説明

冷蔵庫

【課題】赤外線センサーを備えた冷蔵庫における赤外線センサーの検知精度を向上し、信頼性を高めることを目的とする。
【解決手段】赤外線センサーを収納する赤外線取付ケース47を備え、断熱仕切り部の凹部に赤外線取付ケース47を埋設し、赤外線取付ケース47に貫通口50を有した集光開口部51を設け、赤外線取付ケース47は断熱機能を有するように赤外線集光部材48を取り囲むように配置されるとともに、赤外線集光部材48とは別部材の赤外線取付ケース47の集光開口部51の周囲に突起部52を設けたものであり、赤外線センサーの検知精度を向上することができるとともに、赤外線センサーの信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサーを利用した冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵庫の大容量化の需要が高まるにつれて、無効空間縮小による容積効率の向上を図った冷蔵庫や、使い勝手の観点からさまざまなレイアウトの冷蔵庫が発売されている。
【0003】
その中で、従来から冷凍庫に設けられた製氷皿の温度を検知するのに、サーミスタを用いて測定を行っていた。例えば、製氷皿に溜められた水の温度を測定する場合は、製氷皿の下部に配置されたサーミスタで、製氷皿の水の温度を間接的に測定し、冷凍庫の冷却量を調整しながら、製氷皿の水が凍ったかを判断していた。しかしながら、このような冷凍庫では、実際に製氷皿の中に溜められた水の温度を測定していないので、実際に製氷皿に溜められた水が凍ったかどうかが分からず、製氷完了するまで冷却運転し、目的の温度まで冷却を行っていた。従って、製氷が完了するまでに時間を有するという課題があった。
【0004】
そのため、製氷皿の真上に赤外線センサーを配設させることで、製氷皿に溜められた水が持つ熱エネルギーを赤外線の放射量として、赤外線センサーが検出することで、実際の水の温度を検知し、冷却運転を行うようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下、図面を参照しながら上記従来の冷蔵庫を説明する。
【0006】
図5は特許文献1に記載された従来の冷蔵庫の側面縦断面図である。また、図6は冷蔵庫の一部拡大側面断面図である。
【0007】
図5、図6に示すように、冷蔵庫本体(図示せず)内の一部に冷凍庫(図示せず)が設けられ、その冷凍庫内の一部に製氷室101が設けられている。また、食品や氷等を取り出す、冷凍庫の扉102があり、製氷室内101の背面には、ファングリル103が設けられ、そのファングリル103の吹出部104から庫内に冷気が吹き出され、製氷室101内に設けられた製氷皿105の中の水106が冷却される。
【0008】
次に製氷室内101の天井部分には、断熱材107が配設されており、製氷皿105の上方の断熱材107内に、赤外線検出装置108が配置されている。その赤外線検出装置108は、赤外線センサー109を覆う円筒ホルダ110の導光部111を通して、製氷皿105内に溜められた水から放射される放射量を赤外線センサー109で検出する。
【0009】
そして、赤外線センサー109は、製氷皿105内の水106が冷却されて氷に変化するときの熱エネルギーの変化を捕らえて、製氷完了を判断し、冷凍庫の冷却動作を終了すると供に、製氷完了の表示を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−308504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来構成では、製氷室101内に、赤外線検出装置108が配置されているため、例えば、人体に帯電した静電気による瞬間放電(ESD)や、製氷室10
1内の清掃時のタオルなどの摩擦による静電気が発生し、その放電エネルギーが印加された場合、赤外線センサー109の誤動作や故障、又は、赤外線センサー109の素子自体が破壊するので、赤外線センサー109による検知機能が働かずに機能不良となり、冷蔵庫の品質を低下するという課題を有していた。
【0012】
本発明は、従来の課題を解決するもので、静電気耐量を向上させ、赤外線センサー自体の破壊や誤動作を防止すると共に赤外線センサーの周囲温度が変動する外乱影響(例えば扉開閉や熱い食品等)による突起部周辺の暖気溜まりを低減し、赤外線センサーの検知精度を向上した冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、複数の断熱区画で構成された断熱箱体と、前記断熱箱体を仕切る断熱仕切り部と、前記断熱仕切り部で仕切られた貯蔵室と、前記貯蔵室内に収納された収納物から放射された放射量を検知する温度検知部を有した赤外線センサーと、前記赤外線センサーに備えられた貫通口を有する赤外線集光部材と、前記赤外線センサーを収納する赤外線取付ケースとを備え、前記断熱仕切り部に凹部を設け、前記凹部に赤外線取付ケースを埋設し、前記赤外線取付ケースに貫通口を有した集光開口部を設け、前記赤外線取付ケースは断熱機能を有するように前記赤外線集光部材を取り囲むように配置されるとともに、前記赤外線集光部材とは別部材の前記赤外線取付ケースの前記集光開口部の周囲に突起部を設けたものである。
