説明

冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去方法、再生方法、精製方法、蓄冷空調装置の保全方法、冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去装置、再生装置、蓄冷空調システム

【課題】第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する方法、装置を提供する。
【解決手段】第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する方法であって、前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離する二層分離工程と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去方法、再生方法、精製方法、蓄冷空調装置の保全方法、冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去装置、再生装置、蓄冷空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルの空調や地域冷暖房においては、夜間電力により蓄冷材を蓄冷しておき、この蓄冷熱を翌日の昼間に取り出して利用する蓄冷空調システムが開発されている。このシステムに用いられる潜熱蓄冷材として、第4級アンモニウム塩の水和物が知られている。第4級アンモニウム塩の水和物は、第4級アンモニウム塩の水溶液を冷却して生成され、比較的蓄冷量が大きく、パラフィンのように可燃性ではないため取り扱いも容易であり、非常に有用な蓄冷材であり、冷熱輸送媒体としても使用されている。
【0003】
このような第4級アンモニウム塩の水和物を冷熱輸送媒体または蓄冷材として使用する際に、その特性を調整するために添加剤を添加する場合がある。また、冷熱輸送媒体または蓄冷材として使用中に、混入物として無機塩類が混ざってくる場合がある。一定期間使用され、冷熱輸送媒体または蓄冷材としての役目を終えた材料は、廃棄されることなくリサイクル使用されることが望ましいが、そのためには前記の添加された添加剤から生成あるいは混入した無機塩類を、第4級アンモニウム塩の水溶液から分離除去する必要がある。
分離除去しなければならない無機塩類は限定されるものではないが、例えば、該水和物(あるいは、第4級アンモニウム塩の水溶液)を輸送する配管や貯留する容器の腐食を抑制するために添加される腐食抑制剤から生成する無機塩類が、挙げられる。腐食抑制剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0004】
亜硫酸ナトリウムは水溶液中の溶存酸素や、大気中から溶け込んでくる酸素と反応して硫酸ナトリウムとなり、水溶液中の溶存酸素濃度を低下させて配管材の腐食を抑制する。水溶液中の亜硫酸ナトリウム濃度を一定濃度以上に維持することにより腐食を抑制することができるが、配管系に酸素が侵入すると亜硫酸ナトリウムが消費されるため、亜硫酸ナトリウム濃度を維持するために亜硫酸ナトリウムの追加添加が必要な場合があり、設備の構成や運転の条件によっては、亜硫酸ナトリウムが追加されることがある。このため、次第に水溶液中の硫酸ナトリウム濃度が増加することになるが、水溶液中の硫酸ナトリウム濃度が増加し、これが過大となると、冷熱輸送媒体または蓄冷材としての性能が著しく低下する。この場合、冷熱輸送媒体または蓄冷材を全て入れ替えるか、冷熱輸送媒体または蓄冷材から硫酸ナトリウムを除去して再生することが必要となる。
しかしながら、空調設備に用いられている冷熱輸送媒体または蓄冷材を全て入れ替えることは費用が嵩み困難である。
【0005】
そこで、冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法が検討されるに至り、その一例として以下のものがある。
不純物が混入している冷熱輸送媒体としての水溶液を抜き出して熱交換器が内蔵された処理槽に貯留し、熱交換器に冷却用媒体を流通させて水溶液を冷却し、熱交換器の伝熱管表面に水和物を生成付着させる。水和物が生成した後に残った水溶液には不純物が多く含まれているので、この水溶液を排出した後、熱交換器に加熱用媒体を流通させて水和物を加熱し、伝熱管表面に付着している水和物を融解して水溶液とすることで不純物が除去された水溶液を得るものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−333168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された再生方法では、伝熱管表面に水和物が生成して付着する際に、水和物粒子間の間隙に水溶液が残ったまま凝固するため、融解して得られた水溶液中に不純物が残留しており、高い純度の冷熱輸送媒体が得られないという問題がある。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から、該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する方法、装置を提供することを目的としている。
また、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から、該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去して再生する方法、装置を提供することを目的としている。
また、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし、純度の高い冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法を提供することを目的としている。
また、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から、該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去して再生することによって装置の保全を行う蓄冷空調装置の保全方法を提供することを目的としている。
