説明

冷蔵庫及びその製造方法、冷凍庫

【課題】断熱箱体コーナ部においても断熱性能を低下させることなく熱漏洩を低減し、加工性や組立性が良好な冷蔵庫及びその製造方法、冷凍庫を提供する。
【解決手段】本発明の冷蔵庫は、外郭を形成する外箱21と貯蔵室2、3a、3b、4、5を形成する内箱22との間に断熱材23と真空断熱材50aを備えた冷蔵庫1であって、外箱21は、複数の平面板21a1、21a2、21a3が折り曲げられた形状に形成される板材21aを含んで形成され、板材21aの内箱22側の面に、複数の平面板21a1、21a2、21a3に跨るように真空断熱材50aの芯材51のある箇所を配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材を用いた冷蔵庫及びその製造方法、冷凍庫に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化防止等の地球環境保護の観点から、二酸化炭素の排出量削減については世界的に注目されている。冷蔵庫においてはこれまでも省エネルギのための施策として消費電力量の低減に注力しており、二酸化炭素の排出量削減には微力ながら貢献していると考えられる。しかしながら、現在のように世界的に広がりつつある節電のニーズにも対応すべく、今後も引き続き消費電力量の低い冷蔵庫が求められる。
【0003】
一方、最近の社会背景として、夫婦の共働き化や核家族化等の傾向から、週末の休日に食材をまとめ買いする家庭が増えており、冷蔵庫の大容量化のニーズは益々高まりつつある。
従来から冷蔵庫の省エネルギ化のため、冷蔵庫箱体の断熱性能を向上させる検討がなされており、硬質ウレタンフォームに真空断熱材を併用して断熱性能を大幅に向上させた製品が発売され(市場に流通し)ている。ここで、真空断熱材は一般的には硬質ウレタンフォームの10倍以上の断熱性能を有している。冷蔵庫の断熱性能を向上させるためには、断熱性能のよい真空断熱材をより多用することが選択肢の一つである。
【0004】
真空断熱材を用いた冷蔵庫の従来例としては、下記の特許文献1がある。
図9は、特許文献1の断熱箱体の製造途中の状態を示す斜視図である。
特許文献1には、冷蔵庫の箱体を形成する断熱箱体外箱の左右側壁面と天井面を構成する平板状の鉄板207に、3個の真空の充填体201aを互いに所定間隔の接続部202aを存して配置するとともに当該所定間隔の接続部202a内にシール部を有する真空断熱パネル201を配置した後に、鉄板207を、真空断熱パネル201とともに折り曲げる例が示されている。なお、図9中の接続部202aの破線は折り曲げ箇所を示している。
【0005】
これにより、外装体(真空断熱パネル201)の内容積に対する接合部分(接続部202a)の端面の長さの割合が少なくなるため、長期間使用時の真空断熱パネル201の断熱性能劣化を抑制でき、また、製造作業性を大幅に向上させ得るという有益な効果を奏した例が示されている。
【0006】
図10は、特許文献2の真空断熱材を冷蔵庫の外箱に張り付ける場合の分解状態の断面図である。
また、特許文献2には、複数の独立した真空断熱材311A、311B、311C、311Dを備えた断熱箱体320、321において、複数の真空断熱材311A、311B、311C、311Dの被覆部材同士を熱溶着して繋ぎ、断熱箱体320の左右側面320A、320C、天井面320B及び背面320D等の隣り合う壁面に一度に真空断熱材301が貼り付けられる例が示されている。
【0007】
図11は、特許文献3の発泡断熱材を充填する以前の冷蔵庫の分解後方斜視図である。
また、特許文献3には、冷蔵庫401の外箱402の左右側板402Aと背板402Cに跨った真空断熱材470を配置した冷蔵庫401の例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−98090号公報
【特許文献2】特開平7−9656号公報
【特許文献3】特開平10−205992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、地球環境保護の一環から家庭用の冷蔵庫等の家電製品をはじめ、様々ないわゆる電気製品と称される機器の省エネルギ化が各業界において推進されている。その中で家庭用の冷蔵庫においては箱体の断熱性能を向上させるために、断熱性が高い真空断熱材がこれまで以上に多く採用されつつある。
【0010】
具体的には、冷蔵庫の左右側面、天井面、背面、底面及び各扉面の全部或いは一部に、それぞれ真空断熱材を配置するケースが見られ、真空断熱材の使用面積が拡大する傾向になっている。
しかし、今後も続く省エネルギ化をさらに推進するためには、真空断熱材1枚当たりの大きさ(断熱面積)を拡大したり、厚さを増やす(伝熱量の低減)等の対応が必要であるが、冷蔵庫の外箱と内箱の間の空間には真空断熱材以外にも様々な部品(放熱パイプ、制御部品等)が配置されていることからかなり困難な現状にある。
【0011】
ここで、真空断熱材1枚当たりの大きさを拡大する理由について述べる。真空断熱材は、空隙率の高い材料をガスや水分の透過率が極めて低い外包材で覆い、その内部を減圧した状態にするものである。
【0012】
一方、硬質ウレタンフォームや発泡スチロフォーム等のいわゆる発泡系断熱材や、グラスウールやロックウール等のいわゆる繊維系断熱材等はそれぞれが単独の断熱材として使用される。真空断熱材を含め、これらの断熱材の断熱性能は、固体伝熱、気体伝熱、輻射伝熱の主に3つの伝熱性能により決まる。内部を減圧状態にする真空断熱材は気体伝熱が小さくなることから良好な断熱性能が得られる。
【0013】
しかしながら、真空断熱材には、前記したように、外包材を備えており、内部の減圧状態を長期に亘って維持するためには、ガスや水分の透過を低く抑える必要がある。そのため、外包材の多くは金属箔や金属蒸着層を含んだラミネートフィルムを採用している。真空断熱材の場合、この金属層を含んだ外包材を熱が伝達するヒートブリッジの影響(熱の回り込み)があるため、見掛けの断熱性能(熱伝導率)よりも実際の断熱性能が悪化するのが特徴である。
【0014】
発泡系断熱材や繊維系断熱材等はヒートブリッジの影響が殆んど無い。
真空断熱材のヒートブリッジの影響は、真空断熱材の芯材の大きさ(面積)に左右され、芯材が大きい程その影響は相対的に軽減されることから、真空断熱材1枚当たりの大きさをなるべく大きくすることが、断熱面積を広げるとともにヒートブリッジの影響を軽減し、冷蔵庫の断熱性能向上に寄与する。