【0014】
これによって、赤外線センサーの検知精度を向上することができるとともに、静電気による赤外線センサーの誤検知や故障、又は、赤外線センサーの素子自体の破壊を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷蔵庫によれば、赤外線センサーの検知精度を向上することができるとともに、静電気による赤外線センサーの誤検知や故障、又は、赤外線センサーの素子自体の破壊を防止することができるので、赤外線センサーを備えた冷蔵庫の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の要部側面断面図
【図2】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の赤外線センサー取付部の側面断面図
【図3】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の赤外線センサー取付部の側面断面A部の拡大図
【図4】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の赤外線センサー取付部の真上B方向から見た平面図
【図5】従来の冷蔵庫の側面縦断面図
【図6】従来の冷蔵庫の一部拡大側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
請求項1に記載の発明は、複数の断熱区画で構成された断熱箱体と、前記断熱箱体を仕切る断熱仕切り部と、前記断熱仕切り部で仕切られた貯蔵室と、前記貯蔵室内に収納された収納物から放射された放射量を検知する温度検知部を有した赤外線センサーと、前記赤外線センサーに備えられた貫通口を有する赤外線集光部材と、前記赤外線センサーを収納する赤外線取付ケースとを備え、前記断熱仕切り部に凹部を設け、前記凹部に赤外線取付ケースを埋設し、前記赤外線取付ケースに貫通口を有した集光開口部を設け、前記赤外線取付ケースは断熱機能を有するように前記赤外線集光部材を取り囲むように配置されるとともに、前記赤外線集光部材とは別部材の前記赤外線取付ケースの前記集光開口部の周囲
に突起部を設けたものであり、赤外線センサーの検知精度を向上することができるとともに、静電気による赤外線センサーの誤検知や故障、又は、赤外線センサーの素子自体の破壊を防止することができるので、赤外線センサーを備えた冷蔵庫の信頼性を高めることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記突起部は突起開口部から外側に向かって赤外線取付ケースの表面に直角部を有さない形状で形成されたスロープ部を設けたものであり、さらに赤外線センサーの検知精度を向上することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の要部側面断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の赤外線センサー取付部の側面断面図である。図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の赤外線センサー取付部の側面断面A部の拡大図である。図4は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の赤外線センサー取付部の真上B方向から見た平面図である。
【0022】
図1から図4において、断熱箱体1で構成された冷蔵庫本体2の貯蔵室の一部である冷凍室3は、上方の上部断熱仕切板4と下方の下部断熱仕切板5によって温度帯の異なる冷蔵室6と野菜室7とから区画されている。また、冷凍室3の開口部(図示せず)には、その開口部の左右端をつなぐ仕切体8が設けられている。
【0023】
冷凍室3の背面に設けられた冷気生成室9には、冷気を生成する蒸発器10と、冷気を冷蔵室6、冷凍室3、野菜室7にそれぞれ供給、循環させる送風機11が配置され、蒸発器10の下部空間には除霜時に通電される除霜用ヒータ12が配置されている。また、冷凍室3の背面には冷気分配室19が設けられており、冷気分配室19に連続して冷気吐出口21及び冷気吐出口22が設けられている。
【0024】
