説明

冷蔵庫

【課題】従来の構成では光触媒励起の光源として紫外線を用いるため、紫外線が人体(目や肌)に及ぼす影響を回避するために、使用者からは紫外線が見えない場所に光源およびフィルタを配置する必要があり、設置場所の制約が多かった。また、必然的に断線等で光源が点灯しない故障が生じた場合などのいわゆるメンテナンス作業が困難である場合が多かった。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機が設けられた圧縮室と、圧縮された冷媒が放熱する凝縮器と、放熱した冷媒が吸熱する冷却器が設けられた冷却室と、扉を有する貯蔵室と、貯蔵室に冷却室の冷気を風路を介して送る送風機と、風路内に設けられた可視光応答型光触媒が担持されたフィルタと、フィルタに光が照射される位置に設けられ、可視光応答型光触媒を励起する波長の光を含む可視光を照射する光源とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷蔵庫内の空気の浄化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食材の多様化や食の安全化気質の高まり等により、冷蔵庫庫内の脱臭・除菌技術、および、食品の高品質保存技術には非常に高いニーズがある。
【0003】
従来の冷蔵庫における脱臭・除菌装置としては、光触媒として酸化チタンを担持させたフィルタに紫外線を照射し、光触媒反応を用いて冷蔵庫内の有機物質などを酸化、分解する方法が用いられている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−42644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構成では光触媒励起の光源として紫外線を用いるため、紫外線が人体(目や肌)に及ぼす影響を回避するために、使用者からは紫外線が見えない場所に光源およびフィルタを配置する必要があり、設置場所の制約が多かった。また、必然的に断線等で光源が点灯しない故障が生じた場合などのいわゆるメンテナンス作業が困難である場合が多かった。
【0006】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、第一に設置場所の制約の少なく、第二にメンテナンス性に優れた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
冷媒を圧縮する圧縮機が設けられた圧縮室と、圧縮された冷媒が放熱する凝縮器と、放熱した冷媒が吸熱する冷却器が設けられた冷却室と、扉を有する貯蔵室と、貯蔵室に冷却室の冷気を風路を介して送る送風機と、風路内に設けられた可視光応答型光触媒が担持されたフィルタと、フィルタに光が照射される位置に設けられ、可視光応答型光触媒を励起する波長の光を含む可視光を照射する光源とを備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明の構成とすることで、光触媒を励起する光源を貯蔵室内を照らす照明として用いることや、光触媒自体を貯蔵室の扉側、つまり使用者から直接視認される可能性のある場所に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る空気浄化ユニットの内部斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る空気浄化ユニットと背面板の組み立て図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る風路構成図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る切替室の断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る切替室の可動センサ部の部品構成図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る冷蔵庫の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係る冷蔵庫の風路系統図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る冷蔵庫の風路系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る冷蔵庫の断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化ユニットの内部斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化ユニットと背面板の組み立て図、図4はこの発明の実施の形態1に係る風路構成図である。
