好ましくない。当業者はこの可能性について承知しており、この制限を念頭においてカチオン性界面活性剤を組み込むべきである。
【0093】
本発明の組成物に用いることができる非イオン性界面活性剤には、アルキレンオキシド基(本質的には親水性)と、本質的には脂肪族又はアルキル芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、プルロニック(Pluronic)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物とエチレンオキシドとの縮合から得られた生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、及びこのような物質の混合物が挙げられる。
【0094】
本発明で有用な双性イオン性又は両性界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖であることができ、その際脂肪族置換基の1つは約8個〜約18個の炭素原子を含有し、1つは例えばカルボキシ、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩又はホスホン酸塩のようなアニオン性水溶性基を含有する。好適な両性界面活性剤には、米国特許第5,180,577号(Polefkaら)に開示されているようなベタイン界面活性剤が挙げられる。典型的なアルキルジメチルベタイン類としては、デシルベタイン又は2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン又は2−(N−ココ−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。アミノベタインは、ココアミドエチルベタイン、コカミドプロピルベタイン(CAPB)、及びラウラミドプロピルベタインが良い例である。
【0095】
増粘剤
練り歯磨き又はゲル類を調製する場合に、組成物に望ましい稠度を提供するため、使用の際に望ましい能動的な放出特質を提供するため、貯蔵安定性を提供するため、及び組成物の安定性を提供するなどのために、増粘剤を添加する。好適な増粘剤には、1種の又は混合物のカルボキシビニルポリマー類、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、天然及び合成粘土類(例えば、ビーガム及びラポナイト)、並びにセルロースエーテル類の水溶性塩、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムが挙げられる。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム及びトラガカントゴムのような天然ゴム類も使用することができる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は超微粒子状シリカが、増粘剤の一部として使用できる。
【0096】
増粘剤又はゲル化剤として有用な、好適なカルボキシビニルポリマーとしては、ペンタエリスリトールのアルキルエーテル又はスクロースのアルキルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマーである、カルボマーが挙げられる。カルボマーは、カルボポール934、940、941、956、及びそれらの混合物などのカルボポール(Carbopol)(登録商標)シリーズとして、BFグッドリッチ(B.F.Goodrich)から市販されている。
【0097】
練り歯磨き又は歯磨きジェル全組成物の約0.1重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、より好ましくは約4重量%〜約8重量%の量で典型的に存在する増粘剤を使用することができる。チューインガム、薬用キャンディー及び口臭予防用ミント、小袋、非研磨ゲル及び歯肉縁下ゲルには、より高濃度で使用することができる。
【0098】
湿潤剤(humectant)
本組成物のその他任意のキャリア物質は、保湿剤である。保湿剤は、練り歯磨き組成物が空気に曝されて硬化しないように保ち、口への潤い感を組成物に与え、特定の保湿剤では、練り歯磨き組成物に望ましい甘い香味を付与するのに役立つ。保湿剤は、純保湿剤を基準にすると、一般に本明細書の組成物の約0重量%〜約70重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%含まれる。本発明の組成物における使用に好適な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びトリメチルグリシンのような食用多価アルコール類が挙げられる。
【0099】
種々のキャリア物質
商業的に好適な口腔用組成物の調製に用いられる水は、好ましくは、イオン含量が少なく、有機不純物を含まないべきである。水は本明細書の水性組成物の約99重量%まで含まれてよい。この水の量は、添加される遊離水に加えて、ソルビトールのような他の物質と共に導入される水を包含する。
【0100】
本発明にはまた、アルカリ金属重炭酸塩を包含してもよく、研磨、脱臭、pHの緩衝及び調整を含むいくつかの機能を提供できる。アルカリ金属重炭酸塩類は水に可溶性であり、安定化されていない場合には、水性系で二酸化炭素を放出する傾向がある。重炭酸ナトリウムは重曹としても知られ、一般に使用されるアルカリ金属重炭酸塩である。本組成物は、約0.5%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約15%、最も好ましくは約0.5%〜約5%のアルカリ金属重炭酸塩を含有してもよい。
【0101】
