説明

冷蔵庫

【課題】野菜の長期保存に適する冷蔵庫を提供すること。
【解決手段】野菜の栄養分となる栄養液を野菜室に噴霧する冷蔵庫であって、栄養液ボトル4bの中の栄養液4aの残量に関する情報を報知する栄養液残量ランプ2、噴霧器9の噴霧タイミングを制御する噴霧器制御タイマー3、栄養液4aが入っている栄養液ボトル4b、栄養液ボトル4bをホルダー6に、液漏れなく、かつ、スムーズに脱着可能に載置するためのカートリッジ5、ホルダー6、栄養液供給パイプ7、及び噴霧器9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の長期保存に適する冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の野菜の保存方法として、冷蔵庫内の乾燥状態を防ぐため、庫内を高湿度状態に保つ方法が提唱されている。
【0003】
その冷蔵庫の構成は、冷蔵庫内に湿度センサー及び加湿装置を設け、庫内の湿度が下がると湿度センサーからの指令により、加湿装置が作動し、庫内の湿度を一定に保つものである。その加湿の基になる水分には、除霜水を利用している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−257933号公報
【特許文献2】特許第2865412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような保存方法では、野菜を長期に保存することはできない。なぜなら、水分(除霜水等)による加湿では、単に冷蔵庫内の乾燥状態を防ぐのみであり、野菜に必要な栄養成分の供給にはならないからである。
【0005】
具体的には、以下の通りである。
【0006】
野菜は生きていくために呼吸活動を行う必要がある。そして、この呼吸活動を行うために野菜はエネルギーを消費し、このエネルギーがすべて使い尽くされると枯死してしまう。
【0007】
従来技術は、冷蔵庫内の野菜が乾燥して鮮度が劣化することを防止するために、冷蔵庫内を加湿して野菜の鮮度を維持するものである。しかし、この加湿では、水分を与えるのみであるから、野菜の呼吸に必要なエネルギーが消費されるにつれて鮮度が落ちてしまう。
【0008】
このため、野菜を新鮮な状態で長期に保存することはできなかった。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて成されたものである。その目的は、野菜の長期保存に適する冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷蔵庫は、上記の目的を達成するもので、請求項1に記載の発明は、野菜に噴霧されて野菜の栄養分となる栄養液と、該栄養液を蓄えて、庫内に噴霧する噴霧器とを備えることを特徴とする冷蔵庫である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記噴霧器が定期的に前記栄養液を噴霧するように制御するタイマーを備えることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫である。これにより、定期的に野菜に栄養を噴霧することができて、少ない量の栄養液を有効利用しつつ長期に野菜を保存することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記噴霧器に蓄えられる前記栄養液の残量を検知して報知する残量報知手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫である。これにより、栄養液の残量を使用者に報知することができるので、栄養液がなくなってしまって、野菜の鮮度が落ちてしまうことを防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、該残量報知手段は、所定の高さにおける液体の存在の有無を検出して報知する液面センサーであることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫である。これにより、栄養液の残量が少なくなった場合にそのことを使用者に報知することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、野菜に噴霧されて野菜の栄養分となる栄養液を蓄えて、庫内に噴霧する噴霧器と、該噴霧器が12時間以上に1度の割合で前記栄養液を噴霧するように制御するタイマーとを備えることを特徴とする冷蔵庫である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記栄養液を該冷蔵庫の外部から前記噴霧器に供給する液体供給手段を備えることを特徴とする請求項5記載の冷蔵庫である。