【0011】
冷蔵庫1は、上部に冷蔵室2、その下に切替室3、さらにその下に冷凍室4、一番下に野菜室5を備え、冷蔵室2の開閉は前面側に設けられた扉6、切替室3の開閉は前面側に設けられた扉7、冷凍室4の開閉は前面側に設けられた扉8、野菜室5の開閉は前面側に設けられた扉9でそれぞれ行われる。冷蔵庫1の背面側には中間部に冷却室10が設けられ、その冷却室10の下方には圧縮機11が設けられ、その冷却室10の上方には冷蔵室2の背面側風路設置部12が設けられている。
【0012】
冷蔵室2内には物を設置するための棚板が一番上から棚板13、14、15、16と4枚設けられ、これらは背面板17に当接するように設置されている。この実施の形態1では棚板が4枚設けられ、一番下の棚板16と冷蔵室2の底面18との間に引き出し19を設置しているが、こういった棚板の枚数や引き出し19の有無は適宜変更可能である。
【0013】
使用者が室内の温度を広範囲に渡って選択可能な切替室3には引き出し20が設けられており、冷凍室4には引き出し21が設けられており、野菜室5には引き出し22が設けられている。
【0014】
冷却室10内には圧縮機11と配管で接続された冷却器23が設けられ、この冷却器23の上方には内臓モータにより回転するファンを有する送風機24が設けられ、この冷却器23の下方にはヒータ25が設けられている。
【0015】
圧縮機11が設けられている部屋を圧縮機室26とすると、この圧縮機室26内の圧縮機11よりも上方にドレンパン27が設置されている。この圧縮機室26の上部と冷却室10の下部とは配管28を介して連通している。
【0016】
冷蔵室2の背面側風路設置部12には冷気が通過する風路と空気浄化ユニット29が設けられている。この空気浄化ユニット29の構造を詳細に記したのが図2である。空気浄化ユニット29は、大きく分けて上側空間部30と下側空間部31の二つの構成からなる。上側空間部30はこの空間部分を形成する筐体32の内部を冷気が流れる構造となっており、側面の下側に流入口33a、33bが設けられ、側面の上側に流出口34a、34bが設けられている(図2では流入口33b、流出口34bの記載を省略している)。上側空間部30のこれら流入口33a、33bと流出口34a、34bの間の位置には筐体32から取付部35が突出しており、この取付部35にフィルタ36を設置することで、上側空間部30を二分割する構造となっている。取付部35とフィルタ36によって分割された上側空間部30の中でも流入口33が配された空間部には光源37が設けられている。なお、光源37を内蔵する構成となっているので筐体32には光を透過する材料が用いられている。
【0017】
光源37のリード線38は下側空間部31に伸びており、下側空間部31でコネクタ39に接続される。また、やはり下側空間部31には温度センサ40も設けられており、この温度センサ40のリード線41は光源37のリード線38とまとめられてコネクタ39に接続される。このコネクタ39が冷蔵庫1の本体配線(図示せず)に直接結線される。このように本来、光源37や温度センサ40それぞれにコネクタが必要なところを、一つのコネクタ39に集約したことで、部品点数が削減され、コスト低減が成されるとともに、冷蔵庫1への空気浄化ユニット29の取付け結線作業が容易となる。
【0018】
この空気浄化ユニット29を取り付ける際の背面板17の組み立て方法を示したのが図3である。冷蔵室2の内側の背面と背面板17との間に空気浄化ユニット29が位置するようになっており、背面板17に設けられた窓部42に空気浄化ユニット29の筐体32が対向するようになっている。
【0019】