本発明の組成物のpHを、緩衝剤を用いて調整してもよい。緩衝剤とは、本明細書で使用するとき、口内リンス剤及び歯科用溶液のような水性組成物のpHを、好ましくは約pH 4.0〜約pH 8.0の範囲に調整するために用いることができる剤を指す。緩衝剤には、重炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は典型的に、本発明の組成物の約0.5重量%〜約10重量%の濃度で包含される。
【0102】
ポロキサマーを本組成物に使用してもよい。ポロキサマーは、非イオン性界面活性剤に分類され、乳化剤、結合剤、安定剤、及びその他関連する機能性剤としても作用してよい。ポロキサマーは、一級ヒドロキシル基で終端をなす二官能性ブロックポリマーであり、分子量が1,000〜15,000の範囲である。ポロキサマーは、BASFによりプルロニクス(Pluronics)及びプルラフロ(Pluraflo)の商品名で販売されている。本発明に好適なポロキサマーは、ポロキサマー(Poloxamer)407及びプルラフロ(Pluraflo)L4370である。
【0103】
本組成物で使用し得るその他の乳化剤としては、高分子乳化剤、例えばB.F.Goodrichから入手可能なPemulen(登録商標)シリーズが挙げられ、これは主に、疎水性物質に対する乳化剤として有用な高分子量ポリアクリル酸ポリマーである。
【0104】
二酸化チタンもまた本組成物に添加されてもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは一般に、歯磨剤組成物の約0.25重量%〜約5重量%含む。
【0105】
本組成物中に使用してもよい他の任意の剤としては、肯定的な歯感効果をもたらすのに役立つ、C12〜C20のアルキルジメチコンコポリオール及びそれらの混合物のようなアルキル−及びアルコキシ−ジメチコンコポリオールから選択されるジメチコンコポリオールが挙げられる。非常に好ましいものは、商品名エービル(Abil)EM90で市販されているセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは、約0.01重量%〜約25重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約1.5重量%の濃度で存在してよい。
【0106】
使用方法
本明細書の使用方法は、被験体の歯のエナメル質表面及び粘膜に、本発明による口腔用組成物を接触させることを含む。処理方法は、歯磨剤を用いたブラッシング、又は歯磨剤スラリー若しくは口内リンス剤を用いるすすぎによってもよい。他の方法としては、局所用口腔ゲル、義歯製品、口腔スプレー、又は他の形態を、被験体の歯及び口腔粘膜に接触させることが挙げられる。対象者は、その口腔を口腔用組成物で接触させる、任意のヒト又は他の動物であってよい。「動物」とは、家庭用ペット若しくは他の家畜、又は捕獲されている動物を含むことを意味する。
【0107】
例えば処理方法としては、歯磨剤組成物の1種を用いてヒトがイヌの歯をブラッシングすることを含んでよい。別の例には、利益を確認するのに十分な時間、ネコの口を口腔用組成物ですすぐことが挙げられる。ペットのケア製品、例えばチューズ(chews、かんでよい犬用おもちゃ)及びおもちゃを、本口腔用組成物を含有するように配合してもよい。組成物は、生皮、天然繊維又は合成繊維製でできたロープ、及びナイロン、ポリエステル又は熱可塑性ポリウレタン製の高分子物品のような、比較的柔軟であるが強くて耐久性のある材料に組み込まれ得る。動物が製品を噛み、なめ又はかじる時に、組み込まれた活性要素が動物の口腔内の唾液媒体内に放出され、効果的なブラッシング又はすすぎに匹敵する。
【0108】
本発明の一実施形態では、使用方法は、冷感剤を含有する歯磨剤で歯を磨き、続いてその冷感剤に対する増強剤を含有するリンス剤ですすぐことを含むレジメンを伴う。あるいは、歯磨剤が増強剤を含有し、リンス剤が冷感剤を含有してもよい。このレジメン方法は、例えば、カルシウムイオン源などの増強剤が歯磨剤若しくはリンス剤のいずれかの成分と安定性の問題を呈する可能性がある場合、又は増強効果の開始を遅らせることが望まれる場合に有利である。加えて、すすぎは、冷感剤及び増強剤を口内中に確実に分配し、口全体における爽やかな冷涼感をもたらすであろう。別の実施形態では、レジメンは、カルシウムイオン源及び/又はカルシウム移動剤を含有する製品で歯を磨くかすすぎ、続いて長続きする冷涼感を供給するための冷感剤を含有するガムを噛むこと又はドロップをなめることを含む。あるいは、冷感剤及び増強剤が、レジメンで使用される全ての製品に存在してもよい。
【実施例】
【0109】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明し、かつ、実証する。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの多くの変形例が発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく可能であるので、本発明の制限として解釈されるべきではない。組成物の成分は、特に指示がない限り重量%で示される。
【0110】
実施例I口内リンス剤組成物
従来の方法を利用して作製された本発明による口内リンス剤組成物(Ia、Ib及びId〜Ij)、及び比較例Icを、以下に成分の量(重量%)と共に示す。かなり低濃度のG−180冷感剤(22.5ppm及び12.75ppm)及び約90ppmのカルシウムイオンを含有する組成物Ia及びIbは、少なくとも30分間持続する冷涼感を提供するとして、官能検査において評価された。ちなみに、冷感剤としてメントールのみを含有し、G−180及びカルシウムを含有しない口内リンス製剤(Ic)は、低レベルの冷涼をより短い期間提供した。これらの製剤に関する様々な時点での冷涼感のスコアを、以下に示す。口内リンス製剤が、加温効果をもたらすエタノールを含有し、そのため冷涼の強さが低下することが予想されることを考えると、カルシウムの増強効果は、更により有意である。
【表4】

