説明

冷温枕付き浴槽

【課題】人体の頭又は首の据え置き高さを従来よりも低くでき、浴槽につかりながら安楽な姿勢で且つ快適に頭又は首を暖めたり、冷却したりでき、これにより入浴時のリラックス効果及び肩こり解消効果が高い冷温枕付き浴槽を提供する。
【解決手段】浴槽1と、浴槽1のフランジ部2に埋め込まれて人体Aの頭又は首を載せる埋め込み型の枕本体3と、上記枕本体3内に温水又は冷水の少なくとも一方を供給する給湯・給水制御装置4とを備えた冷温枕付き浴槽である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温枕付き浴槽に関し、詳しくは浴槽につかりながら人体の頭又は首を冷やしたり温めたりするための枕本体を一体に備えた浴槽構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴槽1のフランジ部2の上方に突出するようにして設置される枕部30として、図3(a)に示すように、ステンレスパイプの中に温水又は冷水の配管を通し、配管を通過する液体の発熱を利用して、ステンレスパイプの表面を冷却したり、暖めたりする仕様が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、図3(b)に示すように、浴槽1のフランジ部2の上面から上方に盛り上げ形成したバス用枕部31内に温水又は冷水を通すようにした仕様も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
しかしながら上記特許文献1〜4に見られる従来例にあっては、内部配管からの発熱を間接的に利用した方式であるため、人体Aの頭の冷やし効果又は暖め効果が極めて低く、しかも枕部30,31の表面はステンレス等の硬い材質であるため、快適さの点でも不十分である。そのうえ、浴槽1のフランジ部2の上方に突出して追加する設計構造となっているため、人体Aの頭又は首の据え置き高さが高く、結果として図3(a)、(b)に示すように、自然体での入浴が阻害されるという問題が指摘されていた。特に、大きな浴槽1を選択した場合は、人体Aの頭又は首を枕部30,31に載せるためには、姿勢を正さないといけないものであり、またこの姿勢では体を浴槽1に深くまでつけることができないため、リラックス効果や温まり効果が十分に期待できないという課題を有していた。そのうえ枕部30,31を使用しないときは、入浴に際して邪魔になったり、風呂蓋をフランジ部2上面に載せる際に邪魔になるといった課題も有していた。
【特許文献1】実開平5−9385号公報
【特許文献2】特公平7−121273号公報
【特許文献3】特開2005−177220号公報
【特許文献4】実開平5−55983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、人体の頭又は首の据え置き高さを従来よりも低くでき、浴槽につかりながら安楽な姿勢で且つ快適に頭又は首を暖めたり、冷却したりでき、これにより入浴時のリラックス効果及び肩こり解消効果を高めることが可能となった冷温枕付き浴槽を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、浴槽1と、浴槽1のフランジ部2に埋め込まれて人体Aの頭又は首を載せる埋め込み型の枕本体3と、上記枕本体3内に温水又は冷水の少なくとも一方を供給する給湯・給水制御装置4とを備えていることを特徴としている。
【0006】
このような構成とすることで、枕本体3が浴槽1のフランジ部2の上方に突出しなくなり、人体Aの頭又は首の据え置き高さを従来よりも低くでき、浴槽1につかりながら安楽な姿勢で且つ快適に枕本体3を使用できる。また大きな浴槽1を選択した場合であっても、人体Aの頭又は首を枕本体3に載せる際に姿勢を正さなくてもよいものであり、それでいて、人体Aを浴槽1に深くまでつけることができるようになるので、リラックス効果や温まり効果が十分に期待できるようになる。
【0007】
また、上記給湯・給水制御装置4は、枕本体3内に温水又は冷水のいずれか一方を切り換えて供給するための切換バルブを備えているのが好ましく、この場合、切換バルブの切り換え操作によって枕本体3内への温水又は冷水のいずれか一方を供給できるようになる。
【0008】
また、上記給湯・給水制御装置4は、枕本体3内の温水と冷水とを交互に入れ替えて供給するための肩こり解消モードを備えているのが好ましく、この場合、冷水と温水との体感温度差を利用して筋肉の緊張・弛緩運動を促し、血行を良くすることができ、肩こり解消効果をより一層高めることができる。
【0009】