図4は冷蔵室2の背面板17に設けられた風路構成を示すものである。この風路が設けられた面が冷蔵庫1の奥側を向くように設置されることで背面側風路設置部12が形成される。この背面板17の基本構成は、冷蔵室2へ冷気を吹き出すための吹き出し口が複数設けられたパネル43と、このパネル43上に設置されるものであって溝が形成された発泡スチロール等からなるダクト構成部品44と、図示しないがこのダクト構成部品44の溝の開口を塞いでダクト(風路)を形成するシール部材とからなるものである。この図では空気浄化ユニット29が背面板17に取り付けられた状態を示すことで、風路と空気浄化ユニット29との関係を示しており、以下図を用いて説明する。
【0020】
風路は、冷却室10(図4では示さず)と連通する風路45と、この風路45から右左に分かれた風路46、47(冷蔵室2の扉6側から見ると右左は逆になる)と、この風路46から更に分岐された風路(分岐側から順に風路48、49、50とする)と、風路47から更に分岐された風路(分岐側から順に風路51、52、53とする)と、空気浄化ユニットに流入する冷気が流れる右側の風路54aと、空気浄化ユニットに流入する冷気が流れる左側の風路54bと、空気浄化ユニット29から流出した冷気が流れる右側の風路55aと、空気浄化ユニット29から流出した冷気が流れる左側の風路55bとからなる。このうち風路48には吹き出し口56が設けられ、この吹き出し口と同じ高さの吹き出し口57が風路51の先に設けられている。同じく、風路49、52の先には吹き出し口58、59が設けられ、風路50、53の先には吹き出し口60、61が設けられている。また、風路55aの吹き出し口は風路46の吹き出し口62が兼ねており、風路55bの吹き出し口は風路47の吹き出し口63が兼ねている。なお、風路55a、55bが、風路46、47に再合流した後に冷蔵室2への吹出し口62、63へ連結される構成としても良い。このようにすることにより、冷蔵室冷却風路主流の圧損影響を最小限に抑えながら、フィルタ36の能力を引き出すことができるものである。
【0021】
以上のように構成される冷蔵庫1の冷蔵室2内への冷気の流れを中心にさらに詳細に説明する。図1に示すように圧縮機11と、図示しない凝縮器と、蒸発器の働きをする冷却器23とにより構成される冷凍サイクルにより冷却室10内の空気の温度が低下する。この低温の空気、すなわち冷気は、送風機24によって各室に送られる。このうち冷蔵室2へ向かう冷気は、温度センサ40で検知された温度に従って、冷蔵室ダンパ64で流量を調節されてから背面側風路設置部12に流れ込む。この背面側風路設置部12では図4に示すように冷蔵室ダンパ64の下流側に設けられた風路45から分岐した風路46と風路47を流れていき、途中設けられた各分岐風路48、49、50、51、52、53に冷気を分けながら吹き出し口62、63から冷蔵室2内へ流れ出す。これら分岐風路からの冷気は、冷蔵室2内から見てほぼ同じ高さに設けられた吹き出し口56、57から冷蔵室2内に流れ込み、例えば棚16上の食品等をまんべんなく冷却するようになっている。同様に冷蔵室2内から見てほぼ同じ高さに設けられた吹き出し口58、59や吹き出し口60、61も各棚上の食品等を冷却する。なお、棚が高さを変更できる方式の冷蔵庫もあることから、これら分岐した風路56乃至61は常に棚と棚の中央に吹き出し口があるとは限らない。
【0022】
一方、風路50、53を流れる冷気の一部は前述した吹き出し口60、61から冷蔵室2内に流れ出すが、その他は風路54a、54bを通って空気浄化ユニット29の流入口33a、33bから内部に流れ込み、浄化された冷気は風路55a、55bを流れて、風路46、49から流れてきた冷気とともに吹き出し口62、63から冷蔵室2内に流れ出す。
【0023】
このように、主たる風路46、47から分岐した風路50、53の吹き出し口60、61のさらに先の風路54a、54bと空気浄化ユニット29を連通したので、フィルタ36の目詰まりや、フィルタ36の位置ズレといった不具合が生じても、庫内冷却能力は担保されている。
【0024】
