説明

冷間圧接封止法および装置

冷間圧接法、ジョイント構造、および気密封止された封じ込め装置が提供される。この方法は、第1の金属を含む第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供すること、第2の金属を含む第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供すること、および前記接合面を、1つまたは複数の界面で、前記接合面の前記第1の金属と前記第2の金属の間に金属−金属結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮することを含む。接合面のオーバラップ部分は、表面汚染物を置換し、接合面間の密接を入熱なしに促進するのに有効である。気密封止された装置は、薬物製剤、バイオセンサまたはMEMS装置を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年11月4日に出願された米国特許仮出願代60/62,5053号の恩典を主張するものである。この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の背景)
本発明は一般に、部品を合わせて封止(sealing)するための方法および装置の分野に関し、詳細には、装置および/または埋込み可能な医療装置の気密封止(hermetic sealing)方法に関する。
【0003】
多くの応用では、2つ以上の部品を互いに接合し、結合し、または他の方法で封止する必要がある。特に医療用の埋込み装置では、これらのシール(seal)がしばしば、例えばリザーバ内容物の純度または品質を保護するために、生物適合性かつ気密性でなければならない。
【0004】
封止を必要とする装置の例が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,797,898号、第6,527,762号、第6,491,666号および第6,551,838号に記載されている。リザーバ内容物の制御された放出または露出を提供するこれらの装置は、リザーバ内容物がその中に封じ込められた複数のリザーバを含む。リザーバは、放出するための医薬品製剤、露出させるためのセンサ、またはこれらの組合せを含むことができる。これらの装置を構築する際には、リザーバおよびリザーバ内容物を含み、または装置の動作に関連した電子構成要素を含むことができる、2つ以上の基材または他の部品を封止することがしばしば必要である。
【0005】
さまざまな封止法が当技術分野では知られている。その例には、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,730,072号(ポリマーガスケットおよびバックプレートの使用を記載している)および米国特許第6,827,250号(高温レーザまたは抵抗性溶接、はんだ付け、超音波圧接、および金属圧縮ガスケットを含む、マイクロリザーバを気密封止するためのさまざまな技法を記載している)、および米国特許出願第2005/0050859A1号に記載されているものなどが含まれる。これらの方法は、全ての封止応用に適し、または全ての封止応用に対して理想的でもあるわけではない。
【0006】
周囲条件下では、金属表面は、互いに合わせても一般に結合しない。金属表面は、金属結合形成の障壁となる表面酸化物、有機汚染物あるいはその両方で覆われているからである。しかし、その金属の降伏応力を上回る圧力で2つの金属平面を圧縮すると、それらの面を変形させることができ、この障壁を置換し、結合可能な清浄な金属を露出させることができる。しかし、互いに圧縮された2つの平面の金属の変形がかなり大きくても、実際の結合領域は、対合している表面積に比べて相当に小さい(Mohamed&Washburn、Welding Research Supplement、1975年9月、302s〜310sページ、Welding&Joining Processes 3.371J/13.391J Fabrication Technology、T.Eagar、MIT)。この小結合領域特性は2つの現象に起因する。第1に、新しく露出した金属の表面部分は、平面の変形量の強力な関数でない。第2に、凹凸(asperities)が、表面の大部分が相互作用し結合することを妨げる。表面が完全に結合しないため、ハーメチックシール(hermetic seal)の形成を妨げる漏れ経路が存在する可能性がある。
【0007】
Ferguson他、「Contact Adhesion of Thin Gold Films on Elastomeric Supports:Cold Welding Under Ambient Conditions」、Science、New Sereis、253(5021):776〜78(1991年8月16日)は、コンプライアントポリマー(compliant polymer)上の薄い金の金属面どうしを接触させることによる、周囲条件下での金−金結合を開示している。しかし、その結果は、結合していない汚染物の「島(island)」を有する結合界面である。これらの島は連続した漏れ経路を形成する可能性がある。
【0008】
ある範囲の材料を用いて低温でハーメチックシールを形成するための改良された封止法を提供することが望ましい。さらに、少なくとも2つの基材間の短い間隔の複数のリザーバを、比較的単純で費用効果の高いプロセスで、特に、信頼性の高い大規模生産向けのプロセスで、個別に気密封止することが望ましい。
【0009】
(発明の概要)
一態様では、少なくとも2つの基材を合わせて気密封止するための冷間圧接法および構造が提供される。これは、封止プロセスへの入熱なしでハーメチックシールを有利に提供することができ、このことは、このような追加の熱が、結合領域に近接する装置、製剤または材料に有害となる多くの応用において望ましい。
【0010】
好ましい一実施形態では、この方法が、第1の金属を含む第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供すること、第2の金属を含む第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供すること、および前記接合面を、1つまたは複数の界面で、前記接合面の前記第1の金属と前記第2の金属の間に金属−金属結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮することを含む。一実施形態では、この方法がさらに、前記圧縮ステップの前に、前記少なくとも1つの第2のジョイント構造の上に前記少なくとも1つの第1のジョイント構造の1つまたは複数のオーバラップ部分を与えるように、前記少なくとも1つの第2のジョイント構造の上に前記少なくとも1つの第1のジョイント構造を整列させることを含み、前記1つまたは複数のオーバラップ部分が、前記圧縮ステップ中に、前記接合面の前記1つまたは複数の界面を形成する。好ましい実施形態では、前記1つまたは複数のオーバラップ部分が、表面汚染物を置換し、前記接合面間の密接を入熱なしに促進するのに有効である。特定の一実施形態では、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造が少なくとも1つのタング構造を含み、前記少なくとも1つの第2のジョイント構造が少なくとも1つのグルーブ構造を含み、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮する前記ステップが、前記少なくとも1つのタング構造を前記少なくとも1つのグルーブ構造の中に少なくとも部分的に圧入することを含む。一実施形態では、前記少なくとも1つのタング構造が、1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のタング高さおよび1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のタング幅を有し、前記少なくとも1つのグルーブ構造が、1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のグルーブ深さおよび1ミクロンから100ミクロンまで範囲のグルーブ幅を有する。
【0011】
構造材料のさまざまな組合せを使用することができる。例えば、前記第1の金属または前記第2の金属あるいはその両方が金または白金を含む。他の実施形態では、前記第1の金属または前記第2の金属あるいはその両方が、金、インジウム、アルミニウム、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、カドミウム、チタン、タングステン、スズおよびこれらの組合せからなるグループから選択された金属を含む。前記第1の金属と前記第2の金属は異なる金属とすることができる。前記第1の基材または前記第2の基材あるいはその両方は、ケイ素、ガラス、セラミック、ポリマー、金属およびこれらの組合せからなるグループから選択された材料を含むことができる。前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造あるいはその両方は、金属、セラミック、ガラス、ケイ素およびこれらの組合せからなるグループから選択された材料を含むことができる。一実施形態では、前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造あるいはその両方が、インジウム、アルミニウム、金、クロム、白金、銅、ニッケル、スズ、これらの合金、およびこれらの組合せを含む。
【0012】
一実施形態では、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造が、前もって形成された少なくとも1つの構造体を前記第1の基材に結合することによって形成される。前記第1の接合面は例えば、電気めっきプロセス、蒸着、化学蒸着プロセス、スパッタリング、電子ビーム蒸着またはウェットエッチングプロセスによって形成される。一実施形態では、前記第1のジョイント構造および第1の接合面が、前記第1の基材の表面の少なくとも一部分を被覆する金属の層である。
【0013】
一実施形態では、この方法がさらに、前記第1の基材と前記第2の基材の間に1つまたは複数のプリフォームを提供することを含み、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮する前記ステップがさらに、前記基材または前記接合面のプリフォーム界面で、前記1つまたは複数のプリフォームを変形させ、剪断することを含む。一実施形態では、前記プリフォームが、金属、ポリマーまたは金属被覆されたポリマーを含む。
【0014】
一実施形態では、この方法がさらに、前記1つまたは複数の界面で前記接合面を加熱することを含む。前記圧縮ステップと前記加熱ステップとは実質的に同時に実施することができる。一実施形態では、前記接合面の前記加熱がマイクロヒータを用いて実施される。
【0015】
他の実施形態では、この封止方法がさらに、前記接合面の、前記1つまたは複数の界面に、超音波エネルギーを加えることを含む。
【0016】
他の実施形態では、この封止方法がさらに、前記第1の基材と前記第2の基材とを合わせて締め付け、またははんだ付けすることを含む。
【0017】
この方法の好ましい一実施形態では、前記結合された基材が、その中に画成された少なくとも1つのキャビティを含む。一実施形態では、前記少なくとも第1の基材が、リザーバ内容物を含む別個の複数のリザーバを含み、前記リザーバがそれぞれ、互いからおよび外部環境から気密封止される。一例では、前記リザーバ内容物がバイオセンサまたは他の2次装置を含む。他の例では、前記リザーバ内容物が薬物製剤を含む。他の例では、前記リザーバ内容物が、芳香または香気化合物、染料または他の着色剤、甘味料、あるいは矯味矯臭剤を含む。一実施形態では、前記第1の基材がキャビティを含み、前記第1のジョイント構造と前記第2のジョイント構造とが合わせて圧縮される前に前記キャビティの中に第3の基材が位置する。前記第3の基材は例えば、センサ、MEMS装置またはこれらの組合せを含む。
【0018】
一実施形態では、この方法の前記変形ステップが真空で実施され、または、大気中で実施された場合に起こるであろう前記ジョイント構造の酸化に比べて前記ジョイント構造の酸化を低減させるのに有効な不活性ガス雰囲気で実施される。
【0019】
一実施形態では、少なくとも2つの基材を合わせて気密封止する方法が提供され、この方法は、金属の薄層で金属被覆された第1のコンプライアントポリマーを含む第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供するステップと、金属の薄層で金属被覆された第2のコンプライアントポリマーを含む第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供するステップと、前記接合面を、1つまたは複数の界面で、前記第1の接合面と前記第2の接合面の間に結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させるために、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮するステップとを含む。一実施形態では、金属被覆された前記第1のポリマーの前記金属層または金属被覆された前記第2のポリマーの前記金属層、あるいはその両方が、金、白金またはこれらの組合せを含む。
【0020】
他の態様では、前面と背面とを有する第1の基材であって、第1の金属である第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を含む第1の基材と、第2の金属である第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材の間に形成された、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合するハーメチックシールであって、前記第1の接合面と前記第2の接合面とを1つまたは複数の界面で冷間圧接することによって作製されたハーメチックシールと、前記第1の基材と前記第2の基材の間の前記ハーメチックシールの内側に、外部環境から気密封止されるように画成された少なくとも1つの封じ込め空間とを含む封じ込め装置が提供される。一実施形態では、前記少なくとも1つの封じ込め空間が、前記少なくとも第1の基材の中に、前記前面と前記背面の間に配置された別個の複数のリザーバを含む。さまざまな実施形態では、前記少なくとも1つの封じ込め空間が、前記封じ込め空間の中に含まれるセンサ、MEMS装置、薬物製剤またはこれらの組合せを含む。好ましい一実施形態では、前記接合面が、入熱なしで形成された金属−金属結合によって互いに接合されている。一実施形態では、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とがタングアンドグルーブジョイントを含む。
【0021】
さまざまな実施形態では、前記第1の金属または前記第2の金属あるいはその両方の金属が、金、白金またはこれらの組合せを含み、前記基材が、ケイ素、金属、セラミック、ポリマー、ガラスおよびこれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む。一実施形態では、前記第1のジョイント構造と前記第2のジョイント構造の間でプリフォーム構造が変形している。他の実施形態では、前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造がマイクロヒータを含む。任意選択で、前記マイクロヒータに隣接した中間層を提供することができる。一実施形態では、前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造が、外部誘導ヒータを介して前記構造を加熱するのに有効な磁性材料を含む。