また、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から、該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去して再生することによって装置の保全を行う蓄冷空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らが鋭意検討した結果、臭化テトラnブチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩水溶液に硫酸ナトリウム等の水溶性無機塩が混入した水溶液は、その組成によって、水より軽い軽液層と水層の二層に分離することが判明した。そして、軽液層には第4級アンモニウム塩が濃縮されており、水層には水溶性無機塩が濃縮されていることが判明した。
【0009】
発明者らは、二層分離のメカニズムと軽液層に第4級アンモニウム塩が濃縮され、水層に水溶性無機塩が濃縮されるメカニズムを推定した。臭化テトラnブチルアンモニウムと硫酸ナトリウムを例に挙げて説明する。
図1はこの説明図であり、図1(a)が硫酸ナトリウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)水溶液を示し、図1(b)が二層分離状態を示している。
【0010】
水溶液状態では、図1(a)に示すように、臭化テトラnブチルアンモニウムは十分な水分子で溶媒和されており、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)が水溶液全体に分散している。硫酸ナトリウムは同じ水溶液の水に溶解している。
上記の状態の水溶液から水をある程度除去すると、図1(b)に示すように軽液層と水層の二層に分離する。
軽液層では水分子が不足するため、TBABは少ない水分子の周囲に集合している。そして、疎水部(TBA)の性質が全体として支配的になり、全体としては油のように振る舞い比重の軽い軽液層となっている。すなわち軽液層にはTBABが濃縮されている。
水層では硫酸ナトリウムは自らを溶媒和させるだけの水分子を保持し、溶解度(最大濃度値)に近い濃度で水に溶解している。すなわち水層には硫酸ナトリウムが濃縮されている。計測して確認したところ、25℃での硫酸ナトリウム濃度は23wt%程度であった。
つまり、二層分離状態とは、硫酸ナトリウムを溶解する水分子の余りで、軽液層のTBABの溶解がなされている状態であるといえる。軽液層にはTBABが濃縮され、水層には硫酸ナトリウムが濃縮されている。
なお、上記においては臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)と硫酸ナトリウムを例に挙げて説明したが、他のテトラアルキルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩と他の水溶性無機塩との場合でも同様であることを確認している。
【0011】
以上のように、二層分離状態のメカニズムを推定したが、発明者はさらに二層分離が起こるための条件や各物質の軽液層と水層への分配率について実験を重ねて検討を行なった。
図2はこの二層分離が起こる各物質の関係を説明する図であり、第4級アンモニウム塩として臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)、水溶性無機塩として硫酸ナトリウム、水の三成分系について、常温下で種々の組成での水溶液の状態を調べた結果を三成分系の平衡図として表したものである。図2は三成分の組成を重量比で表しており、また図中の太実線は水溶液と二層分離状態との境界を示しており、下記の表1の点を結んだものである。
【0012】
【表1】

【0013】
図2中の太実線より上方の範囲では三成分系は一層の水溶液の状態であり、太実線より下方の範囲では三成分系は軽液層と水層の二層に分離した状態である。そして、二層分離状態においては前述したように、軽液層にはTBABが濃縮され、水層には硫酸ナトリウムが濃縮されている。
したがって、図2の太実線よりも上方にある水溶液状態を太実線よりも下方にある二層分離状態にすることによって、TBABを濃縮して硫酸ナトリウムを除去できる。
すなわち、第4級アンモニウム塩としてのTBABの水溶液を主成分とする蓄冷材に水溶性無機塩として硫酸ナトリウムからなる不純物が含有されている水溶液は、その組成が太実線より上方の範囲にあり、蓄冷材から水溶性無機塩を除去するためには、太実線より下方の範囲の組成になるように操作して二層に分離するようにすればよい。
【0014】
そして、そのためには水を蒸発させてある程度除去し、結果としてTBABと硫酸ナトリウムの組成比を増加させるか、硫酸ナトリウムを添加して硫酸ナトリウムの組成比を増加させる操作を行う。
二層分離状態にしたあとは、軽液層を抜き出すことで水溶性無機塩が除去された蓄冷材を得ることができる。そして、軽液層には水溶性無機塩の混入はほとんどないため、蓄冷材から水溶性無機塩を精度よく除去することができるのである。
【0015】
本発明は上述した検討から得られた知見に基づくものであり、具体的には以下の構成を有するものである。
【0016】
(1)本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去方法は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する方法であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離する二層分離工程と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
第4級アンモニウム塩は、ゲスト化合物として水分子に包接されて水和物を形成するものであって、親水基と親油基(疎水基)の両方を有する両親媒性分子である。具体的には、テトラアルキルアンモニウム−アニオン塩、トリアルキル・アルキルアンモニウム−アニオン塩が挙げられる。
また、アルキルとして、nブチル、nペンチル、isoペンチル、nプロピル、isoプロピル、エチル、メチルが挙げられる。