空気浄化ユニット29で冷気を浄化する仕組みは、以下の通りである。空気浄化ユニット29の筐体32の対向する2側面に設けられた流入口33a、33bから上側空間部30に流入した冷気は、フィルタ36を通過することで菌や臭い成分が除去される。このフィルタ36から見て冷気の流れの上流側にはLEDからなる光源37が設けられている。光源37には幾つかの役割があるが、そのうちの一つはフィルタ36による浄化能力の発揮である。フィルタ36に担持されている物質に可視光応答型光触媒がある。可視光応答型光触媒とは、一般的な紫外線波長の光でのみ活性化された光触媒とは異なり、可視領域波長の光でも冷気中の成分が活性化(例えば、イオン化やラジカル化)するものである。これによって、菌や臭気成分(有機物質)が酸化分解される。具体的には、酸化チタンを窒素ドーピングし酸素の一部を窒素で置換したものや、酸化チタンに白金、あるいは、鉄等の化合物を配合したものなどを例示することができる。つまり、光源37によりフィルタ36に担持された物質の中でも可視光応答型光触媒が特に活性化されるものである。また、フィルタ36には抗酸化剤を担持させてもよい。抗酸化剤とは、抗酸化剤自身が酸化されることにより、付着対象物の酸化を抑制するものであり、食品を対象とした抗酸化剤としては、L−アスコルビン酸、ローズマリー抽出物質などを例示することができる。これらのうち、少なくとも1種以上をフィルタ36で担持して、冷気通過によって、抗酸化剤がフィルタから脱着し、冷蔵室2内へ放出され、貯蔵されている食品へ到達し、食品の酸化抑制効果を得られるものである。
【0025】
なお、フィルタ36は、有機材不織布を綿状に集約したものや、有機材不織布をシート状に伸ばし、折り返したプリーツ形状のものや、あるいは、無機質セラミックスに担持体を焼結させたものをハニカムコルゲート状としたもの等、基材や形態は、風路圧損、あるいは、光照射範囲・透過率、等により任意に選択決定できるものである。
【0026】
その他の光源37の役割として挙げられるのは照明としての機能である。前述したように空気浄化ユニット29は背面板17の透明な化粧カバーで覆われた窓部42から光を透過する材料で作られた筐体32の湾曲した面が冷蔵室2内に露出するように設置されるため、冷蔵室2内の後側を広く照らすことになる。一般に冷蔵室内の照明は照射可能範囲を稼ぐために、天井面に設けられたり、側面に設けられたりするものが多い。冷蔵室の奥に設けられる場合もあるが、その場合は冷蔵室の上から下まで照明を設けることで照射範囲を広げている。この実施の形態の発明では、冷蔵室の後方の壁の中央部よりもやや上側に光源3を設けているが、これは補助的な照明である。主たる照明は天井面や側面に設けることとなる。このように冷蔵室2内の奥側に補助的な照明を設けることで、室内の奥に置かれた食品等が見えやすくなるという効果も得られるが、それ以外にも背面板17の色彩を正確に表現するという機能もある。一般的に商品が家電売り場に陳列される場合、商品をより魅力的に見せるため、商品に様々な角度から光を当てられるように周辺に専用の照明器具を設置することが多い。特に最近の冷蔵庫の場合は外観だけでなく冷蔵室等の貯蔵室内の配置や色彩も注目されるため、庫内を照らすための照明を別途設置して、庫内照明だけの場合よりも明るくした状態でディスプレイされている場合が増えている。そのため、購入後に自宅で庫内照明だけで使用してみると、店頭で見た場合よりも暗く感じるケースも多い。この実施の形態で説明する発明のように補助的な光源37で背面板17の周囲を明るくするだけで、店頭での見え方とほぼ同じような明暗で貯蔵室内を照らすことができ、違和感を軽減できる。
【0027】
なお、光源37はフィルタ36に担持された可視光応答型光触媒の励起を得られる波長を含む光を放射することができる必要がある。具体的には、青色(波長470nm付近)を発光するLEDを例示することができる。なお、光源37は、触媒の励起を得られる波長の光を所定量発光できるものであれば良く、例えば、白色(青色と黄色の組合せ等による)のLEDなどでも良い。また、光源の数量に関しても特に規定はなく、所定量発光するために、例えば複数個LEDを搭載し、また、各LEDの発光色を異色の組み合せとすることも可能である。光源37の具体的構成としては、チップ状のLEDを実装した基板を、透明、あるいは、光を透過する樹脂等にて成形された円筒状のケースに溝等の勘合により所定位置に保持し、透明ケース解放端よりリード線38を取り出し、この開放端は、止水性の高いシール部材等にて密閉され、結露や氷結によるLED破損を防止する措置が施されたものを例示することができる。
【0028】
なお、このような構成の冷蔵庫1では背面に設けられた制御基板66により、冷凍室4内に設けられた温度センサ67aの検知結果に基づいて所定温度となるように圧縮機11及び送風機24の運転状態が制御され、切替室3内に設けられた温度センサ67bの検知結果に基づいて所定温度となるように切替室ダンパ68が制御されるものである。