冷凍室3の開口部には、扉23と扉24が設けられており、冷凍室3からの冷気の流出が無いように冷凍室3を閉塞している。扉23と扉24はいずれも引き出し式の扉であり、食品を出し入れする場合は冷蔵庫手前側、すなわち図1で示すところの左側方向に引き出して使用される。また、扉23及び扉24の後方にはそれぞれ枠体25、26が設けられている。この枠体25、26上にはそれぞれ上段容器27と下段容器28と、下段容器28の上部に置かれたスライド式の中段容器32が載置されている。
【0025】
上段容器27の底面の赤外線センサー13と対向する面である検知面には蓄冷材29が載置されている。この蓄冷材29は、一般的に冷凍される食品の凍結温度より低く、かつ、冷凍室3の温度よりも高い温度である−15℃に融解温度を設定されている。また、蓄冷材29の充填量としては、蓄冷材29上に食品が投入、配置された場合でも完全に融解することのない量に設定されている。
【0026】
また、冷凍室3の背面下部には冷気を吸い込み、蒸発器10まで導くための冷気吸入口30が設けられている。
【0027】
また、蓄冷材29上には食品31が使用者の手によって載置、保存される。
【0028】
赤外線センサー13は、一般的に視野範囲にある物体から放射される赤外線量を検出し、電気信号に変換する赤外線受光部40と、赤外線受光部40の周囲温度の基準温度を測定し、電気信号に変換するサーミスタ42とが内蔵された赤外線素子43で構成されている。
【0029】
本実施の形態においては、食品31の温度を検知することを目的としているが、赤外線センサー13は食品31の温度を検知すると同時に赤外線センサー13の視野範囲内にあるものの温度を検知するので、冷凍室3の壁面や冷凍室3内収納される食品31および蓄冷材29などから放射される赤外線量を検出している。その際に赤外線受光部40の周囲温度を基準温度として測定している。
【0030】
また、赤外線素子43が電気的に接続されたワイヤー46と、コネクタ44と、プリント配線(図示せず)された基板41とが電気的に接続され、冷蔵庫を制御する制御基板(図示せず)の配線45と、コネクタ44とが電気的に接続される。
【0031】
そして、赤外線素子部43は、サーミスタ42の基準温度の電圧と、赤外線受光部40の赤外線量の電圧とを制御基板(図示せず)に電圧を出力することで、検出した測定物の温度を算出し、算出した検知温度で、制御手段(図示せず)で判断を行う。
【0032】
赤外線集光部材48は、赤外線素子43と熱的に接する状態で赤外線素子部43の周囲を覆って、基板41と隙間なく設けられ、食品31や蓄冷材29以外から放射される外乱の赤外線を取り除き、検知強度を高めるために視野角θ°を制限する貫通口50が赤外線受光部40へ導くように設けている。このように集光機能を有するために本実施の形態においては、赤外線集光部材48の貫通口50の内壁面50a先端部50bから末端部50cの高さを3mm以上とすることで、視野角が30°〜60°となるように設けられている。また、ここで、上段容器27の高さを略110mmとした場合は、視野角を略50°とすることが望ましい。
【0033】
また、ここで、貫通口50は、検知する範囲の円内部において、中心が最も赤外線検知強度が強く、端に行くほど検知強度が弱くなる。そのため赤外線センサーの視野角をより絞ることで検知物の赤外線量の強度を上げることができ、対象物温度を確実に検出することができるが、視野角度の一部が貫通口50の先端面に重なるため、先端部温度の影響を受け誤検知の要因となることにより、赤外線センサーの視野範囲内に位置する赤外線集光部材48の少なくとも貫通口50の内壁面50aは、例えば扉の開閉に伴う暖気の流入といった外乱による温度変動があった場合でも、そういった外乱に対する温度追従性を緩和して安定した検知ができるようにするのが望ましく、本実施の形態においては、赤外線集光部材48の貫通口50の内壁面50aの熱保持力を大きくするために、赤外線集光部材48自体の熱保持力が高くなるように熱伝導性を高くかつ熱容量を大きくするように工夫している。
【0034】
このように赤外線集光部材48の熱保持力が高くなるように熱伝導性を高くかつ熱容量を大きくするために、従来の集光部材として一般的であった樹脂と比較して熱伝導性の高い材料である例えばアルミニウム、チタン、ステンレス、鉄、銅等の金属もしくはそれらを含む材料で形成されている。特に、軽量で、熱伝導率や熱容量が高く、冷凍室3内に一部表面が剥き出しされる観点からでは、耐腐食性の高いアルミニウムを主成分とするものが好ましい。
【0035】
また、冷凍室3内に一部表面が剥き出して使用する場合は、使用者が庫内等を清掃する布巾等による摩擦や人体に帯電して発生する静電気による赤外線センサー13の誤動作や素子自体の破壊を防止するために、電気的に絶縁し、熱伝導率や熱容量が高い粉体酸化物