【0022】
この装置はさらに、他の固定手段を含むことができ、例えば、前記基材を互いに接合するためのクランプを含むことができ、または前記第1の基材と前記第2の基材とを合わせて固定するためにはんだ材料を使用することができる。
【0023】
一実施形態では、前記第1の基材が、前記少なくとも1つの封じ込め空間と連通した別個の複数の開口をさらに含み、前記開口が、別個の複数のリザーバキャップによって閉じられている。一実施形態では、前記リザーバキャップが金属フィルムを含み、前記装置が、前記リザーバキャップを選択的に崩壊させる手段(例えば制御回路および電源)を含む。
【0024】
一態様では、気密封止されたリザーバ内に位置する内容物の制御された露出または放出のための埋込み可能な医療装置が提供される。一実施形態では、この装置が、第1の基材と、前記第1の基材内に配置され、第1の開口と、前記第1の開口の遠位側にある第2の開口とを有する、別個の複数のリザーバと、前記リザーバ内に位置し、薬物またはバイオセンサを含むリザーバ内容物と、前記第1の開口を閉じる別個の複数のリザーバキャップと、前記リザーバキャップを選択的に崩壊させる手段と、第2の基材と、前記第2の開口を密閉する、冷間圧接によって作製されたハーメチックジョイントとを含む。一実施形態では、前記ハーメチックジョイントがタンクおよびタングアンドグルーブ界面を含む。
【0025】
他の態様では、電気バイア接続を形成する方法が提供され、この方法は、それを貫通する開口を有する第1の非導電性基材であって、前記開口を画成する前記第1の基材の内面が第1の導電材料の層を含む第1の非導電性基材を提供すること、第2の導電材料から形成され、または第2の導電材料で覆われた突出部材がその表面から延出した第2の非導電性基材を提供すること、ならびに前記第1および/または第2の導電層を、前記第1の導電層と前記第2の導電層の間に結合および電気的接続を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、前記第2の基材の前記突出部材を前記第1の基材の前記開口に圧入することを含む。
【0026】
(発明の詳細な説明)
冷間圧接(compression cold welding)プロセスによってハーメチックシールを形成する方法および装置を開発した。有利には、このプロセスおよびシール設計は、繊細な装置構成要素および内容物を熱および溶媒から保護しながら、装置部品を確実かつ効率的に互いに結合することを可能にする。この封止プロセスは、分子間拡散および結合を促進するために、圧縮ステップ中に局所的に変形し、剪断される1つまたは複数のジョイントシール表面を備えた2つの基材を共に冷間圧接することを含む。有利には、金属封止面の剪断および変形は、この面に存在する金属酸化物あるいは有機または無機汚染物を実質的に浄化し、それによって、接合面間の金属−金属結合を促進し、したがって気密性(hermeticity)を促進する原子的に清浄な金属面を提供する。すなわち、冷間圧接は、汚染物のない接合面、したがって結合障害のない接合面を形成する。好ましい冷間圧接プロセスでは、金属の降伏応力よりも大きい圧力によって、接合構造および接合面が変形する。この金属変形は2つの目的を果たす。この金属変形は接合面間の密接を形成し、金属−金属結合が可能になるように、表面酸化物および他の汚染物を置換する。冷間圧接によって金属−金属結合が形成される実施形態では、追加のクランプが不要な場合がある。
【0027】
一態様では、少なくとも2つの基材を合わせて気密封止するための方法であって、第1の金属を含む第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供するステップと、第2の金属を含む第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供するステップと、これらの接合面を、1つまたは複数の界面で、接合面の第1の金属と第2の金属の間に金属−金属結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮するステップとを含む方法が提供される。第1の金属と第2の金属は同じでもまたは異なっていてもよい。これらは、同じ母材金属の異なる合金とすることができる。同じ金属である場合、第1の金属と第2の金属は、異なる構造形態、例えば結晶構造、結晶粒構造などを有することができる。適当な金属面材料の非限定的な例には、インジウム、アルミニウム、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、カドミウム、チタン、タングステン、スズおよびこれらの組合せが含まれる。金または白金が好ましいことがある。第1の基材または第2の基材あるいはその両方は、ケイ素、ガラス、セラミック、ポリマー、金属、およびこれらの組合せなど、さまざまな材料から形成することができる。基材材料の非限定的な例には、石英、ホウケイ酸ガラス、任意の形態の酸化アルミニウム、窒化ケイ素およびこれらの組合せが含まれる。基材と少なくとも1つのジョイント構造は、同じ材料または異なる材料からなることができる。ジョイント構造は、当技術分野で知られているさまざまなプロセスによって基材内/上に形成することができる。プロセスの例は、基材の深い(deep)反応性イオンエッチング、ドリリング(drilling)(例えばレーザ)、ミリング(milling)、マイクロ機械加工(micro−machining)、MEMsプロセスまたはLIGA処理を含む。第1のジョイント構造または第2のジョイント構造あるいはその両方は、金属、セラミック、ガラス、ケイ素およびこれらの組合せの中から選択された材料を含むことができる。可能なジョイント構造材料の例は、インジウム、アルミニウム、金、クロム、白金、銅、ニッケル、スズ、これらの合金、およびこれらの組合せなどの前述の金属面金属、ならびに任意の形態のアルミナ、石英、溶融シリカ、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素およびダイヤモンドなどである。ジョイント構造は基材と一体とし、または基材に結合することができる。一実施形態では、ジョイント構造が、前もって形成された少なくとも1つの構造体をその基材に結合することによって形成される。この前もって形成された構造体は、例えば、電気めっき、化学蒸着、スパッタリング、MEMS処理、マイクロ機械加工、LIGA処理または陽極結合によって形成することができる。このプリフォーム構造体は、例えば、熱圧縮、はんだ付けまたは超音波圧接によって基材に取り付けることができる。ジョイント構造とその接合面は同じ材料または異なる材料からなることができる。
【0028】
一実施形態では、この方法がさらに、第1の基材と第2の基材の間に1つまたは複数の個別のプリフォームを提供することを含み、少なくとも1つの第1のジョイント構造と少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮するステップがさらに、基材または接合面とのプリフォーム界面で、前記1つまたは複数のプリフォームを変形させ、剪断することを含む。このプリフォームは、例えば、LIGA処理、MEMS処理、ウェットエッチング、レーザマイクロ機械加工、スタンピング、カッティングまたはマイクロキャスティング(micro−casting)によって形成することができる。プリフォームは、金属、ポリマーまたは金属被覆されたポリマーを含むことができる。
【0029】
これらの方法およびシール設計の好ましい応用では、マイクロファブリケーションによって製作された装置構成要素、特に埋込み可能な医療装置を封止する際に、ハーメチックシールが使用される。好ましい一実施形態では、本発明の封止方法およびジョイント構造が、制御された放出のための薬物および/またはバイオセンサなどのリザーバ内容物が充填された封じ込め(containment)リザーバのアレイを個別に封止し、かつ/または装置を動作させるための関連電子構成要素をパッケージングするための装置で使用される。
【0030】
一態様では、これらのハーメチックシールのうちの1つまたは複数のシールを含む装置が提供される。一実施形態では、この装置が、センサまたは薬物製剤をそれぞれが含む複数のリザーバを有する第1の基材(2つ以上のウェーハまたは基材部分を含むことができる)を含み、それぞれのリザーバが、装置の第1の表面に第1の開口を含む。この第1の開口は、リザーバ内容物の放出または露出の時間および/または速度を制御するために選択的かつ能動的に崩壊させることができるリザーバキャップによって閉じられている。一実施形態では、リザーバがさらに、第1の開口の遠位側にある第2の開口を含む。この開口は、リザーバへのリザーバ内容物の充填後または充填と同時に気密封止される。一般に、この封止は、本明細書に記載の1つまたは複数の気密封止法およびジョイント設計を使用して、第1の基材を第2の基材に結合することを含む。任意選択で、この装置はさらに、リザーバキャップの崩壊および任意のリザーバベースセンサのための電力を供給し、これらを制御することに関連した電子構成要素を保護するために第1または第2の基材の表面に気密結合させた、パッケージング構造を含む。このパッケージング構造およびハーメチックシールは、電子構成要素およびリザーバ内容物を環境から保護する。本明細書で使用されるとき、用語「環境」は、装置の保管時、あるいは装置のin vitro使用時またはin vivo使用時に存在する埋込み部位の体液および組織、空気、流体および微粒子を含むリザーバの外部環境を指す。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「冷間圧接」は、一般に40℃未満の周囲条件で、熱を加えることなく形成された分子間結合を意味する。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「ハーメチックシール」は、装置の耐用寿命の間、装置の1つまたは複数のコンパートメント、特に装置のリザーバへ、またはリザーバからの化学物質の望ましくない出入りを防ぐことを指す。本明細書の目的上、1×10−9atm*cc/秒未満の速度でヘリウム(He)を透過させるシールをハーメチックシールと呼ぶ。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」および「含む(including)」は、そうでないと明示されない限り、開放された(open)非限定的な用語であることが意図される。
【0034】
(装置構成要素および材料)
ハーメチックシールは、第1の接合面を有する少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材と、第2の接合面を有する少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材とを含み、これらの基材が、1つまたは複数の界面で冷間圧接によって結合されている。好ましい実施形態では、これらのシールが生物適合性であり、医療用インプラント向けに適している。一実施形態では、これらの2つの基材が、任意選択で、リザーバ、センサ、薬物および電子回路のうちの1つまたは複数を含む。基材は、ケイ素、ガラス、パイレックスガラス、ステンレス鋼、チタン、アルミナ、窒化ケイ素および他の生物適合性セラミック、ならびに他の金属またはポリマーを含むことができる。一実施形態では、ケイ素基材が、近赤外(NIR)から赤外(IR)スペクトルの範囲の光学プローブの使用を許す。基材材料を適当に選択することによって、可視、UVまたは他の波長の光を使用した分光法が可能となることが理解される。さらに、基材は、冷間圧接中に高い剪断を引き起こす十分に高いヤング率および降伏応力を有するポリマーを含むことができる。
【0035】
それぞれの基材上のジョイント構造(「封止フィーチャ(feature)」とも呼ばれる)は、基材と同じまたは基材とは異なる材料を含むことができる。例えば、ジョイント構造が基材内にマイクロ機械加工される場合、ジョイント構造は基材材料からなる。ジョイント構造はあるいは、金属、金属合金、または金属の組合せなど、基材とは異なる材料からなる基材に結合されたプリフォームである。他の実施形態では、LIGAによって形成されたニッケルジョイント構造に金層を電気めっきし、次いで、この構造を、はんだ付け、鑞付または熱圧縮結合を使用して、金属被覆された基材に結合することができる。LIGA構造は、LIGAプロセスと両立する任意の金属または金属合金からなることができる。他の実施形態では、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)製作を使用して、ガラスまたはケイ素から、ジョイント構造プリフォームを形成することができる。
【0036】
ジョイント構造は、金属であることが好ましく、任意選択で他の接合面に結合することができる接合面(「剪断層」または「結合面」とも呼ばれる)を有する。後に詳述する代替実施形態では、接合面がコンプライアントポリマーである。適当に低い塑性変形応力を有する金属が接合面として使用される。当業者は、適当な塑性変形応力を、例えば特定のジョイント幾何形状およびジョイントを形成するために合理的に加えることができる力の量に基づいて決定することができる。さらに、表面酸化物を持たない金属、または母材金属の硬度に比べて酸化物の硬度が相対的に高い金属は、接合面として使用するのに好ましい。Tylecote、「Investigations on Pressure Welding」、British Welding J.(1954年3月)およびMohamed他、「Mechanism of Solid State Pressure Welding」、Welding Research Supplement、302〜10ページ(1975年9月)を参照されたい。適当な金属(およびそれらの合金)の代表例は、金(Au)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)およびカドミウム(Cd)を含む。生物適合性に関して好ましい接合面金属の代表例は金および白金を含む。
【0037】
第1の接合面は、第1の接合面とともにハーメチックシールを形成する第2の接合面と同じ材料からなることができ、またはそうでなくてもよい。例えば、接合面は異なる属からなり、または同じ母材金属の異なる合金からなることができる。例えば、第1の接合面を金、第2の接合面を白金とすることができる。一実施形態では、接合面が、異なる構造形態を有する同じ材料からなる。例えば、回復、再結晶化および結晶粒成長の通常の焼きなまし機構によって降伏応力を低減させるために、第1の接合面を焼きなますことができ、一方で、結晶粒度が小さく、したがって降伏応力を増大させるような方法で、第2の接合面を堆積させることができる。
【0038】
接合面は、ジョイント構造と同じ材料またはジョイント構造とは異なる材料を含むことができる。これは、ジョイントの製作方法におけるより大きな自由度、ならびに塑性変形の程度および位置に関するより広い設計管理を可能にする。例えば、ケイ素基材上に正確なジョイント構造をマイクロ機械加工することができ、それらの構造上に、確立されたMEMsプロセスステップを使用してジョイント面材料を堆積させることができる。しかし、アルミナ基材内に正確なジョイント構造を形成することは困難なことがあり、代替材料および代替製作方法が必要となることがある。一例として、アルミナ基材では、ジョイント構造を、接合面とは異なる機械特性(例えばより高い弾性およびより高い降伏応力)を有する堆積金属または合金とすることができる。一実施形態では、ジョイント構造が、電気めっきされたニッケル、電気めっきされた金合金、電気めっきされたクロム構造または電気めっきされた白金構造である。したがって、ジョイント構造は追加の処理を必要とせず、ジョイント構造と同じ材料を含む接合面を有することができ、あるいは、ジョイント構造は、ジョイント構造の材料とは異なる材料を含む接合面を形成するためにジョイント構造の表面に堆積させ、電気めっきし、または形成した少なくとも1つの他の材料を有することができることを理解されたい。ジョイント構造は、単一の材料または材料の組合せからなることができる。
