説明

冷蔵庫

【課題】 基本的にメンテナンスフリーで、且つ簡易な構成で冷蔵庫内を低酸素で高二酸化炭素状態に保ち、収納食品の鮮度を長期に亙って保持することができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 冷凍あるいは冷蔵貯蔵空間2の内部にオゾン発生装置15とオゾン分解手段16を備えた脱臭装置13を配置するとともに、揮発性有機物を前記貯蔵空間内に放出する手段23を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に係り、特に脱臭装置とともに食品を長期保存するための酸素濃度低減手段を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫は、環境への配慮や経済性に対する関心の高まりを背景に、食品の保存性や省エネルギー化が重視される傾向にある。一般に食品は、冷蔵庫内で保存していても、保存期間の経過などによって無駄に捨てられることが多く見受けられるものであり、食材の廃棄という無駄をなくすとともに常に鮮度の高い食材を得るため、食品を保存する際に素材の持ち味や栄養分、鮮度を長期間に亙って保つ機能が求められている。
【0003】
食品の劣化要因としては、第1に乾燥、酸化があげられる。乾燥に対しては、温度変動が少なく湿度が高い条件下での保存が有効であり、冷蔵庫における各温度帯専用に設けた複数の冷却器のそれぞれの蒸発温度を室内空気温度と近似させることで、冷却器への霜の付着を極力少なくし、貯蔵室内を高湿に保って食品の乾燥を防ぐ方式が広く採用されている。
【0004】
さらに、野菜に関しては、乾燥防止とともに、青果物の熟成にともなって発生する老化ホルモンであるエチレンガスを除去することにより鮮度保持が可能であるが、空気中の酸素による呼吸および蒸散作用での鮮度の劣化は栄養分含有量の低下のみでなく変色等外観面での品質が低下する問題が発生するものであり、本発明では、冷蔵庫内部の酸素濃度を調整する方法に着目する。
【0005】
空気中には約20%の酸素が存在し、この酸素は魚や肉の油脂分の酸化をはじめ食品を劣化させる要因のひとつになっていることから、食品を酸素分圧の小さい雰囲気で保存すれば、微生物、酵素の活性抑制、油脂などの酸化抑制の効果が得られ、鮮度保存性を向上することができる。また、青果物については、一般に低酸素、高二酸化炭素の雰囲気で呼吸が抑制され、鮮度の保持効果があると言われている。
【0006】
一般家庭においては、ファスナー付きの袋に真空パックしたり、密閉容器に収納して減圧するなど市販されている簡易な器具で保存性を向上する方法が採用されており、一方、業務用の保存庫では、真空ポンプで容器内部を減圧することで酸素分圧を下げる方法、あるいは、酸素分離膜、電解膜を用いた方法があり、これらの方法の中では、本発明の出願人による出願である特許文献1に記載されているように、貯蔵室内を減圧することによって減圧大気中の酸素濃度を低減させる方式が、比較的簡単な構成で冷蔵庫に収納保存している食品と酸素とを遮断し、収納貯蔵品の鮮度を長期に保持できる効果を有する。
【特許文献1】特開2004−20113公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記構成の場合、減圧機構として真空ポンプ等を必要とすることから、その設置スペースが大きくなるとともに排気管等の関連機構が必要となり、さらに、減圧状態を維持するための蓋の密閉機構や開閉機構が必要になる等構成が煩雑となる欠点があるとともに、他の方法についても、装置が大掛かりになっってコストが高く、頻繁なメンテナンスが必要になる煩わしさがあった。
【0008】