【0015】
特許文献1に示される真空断熱パネル201(図9参照)については、その大きさを拡大するように、冷蔵庫の断熱箱体外箱の左右側壁面と天井面を構成する平板状の鉄板207に、3個の充填体201aを互いにシール部を有する所定間隔の接続部202aを存して設けた真空断熱パネル201を配置した後に、鉄板207を折り曲げる例が示されている。しかしながら、鉄板207の折り曲げ部分、つまり断熱箱体のコーナ部分には真空断熱パネル201の充填体201aが存在していないため、コーナ部分の断熱性能が不足する。そのため、断熱箱体のコーナ部分からの熱漏洩量を抑制するという考えが不足している。
【0016】
特許文献2に示される真空断熱材301については、複数の独立した真空断熱材311A、311B、311C、311Dを繋いで、断熱箱体320の複数の壁面に一度に貼り付けできる例が示されている。
しかし、断熱箱体320の隣り合う壁面に沿って(背面320Dと左右側面320A、320C、背面320Dと天井面320B等)折り曲げられた際に、真空断熱材311A、311B、311C、311D同士の干渉を防止するために所定の角度に形成させているが、この折り曲げ部311oには充填材が存在しないため、特許文献1と同様に、当該折り曲げ部分(折り曲げ部311o)の断熱性能が不足し、断熱箱体320のコーナ部分(折り曲げ部311o)からの熱漏洩量を抑制するという考えが不足している。
【0017】
また、特許文献1、2の課題を解決するために、断熱箱体のコーナ部分にも真空断熱材の充填材を存在させた場合、以下の2つの新たな課題が生じる。
図9の特許文献1のように鉄板207に真空断熱材の真空断熱パネル201を貼り付けた場合、コーナ部分の充填材が抵抗となり、折り曲げ加工が困難であり、また、図10の特許文献2のように複数の壁面(320A、320B、320C、320D)に真空断熱材301を一度に貼り付けるために、予め真空断熱材301を曲げる等で成形加工した場合を想定すると、真空断熱材301に成形された複数の面を同時に複数の壁面(320A、320B、320C、320D)に貼り付ける方法が困難であるという新たな課題がある。
【0018】
すなわち、冷蔵庫の基本性能である箱体の断熱性能を高めるため、真空断熱材を多く採用する傾向にあるが、従来のバインダや加熱により成形された芯材からなる真空断熱材では外箱の折り曲げ部等への配置が難しい現状にある。
【0019】
また、図11の特許文献3に示される冷蔵庫401については、ヒートブリッジの影響を抑制するために、真空断熱材1枚当りの大きさが大きくなるように、冷蔵庫401の左右側板402Aと背板402Cに跨った真空断熱材470を用いる例が示されている。
【0020】
しかし、冷蔵庫401の外箱402を構成する鉄板は左右側板402Aと天板402Dが繋がっているのに対し、真空断熱材470の形状は左右側板(側壁)471と背板(背壁)473が繋がっていることから、外箱402が組み立てられた後に真空断熱材470を組み込むことになるため、特許文献3のような大きいサイズの真空断熱材470を、外箱402と内箱403との間の空間に差し込んだ後に外箱402に接着することはかなり困難な作業である。
【0021】
冷蔵庫401の外箱402と内箱403との間には放熱パイプ、制御部の筐体等の様々な部品が配置されていることから、真空断熱材470がそれらの部品に当たって擦れることで、穴あきが発生する等の危険性が高い。また、予め外板である左右側板402A、背板402C、天板402Dには真空断熱材470を固定するための接着剤が塗布されているが、外箱402と内箱403の間に差し込みながら接着することは、実際上困難である。
【0022】
本発明は上記実状に鑑み、断熱箱体コーナ部においても断熱性能を低下させることなく熱漏洩を低減し、加工性や組立性が良好な冷蔵庫及びその製造方法、冷凍庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる冷蔵庫は、外郭を形成する外箱と貯蔵室を形成する内箱との間に断熱材と真空断熱材を備えた冷蔵庫であって、前記外箱は、複数の平面板が折り曲げられた形状に形成される板材を含んで形成され、前記板材の内箱側の面に、前記複数の平面板に跨るように前記真空断熱材の芯材のある箇所を配設している。
【0024】
第2の本発明に関わる冷蔵庫の製造方法は、冷蔵庫の外郭を形成する両側面板と天面板を構成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、前記外箱の板材に対する非接着部と非接着部との間の接着部を天面板に接着した後に他の接着部を前記両側面板に接着している。
【0025】
第3の本発明に関わる冷蔵庫の製造方法は、複数の平面板を折り曲げた形状を有して冷蔵庫の外郭を形成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、前記外箱の板材の折り曲げ部との間を非接着とする一方、当該折り曲げ部を除いて前記外箱の板材と接着している。
【0026】
第4の本発明に関わる冷蔵庫の製造方法は、冷蔵庫の外郭を形成する両側面板と天面板を構成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、前記両側面板と接着するとともに、前記天面板とは非接着としている。
【0027】
第5の本発明に関わる冷蔵庫の製造方法は、冷蔵庫の外郭を複数の平面板を有して形成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、2つの前記平面板に接着された平面間の前記平面板とは非接着としている。
【0028】
第6の本発明に関わる冷凍庫は、外郭を形成する外箱と貯蔵室を形成する内箱との間に断熱材と真空断熱材を備えた冷蔵庫であって、前記外箱は、複数の平面板が折り曲げられた形状に形成される板材を含んで形成され、前記板材の内箱側の面に、前記複数の平面板に跨るように前記真空断熱材の芯材のある箇所を配設している。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、断熱箱体コーナ部においても断熱性能を低下させることなく熱漏洩を低減し、加工性や組立性が良好な冷蔵庫及びその製造方法、冷凍庫を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係わる実施形態の真空断熱材を用いた冷蔵庫の正面図である。
