説明

冷熱パッド

【課題】使用中に所定位置からズレてしまうことなく、冷熱機能を有するパッドを提供する。
【解決手段】厚さ4〜12mmのポリウレタンフォームの表裏面にシート材料を有し、シート材料の外縁部が接合され、ポリウレタンフォームを密封したパッドであり、ポリウレタンフォームには、粘度30〜600cpsの溶液が、ポリウレタンフォームの体積の70〜120%容量で含浸されており、ポリウレタンフォームが固定手段によってパッド内に固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドや枕用等に幅広く使用でき、人体における適用部位に冷熱効果を付与することができるパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体に冷熱効果を与える目的で、ゾルパッドが提案されている。しかし、ゾルパッドは保形性が悪く、ゾルパッドに体圧がかかった際、その体圧部分以外にゾルが移動してしまう。その結果、ゾルが存在せずに冷熱効果のない部分が生じてしまう問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、不織布に水溶性有機化合物からなるゾルを含浸させた冷却シート状物(特許文献1等参照)や、スポンジまたは発泡体に水を含浸させた水パッド(特許文献2等参照)が提案されてきている。
【0004】
しかし、これらは、不織布(特許文献1)やスポンジまたは発泡体(特許文献2)が、固定されておらず、持ち運び時等の傾けた際に、不織布に含浸させたゾル(特許文献1)やスポンジまたは発泡体に含浸させた水(特許文献2)の重さによって、不織布(特許文献1)やスポンジまたは発泡体(特許文献2)が所定位置からズレたり、不織布(特許文献1)やスポンジまたは発泡体(特許文献2)におけるゾル(特許文献1)や水(特許文献2)の偏りが生じるものであった。
【0005】
また、特に特許文献2においては、粘性の極めて低い水がスポンジまたは発泡体に充填されているものであるため、スポンジまたは発泡体内での保水性が悪く、体圧がかかった際、その体圧部分以外に水が移動することで、スポンジまたは発泡体における水の偏りが生じ、使用感を悪化させるものであった。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、特許文献3には、パッドとして、含水ゲルを用いて、扁平状袋体内に密封するものであり、この際、扁平状袋体を構成するフィルムないしシートの周縁部以外に、扁平状袋体の適宜箇所を接合して、含水ゲルの移動、偏りを抑制する接合部を形成している記載がある。
【0007】
しかしながら、特許文献3で用いているようなゲルは、保形性がよい一方、一点に集中的な圧力が加わると、その圧力を加えた部分が裂けやすい問題がある。また、裂けた場合、裂けた部分は復元することがなく、その部分は冷熱効果がなくなり、場合によっては、分裂したゲル同士が重なり合って、パッドとしての使用感を低下させる問題がある。また、上記接合部を形成したとしても、接合部付近のゲルが裂けた場合には、接合部としての機能が発揮されず、ゲルの移動、偏りが生じる問題がある。
【特許文献1】登録実用新案3054298号公報
【特許文献2】特開2007−75619号公報
【特許文献3】特開2002−233442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、パッドを傾けた際にポリウレタンフォームがパッド内の所定位置から重さによりズレることがないものであり、パッドの一点に集中的な圧力がかかったとしても、裂け等の影響がなく、人体に馴染み、使用感に優れ、好適に人体へ冷熱効果を付与できる冷熱機能を有するパッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、厚さ4〜12mmのポリウレタンフォームの表裏面にシート材料を有し、シート材料の外縁部が接合され、ポリウレタンフォームを密封したパッドであり、ポリウレタンフォームには、粘度30〜600cpsの溶液が、ポリウレタンフォームの体積の70〜120%容量で含浸されており、ポリウレタンフォームが固定手段によってパッド内に固定されていることを特徴とする冷熱パッドを要旨とするものである。
【0010】
こうすることで、パッドを傾けた際に、溶液を含浸させたポリウレタンフォームの重さによる所定位置からのズレを防ぐだけでなく、パッドの一点に集中的な圧力がかかったとしてもポリウレタンフォームを用いているため、裂け等の影響がなく、前記溶液により、人体に馴染み、使用感に優れ、好適に人体へ冷熱効果を付与することができるものである。
【0011】
なお、固定手段として、ポリウレタンフォームの少なくとも一箇所に貫通孔を設け、その部分において、シート材料の上下面を接合することが好ましく、この方法では、ポリウレタンフォームが直接シート材料に固定されていないため、体圧がかかった際、ポリウレタンフォームに過度の負担がかからず、破損等を防止するものである。