【0039】
(ハーメチックシールの形成方法)
ハーメチックシールは冷間圧接によって作られる。一実施形態では、金属である第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供し、金属である第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供し、これらの金属面を、1つまたは複数の界面で、この1つまたは複数の界面のこれらの接合面間に連続する金属−金属結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、少なくとも1つの第1のジョイント構造と少なくとも1つの第2のジョイント構造とを共に圧縮することによって、2つの基材を合わせて気密封止する。
【0040】
いくつかの実施形態では、結合プロセス中にハーメチックシールジョイントに超音波エネルギーが導入される。特定の作用機構に結び付けようというわけではないが、超音波エネルギーは、金属−金属相互拡散を引き起こすことにより、接合面から汚染物を浄化し、表面の凹凸を変形させて、結合界面を密接させることによって、ハーメチックシールを改良することができると考えられる。
【0041】
結合機構が純粋な冷間圧接ではない他の実施形態では、熱パルスまたは小さな温度上昇が、拡散を増大させ、金属の降伏応力を低下させることによって、金属結合を助けることができる。例えば、接合面の金属を局所的に加熱するために誘導加熱を使用することができる。装置内に他の金属が存在し、それらが非磁性である場合には、接合面の下に磁性材料を組み込むことによって接合金属を選択的に加熱することができる。磁性材料の代表例は、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらの組合せを含む。あるいは、所与の周波数の磁場を選択的に結合するように、ジョイント構造の幾何形状を設計することもできる(Cao他、「Selective and localized bonding using induction heating」、Solid−State Sensor、Actuator and Microsystems Workshop、Hilton Head Island、SC、2002年6月2〜6日を参照されたい。)。
【0042】
一般に、気密性結合を形成するときには、接合面の酸化および汚染速度を最小化するフォーミングガス、窒素、真空または他のいくつかの条件で、周囲環境を置き換えることができる。
【0043】
(気密封止装置およびシステムの例示的な実施形態)
所与の負荷が加えれらる接合面に大きな局所圧力および変形を効率的に発生させるように、ジョイント構造を設計した。図1〜6に、ジョイント構造を合わせて冷間圧接するために基材上の圧縮力を接合面上の剪断力に効率的に変換するジョイント構造を有するハーメチックシールシステムのいくつかの実施形態の断面図を示す。剪断力は、ジョイント構造が合わせられたときに、圧縮力によって変形する金属接合面のオーバラップ部分が存在するような、ジョイント構造間の締め代またはオーバラップ部分によって発生する。2つのオーバラップ構造の相対的な剪断は、凹凸を排除し、これらの面が相互作用し、結合することを可能にする。いくつかの実施形態では、それぞれのジョイント構造の締め代部分だけが実質的に変形する。他の実施形態では、それぞれのジョイント構造の半分を形成するために異なる材料および異なる関連特性が使用されることにより、ハーメチックシールを形成する一対のジョイント構造のうちの一方のジョイント構造だけが実質的に変形する。
【0044】
図1〜6に示すジョイント構造は、例えば従来のMEMsプロセスを使用して製作することができるが、それらの構造は、マクロスケールでも同様に機能するはずである。図1〜6は、それぞれの気密封止システム上の1セットのジョイント構造だけしか示していないが、他の実施形態は複数のジョイント構造セットを含むことができる。さらに、図1〜6のジョイント構造は長方形の断面を有するように表されているが、例えば幾何形状を画成するマイクロ機械加工上の限界に応じて、三角形、菱形、または半球形のジョイント構造など、他の断面を使用することもできる。例えば、半球形のジョイント構造は、めっきモールドがない状態で、フォトリソグラフィによって画成されたシード層上にジョイント構造材料を電気めっきすることによって形成することができる。他の実施形態では、長方形のケイ素構造から丸いまたは円形のジョイント構造を形成するために、反応性イオンエッチング(RIE)を使用することができる。他の実施形態では、ジョイント構造を電気めっきするためのモールドとして後に使用することができる菱形形状を形成するために、現像中にフォトレジストを過剰露光し、したがってフォトレジストをアンダーカットすることができる。より複雑なフィーチャ幾何形状を形成するために、複数のフォトレジスト層を使用することができる。
【0045】
図1は、冷間圧接によって封止することができる「タングアンドグルーブ(tongue and groove)」ジョイント構造設計を有するハーメチックシールシステム10の一実施形態の断面図を示す。ハーメチックシールシステム10は、第1のジョイント構造16を有する第1の基材12を有する。第1のジョイント構造はそれぞれ第1の接合面18を有する。第2の基材14は、2つのジョイント構造要素20aおよび20bを含む第2のジョイント構造を有する。第2のジョイント構造20a/20bはそれぞれ第2の接合面22を有する。第1のジョイント構造16は、第2のジョイント構造20a/20bによって形成された「グルーブ(groove)」の中に少なくとも部分的にはまる「タング(tongue)」を形成する。封止面18の両側間で測定したタングの幅は、第2のジョイント構造の接合層22のグルーブの中の空間よりも大きい。したがって、第1のジョイント構造の接合層18および/または第2のジョイント構造の接合面22は、冷間圧接中にこれらの接合構造を合わせて圧縮すると変形して、接合面18および22に、それぞれのジョイント構造の上部の角、および側壁に沿った剪断を生じる。
【0046】
第1の接合面18と第2の接合面22は同じ材料または異なる材料からなることができる。図1は、接合面18および22を形成する1つの材料層と、それぞれの接合構造16および20a/20bを形成する異なる1つの材料とを示している。別の実施形態では、機械特性または冷間圧接結合特性を微調整するために、接合面および/または接合構造が、複数の材料層を含む。
【0047】
図2は、冷間圧接を使用してハーメチックシールを形成する前後のハーメチックシールシステム30の他の実施形態の断面図を示す。ハーメチックシールシステム30は、第1の基材32および第2の基材34を有する。第1の基材32は、金属接合面38a/38bを有する第1のジョイント構造40を有する。第1のジョイント構造40は、第1の基材32の中に形成されたグルーブ構造の形態をとる。第2の基材34は、第2の基材とは異なる材料を含む第2のジョイント構造36を有する。第2のジョイント構造36は、第2のジョイント構造と同じ材料を含む金属接合面42a/42bを有する。この第2のジョイント構造36は、第1のジョイント構造40のグルーブ構造の中に部分的にはまることができるタング構造の形態をとる。
【0048】
これらの2つの基材を1つに冷間圧接するために、第1の基材32に圧縮結合力が加えられる。圧縮力が加えられると、第2のジョイント構造36のタングが変形して、第1のジョイント構造40のグルーブの中に入る。この変形は、第1のジョイント構造40と第2のジョイント構造36の間の締め代領域に加えられた力が、36の降伏応力を超える圧力に達したときに起こる。この締め代ないしオーバラップ部分はさらに、接合面38a/38bと42a/42bが接する界面に剪断力を発生させる。この変形と剪断力の組合せが、接合面38aと42a、および接合面38bと42bの間に金属−金属結合を形成する。したがって、冷間圧接法を使用することによって有効なハーメチックシールが形成される。例えば図3を参照されたい。
【0049】
図2のジョイント構造間のオーバラップ部分は例示のために示されたものであり、オーバラップ部分は、図示されたものよりも小さくする、または大きくすることができることを理解されたい。オーバラップ部分が大きいほど、接合層を変形させ、したがって気密性の結合を形成するのにより大きな圧縮力が必要となる。
【0050】
さらに、接合面の局所変形は、ジョイント構造とジョイント面の両方の機械特性の関数であることを理解されたい。例えば、一実施形態では、純金タングを含むジョイント構造全体が、圧縮によって変形して、ケイ素グルーブジョイント構造の中へ入る。他の実施形態では、タングジョイント構造がケイ素で、接合面が金の場合、変形は、タングジョイント面の側面と角に局限される。
【0051】
図4は、それぞれのジョイント構造に1つの冷間圧接剪断層を有する、ハーメチックシールシステム50の一実施形態の断面図を示す。ハーメチックシールシステム50は、第1の基材52および第2の基材54を有する。この実施形態では、第1のジョイント面58が第2のジョイント面62と、片側でオーバラップする。ジョイント面58と62のオーバラップ部分が両側ではなく片側だけにあることによって、ハーメチックシールを形成するために必要なオーバラップ部分を低減させることができる。より小さな力で降伏応力に達成するため、オーバラップ部分の低減は、冷間圧接によってハーメチックシールを形成するために必要な圧縮力の低減につながる。代替実施形態では、ハーメチックシールを形成するのに必要な剪断力をさらに低減させるために、ジョイント構造が、断面が三角形または台形のジョイント構造の形態をとる。このジョイント設計の1つの欠点は、1つの封止周界(sealing perimeter)だけしか形成できないことであり、それに対して、対称設計(例えば図2)では、2つの封止周界を形成する機会がある。本明細書に記載されたタングとグルーブの組合せなどの単一のジョイント構造は一般に、2つの周界を有すると考えられる。封止周界は、全部ではないとしても1つまたは複数の封止周界が不完全となるまたは途切れる可能性があるが、複数の封止周界は全体としてシールが気密性であり続ける「フェイルセーフ」なハーメチックシールを提供する、望ましい冗長性を装置に有利に提供する。
【0052】
冷間圧接を使用したハーメチックシールシステム70の他の実施形態が図5に示されている。圧縮力が加えられる前の第1の基材72および第2の基材74が示されている。第1の基材72は、金属接合面78を有する第1のジョイント構造76a/76bを有する。第1のジョイント構造76a/76bは、金属接合面82を有する第2のジョイント構造80a/80bと整列している。ジョイント構造76a/76bと80a/80bはともにグルーブを形成しており、その中に金属プリフォーム84が捕らえられている。冷間圧接中に第1の基材72と第2の基材74が互いに圧縮されると、プリフォーム84は変形し、接合面78および82に対して剪断されて、プリフォームと接合面の間に金属−金属結合を形成する。
【0053】
プリフォーム84は、LIGAプロセス、ウェットエッチングまたはレーザマイクロ機械加工を使用して形成することができる。プリフォーム84の処理は、プロセスとプリフォームとして使用される材料との間の適合性に依存することを理解されたい。プリフォームの断面幾何形状は、使用される製造方法によって限定され得ることも理解されたい。例えば、LIGA技法では図5に示すような円形の断面図を形成することができないが、マイクロキャスティングプロセスではこのような断面が可能である。
【0054】
図6は、2つのジョイント構造間に冷間圧接することができる金属プリフォームを有する、ハーメチックシールシステム90の他の実施形態の断面図を示す。ハーメチックシールシステム90は第1の基材92および第2の基材94を有する。第1の基材92は、第1の基材内に形成されたグルーブ構造を含む第1のジョイント構造96を有する。第1のジョイント構造96は第1の金属接合面98を有する。第2の基材94は、基材内に形成されたグルーブ構造および第2の金属接合面102を含む第2のジョイント構造100を有する。第1のジョイント構造96と第2のジョイント構造100の間に、金属プリフォーム104が捕らえられている。プリフォーム104は、図5のプリフォーム84に関して先に説明した方法と同様の方法を使用して形成することができる。第1の基材92と第2の基材94が互いに圧縮されると、プリフォーム104は変形し、接合面98および102に対して剪断されて、プリフォームと接合面の間に、ハーメチックシールを完成させる金属−金属結合を形成する。
【0055】
冷間圧接プロセスでは、プリフォーム、凸形フィーチャ(例えば「タング」または「歯(tooth)」)およびグルーブのさまざまな組合せを使用することができる。一実施形態では、1つの基材上のタングジョイント構造と、このタングジョイント構造の幅よりも広いグルーブ幅を有する別の基材上のグルーブジョイント構造とが、それら間のプリフォームを圧縮することによって互いに冷間圧接される。
【0056】
プリフォームの断面幾何形状は、円形、環形、長方形または他の適当な断面形とすることができる。
【0057】
上記の全ての実施形態において、結合された基材間の距離を最小化することは望ましいかもしれない。この調整は、変形して基材間の空間に入る金属の量が最小化されるようにオーバラップ部分を最小化することによって達成することができる。さらに、変形した金属が占有する容積を基材の表面よりも下に提供するために、タングジョイント構造に隣接してグルーブを形成してもよい。あるいは、グルーブ構造が、2つの異なる幅、すなわち相対的に幅の広い開口と相対的に幅の狭い遠位端とを有し、相対的に幅の狭いグルーブによって剪断された金属が、相対的に幅の広いグルーブの開口の中へ流入するようにしてもよい。
【0058】
図7は、冷間圧接を使用してハーメチックシールを形成する目的に使用することができるジョイント構造の基部の幾何形状のさまざまな実施形態の上面図を示す。ジョイント構造の基部の適当な幾何形状には、円形110、楕円形112、まっすぐな側壁によって接続された半球114、面取りされた角を有する正方形116、および六角形118がある。ジョイント構造の幾何形状の他の実施形態には、あらゆる多角形または閉じた輪郭を形成する任意の経路が含まれる。ジョイント構造周界に沿った鋭い角にハーメチックシールを形成することは難しいことがあるので、このような鋭い角は避けることが好ましい。
【0059】
図8は、MEMsプロセスを使用して製造することができるジョイント構造設計のさまざまな実施形態の上面図および断面図を示す。これらの実施形態は、それぞれの基材上にジョイント構造を1セットだけしか有しないが、別の実施形態は、複数のジョイント構造セットの役目を果たす、境界を定める歯またはグルーブのアレイを含む。図8では「タング」および「グルーブ」の幾何形状が、長方形断面であるように表されているが、断面幾何形状を画成するマイクロ機械加工上の限界に応じて、三角形、半球形などの他の断面幾何形状を使用することもできる。他の実施形態では、基材が、それぞれのリザーバが他のリザーバおよび外部環境から気密封止されていることが求められた、薬物内容物またはセンサのためのリザーバのアレイを含んでもよい。