【0029】
冷蔵室1内での浄化された冷気の流れは以下の通りである。吹き出し口62、63から出た冷気は、棚13と冷蔵室2の天井面の間を流れて、扉6側に向かって流れていく。そして、扉6に衝突すると冷蔵室2の底面18に向かう流れへと方向を変え、底面に設けられた冷気戻り口65から野菜室5へと送られる。
【0030】
このように冷気を最上段の吹き出し口62、63から吹き出して扉6を閉じた状態で扉6に沿った上から下までの冷気の流れを形成することで、扉6が開かれたときに外に漏れ出し使用者が臭いをかいだり体に浴びたりする冷気は浄化されたものとなる。また、冷気を送風する風路内に空気浄化ユニット29を設けたため、浄化直後の冷気を吹き出し口62、63から吹き出すことになるので、冷気戻り風路に浄化機構を設ける場合よりも衛生面での効率が高い。なお、この実施の形態に係る発明では浄化された冷気を最上段の吹き出し口62、63から吹き出すこととしているが、冷蔵庫の大きさによっては最上段でなくても構わない。
【0031】
また、フィルタ36に可視光応答型光触媒を適応し、触媒励起の光源37として可視光を用いたことにより、冷蔵室2内に光源37の光が露呈しても食品や人体への影響を懸念する必要がなくなり、使用者が触媒励起の光源37の点灯を視認可能な位置への配置が可能となったものである。これによって、光源37の光を貯蔵室の照明として活用可能となり、保存されている食品の見栄えを良くしたり、光源37の故障の認識・判定が容易となる。また、光源故障時のメンテナンス・交換作業の手間や効率が改善できる。さらに、フィルタ36に抗酸化剤を担持させた場合には、その抗酸化剤が放出され、貯蔵食品に辿り着く確率が高くなり、従って、食品の抗酸化作用が高くなる。
【0032】
前述した冷気の流れは扉6が閉じられた状態のものであるが、冷気の量や光源37の制御は細かく分類すると3パターンが想定される。第1のパターンは、扉6の開閉状態を検知する手段(図示せず)で扉6の開を検知した時、光源37を点灯、および、送風機24を停止するよう制御するものである。扉6の開動作に対応して光源37を点灯することは、使用者が冷蔵室2内の食品等を見やすくするためのものである。もっとも、同時にフィルタ36に抗酸化剤が担持されている場合には、送風機24を停止することにより冷蔵室内に散布された抗酸化剤が庫内冷気とともに庫外に流出することを最小限に留めることができる。また、扉6が開くことで庫内冷気温度は上昇し、フィルタ36を通過する空気密度が上がり、フィルタ36に吸着した菌や臭い成分の脱着量が増加する傾向となるが、光源37を点灯することにより触媒を励起してフィルタ36での菌や臭い成分の分解を促進しつつ、一方で送風機24を停止してフィルタ36を通過する冷気の量を抑制して菌や臭い成分の脱着を減らすものである。
【0033】
第2のパターンは、温度センサ67の検出結果に基づいて圧縮機11を停止する制御を行う場合や、冷却器23近傍のヒータ25に通電して冷却器23に付着した霜を溶かしてドレンパン27に集水して圧縮機11の運転時の排熱で気化する場合(いわゆる霜取り動作中)に送風機を停止したりダンパを閉じたりすると庫内冷気温度が上昇する。この間に光源37を発光することにより、フィルタ36からの菌や臭い成分の脱着を抑制するものである。なお、第1のパターンと第2のパターンを組み合わせることも可能である。
【0034】
第3のパターンは、扉6の開閉状態を検知する手段(図示せず)で扉6の開を検知した時、光源37を点灯し、送風機24を運転状態とするものである。扉6の開動作に対応して光源37を点灯することは、使用者が冷蔵室2内の食品等を見やすくするためのものであり、短時間の開閉であれば送風機24を停止するには及ばないケースも多いからである。したがって、制御基板66にタイマ機能を持たせて扉6の開いている時間によって、第1のパターンと第3のパターンとを切り替えても良い。
【0035】
なお、これら第1から第3のパターン同士を矛盾しない限度で組み合わせることも可能である。
【0036】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る切替室の断面図、図6はこの発明の実施の形態2に係る切替室の可動センサ部の部品構成図である。なお、実施の形態1と同じ機能を有する構成には同一の番号を付している。
【0037】