【0012】
また、ポリウレタンフォームの少なくとも一方の面に織布、編布、不織布のいずれかが積層されていることが好ましく、こうすることで、ポリウレタンフォームのみを用いた場合に比べ、ポリウレタンフォームの強度を向上させることができるものである。
【0013】
さらに、パッドの長さ方向のポリウレタンフォームが少なくとも二つ以上に分割され、分割される部分において、シート材料の上下面が接合されていることが好ましく、こうすることで、分割される部分で、パッドを折り畳むことが可能であり、持ち運び等の取り扱い性に優れるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ポリウレタンフォームの表裏面にシート材料を有し、シート材料の外縁部が接合され、ポリウレタンフォームを密封したパッドであり、ポリウレタンフォームが固定手段によってパッド内に固定されているため、パッドを傾けた際に、溶液を含浸させたポリウレタンフォームの重さによる所定位置からのズレを防ぐことができ、パッドの一点に集中的な圧力がかかったとしてもポリウレタンフォームを用いているため、裂け等の影響がなく、好適に人体へ冷熱効果を付与することができる。また、本発明においては、ポリウレタンフォームに粘度30〜600cpsの溶液が、ポリウレタンフォームの体積の70〜120%容量で含浸され、ポリウレタンフォーム内に保たれている状態であるため、この所定の粘度及び容量の溶液によって、パッドを傾けた際でも、溶液の偏りが生じることなく、パッドに体圧がかかった際、パッドが人体に馴染みやすく、フィット感に優れ、使用感に優れる効果を奏するものである。なお、冷熱効果は、前記溶液によって得られるものである。
【0015】
また、ポリウレタンフォームをパッド内に固定する手段としては、ポリウレタンフォームの少なくとも一箇所に貫通孔を設け、その部分において、シート材料の上下面を接合することが好ましく、この方法を採ることで、ポリウレタンフォームが直接シート材料に固定されていないため、体圧がかかった際、ポリウレタンフォームに過度の負担がかからず、破損等を防止する効果を奏するものである。
【0016】
また、ポリウレタンフォームの少なくとも一方の面に織布、編布、不織布のいずれかが積層されていることが好ましく、ポリウレタンフォームのみを用いた場合に比べ、ポリウレタンフォームの強度を向上させることができる効果を奏するものである。
【0017】
さらに、パッドの長さ方向のポリウレタンフォームが少なくとも二つ以上に分割され、分割される部分において、シート材料の上下面が接合されていることが好ましく、分割される部分で、パッドを折り畳むことが可能であり、持ち運び等の取り扱い性に優れる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のパッドの実施形態について、図1の平面図及び図2の断面図により説明する。図1及び図2は、冷熱機能を有するパッド1を示し、2はシート材料、3は溶液を含浸させたポリウレタンフォーム、4はシート材料の接合部を示すものである。
【0019】
前記ポリウレタンフォーム(以下、フォームと記す)としては、前記溶液の含浸容易性の面から親水性フォームであることが好ましい。親水性フォームは、通常、ポリエチレンオキサイド及びエチレンオキサイドを、グリセリン等を開始剤として用い、開環付加重合させたポリオールと、発泡剤、触媒、整泡剤等を加え、ポリイソシアネートと反応させるものである。
【0020】
フォームは、JIS K 6400(1997)のA法に準拠する方法で測定した硬さが80〜150Nであることが好ましく、この範囲であれば、臥床時に違和感を与えず、使用感を損なわない効果を奏するものである。しかし、80N未満の場合には、使用するフォームが薄いもの程、底付きにより体圧分散性を損なうとともに、冷熱効果を妨げるおそれがあり、150Nを超えると、硬さを感じ、使用感を阻害するおそれがあるので好ましくない。
【0021】
また、フォームの厚さとしては、4〜12mmであり、この範囲であれば、前記溶液を含浸させた際、使用感に優れ、効果的に冷熱効果を得ることができる。
【0022】
フォームの厚さが4mm未満の場合には、前記溶液を含浸させたとしても、厚みが足りず、十分な冷熱効果を得ることができないおそれがあるので好ましくない。一方、フォームの厚さが12mmを超えると、含浸させる前記溶液の必要量が多くなり、コスト高になるばかりか、重くなって取り扱い性が低下したり、厚くなりすぎて違和感が生じたり、使用感が悪化したりするおそれがあるので好ましくない。
【0023】
フォームが密封されるシート材料としては、柔軟且つ丈夫で、使用中に破れて、前記溶液が漏れたりしないものであれば、特に限定されるものではない。
