冷蔵庫
【課題】貯蔵室内の広範囲にミストを確実に放出できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】本実施形態の冷蔵庫は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段とを備える。ミスト放出手段は、ミスト放出面を有する振動板と、この振動板を振動させる振動子と、振動板のミスト放出面内に設けられた複数の孔と、振動板に水を供給する給水部とを有する。ミスト放出手段は、振動子により振動板を振動させて給水部から振動板に供給される水をミスト化して孔からミスト放出面の前方へ向けて放出するものである。給水部を、振動板のミスト放出面とは反対側に配置した。
【解決手段】本実施形態の冷蔵庫は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段とを備える。ミスト放出手段は、ミスト放出面を有する振動板と、この振動板を振動させる振動子と、振動板のミスト放出面内に設けられた複数の孔と、振動板に水を供給する給水部とを有する。ミスト放出手段は、振動子により振動板を振動させて給水部から振動板に供給される水をミスト化して孔からミスト放出面の前方へ向けて放出するものである。給水部を、振動板のミスト放出面とは反対側に配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫においては、野菜などの食品を収納する貯蔵室である野菜室に、ミスト放出手段を構成する霧化装置を設けて野菜室内を加湿するようにしたものがある。霧化装置には、超音波式の霧化装置があり、この超音波霧化装置では、給水部から供給される水を振動子により振動させて霧化(ミスト化)し、発生した霧(ミスト)を野菜室内へ向けて放出するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような超音波霧化装置においては、ミスト化するための水を供給する給水部がミストの放出面よりも前方にあると、この給水部がミストを放出する際に邪魔になって十分にミストを野菜室内に拡散させることができないおそれがある。
【0005】
そこで、貯蔵室内の広範囲にミストを確実に放出できる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の冷蔵庫は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段とを備える。ミスト放出手段は、ミスト放出面を有する振動板と、この振動板を振動させる振動子と、振動板のミスト放出面内に設けられた複数の孔と、振動板に水を供給する給水部とを有する。ミスト放出手段は、振動子により振動板を振動させて給水部から振動板に供給される水をミスト化して孔からミスト放出面の前方へ向けて放出するものである。このミスト放出手段の給水部を、振動板のミスト放出面とは反対側に配置した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態による冷蔵庫全体の概略構成を示す縦断側面図
【図2】超音波霧化装置付近の縦断側面図
【図3】冷蔵庫正面から見た超音波霧化装置の配置図
【図4】超音波霧化装置付近の拡大縦断側面図
【図5】超音波霧化装置のミスト放出面の正面図
【図6】超音波霧化装置の振動板の拡大断面図
【図7】野菜室の上部ケースの斜視図
【図8】ミスト放出の様子を示す図
【図9】第2の実施形態による図4相当図
【図10】第3の実施形態による図4相当図
【図11】第4の実施形態による図4相当図
【図12】第5の実施形態による図4相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による冷蔵庫について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。図1に示すように、冷蔵庫本体1は、前面が開口した縦長矩形箱状の断熱箱体2内に、複数の貯蔵室を設けて構成されている。具体的には、断熱箱体2内には、上段から順に、冷蔵室3、野菜室4が設けられ、その下方に製氷室5と小冷凍室(図示せず)が左右に並べて設けられ、これらの下方に冷凍室6が設けられている。製氷室5内には、周知の自動製氷装置7が設けられている。なお、断熱箱体2は、鋼板製の外箱2aと合成樹脂製の内箱2bとの間に断熱材2cを設けて構成されている。
【0009】
冷蔵室3及び野菜室4は、いずれも冷蔵温度帯(例えば1〜4℃)の貯蔵室であり、それらの間は、プラスチック製の仕切壁8により上下に仕切られている。冷蔵室3の前面部には、ヒンジ開閉式の断熱扉3aが設けられ、野菜室4の前面には引出し式の断熱扉4aが設けられている。野菜室4内における断熱扉4aの背面部には、食品を収納するための下部ケース9と上部ケース10とが設けられている。下部ケース9は、断熱扉4aに連結されている。上部ケース10は、下部ケース9よりも小型であり、下部ケース9の上部に配置されている。この上部ケース10には、図7にも示すように、後面上部に矩形状の開口部10aが設けられているとともに、底面に下部ケース9に連通する複数の孔10bが設けられている(図1及び図2参照)。これら開口部10a及び孔10bは、後述するミストが通るためのものである。
【0010】
冷蔵室3内は、複数の棚板11により上下に複数段に区切られている。冷蔵室3内の最下部(仕切壁8の上部)において、右側にはチルド室12が設けられ、その左側には、図示はしないが、卵ケースと小物ケースが上下に設けられ、さらに、これらの左側には貯水タンクが設けられている。チルド室12には、チルドケース13が出し入れ可能に設けられている。貯水タンクは、自動製氷装置7の製氷皿7aに供給する水を貯留するためのものである。冷蔵室3、野菜室4、及びチルド室12は、食品などの貯蔵物(図示せず)を収納する貯蔵室を構成している。
【0011】
製氷室5、小冷凍室、並びに冷凍室6は、いずれも冷凍温度帯(例えば−10〜−20℃)の貯蔵室であり、野菜室4と製氷室5および小冷凍室との間は、断熱仕切壁14により上下に仕切られている。製氷室5の前面部には、引出し式の断熱扉5aが設けられており、その断熱扉5aの背面部に貯氷容器15が連結されている。小冷凍室の前面部にも、図示はしないが貯蔵容器が連結された引出し式の断熱扉が設けられている。冷凍室6の前面部にも、貯蔵容器16が連結された引出し式の断熱扉6aが設けられている。
【0012】
この冷蔵庫本体1内には、全体として詳しく図示はしないが、冷蔵室3及び野菜室4を冷却するための冷蔵用冷却器17と、製氷室5、小冷凍室、冷凍室6を冷却するための冷凍用冷却器18との2つの冷却器を備える冷凍サイクルが組込まれる。冷蔵庫本体1の下端部背面側には、機械室19が設けられ、詳しく図示はしないが、この機械室19内に、冷凍サイクルを構成する圧縮機20及び凝縮器などが配設されていると共に、それらを冷却するための冷却ファンや除霜水蒸発皿21等が配設されている。冷蔵庫本体1の背面下部寄り部分には、全体を制御するマイコン等を実装した制御装置22が設けられている。
【0013】
冷蔵庫本体1内の冷凍室6の背部には、冷凍用冷却器室23が設けられている。この冷凍用冷却器室23内に、下部に位置させて冷凍用冷却器18が配設されていると共に、上部に位置させて冷凍用送風ファン24が配設されている。冷凍用冷却器室23の前面の中間部には冷気吹出口23aが設けられ、下端部には戻り口23bが設けられている。冷凍用冷却器18には、図示はしないが除霜ヒータが設けられている。
【0014】
この構成において、冷凍用送風ファン24が駆動されると、冷凍用冷却器18により生成された冷気が、冷気吹出口23aから製氷室5、小冷凍室、冷凍室6内に供給された後、戻り口23bから冷凍用冷却器室23内に戻されるといった循環を行うようになっている。これにより、それら製氷室5、小冷凍室、および冷凍室6が冷却される。なお、冷凍用冷却器18の下方には、当該冷凍用冷却器18の除霜時の除霜水を受ける排水樋25が設けられている。その排水樋25に受けられた除霜水は、庫外の機械室19内に設けられた除霜水蒸発皿21に導かれ、蒸発するようになっている。
【0015】
そして、冷蔵庫本体1内における冷蔵室3および野菜室4の背部には、冷蔵用冷却器17や、この冷蔵用冷却器17により生成された冷気を冷蔵室3(及び野菜室4)内に供給するための冷気ダクト26、冷気を循環させるための冷蔵用送風ファン27等が、以下のようにして配設される。即ち、冷蔵庫本体1における冷蔵室3の最下段の後方(チルド室12の後方)には、冷気ダクト26の一部を構成する冷蔵用冷却器室28が設けられ、この冷蔵用冷却器室28内に冷蔵用冷却器17が配設されている。
【0016】
冷蔵用冷却器室28の上方には、上方に延びる冷気供給ダクト29が設けられていて、冷蔵用冷却器室28の上端部が冷気供給ダクト29の下端部に連通している。この場合、冷蔵用冷却器室28と冷気供給ダクト29により、冷気ダクト26を構成している。図2にも示すように、冷蔵用冷却器室28の前部壁28aは、冷気供給ダクト29よりも前方に膨出している。また、その前部壁28aの裏側には、断熱性を有する断熱材30が設けられている。冷気供給ダクト29の前部には、冷蔵室3内に開口する冷気供給口31が複数個設けられている。
【0017】