【表5】

香味は約31.3%のメントールを含んで、約500ppmのメントールを供給する。
ペパーミント油中7.5%溶液としてGivaudanにより供給されるG−180。
Rhodiaにより供給されるラウレスリン酸ナトリウム
【0111】
実施例II過酸化物口内リンス剤組成物
過酸化物を含有する、本発明による口内リンス剤組成物(IIa〜IIf)を、以下に成分の量(重量%)と共に示す。これらの組成物は従来の方法を用いて作製する。口内リンス剤組成物は、使用中に心地よくインパクトの強いミント味及び顕著な長続きする爽やかな息を提供する。
【表6】

ペパーミント油中7.5%溶液としてGivaudanにより供給されるG−180。
人工ミントフレーバは、サリチル酸メチル、ケイ皮アルコール、ユーカリプトール、メントン及び他の香味剤を含む。天然油(例えば、ペパーミント、アニス、クローブ芽油、レンタカンバ)を含むミントフレーバを、人工ミントフレーバの代わりに用いてよい。
ポリリン酸塩は、Astarisにより供給されるGlass H(n≒21)である。
【0112】
実施例III二相歯磨剤組成物
本発明による二相歯磨剤組成物は、好ましくは50:50の割合で分配される、カルシウムイオン源を含有する第1の歯磨剤組成物(IIIa〜IIIc)及びフッ化物などのカルシウムと相互作用し得る成分を含有する第2の歯磨剤組成物(IIId〜IIIf)からなる。冷感剤は、第1の歯磨剤組成物にあっても第2の歯磨剤組成物にあってもよい。これらの組成物は従来の方法を用いて作製する。
【表7】

人工ミントフレーバは、サリチル酸メチル、ケイ皮アルコール、ユーカリプトール、メントン及び他の香味剤を含む。天然油(例えば、ペパーミント、アニス、クローブ芽油、レンタカンバ)を含むミントフレーバを、人工ミントフレーバの代わりに用いてよい。
ペパーミント油中7.5%溶液としてGivaudanにより供給されるG−180。
【0113】
実施例IV歯磨剤組成物
実施例IVA〜IVKは、本発明による歯磨剤組成物を説明する。本組成物は、従来の方法を用いて調製され得る。
【表8】