また、アニオンとして、Br、F、Cl、C2H5COO、OH、CH3COO、HCOO、CH3SO3、CO3、PO4、HPO4、WO4、iC3H7COO、O3S(CH2)2SO3、sC4H9COO、NO3、(CH3)2CH(NH2)2COO、nC3H7SO3、CF3COO、CrO3が挙げられる。
【0018】
また、テトラアルキルアンモニウム−アニオン塩として、テトラアルキル臭化アンモニウム、テトラアルキル弗化アンモニウム、テトラアルキル塩化アンモニウム、テトラアルキル硝酸アンモニウムが挙げられる。
さらに、テトラアルキル臭化アンモニウムの例としては、臭化テトラnブチルアンモニウムが挙げられる。
またさらに、トリアルキル・アルキルアンモニウム−アニオン塩の例としては、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが挙げられる。
【0019】
また、水溶性無機塩としては、冷熱輸送媒体や蓄冷材に添加されるもの、または添加された化合物から生成されるものがある。具体的には、冷熱輸送媒体や蓄冷材に添加され溶存酸素を消費して腐食を抑制する腐食抑制剤として添加される亜硫酸塩、チオ硫酸塩から生成される硫酸塩、具体的には硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウムが挙げられる。
また、他の水溶性無機塩としては、冷熱輸送媒体や蓄冷材の製造過程や使用中に混入する無機塩が挙げられる。
【0020】
(2)また本発明に係る蓄冷材の不純物除去方法は、上記(1)における二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去することにより該冷熱輸送媒体または蓄冷材を二層分離させることを特徴とするものである。
【0021】
(3)また、上記(1)における二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加することにより該冷熱輸送媒体または蓄冷材を二層分離させることを特徴とするものである。
【0022】
(4)また、本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし空調装置に用いられる冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法であって、前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と冷熱輸送媒体または蓄冷材に添加された腐食抑制剤から生成した水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離する二層分離工程と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去工程と、水層が除去された軽液に水を加えて第4級アンモニウム塩水溶液濃度を所定値に調整する濃度調整工程と、を備えたこと特徴とするものである。
【0023】
(5)また、上記(4)に記載の二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去することにより二層分離させることを特徴とするものである。
【0024】
(6)また、上記(4)に記載の二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加することにより二層分離させることを特徴とするものである。
【0025】
(7)また、本発明に係る蓄冷空調装置の保全方法は、空調装置から冷熱輸送媒体または蓄冷材を抜き出し、上記(4)〜(6)のうちいずれかに記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法により、冷熱輸送媒体または蓄冷材を再生して、空調装置に戻すことを特徴とするものである。
【0026】
(8)また、本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法であって、第4級アンモニウム塩を水に溶解させて所定濃度の第4級アンモニウム塩水溶液を作る工程と、前記第4級アンモニウム塩水溶液を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性不純物を含む比重の重い水層とに二層分離する工程と、該二層分離された第4級アンモニウム塩水溶液から前記水層を除去する水層除去工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0027】
(9)また、上記(8)に記載の二層分離工程は、第4級アンモニウム塩水溶液から水を除去することにより二層分離させることを特徴とするものである。
【0028】
(10)また、上記(8)に記載の二層分離工程は、第4級アンモニウム塩水溶液に水溶性無機塩を添加することにより二層分離させることを特徴とするものである。
【0029】
(11)また、本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去装置は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する装置であって、前記冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去する水除去手段と、該水除去手段によって水が除去された冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層に比重差によって二層分離させる二層分離手段と、該二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去手段と、を有することを特徴とするものである。
【0030】
(12)また、本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去装置は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する装置であって、前記冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加する水溶性無機塩添加手段と、該水溶性無機塩添加手段によって水溶性無機塩が添加された冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離させる二層分離手段と、該二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去手段と、を有することを特徴とするものである。