で、例えば、アルミナやシリカ、マグネシアの何れか1種類を主成分として、PPS、ABS、LSP(液晶ポリマ)等の樹脂に分散して混合配合した材料を用いることで熱保持力を向上させることも可能であり、この場合には高熱伝導性で且つ電気絶縁性を兼ね備え、その配合比は、重量比率で粉体酸化物が80%以上であるものが好ましく、電気絶縁性についても、一般の樹脂部材と同等の比抵抗で1.0×1014Ω・m以上あり、家電製品に関する各種法令で定められている電気絶縁性を満足させることも可能である。
【0036】
更に、貯蔵室内に収納する収納物を赤外線センサー13で温度を検知する場合は、扉開閉による温度変動で赤外線集光部材48の貫通口の内壁面50a先端部50bと末端部50cとの温度勾配ができ易いので、粉体酸化物の重量比率を略85%以上とすることで、熱伝導率が高くなり、熱伝導率は2W/m・K以上で、且つ、単位質量あたりの熱容量は、750J/kg・℃以上とすることが望ましい。
【0037】
また、本実施の形態では、さらに赤外線集光部材48の熱保持力を向上させるために、赤外線集光部材48の周囲を赤外線取付ケース47の集光開口部51で包囲することで、熱容量を向上し、赤外線集光部材48の温度変動を更に低減させている。
【0038】
この場合、赤外線取付ケース47が赤外線集光部材48の周囲を取り囲む断熱部材として機能しており、赤外線集光部材48の外側表面が外気にさらされることを防止しているので、赤外線集光部材48の外気と接触面積を低減させるとともに、一定温度の赤外線集光部材の温度変化を緩慢にすることで、外乱による温度変動に対する追従性をより緩和することができる。
【0039】
次に、赤外線取付ケース47は、略中心に位置する部分に赤外線集光部材48の側面と同一形状で貫通した集光開口部51が設けられ、その集光開口部51の周囲に庫内側に向かって伸びる複数の突出した突起部52が設けられている。そして、上部断熱仕切板4の略中心に位置する部分に一部形成された凹部49と勘合するように、赤外線取付ケース47が設けられている。
【0040】
また、突起部52の内円側には赤外線集光部材48の貫通口50と連通して開口している突起開口部52aを有している。この突起開口部52aは貫通口50よりも広い面積で開口しているものとする。
【0041】
また、ここで、例えば集光開口部51の周囲を庫内側に向かって伸びる壁面で囲まれた円筒状の突出部で形成したとすると、赤外線集光部材48と突出部に段差ができ、扉23や扉24の開閉による暖気の流入や、食品31を収納することにより、食品31から出る蒸気の暖気溜まりが円筒状の突起部52の内部(内側)空間に発生し易くなり、暖気溜まりで、赤外線集光部材48の先端面と末端面との温度勾配ができ、赤外線センサー13の検知誤差の要因となるといった問題が生じるが、本発明ではこれを防止するために複数の突起部52を隙間h3を備えて設けることで、赤外線センサー13の周囲温度が変動する外乱影響(例えば扉開閉や熱い食品等)による突起部52周辺の暖気溜まりができ難いように設けられている。すなわち、複数の突起部52が連続しておらず、それぞれ独立した形で赤外線取付ケース47に備えられている。
【0042】
よって、本実施の形態では突起部52は風が流れやすい形状としており、隣接する突起部52同士の隙間h3と突起開口部52aを挟んで対向する側に隙間h3´を備えることで風の抵抗を低減し、より風が流れやすい形状としている。
【0043】
本実施の形態では図4に示すように隣接する突起部52同士は90°の角度を有して赤外線センサー13の赤外線素子43を囲むように4箇所配置されており、十分に風が流れ
る形状となっている。また、図4に示すように冷蔵庫の前後方向Xに対して4箇所の突起部52のうちの2箇所が水平方向となるように設置している。さらに、残りの2箇所は冷蔵庫の前後方向Xと直交する冷蔵庫の左右方向Yに対して水平となるように設置している。これは、突起開口部52aの直径d1と赤外線集光部材48の外径d2との隙間を冷蔵庫の前後方向Xに沿って冷気が流れる際に、例えば、XもしくはYに対して30°や45°といった角度を有するように設置した場合と比較して突起開口部52aの直径d1と赤外線集光部材48の外径d2との隙間においての風路抵抗が少なくなる構成である。
【0044】
すなわち、突起部52は突起部52の内側空間である突起開口部52a直径d1上に連続しておらず、断続的に複数備えられていることで、より風路抵抗を少なくすることが可能となる。さらに、突起部52は突起部52の内側空間である突起開口部52a直径d1上に点接触で位置している。具体的には突起開口部52aの直径d1上は半円径となっている突起部52の先端部のみが位置している。さらに、突起部の先端の半円部分と連通する突起部52の直線断面の最も内側の直径d3に対しても本実施の形態では突起部52が直線断面の最も内側の直径d3に対して1/4程度を占めていることとなっている。