【0024】
前記シート材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、天然ゴム、再生ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0025】
また、前記シート材料は、目的に応じて2層以上の積層体であってもよいが、その素材の選択にあたり、高周波融着性があり、透湿性の少ない材料が好ましい。
【0026】
前記シート材料の厚さとしては、0.05〜0.4mmが好ましく、この範囲であれば、柔軟性に優れ、丈夫で、使用中に破れて、前記溶液が漏れたりするおそれがない。
【0027】
厚さが0.05mm未満の場合には、成形時に厚さを均一にすることが困難になり、シート材料として、丈夫ではなく、使用中に破れて、前記溶液が漏れたり、品質が安定しないおそれがあるので好ましくない。一方、厚さが0.4mmを超えると、柔軟性が低下して、パッド表面へのなじみ性が著しく低下すると共に、パッド表面の変形等に対する追従性が低下する上、ごわごわして風合いが悪くなるおそれがあるので好ましくない。
【0028】
なお、前記シート材料の形状としては特に限定されるものでなく、使用する目的や用途によって、適宜設定すればよく、例えば、長方形や略長方形のものが好ましく、そのほか、正方形、略正方形、楕円形、略楕円形、円形及び略円形等、種々の形状のものが好適に用いることができる。
【0029】
フォームに含浸させる前記溶液は、粘度が30〜600cpsであるものであり、この範囲にすることで、フォーム内への含浸作業性及び含浸後の保水効果が良くなり、さらに、パッドに体圧がかかった際、パッドが人体に馴染みやすく、フィット感を付与でき、使用感に優れるものである。なお、粘度はB型粘度計((株)トキメック)のNo.2ローター×30rpmで測定を行った。
【0030】
粘度が30cps未満の場合には、フォームの保水性が弱まり、パッドに体圧がかかった際、その体圧部分以外にフォームに含浸された溶液が移動し、フォームにおける溶液の偏りが生じ、使用感を悪化させるおそれがある。そのほか、パッドを傾けた際には、溶液の重さにより、フォームにおける溶液の偏りが生じるおそれがあるので好ましくない。
【0031】
一方、粘度が600cpsを超えると、前記溶液をフォームに含浸しづらくなり、生産性が悪化するおそれがあるので好ましくない。
【0032】
さらに、前記溶液がフォームの体積の70〜120%容量で含浸されるものであり、この範囲にすることで、溶液による十分な冷熱効果が得られるだけでなく、使用感も優れ、持ち運び等の取り扱い性においても優れる効果を奏する。
【0033】
フォームの体積の70%容量未満の場合には、溶液がフォーム全体に含浸されず、十分な冷熱効果が得られないおそれがあるので好ましくない。一方、フォームの体積の120%容量を超えると、フォーム内に含浸されない溶液が浮遊感をもたらし、使用感を悪化させるとともに、重くなることによる持ち運び等の取り扱い性悪化も懸念されるため好ましくない。
【0034】
なお、フォーム、シート材料及び後述するカバー体が不溶である前記溶液を用いることが好ましく、水、水溶性溶媒等の水系で流動性があるものが好ましい。また、本発明の粘度を得るために、粘性が付与される親水性ポリマーまたは疎水性ポリマー等を加えてもよい。
【0035】
水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類等が挙げられ、これらは二種以上併用することができる。
【0036】
親水性ポリマーとしては、ゼラチンもしくはゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、スチレン無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉もしくは澱粉誘導体、カラーギーナン、アラビアゴム、プルラン等が挙げられ、これらは二種以上併用することができる。
【0037】
疎水性ポリマーとしては、パラフィンワックス等が挙げられ、これらは二種以上併用することができる。
【0038】
前記溶液は、必要に応じて界面活性剤、防腐防黴剤、凍結防止剤及び酸化防止剤等を配合してもよい。
【0039】
界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩及びN−アシルアミノ産等のアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム及び塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン及び2−アルキル−N−ヒドロキシイミダゾリミウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレン型及び多価アルコールエステル型及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等の非イオン性界面活性剤、或いはモノラウリン酸ソルビタン等の高分子界面活性剤、天然界面活性剤等が挙げられる。