【0031】
(13)また、本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし腐食抑制剤を含む冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置であって、前記冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去する水除去手段と、該水除去手段によって水が除去された前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と前記腐食抑制剤から生成された水溶性無機塩を含む比重の重い水層に二層分離する二層分離手段と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材の軽液を前記水層と分離し、該分離された軽液に水を加えて第4級アンモニウム塩水溶液濃度を所定値に調整する濃度調整手段と、を有することを特徴とするものである。
【0032】
(14)また、本発明に係る冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置は、第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし腐食抑制剤を含む冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置であって、前記冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加する水溶性無機塩添加手段と、該水溶性無機塩添加手段によって水溶性無機塩が添加された前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と前記腐食抑制剤から生成された水溶性無機塩を含む比重の重い水層に二層分離する二層分離手段と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材の軽液を前記水層と分離し、該分離された軽液に水を加えて第4級アンモニウム塩水溶液濃度を所定値に調整する濃度調整手段と、を有することを特徴とするものである。
【0033】
(15)また、本発明に係る蓄冷空調システムは、空調装置から冷熱輸送媒体または蓄冷材を抜き出す手段と、上記(13)又は(14)に記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置と、再生された冷熱輸送媒体または蓄冷材を前記空調装置に戻す手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明においては、冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離する二層分離工程と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去工程と、を備えたことにより、冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を効果的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[実施の形態1]
図3は本発明の一実施の形態に係る蓄冷空調システムの構成の一例を示す図である。本実施の形態に係る蓄冷空調システムは、第4級アンモニウム塩水溶液および/またはその水和物のスラリを貯留する冷熱輸送媒体貯留槽1、冷熱輸送媒体貯留槽1に貯留されている第4級アンモニウム塩水溶液を冷却して水和物のスラリを製造するスラリ製造部3、冷熱輸送媒体貯留槽1に貯留されている水和物スラリの冷熱を利用する空調設備5、蓄冷空調システム内で循環使用されて冷熱輸送媒体貯留槽1に貯えられている第4級アンモニウム塩水溶液を抜き出して不純物を除去するための冷熱輸送媒体再生装置7を備えている。
【0036】
スラリ製造部3は冷熱発生源である冷凍機9とこの冷凍機9から排出される冷熱輸送媒体を流通させる冷却器11を備えている。そして、冷却器11と冷熱輸送媒体貯留槽1とは第4級アンモニウム塩水溶液の循環路を形成する配管13で連結され、配管13には循環ポンプ15が設けられている。
また、空調設備5と冷熱輸送媒体貯留槽1とは払い出し配管17および戻り配管19で連結されており、払い出し配管17には水和物スラリを空調設備5に払い出すポンプ21および開閉弁22が設けられている。
また、冷熱輸送媒体再生装置7には払い出し配管17から分岐して第4級アンモニウム塩水溶液を冷熱輸送媒体再生装置7に送る水溶液受入れ配管23と、冷熱輸送媒体再生装置7で再生された第4級アンモニウム塩水溶液を冷熱輸送媒体貯留槽1に返送するための水溶液返送配管25が接続されている。また、水溶液受入れ配管23には開閉弁26が設けられている。第4級アンモニウム塩水溶液は、戻り配管19から分岐する配管を設け冷熱輸送媒体再生装置7に抜き出しても良い。
【0037】
冷熱輸送媒体再生装置7は第4級アンモニウム塩水溶液の不純物含有度合いに応じて、適宜運転する装置であるが、蓄冷空調システムを稼働するシーズンを迎える時期、或いは、所定期間毎に運転し、第4級アンモニウム塩水溶液を清浄化するための装置である。
図4は本実施の形態に係る冷熱輸送媒体再生装置7の構成の説明図である。以下、図4に基づいて冷熱輸送媒体再生装置7の構成を説明する。
【0038】
冷熱輸送媒体再生装置7は、第4級アンモニウム塩水溶液の水を蒸発させることで所定量の水の除去を行う水蒸発器31、水蒸発器31で所定量の水が除去されて濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液を後述の液・液分離器35に送るための濃縮液送水管32、濃縮液送水管32の途中に設置されて濃縮液を冷却する冷却熱交換器33、冷却熱交換器33で冷却された第4級アンモニウム塩水溶液を比重差によって二層状態に分離する液・液分離器35、液・液分離器35の水層の液を抜き出して排水するための排水管37及び排水管37に設けられた排水ポンプ39、液・液分離器35の軽液層の軽液を抜き出して調整槽40に送るための送液管41および送液管41に設けられた送液ポンプ43をそれぞれ備えている。