【0045】
そして、凹部49以外の上部断熱仕切板4の貯蔵室である冷凍室3側方向の壁面4aと、赤外線取付ケース47の冷凍室3側の壁面である外面47aと、赤外線集光部材48の先端面48aが略同一面状に設けられ段差を少なくすることで、扉23、扉24の開閉状態があっても、冷凍室3の天井面の上部断熱仕切板4に沿って風が流れやすく、暖気溜まりで赤外線集光部材48の先端面と末端面との温度勾配ができ難いように設けられている。
【0046】
このように、突起部52が形成されている赤外線取付ケース47の冷凍室3側の外面47aと赤外線集光部材48の先端面48aが同一面状に設けられていることは、すなわち突起部52が存在しない突起部52同士の隙間h3に当たる部分は赤外線集光部材48の先端面48aが同一面状に設けられていることとなり、風が流れる際の抵抗が少なくかつ暖気だまりが出来にくい形状となっている。
【0047】
この場合、赤外線センサー13が取付けられる貯蔵室の天面では突起部52のみが天面側の壁面よりも突出している構成となっている。
【0048】
そして、突起部52を設けることで、清掃時などのタオルが直接赤外線センサー13に触ること防止し、タオルの摩擦による静電気や、人体に帯電した静電気の瞬間放電による赤外線センサー13の誤動作や故障、又は、赤外線センサー13の赤外線素子43の破壊を防止することができる。
【0049】
特に、本実施の形態では突起部52は赤外線集光部材48とは別部材で形成することによって、赤外線センサー13の最も貯蔵室側に位置するために使用者に触れられる可能性がある突起部52が直接赤外線センサー13に接することなく介在部材として赤外線集光部材48を介して突起部52と赤外線センサー13とが配置されていることで、使用者が突起部52に触れることによって発生する静電気や、人体に帯電した静電気の瞬間放電による赤外線センサー13の誤動作や故障、又は、赤外線センサー13の赤外線素子43の破壊を防止することができる。
【0050】
上記のように、赤外線集光部材48の外乱による温度変動に対する追従性をさらに緩和するために、本実施の形態では赤外線センサー13の視野範囲内に位置する突起部52の形状を工夫して、突起部52周辺の暖気溜まりができ難いため、より赤外線センサー13の検知精度を向上させることが可能となる。
【0051】
また、突起部52は赤外線集光部材48とは別部材で形成することによって、別の材料とすることができ、突起部52は赤外線集光部材48と比較して熱伝導性の低い材料で形成することが望ましく、それによって突起部52の熱を赤外線集光部材48へと伝熱させることを防ぎ、より赤外線集光部材48の温度が安定することによって、赤外線センサー13の検知精度を向上させることが可能である。
【0052】
また、一般に人体に帯電する帯電量は、1000Vを超えることがあり、一定の空間距離h2を6mm以上とすることにより、使用者が仮に赤外線センサー13に触れようとしても、指が入らない形状となるので、より使用者の安全性が高く赤外線センサー13の視野角度が突起部52と重ならない範囲では、空間距離h2を6mmが好ましく、突起部52の内径である突起開口部52aの直径d1をφ6mm以内としたことで、垂直方向からの指の入り込みを防止することに加え、隣接する突起部52同士の隙間h3の寸法を4mm以下としたことで、側面方向からの指の入り込みが防止でき冷蔵庫の実使用上において十分な絶縁距離を確保することが可能である。
【0053】
更に、突起部52の内円にある突起開口部52aから側面方向に伸び、赤外線取付ケース47の表面に直角部分を有さず曲線で形成されたスロープ部53を十字状に設けることで、清掃時などのタオル等の引っかかりや、貯蔵室内に収納された食品31などが突起部52に引っかかることでの、食品31の傷みや、直接突起部52に当たることによる傷害等を防止し、更にスロープ部53を設けることで、扉23、扉24の開閉状態があっても、冷凍室3の天井面の上部断熱仕切板4を通って、スロープ部53に風が流れやすく、暖気溜まりで赤外線集光部材48の先端面と末端面との温度勾配が更にでき難いように設けられている。このようにスロープ部とは直角部を有さない形状で形成され、曲線によって形成されていることで引っかかりがすくない形状とする。
【0054】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0055】