【0040】
防腐防黴剤としては、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)類、2−フェノキシエタノール、安息香酸及びその塩類、サルチル酸及びその塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、p−トルエンスルホン酸及びその塩、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩等及び防腐力を有する原料である多価アルコール類、中鎖脂肪酸やそのエステル類、グルセリン誘導体類、及びEDTA等のキレート剤等が挙げられる。
【0041】
凍結防止剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、尿素等が挙げられる。
【0042】
酸化防止剤としては、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系等が挙げられる。
【0043】
本発明におけるパッドは、はじめにフォームを、要求される形状に裁断し、裁断されたフォームの表裏面に、裁断されたフォームを密封できるだけの大きさの前記シート材料をセットし、裁断したフォームの外縁部に沿って、シート材料の上下面を熱融着、高周波融着、接着等して、接合することが好ましく、二枚のシート材料ではなく、一枚のシート材料から形成してもよい。この際、形成されたパッドには前記溶液を投入するため、好ましくはパッドの外縁部に、少なくとも前記溶液を投入することが可能である大きさの開口部を設けておく必要がある。なお、図1におけるaで示したようなシート材料の外縁部における接合幅は、特に限定されるものではないが、3〜50mmが好ましい範囲であり、この範囲にすることで、接合部の耐久性は十分であり、生産作業性や、本発明のパッドの使用には問題はないものの、3mm未満の場合には、接合部の耐久性が不十分であり、パッド使用時に剥離が生じるおそれがあり、50mmを超える場合には、生産作業性の悪化や、本発明のパッド使用中において、必要以上のシート材料の接合部が人体に触れることによる不快感が生じるおそれがあるので好ましくない。
【0044】
また、本発明は、パッドを傾けた際に、前記溶液を含浸させたフォームがパッド内の所定位置から、その重さによりズレないように、フォームをパッド内に固定する手段を有するものであり、その手段としては様々な方法を採ることができる。その方法としては、例えばフォームの少なくとも一箇所に貫通孔を設け、その部分において、シート材料の上下面を接合させる方法が好ましく、この方法は、フォームが直接シート材料に固定されていないため、体圧がかかった際、フォームに過度の負担がかからず、破損等を防止するものである。
【0045】
上述のような、フォームをパッド内に固定する方法の別の形態としては、接着剤として二液硬化型接着剤や、ホットメルト型接着剤等の、フォームに前記溶液を含浸させた際に影響を受けることがない接着剤を用いて、シート材料にフォームを接着して固定する方法や、フォームとシート材料とを糸等の連結部材で連結して固定する方法や、フォームとシート材料とを部分的に両面粘着テープで固定する方法等が挙げられるが、固定手段としては、これらに限定されるものではない。しかし、フォームの特性を十分に発揮するためには、シート材料に直接フォームを接着剤等により固定しない方が好ましい。
【0046】
フォームをパッド内に固定する手段として、フォームの少なくとも一箇所に貫通孔を設け、その部分において、シート材料の上下面を接合させる方法を採った場合には、貫通孔の形状としては、特に限定されるものではないが、パッドの大きさや全体の意匠性等を考慮して設定でき、例えば、円形や楕円形である。
【0047】
なお、フォームに設ける貫通孔の部分でシート材料の上下面を接合しているため、パッドにおける、その部分は外観上、窪んでいる。そのため、パッドとしてのデザインに優れ、意匠性の面においても好ましいものである。
【0048】
また、フォームに設ける貫通孔の数や大きさは、特に限定されるものではなく、製造するパッドの大きさ等によって、適宜設定することができる。貫通孔の数に関しては、例えば、ベッド用パッドとして用いる場合には、少なくとも4個以上設け、枕用パッドとして用いる場合には、少なくとも2個以上設けることが好ましく、これらの数以上を設ければ、フォームを固定するためには十分であり、これらの数未満の場合は、フォームを固定するには不十分である。また、貫通孔の大きさに関しては、全ての貫通孔の大きさの合計が、フォーム上面の全面積における1〜10%の範囲で設けることが好ましく、1%未満の場合には、フォームの固定が不十分になるおそれがあり、10%を超えると、フォームの面積が小さくなり、冷熱効果やクッション性が不十分となるおそれがあるので好ましくない。