また、上記枕本体3の表面が熱伝導部材5からなると共に、熱伝導部材5の人体Aの頭又は首を載せる部分の上面に軟質部材6を重ねて構成されているのが好ましく、この場合、人体Aの頭又は首を柔らかく支持できると共に、頭或いは首との接触面積を増やすことができるため、より高い冷温効果と快適な使用感が得られるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、埋め込み型の枕本体に温水又は冷水の少なくとも一方を供給するようにしたので、人体の頭又は首の据え置き高さを従来よりも低くでき、浴槽につかりながら安楽な姿勢で且つ快適に頭又は首を暖めたり、冷却したりできる結果、入浴時のリラックス効果及び肩こり解消効果を高めることができる冷温枕付き浴槽を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
本実施形態の冷温枕付き浴槽は、図1に示すように、浴槽1と、浴槽1のフランジ部2に埋め込まれて人体Aの頭又は首を載せる枕本体3と、枕本体3内に温水又は冷水の少なくとも一方を供給する給湯・給水制御装置4とで構成される。
【0013】
浴槽1の上端縁から外側方に突出するフランジ部2のうち、浴槽1につかった人の頭が配置される側のフランジ部2の中央部分には、フランジ部2よりも低く凹んだ埋込凹部7が凹設されている。埋込凹部7は枕本体3の裏面形状に近い曲面形状で凹んでおり、この埋込凹部7内に枕本体3を埋め込んだ状態で、フランジ部2の上面と枕本体3の周縁部上面とが略面一に連続するような形状をしている。なお図1中の10は給水用一次配管、13は給湯用一次配管、70は電源ケーブル、71はセンサーケーブル、72は天井接続電源ケーブルである。
【0014】
上記埋込凹部7に埋め込まれる枕本体3は、人体Aの頭又は首を載せるための袋体で構成されており、図2(a)(b)に示すように、枕本体3の背面に設けた給湯口3a、給水口3bは、埋込凹部7の背部を貫通して給湯用二次配管12の一端、給水用二次配管15の一端に個別に接続されており、枕本体3の底面に設けた排水口3cは、埋込凹部7の底部を貫通して排水管9の一端に接続されている。枕本体3の上面は、図1のように人体Aの顔を斜め前方に起こした状態で人体Aの頭又は首を背後から保持できるような傾斜面状をしており、これにより最も楽な入浴姿勢をとりながら枕本体3を使用できるようにしてある。この枕本体3の外郭部は、例えば図2(b)に示すように熱伝導部材5からなると共に、熱伝導部材5における人体Aの頭又は首を載せる上面部分に軟質部材6が重ねて固着されている。
【0015】
上記枕本体3には、温水又は冷水の少なくとも一方を供給するための給湯・給水制御装置4が接続される。給湯・給水制御装置4は、フランジ部2の下方空間における浴槽1の外部スペースに設置される制御ボックス8に内蔵されている。給湯・給水制御装置4は、給湯用一次配管10からの温水と給水用一次配管13からの冷水とを切り換えるための電磁弁からなる切換バルブ(図示せず)を備えており、図2に示す浴室壁面に設置したコントローラ17による切換バルブの切り換え操作によって枕本体3内に温水又は冷水のいずれか一方、或いは温水と冷水とを交互に供給できる仕組みとなっている。なお、コントローラ17には、後述する3つのモードを選択する操作釦と当該選択されたモードを表示する表示部とが設けられている。
【0016】
本例の給湯・給水制御装置4は、枕本体3内に温水を供給する暖めモードと、枕本体3内に冷水を供給する冷やしモードと、温水と冷水とを交互に入れ替えて供給する肩こり解消モードとが予め設定されている。ここで、冷やしモードでは、例えば5℃の冷水を供給するモードであり、冷水が枕本体3内を循環することで、枕本体3は冷却枕としての機能を発揮する。暖めモードでは、例えば40℃の温水を選択するモードであり、枕本体3は温熱枕としての機能を発揮する。肩こり解消モードでは、温水と冷水とを交互に入れ替えて供給することで枕本体3の表面温度に変化をもたせるためのものであり、例えば所定時間にて温水と冷水とを切り換えて供給するタイマー手段を内蔵しており、冷水と温水とが所定時間(例えば3分間)サイクルで自動的に入れ替わるようにしている。さらに枕本体3に温度センサーを付設し、温度センサーからの検知温度に応じて供給する湯水の温度をフィードバック制御する構成とするのが好ましい。なお、使用後には排水釦の操作によって枕本体3内の使用後の水が枕本体3の排水口から排水管9を経て排出される。
【0017】