まず、電源投入後、冷凍サイクル(図示せず)の運転が開始され、蒸発器10に冷媒が流通して冷気が生成される。生成された冷気は送風機11によって冷気分配室19に送られ、冷気吐出口21と冷気吐出口22から分配されて冷凍室3内に吐出される。
【0056】
冷凍室3内に吐出された冷気により冷凍室3が所定の温度まで冷却され、同時に蓄冷材29も冷却される。この時、冷凍室3は食品をある一定の期間冷凍保存できる温度、例えば−20℃に温調されているが、蓄冷材29は−15℃に融解温度を設定されたものを用いるため、冷凍室3が十分に冷却され一定時間経過した後では蓄冷材29は完全に凍結している状態となり、冷凍室3内を冷却した冷気は冷気吸入口30から冷気生成室9に入り、蒸発器10によって再び冷却される。
【0057】
赤外線センサー13の温度検出は、例えば、基準温度となる赤外線センサー13の周囲温度を25℃とした時に赤外線センサー13から出力される電圧をV、サーミスタ42で、赤外線受光部40の周囲温度を測定する温度をSとし、測定範囲を赤外線受光部40で赤外線量を測定して、赤外線量の平均温度をBとした場合は、「V=α(B^4−S^4)」の関係式で表せる。ここでのαは係数である。
【0058】
従って、赤外線センサー13は、周囲温度Sと赤外線量の平均温度Bとの温度差がなければ、出力される電圧Vの値が0に近づき、基準となる温度が測定範囲の温度Sになり、温度差が大きければ、赤外線受光部40で検出している赤外線量が多くなり、出力される電圧も大きくなる。
【0059】
よって、仮に温かい食品が投入された場合に、基準温度となる赤外線センサー13の周
囲温度Sもそれに伴って大きくなった場合には、周囲温度Sと平均温度Bとの差が小さくなり、温かい食品の絶対温度が高かったとしても相対的に温度の高い食品が投入されたと検出できず、赤外線センサー13の検知精度が低下してしまう。
【0060】
次に扉23が閉時の赤外線センサー13の検出温度は、赤外線センサー13と対向する側に備えられた検知面である上段容器27の底面に据置された蓄冷材29の表面温度を含めて検出する。このように赤外線センサー13が検知する面を蓄冷機能を有する蓄冷材29で形成したことで、例えば、暖気の流入等の外乱があった場合でも、赤外線センサーの検知面も熱保持力が高く外乱に対する温度追従性を緩和することができるので、より外乱による温度変動に影響を受けにくく、安定した温度を保持することができるので、より高い検知精度を得ることができる。
【0061】
このように、本実施の形態においては、赤外線センサー13の視野範囲に位置するものである赤外線集光部材48の貫通口50の内壁面50aと赤外線センサー13と対向する側に備えられた検知面である上段容器27の底面との両方を熱保持力の大きい部材で形成することによって、外乱による一時的な温度変動が生じた場合でも、赤外線センサーの視野範囲内に位置する部分の温度追従性を緩和することができるので、赤外線センサー13が温度検知する目的物である食品31の温度をより正確に検知することが可能となる。
【0062】
さらに、赤外線集光部材48の貯蔵室側に備えられた突起部52の内円側には赤外線集光部材48の貫通口50と連通して開口している突起開口部52aを有しており、この突起開口部52aは貫通口50よりも広い面積で開口しているものとすることで、赤外線センサー13の視野範囲に位置する突起部52をより小さくすることで、突起部52の温度を赤外線センサー13が検知することによる検知精度の低下を防止し、さらに突起部52周辺の暖気溜まりができ難い形状に工夫することで、より赤外線センサー13の検知精度を維持しながら、使用者が触れた場合や静電気が発生した場合の赤外線センサーの故障を防止することでより信頼性の高い赤外線センサーを備えた冷蔵庫を提供することが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態では突起部52は冷蔵庫の前後方向X(前後方向Xは冷気が流れる風路方向である)に対して4箇所の突起部52のうちの2箇所が水平方向となるように設置している。さらに、残りの2箇所は冷蔵庫の前後方向Xと直交する冷蔵庫の左右方向Yに対して水平となるように設置している。これは、突起開口部52aの直径d1と赤外線集光部材48の外径d2との隙間を冷蔵庫の前後方向Xに沿って冷気が流れる際に、例えば、XもしくはYに対して30°や45°といった角度を有するように設置した場合と比較して突起開口部52aの直径d1と赤外線集光部材48の外径d2との隙間においての風路抵抗が少なくなる構成である。
【0064】
これは、発明者が実際に本実施の形態のように4箇所の突起部を備えたものをさまざまな角度で設置して赤外線集光部材48の温度を測定する実験を行った際に、本構成が最も赤外線集光部材48の温度変動が少ない構成であった結果から導き出したものである。
【0065】