【0060】
ジョイント構造設計120および128のジョイント構造124a/124bおよび132は、それぞれ1ステップおよび2ステップの深い反応性イオンエッチング(DRIE)ならびにその後の金属接合面堆積ステップを使用して、それぞれケイ素基材122および130の中に形成することができる。ジョイント構造132および124a/124bはそれぞれ、タングおよびグルーブのMEMs相当物である。基材130への基材122の冷間圧接中に、ジョイント構造要素124aと124bの間のグルーブの角が、ジョイント構造132(歯)の端部およびグルーブ要素124aおよび124bの角に、局所的な高い応力を発生する。この高い応力は、金属界面に塑性変形および剪断を引き起こし、その結果、接合面126と134の間の密接および結合を形成する。
【0061】
ジョイント構造設計の他の実施形態は、ジョイント構造を形成するためのミリングステップとプランジ放電加工(EDM)ステップとの組合せと、必要ならばジョイント構造を金属被覆するためのめっきステップとを使用することによって、金属基材上に形成することができる。
【0062】
ジョイント構造設計136は、インジウム、アルミニウム、金、または銅などの低塑性変形応力金属でできたタングジョイント構造140を組み込む。ジョイント構造設計136は透明な基材138を有する。パイレックス基材、またはサファイア、他のガラスケミストリなどの同様に透明な基材は、気密封止された装置の内容物を光学的に精査することを可能にし、冷間圧接プロセス中のアライメント手順の改善を可能にする。基材138とは異なる材料からジョイント構造140を形成することは、基材自体の内部にフィーチャを形成する必要性を排除する。さらに、ジョイント構造設計136は、低い塑性変形応力を有する金属を使用することによって、ジョイント構造設計128よりも変形可能なジョイント構造140を形成する。したがって、ジョイント構造140は、そのより大きな変形能力によって、冷間圧接法によって形成されるハーメチックシールを改良することができる。
【0063】
ジョイント構造設計142は、ジョイント構造設計128、136、148および156のそれぞれのジョイント構造132、140、152および160a/160bと同様のジョイント構造に冷間圧接される軟かい変形可能な金属接合面146を示す。ジョイント構造設計142は、冷間圧接中に、基材から突出したジョイント構造による大きな局所応力が、金属被覆された接合面146の中にグルーブを生じさせることを可能にする。接合面146として使用するのに適した金属の非限定的な一例は金である。ジョイント構造設計142の利点は、アライメントの問題が大幅に緩和されることである。しかし、平坦な接合面146は圧縮力を剪断変形に効率的に変換しないため、ジョイント構造設計142は、冷間圧接することが相当に難しいことがある。
【0064】
ジョイント構造設計148は、いずれも基材150の材料ではない2種類以上の材料からなる混成ジョイント構造であるジョイント構造152を有する。ジョイント構造152は基材150の材料から形成されないため、ジョイント構造152の変形特性の変更は、基材150をマイクロ機械加工することなく達成することができる。さらに、ジョイント構造152は、ジョイント構造の剛性を高めるため、ニッケル、ニッケル合金または他の高ヤング率および高降伏応力材料からなることができる。ジョイント構造152には続いて、例えばインジウムまたは金とすることができる接合面154をめっきするために、シード層がスパッタコーティングされる。
【0065】
あるいは、ジョイント構造152は、接合面154と同じ材料の異なる合金からなることができる。一実施形態では、電気めっきプロセス中にめっき浴組成物を変更することによって、基材150上にジョイント構造152を堆積させるために使用した電気めっき堆積プロセスを使用して、異なる合金を接合面154として堆積させることができる。例えば、最初に硬い金合金をジョイント構造152としてめっきし、次いでより軟かい純金を接合面154としてめっきする。
【0066】
ジョイント構造設計156は、基材158内に凹形フィーチャをマイクロ機械加工するには不都合な状況において、グルーブジョイント構造を形成することを可能にする。突出した2つの同心ジョイント構造要素160a/160bによってグルーブが画成され、このグルーブは、ジョイント構造設計148およびジョイント構造152に関して先に説明したプロセスと同様のプロセスを使用して製作することができる。
【0067】
図9は、図8に示したジョイント構造設計のさまざまな組合せを含む、ハーメチックシールシステムのさまざまな実施形態の断面図を示す。ハーメチックシールシステム170は、ジョイント構造設計120とジョイント構造設計128の組合せを含む。ハーメチックシールシステム172は、ジョイント構造設計120とジョイント構造設計136の組合せを含む。ハーメチックシールシステム174は、ジョイント構造設計142とジョイント構造設計128の組合せを含む。ハーメチックシールシステム176は、ジョイント構造設計142とジョイント構造設計136の組合せを含む。
【0068】
(寸法)
図10は、タングアンドグルーブジョイント構造設計を有するハーメチックシールシステム180の一実施形態の断面図および拡大断面図を示す。ジョイント構造182a/182bおよび184は、深い反応性イオンエッチング(DRIE)によってケイ素基材内に形成される。ジョイント構造182a/182b、184の幾何寸法は、グルーブの深さ186、グルーブの幅187、タングの幅188、およびタングの高さ190を含む。これらの幾何寸法は、約1ミクロンから約100ミクロンまでの範囲にあることが好ましい。気密封止周界に沿った全ての点でジョイント面がオーバラップすることを保証するため、タング構造184およびグルーブ構造182a/182bは、ジョイント構造製作の公差および組立て機器の正確さの公差を上回るオーバラップ部分(「締め代」とも呼ばれる)を形成するように製作される。好ましい実施形態では、このオーバラップ部分が約1ミクロンから約20ミクロンまでの範囲にあり、かつタング幅188の1/4よりも小さい。
【0069】
接合面がジョイント構造の材料とは異なる材料を含み、接合面を形成するために金属被覆が使用される実施形態では、金属被覆された接合面の厚さが約0.1μmから約50μmである。約1μmの金属厚さは、例えば蒸着によって形成することができる。これよりも大きな金属厚さは、例えば電気めっきプロセスによって形成することができる。
【0070】
(パルス加熱を用いた熱圧着)
本発明のいくつかの実施形態では、ハーメチックシールを形成するために、熱圧着において選択的パルス加熱が使用される。選択的パルス加熱は、マイクロ抵抗ヒータによって提供することができる。マイクロ抵抗ヒータの例は、Lin他の米国特許第6,436,853号に記載されている。ヒータは、本明細書に記載の気密封止システムの任意の実施形態に組み込むことができる。中間層を有するヒータと中間層のないヒータの2つのグループのうちの一方に適当なヒータを配置することができる。
【0071】
以下の3つ理由のうちの任意の組合せによって、ヒータは、ヒータと他の表面の間に中間層を必要とすることがある。(1)使用される材料の電気抵抗率および必要とされる加熱量によっては、ヒータ材料を、接合面および/または基材から電気的に絶縁する必要がある場合がある。(2)ヒータと隣接する材料の熱膨張率(CTE)の差が、ハーメチックシールに容認できない応力を潜在的に導入するほどに十分に大きい実施形態では、中間層が必要となることがある。加熱中に、これらの応力が、ヒータとヒータに隣接する材料との間の結合強度を上回る場合、または、これらの応力が、ハーメチックシールのいずれかの材料の極限引張強度を上回る場合に、これらの応力は、例えばさまざまな界面の層間剥離、破裂または亀裂として現れる。(3)加熱サイクルの繰返しによってヒータの電気特性が変化することを防ぐため、または接着層の拡散を遅らせるための拡散障壁として中間層が必要となることがある。このように、中間層は、使用される特定の材料に応じて、電気的な分離のため、CTEの不一致のため、拡散障壁として、またはこれら3つの任意の組合せによって必要となることがある。
【0072】
簡潔にするため、図11〜14には、ヒータと基材の間、またはヒータと材料界面の接着層との間の中間層は示されていない。ヒータと接合面の間の中間層だけが示されている。
【0073】
図11は、ヒータ218を有するハーメチックシールシステム200の一実施形態の断面図を示す。ヒータ218は第2の基材212上に配置されている。ヒータ218の上面には中間層220が配置されている。接合面材料222は、ヒータ218によって中間層220の下から加熱される。ハーメチックシールは、第1の基材210が第2の基材212とともに接合され、ヒータ218によるパルス加熱に関連した材料の変形によって、接合面216と接合面材料222の間に金属−金属結合が形成されたときに形成される。
【0074】
図12は、ヒータ234を有するハーメチックシールシステム230の他の実施形態を示す。図12では、第2の基材232の材料が、構造コア(core)233、ヒータ234、中間層236および接合面材料238を含むジョイント構造の構造コア233を構成する。対照的に、図11は、ヒータ218および中間層220がジョイント構造のコアを形成する一実施形態を示す。したがって、図12の第2の基材232上のジョイント構造は、図11の第2の基材212上のジョイント構造よりも堅固である。その結果、ハーメチックシールシステム230では、熱圧着中に、接合面においてより局所的な変形が起こる可能性がある。ジョイント構造の堅固性の増大は、選択される特定の材料にも左右されることを理解されたい。
【0075】
図13は、接合面材料246と接触したヒータ244を有するハーメチックシールシステム240の一実施形態を示す。図14は、接合面材料256と接触したヒータ254を有するハーメチックシールシステム250の他の実施形態を示す。図14では、第2の基材252上のジョイント構造コアが基材材料を含み、図13の第2の基材242上の基材材料を含まないジョイント構造よりも堅固なジョイント構造とすることができる。接合面材料246および256は主として、下のヒータ244および254によって加熱される。代替実施形態では、接合面に電流を流すことによって、接合面の材料が直接に加熱される。
【0076】
図11〜14に示された実施形態は、第1の基材と第2基材とが異なる材料を含むことができることを理解されたい。さらに、第1の基材のジョイント構造は、第1の基材の接合面および第2の基材の接合面と同じ材料を含み、またはこれらとは異なる材料を含むことができる。さらに、第1の基材上の接合面と第2の基材上の接合面とは、同じ材料または異なる材料を含むことができる。第2の基材の接合面とヒータは同じ材料または異なる材料を含むことができる。さらに、はんだ付けプロセスの場合と同様に、パルス加熱中に結合面が溶融してもよい。
【0077】
(冷間圧接に必要な機械力の最小化)
基材を結合するために必要な機械力を最小化することによって、基材または基材コーティングを傷つける危険性を低減させることができる。必要な機械力の最小化は、さまざまな方法によって達成することができる。これらの方法は、さまざまなジョイント構造設計、接合面材料の選択、接合面材料の処理手順および冷間圧接プロセスパラメータを含む。
【0078】
例えば、封止フィーチャ間の締め代ないしオーバラップ部分の総量は、ジョイント構造設計によって支配される。対合するジョイント構造間のオーバラップ部分ないし締め代を大きくすると、冷間圧接プロセス中により大きな体積の金属が変形するため、冷間圧接に必要な力が大きくなる。したがって、必要な力を最小化するためには、変形する金属の総量を最小化しなければならない。これは、接合面の剪断層または界面を最小化し、さらにジョイント構造間の締め代の量を最小化することによって達成することができる。オーバラップ部分は、ジョイント構造の公差、表面粗さおよび組立て機器の正確さの公差よりもほんの少し大きいことが好ましいと言える。さらに、(図2に示すように)1つの剪断層だけを形成することによって、必要な力をかなり低減させることができる。
【0079】
さらに、ジョイント構造の断面幾何形状のさまざまな組合せを使用することによって、特定の応用に対してハーメチックシールを最適化することができる。例えば、台形グルーブジョイント構造と共に接合された長方形タングジョイント構造の組合せは、接合面が接する面積を小さくする。この実施形態では、長方形ジョイント構造の角だけが剪断を開始する。この局所剪断の初期面積は、長方形タングジョイント構造と長方形グルーブジョイント構造とが有する実施形態よりもはるかに小さい。したがって冷間圧接に必要な力は低減される。
【0080】
他の実施形態では、長方形タングジョイント構造の1つの角だけが、傾斜台形グルーブジョイント構造との間で剪断力を開始する場合に、必要な力がさらに低減される。長方形タングの1つの角で塑性変形を開始させるのに必要な力は、長方形タングの2つの角に同じ圧力を発生させるのに必要な力の半分である。
【0081】
ジョイント設計に加えて、接合面材料の組成および関連する物理特性が、ハーメチックシールを形成するために必要な力に対して影響を及ぼすことができる。例えば、接合構造の材料は低い降伏応力を有することができ、このことは結果的に、材料を変形しやすくし、清浄な結合可能面を露出させやすくする。低い降伏応力を有する適当な接合面材料には、インジウム、アルミニウム、金およびスズが含まれるが、これらに限定されるわけではない。反対に、不純物は、結晶構造に歪みエネルギーを加え、または転位移動度を妨害することで、ベース金属の降伏応力を増大させる働きをする。したがって、材料の純度を高めることによって降伏応力を低減させることができる。第2の材料を追加することによって融点が低下し、それによって周囲温度が融点により近くなるため、全体の降伏応力が低下するという例外も存在する。
【0082】
冷間圧接に必要な力に影響を及ぼす他の物理特性は、接合面金属の酸化物の硬度である。酸化物の硬度と母材金属の硬度の比が大きい金属は、冷間圧接するために必要な変形が少なくてすむ。反対に、軟かい金属酸化物は母材金属と共に変形し、容易には破損せず、したがって冷間圧接結合に対する酸化物障壁を維持する。酸化物と母材金属の硬度の比が大きい金属にはインジウムおよびアルミニウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。金および白金は周囲条件下で酸化物を有しないため、酸化物と母材金属の硬度の比は、これらの金属を冷間圧接するのに必要な力の量にあまり影響を及ぼさない。しかし、金および白金は、冷間圧接結合に対する障壁として機能する吸着有機汚染物層を有する。
【0083】
さらに、接合面金属の結晶粒構造および固有歪は降伏強さに影響を及ぼす。多結晶性金属では、降伏応力は、しばしば、降伏応力が結晶粒度の平方根分の1に比例するとするHall−Petchの関係によって記述される。この関係が存在するのは、隣接する結晶粒の結晶学的滑り面が通常は整列しておらず、そのため、隣接する結晶粒の新しい滑り面を活動化させるためには追加の応力が必要となるためである。したがって、結晶粒の数を減らす(すなわち結晶粒度を増大させる)ことによって、降伏応力を低下させることができる。金属の焼なましは、結晶粒度を増大させ、金属内の固有歪みを小さくすることによって、降伏応力を低下させることができる。焼なましはさらに、電気めっきされた層に捕らえられた水素を脱離させるなど、他の有利な効果を有する。
【0084】