【0049】
また、フォームに設ける貫通孔の位置においても、特に限定されるものではなく、製造するパッドの大きさ等によって、適宜設定することができるが、貫通孔はフォームの端部以外の内部に設けることが好ましく、例えば、ベッド用パッドとして用いる場合には、フォーム端部から5〜35cmに設け、枕用パッドとして用いる場合には、フォーム端部から5〜25cmに設けることが好ましく、これらの範囲に設ければ、効果的にフォームを固定することができるが、これらの範囲より小さい場合には、フォームの固定が効果的ではなく、これらの範囲より大きい場合には、フォーム端部の固定効果が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0050】
また、この方法を採る際には、貫通孔におけるシート材料の上下面を接合させた部分の周囲の内側に貫通孔を設けることで、貫通孔を通し、空気の流通が可能となり、パッドとして使用した場合に通気性を確保することができ、肌蒸れを緩和する効果を奏することができる。
【0051】
また、フォームを補強することを目的として、予めフォームの少なくとも一方の面に織布、編布、不織布のいずれかを積層しておくことが好ましい。積層方法としては、二液硬化型接着剤や、ホットメルト型接着剤等の、フォームに前記溶液を含浸させた際に影響を受けることがない接着剤を用いて積層させたり、フレームラミネート法等の公知の積層方法で積層される。
【0052】
前記織布、編布、不織布としては、ナイロン、ビニロン、ポリエスエル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維、綿、麻、絹等の天然繊維から選ばれた一種または二種以上の素材を用いて形成することが好ましい。
【0053】
また、フォームに前記織布、編布、不織布を積層する際の目付量としては、特に限定されるものではないが、具体的には、15〜50g/mが好ましく、この範囲であれば、好適にフォームの補強ができる効果を奏する。
【0054】
目付量として、15g/m未満の場合には、フォームの積層の際、接着剤の浸み出しによる積層加工上の不具合や、フォームの補強が不十分となり、要求される強度が得られないおそれがあるので好ましくない。一方、目付量として、50g/mを超えると、コスト高になるばかりか、フォームの柔軟性を阻害し、使用感を悪化させるおそれがあるので好ましくない。
【0055】
その後、設けた開口部から、パッド内に前記溶液を投入し、パッド内のフォームに前記溶液をほぼ均一に含浸させた後、熱融着、高周波融着、接着等して、設けた開口部を塞いでパッドを密封させるものである。なお、本発明における密封とは、パッド内を真空状態にするものではなく、フォームは通常の状態であり、パッド外に前記溶液が漏れることがないようにするものである。
【0056】
以上の過程を経ることによって本発明のパッドが得られ、フォームがパッド内において固定されているため、パッドを傾けた際に、溶液を含浸させたフォームの重さによる所定位置からのズレを防ぐことができ、パッドの一点に集中的な圧力がかかったとしてもフォームを用いているため、裂け等の影響がなく、好適に人体へ冷熱効果を付与することができる。また、フォームに粘度30〜600cpsの溶液が、フォームの体積の70〜120%容量で含浸され、フォーム内に保たれている状態であるため、パッドに体圧がかかった際、パッドが人体に馴染みやすく、フィット感に優れ、使用感が優れる効果を奏するものである。
【0057】
なお、パッドをシート材料からなるカバー体で包被且つ密封させることが好ましく、こうすることで、パッドを保護することができるだけでなく、もし、パッドを形成するシート材料が破けたとしても、パッドがカバー体で包被且つ密封されているため、カバー体外部に前記溶液が漏れることはなくなる。そのほか、カバー体で被覆することにより、装飾性を付加させるとともに透湿を軽減させる効果を奏するものである。
【0058】
カバー体をパッドに包被且つ密封する方法としては、熱融着、高周波融着、接着等して、パッドを形成するシート材料と共に外縁部等を接合することが好ましく、前記溶液を開口部から投入した後に行うことが好ましい。なお、フォームの固定手段として、フォームの少なくとも一箇所に貫通孔を設け、その部分において、パッドを形成するシート材料の上下面を接合する方法を採った場合には、カバー体を、前記貫通孔部分のパッドを形成するシート材料と一体に接合した後、その接合部分の周囲の内側に貫通孔を設けることで、貫通孔を通し、空気の流通が可能となり、パッドとして使用した場合に通気性を確保することができ、肌蒸れを緩和する効果を奏することができる。