【0039】
また、冷熱輸送媒体再生装置7は、水蒸発器31に接続されて水蒸発器31で発生する水蒸気を取り出す水蒸気取り出し管45、水蒸気取り出し管45の途中に設けられて水蒸気を冷却して凝縮させる冷却熱交換器47、水蒸気取り出し管45に接続されて冷却熱交換器47で凝縮された凝縮水の気・液分離を行う気・液分離器49、気・液分離器49に接続されて気液分離器49の凝縮水を調整槽40に送る送水管51および送水管51に設けられた送水ポンプ53、気・液分離器49に接続されて気・液分離器49で発生するガスを取り出すガス取出し管55、ガス取出し管55に設けられた減圧ポンプ57をそれぞれ備えている。
【0040】
なお、水蒸発器31はTBABなどの第4級アンモニウム塩の分解を避けるため、減圧フラッシュ方式等により80℃程度以下の温度で水を蒸発させる機能を有するものが好ましい。
また、調整槽40には軽液層の濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液と凝縮水が送られて所定の濃度に調整されるが、これらの他に外部から水および腐食抑制剤の亜硫酸ナトリウムを添加できるようになっている。
【0041】
以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
冷熱輸送媒体貯留槽1に貯留された第4級アンモニウム塩水溶液は循環ポンプ15によって配管13を介して冷却器11に送られ、冷却器11で冷却されて水和物スラリとなり、再び配管13を介して冷熱輸送媒体貯留槽1に送られて冷熱輸送媒体貯留槽1に貯留され、冷熱を蓄熱する。
空調運転時には冷熱輸送媒体貯留槽1に貯えられた水和物スラリは払い出しポンプ21によって抜き出され、空調設備5に送られる。空調設備5へ送られた水和物スラリは熱交換されて冷熱を放出して水溶液になり、戻り配管19を経由して冷熱輸送媒体貯留槽1へ戻される。
このように、第4級アンモニウム塩水溶液から生成した水和物スラリは蓄熱材として使用されると共に冷熱輸送媒体としても使用され、循環使用される。
【0042】
前述したように、腐食抑制剤として添加される例えば亜硫酸ナトリウムが酸素と反応して生成する硫酸ナトリウムの量が過大になると、水和物スラリの蓄冷材および冷熱輸送媒体としての性能が著しく低下するため、冷熱輸送媒体再生装置7を稼動して第4級アンモニウム塩水溶液の再生を行なう。
第4級アンモニウム塩水溶液の再生を行なう場合には、払い出し配管17の開閉弁22を閉止し、水溶液受け入れ配管23の開閉弁26を開放して、第4級アンモニウム塩水溶液を冷熱輸送媒体再生装置7側へ送るようにする。
【0043】
冷熱輸送媒体再生装置7へ送られた第4級アンモニウム塩水溶液は、水蒸発器31で一定量の水が蒸発され、冷却熱交換器で冷却されて液・液分離器35に送られる。液・液分離器35では比重差に基づいて軽液層と水槽の二層分離が行われる。比重の軽い軽液層には濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液、例えばTBAB水溶液が分離され、比重の重い水層には腐食抑制剤から生成した水溶性無機塩、例えば硫酸ナトリウムを含む水が分離される。そして、硫酸ナトリウムをほとんど含まない軽液層の軽液は送液管41を介して調整槽40に送られる。また、水層の硫酸ナトリウムを含む水は排水ポンプ39によって排水管37を介して排水される。
【0044】
水蒸発器31で発生する水蒸気は冷却熱交換器47で凝縮され、気・液分離器49で気・液分離される。そして、気・液分離器49で分離された凝縮水は調整槽40に送られる。
濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液や凝縮水が送られて貯留される調整槽40では腐食抑制剤の亜硫酸ナトリウムや水が加えられて濃度調整が行われ再生されて、冷熱輸送媒体貯留槽1に戻される。
【0045】
以上のように、本実施の形態においては、腐食抑制剤として添加された亜硫酸ナトリウムから生成した水溶性無機塩、例えば硫酸ナトリウムの量が過大となって水和物スラリの蓄冷材および冷熱輸送媒体としての性能が低下した第4級アンモニウム塩水溶液から水を蒸発させることによって水を除去し、第4級アンモニウム塩水溶液を二層分離状態にして硫酸ナトリウムを除去するようにしたので、第4級アンモニウム塩水溶液の再生を確実に行なうことができる。
【0046】
[実施の形態2]
上記の実施の形態1においては冷熱輸送媒体再生装置7として、第4級アンモニウム塩水溶液を二層分離させるために第4級アンモニウム塩水溶液から水を除去する例を示した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、第4級アンモニウム塩水溶液に水溶性無機塩を添加することにより第4級アンモニウム塩水溶液を二層分離するようにしてもよい。
そこで、本実施の形態においては冷熱輸送媒体再生装置の他の例として、再生対象の第4級アンモニウム塩水溶液に水溶性無機塩を添加する装置について説明する。
【0047】
図5は本発明の実施の形態2に係る冷熱輸送媒体再生装置の説明図であり、実施の形態1で示した図4の装置と同一部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係る冷熱輸送媒体再生装置は、冷熱輸送媒体貯留槽1の第4級アンモニウム塩水溶液を冷熱輸送媒体再生装置側に取り出す水溶液受入れ配管23に設けられて後述する高温の濃縮塩水溶液を供給された第4級アンモニウム塩水溶液を冷却する冷却熱交換器61、冷却熱交換器61で冷却された第4級アンモニウム塩水溶液を比重差によって二層状態に分離する液・液分離器63、液・液分離器63の軽液層の軽液を抜き出して調整槽40に送るための送液管65および送液管65に設けられた送液ポンプ67を備えている。
【0048】