冷蔵用冷却器室28内の下部には、冷蔵用冷却器17の下方に位置させて、冷蔵用冷却器17からの除霜水を受ける排水樋32が設けられている。この排水樋32に受けられた除霜水も、前記排水樋25で受けられた除霜水と同様に、庫外の前記機械室19内に設けられた除霜水蒸発皿21に導かれ、蒸発するようになっている。排水樋32の左右の長さ寸法および前後の奥行き寸法は、冷蔵用冷却器17の左右の長さ寸法および前後の奥行き寸法よりも大きく設定されている。なお、本実施形態では、冷蔵用冷却器17からの除霜水は、排水樋32と、後述する超音波霧化装置41の貯水部45(図2参照)とによって受けられ、貯水部45に受けられた除霜水は貯水部45内に貯留される構成となっている。
【0018】
野菜室4の後方には、図2にも示すように、排水樋32の下方に位置させて、冷蔵用送風ファン27が配設されていると共に、送風ダクト33及び吸込み口34が設けられている。そのうち送風ダクト33は、上端部が排水樋32をう回するようにして冷蔵用冷却器室28(冷気ダクト26)に連通している。吸込み口34は、野菜室4の後部において開口している。なお、冷蔵室3の底部を構成する仕切壁8の後部の左右の両隅部には、図示しない複数の連通口が形成されている。この連通口は、冷蔵室3とこれの下方の野菜室4とを連通させている。
【0019】
この構成において、冷蔵用送風ファン27が駆動されると、主に図1の白抜き矢印で示すように、野菜室4内の空気が吸込み口34から冷蔵用送風ファン27側に吸い込まれ、その吸い込まれた空気は、送風ダクト33側へ吹き出される。送風ダクト33側へ吹き出された空気は、冷気ダクト26(冷蔵用冷却器室28および冷気供給ダクト29)を通り、複数の冷気供給口31から冷蔵室3内に吹き出される。冷蔵室3内に吹き出された空気は、連通口を通して野菜室4内にも供給され、最終的に冷蔵用送風ファン27に吸い込まれるという循環が行われる。この過程で、冷蔵用冷却器室28内を通る空気が冷蔵用冷却器17により冷却されて冷気となり、その冷気が冷蔵室3および野菜室4に供給されることによって、冷蔵室3および野菜室4が冷蔵温度帯の温度に冷却される。
【0020】
さて、本実施形態では、野菜室4の背面上部における冷蔵用冷却器17の下方に、ミスト放出手段を構成する超音波霧化装置41が設けられている。この超音波霧化装置41は、野菜室4内に向けてミスト(霧)を放出するためのものである。以下、この超音波霧化装置41について図1〜図6を参照して説明する。
【0021】
超音波霧化装置41は、図3に示すように、冷気ダクト26の一部を構成する冷蔵用冷却器室28内において、左右方向のほぼ中央部に配置されている。この超音波霧化装置41は、図4及び図5に示すように、円板状の振動板42と、リング状の振動子43と、横から見て逆L字型をなす給水部材44(水保持手段に相当)と、貯水部45とから構成される。
【0022】
振動板42は、例えば金属(Ni合金)からなり、ミスト放出面42aを有する。このミスト放出面42a内には、図5に示すように、複数の孔46が設けられている。この孔46は、例えば孔径が数μmの微細な孔であり、図6に示すように、オリフィス形状に形成されていて、ミスト放出面42a側の開口が狭くなっている。
【0023】
振動子43は、振動板42を振動させるためのものであり、振動板42の前面外周部に固定されている。この振動子43は、図示しない圧電素子と発振回路とからなる。発振回路は、図示しない電源から電力が供給されると、例えば数十から100kHz程度の周波数の電圧を圧電素子に印加する。圧電素子に電圧が印加されると、圧電素子が伸縮し、これに伴って振動子43が超音波振動する。このように、振動子43が超音波振動することにより、振動子43と固定した振動板42も超音波振動する構成となっている。
【0024】
給水部材44は、水を吸い上げて振動板42に水を供給するためのものであり、保水材(例えばウレタンスポンジ)から構成されている。この保水材は、保水性及び水分の吸い上げ特性に優れている。図4に示すように、給水部材44は、前端部が振動板42の裏側に接触していると共に、下端部が貯水部45の底面に近接した状態で配置される。給水部材44は、貯水部45に貯留された水を毛細管現象により吸い上げ、振動板42の孔46まで移動させる(図6参照)。
【0025】
図4に示すように、貯水部45は、排水樋32の上方に配設され、冷蔵用冷却器17の除霜時に発生する除霜水(冷蔵用冷却器17に付着した霜が融けた際に発生する水)の一部を受けて貯留するためのものである。これら給水部材44と貯水部45とから、振動板42に水を供給する給水部47が構成される。この給水部47は、振動板42のミスト放出面42aとは反対側(裏側)に配置される。
【0026】
振動板42の下方には、ミスト放出面42aから垂れ落ちる水を受ける水受け部48が設けられている。水受け部48は、貯水部45よりも上方に配設され、貯水部45に連通する開口48aを有している。水受け部48にて受けられた水は、開口48aから貯水部45に流れ落ちて貯留される。
【0027】
また、振動板42の上方には、振動板42を覆う覆い部49が設けられている。この覆い部49には、ミスト放出口50が形成されている。このミスト放出口50は、人の指が入らない程度の大きさであり、ミスト放出面42aに対応して設けられている。ミスト放出面42aから放出されたミストは、ミスト放出口50を通って、上部ケース10の開口部10a(図7参照)と開口部10c、及び、下部ケース9の開口部9aから野菜室4内に供給される(図1及び図2参照)。
【0028】
次に、上記構成の作用について図1〜図8を参照して説明する。
制御装置22は、上記した冷凍用冷却器18により冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室5、小冷凍室、冷凍室6)の冷却を行う冷凍冷却モードと、冷蔵用冷却器17により冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)の冷却を行う冷蔵冷却モードと、除霜ヒータを発熱させて冷凍用冷却器18の除霜を行う除霜モードとを、切替えて制御している。
【0029】
冷凍冷却モードの際には、圧縮機20が駆動するとともに、圧縮機20から吐出された冷媒が、凝縮器、キャピラリチューブ(図示せず)、冷凍用冷却器18、アキュームレータ(図示せず)などを通り、圧縮機20に戻されるように循環する。この過程で、冷凍用冷却器18の周りの空気が冷却され、その冷気が、冷凍用送風ファン24によって循環されることにより、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室5、小冷凍室、冷凍室6)が冷却される。
【0030】
この冷凍冷却モードの際には、同時に冷蔵用冷却器17の除霜が行われる(冷蔵除霜)。冷凍冷却モードでは、圧縮機20は駆動されているが、冷蔵用冷却器17側には冷媒は流れず、当該冷蔵用冷却器17は冷却されない。またこのとき、冷蔵用送風ファン27は駆動されていて、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)の空気が、冷気ダクト26を通して循環されることで、冷蔵用冷却器17の温度は上昇してプラスの温度となり、これに伴い冷蔵用冷却器17の除霜が行われる。前述したように、冷蔵用冷却器17の除霜時に当該冷蔵用冷却器17から滴下する除霜水の一部は、超音波霧化装置41の貯水部45に受けられて貯留され、残りは排水樋32に受けられた後、除霜水蒸発皿21に導かれる。この冷凍冷却モード(冷蔵除霜)の際には、超音波霧化装置41の電源は断電されていて、超音波霧化装置41は運転停止状態であり、ミストは発生しない。
【0031】
冷蔵冷却モードの際には、圧縮機20が駆動するとともに、圧縮機20から吐出された冷媒が、凝縮器、キャピラリチューブ(図示せず)、冷蔵用冷却器17などを通り、圧縮機20に戻されるように循環する。この過程で、冷蔵用冷却器17の周りの空気が冷却され、その冷気が、前述したように冷蔵用送風ファン27によって循環されることにより、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)が冷却される。このとき、冷凍用送風ファン24は断電されている。
【0032】
冷蔵冷却モードに切り替わってから(冷蔵除霜が終了してから)所定時間(例えば5分)経過すると、超音波霧化装置41の電源が通電される。なお、超音波霧化装置41の電源は、冷蔵冷却モードが終了するまで、連続して通電される。
【0033】
超音波霧化装置41の振動子43に、電源から電力が供給されると、振動子43が超音波振動することにより振動板42が超音波振動する。このとき、貯水部45には、冷蔵用冷却器17の除霜時に発生した除霜水が貯留されており、この貯水部45に貯留された水が、給水部材44により吸い上げられ、図6に示すように、振動板42の孔46の近傍まで移動している。移動した水は、図8(a)に示すように、水の表面張力により、孔46の中を通ってミスト放出面42a側まで達する。この状態で、振動板42が超音波振動すると、図8(b)及び図8(c)に示すように、振動板42が前後方向に弾性変形することにより、孔46内の水が圧力を受けて、粒子径の小さい(例えば、粒子径が数μm〜数十μm程度である)水粒子、すなわち、ミストMとなって(ミスト化して)、孔46から前方へ向かって放出される。このようにして、超音波霧化装置41によってミストMが発生する。特に給水部材44は円板状をなす振動板42の中央部よりに配置されているため、振動板42に供給された水は外周から集中して振動を受け、中心に近いほど振動幅が大きいため、より遠くにミストMを放出することができる。また、ミストMの量を増やすには振動板42の面積を増やすとよい。