【図2】図1の冷蔵庫のA−A線断面図である。
【図3】図2の冷蔵庫のX−X線断面図である。
【図4】実施形態1の冷蔵庫に使用する真空断熱材を示す横断面図である。
【図5A】実施形態1の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
【図5B】実施形態1の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
【図5C】実施形態1の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
【図5D】実施形態1の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
【図6A】実施形態2の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
【図6B】実施形態2の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
【図7A】実施形態3の真空断熱材を外箱鋼板の門形形状に合うようにコの字状に折り曲げた後に外箱鋼板に接着する製造工程の一例を示した図である。
【図7B】実施形態3の真空断熱材を外箱鋼板の門形形状に合うようにコの字状に折り曲げた後に外箱鋼板に接着する製造工程の一例を示した図である。
【図8A】実施形態3の真空断熱材を、外箱鋼板を曲げる前の平坦な状態で真空断熱材を接着して配置する製造工程の一例を示した図である。
【図8B】実施形態3の真空断熱材を、外箱鋼板を曲げる前の平坦な状態で真空断熱材を接着して配置する製造工程の一例を示した図である。
【図9】特許文献1の断熱箱体の製造途中の状態を示す斜視図である。
【図10】特許文献2の真空断熱材を冷蔵庫の外箱に張り付ける場合の分解状態の断面図である。
【図11】特許文献3の発泡断熱材を充填する以前の冷蔵庫の分解後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係わる実施形態の真空断熱材を用いた冷蔵庫の正面図であり、図2は図1の冷蔵庫のA−A線断面図である。
実施形態の冷蔵庫1は、上から冷蔵室2、製氷室3aと切替え室(上段冷凍室)3b、下段冷凍室4、および野菜室5を備えている。
冷蔵庫1の冷蔵室扉6a、6bは、それぞれヒンジ10a、10b等を中心に回動する所謂観音開きの扉であり、冷蔵室2の前面開口部を開閉する扉である。
【0032】
貯氷室扉7aと上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9は、それぞれ製氷室3a、上段冷凍室3b、下段冷凍室4、および野菜室5の各前面開口部を開閉する扉であり、全て引き出し式の扉である。
これらの引き出し式扉(7a、7b、8、9)を引き出した場合には、それぞれ製氷室3a、上段冷凍室3b、下段冷凍室4、および野菜室5を形成する容器が各扉と共に引き出されてくる。
各扉6a〜9には、冷蔵庫1の本体を成す箱体1Hと各扉6a〜9とを密閉するためのパッキン11(図2参照)が、各扉6〜9を画成する箱体1H側外周縁に対向する位置に取着されている。
【0033】
図2に示すように、冷蔵室2と製氷室3a及び上段冷凍室3bとの間には、冷蔵温度帯の冷蔵室2と冷凍温度帯の製氷室3a及び上段冷凍室3bとを区画断熱するために仕切断熱壁12が配置されている。仕切断熱壁12は厚さ30〜50mm程度の断熱壁で、スチロフォーム、発泡断熱材(ウレタンフォーム)、真空断熱材等、それぞれを単独使用又は複数の断熱材を組み合わせて製作されている。
【0034】
製氷室3a及び上段冷凍室3bと下段冷凍室4との間には、各室3a、3b、4が同じ冷凍温度帯であるため室間を区画断熱する仕切り断熱壁ではなく単なる仕切りである仕切り部材13を設けている。仕切り部材13の前面には、パッキン11の受面13uが形成されている。
下段冷凍室4と野菜室5との間には、冷凍温度帯の下段冷凍室4と冷蔵温度帯の野菜室5とを区画断熱するための仕切断熱壁14を設けている。仕切断熱壁14は、仕切断熱壁12と同様に30〜50mm程度の断熱壁であり、同じくスチロフォーム、或いは発泡断熱材(ウレタンフォーム)、真空断熱材等で製作されている。
【0035】
基本的に冷蔵、冷凍等の貯蔵温度帯の異なる室の仕切りは、断熱する必要があることから、仕切断熱壁12、14を設置している。
仕切断熱壁12、14は、それぞれ発泡ポリスチレン33と真空断熱材50(50d、50e)で構成されている。この仕切断熱壁12、14については硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填してもよく、特に発泡ポリスチレン33と真空断熱材50に限定するものではない。
【0036】
なお、箱体1H内には、上から冷蔵室2、製氷室3a及び上段冷凍室3b、下段冷凍室4、野菜室5の各貯蔵室を画設しているが、各貯蔵室の配置については特にこれに限定されない。
また、冷蔵室扉6a、6b、製氷室扉7a、上段冷凍室扉7b、下段冷凍室扉8、野菜室扉9の各扉に関しても、回転による開閉、引出しによる開閉、及び扉の分割数等、特に限定するものではない。
【0037】
冷蔵庫1の本体を成す箱体1Hは、冷蔵庫1の外郭を形成する外箱21と、貯蔵室を形成する内箱22とを備えている。
箱体1Hは、外箱21と内箱22との間に形成される空間(スペース)に断熱部を設けて箱体1H内の各貯蔵室(2、3a、3b、4、5)と冷蔵庫1の外部空間とを断熱している。
この外箱21側または内箱22側の何れかに真空断熱材50(50a、50b、50c)を上面部、背面(後面)部、および下面部に配置し、真空断熱材50以外の空間には硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材23を充填している。
【0038】
また、冷蔵庫1の冷蔵室2、冷凍室(3a、3b、4)、野菜室5等の各室を所定の温度に冷却するために冷凍室(3a、3b、4)の背側(後側)には、図2に示すように、庫内を冷却するための冷却器28が備えられている。冷却器28と圧縮機30と凝縮機31と不図示のキャピラリーチューブとを接続し、冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成している。冷却器28の上方には送風機27が配設されており、送風機27は、冷却器28にて冷却された冷気を冷蔵庫1の内部に循環させて所定の低温に維持する。