最後に、結合プロセスが、ハーメチックシールを形成するために必要な力に影響を及ぼすことができる。さらに、変形の総量を最小化すると、接合面材料が発現する歪み硬化の量が低減する。例えば、変形の総量が低減されるため、ジョイント構造が短いほど、発現される歪み硬化は小さくなる。さらに、冷間圧接プロセス時間または歪み速度も歪み硬化に影響することがある。結合時間はさらに、金属相互拡散の量に影響することがある。Takahashi&Matsusaka、「Adhesional bonding of fine gold wires to metal substrates」、J.Adhesion Sci.Technol.、17(3):435〜51ページ(2003年)を参照されたい。
【0085】
圧縮力を用いた封止では、基材材料によっては破損につながる恐れがある1つの基材上の片持ち梁型の力を回避するために、支持力と圧縮力とを調製することが望ましいことがある。一実施形態では、これは、圧縮力から保護される第1の基材を少なくとも2つの他の基材構造の中に挿入することによって達成され、これらの2つの他の基材構造は次いで、例えば本明細書に記載の冷間圧接によって合わせて封止される。好ましい一実施形態では、これらの2つの他の基材構造のうちの少なくとも一方が、第1の基材を抱え込みまたは他の方法で保持するのに適したキャビティまたは凹みを含む。これらの少なくとも2つの他の基材構造は、これらの少なくとも2つの他の基材構造間に画成されたキャビティの中に第1の基材を閉じ込めるために、互いに圧縮することができるジョイント構造を有する。図22は、このような封止方法の一実施形態を示す。封止された装置500は、その上にバイオセンサ508が製作されたセンサ基材506を含む。センサ基材は、ベース基材502のキャビティ505の中に置かれている。リザーバキャップ/開口512を含む上基材504は、ジョイント構造510に適用された冷間圧接プロセスによってベース基材502に結合されている。他の実施形態では、第3の基材ないし「センサ」基材が、センサの代わりに別の2次装置をその上に有する。第3の基材は例えば、ジャイロスコープ、共振器などのMEMS装置を含む。この装置は真空下で封止することができる。
【0086】
(圧縮ガスケット法)
他の態様では、金属−金属結合なしに圧縮シールが形成される。この場合、気密性であり続けるために、部品が、永続的な接合力を必要とする。接合力は、さまざまな締付け機構によって加えることができる。一実施形態では、基材が整列するまで基材の周囲に動きばめを提供するニチノールまたは他の形状記憶合金クランプを形成することができ、その後、ニチノールをその相転移点よりも高い温度まで加熱して、図15に示されているようにニチノールが基材を締め付けるようにすることができる。この相転移温度は(形状記憶合金の組成を変更することによって)制御することができる。したがって、装置の組立ては相転移温度よりも低い温度で実施することができ、次いで、組み立てたアセンブリが相転移温度まで加熱され、締付け機構が作動させられる。
【0087】
他の実施形態では、そのゼロ応力形状が接合基材よりもかなり小さい金属またはプラスチッククランプを弾性変形させて、ハーメチックシールシステムの基材を装着することができる。クランプの間で接合基材が整列した後、クランプ上の全ての力を除去して、クランプが接合基材を締め付けるようにする。基材を締め付けるために、ねじ、リベット、はんだ、熱収縮ポリマー、向い合わせの磁石などを含む他の締結具を形成することもできる。このクランプは、永久に力を加えることができなければならず、同時に、接合対のこの追加のサイズを最小化するものでなければならない。
【0088】
はんだクランプを有するハーメチックシールシステム270の一実施形態を図16A〜Cに示す。図16Aでは、ハーメチックシールシステム270が、第2の基材274上に取り付けられ、めっきされまたはマイクロ機械加工された柱体276を含む。柱体276の上面にはんだ278がパターン形成されている。第2の基材274上の第2のジョイント構造280は、第1の基材272上のグルーブジョイント構造282とオーバラップするように整列されている。第1の基材272の上面には、金属を含むパッド284が堆積されている。ヒータ288を含むヒータプレート286は、柱体276の上面のはんだ278と整列し、第1の基材272上の金属パッド284の上にオーバラップしている。
【0089】
図16Bに示すように、ヒータプレート286は、第1の基材272と第2の基材274を共にプレスし、第1のジョイント構造280とオーバラップしたグルーブジョイント構造282との間にシールを形成する。ヒータプレート286がプレスすると、第1の基材272上の金属パッド284の上にはんだがリフローするようにはんだ278をリフローさせるために、ヒータ288にパルス電流が流される。はんだ278が固化した後、ヒータプレート286は除去することができる。図16Cは、ヒータプレート286が除去され、はんだクランプおよびハーメチックシールが形成された後のハーメチックシールシステム270を示す。
【0090】
代替実施形態(図示せず)では、使用されるはんだに応じて、使用されるヒータ温度に耐え、はんだ278が結合しにくい表面として機能する材料で、ヒータプレート286がコーティングされる。このような実施形態では、はんだ278が固化した後に、はんだがヒータ288に結合することなく、ヒータプレート286を除去することができる。さらに、はんだクランプの所望の強度に応じて、金属パッド284上にリフローされるはんだ278の厚さを調整することができる。
【0091】
本発明の冷間圧接封止フィーチャを使用して、圧縮ハーメチックシール用のクランプを形成することもできる。図17は、タングアンドグルーブジョイント構造設計を使用して、2つの基材292と294の間に圧縮シール材料306を挟み付け、圧縮ハーメチックシールを形成する、ハーメチックシールシステム290の一実施形態を示す。第1のジョイント構造296a/296bは、ジョイント構造設計のグルーブ部分を含む。ジョイント構造設計のタング部分は、第2の基材294上のヒータ300、ヒータ上の中間層302、および中間層上の接合面材料304を含む。圧縮シール材料306は円形断面を有し、基材の端部のタングアンドグルーブクランプ間の第2の基材294上に配置されている。第1の基材292のグルーブジョイント構造は次いで、熱圧着を使用して、第2の基材294のタングジョイント構造に接合され、基材間に圧縮シール材料を挟み付け、ハーメチックシールを形成する。熱を加えることなく冷間圧接クランプを形成するために、冷間圧接に関して記載した任意のフィーチャを使用することができることは明白である。冷間圧接クランプの主たる機能は2つの基材を共に締め付けることであって、シールを形成することではないため、冷間圧接クランプが閉じた幾何形状を有する必要はない。
【0092】
他の実施形態(図示せず)では、第2の基材上のタングアンドグルーブクランプの外側の第2の基材の端部に、圧縮シール材料が配置される。しかし、圧縮シール材料の配置に応じて、基材材料上の応力は異なることを理解されたい。
【0093】
応用によっては、上記の実施形態の任意の金属ジョイント構造および接合面の代わりに、コンプライアントポリマーを使用することができる。コンプライアントポリマーを封止する封止機構は冷間圧接とは定義されないが、リザーバまたはキャビティを、シールを用いて、隣接するキャビティまたは外部汚染から分離する効果は同じである。コンプライアントポリマーは、シールを形成するのに、冷間圧接プロセスにおいて塑性変形を発生させるのに必要な圧力よりもかなり小さな圧力しか必要としない。水の透過が重大な問題である応用においては伝統的に、コンプライアントポリマーは、封止するための選択肢としては劣等であった。しかし、高分子化学の最近の進歩は、金属またはセラミック粒子を追加することで水の透過がかなり低下するように改良されたポリマーを形成した。例えば、炭素ナノ粒子の追加によって改良されたあるエポキシ樹脂は、従来のエポキシ樹脂よりも1桁小さい水透過率を有することが報告されている。コンプライアントポリマーシールは、低い圧縮力を使用してシールを提供するために、低ヤング率ポリマーの選択および接触表面積の最小化を必要とする。さらに、境界を定めるジョイント構造の数を増大させることによって、シールを通した水の透過をかなり遅らせるように機能するポケットを形成することができる。
【0094】
上記の実施形態および例は、単一のジョイント構造設計を使用して実施し、あるいは、1つまたは複数の冗長ジョイント構造の漏れをもたらす可能性がある潜在的な製造欠陥を軽減するために、複数の冗長ジョイント構造を使用して実施することができる。さらに、複数の接合面は、シール経路長を長くするように働き、したがって、シールを形成するために必要な力を増大させるように働く。冗長ジョイント構造の数は、基材材料の強度、それらを冷間圧接するために必要な力、およびクランプフィーチャによって加えられる応力を含む冷間圧接プロセス後に基材に残る残留応力と釣り合いをとる必要がある。
【0095】
(気密封止された装置および方法の応用)
冷間圧接技法は、処理と製造可能性の両方に関していくつかの利点を有する。第1に、封止フィーチャは、標準MEMsプロセスになじみやすく、MEMs装置にモノリシックに(monolithically)に組み込むことができる。第2に、短い間隔で配置されたリザーバのアレイを同時に封止することができる。実際に、ウェーハ−ウェーハ結合プロセスでは、装置のウェーハ全体を同時に封止することができる。互いに上下に重ねられた複数のウェーハを、内部ウェーハのそれぞれの表面に冷間圧接が実施されるように、順番にまたは同時に結合することができる。さらに、封止フィーチャの下のフィードスルー(feed−through)を通すことによって、能動デバイスを受動デバイスと統合することができる。最後に、このプロセスは熱を含まないため、リザーバ容積の中に温度感受性材料をパッケージングすることができる。温度感受性材料は例えば、揮発性液体、有機化学物質、薬物、爆発性ガス、化学センサおよび敏感なエレクトロニクスを含む。
【0096】
図18に、気密封止された装置310のアレイを形成するために1つに冷間圧接された能動ウェーハと受動ウェーハの一実施形態を示す。気密封止された装置310のアレイは、同じウェーハ上のダイのアレイの一部として同時に冷間圧接された1つのダイを表す。第1の能動層312は、センサ320、金電気トレース層322、誘電層318、およびタングジョイント構造324を含む。能動層の基材と任意の電気トレース層の間の誘電体は、簡潔にするために省略されている。これらのタングジョイント構造324は金を含み、第1のタングジョイント構造がその中に圧入されるグルーブジョイント構造を有する受動層314に冷間圧接される。受動層314は、第2のタングジョイント構造326を有する金属被覆層、および第1の能動層312上のセンサ320と整列した開口を含む。第2のタングジョイント構造326は、第2の能動層316内のグルーブジョイント構造に冷間圧接される。第2の能動層は、第1の能動層上のセンサ320と整列した開口を含む。第2の能動層はさらに、リザーバキャップ328を有する金属被覆層を含む。したがって、図18に示す気密封止された装置310のアレイは、ハーメチックシールによってセンサ320を、互いからおよび環境から分離している。しかし、センサ320を環境に露出させるために、リザーバキャップ328は後に開くことができる。能動構成要素320に対する電気的接続は、基材材料および製造限界に応じたバイアを使用して達成することができる。
【0097】
図19は、第1の能動層332、受動層334および第2の能動層336を有するマルチリザーバ薬物送達チップの一実施形態の透視図を示す。層332上のジョイント構造を示すために分離されて示されている層332と334は、冷間圧接によって結合されている(結合される)。(層334と336は任意の特定の技法によって結合される必要はない。)
埋込み型医療用センサの一応用では、それぞれの基材上にコンプライアントポリマーのパターンが形成される。このポリマーのパターンは、モールディング(例えばPDMSソフトリソグラフィ)、フォトリソグラフィ(例えば光画成可能な(photo−definable)シリコーン)、ステレオリソグラフィ(stereolithography)、選択的レーザシンタリング、インクジェットプリンティング、堆積およびリフロー、またはエッチング(例えばOプラズマエッチング)など、従来のMEMs技法を使用して形成することができる。あるいは、ポリマーは、反対側の基材の間にそれを配置する前にパターン形成し、金属被覆することができる。
【0098】
図20は、堆積された金属接合面348、352、368、372、383、388、392を有するさまざまなポリマージョイント構造346、350、366、370、382を有するハーメチックシールシステムのさまざまな実施形態を示す。この場合には、金属−金属結合が剪断変形によっては形成されず、Ferguson他に詳述されている機構によって形成される。ハーメチックシールシステム340は、接触面積および漏れ経路長を最大化する。ハーメチックシールシステム360は、冷間圧接中に表面汚染物を置換するときの局所圧力を増大させるために、接触面積を最小化する。ハーメチックシールシステム380は、基材上に製作されていないポリマープリフォーム382を含む。このプリフォームは金属被覆された表面383を含む。ハーメチックシールシステム380は、金属被覆されたガスケットシールシステムとして特徴付けることができる。
【0099】
ある種の実施形態では、金属をポリマーと結合するプロセスにおいて、音響(例えば超音波)またはレーザエネルギーを使用することができる。この音響またはレーザエネルギーの応用は、ポリマー基材上に金属層/コーティングを結合し、あるいは金属基材上にポリマーコーティング/層を結合する方法に適用することができる。これらの実施形態のポリマー材料の例には、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などのフルオロポリマー、または液晶ポリマーなどが含まれる。一実施形態では、液晶ポリマー基材(例えばある種のハーメチックLCポリエステル)が、他の液晶ポリマー基材に結合され、または、液晶ポリマー基材が金属被覆され、その金属被覆された表面が、他の液晶ポリマー基材または他の金属被覆された表面に結合される。
【0100】
他の実施形態または代替実施形態では、Cohnの米国特許出願公開第2002/0179921A1号に記載された封止コンセプトを、本明細書ならびに米国特許第5,797,898号、第6,527,762号、第6,491,666号および第6,551,838号、米国特許出願公開第2004/0121486A1号、第2004/0127942A1号および第2004/0106953A1号に記載された埋込み可能薬物送達または分析物センシングの応用の気密封止で使用されるように適合させることができる。
【0101】
本明細書に記載された装置は、埋込み可能医療装置および他の装置を含むさまざまな装置とともに使用し、またはこのようなさまざまな装置に組み込むことができる。装置の例には、薬物送達装置、診断およびセンシング装置が含まれ、そのうちのいくつかが、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,797,898号、第6,551,838号、第6,527,762号、米国特許出願公開第2002/0099359号、第2003/0010808号、第2004/0121486号に記載されている。
【0102】