【0034】
振動板42の孔46からミスト放出面42aの前方へ向けて放出されたミストMは、図1及び図2に示すように、超音波霧化装置41より前方に位置する上部ケース10及び下部ケース9の上方から徐々に下降しながら、野菜室4内全体に供給される。具体的には、ミスト放出口50から放出されたミストMは、上部ケース10の開口部10a(図7参照)及び開口部10cから上部ケース10内に供給されるとともに、下部ケース9の開口部9a、及び上部ケース10に設けられた複数の孔10bを通って下部ケース10内に供給される。このように野菜室4内にミストMが供給されることにより、野菜室4内が加湿される。
【0035】
超音波霧化装置41によるミストMの放出が継続して行われると、振動板42のミスト放出面42a、及び、ミスト放出口50周辺の覆い部49の内壁面に、水滴(露)が生じることがある(図4及び図5参照)。この場合、ミスト放出面42a及び覆い部49の内壁面(ミスト放出口50周辺部)から垂れ落ちる水滴は、振動板42の下方に設けられた水受け部48にて受けられ、開口48aから貯水部45内に流れ落ちて貯留される。このようにして、振動板42に供給された水の一部が貯水部45に回収され、再びミスト発生のために利用されるようになっている。
【0036】
上記した冷蔵冷却モードが終了すると、再び冷凍冷却モード(冷蔵除霜モード)が行われる。このとき、超音波霧化装置41の電源は断電され、ミストMの発生は停止される。そして、この冷凍冷却モードの後、定期的な除霜モードが行われる。この除霜モードは例えば24時間ごとに行われる。
【0037】
除霜モードに入ると、圧縮機20の運転が停止され、冷媒の循環が停止される。冷凍用送風ファン24が断電され、代わって除霜ヒータが通電されて発熱する。この除霜ヒータの発熱に伴い冷凍用冷却器18の除霜が行われ、その除霜水は、排水樋25に受けられた後、除霜水蒸発皿21に導かれる。また、冷蔵用送風ファン27は通電されたままで、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)の空気が、冷気ダクト26を通して循環されることで、冷蔵除霜の際と同様に、冷蔵用冷却器17の温度は上昇してプラスの温度となり、これに伴い冷蔵用冷却器17の除霜も行われる。この際の除霜においても、冷蔵用冷却器17から滴下する除霜水の一部は、貯水部45に受けられて貯留され、残りは前述したように、排水樋32に受けられた後、除霜水蒸発皿21に導かれる。
【0038】
この除霜モードが終了すると、再び冷凍冷却モード(冷蔵除霜)に切り替えられる。この場合、冷蔵用冷却器17の除霜は継続して行われることになる。そして、冷凍冷却モードが終了すると(冷蔵除霜が終了すると)、冷蔵冷却モードに切り替えられる。この場合、冷蔵冷却モードに切り替えられると同時に、超音波霧化装置41の電源も通電される。この後、冷凍冷却モード(冷蔵除霜)、冷蔵冷却モードが交互に行われ、冷蔵冷却モードの際に超音波霧化装置41の電源も通電され、ミストMが放出される。
【0039】
上記した第1の実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
野菜室4の背面上部に超音波霧化装置41を設置し、その超音波霧化装置41で発生させたミストMをミスト放出口50から野菜室4内に供給する構成とした。これにより、野菜室4の上方から野菜室4内全体にミストMが供給されることで、野菜室4内を高湿度に保つことができ、野菜等の食品の鮮度保持を期待できる。そして、超音波霧化装置41の給水部47(給水部材44と貯水部45)を振動板42のミスト放出面42aとは反対側に配置したので、給水部47がミストMを放出する際に邪魔になることがなく、野菜室4内の広範囲にミストMを確実に放出することができる。
【0040】
さらに、野菜室4の冷却が行われる冷蔵冷却モード時に、超音波霧化装置41の電源に通電して、野菜室4内にミストMを放出するようにした。これにより、冷却に伴い湿度が低下する冷蔵冷却モード中に、野菜室4内にミストMが供給されるので、野菜室4内の湿度の低下を抑制して、野菜室4内を高湿度に保つことができる。
【0041】
また、超音波霧化装置41を冷気ダクト26内に設けたので、超音波霧化装置41によって庫内容積が狭くなることがなく、野菜室4の収容スペースを十分に確保しながらミストMを供給することができる。
また、貯水部45内に貯留された除霜水を給水部材44により吸い上げて、振動板42に水を継続的に供給することができるので、簡単な構成で水の供給を維持できる。そして、水を安定して供給することができるので、ミスト放出口50からのミスト放出量も安定させることができる。
【0042】
さらに、冷蔵用冷却器17の除霜時に発生する除霜水を貯水部45で受けて、この除霜水をミスト発生のための水として利用しているので、振動板42への水の供給を自動的に行うことができ、水を外部から補給する必要がなく、使用者が給水する手間を省くことができる。
【0043】
また、ミスト放出面42a及び覆い部49の内壁面(ミスト放出口50周辺部)から垂れ落ちる水を水受け部48にて受け、この水を貯水部45に送って回収するようにしたので、除霜水を効率良く利用することができるとともに、垂れ落ちた水が庫内に浸入することを防止することができる。
【0044】
覆い部49により振動板42を覆うとともに、覆い部49にミスト放出口50を設け、このミスト放出口50からミストMを放出する構成としたので、ミストMの放出を一定方向に調節することができ、野菜室4内におけるミストMの拡散を良好に調整することができる。
【0045】
また、野菜室4内に収容される上部ケース10の後面に、超音波霧化装置41から放出されるミストMが通る開口部10aを設けたので、超音波霧化装置41から供給されるミストMを上部ケース10内に良好に受け入れることができ、上部ケース10の後面にミストMが付着して露が生じることを防ぐことができる。加えて、上部ケース10の底面に、下部ケース9に連通する孔10bを設けたので、上部ケース10及び下部ケース9内にミストMを十分に拡散させることができ、野菜室4内にミストMを十分に供給できる。
【0046】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態について図9を参照して説明する。この第2の実施形態では、水受け部48に代わって、前端部がミスト放出口50よりも前方(ミスト放出方向側)へ延出した構成である水受け部51を設けている。
この場合、水受け部51が前方へ延びているので、ミストMの放出に伴いミスト放出面42a及び覆い部49の内壁面(ミスト放出口50周辺部)に水滴が生じて垂れ落ちても、垂れ落ちる水を延出した水受け部51にてより確実に受けて、貯水部45内へ回収することができる。これにより、除霜水を更に効率良く利用することができるとともに、垂れ落ちた水が庫内に一層浸入し難くすることができる。
このような構成とした第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0047】
[第3の実施形態]
次に第3の実施形態について図10を参照して説明する。この第3の実施形態における超音波霧化装置52は、給水部材53の上部53aを、その前後方向を向く中心軸CLが水平方向よりも前上がり状態で上方へ傾いている構成とした。即ち、振動板42のミスト放出面42aを上方へ、例えば1°〜5°傾ける(上向きにする)ことで、ミスト放出方向を水平方向よりも上方へ傾けた構成とした。
【0048】
この場合、ミスト放出方向が上方へ傾いていることにより、第1の実施形態のようにミスト放出方向が水平方向である場合よりも、ミストMをミスト放出口50から前方の遠い距離まで飛ばすことができる。これにより、ミストMの放出距離を長くすることができ、野菜室4内において更に広範囲にミストMを拡散させることができる。
【0049】
[第4の実施形態]
次に第4の実施形態について図11を参照して説明する。この第4の実施形態では、振動板42と給水部材44(給水部47)との接触状態を維持する弾性手段としてコイルばね54を設けた構成としている。なお、コイルばね54の代わりに、例えば弾性ゴムを用いてもよい。
【0050】
上記した超音波霧化装置41においては、振動板42と給水部材44との接触状態が強く接触した状態であると、振動板42が超音波振動できなくなり、ミストMが発生しないおそれがある。また、振動板42と給水部材44との間が離れすぎていると、給水部材44から振動板42へ水が供給されず、ミストMが発生しないおそれがある。そこで、第4の実施形態では、断熱材30の下部後方に、前面及び下面が開口した矩形箱状のばね受け部55を設けて、このばね受け部55と給水部材44との間にコイルばね54を配設した。これにより、振動板42と給水部材44との間の接触状態を適当な状態に維持することができ、振動板42を良好に超音波振動させることができるとともに、給水部材44から振動板42へ安定して給水することができる。なお、振動板42は、図示しない規制手段により前方への移動が規制されている。