【0039】
また、内箱22の天面の一部に、発泡断熱材23側に突出したケース45aを有する庫内灯45を配置し、冷蔵庫1の冷蔵室扉6a、6bを開扉したときの庫内を明るく、目視し易くしている。庫内灯45については、LED(Light Emitting Diode)、電球、蛍光灯、キセノンランプ等、特に限定されない。
【0040】
庫内灯45が発泡断熱材23に対して突出して配置されることにより、ケース45aと外箱21の天面板21a1との間の発泡断熱材23の厚さが薄くなってしまう。そのため、図2の例では断熱性が高い真空断熱材50aを、ケース45aと外箱21の天面板21a1との間に配置して断熱性能を確保している。
庫内灯45の位置については、庫内が明るく目視し易くなれば、図示した位置に限定されない。
【0041】
また、箱体1Hの背面上部(図2に示す冷蔵庫1の右上側)には、冷蔵庫1の運転を制御するための電気部品41が実装された基板や電源基板等を収納するための凹部40が形成されている。そして、電気部品41が実装された基板や電源基板を覆う態様でカバー42が覆設されている。
【0042】
ここで、凹部40は発泡断熱材23側に電気部品41を収納する空間だけ窪んだ状態で配置されるため、断熱厚さを確保するためには必然的に内容積が犠牲になってしまう。一方、冷蔵庫1の容量(内容積)をより大きくとると凹部40と内箱22間の発泡断熱材23の厚さが薄くなってしまうという二律背反の関係(矛盾する関係)にある。
【0043】
そこで、図2の例では発泡断熱材23の凹部40側の面に、断熱性が高い真空断熱材50bを配置して断熱性能を確保している。換言すると、発泡断熱材23と電気部品41との間に真空断熱材50bを配置している。
真空断熱材50bは凹部40の形状に合うように、後板21bから凹部40に沿って屈曲させ(折り曲げ)て成形したものを用いている。
また、箱体1Hの背面下部(図2の冷蔵庫1の右下部)に配置された圧縮機30や凝縮機31は発熱量が大きい部品であるため、庫内への熱侵入を防止するため、圧縮機30や凝縮機31から内箱22側への投影面に真空断熱材50cを配置している。
【0044】
<<実施形態1>>
本発明の実施形態1の冷蔵庫1について、説明する。
図3は、図2の冷蔵庫のX−X線断面図である。
実施形態1の冷蔵庫1は、箱体1Hの外箱21を形成する外箱鋼板21aを冷蔵庫1の左・右側面板21a2、21a3と天面板21a1を1枚の鋼板で構成している。
そして、外箱鋼板21aの形状に沿って、外箱鋼板21aの内面(内側の面)に真空断熱材50aを配置したものである。すなわち、外箱鋼板21aの左側面板21a2の内面から天面板21a1の内面、そして右側面板21a3の内面まで、真空断熱材50aが連続した形状で配置されている。
【0045】
真空断熱材50aと外箱鋼板21aは、不図示の粘着タイプのホットメルト接着剤を用いて接着にて配置したが、外箱鋼板21aの折り曲げ部21aoである角部の図3中のB部(図5Bの非接着部分58a)については、ホットメルト接着剤を塗布することなく非接着部とした。真空断熱材50aと外箱鋼板21aとを固着する接着剤は、ホットメルト接着剤以外の接着手段を用いても構わない。
【0046】
ここで、図2に示す真空断熱材50(50a、50b、50c、50d、50e)について図4を用いて説明する。図4は実施形態1の真空断熱材を示す横断面図である。なお、図4では吸着剤54を強調(誇張)して示している。
真空断熱材50は、芯材51として、結合剤等で繊維同士が接着や結着していない無機繊維の積層体である平均繊維径4μmのグラスウールを用いている。このグラスウールは、ガラス繊維を遠心法にて単位面積当たりの質量(以下、目付量と称す)が所定値になるように、層状に積層したガラス繊維の集合体である。グラスウールは、結合剤等により成形されていないため綿状であり、嵩密度が大きいのが特徴である。
【0047】
芯材51を内包する内袋52については、熱溶着可能な合成樹脂フィルムであれば特に限定されないが、高密度ポリエチレンフィルムを用いた。なお、内袋52として高密度ポリエチレンフィルムを用いているが、熱溶着可能な合成樹脂フィルムであればよく、高密度に限らずポリエチレン系のフィルムや、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート等のフィルムとしてもよい。
【0048】
内袋52を覆い外部空間に対して密閉する外被材53については、所定のガスバリヤ性を有する多層のラミネートフィルムでなるものであり、その構成についてはガスバリヤ性とともに熱溶着可能な性質をもち、所定の真空度を維持できるものであれば特に限定されない。
外被材53として、表面保護層、第一のガスバリヤ層、第二のガスバリヤ層、熱溶着層の4層構成からなるラミネートフィルムとした。
【0049】
具体的な構成として、表面保護層をポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムとし、ガスバリヤ性や防湿性等を考慮すると二軸延伸タイプのフィルムが好ましい。
第一及び第二のガスバリヤ層としては、金属、金属酸化物、無機系材料等からなるガスバリヤ膜を備えた二軸延伸タイプのフィルムが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール等のフィルムがある。第一及び第二のガスバリヤ層の何れか一方又は両方に金属箔層を設けてもよい。
【0050】
熱溶着層としては、熱溶着時の強度が要求されるが、例えば低密度、中密度、高密度及び直鎖状低密度等のポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート等のフィルムとすることが多い。
各層のフィルムは二液硬化型ウレタン接着剤を介してドライラミネート法によって貼り合わせられるが、接着剤や貼り合わせの方法については特にこれに限定するものではない。
また、外被材53のラミネート構成については4層構成に限定するものではなく、3層や5層又はそれ以外の複数層でも真空断熱材として所定の性能を確保できるものであればよい。
【0051】