切替室3は冷却室10からの冷気が通る風路が奥側に設けられ、その風路の分岐点には切替室ダンパ68が設けられている。この切替室ダンパ68は、切替室3の天井面に形成されて引き出し20を超えて扉7の手前で室内に吹出す天井風路69に設けられた天井風路バッフル70と、切替室3の背面より引き出し20の中へ向けて吹出す背面風路71に設けられた背面風路バッフル72とを備え、これらのバッフルは駆動部73にて、各々のバッフルが独立に開閉できるツインダクトダンパーである。図示しないが、庫外操作パネルなどにより、使用者に選択される切替室3内の設定に応じ、ダンパのバッフル開閉を行うことで風量調整をして所定設定温度にコントロールするものである。このような風路構成とすることで、例えば、食品投入後、使用者の庫外操作パネル操作に応じて、冷却能力を調整しながら食品冷却を行い、食品中の水分を過冷却状態とし、後に、冷却能力増により、低温刺激を与え、過冷却解除、および、凍結させることも可能となる。さらには、保存安定状態を判定し、必要最小限の冷却風量へ抑えることにより、食品、および、周囲温度の上下変動幅を極力小さくし、食品への霜つきや、食品の冷凍やけ、乾燥、酸化を防止する冷凍保存なども可能になるものである。
【0038】
天井風路69は、切替室3の扉7寄りの風路途中に吹き出し口74が設けられ、更に風路の先には吹き出し口75が設けられている。この吹き出し口74から吹き出し口75までの風路中にはフィルタ76が設けられており、この部分の風路を脱臭風路77とする。この脱臭風路77の吹き出し口75と扉7の間の天井面には駆動ユニット78が設けられている。
【0039】
駆動ユニット78の構成については図6を用いて説明する。駆動ユニット78の外殻は、二つの並列する窓部79、80を備える筒部81と、蓋体82から構成される。筒部81には、チップLEDを実装して構成した光源83と、引き出し20内の温度を検出する赤外線センサからなる温度センサ84とが、それぞれ窓部79、80に対向する位置に収容される。この温度センサ84は温度センサ保持部材85に嵌合され、温度センサ保持部材85はモータ86の出力軸に連結される。一方、光源83は、透明、あるいは、光を透過する樹脂材料にて成形された光源保持部材87に嵌合され、温度センサ保持部材85に連結される。モータ86は、例えば、ステッピングモータなどにより、所定角度範囲内を駆動するものである。このモータ86の軸駆動によって、温度センサ84と光源83が同時に駆動可能となるものである。光源83、温度センサ84、および、モータ86のリード線は、1個のコネクタ88に集約され、このコネクタにて冷蔵庫1の本体配線と結線される構成となっている。温度センサ84は、赤外線センサーにて食品の温度を検出するが、切替室3内の空気温度を測定する温度センサ67bの検出結果と合わせて処理することで、より高精度の温度検出が可能となる。例えば、食品投入後、使用者の庫外操作パネル操作に応じて、冷却能力を調整しながら食品冷却を行い、食品中の水分を過冷却状態とし、後に、冷却能力増により、低温刺激を与え、過冷却解除、および、凍結させる高品質凍結の成功率を高めた構成の切替室としても良い。なお、駆動ユニット78は、図5中で両矢印で示す角度分回転可能であるので引き出し20の全領域について温度センサ84で温度検出可能である。また、このように駆動ユニット78が広角度で回転可能なため、指向性の強いLEDを光源としても切替室3内の広範囲に渡って光が届き、使用者の視認性を高めることができる。
【0040】
このような駆動ユニット78に設けられた光源83により、フィルタ76に担持された可視光応答型触媒が励起されフィルタ76を通過する冷気中の菌や臭い成分の分解が促進される。また、フィルタ76には抗酸化剤も担持されているので、抗酸化剤の放出も行われる。
【0041】
このように天井面、特に扉7に近い部分に浄化された冷気の吹き出し口75を設けたので、吹き出し口75から吹き出された冷気が扉7を閉じた状態では扉7に沿って上から下までの冷気の流れを形成するので、扉7が開かれたときに外に漏れ出し使用者が臭いをかいだり体に浴びたりする冷気は浄化されたものとなる。また、冷気を送風する風路内にフィルタ76を設けたので、浄化直後の冷気を吹き出し口75から吹き出すことになるので、冷気戻り風路に浄化機構を設ける場合よりも衛生面での効率が高い。
【0042】