図21は、開いたリザーバを冷間圧接を使用して封止する前後のマイクロチップ装置の一実施形態の断面図を示す。装置基材402は、リザーバ内容物406が充填されたリザーバ404を有する。リザーバ404は、基材402の前面401が、リザーバキャップ408によって閉じられている。基材402の背面は、それぞれのリザーバ404の両側に1つずつタングジョイント構造414を有する。装置基材402の背面403の開いたリザーバ404の上には、封止基材410が配置されている。封止基材410は、タングジョイント構造414と整列したグルーブジョイント構造412a/412bを有する。封止基材は、適当な材料を選択することによって、可視光から赤外光までの光波長に対して透明とすることができる。このようにすると、リザーバ内容物を光学的に精査することができる。2つの基材は次いで互いに接合され、タングおよびグルーブジョイント構造414/412aおよび412bにおける冷間圧接は、個々のリザーバ404を互いに分離し、かつ環境から分離するハーメチックシールを形成する。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された気密封止された装置が、他の装置のサブコンポーネントである。例えば、気密封止された装置を、患者の生理状態を示すセンサ、患者の体に電気刺激を与える電極、ポンプ、カテーテルまたはこれらの組合せをさらに含む埋込み可能な薬物送達装置の部分とすることができる。これらの装置のいくつかの例が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0127942A1号および第2004/0106953A1号、および米国特許第6,491,666号に記載されている。
【0104】
(冷間圧接によって形成された電気バイアおよびワイヤ接続)
他の態様では、本明細書に記載された冷間圧接技法が、非常に信頼性の高い、低抵抗電気的接続を加熱なしで形成するように適合される。一実施形態では、冷間圧接によって形成された結合構造が、機械的固定手段と連続導電経路とを同時に提供する。
【0105】
電気バイア接続600の一実施形態を図23に示す。第1の基材618の第1の表面604上の第1の金属層602を、第2の基材609の表面608上の第2の金属層606に電気的に接続する。第1の基材上のシールフィーチャ610の内側に堆積された金属は、第1の金属層602と第1の接合面612との間の電気的接触を形成する。第2の接合面614は、第2の金属層606上に歯605を電気めっきすることによって形成することができる。歯の幅は、金属被覆されたホールの幅よりも1〜50um大きい。基材604の内部のシール構造610の断面は長方形であるように示されているが、この断面は、堆積された材料の被覆範囲を最大化し、ジョイント内の残留応力を低減させるためにマイクロ機械加工またはMEMsプロセスを使用して製作することができる任意の形状をとることができる。接合面612と614が整列し、基材618と609が互いに圧縮されると、接合界面の剪断によって、両方の接合面上に清浄金属が露出し、冷間圧接結合が形成される。その結果生じる結合は、第1の金属層602と第2の金属層606の間の低抵抗の電気的接続を形成する。
【0106】
この技法は、特定の金属または合金または形状の電気めっきされたリッジ(ridge)に限定されないことを理解されたい。めっき方向のリッジ断面は、長方形(図示)、半球形、三角形、台形とすることができ、本明細書に記載された冷間圧接ジョイントを形成するために適当な任意の形状とすることができる。本明細書に記載された任意の導電材料を、冷間圧接によってではなく弾性圧縮によって電気的接続を形成するための適当な機械および電気特性を有する金属または導電性ポリマーを含む接合材料として使用することを考慮することができる。第2の接合構造は、接合面の材料とは異なる材料または接合面の材料と同じ材料のコアを有することができる。冷間圧接ジョイントを形成するための本明細書に記載された全ての封止フィーチャを、電気的接続を形成するために使用することができる。
【0107】
金属を堆積させ、金属をパターン形成し、基材を貫通するバイアを形成するために従来のMEMSプロセスおよび/またはマイクロ機械加工を使用して、小さな領域の中に複数の電気的接続を形成することができる。本明細書に記載された電気的接続フィーチャを、シールフィーチャを有する基材上に含めて、2つの対向する基材が互いに圧縮されたときに、ハーメチックシールと同時に電気的接続が形成されるようにすることができる。
【0108】
他の実施形態では、第1のジョイント面612の堆積をより容易に収容するために、第1の接合面612上に傾斜した側壁を有することが有利である。さらに、材料の堆積を、第1の基材604の両面616および618に実施することができる。これは、バイアホール607全体の適当な材料堆積を保証する1つの方法である。
【0109】
図25および26も、冷間圧接によって形成された電気バイアの可能な実施形態を示している。
【0110】
電気ワイヤ接続700の一実施形態を図24A〜Bに示す。導電性リード(lead)702a、702bをそれぞれ、基材706上のトレース704a、704bに電気的に接続する。導電性リード702a、702bはそれぞれ、接合面の幅708a、708bよりも大きな直径を有し、シールフィーチャ710a、710bと整列され、その中にプレスされる。シールフィーチャ710a、710bは、基材706にトレンチをエッチングし、次いでそれらの中に金属層704a、704bを堆積させることによって形成することができる。これらのトレンチは一端がより幅が広く、これは、エポキシ、シリコーン、はんだ、または他のポリマー材料を使用して導電性リード702a、702bの歪みを適切に軽減するための空間を提供する。この空間はさらに、導電性リードに対する冷間圧接を形成するためにより小さな面積のトレンチが使用されたとしても、リードが基材706の上面と平行に延びることを可能にする。
【0111】
リードは円形の断面を有するように示されているが、本明細書に記載された冷間圧接または圧縮シールを形成するのに適した任意の断面を使用することができる。基材710a、710bの内部のシール構造710a、710bの断面は長方形であるように示されているが、この断面は、堆積された材料の被覆範囲を最大化し、ジョイント内の残留応力を低減させるためにマイクロ機械加工プロセスまたはMEMsプロセスを使用して製作することができる任意の形状をとることができる。
【0112】
代替実施形態では、冷間圧接ではなく、プレスばめまたは摩擦ばめ(friction fit capture)を引き起こすために導電性リードおよび/または導電層704a、704bの弾性特性を使用して、電気的接続を形成することができる。導電性リードは、単一の材料から形成し、かつ/または異なる材料の複数の層から形成し、かつ/または電気絶縁層でコーティングすることができる。局所剪断は、絶縁層を十分に変形させて、その下の導電性リードを露出させ、冷間圧接または圧縮電気的接続を形成することができる。
【0113】
代替実施形態では、前述のバイアまたはワイヤ接続において、金属層の代わりに、銀含浸ポリマーなどの非金属導電材料が使用される。好ましい一実施形態では、構造材料が生物適合性でかつ生物安定性(biostable)である。
【0114】
(マルチキャップリザーバ装置の追加の詳細)
(基材およびリザーバ)
一実施形態では、封じ込め装置が、流体密(fluid tight)封止または気密封止されたリザーバ内容物を含んだ1つまたは複数のリザーバを含むボディ部分、すなわち基材を含む。本明細書で使用されるとき、用語「気密」は、ヘリウム、水蒸気および他の気体を遮断するために有効なシール/封じ込めを指す。本明細書で使用されるとき、用語「流体密」は、気密性ではないが、液相中の溶解した物質(例えばグルコース)を遮断するために有効なシール/封じ込めを指す。基材は、その中にリザーバが形成された構造体(例えば装置の部分)であることができ、基材は例えば、エッチングされ、機械加工されまたは成形されたリザーバを含む。
【0115】
好ましい実施形態では、リザーバが、別々であり、変形することができず、装置ボディの1つまたは複数の表面(または領域)全体に広がるアレイとして配置される。本明細書で使用されるとき、用語「リザーバ」は、薬物製剤、または2次装置、またはサブコンポーネントなどの正確な量の物質を貯蔵し、含み、放出し/露出させるのに適したウェル、キャビティまたはホールを意味する。多孔質材料の相互接続された細孔はリザーバではない。一実施形態では、装置が、ボディ部分の少なくとも1つの表面全体に広がる別個の位置に配置された複数のリザーバを含む。他の実施形態では、リザーバ基材部分ごとに1つのリザーバがあり、任意選択で、単一の装置内で2つ以上のリザーバ基材部分を共に使用することができる。
【0116】
リザーバは、当技術分野で知られている適当な任意の製作技法を使用して、構造ボディ部分の中に製作することができる。代表的な製作技法には、MEMS製作プロセス、マイクロファブリケーションプロセス、または他のマイクロ機械加工プロセス、さまざまなドリリング技法(例えばレーザ、機械、および超音波ドリリング)、およびLTCC(低温共焼成(co−fired)セラミック)などのビルドアップまたはラミネーション技法などがある。リザーバの表面の1つまたは複数の特性を変化させるため、任意選択でリザーバの表面を処理し、またはコーティングすることができる。このような特性の例は、親水性/疎水性、濡れ特性(表面エネルギー、接触角など)、表面粗さ、電荷、放出特性などである。当技術分野で知られているMEMS法、マイクロモールディング(micromolding)、マイクロ機械加工、およびマイクロファブリケーション技法を使用して、さまざまな材料から基材/リザーバを製作することができる。リザーバを形成するために、当技術分野で知られている他の数多くの方法を使用することもできる。例えば米国特許第6,123,861号および米国特許第6,808,522号を参照されたい。当技術分野で知られているさまざまなポリマー成形技法、例えば射出成形、熱圧縮成形、押出しなども使用することができる。
【0117】
さまざまな実施形態では、封じ込め装置のボディ部分が、ケイ素、金属、セラミック、ポリマーまたはこれらの組合せを含む。適当な基材材料の例は、金属(例えばチタン、ステンレス鋼)、セラミック(例えばアルミナ、窒化ケイ素)、半導体(例えばケイ素)、ガラス(例えばパイレックス(商標)、BPSG)、ならびに分解性および非分解性ポリマーなどである。流体密だけが必要とされる場合には、気密性のために一般に必要な金属またはセラミックからではなく、ポリマー材料から基材を形成することができる。
【0118】
一実施形態では、それぞれのリザーバが、気密性材料(例えば金属、ケイ素、ガラス、セラミック)から形成され(すなわち気密性材料内に画成され)、リザーバキャップによって気密封止される。基材材料は、生物適合性であり、患者への長期の埋込みに適していることが望ましい。好ましい一実施形態では、基材が、1種または数種の気密性材料から形成される。使用前に、基材または基材の部分を、気密性生体適合材料(例えば不活性セラミック、チタンなど)でコーティングし、カプセル化し、または他の方法で封じ込めることができる。非気密性材料は、気密性材料の層で完全にコーティングすることができる。例えば、ポリマー基材は薄い金属コーティングを有することができる。基材材料が生物適合性でない場合には、使用前に、基材材料を、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン様材料、ダイヤモンド状炭素、炭化ケイ素、不活性セラミック、アルミナ、チタンなどの生体適合材料でコーティングし、カプセル化し、または他の方法で封じ込めることができる。一実施形態では基材が気密性である。すなわち、(少なくともリザーバ装置の使用時間中は、)送達される分子および周囲の気体または流体(例えば水、血液、電解液または他の溶液)に対して基材が不透過性である。
【0119】
基材は、ある範囲の形状または表面形状に形成することができる。基材は例えば、平面または曲面を有することができ、それらの面は、例えば取付け表面に沿うように成形することができる。さまざまな実施形態では、基材または封じ込め装置が、平面チップ、円形または楕円形の円板、細長い管、球またはワイヤの形態をとる。基材は柔軟であっても堅固であってもよい。さまざまな実施形態では、リザーバが、別々であり、変形することができず、埋込み可能医療装置の1つまたは複数の表面(または領域)全体に広がるアレイとして配置される。
【0120】
基材は1種類の材料だけからなることができ、または複合またはマルチラミネート材料とすることができ、すなわち、同じまたは異なる基材材料からなる互いに結合された複数の層からなることができる。基材部分は例えば、ケイ素または他のマイクロ機械加工された基材、あるいはケイ素、ガラスなどのマイクロ機械加工された基材の組合せとすることができ、例えば、米国特許出願公開第2005/0149000号または米国特許第6,527,762号に記載されているものとすることができる。他の実施形態では、基材が、互いに結合された複数のケイ素ウェーハを含む。他の実施形態では、基材が、低温共焼成セラミック(LTCC)、またはアルミナなどの他のセラミックを含む。一実施形態では、ボディ部分がマイクロチップ装置の支持体である。一例では、この基材がケイ素から形成される。
【0121】
一実施形態では、結合される一方または両方の基材が、1つまたは複数のガラスから形成され、このことは、封止された基材間、例えばキャビティまたはリザーバの中に封じ込められた物体または物質を眺めまたは調べることが望ましい実施形態において特に有用である。すなわち、基材は、流体密の窓の役目を果たすことができる。ガラスの代表例は、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、結晶ガラスなどである。
【0122】
基材の全厚およびリザーバの容積は、基材材料の複数のウェーハまたは層を結合しまたは張り合わせることによって増大させることができる。装置の厚さは、それぞれのリザーバの容積に影響を及ぼす可能性があり、かつ/または基材上に組み込むことができるリザーバの最大数に影響を及ぼす可能性がある。基材およびリザーバのサイズおよび数は、特定の応用、製造限界および/または装置の全体サイズの限界を、好ましくは低侵襲性の手技を使用した患者への埋込みに適当したものにするために必要なリザーバ内容物の量および体積を収容するように選択することができる。
【0123】
平面センサを使用する埋込み可能センサ応用向けの好ましい一実施形態では、前述のとおり、基材が比較的薄いことが好ましい。
【0124】
基材は、1つ、2つ、3つまたは4つ以上のリザーバを有することができる。さまざまな実施形態では、基材全体に、数十、数百または数千のリザーバが配列される。例えば、埋込み可能薬物送達装置の一実施形態は、250から750個のリザーバを含み、それぞれのリザーバは、放出するための1回量の薬物を含む。一センシング実施形態では、装置内のリザーバの数が、個々のセンサの動作寿命によって決定される。例えば、個々のセンサが体への露出後に30日間機能し続ける1年用の埋込み可能グルコース監視装置は、少なくとも12個のリザーバを含むであろう(リザーバあたり1センサと仮定)。他のセンサ実施形態では、センサ表面とリザーバ開口手段との間の距離が最小化され、好ましくは数ミクロンに迫る。この場合、リザーバの容積は主に、センサの表面積によって決定される。例えば、一般的な酵素グルコースセンサの電極は、400μm×800μmの空間を占有し得る。
【0125】