このような構成とした第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0051】
[第5の実施形態]
次に第5の実施形態について図12を参照して説明する。この第5の実施形態では、貯水部45の上方に除菌装置として紫外線ランプ56を設けた構成としている。具体的には、ばね受け部55の下端部に紫外線ランプ56を設置し、貯水部45の上方から貯水部45内の水に向けて、波長領域が例えば315nm〜400nmである紫外線を照射する構成とした。なお、紫外線ランプ56に代えて、紫外線LEDを用いてもよい。
【0052】
上記した実施形態では、冷蔵用冷却器17からの除霜水は、空気が冷却されて空気中の水蒸気が霜となって冷蔵用冷却器17に付着したものを融かして得る水であるため、ミネラルなどの不純物は入っていないが、水道水のように塩素なども入ってない。このため、貯水部45内に貯留される水は、水質が悪くなるおそれがある。そこで、紫外線ランプ56による紫外線を貯水部45内の水に照射して、貯水部45内の水の除菌を行うようにした。これにより、貯水部45内の水の水質を良好に維持することができ、水質の良好な水をミスト化して放出することができる。
このような構成とした第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0053】
[その他の実施形態]
本実施形態では、野菜室4内にミストMを放出する超音波霧化装置41,52について説明したが、これに限らず、他の貯蔵室、例えば冷蔵室3内にミストMを放出する超音波霧化装置に適用してもよい。
また、ミスト放出手段として、複数の孔46を有する振動板42を用いてミストMを発生させるメッシュ式の超音波霧化装置41,52を用いたが、ミスト放出手段はこれに限らない。例えば、表面弾性波式の霧化装置を用いてもよい。この表面弾性波式の霧化装置は、振動板と電極とを有し、電極に高周波電圧が印加されると、表面弾性波が発生する。そして、この表面弾性波の作用によって、振動板上に供給された水をミスト化し、ミストを上方に向かって放出するものである。この場合も、振動板へ水を供給する給水部を、ミスト放出面とは反対側に配置することで、給水部がミストを放出する際に邪魔になることがなく、広範囲にミストを放出できる。
【0054】
冷蔵用冷却器17からの除霜水をミスト発生のための水に利用するものとしたが、これに限らず、例えば給水タンクの水を利用するようにしてもよい。また、除霜水を貯水部45内に貯留してから振動板42に供給する構成としたが、冷蔵用冷却器17から直接振動板42に除霜水を供給するようにしてもよい。
【0055】
紫外線ランプ56により貯水部45内の水に紫外線を照射して、貯水部45内の水の除菌を行うようにしたが、除菌の方法はこれに限らない。例えば、貯水部45を抗菌成分として銀を含んだ材料から形成したり、貯水部45の内壁面や、給水部材44の外周面、水受け部48の内壁面などに、抗菌剤のコーティングを施したりしてもよい。これにより、ミスト発生のための水を除菌することができ、ミストの水質を良好に維持することができる。
【0056】
また、除菌装置として貯水部45内に電極を挿入する構成としてもよい。この場合、貯水部45内の水を電極により電気分解することで除菌できる。これにより、酸化力のある除菌された水をミストとして放出できるとともに、この酸化力のあるミストの拡散に伴って、野菜室4内の食品の表面や、上部ケース10及び下部ケース9の内壁面を除菌することもできる。すなわち、一つの装置で貯水部45内の水の除菌と、野菜室4内の除菌が可能となる。さらに、除菌装置としては、静電霧化装置を利用することもできる。これによれば、静電霧化装置から放出されるミストは、除菌性を有するヒドロキシラジカルを含んだものとなり、そのミストにより、貯水部45の除菌と貯蔵室内の除菌とを一つの装置で行うことが可能となる。
【0057】
超音波霧化装置41,52の電源は、冷蔵冷却モードが終了するまで、連続して通電されるものとしたが、この電源は、連続運転に代えて、通電と断電を繰り返す断続運転としてもよい。また、野菜室4内に湿度センサを設けて、この湿度センサにより検出された湿度の値に基づいて、超音波霧化装置41,52の運転を制御するようにしてもよい。
【0058】
以上のように本実施形態の冷蔵庫によれば、振動子により振動板を振動させて給水部から振動板に供給される水をミスト化し、振動板のミスト放出面から前方の貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段を備え、給水部をミスト放出面とは反対側に配置した構成としたので、給水部が邪魔にならずにミストを貯蔵室内の広範囲に確実に放出することができ、貯蔵室内を高湿度に保つことで食品の鮮度保持を期待できる。
【0059】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
図面中、1は冷蔵庫本体、4は野菜室(貯蔵室)、9は下部ケース、10は上部ケース、10aは開口部、10bは孔、17は冷蔵用冷却器、26は冷気ダクト、41,52は超音波霧化装置(ミスト放出手段)、42は振動板、42aはミスト放出面、43は振動子、44,53は給水部材(水保持手段)、45は貯水部、46は孔、47は給水部、48,51は水受け部、49は覆い部、50はミスト放出口、54はコイルばね(弾性手段)、Mはミストを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫においては、野菜などの食品を収納する貯蔵室である野菜室に、ミスト放出手段を構成する霧化装置を設けて野菜室内を加湿するようにしたものがある。霧化装置には、超音波式の霧化装置があり、この超音波霧化装置では、給水部から供給される水を振動子により振動させて霧化(ミスト化)し、発生した霧(ミスト)を野菜室内へ向けて放出するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような超音波霧化装置においては、ミスト化するための水を供給する給水部がミストの放出面よりも前方にあると、この給水部がミストを放出する際に邪魔になって十分にミストを野菜室内に拡散させることができないおそれがある。
【0005】
そこで、貯蔵室内の広範囲にミストを確実に放出できる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の冷蔵庫は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段とを備える。ミスト放出手段は、ミスト放出面を有する振動板と、この振動板を振動させる振動子と、振動板のミスト放出面内に設けられた複数の孔と、振動板に水を供給する給水部とを有する。ミスト放出手段は、振動子により振動板を振動させて給水部から振動板に供給される水をミスト化して孔からミスト放出面の前方へ向けて放出するものである。このミスト放出手段の給水部を、振動板のミスト放出面とは反対側に配置した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態による冷蔵庫全体の概略構成を示す縦断側面図
【図2】超音波霧化装置付近の縦断側面図
【図3】冷蔵庫正面から見た超音波霧化装置の配置図
【図4】超音波霧化装置付近の拡大縦断側面図
【図5】超音波霧化装置のミスト放出面の正面図
【図6】超音波霧化装置の振動板の拡大断面図
【図7】野菜室の上部ケースの斜視図
【図8】ミスト放出の様子を示す図
【図9】第2の実施形態による図4相当図
【図10】第3の実施形態による図4相当図
【図11】第4の実施形態による図4相当図
【図12】第5の実施形態による図4相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による冷蔵庫について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。図1に示すように、冷蔵庫本体1は、前面が開口した縦長矩形箱状の断熱箱体2内に、複数の貯蔵室を設けて構成されている。具体的には、断熱箱体2内には、上段から順に、冷蔵室3、野菜室4が設けられ、その下方に製氷室5と小冷凍室(図示せず)が左右に並べて設けられ、これらの下方に冷凍室6が設けられている。製氷室5内には、周知の自動製氷装置7が設けられている。なお、断熱箱体2は、鋼板製の外箱2aと合成樹脂製の内箱2bとの間に断熱材2cを設けて構成されている。
【0009】
冷蔵室3及び野菜室4は、いずれも冷蔵温度帯(例えば1〜4℃)の貯蔵室であり、それらの間は、プラスチック製の仕切壁8により上下に仕切られている。冷蔵室3の前面部には、ヒンジ開閉式の断熱扉3aが設けられ、野菜室4の前面には引出し式の断熱扉4aが設けられている。野菜室4内における断熱扉4aの背面部には、食品を収納するための下部ケース9と上部ケース10とが設けられている。下部ケース9は、断熱扉4aに連結されている。上部ケース10は、下部ケース9よりも小型であり、下部ケース9の上部に配置されている。この上部ケース10には、図7にも示すように、後面上部に矩形状の開口部10aが設けられているとともに、底面に下部ケース9に連通する複数の孔10bが設けられている(図1及び図2参照)。これら開口部10a及び孔10bは、後述するミストが通るためのものである。