【0059】
また、カバー体を形成するシート材料は、柔軟且つ丈夫で、前記溶液が漏れたりしないものであれば、特に限定されるものではないが、パッドを形成するシート材料と同様、高周波融着性があり、透湿性の少ない材料が好ましく、ボリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることができる。
【0060】
カバー体を形成するシート材料の厚さとしては、0.05〜0.2mmが好ましく、この範囲であれば、カバー体として十分な強度が得られ、且つ冷熱効果及び使用感を阻害するおそれがない。
【0061】
厚さが0.05mm未満の場合には、カバー体としての強度不足により、カバー体の本来の機能を損ねるおそれがあるので好ましくない。一方、厚さが0.2mmを超えると、パッドの冷熱効果や、風合が硬くなることにより、使用感を阻害するおそれがあるので好ましくない。
【0062】
なお、カバー体は、パッドの保護だけでなく、装飾等の目的を有するものであり、装飾の目的を考慮した場合、表面層にポリエステル、ナイロン、アクリル等の人工繊維及び綿、絹等の天然繊維から選ばれた一種または二種以上で構成された織布、編布、不織布のいずれかをシート材料に接着積層したものが好適に用いることができる。
【0063】
また、本発明においては、図3の実施形態のように、パッドの長さ方向のフォームが少なくとも二つ以上に分割され、分割される部分において、パッドを形成するシート材料の上下面が接合されていることが好ましい。なお、分割される部分のパッドの幅方向全域を接合させてもよいが、分割される部分のパッドの幅方向における適宜箇所を接合した場合には、各々分割されたフォーム間において、フォームに含浸される前記溶液が行き来することが可能であり、体圧の状況に左右されず、使用感を阻害することがない。
【0064】
また、カバー体を設ける場合もパッドを形成するシート材料とともに接合するものである。
【0065】
こうすることで、前記分割される部分で、パッドを折り畳むことが可能であり、取り扱い性に優れるため、好ましい形態である。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例等は、下記に示す測定方法及び評価方法が使用される。
(1)粘度の測定
B型粘度計((株)トキメック)のNo.2ローター×30rpmで測定を行った。
(2)硬さの測定
JIS K 6400(1997)のA法に準拠して行った。
(2)フォームのズレ防止
○:傾けた際にフォームが所定位置からズレなかった。
×:傾けた際にフォームが所定位置からズレた。
(3)フォームにかかる負担
○:パッドに体圧がかかった際、フォームにかかる負担は極めて低かった。
△:パッドに体圧がかかった際、フォームにかかる負担は低かった。
(4)パッドのフィット感
○:パッドに体圧がかかった際、パッドが人体に馴染み、フィット感に優れ、使用感が優れるものであった。
△:パッドに体圧がかかった際、パッドが人体にやや馴染み、フィット感があり、使用感が多少よいものであった。
×:パッドに体圧がかかった際、パッドが人体に馴染まず、フィット感がなく、使用感を悪化させるものであった。
(5)冷熱効果
○:パッド使用時に冷熱効果があった。
×:パッド使用時に冷熱効果がなかった。
(6)溶液の含浸容易性
○:溶液が、フォームに含浸し易かった。
△:溶液が、フォームにやや含浸しづらかった。
×:溶液が、フォームに含浸しづらく、生産性が悪化した。
(7)取り扱い性
○:取り扱い性に問題がなかった。
×:パッドとして非常に重く、取り扱い性に問題があった。
実施例1
(a)親水性フォーム
フォームとしては、アキレス(株)社製商品名JMを使用し、このフォームは、厚さ7mm、縦83.6cm×横36.8cm、硬さ100Nである。また、図1に示すように、フォームの縦方向の中心部及び中心部から縦方向の左右に22.5cm離れた部分に位置し、且つフォームの横方向の中心部から横方向の左右に10.0cm離れた部分の計6箇所に直径4cmの貫通孔を設けた。
(b)溶液含浸前のパッド
厚さ0.2mm、縦90.0cm×横40.8cmの長方形であるEVA製無孔シートを前記(a)において得られたフォームの表裏面にセットし、前記フォームの外縁部及び設けた貫通孔の部分において、そのEVA製無孔シート同士が重なるように二枚を重ね合わせ、その外縁部及び設けた貫通孔の部分を高周波融着することにより、パッドを得た。なお、この時点では、パッドを完全に密封せず、一部開口部を設けた。
(c)溶液含浸後のパッド
前記(b)において得られたパッドの開口部から、前記(a)において得られたフォームの体積の95%容量の溶液を投入すると共に、ロール等により均一にフォーム内に含浸及び空気抜きした後、開口部を高周波融着して密封することにより、本発明のパッドを得た。
【0067】