また、本実施の形態ではさらに、突起部52の内側空間である突起開口部52aの直径d1上には突起部がほぼ点接触をしている構成となっており、具体的には突起開口部52aの直径d1上は半円径となっている突起部52の先端部のみが位置している。さらに、突起部の先端の半円部分と連通する突起部52の直線断面の最も内側の直径d3に対しても本実施の形態では突起部52が直線断面の最も内側の直径d3に対して1/4程度を占めていることとなっている。なお、本実施の形態ではこの突起部52が直線断面の最も内側の直径d3に対して1/4程度を占めているものとしたが、実験によると、1/3以下であれば暖気溜まりが発生しにくいため、場合によっては突起部52が直線断面の最も内
側の直径d3に対して少なくとも1/3以下とするこが好ましい。
【0066】
使用者が食品31を収納する時は、例えば、扉23が引き出され、この時は、赤外線センサー13の温度検出は、下段容器28内の温度を検出する。そして、扉23が開いた状態となり、外気の暖気が扉23の開口面から流入し、冷凍室3の天井面の上部断熱仕切板4を通って、スロープ部53に沿って暖気が流れ、赤外線取付ケース47の外面と、赤外線集光部材48の先端面が同一面状になるため、扉を開けた場合でも、スロープ部53に風が流れるため、暖気溜まりによる、温度変動が小さく、急激な周囲温度の変化による上昇や降下などが原因による誤検知を抑えることができ、赤外線センサー13の検知精度の安定性を向上させることができる。
【0067】
また、冷凍室3などの庫内清掃する場合は、タオル等の摩擦によって静電気が帯電し、帯電した静電気や、季節によって、空気が乾燥した時期(例えば、秋から春)に人体に静電気が溜まり易い状態で、赤外線センサー13に触れると、指先やタオルの先端から瞬間放電が発生する。そして、その放電エネルギーが印加された時に、赤外線素子43に誤ってノイズが入り込むことで、赤外線センサー13の誤動作や、赤外線素子43自体が静電気耐圧を耐えられなくなる事で、赤外線素子43内部の断線やショートが発生する原因がある。
【0068】
従って、赤外線センサー13の先端面と同一面の集光開口部51の周囲を庫内側に向かって、一部伸びる複数の突起部52を設けることで、一定の空間距離を確保し、静電気による赤外線センサー13の誤動作や故障、又は、赤外線センサー13の破壊を防止すると供に指の入り込みによる電気部品(赤外線素子43)を直接触ることを防止することが可能である。
【0069】
以上のように、本実施の形態1においては、複数の断熱区画で構成された断熱箱体と、断熱箱体を仕切る断熱仕切り部と、断熱仕切り部で仕切られた貯蔵室と、断熱仕切り部に形成した凹部と、貯蔵室内に収納された収納物から放射された放射量を検知する赤外線センサーと、赤外線センサーの周囲を囲い、赤外線センサーに放射量を導く貫通口を備えた赤外線集光部材と、赤外線センサーを収納する赤外線取付ケースと、赤外線取付ケースに赤外線集光部材の側面と同一形状で貫通した集光開口部とを備え、凹部に赤外線取付ケースを埋設し、貯蔵室側に向かって集光開口部の周囲に複数の突出した突起部を設けたことにより、貯蔵室内の清掃時の摩擦などの静電気が原因による、赤外線センサーの誤動作や故障、又は、赤外線センサー素子自体の破壊を防止することができる。
【0070】
また、開口部の周辺に複数の突起部を備えたことで、赤外線センサーの周囲温度が変動する外乱影響(例えば扉開閉や熱い食品等)による突起部周辺の暖気溜まりを低減し、赤外線センサーの検知精度を向上することができる。
【0071】
また、赤外線センサーの先端面から赤外線取付ケースの突起部迄の距離を6mm以上の高さを設けたことにより、家電製品に関する各種法令で定められている電気部品(赤外線センサー)との絶縁距離を確保するすると共に、一般に人体に帯電する帯電圧は、1000Vを超えることがあり、一定の空間距離を確保することで、人体に帯電した静電気から瞬間放電が発生し、その放電エネルギーが印加された場合でも、赤外線センサーの誤動作や故障、又は、赤外線センサーの素子自体の破壊を更に防止することができる。
【0072】
また、集光開口部の周囲に複数突出した突起部の内径をφ6mm以下としたことにより、突起部内側の垂直方向からの指の入り込みによる電気部品(赤外線センサー)を直接触ることを防止することができる。
【0073】
また、突起部は、開口部の周囲に等間隔で配設され、突起物の間隔を4mm以下としたことにより、突起部内部の側面方向からの指の入り込みによる電気部品(赤外線センサー)を直接触ることを防止することができる。
【0074】