【0010】
冷蔵室3内は、複数の棚板11により上下に複数段に区切られている。冷蔵室3内の最下部(仕切壁8の上部)において、右側にはチルド室12が設けられ、その左側には、図示はしないが、卵ケースと小物ケースが上下に設けられ、さらに、これらの左側には貯水タンクが設けられている。チルド室12には、チルドケース13が出し入れ可能に設けられている。貯水タンクは、自動製氷装置7の製氷皿7aに供給する水を貯留するためのものである。冷蔵室3、野菜室4、及びチルド室12は、食品などの貯蔵物(図示せず)を収納する貯蔵室を構成している。
【0011】
製氷室5、小冷凍室、並びに冷凍室6は、いずれも冷凍温度帯(例えば−10〜−20℃)の貯蔵室であり、野菜室4と製氷室5および小冷凍室との間は、断熱仕切壁14により上下に仕切られている。製氷室5の前面部には、引出し式の断熱扉5aが設けられており、その断熱扉5aの背面部に貯氷容器15が連結されている。小冷凍室の前面部にも、図示はしないが貯蔵容器が連結された引出し式の断熱扉が設けられている。冷凍室6の前面部にも、貯蔵容器16が連結された引出し式の断熱扉6aが設けられている。
【0012】
この冷蔵庫本体1内には、全体として詳しく図示はしないが、冷蔵室3及び野菜室4を冷却するための冷蔵用冷却器17と、製氷室5、小冷凍室、冷凍室6を冷却するための冷凍用冷却器18との2つの冷却器を備える冷凍サイクルが組込まれる。冷蔵庫本体1の下端部背面側には、機械室19が設けられ、詳しく図示はしないが、この機械室19内に、冷凍サイクルを構成する圧縮機20及び凝縮器などが配設されていると共に、それらを冷却するための冷却ファンや除霜水蒸発皿21等が配設されている。冷蔵庫本体1の背面下部寄り部分には、全体を制御するマイコン等を実装した制御装置22が設けられている。
【0013】
冷蔵庫本体1内の冷凍室6の背部には、冷凍用冷却器室23が設けられている。この冷凍用冷却器室23内に、下部に位置させて冷凍用冷却器18が配設されていると共に、上部に位置させて冷凍用送風ファン24が配設されている。冷凍用冷却器室23の前面の中間部には冷気吹出口23aが設けられ、下端部には戻り口23bが設けられている。冷凍用冷却器18には、図示はしないが除霜ヒータが設けられている。
【0014】
この構成において、冷凍用送風ファン24が駆動されると、冷凍用冷却器18により生成された冷気が、冷気吹出口23aから製氷室5、小冷凍室、冷凍室6内に供給された後、戻り口23bから冷凍用冷却器室23内に戻されるといった循環を行うようになっている。これにより、それら製氷室5、小冷凍室、および冷凍室6が冷却される。なお、冷凍用冷却器18の下方には、当該冷凍用冷却器18の除霜時の除霜水を受ける排水樋25が設けられている。その排水樋25に受けられた除霜水は、庫外の機械室19内に設けられた除霜水蒸発皿21に導かれ、蒸発するようになっている。
【0015】
そして、冷蔵庫本体1内における冷蔵室3および野菜室4の背部には、冷蔵用冷却器17や、この冷蔵用冷却器17により生成された冷気を冷蔵室3(及び野菜室4)内に供給するための冷気ダクト26、冷気を循環させるための冷蔵用送風ファン27等が、以下のようにして配設される。即ち、冷蔵庫本体1における冷蔵室3の最下段の後方(チルド室12の後方)には、冷気ダクト26の一部を構成する冷蔵用冷却器室28が設けられ、この冷蔵用冷却器室28内に冷蔵用冷却器17が配設されている。
【0016】
冷蔵用冷却器室28の上方には、上方に延びる冷気供給ダクト29が設けられていて、冷蔵用冷却器室28の上端部が冷気供給ダクト29の下端部に連通している。この場合、冷蔵用冷却器室28と冷気供給ダクト29により、冷気ダクト26を構成している。図2にも示すように、冷蔵用冷却器室28の前部壁28aは、冷気供給ダクト29よりも前方に膨出している。また、その前部壁28aの裏側には、断熱性を有する断熱材30が設けられている。冷気供給ダクト29の前部には、冷蔵室3内に開口する冷気供給口31が複数個設けられている。
【0017】
冷蔵用冷却器室28内の下部には、冷蔵用冷却器17の下方に位置させて、冷蔵用冷却器17からの除霜水を受ける排水樋32が設けられている。この排水樋32に受けられた除霜水も、前記排水樋25で受けられた除霜水と同様に、庫外の前記機械室19内に設けられた除霜水蒸発皿21に導かれ、蒸発するようになっている。排水樋32の左右の長さ寸法および前後の奥行き寸法は、冷蔵用冷却器17の左右の長さ寸法および前後の奥行き寸法よりも大きく設定されている。なお、本実施形態では、冷蔵用冷却器17からの除霜水は、排水樋32と、後述する超音波霧化装置41の貯水部45(図2参照)とによって受けられ、貯水部45に受けられた除霜水は貯水部45内に貯留される構成となっている。
【0018】
野菜室4の後方には、図2にも示すように、排水樋32の下方に位置させて、冷蔵用送風ファン27が配設されていると共に、送風ダクト33及び吸込み口34が設けられている。そのうち送風ダクト33は、上端部が排水樋32をう回するようにして冷蔵用冷却器室28(冷気ダクト26)に連通している。吸込み口34は、野菜室4の後部において開口している。なお、冷蔵室3の底部を構成する仕切壁8の後部の左右の両隅部には、図示しない複数の連通口が形成されている。この連通口は、冷蔵室3とこれの下方の野菜室4とを連通させている。
【0019】
この構成において、冷蔵用送風ファン27が駆動されると、主に図1の白抜き矢印で示すように、野菜室4内の空気が吸込み口34から冷蔵用送風ファン27側に吸い込まれ、その吸い込まれた空気は、送風ダクト33側へ吹き出される。送風ダクト33側へ吹き出された空気は、冷気ダクト26(冷蔵用冷却器室28および冷気供給ダクト29)を通り、複数の冷気供給口31から冷蔵室3内に吹き出される。冷蔵室3内に吹き出された空気は、連通口を通して野菜室4内にも供給され、最終的に冷蔵用送風ファン27に吸い込まれるという循環が行われる。この過程で、冷蔵用冷却器室28内を通る空気が冷蔵用冷却器17により冷却されて冷気となり、その冷気が冷蔵室3および野菜室4に供給されることによって、冷蔵室3および野菜室4が冷蔵温度帯の温度に冷却される。
【0020】
さて、本実施形態では、野菜室4の背面上部における冷蔵用冷却器17の下方に、ミスト放出手段を構成する超音波霧化装置41が設けられている。この超音波霧化装置41は、野菜室4内に向けてミスト(霧)を放出するためのものである。以下、この超音波霧化装置41について図1〜図6を参照して説明する。
【0021】
超音波霧化装置41は、図3に示すように、冷気ダクト26の一部を構成する冷蔵用冷却器室28内において、左右方向のほぼ中央部に配置されている。この超音波霧化装置41は、図4及び図5に示すように、円板状の振動板42と、リング状の振動子43と、横から見て逆L字型をなす給水部材44(水保持手段に相当)と、貯水部45とから構成される。
【0022】
振動板42は、例えば金属(Ni合金)からなり、ミスト放出面42aを有する。このミスト放出面42a内には、図5に示すように、複数の孔46が設けられている。この孔46は、例えば孔径が数μmの微細な孔であり、図6に示すように、オリフィス形状に形成されていて、ミスト放出面42a側の開口が狭くなっている。
【0023】
振動子43は、振動板42を振動させるためのものであり、振動板42の前面外周部に固定されている。この振動子43は、図示しない圧電素子と発振回路とからなる。発振回路は、図示しない電源から電力が供給されると、例えば数十から100kHz程度の周波数の電圧を圧電素子に印加する。圧電素子に電圧が印加されると、圧電素子が伸縮し、これに伴って振動子43が超音波振動する。このように、振動子43が超音波振動することにより、振動子43と固定した振動板42も超音波振動する構成となっている。
【0024】
給水部材44は、水を吸い上げて振動板42に水を供給するためのものであり、保水材(例えばウレタンスポンジ)から構成されている。この保水材は、保水性及び水分の吸い上げ特性に優れている。図4に示すように、給水部材44は、前端部が振動板42の裏側に接触していると共に、下端部が貯水部45の底面に近接した状態で配置される。給水部材44は、貯水部45に貯留された水を毛細管現象により吸い上げ、振動板42の孔46まで移動させる(図6参照)。
【0025】
図4に示すように、貯水部45は、排水樋32の上方に配設され、冷蔵用冷却器17の除霜時に発生する除霜水(冷蔵用冷却器17に付着した霜が融けた際に発生する水)の一部を受けて貯留するためのものである。これら給水部材44と貯水部45とから、振動板42に水を供給する給水部47が構成される。この給水部47は、振動板42のミスト放出面42aとは反対側(裏側)に配置される。
【0026】
振動板42の下方には、ミスト放出面42aから垂れ落ちる水を受ける水受け部48が設けられている。水受け部48は、貯水部45よりも上方に配設され、貯水部45に連通する開口48aを有している。水受け部48にて受けられた水は、開口48aから貯水部45に流れ落ちて貯留される。