しかして上記構成の枕本体3は、従来のように浴槽1のフランジ部2の上方に突出して配置されるものではなく、フランジ部2に設けた埋込凹部7内にフランジ部2と略面一となるように埋め込まれるものであるから、人体Aの頭又は首の据え置き高さを従来よりも低くなり、浴槽1につかりながら安楽な姿勢で且つ快適に枕本体3を使用して入浴することができるようになり、自然体で入浴しながら枕本体3による冷却・暖め効果を高めることができる。特に、大きな浴槽1を選択した場合であっても、人体Aの頭又は首を枕本体3に載せる際に姿勢を正さなくてもよいものであり、それでいて、人体Aを浴槽1に深くまでつけることができるようになるので、リラックス効果や温まり効果が十分に期待できることとなり、結果、入浴時のリラックス効果をより高めることができと共に、肩こり解消機能に優れた効果が得られる。さらに、枕本体3をフランジ部2と面一に埋め込むことにより、枕本体3を使用しないときは枕本体3がフランジ部2の上方に突出していないため、入浴に際して枕本体3が邪魔にならないという利点や、風呂蓋をフランジ部2上面に載置する際に枕本体3が邪魔にならないという利点もある。
【0018】
また、枕本体3の人体Aの頭又は首を載せる部分の上面には軟質部材6を重ねて配置されているので、人体Aの頭又は首を柔らかく支持できると共に、頭或いは首との接触面積を増やすことができるため、より高い冷温効果と快適な使用感を得ることができる利点がある。
【0019】
また、浴室壁に設置したコントローラ17の操作により、冷やしモードと暖めモードと肩こり解消モードとを選択自在となっている。冷やしモードでは、入浴者の頭或いは首を冷やして、のぼせを防止でき、快適な入浴環境が得られ、リラックスタイムを長く楽しむことができるものであり、夏場でも風呂に入ることが億劫でなくなる。一方、暖めモードでは、冷え性の人が全身で温まりたい時に有効である。また肩こり解消モードでは、温水と冷水を交互に入れ替えることで枕本体3の体感温度差を利用して筋肉の緊張・弛緩運動を促し、血行を良くすることができるものであり、これはサウナ浴と水風呂とを交互にする場合と同様の原理であり、血行改善により肩こり解消がより一層図られるものである。
【0020】
さらに本例では、埋込凹部7の外部から見えない枕本体3の裏面側に給湯・給水経路及び排水経路を設けたことにより、枕本体3の外観が良くなる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の冷温枕付き浴槽の使用例を説明する側面断面図である。
【図2】(a)は同上の枕本体及び給湯・給水制御装置を説明する概略斜視図であり、(b)は同上の枕本体の縦断面図である。
【図3】(a)は従来のバス用パイプ枕を使用した場合の入浴体勢の一例を示し、(b)は他の従来例の入浴体勢を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 浴槽
2 フランジ部
3 枕本体
4 給湯・給水制御装置
5 熱伝導部材
6 軟質部材
A 人体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、浴槽のフランジ部に埋め込まれて人体の頭又は首を載せる埋め込み型の枕本体と、上記枕本体内に温水又は冷水の少なくとも一方を供給する給湯・給水制御装置とを備えていることを特徴とする冷温枕付き浴槽。
【請求項2】
上記給湯・給水制御装置は、枕本体内に温水又は冷水のいずれか一方を切り換えて供給するための切換バルブを備えていることを特徴とする請求項1記載の冷温枕付き浴槽。
【請求項3】
上記給湯・給水制御装置は、枕本体内の温水と冷水とを交互に入れ替えて供給するための肩こり解消モードを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷温枕付き浴槽。
【請求項4】
上記枕本体の表面が熱伝導部材からなると共に、熱伝導部材の人体の頭又は首を載せる部分の上面に軟質部材を重ねて構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の冷温枕付き浴槽。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−183056(P2008−183056A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17066(P2007−17066)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(505154956)松下電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】