Rhodiaにより供給されるラウレスリン酸ナトリウム
【表9】

【0114】
実施例V歯磨剤+リンス剤レジメン
実施例Vは、冷感剤を含有する歯磨剤と増強剤を含有する口内リンス剤とを含むレジメンを説明する。本レジメンは、まず歯磨剤で歯を磨き、続いて口内リンス剤で又は口内リンス剤の混合物でうがいすることを伴い得る。
【表10】

【0115】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、毛髪、口腔及びその他の粘膜表面で使用されるパーソナルケア組成物、並びに香味組成物又は香料組成物に組み込まれる1つ以上の冷感剤の活性を強化及び/又は調節する方法であって、前記パーソナルケア組成物、香味組成物及び香料組成物をカルシウムイオン源及び/又はカルシウム移動剤と共に処方する工程を含み、前記組成物が、使用の際に15分間より長く持続する心地よく新鮮な冷涼感を直ちに開始させる、方法。
【請求項2】
強化された活性を有する前記1つ以上の冷感剤が、非メントール冷感剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非メントール冷感剤が、カルボキシ、カルボキサミド、ケタール、ケトン、エステル、エーテル、及びアルコールのうちの1つ以上を含む官能基を含有するメントール誘導体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
メントールを前記組成物に組み込む工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
皮膚、毛髪、口腔及びその他の粘膜表面で使用されるパーソナルケア組成物であって、
(a)1つ以上の非メントール冷感剤を含む香味組成物又は香料組成物と、
(b)前記非メントール冷感剤によってもたらされる冷涼及びその他の感覚経験を増強及び/又は調節するのに十分な量のカルシウムイオン源及び/又はカルシウム移動剤と、
(c)生理学的に受容可能なキャリアと、
を含む、パーソナルケア組成物。
【請求項6】
口腔ケアに用いるための組成物であって、
(a)1つ以上の非メントール冷感剤を含む香味組成物と、
(b)前記非メントール冷感剤によってもたらされる冷涼及び清涼感を増強及び/又は調節するのに十分な量のカルシウムイオン源及び/又はカルシウム移動剤と、
(c)経口で受容可能なキャリアと、
を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記非メントール冷感剤が、カルボキシ、カルボキサミド、ケタール、ケトン、エステル、エーテル、及びアルコールから選択される1つ以上の官能基を前記組成物の少なくとも0.001重量%の濃度で含有するメントール誘導体である、請求項6に記載の口腔ケアに用いるための組成物。
【請求項8】
前記非メントール冷感剤が、メントングリセロールアセタール(MGA)、N−(4−シアノメチルフェニル)−ρ−メンタンカルボキサミド、2−イソプロピル−N,2,3−トリメチルブチルアミド(WS−23)、N−エチル−ρ−メンタン−3−カルボキサミド(WS−3)、エチル3−(ρ−メンタン−カルボキサミド)アセテート(WS−5)、メンチルラクテート、メントキシプロパン−1,2−ジオール、ρ−メンタン−3,8−ジオール、イソプレゴール及びこれらの混合物のうちの1つ又は混合物から選択される、請求項6に記載の口腔ケアに用いるための組成物。
【請求項9】
前記カルシウムイオン源が、前記組成物に少なくとも10ppmのCa+2イオン、好ましくは少なくとも50ppmのCa+2イオン、より好ましくは少なくとも100ppmのCa+2イオンを提供する無機又は有機カルシウム塩である、請求項6に記載の口腔ケアに用いるための組成物。
【請求項10】
前記カルシウム移動剤が、前記組成物の少なくとも0.1重量%の濃度でフィチン酸塩;有機リン酸モノ、ジ、又はトリエステル;ポリカルボキシレート;アルカリ金属、アルカリ土類金属又はそれらのアンモニウム塩及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の口腔ケアに用いるための組成物。
【請求項11】
メントールを前記組成物の少なくとも0.01重量%の濃度で更に含む、請求項6に記載の口腔ケアに用いるための組成物。

【公表番号】特表2012−508741(P2012−508741A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536354(P2011−536354)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/057785
【国際公開番号】WO2010/059289
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】