なお、前記溶液は、表1の組成であり、親水性ポリマーとしては、サンダイヤポリマー社製商品名「サンフレッシュST−500D」、防腐防黴剤としては、三愛石油社製商品名「サンアイバックFX」を用いた。なお、前記溶液の粘度は75cpsであった。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例2
実施例1において、フォームに貫通孔を設けず、フォームの一方の面をシート材料に接着剤を用いて固定した以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。なお、接着剤としては、大日本インキ化学工業社製商品名「クリスボン4010」、架橋剤としては、日本ポリウレタン工業社製商品名「コロネートL」を用いた。
実施例3
実施例1の(b)において得られたパッドの開口部から、 (a)において得られたフォームの体積の75%容量の溶液を投入した以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例4
実施例1の(b)において得られたパッドの開口部から、 (a)において得られたフォームの体積の115%容量の溶液を投入した以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例5
実施例1の(a)におけるフォームの厚さを5mmとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例6
実施例1の(a)におけるフォームの厚さを10mmとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例7
実施例1の(c)における、表1の組成のうち、親水性ポリマーの量を0.2重量部とし、溶液の粘度を40cpsとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例8
実施例1の(c)における、表1の組成のうち、親水性ポリマーの量を0.4重量部とし、溶液の粘度を400cpsとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例9
実施例1の(a)におけるフォームの硬さを85Nとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例10
実施例1の(a)におけるフォームの硬さを140Nとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例11
実施例1の(a)において、親水性ポリウレタンフォームの代わりに、厚さ7mm、縦83.6cm×横35.2cm、硬さ100Nである疎水性ポリウレタンフォーム(アキレス社製商品名「VD」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例12
実施例1の(a)におけるフォームの硬さを50Nとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
実施例13
実施例1の(a)におけるフォームの硬さを200Nとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例1
実施例1の(a)において得られるフォームに、貫通孔を設けない以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例2
実施例1の(b)において得られたパッドの開口部から、 (a)において得られたフォームの体積の60%容量の溶液を投入した以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例3
実施例1の(b)において得られたパッドの開口部から、 (a)において得られたフォームの体積の140%容量の溶液を投入した以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例4
実施例1の(a)におけるフォームの厚さを2mmとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例5
実施例1の(a)におけるフォームの厚さを20mmとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例6
実施例1の(c)における、表1の組成のうち、親水性ポリマーの量を0.1重量部とし、溶液の粘度を15cpsとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較例7
実施例1の(c)における、表1の組成のうち、親水性ポリマーの量を0.5重量部とし、溶液の粘度を1000cpsとした以外は、実施例1と同様にして、本発明のパッドを得た。
比較試験