また、吸着剤54については、水分子やガス分子を微細孔で補足する物理吸着タイプの合成ゼオライトを用いたが、特にこれに限定するものではなく、水分やガス(少なくとも酸素O、窒素N、二酸化炭素CO)を吸着するものであれば、物理吸着、イオン結合等の化学反応型吸着のどちらでも構わない。但し、反応性が強く真空断熱材50を構成する材料を変質させたり、副生成物が発生するような材料は当然のことながら使用することはできない。
【0052】
次に、冷蔵庫1の製造方法について、図5A〜図5Dを用いて説明する。
図5A〜図5Dは実施形態1の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
まず、図5Aに示すように、真空断熱材50aを後記の外箱鋼板21aの門形形状(図5D参照)に合うようにコの字状に折り曲げ成形する。この際、真空断熱材50aの折り曲げ部分58の形状は折り曲げの内側に略凸状になるようにした。真空断熱材50aの折り曲げ部分58は、対向する外箱鋼板21aの折り曲げ部21aoの長さより長い寸法をもつ。
この理由は図5B〜図5Dに示すように、外箱鋼板21aに真空断熱材50aを配置する際、外箱鋼板21aの折り曲げ後の寸法と真空断熱材50aの折り曲げ後の寸法にそれぞれ寸法誤差が生じるため、その寸法誤差を吸収する部分として設けるものである。
【0053】
真空断熱材50aの折り曲げ部分58の形状は、図5Aの前方視で曲率をもった形状としている。折り曲げ部分58の形成に際しては、曲率をもった形状の冶具、例えば、丸棒や丸棒様の突出した形状の冶具に真空断熱材50aを徐々に沿わせるようにして成形する。
【0054】
なお、折り曲げ部分58の形状は、外被材53が傷つかない程度の角部を有する形状、例えば蛇腹様の波打ち形状等でもよく、限定されない。例えば、角部と曲率をもった形状でも構わない。
しかし、折り曲げ部分58の形状は、曲率をもった形状(例えば円状横断面、楕円状横断面、その他の曲率がある形状等)の場合、応力集中が発生しづらく外被材53が傷つく可能性が低いため、最も好ましい。
【0055】
そして、図5Bに示すように、折り曲げ成形した真空断熱材50aを不図示の専用の治具や同じく不図示の設備等を用いて保持し、真空断熱材50aの天面板50a1を外箱鋼板21aの天面板21a1に配置する。このとき、外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3は、少し開いた状態にしておく。
【0056】
なお、外箱鋼板21aの内面側には、真空断熱材50aが配置される前に予め粘着タイプのホットメルト接着剤が非接着部分58aを除き、不図示のホットメルト塗布装置にて塗布しておく。ホットメルト塗布装置としては、例えば、ロールコータがある。ロールコータは、ホットメルト接着剤を所定厚さ塗布したロールと、コンベアに載せた鋼板21aとの間隔を調整し、鋼板21aの内面にロール上のホットメルト接着剤を転写し塗布する。
【0057】
そして、図5Cに示すように、外箱鋼板21aの天面板21a1に真空断熱材50aの天面板50a1が押圧され接着された後、開いていた外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3を閉じることで、外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3が、真空断熱材50aの左・右側面板50a2、50a3に接着される(図5D参照)。
【0058】
この際、真空断熱材50aのコーナ部の折り曲げ部分58を鋼板21とは接着をせずに浮かすことにより、外箱鋼板21aの寸法誤差と真空断熱材50aの寸法誤差が吸収され形状が合わないのを防ぐ。また、真空断熱材50aと外箱鋼板21aとの曲げの際の曲率の違いが吸収される。
【0059】
すなわち、真空断熱材50aの非接着部(折り曲げ部分58)は、外箱鋼板21aと真空断熱材50aの折り曲げ寸法にそれぞれ誤差が存在するとともに外箱鋼板21aの曲げ加工のため、それぞれの寸法誤差や加工による引っ張り力等を吸収させる。すなわち、略凸状部分(折り曲げ部分58)を接着しないことで、当該部分が自由に移動できるいわゆる「遊び」としての役割を果たしている。
【0060】
このように、真空断熱材50aの外被材53に働く引張り荷重等の負荷を吸収できるため、外箱鋼板21aの曲げに沿って、真空断熱材50aを無理なく曲げることができる。従って、真空断熱材50aの長期信頼性(長期に亘る信頼性)を、曲げのない場合と同様維持することが可能である。
【0061】
なお、外箱鋼板21aと真空断熱材50aとの接着に使用する接着手段については、特にホットメルト接着剤に限定するものではなく、真空断熱材50aが外箱鋼板21aに接着できるものであればよい。また、真空断熱材50aの側に接着手段を設けてもよく、これについても特に限定するものではない。
【0062】
実施形態1の冷蔵庫1の箱体1Hの断熱性能を、箱体1Hからの熱漏洩量として測定した結果を100(指数)とし、後記する比較例1〜3の断熱性能と比較する。
冷蔵庫箱体の熱漏洩量は、以下のように定義した。
冷蔵庫箱体の熱漏洩量(単位:W)とは、ある温度の部屋の中で、冷蔵庫1内でヒータに通電して温め、冷蔵庫1の各貯蔵室温度が設定したある温度に安定状態になったとき、冷蔵庫1からどれだけの熱量が漏れているかを確認する指標である。
【0063】
実際には、冷蔵庫1を低温に設定した恒温室内に設置し、各貯蔵室内温度と室温の差が、冷蔵庫1の通常使用時の各貯蔵室内温度と室温の差と同じになるように、庫内に設置したヒータおよび庫内ファンを制御する。各貯蔵室内温度が設定した値に安定したときのヒータ入力とファン入力を合わせた値を熱漏洩量として、100(指数)としたものである。
つまり、上述の冷蔵庫1の熱漏洩量を100として基準とし、後記の実施形態、比較例と熱漏洩量の比較を行う。
【0064】
<<実施形態2>>
図6A、図6Bは、実施形態2の冷蔵庫の製造工程の一例を示した図である。
実施形態1では、外箱鋼板21aと真空断熱材50aをそれぞれ折り曲げた後に組み合わせる場合を例示したが、実施形態2においては、図6Aに示すように、外箱鋼板21aを曲げる前の平坦な状態で真空断熱材50aを配置したものである。
【0065】
真空断熱材50aには、予め略凸部59を2箇所設けている。この略凸部59は、実施形態1で示した寸法吸収部の折り曲げ部分58と同じ寸法吸収部の役割を持つ。