【0027】
また、振動板42の上方には、振動板42を覆う覆い部49が設けられている。この覆い部49には、ミスト放出口50が形成されている。このミスト放出口50は、人の指が入らない程度の大きさであり、ミスト放出面42aに対応して設けられている。ミスト放出面42aから放出されたミストは、ミスト放出口50を通って、上部ケース10の開口部10a(図7参照)と開口部10c、及び、下部ケース9の開口部9aから野菜室4内に供給される(図1及び図2参照)。
【0028】
次に、上記構成の作用について図1〜図8を参照して説明する。
制御装置22は、上記した冷凍用冷却器18により冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室5、小冷凍室、冷凍室6)の冷却を行う冷凍冷却モードと、冷蔵用冷却器17により冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)の冷却を行う冷蔵冷却モードと、除霜ヒータを発熱させて冷凍用冷却器18の除霜を行う除霜モードとを、切替えて制御している。
【0029】
冷凍冷却モードの際には、圧縮機20が駆動するとともに、圧縮機20から吐出された冷媒が、凝縮器、キャピラリチューブ(図示せず)、冷凍用冷却器18、アキュームレータ(図示せず)などを通り、圧縮機20に戻されるように循環する。この過程で、冷凍用冷却器18の周りの空気が冷却され、その冷気が、冷凍用送風ファン24によって循環されることにより、冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室5、小冷凍室、冷凍室6)が冷却される。
【0030】
この冷凍冷却モードの際には、同時に冷蔵用冷却器17の除霜が行われる(冷蔵除霜)。冷凍冷却モードでは、圧縮機20は駆動されているが、冷蔵用冷却器17側には冷媒は流れず、当該冷蔵用冷却器17は冷却されない。またこのとき、冷蔵用送風ファン27は駆動されていて、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)の空気が、冷気ダクト26を通して循環されることで、冷蔵用冷却器17の温度は上昇してプラスの温度となり、これに伴い冷蔵用冷却器17の除霜が行われる。前述したように、冷蔵用冷却器17の除霜時に当該冷蔵用冷却器17から滴下する除霜水の一部は、超音波霧化装置41の貯水部45に受けられて貯留され、残りは排水樋32に受けられた後、除霜水蒸発皿21に導かれる。この冷凍冷却モード(冷蔵除霜)の際には、超音波霧化装置41の電源は断電されていて、超音波霧化装置41は運転停止状態であり、ミストは発生しない。
【0031】
冷蔵冷却モードの際には、圧縮機20が駆動するとともに、圧縮機20から吐出された冷媒が、凝縮器、キャピラリチューブ(図示せず)、冷蔵用冷却器17などを通り、圧縮機20に戻されるように循環する。この過程で、冷蔵用冷却器17の周りの空気が冷却され、その冷気が、前述したように冷蔵用送風ファン27によって循環されることにより、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)が冷却される。このとき、冷凍用送風ファン24は断電されている。
【0032】
冷蔵冷却モードに切り替わってから(冷蔵除霜が終了してから)所定時間(例えば5分)経過すると、超音波霧化装置41の電源が通電される。なお、超音波霧化装置41の電源は、冷蔵冷却モードが終了するまで、連続して通電される。
【0033】
超音波霧化装置41の振動子43に、電源から電力が供給されると、振動子43が超音波振動することにより振動板42が超音波振動する。このとき、貯水部45には、冷蔵用冷却器17の除霜時に発生した除霜水が貯留されており、この貯水部45に貯留された水が、給水部材44により吸い上げられ、図6に示すように、振動板42の孔46の近傍まで移動している。移動した水は、図8(a)に示すように、水の表面張力により、孔46の中を通ってミスト放出面42a側まで達する。この状態で、振動板42が超音波振動すると、図8(b)及び図8(c)に示すように、振動板42が前後方向に弾性変形することにより、孔46内の水が圧力を受けて、粒子径の小さい(例えば、粒子径が数μm〜数十μm程度である)水粒子、すなわち、ミストMとなって(ミスト化して)、孔46から前方へ向かって放出される。このようにして、超音波霧化装置41によってミストMが発生する。特に給水部材44は円板状をなす振動板42の中央部よりに配置されているため、振動板42に供給された水は外周から集中して振動を受け、中心に近いほど振動幅が大きいため、より遠くにミストMを放出することができる。また、ミストMの量を増やすには振動板42の面積を増やすとよい。
【0034】
振動板42の孔46からミスト放出面42aの前方へ向けて放出されたミストMは、図1及び図2に示すように、超音波霧化装置41より前方に位置する上部ケース10及び下部ケース9の上方から徐々に下降しながら、野菜室4内全体に供給される。具体的には、ミスト放出口50から放出されたミストMは、上部ケース10の開口部10a(図7参照)及び開口部10cから上部ケース10内に供給されるとともに、下部ケース9の開口部9a、及び上部ケース10に設けられた複数の孔10bを通って下部ケース10内に供給される。このように野菜室4内にミストMが供給されることにより、野菜室4内が加湿される。
【0035】
超音波霧化装置41によるミストMの放出が継続して行われると、振動板42のミスト放出面42a、及び、ミスト放出口50周辺の覆い部49の内壁面に、水滴(露)が生じることがある(図4及び図5参照)。この場合、ミスト放出面42a及び覆い部49の内壁面(ミスト放出口50周辺部)から垂れ落ちる水滴は、振動板42の下方に設けられた水受け部48にて受けられ、開口48aから貯水部45内に流れ落ちて貯留される。このようにして、振動板42に供給された水の一部が貯水部45に回収され、再びミスト発生のために利用されるようになっている。
【0036】
上記した冷蔵冷却モードが終了すると、再び冷凍冷却モード(冷蔵除霜モード)が行われる。このとき、超音波霧化装置41の電源は断電され、ミストMの発生は停止される。そして、この冷凍冷却モードの後、定期的な除霜モードが行われる。この除霜モードは例えば24時間ごとに行われる。
【0037】
除霜モードに入ると、圧縮機20の運転が停止され、冷媒の循環が停止される。冷凍用送風ファン24が断電され、代わって除霜ヒータが通電されて発熱する。この除霜ヒータの発熱に伴い冷凍用冷却器18の除霜が行われ、その除霜水は、排水樋25に受けられた後、除霜水蒸発皿21に導かれる。また、冷蔵用送風ファン27は通電されたままで、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室3、野菜室4、チルド室12)の空気が、冷気ダクト26を通して循環されることで、冷蔵除霜の際と同様に、冷蔵用冷却器17の温度は上昇してプラスの温度となり、これに伴い冷蔵用冷却器17の除霜も行われる。この際の除霜においても、冷蔵用冷却器17から滴下する除霜水の一部は、貯水部45に受けられて貯留され、残りは前述したように、排水樋32に受けられた後、除霜水蒸発皿21に導かれる。
【0038】
この除霜モードが終了すると、再び冷凍冷却モード(冷蔵除霜)に切り替えられる。この場合、冷蔵用冷却器17の除霜は継続して行われることになる。そして、冷凍冷却モードが終了すると(冷蔵除霜が終了すると)、冷蔵冷却モードに切り替えられる。この場合、冷蔵冷却モードに切り替えられると同時に、超音波霧化装置41の電源も通電される。この後、冷凍冷却モード(冷蔵除霜)、冷蔵冷却モードが交互に行われ、冷蔵冷却モードの際に超音波霧化装置41の電源も通電され、ミストMが放出される。
【0039】
上記した第1の実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
野菜室4の背面上部に超音波霧化装置41を設置し、その超音波霧化装置41で発生させたミストMをミスト放出口50から野菜室4内に供給する構成とした。これにより、野菜室4の上方から野菜室4内全体にミストMが供給されることで、野菜室4内を高湿度に保つことができ、野菜等の食品の鮮度保持を期待できる。そして、超音波霧化装置41の給水部47(給水部材44と貯水部45)を振動板42のミスト放出面42aとは反対側に配置したので、給水部47がミストMを放出する際に邪魔になることがなく、野菜室4内の広範囲にミストMを確実に放出することができる。
【0040】
さらに、野菜室4の冷却が行われる冷蔵冷却モード時に、超音波霧化装置41の電源に通電して、野菜室4内にミストMを放出するようにした。これにより、冷却に伴い湿度が低下する冷蔵冷却モード中に、野菜室4内にミストMが供給されるので、野菜室4内の湿度の低下を抑制して、野菜室4内を高湿度に保つことができる。
【0041】
また、超音波霧化装置41を冷気ダクト26内に設けたので、超音波霧化装置41によって庫内容積が狭くなることがなく、野菜室4の収容スペースを十分に確保しながらミストMを供給することができる。