光源83の点灯動作については実施の形態1と同様に数パターン考えられる。例えば、圧縮機停止中、および、霜取り動作中に点灯するものとし、光源83点灯時は、駆動ユニット78の動作にてフィルタ76の方向に光源83の直進軸を向けることにより、触媒の励起を得て、菌や臭気成分(有機物質)を酸化分解することもできる。さらには、フィルタ76への照射期間以外は、引き出し20方向へ光源83の直進軸を向けて照射させることにより、引き出し20内の照明としての視覚効果を高めることも可能である。
【0043】
また、切替室3内に比較的高温の食品等が入れられて室温全体が高くなったことを検知した場合や扉7が開閉されると室温よりも高温の食品等が入れられたと想定するように制御する場合等に、前述したように所定角度範囲内で温度センサ84を回転動作させるとともに光源83を点灯させることができる。このようにすると、温度センサ84で切替室3内の室温を広範囲で検出することができるとともに、光源83により励起されたフィルタ76の触媒により室温よりも温度が高い食品等が周囲の温度に低下する前に菌や臭気成分(有機物質)を酸化分解することができるのでより効果的である。
【0044】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3に係る冷蔵庫の構成図である。この実施の形態では実施の形態1の冷蔵室と実施の形態2の切替室の両方を備えた冷蔵庫を例示するものである。なお、これまでの実施の形態1、2で既に説明が済んでいる構成については同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
冷蔵庫1内の空気浄化ユニット29で浄化された冷気は、冷蔵室2の最上段の吹き出し口62、63から図示しない扉に向けて吹き出され、扉に沿って下方に向かう冷気の流れが形成される。そのまま、冷蔵室2の底面18に達した冷気は冷気戻り口65から戻り風路を通って野菜室5へと送られる。一方、この図では駆動ユニット78が前面にあるため見えないが、切替室3の上部に設けられた脱臭風路77のフィルタ76で浄化された冷気が吹き出し口75から図示しない扉に向けて吹き出され、扉に沿って下方に向かう冷気の流れが形成される。なお、切替室3の隣には製氷室89が設けられている。
【0046】
このように冷蔵室2及び切替室3のような貯蔵室の全てに本発明のフィルタと光源を設置し、各室の扉側の上部から下部に向かって浄化された冷気の流れを形成するようにしても良い。この場合の各光源の点灯や圧縮機の運転動作の制御については実施の形態1で詳述した考えに基づいて行えばよい。
【0047】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4に係る冷蔵庫の風路系統図、図9はこの発明の実施の形態4に係る冷蔵庫の風路系統図である。図8は冷蔵室、切替室にこの発明の実施の形態1〜3に記載のフィルタと光源が備えられ、これらの配置、構成、および、動作は実施の形態1〜3に記載のものと同様としているものであり、説明は省略する。この冷蔵庫の冷気循環風路には、脱臭除菌フィルタ90が備えられている。この脱臭除菌フィルタ90には、例えば、マンガン酸化物、酸化銅、銀、白金などの脱臭除菌成分が担持されているものである。なお、フィルタの基材や形態は特に規定さるものではなく、任意に選択可能である。これにより、冷蔵庫全体にわたり、脱臭除菌性能が高められた仕様となっているものである。また、図9は切替室を備えていない冷蔵庫での脱臭除菌フィルタ90の設置例である。冷蔵室、野菜室を冷却後、冷却器にもどる風路内に備えたものであり、菌の繁殖の危険性が相対的に高いプラス温度帯の貯蔵室に特化し、脱臭除菌性能を高めたものである。
【0048】
なお、脱臭除菌フィルタ90に担持される、例えば、マンガン酸化物、酸化銅、銀、白金などの脱臭除菌成分は、実施の形態に関わらず、フィルタに、可視光応答型光触媒と一緒に担持させることも可能である。