図6Aに示す真空断熱材50aは、略凸部59の外箱鋼板21a側への投影面(図6Aの上下方向の投影面)は非接着部とされ、外箱鋼板21aの折り曲げ部21ao上に配置される。真空断熱材50aの略凸部59は、対向する外箱鋼板21aの折り曲げ部21aoの長さより長い寸法をもつ。
【0066】
この非接着部の略凸部59は、前記の寸法吸収部の役割の他、外箱鋼板21aを折り曲げる際の外箱鋼板21aの内側を押さえる押さえ治具(図示せず)が挿入される空間でもあるため、一定の大きさの空間が必要である。この押さえ治具が挿入出来ないと、外箱鋼板21aの折り曲げ部の外側の形状がきちんとでない。
【0067】
押さえ治具とは、外箱鋼板21aの天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3との各折り曲げ部21aoの角度(約90度)をだすための角材状の形状を有する治具である。
実施形態2の冷蔵庫の箱体1Hの断熱性能を、箱体1Hからの熱漏洩量として測定した結果、実施形態1の100(指数)に対し、実施形態2の冷蔵庫1も100であった。
【0068】
<<実施形態3>>
実施形態1、2では、真空断熱材50aを外箱鋼板21aの天面板21a1および左・右側面板21a2、21a3の内面に接着するとともに、天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3とのそれぞれの折り曲げ部に非接着部分58a(図5B参照)を設ける場合を例示したが、実施形態3では、真空断熱材150a、250a(図7A、図8A参照)をそれぞれ外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3の内面に接着するとともに、天面板21a1とは非接着としたものである(図7B、図8B参照)。
【0069】
図7A、図7Bは、実施形態3の真空断熱材を外箱鋼板の門形形状に合うようにコの字状に折り曲げた後に外箱鋼板に接着する製造工程の一例を示した図である。なお、図7Bは上半分を切り欠いた断面で示している。
図7Aにおいて、外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3の内面、または、真空断熱材150aの天面板150a1から折り曲げ成形された左・右側面板150a2、150a3の外面に、接着剤が塗布されている。
【0070】
そして、図7Aの矢印に示すように、外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3を真空断熱材150aの左・右側面板150a2、150a3に向け閉じることで、外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3と真空断熱材150aの左・右側面板150a2、150a3とが接着される。
【0071】
この場合、真空断熱材150aを外箱鋼板21aに接着するに際して、真空断熱材150aの天面板150a1と外箱鋼板21aの天面板21a1とが接着されることなく、クリアランスc1を有して離間して構成している。従って、真空断熱材150aの左・右側面板150a2、150a3が外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21aに接着される際に、真空断熱材150aに引張り力等の負荷が加わることがなく、真空断熱材150aの長期に亘る信頼性(長期信頼性)を損うことが抑制される。
【0072】
図8A、図8Bは、実施形態3の真空断熱材を、外箱鋼板を曲げる前の平坦な状態で真空断熱材を接着して配置する製造工程の一例を示した図である。
図8Aに示すように、真空断熱材250aは、天面板250a1が左・右側面板250a2、250a3より上方に位置した形状、すなわち外箱鋼板21aから離隔するよう形状に成形される。
【0073】
外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3の内面または真空断熱材250aの左・右側面板250a2、250a3の外面に接着剤が塗布され、外箱鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3の内面と真空断熱材250aの左・右側面板250a2、250a3の外面とが接着される。
【0074】
そして、図8Bの矢印に示すように、外箱鋼板21aの左側面板21a2および真空断熱材250aの左側面板250a2と、外箱鋼板21aの右側面板21a3および真空断熱材250aの右側面板250a3とを、外箱鋼板21aの天面板21aおよび真空断熱材250aの天面板250a1に対して、折り曲げ成形することで、図8Bに示す状態に形成される。
【0075】
図8Bの状態においては、外箱鋼板21aの天面板21a1と真空断熱材250aの天面板250a1との間は、接着されておらず、クリアランスc2が形成される。
この場合、真空断熱材250aの天面板250a1は、図8Aに示すように、真空断熱材250aの天面板250a1が対向する外箱鋼板21aの長さより長く形成されるので、外箱鋼板21aの寸法誤差や真空断熱材250aの寸法誤差、図8Bに示すように折り曲げ成形する際の外箱鋼板21aの折り曲げ箇所と真空断熱材250aの折り曲げ箇所との曲率の違い等が吸収される。
そのため、図8Bの折り曲げ成形に際して、真空断熱材250aに引張り力等の負荷が加わることがない。
従って、真空断熱材250aの長期に亘る信頼性(長期信頼性)を損うことが抑制される。
【0076】
上記実施形態1〜3の構成によれば、冷蔵庫1の左・右側面板21a2、21a3と天面板21a1に跨って真空断熱材50a(150a、250a)を配置することで、真空断熱材50a(150a、250a)の面積を大きくできる。そのため、外包材の外被材53によるヒートブリッジの影響を軽減でき、真空断熱材50a(150a、250a)自体の平均熱伝導率を低くできる。
【0077】
また、真空断熱材50a(150a、250a)による被覆面積を大きくできると共に、冷蔵庫1の箱体1Hのコーナ部分(折り曲げ部分21ao)においても芯材51の板厚を保ったまま折り曲げて配置することが可能となり、断熱性能が良好であり消費電力量を低減できる。
【0078】