また、貯水部45内に貯留された除霜水を給水部材44により吸い上げて、振動板42に水を継続的に供給することができるので、簡単な構成で水の供給を維持できる。そして、水を安定して供給することができるので、ミスト放出口50からのミスト放出量も安定させることができる。
【0042】
さらに、冷蔵用冷却器17の除霜時に発生する除霜水を貯水部45で受けて、この除霜水をミスト発生のための水として利用しているので、振動板42への水の供給を自動的に行うことができ、水を外部から補給する必要がなく、使用者が給水する手間を省くことができる。
【0043】
また、ミスト放出面42a及び覆い部49の内壁面(ミスト放出口50周辺部)から垂れ落ちる水を水受け部48にて受け、この水を貯水部45に送って回収するようにしたので、除霜水を効率良く利用することができるとともに、垂れ落ちた水が庫内に浸入することを防止することができる。
【0044】
覆い部49により振動板42を覆うとともに、覆い部49にミスト放出口50を設け、このミスト放出口50からミストMを放出する構成としたので、ミストMの放出を一定方向に調節することができ、野菜室4内におけるミストMの拡散を良好に調整することができる。
【0045】
また、野菜室4内に収容される上部ケース10の後面に、超音波霧化装置41から放出されるミストMが通る開口部10aを設けたので、超音波霧化装置41から供給されるミストMを上部ケース10内に良好に受け入れることができ、上部ケース10の後面にミストMが付着して露が生じることを防ぐことができる。加えて、上部ケース10の底面に、下部ケース9に連通する孔10bを設けたので、上部ケース10及び下部ケース9内にミストMを十分に拡散させることができ、野菜室4内にミストMを十分に供給できる。
【0046】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態について図9を参照して説明する。この第2の実施形態では、水受け部48に代わって、前端部がミスト放出口50よりも前方(ミスト放出方向側)へ延出した構成である水受け部51を設けている。
この場合、水受け部51が前方へ延びているので、ミストMの放出に伴いミスト放出面42a及び覆い部49の内壁面(ミスト放出口50周辺部)に水滴が生じて垂れ落ちても、垂れ落ちる水を延出した水受け部51にてより確実に受けて、貯水部45内へ回収することができる。これにより、除霜水を更に効率良く利用することができるとともに、垂れ落ちた水が庫内に一層浸入し難くすることができる。
このような構成とした第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0047】
[第3の実施形態]
次に第3の実施形態について図10を参照して説明する。この第3の実施形態における超音波霧化装置52は、給水部材53の上部53aを、その前後方向を向く中心軸CLが水平方向よりも前上がり状態で上方へ傾いている構成とした。即ち、振動板42のミスト放出面42aを上方へ、例えば1°〜5°傾ける(上向きにする)ことで、ミスト放出方向を水平方向よりも上方へ傾けた構成とした。
【0048】
この場合、ミスト放出方向が上方へ傾いていることにより、第1の実施形態のようにミスト放出方向が水平方向である場合よりも、ミストMをミスト放出口50から前方の遠い距離まで飛ばすことができる。これにより、ミストMの放出距離を長くすることができ、野菜室4内において更に広範囲にミストMを拡散させることができる。
【0049】
[第4の実施形態]
次に第4の実施形態について図11を参照して説明する。この第4の実施形態では、振動板42と給水部材44(給水部47)との接触状態を維持する弾性手段としてコイルばね54を設けた構成としている。なお、コイルばね54の代わりに、例えば弾性ゴムを用いてもよい。
【0050】
上記した超音波霧化装置41においては、振動板42と給水部材44との接触状態が強く接触した状態であると、振動板42が超音波振動できなくなり、ミストMが発生しないおそれがある。また、振動板42と給水部材44との間が離れすぎていると、給水部材44から振動板42へ水が供給されず、ミストMが発生しないおそれがある。そこで、第4の実施形態では、断熱材30の下部後方に、前面及び下面が開口した矩形箱状のばね受け部55を設けて、このばね受け部55と給水部材44との間にコイルばね54を配設した。これにより、振動板42と給水部材44との間の接触状態を適当な状態に維持することができ、振動板42を良好に超音波振動させることができるとともに、給水部材44から振動板42へ安定して給水することができる。なお、振動板42は、図示しない規制手段により前方への移動が規制されている。
このような構成とした第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0051】
[第5の実施形態]
次に第5の実施形態について図12を参照して説明する。この第5の実施形態では、貯水部45の上方に除菌装置として紫外線ランプ56を設けた構成としている。具体的には、ばね受け部55の下端部に紫外線ランプ56を設置し、貯水部45の上方から貯水部45内の水に向けて、波長領域が例えば315nm〜400nmである紫外線を照射する構成とした。なお、紫外線ランプ56に代えて、紫外線LEDを用いてもよい。
【0052】
上記した実施形態では、冷蔵用冷却器17からの除霜水は、空気が冷却されて空気中の水蒸気が霜となって冷蔵用冷却器17に付着したものを融かして得る水であるため、ミネラルなどの不純物は入っていないが、水道水のように塩素なども入ってない。このため、貯水部45内に貯留される水は、水質が悪くなるおそれがある。そこで、紫外線ランプ56による紫外線を貯水部45内の水に照射して、貯水部45内の水の除菌を行うようにした。これにより、貯水部45内の水の水質を良好に維持することができ、水質の良好な水をミスト化して放出することができる。
このような構成とした第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0053】
[その他の実施形態]
本実施形態では、野菜室4内にミストMを放出する超音波霧化装置41,52について説明したが、これに限らず、他の貯蔵室、例えば冷蔵室3内にミストMを放出する超音波霧化装置に適用してもよい。
また、ミスト放出手段として、複数の孔46を有する振動板42を用いてミストMを発生させるメッシュ式の超音波霧化装置41,52を用いたが、ミスト放出手段はこれに限らない。例えば、表面弾性波式の霧化装置を用いてもよい。この表面弾性波式の霧化装置は、振動板と電極とを有し、電極に高周波電圧が印加されると、表面弾性波が発生する。そして、この表面弾性波の作用によって、振動板上に供給された水をミスト化し、ミストを上方に向かって放出するものである。この場合も、振動板へ水を供給する給水部を、ミスト放出面とは反対側に配置することで、給水部がミストを放出する際に邪魔になることがなく、広範囲にミストを放出できる。
【0054】
冷蔵用冷却器17からの除霜水をミスト発生のための水に利用するものとしたが、これに限らず、例えば給水タンクの水を利用するようにしてもよい。また、除霜水を貯水部45内に貯留してから振動板42に供給する構成としたが、冷蔵用冷却器17から直接振動板42に除霜水を供給するようにしてもよい。
【0055】
紫外線ランプ56により貯水部45内の水に紫外線を照射して、貯水部45内の水の除菌を行うようにしたが、除菌の方法はこれに限らない。例えば、貯水部45を抗菌成分として銀を含んだ材料から形成したり、貯水部45の内壁面や、給水部材44の外周面、水受け部48の内壁面などに、抗菌剤のコーティングを施したりしてもよい。これにより、ミスト発生のための水を除菌することができ、ミストの水質を良好に維持することができる。
【0056】
また、除菌装置として貯水部45内に電極を挿入する構成としてもよい。この場合、貯水部45内の水を電極により電気分解することで除菌できる。これにより、酸化力のある除菌された水をミストとして放出できるとともに、この酸化力のあるミストの拡散に伴って、野菜室4内の食品の表面や、上部ケース10及び下部ケース9の内壁面を除菌することもできる。すなわち、一つの装置で貯水部45内の水の除菌と、野菜室4内の除菌が可能となる。さらに、除菌装置としては、静電霧化装置を利用することもできる。これによれば、静電霧化装置から放出されるミストは、除菌性を有するヒドロキシラジカルを含んだものとなり、そのミストにより、貯水部45の除菌と貯蔵室内の除菌とを一つの装置で行うことが可能となる。
【0057】
超音波霧化装置41,52の電源は、冷蔵冷却モードが終了するまで、連続して通電されるものとしたが、この電源は、連続運転に代えて、通電と断電を繰り返す断続運転としてもよい。また、野菜室4内に湿度センサを設けて、この湿度センサにより検出された湿度の値に基づいて、超音波霧化装置41,52の運転を制御するようにしてもよい。
【0058】
以上のように本実施形態の冷蔵庫によれば、振動子により振動板を振動させて給水部から振動板に供給される水をミスト化し、振動板のミスト放出面から前方の貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段を備え、給水部をミスト放出面とは反対側に配置した構成としたので、給水部が邪魔にならずにミストを貯蔵室内の広範囲に確実に放出することができ、貯蔵室内を高湿度に保つことで食品の鮮度保持を期待できる。