これにより、冷蔵庫内の噴霧器に栄養液を供給する構成を省略することができるので、構造を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、野菜に単に水分を供給するだけでなく、その呼吸活動に必要なエネルギーも併せて供給することができるので、冷蔵庫は野菜を長期にわたって新鮮な状態で保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1〜図3は本発明の第1実施形態に係り、図1は冷蔵庫の断面図、図2は図1のA部拡大図、図3は図1のB部拡大図である。
【0019】
図1に示すように、本冷蔵庫100は、栄養液残量ランプ2、噴霧器制御タイマー3、栄養液ボトル4b、カートリッジ5、ホルダー6、栄養液供給パイプ7、及び噴霧器9を備える。栄養液残量ランプ2は、栄養液ボトル4bの中の栄養液4aの残量に関する情報を報知するランプであり詳細は後述する。噴霧器制御タイマー3は、噴霧器9の噴霧タイミングを制御するタイマーであり詳細は後述する。栄養液ボトル4bは、栄養液4aが入っているボトルであり、本冷蔵庫100の本体と共に、また、本冷蔵庫100の本体とは別売りで、市販することを予定しており、詳細は後述する。カートリッジ5は、栄養液ボトル4bをホルダー6に、液漏れなく、かつ、スムーズに脱着可能に載置する。詳細は後述する。ホルダー6は、栄養液ボトル4bをホルダー6を介して載置して、栄養液ボトル4bの中の栄養液4aを栄養液供給パイプ7を介して噴霧器9に供給する。栄養液供給パイプ7は、プラスチック又はステンレスなどの管からなり、ホルダー6に載置される栄養液ボトル4bの中の栄養液4aを噴霧器9に導く。噴霧器9は、栄養液供給パイプ7を介して供給される栄養液4aを野菜室8に噴霧する。詳細は後述する。
【0020】
上記、栄養液4aは、野菜に噴霧されて野菜の栄養分となる成分を含む液体であり、水溶性ミネラル含有液が添加された水が好適である。
【0021】
ここで言う水溶性ミネラル含有液とは、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを粉砕混合した後、加水して醗酵熟成し、さらに濾過して得られた醗酵熟成液であって、5〜9重量%のミネラル成分を含有するもののことである(特許文献2参照)。
【0022】
上記水溶性ミネラル含有液の成分としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、燐、銅、亜鉛、マンガン、硫黄、及び珪素などのミネラル元素が多く含まれている。また、上記のように水溶性ミネラル含有液は、澱粉、種子等を原料としているため、原料に含まれている有機質(糖分、炭水化物、タンパク質等)も含まれている。
【0023】
そして、上記水溶性ミネラル含有液を水に添加すると、水分子間の水素結合力の働きによって構成される分子集団(クラスター)は細分化され(細分化された分子集団の大きさは、10Å以下である。)、さらに、水の良質化(ミネラル、有機質含有量の増加)を図ることが可能になる。
【0024】
このような、水溶性ミネラル含有液が添加された水を野菜に噴霧することによる作用について、以下に説明する。
【0025】
野菜は、その体を構成する細胞の働きが正常に保たれることにより、長期にわたって鮮度を維持することができる。しかし、野菜は生きていくために呼吸活動を行うため、この呼吸活動に必要なエネルギーを消費してしまう。そのため細胞は縮小し、その機能は低下してしまうため、野菜は枯死してしまう。
【0026】
以上の理由により、細胞の働きを正常に保つために、栄養液4aを野菜室8内の野菜に定期的に噴霧し、野菜の呼吸活動に必要な栄養素(ミネラル及び有機質)を供給するのである。
【0027】
具体的には、通常の除霜水等の水分は、HO分子が集団となって野菜の細胞壁の隙間(およそ10Å)よりも大きなクラスターを形成するため、野菜の細胞内まで浸透することができない。しかし、栄養液4aの場合は、分子集団が野菜の細胞壁の隙間よりも小さいため、野菜の細胞内部まで浸透することができる。
【0028】
これにより、野菜が呼吸を行うことにより失われる細胞内のエネルギーを栄養素として、直接細胞内に供給することができるため、野菜の呼吸活動に伴う細胞の縮小を抑えることが可能になる(鮮度維持が長期可能になる。)のである。
【0029】