さらに、真空断熱材50a(150a、250a)を外箱鋼板21aに貼り付ける際に、接着部と非接着部を設けることで、真空断熱材50a(150a、250a)が冷蔵庫1に組み込まれた際に、真空断熱材50a(150a、250a)に引張り力等の負荷がかかるのを軽減でき、長期に亘る信頼性を損なうことが抑制される。
そのため、性能面での信頼性が高い冷蔵庫を提供できるとともに、製造工程における組立性が良好な冷蔵庫1を提供することが可能である。
【0079】
(比較例1)
比較例1では、実施形態1において、真空断熱材50aのコーナ部の折り曲げ部分58の形状を略凸状にすることなく平坦な形状とし、真空断熱材50aを前面(正面)視(図5A参照)でコの字形状とした以外は同じとして、外箱鋼板21aに真空断熱材50aを配置した。
【0080】
その結果、真空断熱材50aの折り曲げ後の前面(正面)視でコの字形状の寸法(正面から見て幅寸法)が少しマイナス目(短め)にできたこともあり、外箱鋼板21aの折り曲げ後の寸法と形状が合わなかった。
この形状ズレに起因し、真空断熱材50aと鋼板21aを接着した際、真空断熱材50aの両側の側面板部分が鋼板21a側に引っ張られた状態になり、真空断熱材50aの外被材53が突っ張った状態のまま箱体1Hに組込まれた。
【0081】
逆に、鋼板21aも真空断熱材50a側に引っ張られた状態となり、鋼板21aの表面に歪(波打ち状の歪)が発生した。なお、鋼板21aの板厚は、実施形態1〜3、比較例1〜3とも4〜5mmである。この鋼板21aの板厚は一例であり、限定されないのは勿論である。
比較例1の冷蔵庫1の箱体1Hの断熱性能を、箱体1Hからの熱漏洩量として測定した結果、実施形態1の100(指数)に対し、比較例1の冷蔵庫も100であった。
しかしながら、比較例1では、前記したように、真空断熱材50aの外被材53が突っ張った状態のまま箱体1Hに組込まれたことや、鋼板21aの表面に歪(波打ち状の歪)が発生するという実施形態1〜3にない不具合が発生した。
【0082】
(比較例2)
比較例2では、実施形態2おいて、真空断熱材50aに予め折り曲げ部分58の略凸部(図5B参照)を設けずに平坦なままの形状とし、非接着部を設けずに真空断熱材50aのほぼ全面を外箱鋼板21aに接着して配置した。
【0083】
その結果、外箱鋼板21aを、左・右側面板21a2、21a3と天面板21aとをそれぞれ折り曲げる際の押さえ治具(角材状の治具)が鋼板21aの左・右側面板21a2、21a3と天面板21aとの折り曲げ部分21aoに挿入できず、外箱鋼板21aの内側の一部しか押さえることができなかった。そのため、外箱鋼板21aの外側の左・右側面板21a2、21a3と天面板21aとの折り曲げ部分21aoに丸みが生じ、所定の形状に成形することができなかった。
【0084】
また、真空断熱材50aの全面を外箱鋼板21aに接着したため、外箱鋼板21aを折り曲げる際に真空断熱材50aが曲げ方向に外箱鋼板21aにより引っ張られてしまい、外被材53に伸びが発生した。この外被材53の伸びは、真空断熱材50aの長期信頼性の面で問題が生じる可能性があると推測される。
比較例2の冷蔵庫1の箱体1Hの断熱性能を、箱体1Hからの熱漏洩量として測定した結果、実施形態1の100(指数)に対し、比較例2の冷蔵庫1は101と少し(1ポイント)悪化していた。
【0085】
また、比較例2の真空断熱材50aの外被材53に伸びが発生していたことから、経時変化を確認するために約1ヶ月後に同じ測定をしたところ、熱漏洩量は102であり、実施形態1に比較して2ポイント悪化していた。比較例2の冷蔵庫1を解体して真空断熱材50aを調べたところ、外被材53が伸びた部分のアルミ蒸着層が薄くなっており、スローリークの状態(ゆっくりした漏洩状態)にあった。
なお、実施形態1〜3及び比較例1についても同様に約1ヶ月後の箱体熱漏洩量を測定したが、特に悪化している様子はみられなかった。
【0086】
(比較例3)
比較例3では、実施形態1おいて、真空断熱材50aのコーナ部の折り曲げ部分58の形状を略凸状(図5B参照)とせずに、真空断熱材50aの折り曲げ部の内側部分に予め溝加工を施した後にコの字形状とした以外は同じとして、外箱鋼板21aに真空断熱材50aを配置した。
【0087】
その結果、真空断熱材50aに「遊び」(実施形態1の図5Aの折り曲げ部分58、実施形態2の図6Bの略凸部59)が無いため、真空断熱材50aと外箱鋼板21aのそれぞれの寸法誤差分で若干形状が合わなかったがそのまま両者を貼り付けたところ、外箱鋼板21aの折り曲げ部分21aoの溝に少し隙間ができてしまった。
【0088】
比較例3の冷蔵庫1の箱体1Hの断熱性能を、箱体1Hからの熱漏洩量として測定した結果、実施形態1の100(指数)に対し、比較例3の冷蔵庫1は102であり、2ポイント悪化した。
これは、真空断熱材50aの折り曲げ部分58に設けた溝加工によって、断熱厚みが減少したことにより熱漏洩量が悪化したものと考えられる。
以上、比較例1〜3では、何れも、実施形態1〜3にない不具合が発生したり、熱漏洩量が多く、実施形態1〜3の構成に比較し、性能が悪化することが明らかとなった。
【0089】
<<その他の実施形態>>
なお、前記実施形態1、2では、天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3とを1枚の鋼板で形成した場合を例示したが、天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3とを、複数の鋼板で構成してもよい。例えば、複数の鋼板をテルミット溶接、アーク溶接等で溶接したり、ネジ止め等で連結して、天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3を形成してもよい。
【0090】
また、前記実施形態1、2では、外箱21と内箱22との間のスペースに発泡断熱材23を充填した場合を例示したが、発泡断熱材23に代替して繊維系断熱材のグラスファイバ等の発泡断熱材23以外の断熱材を用いてもよい。
【0091】
また、前記実施形態1、2では、鋼板を平面板の天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3とに折り曲げて形成した場合を例示したが、平面板は天面板21a1と左・右側面板21a2、21a3に限られず、適宜選択可能である。