また、本実施の形態に係る冷熱輸送媒体再生装置は、液・液分離器63の水層の液を抜き出して排水するための排水管69及び排水管69に設けられた排水ポンプ71を備えている。液・液分離器63の水層の液には腐食抑制剤として添加された亜硫酸ナトリウムから生成した水溶性無機塩、例えば硫酸ナトリウムが含まれている。本実施の形態に係る冷熱輸送媒体再生装置は、この水層の水を蒸発させることで水を除去して水溶性無機塩を濃縮する水蒸発器73、水蒸発器73によって濃縮された高温の濃縮塩水溶液を水溶液受入れ配管23を流れる第4級アンモニウム塩水溶液に供給する濃縮塩水溶液供給管75を備えている。
【0049】
さらに、本実施の形態に係る冷熱輸送媒体再生装置は、水蒸発器73に接続されて水蒸発器73で発生する水蒸気を取り出す水蒸気取り出し管77、水蒸気取り出し管77の途中に設けられて水蒸気を冷却して凝縮させる冷却熱交換器79、水蒸気取り出し管77に接続されて冷却熱交換器79で凝縮された凝縮水の気・液分離を行う気・液分離器81、気液分離器81に接続されて気液分離器81の凝縮水を調整槽40に送る送水管83および送水管83に設けられた送水ポンプ85、気・液分離器81に接続されて気・液分離器81で発生するガスを取り出すガス取出し管87、をそれぞれ備えている。
【0050】
以上のように構成された本実施の形態の動作について、特に冷熱輸送媒体再生装置による第4級アンモニウム塩水溶液の再生に関して説明する。
第4級アンモニウム塩水溶液の再生を行なう場合には、実施の形態1と同様に図1に示す払い出し配管17の開閉弁22を閉止し、水溶液受け入れ配管23の開閉弁26を開放して、第4級アンモニウム塩水溶液を冷熱輸送媒体再生装置7側へ送るようにする。
【0051】
冷熱輸送媒体再生装置7へ送られた第4級アンモニウム塩水溶液は、濃縮塩水溶液が供給されることにより水溶性無機塩が添加されて液・液分離器63に送られる。水溶性無機塩が添加されることで第4級アンモニウム塩水溶液は二層分離可能状態となる。そして、液・液分離器63では比重差に基づいて軽液層と水槽の二層分離が行われる。比重の軽い軽液層には濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液、例えばTBAB水溶液が分離され、比重の重い水層には腐食抑制剤として添加された亜硫酸ナトリウムから生成した水溶性無機塩、例えば硫酸ナトリウムを含む水が分離される。そして、硫酸ナトリウムをほとんど含まない濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液である軽液層の軽液は送液管65を介して調整槽40に送られる。また、水層の硫酸ナトリウムを含む水は排水ポンプ71によって排水管69を介して水蒸発器73に送られる。
【0052】
水蒸発器73では硫酸ナトリウムを含む水の加熱が行われ、水を蒸発させることで硫酸ナトリウムを含む水が濃縮され濃縮塩水溶液が生成される。この濃縮塩水溶液は濃縮塩水溶液供給管75を介して冷熱輸送媒体貯留槽1からの第4級アンモニウム塩水溶液に供給される。このように、一旦、液・液分離器63で二層分離が行われ水層の液が抜き出された後は、濃縮塩水溶液を生成することによって、外部から水溶性無機塩を供給する必要がない。
水蒸発器73で発生する水蒸気は冷却熱交換器79で凝縮され、気・液分離器81で気・液分離される。そして、気・液分離器81で分離された凝縮水は調整槽40に送られる。
濃縮された第4級アンモニウム塩水溶液や凝縮水が送られて貯留される調整槽40では腐食抑制剤の亜硫酸ナトリウムや水が加えられて濃度調整が行われ再生されて、冷熱輸送媒体貯留槽1に戻される。
【0053】
以上のように、本実施の形態においては、腐食抑制剤として添加された亜硫酸ナトリウムから生成した水溶性無機塩、例えば硫酸ナトリウムの量が過大となって水和物スラリの蓄冷材および冷熱輸送媒体としての性能が低下した第4級アンモニウム塩水溶液に水溶性無機塩を添加することによって第4級アンモニウム塩水溶液を二層分離状態にして硫酸ナトリウムを除去するようにしたので、第4級アンモニウム塩水溶液の再生を確実に行なうことができる。
また、本実施の形態においては、液・液分離器63で分離された水層の液から濃縮塩水溶液を生成し、これを冷熱輸送媒体貯留槽1からの第4級アンモニウム塩水溶液に供給するようにしたので、外部から水溶性無機塩を供給する必要がなく、運転コストを低減できる。
【0054】
以下においては、第4級アンモニウム塩水溶液の例として臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)水溶液を、腐食抑制剤から生成した水溶性無機塩として硫酸ナトリウムを、それぞれ例に挙げて二層分離による臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)水溶液の不純物除去の実施例を説明する。
【実施例1】
【0055】
臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)16%水溶液に、硫酸ナトリウムを4%加えた水溶液について、減圧下80℃にて水を蒸発させた。水を45%程度蒸発させた時点で加熱を停止して分液装置で静置すると、二層に分離した。水蒸発後の推定組成を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
二層に分離した軽液層と水層の組成を分析し、TBABと硫酸ナトリウムの軽液層と水層への分配率を求めたので、これを表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3に示されるように、軽液層には臭化テトラnブチルアンモニウムが、水層には硫酸ナトリウムが濃縮されていることが判明した。
【実施例2】
【0060】
臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)16%水溶液に、硫酸ナトリウムを4.0%加えた水溶液について、減圧下80℃にて水を蒸発させた。水を65%程度蒸発させた時点で加熱を停止し分液装置で静置すると、二層に分離した。水蒸発後の推定組成を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
二層に分離した軽液層と水層の組成を分析し、TBABと硫酸ナトリウムの軽液層と水層への分配率を求めたのでこれを表5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