また、突起部から集光開口部の外側に向かって赤外線取付ケースの表面に形成されたスロープ部を設けたことにより、突起部の引っかかりによる傷害等の安全性を確保すると共に、スロープ部に沿って、赤外線センサー先端面に対流を導くことで、赤外線センサー周辺の暖気溜まりを抑制し、赤外線センサーとの温度勾配を低減することで、更に赤外線センサーの検知精度を向上することができる。
【0075】
また、赤外線集光部材の先端面は、赤外線取付ケースの貯蔵室側の外面と略同一面としたことにより、赤外線取付ケースと赤外線集光部材との段差をなくすことで、扉開閉による暖気の流入や、食品等を収納し、その食品から出る蒸気の暖気溜まりをなくすことで、扉を開けた場合でも温度変動が小さいため、急激な周囲温度の変化による上昇や降下などが原因による誤検知を抑えることができ、赤外線センサーの検知精度の安定性を向上させることができる。
【0076】
なお、本実施の形態においては、凹部49以外の上部断熱仕切板4の貯蔵室である冷凍室3側方向の壁面4aと、赤外線取付ケース47の冷凍室3側の壁面である外面47aと、が略同一面状に設けられているものとしたが、赤外線取付ケース47の冷凍室3側の壁面である外面47aが冷凍室3側方向の壁面4aよりも貯蔵室側に突出していてもよく、このように、壁面4aよりも赤外線取付ケース47の外面47aが凸形状を備えることで、扉23、扉24の開閉状態があっても、より赤外線取付ケース47の突出部周辺に暖気溜まりができるのを防ぐことができ、赤外線集光部材48の先端面と末端面との温度勾配ができ難いように設けることが可能となる。また、この場合は少なくとも突起部52が備えられている取り付け部47b付近のみが凸形状を備えることも可能であり、壁面4aと赤外線取付ケース47の外面47aが同一面上にあり、取り付け面47bのみが滑らかに突出しているものでも良く、その場合には突起部52の取り付け面周辺の剛性をより高めることができ、より品質の高い突起部52を備えた非接触センサーを有した冷蔵庫を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明にかかる冷蔵庫は、赤外線センサーの検知精度を向上し、信頼性を高めることができるので、家庭用冷蔵庫のみならず、赤外線センサーを備えたあらゆる冷却機器の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 断熱箱体
2 冷蔵庫本体
3 冷凍室(貯蔵室)
4 上部断熱仕切板
5 下部断熱仕切板
6 冷蔵室(貯蔵室)
7 野菜室(貯蔵室)
8 仕切体
9 冷気生成室
10 蒸発器
11 送風機
12 除霜用ヒータ
13 赤外線センサー
21 冷気吐出口
22 冷気吐出口
23 扉
24 扉
25 枠体
26 枠体
27 上段容器
28 下段容器
29 蓄冷材
30 冷気吸入口
31 食品
32 中段容器
33 冷気吐出口
40 赤外線受光部
41 基板
42 サーミスタ
43 赤外線素子
44 コネクタ
45 配線
46 ワイヤー
47 赤外線取付ケース
47a 赤外線取付ケースの貯蔵室側の外面
48 赤外線集光部材
48a 赤外線集光部材48の先端面
49 凹部
50 貫通口
51 集光開口部
52 突起部
52a 突起開口部
53 スロープ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の断熱区画で構成された断熱箱体と、前記断熱箱体を仕切る断熱仕切り部と、前記断熱仕切り部で仕切られた貯蔵室と、前記貯蔵室内に収納された収納物から放射された放射量を検知する温度検知部を有した赤外線センサーと、前記赤外線センサーに備えられた貫通口を有する赤外線集光部材と、前記赤外線センサーを収納する赤外線取付ケースとを備え、前記断熱仕切り部に凹部を設け、前記凹部に赤外線取付ケースを埋設し、前記赤外線取付ケースに貫通口を有した集光開口部を設け、前記赤外線取付ケースは断熱機能を有するように前記赤外線集光部材を取り囲むように配置されるとともに、前記赤外線集光部材とは別部材の前記赤外線取付ケースの前記集光開口部の周囲に突起部を設けた冷蔵庫。
【請求項2】
前記突起部は突起開口部から外側に向かって赤外線取付ケースの表面に直角部を有さない形状で形成されたスロープ部を設けた請求項1に記載の冷蔵庫。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229913(P2012−229913A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152452(P2012−152452)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2008−231738(P2008−231738)の分割
【原出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】