例えば、鋼板を平面板の天面板21a1と左側面板21a2に折り曲げて形成したり、鋼板を平面板の天右側面板21a3と底板21e(図2参照)に折り曲げて形成したり、鋼板を平面板の後板21bと左・右側面板21a2、21a3に折り曲げて形成してもよい。
【0092】
なお、前記実施形態1、2では、冷蔵庫1の外郭を形成する外板21を鋼板で形成した場合を例示したが、所定の強度や所定の熱伝導性等の外板21に必要な諸性質が得られれば、外板21は鋼板以外の板材(材料)を用いて構成してもよい。
また、前記実施形態1、2では、冷凍室(3a、3b、4)と冷蔵室(2、5)とを具える冷蔵庫1を例示して説明したが、冷蔵温度帯の冷蔵室で成る冷蔵庫にも、本発明は適用可能である。また、冷蔵庫に限定されず冷凍温度帯の冷凍室で成る冷凍庫にも、本発明は有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室(貯蔵室)
3a 製氷室(貯蔵室)
3b 上段冷凍室(貯蔵室)
4 下段冷凍室(貯蔵室
5 野菜室(貯蔵室)
21 外箱
21a 鋼板
21a1 天面板(平面板)
21a2 左側面板(平面板、側面板)
21a3 右側面板(平面板、側面板)
21ao 折り曲げ部分(折り曲げ部)
21b 後板(平面板)
21e 底板(平面板)
22 内箱
23 発泡断熱材(断熱材)
27 送風機
50、50a 真空断熱材
51 芯材
58 折り曲げ部分(非接着部)
59 凸部(非接着部)
150a1、250a1 天面板(非接着の箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する外箱と貯蔵室を形成する内箱との間に断熱材と真空断熱材を備えた冷蔵庫であって、
前記外箱は、複数の平面板が折り曲げられた形状に形成される板材を含んで形成され、
前記板材の内箱側の面に、前記複数の平面板に跨るように前記真空断熱材の芯材のある箇所を配設した
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記真空断熱材が、前記外箱の板材の折り曲げ部に対向して配置されており、
前記折り曲げ部に対向して配置された前記真空断熱材の部分の厚さは、当該部分以外の前記芯材のある箇所の厚さとほぼ同じである
ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記真空断熱材は、前記外箱の板材に接着により配置されるとともに前記折り曲げ部近傍に非接着部が設けられる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記真空断熱材の非接着部が、前記内箱側に凸状に湾曲して配設されている
ことを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記真空断熱材の非接着部が、当該非接着部に対向する前記板材の非接着の箇所の長さより長く形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記真空断熱材は、2つの前記平面板に接着される平面の間に非接着の箇所を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記板材は、鋼板である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの何れか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
冷蔵庫の外郭を形成する両側面板と天面板を構成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、前記外箱の板材に対する非接着部と非接着部との間の接着部を天面板に接着した後に他の接着部を前記両側面板に接着する
ことを特徴とする冷蔵庫の製造方法。
【請求項9】
複数の平面板を折り曲げた形状を有して冷蔵庫の外郭を形成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、前記外箱の板材の折り曲げ部との間を非接着とする一方、当該折り曲げ部を除いて前記外箱の板材と接着した
ことを特徴とする冷蔵庫の製造方法。
【請求項10】
冷蔵庫の外郭を形成する両側面板と天面板を構成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、前記両側面板と接着するとともに、前記天面板とは非接着とした
ことを特徴とする冷蔵庫の製造方法。
【請求項11】
冷蔵庫の外郭を複数の平面板を有して形成する外箱の板材の内側の面に沿って配設した真空断熱材を、2つの前記平面板に接着された平面間の前記平面板とは非接着とした
ことを特徴とする冷蔵庫の製造方法。
【請求項12】
外郭を形成する外箱と貯蔵室を形成する内箱との間に断熱材と真空断熱材を備えた冷凍庫であって、
前記外箱は、複数の平面板が折り曲げられた形状に形成される板材を含んで形成され、
前記板材の内箱側の面に、前記複数の平面板に跨るように前記真空断熱材の芯材のある箇所を配設した
ことを特徴とする冷凍庫。
【請求項13】
前記真空断熱材が、前記外箱の板材の折り曲げ部に対向して配置されており、
前記折り曲げ部に対向して配置された前記真空断熱材の部分の厚さは、当該部分以外の前記芯材のある箇所の厚さとほぼ同じである
ことを特徴とする請求項12に記載の冷凍庫。
【請求項14】
前記真空断熱材は、前記外箱の板材に接着により配置されるとともに前記折り曲げ部近傍に非接着部が設けられる
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の冷凍庫。
【請求項15】
前記真空断熱材は、2つの前記平面板に接着される平面の間に非接着の箇所を有する
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の冷凍庫。
【請求項16】
前記板材は、鋼板である
ことを特徴とする請求項12から請求項15のうちの何れか一項に記載の冷凍庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50242(P2013−50242A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187265(P2011−187265)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】