比較試験の結果を表2〜4にまとめる。実施例1〜13は、フォームがパッド内に固定されているため、パッドを傾けた際に、溶液を含浸させたフォームの重さにより、所定位置からズレることがなく、好適に本発明のパッドを使用することができた。なお、フォームがシート材料に直接固定されていない実施例1,3〜13の場合は、フォームがシート材料に直接固定されている実施例2の場合に比べ、体圧がかかった際、フォームにかかる負担は低いものであった。
【0070】
また、実施例1〜10のパッドは、フォームに含浸させた前記溶液により、パッドに体圧がかかった際に、パッドが人体に馴染みやすく、フィット感に優れ、使用感が優れるものであり、効果的に冷熱効果が得られた。さらに、フォームに前記溶液を含浸しやすく、取り扱い性の面においても優れていた。
【0071】
実施例11のパッドは、疎水性ポリウレタンフォームを用いているため、前記溶液が含浸しづらかったが、本発明のパッドの使用には問題はなかった。
【0072】
実施例12のパッドは、フォームの硬さが低く、多少底付き感があり、使用感を阻害するものであったが、本発明のパッドの使用には問題はなかった。
【0073】
実施例13のパッドは、フォームの硬さが高く、多少硬さを感じ、使用感を阻害するものであり、且つフォームに前記溶液を含浸しづらかったが、本発明のパッドの使用には問題はなかった。
【0074】
一方、比較例1のパッドは、フォームに貫通孔を設けておらず、フォームがパッド内で固定されていないため、パッドを傾けた際に、溶液を含浸させたフォームの重さにより、所定位置からズレてしまった。
【0075】
比較例2のパッドは、フォームに含浸させる前記溶液の量が少なく、冷熱効果が得られなかった。
【0076】
比較例3のパッドは、フォームに含浸させる前記溶液の量が多く、フォーム内に含浸されない溶液が浮遊感をもたらし、使用感を悪化させるとともに、重くなって取り扱い性に欠けるものであった。
【0077】
比較例4のパッドは、フォームの厚みが足りず、使用感を阻害するだけでなく、前記溶液を含浸させたとしても、冷熱効果を得ることができなかった。
【0078】
比較例5のパッドは、フォームが厚いため、含浸させる前記溶液が多く、重くなって取り扱い性が低下したり、違和感が生じ、使用感を阻害するものであった。
【0079】
比較例6のパッドは、前記溶液の粘度が低いため、フォーム内での保水性が弱まり、パッドに体圧がかかった際、その体圧部分以外にフォームに含浸された溶液が移動し、フォームにおける溶液の偏りが生じ、使用感を悪化させるものであった。そのほか、パッドを傾けた際には、フォームにおける溶液の偏りが生じた。
【0080】
比較例7のパッドは、前記溶液の粘度が高いため、フォームに含浸しづらく、生産性が悪化した。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態の冷熱パッドを示す平面図
【図2】図1のA−Aにおける断面図
【図3】本発明のほかの実施形態の冷熱パッドを示す平面図
【符号の説明】
【0085】
1 冷熱パッド
2 シート材料
3 溶液を含浸させたポリウレタンフォーム
4 シート材料における接合部
a シート材料の外縁部における接合幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ4〜12mmのポリウレタンフォームの表裏面にシート材料を有し、シート材料の外縁部が接合され、ポリウレタンフォームを密封したパッドであり、ポリウレタンフォームには、粘度30〜600cpsの溶液が、ポリウレタンフォームの体積の70〜120%容量で含浸されており、ポリウレタンフォームが固定手段によってパッド内に固定されていることを特徴とする冷熱パッド。
【請求項2】
固定手段は、ポリウレタンフォームの少なくとも一箇所に貫通孔を設け、その部分において、シート材料の上下面が接合されることを特徴とする請求項1に記載の冷熱パッド。
【請求項3】
ポリウレタンフォームの少なくとも一方の面に織布、編布、不織布のいずれかが積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷熱パッド。
【請求項4】
パッドの長さ方向のポリウレタンフォームが少なくとも二つ以上に分割され、分割される部分において、シート材料の上下面が接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷熱パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142347(P2009−142347A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320253(P2007−320253)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】