一実施形態ではリザーバがマイクロリザーバである。「マイクロリザーバ」は、薬物製剤などの微量の物質を貯蔵、および放出/露出させるのに適したリザーバである。一実施形態では、マイクロリザーバの容積が、500μL以下(例えば250μL未満、100μL未満、50μL未満、25μL未満、10μL未満など)、かつ約1nL超(例えば5nL超、10nL超、約25nL超、約50nL超、約1μL超など)である。用語「微量(microquantity)」は1nLから500μLの体積を指す。一実施形態では、微量が1nLから1μLである。他の実施形態では、微量が10nLから500nLである。他の実施形態では、微量が1μLから500μLである。マイクロリザーバの形状および寸法は、薬物(またはセンサ、あるいは他のリザーバ内容物)とマイクロリザーバの周囲表面との間の接触面積を最大化しまたは最小化するように選択することができる。
【0126】
一実施形態では、リザーバが、厚さ200ミクロンの基材の中に形成され、1.5mm×0.83mmの寸法を有し、約250nLの容積を有する。これには、厚さ約20から約50ミクロンとすることができる支持構造によって占められる容積は含まれない。
【0127】
他の実施形態ではリザーバがマクロリザーバ(macroreservoir)である。「マクロリザーバ」は、微量よりも多量の物質を貯蔵、および放出/露出させるのに適したリザーバである。一実施形態では、マクロリザーバの容積が、500μL超(例えば600μL超、750μL超、900μL超、1mL超など)、かつ5mL未満(例えば4mL未満、3mL未満、2mL未満、1mL未満など)である。
【0128】
ミクロスケールまたはマクロスケールの容積/量に限定されると明示されない限り、用語「リザーバ」は、両方のリザーバを包含することが意図される。
【0129】
一実施形態では、装置がマイクロチップ化学物質送達装置を含む。他の実施形態では、装置が、「マイクロチップ」とは呼べないかもしれない非ケイ素ベースの材料からなるポリマーチップまたは装置を含む。一実施形態では、装置が、浸透ポンプ、例えばVIADUR(商標)インプラント(Bayer Healthcare Pharmaceuticals社およびAlza Corporation社)などの市販装置に含まれるDUROS(商標)浸透ポンプテクノロジー(Alza Corporation社)を含む。
【0130】
(リザーバキャップ支持体)
リザーバキャップ支持体は、基材材料、構造材料、またはコーティング材料、あるいはこれらの組合せを含むことができる。基材材料を含むリザーバキャップ支持体は、リザーバと同じステップで形成することができる。前述のMEMS法、マイクロファブリケーション、マイクロモールディング、およびマイクロ機械加工技法を使用して、さまざまな基材材料から基材/リザーバおよびリザーバキャップ支持体を製作することができる。構造材料を含むリザーバキャップ支持体も、基材上への堆積技法ならびにこれに続くMEMS法、マイクロファブリケーション、マイクロモールディングおよびマイクロ機械加工技法によって形成することができる。コーティング材料から形成されたリザーバキャップ支持体は、知られているコーティングプロセスおよびテープマスキング、シャドウマスキング、選択的レーザ除去技法または他の選択的方法を使用して形成することができる。
【0131】
1つのリザーバは、そのリザーバ内容物の上に、さまざまな形状のいくつかのリザーバキャップ支持体を有することができる。例えば、ある1つのリザーバキャップ支持体はリザーバの片側から反対側まで延び、他のリザーバキャップ支持体は、第1のリザーバキャップ支持体と交差し、リザーバの残りの2つの側にまたがって延びる。このような例では、リザーバの上に、4つのリザーバキャップを支持することができる。
【0132】
センサ応用(例えばグルコースセンサ)向けの一実施形態では、リザーバ(リザーバを1つだけ含み、または2つの以上のリザーバを含むことができる装置のリザーバ)が、3つ以上のリザーバ開口および対応するリザーバキャップを有する。
【0133】
この支持構造の寸法および幾何形状は、特定の応用の特定の要件に応じて変更することができる。例えば、ある種の薬物製剤または埋込み部位などの特定の薬物放出動態に関して、支持構造の厚さ、幅、および断面形状(例えば正方形、長方形、三角形)を調整することができる。
【0134】
(リザーバ内容物)
リザーバ内容物は、その放出または露出が望ましい選択された時点までリザーバの外部環境から分離する(例えば保護する)必要がある実質上任意の物体または物質である。さまざまな実施形態では、リザーバ内容物が、(ある量の)化学分子、2次装置またはそれらの組合せを含む。
【0135】
触媒、またはセンサなどのある種のリザーバ内容物の固有の機能は、一般に、リザーバからの放出を必要とせず、むしろそれらの意図された機能は、例えば触媒反応またはセンシングは、リザーバキャップが開けられた後にリザーバ内容物がリザーバの外部環境へ露出された時に起こる。したがって、触媒分子またはセンシング構成要素は放出され、あるいは開いたリザーバの中に不動化された状態でとどまる可能性がある。装置からin vivoの部位に送達して、患者に対する治療効果を発揮させるために、薬物分子などの他のリザーバ内容物はしばしば、リザーバから放出される必要がある。しかし、ある種のin vitro応用では、薬物分子がリザーバの中に保持される。
【0136】
いくつかの実施形態では、封止されたリザーバは、特定の応用における特定の分子(例えばヘリウムまたは水)の最大許容輸送速度として一般に定義される気密性を、要求される。すなわち、リザーバが気密性とみなされるかどうかは、その応用の特定の要求に応じ、装置の異なる応用間で異なることができる。
【0137】
(化学分子)
リザーバ内容物は、実質上任意の天然または合成の有機または無機分子、あるいはそれらの混合物を含むことができる。それらの分子は、純粋な固体または液体、ゲルまたはヒドロゲル、溶液、乳濁液、スラリ、凍結乾燥粉末、あるいは懸濁液など、実質上任意の形態をとることができる。開かれたリザーバからの放出速度および/または時間を制御しまたは向上させるために、関心の分子を他の物質と混合することができる。
【0138】
好ましい一実施形態では、リザーバ内容物が薬物製剤を含む。薬物製剤は薬物を含む組成物である。本明細書で使用されるとき、用語「薬物」は、任意の治療または予防薬(例えば活性製薬成分(active pharmaceutical ingredient)すなわちAPI)を含む。一実施形態では、特に、商業的および医学的に有用な時間にわたって、例えば薬物の投与が必要となるまで薬物送達装置中で貯蔵される間、薬物の安定性を維持しまたは延長するために、薬物が固体で提供される。固体薬物マトリックスは純粋な形態をとることができ、あるいはその中にその薬物が封じ込まれ、懸濁され、または分散した、他の物質の固体粒子の形態をとることができる。一実施形態では薬物がタンパク質またはペプチドである。その例には、糖タンパク質、酵素(例えばタンパク分解酵素)、ホルモンまたは他の類似抗体(例えば抗VEGF抗体、腫瘍壊死因子阻害因子)、サイトカイン(例えばα−、β−またはγ−インターフェロン)、インターロイキン(例えばIL−2、IL−10)、および糖尿病/肥満症関連治療薬(例えばインスリン、エクセナチド(exenatide)、PYY、GLP−11およびその類似体)が含まれる。1つの装置内のリザーバは、単一の薬物または2種類以上の薬物製剤の組合せを含むことができる。異なる製剤を共に貯蔵し、同じ1つまたは複数のリザーバから放出することができ、あるいはそれらをそれぞれに貯蔵し、異なるリザーバから放出することもできる。
【0139】
in vitro応用に関しては、化学分子は、幅広い範囲の任意の分子とすることができ、例えば分析化学または医療診断の分野では、1種または数種の少量(ミリグラムからナノグラム)の分子の制御された放出が要求される。分子は、pH緩衝剤、診断試薬、およびポリメラーゼ連鎖反応、または他の核酸増幅手法などの複雑な反応の試薬として有効であることができる。他の実施形態では、放出される分子が、芳香剤または香水、染料または他の着色剤、甘味料または他の濃縮矯味矯臭剤、あるいは他のさまざまな化合物である。他の実施形態では、リザーバが不動化された分子を含む。その例には、反応に関与することができる任意の化学種が含まれ、これには、試薬、触媒(例えば酵素、金属、およびゼオライト)、タンパク質(例えば抗体)、核酸、多糖、細胞、およびポリマー、ならびに診断薬として機能することができる有機または無機分子が含まれる。
【0140】
放出させるための薬物または他の分子は、放出速度を制御するために、マトリックス物質中に分散させることができる。このマトリックス物質は、その分解、溶解または拡散特性が、化学分子の放出速度を制御する方法を提供することができる、米国特許第5,797,898号に記載されている「放出系」とすることができる。一実施形態では、リザーバ内の薬物製剤が、薬物と非薬物とからなる複数の層を含む。能動放出機構がリザーバ内容物を露出させた後、これらの複数の層は、非薬物の介在層によって、複数の薬物放出パルスを発生させる。このような戦略を、複雑な放出プロファイルを得るために使用することができる。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0247671A1号も参照されたい。
【0141】
(2次装置)
本明細書で使用されるとき、用語「2次装置」は、特に明示されない限り、リザーバの中に位置することができる任意の装置またはその構成要素を含む。一実施形態では、2次装置がセンサまたはセンサのセンシング構成要素である。本明細書で使用されるとき、「センシング構成要素」は、ある部位の化学種もしくはイオン種、エネルギーまたは1つもしくは複数の物理特性(例えばpH、圧力)の、存在の有無または変化を、測定しまたは分析する際に利用される構成要素を含む。センサのタイプには、バイオセンサ、化学センサ、物理センサまたは光センサが含まれる。2次装置は米国特許第6,551,838号に詳細に記載されている。一実施形態ではセンサが圧力センサである。例えば米国特許第6,221,024および6,237,398号、ならびに米国特許出願公開第2004/0073137号を参照されたい。センシング構成要素の例には、ある部位の薬物、化学物質、またはイオン種、エネルギー(または光)、あるいは1つまたは複数の物理特性(例えばpH、圧力)の存在の有無または変化を測定しまたは分析する際に利用される構成要素が含まれる。他の実施形態では、センサが、化学検出に使用されるセンサなどの片持ち梁型のセンサを含む。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0005676号を参照されたい。
【0142】
好ましい一実施形態では、患者(例えばヒトまたは他の哺乳類)に埋め込むための装置が提供され、リザーバ内容物は、患者の生理状態を示す少なくとも1つのセンサを含む。センサは例えば、患者の血液、血漿、間質液、硝子体液または他の体液中に存在するグルコース、尿素、カルシウム、またはホルモンの濃度を監視することができる。
【0143】
一実施形態では、結合された2つの基材が、一方または両方の基材部分の中に画成することができる、MEMS装置を含む少なくとも1つのキャビティを含む。MEMS装置は第3の基材上に置くことができる。封止されたキャビティの中の空間は排気することができ、あるいは不活性ガスまたはガス混合物(例えば窒素、ヘリウム)を含むことができる。MEMS装置は、圧力センサ、加速度計、ジャイロスコープ、共振器など、当技術分野で知られているものであることができる。他の実施形態では、結合された基材のうちの少なくとも一方がガラスから形成され、キャビティが光学センサを含み、または光学的に調べることができる化合物を含む。
【0144】
マイクロチップ装置または他の装置であり得る1次装置内に位置する2次装置を用いて得られたデータを受け取り、解析するためのいくつかのオプションが存在する。1次装置は、ローカルマイクロプロセッサまたはリモートコントロールによって制御することができる。バイオセンサ情報は、活動化の時間およびタイプを自動的に、または人間の介入によって、あるいはこれらの組合せによって決定するためのコントローラへの入力を提供することができる。例えば、装置の動作は、オンボードの(すなわちパッケージ内の)マイクロプロセッサまたは状態機械によって制御することができる。装置からの出力信号は、必要ならば適当な回路による調整の後に、マイクロプロセッサによって取得される。この出力信号は、解析および処理の後に、書込み可能なコンピュータメモリチップに記憶することができ、かつ/または、マイクロチップから離れた位置へ(例えば無線で)送信することができる。電力は、電池によって局所的に、または無線伝送によって遠隔位置から、マイクロチップシステムに供給することができる。例えば米国特許出願公開第2002/0072784号を参照されたい。
【0145】
一実施形態では、放出用の薬物分子およびセンサ/センシング構成要素を含むリザーバ内容物を有する装置が提供される。例えば、センサまたはセンシング構成要素はリザーバの中に位置することができ、あるいは装置基材に取り付けることができる。投与量および頻度、放出時刻、有効放出速度、薬物または薬物組合せの選択などを含む薬物放出変数を制御しまたは変更するために、センサは、例えばマイクロプロセッサを介して、装置と動作可能に通信することができる。センサまたはセンシング構成要素は、in vivoの埋込み部位でそれらの種または特性を検出し(または検出せず)、さらに、装置からの放出を制御するために使用されるマイクロプロセッサに信号を中継することができる。このような信号は、薬物の放出に関するフィードバックを提供することができ、かつ/または薬物の放出を細かく制御することができる。他の実施形態では、装置が、患者の体内の信号を検出し、かつ/または測定することができる1つまたは複数のバイオセンサを含む(バイオセンサは、使用する必要が生じるまでリザーバの中に封止しておくことができる)。一変形形態では、埋込み可能医療装置が、本明細書の記載のとおりに封止された、センサを含むリザーバを含み、センサからの信号が、装着型(すなわち外部)または内部ポンプであることができる別個の薬物送達装置に(配線または遠隔計器を含む任意の手段によって)伝送され、この信号は、薬物投与の制御に使用される。
【0146】
本明細書で使用されるとき、用語「バイオセンサ」は、関心の分析物の化学ポテンシャルを(例えば機械エネルギーまたは熱エネルギーを電気信号に変換することによって)電気信号に変換するセンシング装置、ならびに電気信号を直接または間接に測定する電極を含む。バイオセンサは例えば、さまざまなin vivoの位置の組織構造上の固有電気信号(EKG、EEGまたは他の神経信号)、圧力、温度、pH、または機械的負荷を測定することができる。バイオセンサからの電気信号は次いで、例えばマイクロプロセッサ/コントローラによって測定することができ、マイクロプロセッサ/コントローラは次いで、この情報を、リモートコントローラまたは他のローカルコントローラあるいはその両方に伝送することができる。例えば、このシステムを使用して、患者の生命徴候または薬物濃度などのインプラント環境に関する情報を中継しまたは記録することができる。
【0147】
好ましい一実施形態では、装置が、グルコースの監視およびインスリンの制御に使用される1つまたは複数のセンサを含む。センサからの情報を使用して、同じ装置からのインスリン放出または別のインスリン送達装置(例えば、従来の外部着用型または埋込み型のインスリンポンプ)からのインスリン放出を能動的に制御することができる。気密封止されたリザーバ装置は、グルコースセンサのアレイを格納した埋込み可能マルチリザーバ装置の形態で提供することができ、気密封止されたリザーバ装置は、患者がインスリンを(例えば注射によって)自身に手動で投与することができるグルコース計型の手持ちまたは着用装置に、グルコースの示数を(有線または無線で)伝送することができる。他の実施形態は、同様の方法で他の分析物を感知することができ、他の種類の薬物を送達することができる。