以下、栄養液4aの野菜への本冷蔵庫による噴霧例を説明する。
【0030】
まず、栄養液4aが収められている栄養液ボトル4bにカートリッジ5を装着する。
【0031】
図2に示すように、カートリッジ5は、シートパッキン12、ピストン13、及びスプリング14を有し、栄養液ボトル4bの蓋として機能すると共に、栄養液ボトル4bが逆さまにされてホルダー6に載置された状態では、栄養液ボトル4bから栄養液4aをカートリッジ5及びホルダー6を介して栄養液供給パイプ7に供給するように機能する。シートパッキン12は、ゴムなどの弾力性のある素材でドーナッツ形に形成されており、ピストン13の先に固着され、ピストン13がスプリング14によって押圧係止されている状態ではカートリッジ5の開口を封止し、ピストン13がスプリング14の押圧に抗して突き出した状態ではカートリッジ5の開口を開いて栄養液4aを栄養液供給パイプ7に供給する。ピストン13は、一端に円形の平板が固着された円柱形の金属からなり、他端にはシートパッキン12が封密状態に嵌合されている。スプリング14は、通常のコイルばねであり、通常はシートパッキン12を封止の状態に係止し、ピストン13がホルダー6によって押圧されて突き出したときには、カートリッジ5を開口状態にする。このために、カートリッジ5は、その内周が、栄養液ボトル4bの首のオスねじにかみ合うメスねじになっていて、中央には、栄養液4aが通る開口部があり、その開口部はシートパッキン12によって封止状態と開口状態となることができる構造である。
栄養液ボトル4bにカートリッジ5をねじ込んで装着すると、栄養液ボトル4bが封止された状態になり、これをホルダー6に押し込んで載置すると、スプリング14が押し込まれ、ピストン13が上方へ伸び上がり、開口部が開口状態になる。そして、栄養液ボトル4b内部の栄養液4aが、ホルダー6に接続された栄養液供給パイプ7を通じて、噴霧器9へ供給される。
【0032】
カートリッジ5とホルダー6は、カートリッジ5内部のメンテナンスを考慮し、脱着式が望ましい。
【0033】
図3に示すように、噴霧器9は、ノズル10、液面センサー11、超音波振動子16、貯水室17、及びパイプ受け18を備える。ノズル10は、貯水室17からの管の先を細めて噴霧された栄養液4aが遠くまで行き渡るようにする。液面センサー11は、所定の高さにおける液体の存在の有無を検出して電気信号として報知するものであり、既製のものが使える。超音波振動子16は、多くの加湿器などに使われているものであり、超音波振動によって液体を霧状に変換するものである。貯水室17は、栄養液4aを噴霧するために貯蔵する。栄養液供給パイプ7からの栄養液4aが貯水室17への供給口をふさぐ程度まで貯水されると、栄養液ボトル4bから栄養液供給パイプ7にかけては密閉された空間になって空気が供給されないので、栄養液4aがその水位以上に供給されることはなくなり、栄養液が消費されて少なくなり、貯水室17への供給口まで水位が下がると空気が栄養液供給パイプ7から栄養液供給パイプ7へと供給されて、再び栄養液が供給され水位が上昇する。パイプ受け18は、栄養液供給パイプ7が接続されて、栄養液供給パイプ7からの栄養液4aを貯水室17に導く。
【0034】
この噴霧器9の制御は噴霧器制御タイマー3にて行われる。具体的には、噴霧器制御タイマー3からの信号により超音波振動子16を振動させ、噴霧器9内部に交流電圧を印加させ、貯水室17内部に蓄えられた栄養液4aを霧状に変換して上方へ押し上げる。そして、野菜室8の背面に連結されているノズル10から野菜室8内部に保管されている野菜に噴霧される。上記ノズル10は、冷蔵庫の設計に合わせ、野菜室8の上方、側面等へ連結させてもよい。
【0035】
野菜室8に保管されている野菜への栄養液4aの噴霧頻度は、12時間以上に一度が望ましい。
【0036】
従来技術では、2〜3時間に1度は庫内を加湿しなければ乾燥状態を防ぐことができず、多頻度での噴霧が必要であった。しかし、本発明では最低でも12時間に一度の栄養液4aの噴霧という少頻度で野菜が従来よりも長期間保存することが可能になる。
【0037】
栄養液4aの噴霧頻度設定は上記の通り、噴霧器9を制御する噴霧器制御タイマー3にて行うことになる。噴霧頻度設定は、24時間内で設定できるようになっており、以後もこの設定データを記憶させることができる。
【0038】
以上のように、栄養液4aの噴霧を行い、貯水室17内部の栄養液4aの残量が少なくなると、噴霧器9の内部に設けた液面センサー11からの信号により、栄養液残量ランプ2が点灯する。これにより本冷蔵庫100の利用者は栄養液4aの残量が少なくなるとこれを把握することができる。