これにより、例えば、光源の消灯中であっても、脱臭除菌効果を得られ、さらに、脱臭除菌性能が高められた冷蔵庫を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は冷蔵庫の技術に関するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 冷蔵庫、 2 冷蔵室、 3 切替室、 4 冷凍室、 5 野菜室、 6 扉、 7 扉、 8 扉、 9 扉、 10 冷却室、 11 圧縮機、 12 背面側風路設置部、 13 棚板、 14 棚板、 15 棚板、 16 棚板、 17 背面板、 18 底面、 19 引き出し、 20 引き出し、 21 引き出し、 22 引き出し、 23 冷却器、 24 送風機、 25 ヒータ、 26 圧縮機室、 27 ドレンパン、 28 配管、 29 空気浄化ユニット、 30 上側空間部、 31 下側空間部、 32 筐体、 33a 流入口、 33b 流入口、 34a 流出口、 34b 流出口、 35 取付部、 36 フィルタ、 37 光源、 38 リード線、 39 コネクタ、 40 温度センサ、 41 リード線、 42 窓部、 43 パネル、 44 ダクト構成部品、 45 風路、 46 風路、 47 風路、 48 風路、 49 風路、 50 風路、 51 風路、 52 風路、 53 風路、 54a 風路、 54b 風路、 55a 風路、 55b 風路、 56 吹き出し口、 57 吹き出し口、 58 吹き出し口、 59 吹き出し口、 60 吹き出し口、 61 吹き出し口、 62 吹き出し口、 63 吹き出し口、 64 冷蔵室ダンパ、 65 冷気戻り口、 66 制御基板、 67a 温度センサ、 67b 温度センサ、 68 切替室ダンパ、 69 天井風路、 70 天井風路バッフル、 71 背面風路、 72 背面風路バッフル、 73 駆動部、 74 吹き出し口、 75 吹き出し口、 76 フィルタ、 77 脱臭風路、 78 駆動ユニット、 79 窓部、 80 窓部、 81 筒部、 82 蓋体、 83 光源、 84 温度センサ、 85 温度センサ保持部材、 86 モータ、 87 光源保持部材、 89 製氷室、 90 脱臭除菌フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機が設けられた圧縮室と、
圧縮された冷媒が放熱する凝縮器と、
放熱した冷媒が吸熱する冷却器が設けられた冷却室と、
扉を有する貯蔵室と、
前記貯蔵室に前記冷却室の冷気を風路を介して送る送風機と、
前記風路内に設けられた可視光応答型光触媒が担持されたフィルタと、
前記フィルタに光が照射される位置に設けられ、前記可視光応答型光触媒を励起する波長の光を含む可視光を照射する光源とを備える冷蔵庫。
【請求項2】
風路は貯蔵室の背面板と外壁の間に形成され、フィルタと光源は同一のユニットに収容され、前記ユニットは前記風路の途中に設けられ、前記背面板に設けられた窓部より前記貯蔵室内部に光を照射可能であることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
風路は天井の背面から扉に向けて設けられ、光源は貯蔵室の天井に設けられ、フィルタは前記風路の前記扉側に設けられた吹き出し口近傍に設けられ、前記光源からの光が前記フィルタに照射されることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
貯蔵室内の天井に温度センサと光源が回転自在に設けられ、前記温度センサが回転する場合に前記光源に発光させることを特徴とする請求項3記載の冷蔵庫。
【請求項5】
風路の吹き出し口が前記貯蔵室の上部に設けられ、前記吹き出し口から吹き出された冷気が前記扉に沿って前記貯蔵室の上部から下部に向かって流れることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項6】
扉が開かれると光源を発光させ、送風機を停止させることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項7】
貯蔵室内には温度センサが設けられ、前記温度センサの値に基づき圧縮機が停止された場合に光源を発光させることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の冷蔵庫。
【請求項8】
霜取り中に光源を発光させ、送風機を停止することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−33296(P2011−33296A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181547(P2009−181547)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】