表5に示されるように軽液層には臭化テトラnブチルアンモニウムが、水層には硫酸ナトリウムが濃縮されていることが判明した。そして、水を45%蒸発させた実施例1に比較して、水を65%程度蒸発させた本実施例では、TBABおよび硫酸ナトリウム共により精度よく分配されていることが分かった。特に、TBABについてはほぼ完全に分離されている。
【実施例3】
【0065】
臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)16%水溶液に、硫酸ナトリウムを4%加えた水溶液について、更にこの水溶液に硫酸ナトリウムを10%添加した。これを分液装置で静置すると、二層に分離した。硫酸ナトリウムを10%添加した後の推定組成を表6に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
二層に分離した軽液層と水層の組成を分析し、TBABと硫酸ナトリウムの軽液層と水層への分配率を求めたので、これを表7に示す。
【0068】
【表7】

【0069】
表7に示されるように、軽液層には臭化テトラnブチルアンモニウムが、水層には硫酸ナトリウムが濃縮されていることが判明した。
【0070】
また、第4級アンモニウム塩水溶液の他の例として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)水溶液を、腐食抑制剤から生成した水溶性無機塩として硫酸ナトリウムを、それぞれ例に挙げて二層分離による臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)水溶液の不純物除去の実施例を説明する。
【実施例4】
【0071】
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)15%水溶液に、硫酸ナトリウムを6%加えた水溶液について、減圧下80℃にて水を蒸発させた。水を25%程度蒸発させた時点で加熱を停止して分液装置で静置すると、二層に分離した。水蒸発後の推定組成を表8に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
二層に分離した軽液層と水層の組成を分析し、TBPABと硫酸ナトリウムの軽液層と水層への分配率を求めたので、これを表9に示す。
【0074】
【表9】

【0075】
表9に示されるように、軽液層には臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが、水層には硫酸ナトリウムが濃縮されていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第4級アンモニウム塩水溶液が二層分離したときに軽液層に第4級アンモニウム塩が濃縮され、水層に水溶性無機塩が濃縮されるメカニズムを説明する説明図である。
【図2】第4級アンモニウム塩水溶液に二層分離が起こるための各物質の関係を説明する説明図であり、三成分系の平衡図として表したものである。
【図3】本発明の一実施の形態に係る蓄冷空調システムの構成の一例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る冷熱輸送媒体再生装置7の構成の説明図である。
【図5】実施の形態2に係る冷熱輸送媒体再生装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 冷熱輸送媒体貯留槽、3 スラリ製造部、5 空調設備、7 冷熱輸送媒体再生装置、31 水蒸発器、35 液・液分離器、40 調整槽、63 液・液分離器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する方法であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離する二層分離工程と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去工程と、を備えたことを特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去方法。
【請求項2】
二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去することにより該冷熱輸送媒体または蓄冷材を二層分離させることを特徴とする請求項1記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去方法。
【請求項3】
二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加することにより該冷熱輸送媒体または蓄冷材を二層分離させることを特徴とする請求項1記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去方法。
【請求項4】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし空調装置に用いられる冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と冷熱輸送媒体または蓄冷材に添加された腐食抑制剤から生成した水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離する二層分離工程と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去工程と、水層が除去された軽液に水を加えて第4級アンモニウム塩水溶液濃度を所定値に調整する濃度調整工程と、を備えたこと特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法。
【請求項5】
二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去することにより二層分離させることを特徴とする請求項4記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法。
【請求項6】