本発明は上記点を考慮してなされたものであり、基本的にメンテナンスフリーで、且つ簡易な構成で冷蔵庫内を低酸素で高二酸化炭素状態に保ち、収納食品の鮮度を長期に亙って保持することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による冷蔵庫は、冷凍あるいは冷蔵貯蔵空間の内部にオゾン発生装置とオゾン分解手段を備えた脱臭装置を配置するとともに、揮発性有機物を前記貯蔵空間内に放出する手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、収納した貯蔵品を、冷却するとともに貯蔵空間の酸素を消費して低酸素、高二酸化炭素濃度の雰囲気で保存することができ、野菜など生鮮食品の呼吸作用の抑制、油脂等の酸化抑制、酵素活性の抑制、および好気性微生物の活動抑制により、貯蔵品の鮮度を保持して長期保存することができる。さらに、関連構成が簡素化できてスペース効率を向上し、安価で、且つメンテナンスフリーにより使い勝手を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1は本発明に係る冷蔵庫の縦断面図であり、断熱箱体からなる冷蔵庫本体(1)内部の貯蔵空間の最上部には冷蔵室(2)を配置し、その下方には冷蔵室よりやや高温で高湿度に保持された野菜室(3)を仕切り板を介して設けている。野菜室(3)の下方には断熱仕切壁を介して、温度切替室(4)と図示しない製氷貯氷室とを左右に区分して併置しており、最下部には上下2段に区分した冷凍室(5)を独立して配置している。
【0012】
各貯蔵室は、その前面開口部に各々専用の開閉扉を設けて閉塞するとともに、冷蔵空間および冷凍空間のそれぞれの背面に設置した冷蔵用冷却器(6)と冷凍用冷却器(7)および各冷却器の近傍に設けたファン(8)(9)とダクトによって冷気を循環させ、各貯蔵室毎に設定した温度に冷却制御される。
【0013】
冷蔵庫本体(1)の最下部に配置した冷凍空間の背面下部には、機械室空間が形成されており、前記冷蔵用および冷凍用冷却器(6)(7)へ冷媒を供給する圧縮機(10)を設置している。
【0014】
しかして、前記冷蔵室(2)の下方に設けた低温ケース(11)の底壁外面における野菜室(3)へ連通する冷気流路(12)内には、脱臭装置(13)を配設している。この脱臭装置(13)は、概略構成を図2に示すように、光触媒モジュール(15)とオゾン分解触媒(16)とを備え、通路(12)内を流通する冷気に含まれる臭い分子や有機物質を吸着し脱臭するものである。
【0015】
光触媒モジュール(15)は、アルミナやシリカ等の多孔質セラミックからなる基体の表面に、酸化チタンに代表される光触媒粒子を固定した光触媒フィルタ(17)を2枚隣接し、この光触媒フィルタ間にはステンレス等の薄板をエッチングして網目状に形成した放電電極(18)を立設するとともに、前記2枚の光触媒フィルタ(17)(17)の風上と風下側には前記放電電極と同様に形成した対極(19)(19)をそれぞれ配置することで構成されている。
【0016】
(20)は電源回路であり、高電圧発生トランス(21)により前記放電電極(18)と各対極(19)との間に正のパルス状直流高電圧を印加するものであって、この構成により、放電電極(18)と対極(19)は紫外線発生用の放電手段として機能し、双方の電極間に放電が起きて波長が380nm以下である紫外線が発生する。また、(22)はファンであり、冷気通路(12)内の冷気流通を促進して脱臭作用を助長するものであるが、特に設けなくともよい。
【0017】
上記脱臭装置(13)は、電源回路(20)に通電して放電電極(18)と対極(19)との間に電圧を与えることで電極間に放電が起き、発生した紫外線が光触媒フィルタ(17)(17)に照射されることで光触媒を活性化させ、発生した活性酸素の水酸化ラジカル(遊離基)の強い酸化作用で光触媒フィルタ(17)(17)の表面に付着した臭気ガス成分や有機化合物の結合を分解し、無臭化若しくは低臭気化することで脱臭するものである。
【0018】
また、菌細胞膜を脆化させ抗菌をおこなうとともに、酸化分解作用によって光触媒フィルタ(17)(17)表面の微生物、特に好気性細菌の繁殖を抑制して、脱臭装置(15)や貯蔵室壁表面の汚れを分解除去する。
【0019】
臭気物質を酸化分解すると、有機物質が必ず持っている炭素が酸化されて二酸化炭素が発生する。一般に葉物野菜は、空気を呼吸することで酸素を吸収し、鮮度を低下させることが知られているが、二酸化炭素はこの葉物野菜の呼吸を抑制する作用があり、これによって鮮度が保持されるものである。特に光触媒は強い酸化力を有していることから、酸化分解によって二酸化炭素の発生に大きく寄与する。
【0020】