【0059】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
図面中、1は冷蔵庫本体、4は野菜室(貯蔵室)、9は下部ケース、10は上部ケース、10aは開口部、10bは孔、17は冷蔵用冷却器、26は冷気ダクト、41,52は超音波霧化装置(ミスト放出手段)、42は振動板、42aはミスト放出面、43は振動子、44,53は給水部材(水保持手段)、45は貯水部、46は孔、47は給水部、48,51は水受け部、49は覆い部、50はミスト放出口、54はコイルばね(弾性手段)、Mはミストを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、
前記貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段と、を備え、
前記ミスト放出手段は、ミスト放出面を有する振動板と、この振動板を振動させる振動子と、前記振動板の前記ミスト放出面内に設けられた複数の孔と、前記振動板に水を供給する給水部とを有し、前記振動子により前記振動板を振動させて前記給水部から前記振動板に供給される水をミスト化して前記孔から前記ミスト放出面の前方へ向けて放出するものであり、前記給水部を、前記振動板の前記ミスト放出面とは反対側に配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記冷蔵庫本体に設けられ前記貯蔵室を冷却するための冷却器と、
この冷却器により生成された冷気を前記貯蔵室内に供給するためのダクトと、を備え、
前記給水部は、前記ダクト内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記給水部は、水を保持する水保持手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記給水部は、水を貯留する貯水部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記冷蔵庫本体に設けられ前記貯蔵室を冷却するための冷却器を備え、
前記貯水部は、前記冷却器の下方に配設され前記冷却器の除霜時に発生する除霜水を受けて貯留することを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記ミスト放出手段を前記貯蔵室の背面上部に配置したことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記ミスト放出面から垂れ落ちる水を受ける水受け部を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記給水部は、水を貯留する貯水部を有し、
前記貯水部は前記水受け部よりも下方に配設され、前記水受け部にて受けられた水が前記貯水部に回収されることを特徴とする請求項7に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記振動板を覆う覆い部が設けられ、
この覆い部には、前記ミスト放出面から放出されるミストを放出するためのミスト放出口が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記ミスト放出面から垂れ落ちる水を受ける水受け部を備え、
この水受け部を、前記ミスト放出口よりもミスト放出方向側へ延出させたことを特徴とする請求項9に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記振動板の前記ミスト放出面を上方へ傾けることでミスト放出方向を水平方向よりも上方へ傾けたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項12】
前記振動板と前記給水部との接触状態を維持する弾性手段を設けたことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項13】
前記貯蔵室内には、前記ミスト放出手段より前方に位置させて、食品を収納するためのケースが設けられ、
このケースの後面には、前記ミスト放出手段から放出されるミストが通る開口部が設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項14】
前記貯蔵室内には、前記ミスト放出手段より前方に位置させて、食品を収納するための上部ケースと下部ケースとが設けられ、
前記上部ケースの後面には、前記ミスト放出手段から放出されるミストが通る開口部が設けられ、
前記上部ケースの底面には、前記下部ケースに連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項1】
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、
前記貯蔵室内に向けてミストを放出するミスト放出手段と、を備え、
前記ミスト放出手段は、ミスト放出面を有する振動板と、この振動板を振動させる振動子と、前記振動板の前記ミスト放出面内に設けられた複数の孔と、前記振動板に水を供給する給水部とを有し、前記振動子により前記振動板を振動させて前記給水部から前記振動板に供給される水をミスト化して前記孔から前記ミスト放出面の前方へ向けて放出するものであり、前記給水部を、前記振動板の前記ミスト放出面とは反対側に配置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記冷蔵庫本体に設けられ前記貯蔵室を冷却するための冷却器と、
この冷却器により生成された冷気を前記貯蔵室内に供給するためのダクトと、を備え、
前記給水部は、前記ダクト内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記給水部は、水を保持する水保持手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記給水部は、水を貯留する貯水部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記冷蔵庫本体に設けられ前記貯蔵室を冷却するための冷却器を備え、
前記貯水部は、前記冷却器の下方に配設され前記冷却器の除霜時に発生する除霜水を受けて貯留することを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記ミスト放出手段を前記貯蔵室の背面上部に配置したことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記ミスト放出面から垂れ落ちる水を受ける水受け部を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記給水部は、水を貯留する貯水部を有し、
前記貯水部は前記水受け部よりも下方に配設され、前記水受け部にて受けられた水が前記貯水部に回収されることを特徴とする請求項7に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記振動板を覆う覆い部が設けられ、
この覆い部には、前記ミスト放出面から放出されるミストを放出するためのミスト放出口が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記ミスト放出面から垂れ落ちる水を受ける水受け部を備え、
この水受け部を、前記ミスト放出口よりもミスト放出方向側へ延出させたことを特徴とする請求項9に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記振動板の前記ミスト放出面を上方へ傾けることでミスト放出方向を水平方向よりも上方へ傾けたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項12】
前記振動板と前記給水部との接触状態を維持する弾性手段を設けたことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項13】
前記貯蔵室内には、前記ミスト放出手段より前方に位置させて、食品を収納するためのケースが設けられ、
このケースの後面には、前記ミスト放出手段から放出されるミストが通る開口部が設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項14】
前記貯蔵室内には、前記ミスト放出手段より前方に位置させて、食品を収納するための上部ケースと下部ケースとが設けられ、
前記上部ケースの後面には、前記ミスト放出手段から放出されるミストが通る開口部が設けられ、
前記上部ケースの底面には、前記下部ケースに連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−241921(P2012−241921A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109332(P2011−109332)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
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