二層分離工程は、冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加することにより二層分離させることを特徴とする請求項4記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法。
【請求項7】
空調装置から冷熱輸送媒体または蓄冷材を抜き出し、請求項4〜6のうちいずれか1項に記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生方法により、冷熱輸送媒体または蓄冷材を再生して、空調装置に戻すことを特徴とする蓄冷空調装置の保全方法。
【請求項8】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法であって、
第4級アンモニウム塩を水に溶解させて所定濃度の第4級アンモニウム塩水溶液を作る工程と、前記第4級アンモニウム塩水溶液を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性不純物を含む比重の重い水層とに二層分離する工程と、該二層分離された第4級アンモニウム塩水溶液から前記水層を除去する水層除去工程と、を備えたことを特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法。
【請求項9】
二層分離工程は、第4級アンモニウム塩水溶液から水を除去することにより二層分離させることを特徴とする請求項8記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法。
【請求項10】
二層分離工程は、第4級アンモニウム塩水溶液に水溶性無機塩を添加することにより二層分離させることを特徴とする請求項8記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の精製方法。
【請求項11】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する装置であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去する水除去手段と、該水除去手段によって水が除去された冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層に比重差によって二層分離させる二層分離手段と、該二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去手段と、を有することを特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去装置。
【請求項12】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とする冷熱輸送媒体または蓄冷材から該冷熱輸送媒体または蓄冷材に含まれる水溶性無機塩からなる不純物を除去する装置であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加する水溶性無機塩添加手段と、該水溶性無機塩添加手段によって水溶性無機塩が添加された冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と水溶性無機塩を含む比重の重い水層とに二層分離させる二層分離手段と、該二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材から前記水層を除去する水層除去手段と、を有することを特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の不純物除去装置。
【請求項13】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし腐食抑制剤を含む冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材から水を除去する水除去手段と、該水除去手段によって水が除去された前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と前記腐食抑制剤から生成された水溶性無機塩を含む比重の重い水層に二層分離する二層分離手段と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材の軽液を前記水層と分離し、該分離された軽液に水を加えて第4級アンモニウム塩水溶液濃度を所定値に調整する濃度調整手段と、を有することを特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置。
【請求項14】
第4級アンモニウム塩水溶液を主成分とし腐食抑制剤を含む冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置であって、
前記冷熱輸送媒体または蓄冷材に水溶性無機塩を添加する水溶性無機塩添加手段と、該水溶性無機塩添加手段によって水溶性無機塩が添加された前記冷熱輸送媒体または蓄冷材を、第4級アンモニウム塩を含む比重の軽い軽液層と前記腐食抑制剤から生成された水溶性無機塩を含む比重の重い水層に二層分離する二層分離手段と、二層分離された冷熱輸送媒体または蓄冷材の軽液を前記水層と分離し、該分離された軽液に水を加えて第4級アンモニウム塩水溶液濃度を所定値に調整する濃度調整手段と、を有することを特徴とする冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置。
【請求項15】
空調装置から冷熱輸送媒体または蓄冷材を抜き出す手段と、請求項13又は14に記載の冷熱輸送媒体または蓄冷材の再生装置と、再生された冷熱輸送媒体または蓄冷材を前記空調装置に戻す手段とを備えたことを特徴とする蓄冷空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−182510(P2007−182510A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2084(P2006−2084)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】