なお、上記光触媒による脱臭装置(13)は、臭気物質の酸化分解による脱臭作用のみでなく、果実等から発生して食品を熟成、すなわち老化させるホルモンであるエチレンを分解する作用を有しており、このエチレン分解作用による食品鮮度の保持効果をも得ることができるものである。
【0021】
そしてまた、この放電電極(18)と対極(19)が放電すると、紫外線とともにオゾンが発生するため、前記光触媒モジュール(15)は、紫外線による活性酸素の発生で有機物質を分解させる機能とともに、オゾン発生手段としても機能するものであり、臭気成分を含んだ冷気を発生したオゾンと混合し反応させることで臭気成分を酸化分解し脱臭することができる。
【0022】
この光触媒モジュール(15)から風下側には、所定距離を空けて、2酸化マンガンを主体にしたハニカム形状の焼結体からなるオゾン分解触媒(16)を設置しており、臭気物質と反応しないでそのまま流下する所定値以上の余剰オゾンを分解するようにしている。なお、オゾン発生手段は、上記の光触媒モジュール(15)によるものだけでなく、沿面放電電極と高電圧トランスを組み合わせたものや電解方式によるものでもよい。
【0023】
以上説明したように、脱臭装置(13)における放電電極(18)や対極(19)の電極間の放電などによるオゾン発生により、貯蔵室内の空気中の酸素は一旦オゾンとなり、臭気物質(有機物)と反応することで、一部酸化した中間生成体となる場合もあるが、さらに二酸化炭素と水に分離するものであり、結果的に密閉貯蔵室内における酸素を消費しその濃度を減少させることができる。
【0024】
しかしながら、現実の冷蔵庫内においては、上記したような脱臭装置の搭載が比較的普及している状況から、オゾンと反応する有機物の量は少なくなっており、酸素の消費を減少させ低酸素効果が低い場合が多い。
【0025】
これに対応するため、本発明では、貯蔵室内に揮発性の有機物を発生させ、散布する手段を設置することを特徴とする。すなわち、アルコールやユーカリ油の主成分であるシネオールなどの人体に無害で揮発しやすい有機物を野菜室(3)などの貯蔵室内に放出するものであり、例えば、野菜室(3)内に青果物を収納したときに、シネオールを含浸させた1〜2mm径の多数のセルロースビーズを一部にスリットを設けた箱状小容器(23)に入れて冷蔵室底部の前記脱臭装置(13)の近傍における前記低温ケース(11)の背面の空間に配置し、シネオール成分が小容器内から徐々に揮発していく作用を利用してオゾンと反応させ、酸素を消費するようにする。
【0026】
上記構成によれば、小容器(23)内のビーズに含浸したシネオール成分はスリットの小さな開口から徐々に漏れ出ることになるので、貯蔵室内の酸素やオゾンと反応する有機物質が常に室内に補充されるものであり、漏れ出る量は微小であって使用者に不快感や悪影響を与えることはほとんどないとともに5〜6年間は交換の必要がないことから、メンテナンスフリーで貯蔵室内の酸素濃度を低減して食品の酸化を抑制し、二酸化炭素の発生を助長することができる。
【0027】
そして、収納した食品を低酸素、高二酸化炭素の雰囲気中で保存することで、野菜の呼吸作用の抑制、微生物、酵素の活性抑制、油脂などの酸化抑制の効果が得られ、鮮度保存性を向上することができるものである。
【0028】
上記につき、本発明者らがおこなった実験の結果を説明する。図3は、アルコールの一種であるエタノールを密閉された野菜室の容器(3a)内に放出させながら前記脱臭装置(13)を運転した際の経過時間による野菜容器(3a)内の二酸化炭素濃度の変化を示した従来との比較グラフである。
【0029】
各実験において、野菜室にはそれぞれ同量の野菜を収納しており、脱臭装置のない従来例を示す(A)では、二酸化炭素濃度が概ね1400ppmのまま時間推移したのに対し、放電条件を8.8kV−60pps(1秒間のパルス発生頻度)としてエタノールを放出した場合(B)はほとんど有意差はなかった。これに対して、放電条件を10kV−500ppsとしてパルス発生頻度を上げた場合(C)は、時間経過とともに二酸化炭素の濃度は増加し、当初1400ppmであった濃度が10時間後には2倍の2800ppm強に増加し、20時間後には4300ppmとなり、発生したオゾンによる有機物の酸化分解反応で二酸化炭素濃度が大量に増加することが明らかになった。