【0039】
また、貯水室17内部に栄養液4aが供給されると、液面センサー11からの信号が途絶え、栄養液残量ランプ2の点灯はストップされる。
【0040】
図4は本発明の第2実施形態にかかる冷蔵庫200である。冷蔵庫200では、野菜室8が多段式になっており、それに伴い噴霧器9のノズル10も野菜室8の段数に応じて設置される。
【0041】
また、噴霧器9の制御を行う噴霧器制御タイマー3も、各野菜室8に適する量の栄養液4aを噴霧できるように、噴霧器9を制御する。
【0042】
これにより、例えば、栄養液4aを野菜室8の上段には12時間に1度の頻度で、下段には24時間に1度の頻度で噴霧を行うということができ、従来よりもきめ細かく柔軟に野菜の保存を行うことが可能になる。
【0043】
本発明の冷蔵庫は上記のような構成であり、従来の単に冷蔵庫内の乾燥状態を防ぐための加湿を行う場合よりも、噴霧頻度が大幅に減少するにもかかわらず、野菜を極めて長期に保存することができるという効果を得られる、極めて実用的な冷蔵庫である。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、栄養液ボトルを装着するためのカートリッジホルダーや噴霧器の設置箇所や位置関係、各種センサーの配置等、状況に応じて適宜選択されるものである。
また、上述した実施の形態の他に、栄養液ボトルとして、万年筆のインクカートリッジのように、栄養液ボトルを差し込むことで、栄養液ボトルの封止が破られて、中の栄養液が供給される構造でもよい。また、栄養液ボトルをはめ込む方式で装着するものでもよい。さらに、使用者が栄養液ボトルから貯水室に栄養液を注ぐ構造でもよい。
噴霧器は、超音波振動によらない原理によるもの、たとえば、圧縮空気を使って霧吹きの原理を使って噴霧する構造などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態を示す冷蔵庫の断面図
【図2】図1のA部拡大図
【図3】図1のB部拡大図
【図4】本発明の第2実施形態を示す冷蔵庫の断面図
【符号の説明】
【0046】
100、200 冷蔵庫
2 栄養液残量ランプ
3 噴霧器制御タイマー
4a 栄養液
4b 栄養液ボトル
5 カートリッジ
6 ホルダー
7 栄養液供給パイプ
8 野菜室
9 噴霧器
10 ノズル
11 液面センサー
12 シートパッキン
13 ピストン
14 スプリング
16 超音波振動子
17 貯水室
18 パイプ受け
20 引き出し
21 コンプレッサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜に噴霧されて野菜の栄養分となる栄養液と、
該栄養液を蓄えて、庫内に噴霧する噴霧器と
を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記噴霧器が定期的に前記栄養液を噴霧するように制御するタイマーを備えることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記噴霧器に蓄えられる前記栄養液の残量を検知して報知する残量報知手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
該残量報知手段は、所定の高さにおける液体の存在の有無を検出して報知する液面センサーであることを特徴とする請求項1又は3記載の冷蔵庫。
【請求項5】
野菜に噴霧されて野菜の栄養分となる栄養液を蓄えて、庫内に噴霧する噴霧器と、
該噴霧器が12時間以上に1度の割合で前記栄養液を噴霧するように制御するタイマーと
を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
前記栄養液を該冷蔵庫の外部から前記噴霧器に供給する液体供給手段を備えることを特徴とする請求項5記載の冷蔵庫。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−198677(P2007−198677A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18485(P2006−18485)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(506031395)
【出願人】(506031409)
【出願人】(305060408)
【出願人】(506031410)
【出願人】(506031432)
【Fターム(参考)】