【0030】
前記実施例においては、オゾンと反応させる揮発性の有機物質であるアルコールをセルロースビーズに含浸させることで有機ガス放出体を形成したが、前記したユーカリ油の主成分であるシネオールは、揮発性の抗菌剤でもあり、わさび成分であるイソチオシアン酸アリルなどの通常は常温で液体若しくは固体であって蒸発あるいは昇華しやすく抗菌効果を有するものを揮発性の有機物として使用してもよい。
【0031】
そして、この揮発性抗菌剤をセルロースのビーズに含浸させるなどして樹脂ケースなどで形成した小容器(23)に封入し、ケースに穿設した細孔から抗菌剤である揮発成分を徐々に野菜室(3)内に放出することで室内の抗菌効果を得ることができ、細菌の繁殖を抑制すると同時に、オゾン発生手段である脱臭装置(13)によって酸化分解することで貯蔵室(3)内の酸素を消費し、長期に亙り継続して室内の酸素濃度を減らして二酸化炭素量を増やすことができる。
【0032】
なお、上記実施例においては、脱臭装置(13)および揮発性有機物を収納した小容器(23)を冷蔵室(2)と野菜室(3)との仕切部分の冷気通路に配置した構成で説明したが、これに限らず、冷凍室、あるいは他の貯蔵空間に配置しても同様の効果を得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、脱臭装置とともに酸素濃度低減手段を備えて食品の長期保存をはかるようにした冷蔵庫に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の1実施形態を示す冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】図1における脱臭装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明による揮発性有機物を放出した室内の二酸化炭素濃度の経時変化を示す従来との比較グラフである。
【符号の説明】
【0035】
1 冷蔵庫本体 2 冷蔵室 3 野菜室
3a 野菜容器 11 低温ケース 12 冷気通路
13 脱臭装置 15 光触媒モジュール 16 オゾン分解触媒
17 光触媒フィルタ 18 放電電極 19 対極
20 電源回路 21 高電圧トランス 22 ファン
23 小容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍あるいは冷蔵貯蔵空間の内部にオゾン発生装置とオゾン分解手段を備えた脱臭装置を配置するとともに、揮発性有機物を前記貯蔵空間内に放出する手段を設けたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
小容器内に収納した揮発性有機物を貯蔵室内に徐々に漏れ出るように形成した有機ガス放出手段を冷蔵空間の冷気通路に設置し、冷気通路の下流側に野菜貯蔵室を配置したことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
揮発性有機物を含浸させた固体からなる浸透体を小容器内に収納したことを特徴とする請求項2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
脱臭装置を、オゾンおよび紫外線を発生させる高電圧放電手段とこの高電圧放電手段で発生させた紫外線で活性化される光触媒モジュールとから形成したことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項5】
固体若しくは液体で蒸発や昇華しやすい揮発性抗菌剤を揮発性有機物としたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−322662(P2006−322662A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146028(P2005−146028)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝家電製造株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】