【0148】
(リザーバキャップ)
本明細書で使用されるとき、用語「リザーバキャップ」は、リザーバの内容物をリザーバの外部環境から分離するのに適した膜、薄いフィルムまたは他の構造物を指すが、リザーバキャップは、リザーバを開いて、その内容物を露出させるために、選択された時刻に除去されまたは崩壊するように意図される。好ましい一実施形態では、別個の1つのリザーバキャップがリザーバ開口の1つを完全に被覆する。他の実施形態では、別個の1つのリザーバキャップが、全てではないが2つ以上のリザーバ開口を被覆する。能動的に制御された好ましい装置では、リザーバキャップが、加えられた刺激(例えば電場または電流、磁場、pH変化、あるいは熱、化学、電気化学、または機械手段による刺激)に反応して、崩壊しまたは透過性化することができる任意の材料を含む。適当なリザーバキャップ材料の例は、金、チタン、白金、スズ、銀、銅、亜鉛、合金、および金−ケイ素、金−スズ共晶などの共晶材料などである。単一の装置の中に、受動または能動障壁層の任意の組合せが存在することができる。
【0149】
一実施形態では、リザーバキャップが導電性であり、無孔である。好ましい一実施形態では、リザーバキャップが薄い金属フィルムの形態をとる。他の実施形態では、リザーバキャップが、白金/チタン/白金の多層/ラミネート構造など、複数の金属層からなる。例えば、最上層および最下層は、リザーバキャップ上の接着層(一般にリザーバキャップの一部分にだけある)が、リザーバ開口のまわりの基材領域、リザーバキャップ支持体、および誘電体オーバレイヤ(overlayer)に接着/結合することを保証するように選択することができる。1つのケースでは、この構造が、チタン/白金/チタン/白金/チタンであり、最上層および最下層が接着層の役目を果たし、白金層が、追加の安定性/生物安定性、および主要な中心のチタン層に対する保護を提供する。これらの層の厚さは例えば、中心チタン層が約300nm、白金層がそれぞれ約40nm、接着チタン層が約10から15nmである。
【0150】
(リザーバキャップを崩壊させまたは透過性化するための制御手段)
封じ込め装置は、例えば本明細書に記載されたリザーバ封止後の選択された時刻にリザーバキャップを崩壊させ、または透過性化するために、リザーバの開口を容易にし、制御する制御手段を含む。この制御手段は、構造構成要素(1つまたは複数)と、電力を供給し、リザーバ内容物の放出または露出が開始される時刻を制御する電子機構(例えば回路および電源)とを含む。
【0151】
制御手段はさまざまな形態をとることができる。一実施形態では、リザーバキャップが、米国特許出願公開第2004/0121486A1号に記載された電熱アブレーションによって崩壊する金属フィルムを含むことができ、制御手段が、作動のために(例えばリザーバを開口するために)、電源(例えば電池、蓄積コンデンサ)から選択されたリザーバキャップに送達される電気エネルギーの制御および送達に必要なハードウェア、電気構成要素、およびソフトウェアを含む。例えば、装置は、電気入力リード、電気出力リード、およびその間に接続されたリザーバキャップに、リザーバキャップを崩壊させるのに有効な量の電流を流すための電力源を含むことができる。マルチキャップリザーバシステムの制御手段への電力は、例えば米国特許出願公開第2002/0072784号に記載されているように、電池、コンデンサ、(バイオ)燃料電池によって局所的に、または無線伝送によって遠隔位置から供給することができる。コンデンサは、オンボード電池によって局所的に、または例えばRF信号または超音波によって遠隔位置から充電することができる。
【0152】
一実施形態では、制御手段が、入力源、マイクロプロセッサ、タイマ、デマルチプレクサ(またはマルチプレクサ)を含む。タイマおよび(デ)マルチプレクサ回路は設計し、製作中に基材の表面に直接に組み込むことができる。他の実施形態では、制御手段の構成要素のいくつかが、装置のリザーバ部分に接続しまたは取り外すことができる別個の構成要素として提供される。例えば、コントローラおよび/または電源を、マルチキャップリザーバ装置から物理的に離れた位置に配置することができ、同時に、マルチキャップリザーバ装置に動作可能に接続し、かつ/またはマルチキャップリザーバ装置と通信することができる。一実施形態では、マルチキャップリザーバシステムの動作が、オンボードの(例えば埋込み可能装置内の)マイクロプロセッサによって制御される。単純な状態機械は一般に、マイクロプロセッサよりも単純で、かつ/またはより小さく、かつ/またはより少ない電力を使用するため、他の実施形態では、単純な状態機械が使用される。
【0153】
他のリザーバの開口方法および放出制御方法は、全て参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,797,898号、第6,527,762号および第6,491,666号、米国特許出願公開第2004/0121486号、2002/0107470A1号、2002/0072784A1号、2002/0138067A1号、2002/0151776A1号、2002/0099359A1号、2002/0187260A1号、および2003/0010808A1号、PCT WO 2004/022033A2およびPCT WO 2004/026281、米国特許第5,797,898号、6,123,861号および6,527,762号に記載されている。
【0154】
(マルチキャップリザーバシステム/装置の使用)
本明細書に記載されたマルチキャップリザーバ放出/露出装置およびシステムは、さまざまな応用で使用することができる。好ましい応用は、薬物の制御された送達、バイオセンシング、またはこれらの組合せを含む。好ましい一実施形態では、マルチキャップリザーバシステムは埋込み可能な医療装置の一部分である。この埋込み可能医療装置はさまざまな形態をとることができ、さまざまな治療および/または診断応用において使用することができる。一実施形態では、リザーバが、長期間にわたって薬物製剤を貯蔵し、放出する。他の実施形態では、リザーバが、選択的に露出させるためのセンサを含み、リザーバは、必要に応じて(例えばセンサの汚損に応じて)または所定のスケジュールに従って開かれる。例えば、リザーバは、圧力センサ、化学センサ、または生物センサを含むことができる。特定の一実施形態では、リザーバが、リザーバ内の電極上に不動化され、1つまたは複数の浸透膜/半透膜で覆われたグルコースオキシダーゼを含むグルコースセンサを含む。酵素は、意図された使用時の前に環境(例えば体)に露出すると、その活性を失いかねないため、封止されたリザーバは、酵素が必要になるまで酵素を保護する役目を果たす。
【0155】
他の実施形態では、本明細書に記載されたマルチキャップリザーバシステムおよび装置が、他のさまざまな装置に組み込まれる。例えば、気密封止されたリザーバを、米国特許出願公開第2002/0111601号に記載されたカテーテル、電極などの他のタイプおよび設計の埋込み可能医療装置に一体化することができる。他の例では、気密封止されたリザーバを他の医療装置に組み込みことができ、この装置の中で、本発明の装置およびシステムは、例えば米国特許第6,491,666号に示されているように、キャリヤ流体中に薬物を放出し、キャリヤ流体は次いで所望の投与部位まで流れる。気密封止されたリザーバは、薬ポンプ、吸入器または他の肺薬物送達装置に組み込むこともできる。
【0156】
本明細書に記載された封止された装置はさらに、数多くのin vitroおよび商業的診断応用を有する。この装置は、正確に計量された分子を送達することができ、したがって分析化学および医療診断などのin vitroでの応用、ならびに細胞培養への諸因子の送達などの生物応用に対して有用である。他の非医療応用では、この装置が、芳香剤、染料または他の有用な化学物質の放出を制御するために使用される。
【0157】
他の応用は、全て参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,797,898号、6,527,762号、6,491,666号および6,551,838号、ならびに米国特許出願公開第2002/0183721号、2003/0100865号、2002/0099359号、2004/0082937号、2004/0127942号、2004/0121486号、2004/0106914号、および2004/0106953号に記載されている。
【0158】
本発明の実施形態は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解することができる。
【0159】
(実施例1)
タングアンドグルーブハーメチックシール
タングアンドグルーブジョイント設計を使用してハーメチックシールを形成した。このシールは冷間圧接プロセスによって形成した。図3にこのシールの走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。基材は、ケイ素(上)およびアルミナ(下)である。金属は金である(ケイ素上にはスパッタリングし、アルミナ上にはスパッタリングし次いで電気めっきした)。これらの部品を、FC−150フリップチップアライナ上で結合した。この装置は、x、y、zならびにピッチ、ロール、およびヨーの正確なアライメントを提供する機械である。これらの部品を整列させた後、FC−150によってこれらの部分を互いに圧縮し、冷間圧接結合を形成した。
【0160】
(実施例2)
気密性に対するフィーチャサイズおよび金属厚さの変動の影響
さまざまなフィーチャサイズおよび金属層厚を用いて、いくつかの異なるジョイント設計を製作した。これらのジョイントを冷間圧接し、封止されたジョイントの漏れを、部品の幾何形状に応じて染料浸透試験またはHe漏れ検出器を使用して、試験した。下表1に示すように、試験範囲全体にわたって、シールの完全性は、フィーチャサイズおよび金の金属層厚から独立していることが分かった。漏れ検出器の下限未満の、すなわち5e−11atm*cc/秒未満の検出不能の漏れ量で漏れている可能性がある。
【表1】

【0161】
(実施例3)
シールフィーチャを個々に有するマイクロファブリケーションキャビティのアレイ
相補的なキャビティおよび冷間圧接用のシールフィーチャを有する2つのケイ素基材を提供した。これらのシールフィーチャは、一方の基材上/中にマイクロファブリケーションによって形成されたリッジ、およびもう一方の基材上/中にマイクロファブリケーションによって形成された整合するグルーブを含む。それぞれのグルーブの内側およびそれぞれのリッジの内側に、浅い幅広のキャビティを形成した。図27A〜Bに、その結果得られた基材およびシールフィーチャを示す。
【0162】
本明細書で引用した文献は参照によって本明細書に組み込まれる。以上の詳細な説明から、当業者には、本明細書に記載された方法および装置の修正および変更が明らかである。このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】冷間圧接プロセスによって形成されたハーメチックシールを提供するタングアンドグルーブジョイント構造設計を有するシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図2】ハーメチックシールを提供するタングアンドグルーブジョイント構造設計を有するハーメチックシールシステムの他の実施形態の断面図である。左図は冷間圧接プロセス前の構造を示し、右図は冷間圧接プロセス後の形成されたシールを示す。
【図3】図2に示されたシール設計および冷間圧接プロセスを使用して形成されたハーメチックシールの断面を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図4】それぞれのジョイント構造に単一の冷間圧接剪断層を有するジョイント構造設計を有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図5】ジョイント構造間に冷間圧接することができる金属プリフォームを有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図6】ジョイント構造間に冷間圧接することができる金属プリフォームを有するハーメチックシールシステムの他の実施形態の断面図である。
【図7】ジョイント構造の基部の幾何形状の5つの異なる実施形態の平面図である。
【図8】ハーメチックシールを形成するために冷間圧接において使用することができるジョイント構造設計の6つの異なる実施形態の平面図および断面図である。
【図9】図8に示されたジョイント構造設計のさまざまな組合せによって形成されたハーメチックシールシステムの4つの実施形態の断面図である。
【図10】タングアンドグルーブジョイント構造設計を有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図および拡大断面図である。
【図11】ヒータとヒータ上の中間層とを有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図12】基材材料を含むジョイント構造コア上のマイクロヒータとマイクロヒータ上の中間層とを含む、ハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図13】接合面材料と直接に接触したマイクロヒータを有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図14】基材材料を含むジョイント構造コア上にあって、接合面材料と直接に接触したマイクロヒータを有する、ハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図15】ニチノールクランプを有するハーメチックシールシステムの一実施形態の透視図である。
【図16】図16A〜Cは、はんだクランプを有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図であり、組立てステップを示す図である。
【図17】冷間圧接クランプおよび圧縮シール材料を有するハーメチックシールシステムの一実施形態の断面図である。
【図18】タングアンドグルーブジョイント設計を用いた冷間圧接を使用してそれぞれ個別に気密封止されたリザーバのアレイを含む装置の一実施形態の断面図である。その中にリザーバが画成された装置のボディは、やはりタングアンドグルーブジョイント設計を用いた冷間圧接プロセスを使用して気密封止された2つの基材部分を含む。
【図19】リザーバのアレイを含み、冷間圧接プロセスを使用してリザーバを個別に気密封止するためのジョイント設計を有する、装置の一実施形態の透視図である。
【図20】金属接合面によってめっきされたさまざまなポリマージョイント構造を有するハーメチックシールシステムの3つの実施形態の断面図である。
【図21】マルチリザーバ封じ込め装置の一実施形態の断面図であり、冷間圧接プロセスによるリザーバの気密封止を示す図である。
【図22】圧縮結合力が加わらない中間基材を保護するために、結合された「サンドイッチ」構造を使用した、封止された構造の一実施形態の断面図である。
【図23】本明細書に記載された冷間圧接によって電気バイア接続を形成するための結合前の諸部品の一実施形態の断面図である。
【図24】図24A〜Bは、本明細書に記載された冷間圧接によって形成された電気ワイヤ接続の透視図である。図24Aは接続前の部品を示し、図24Bは、接続されたアセンブリを示す。
【図25】冷間圧接によって電気バイア接続を形成するための結合前の諸部品の一実施形態の透視断面図である。
【図26】冷間圧接によって形成された電気バイア接続の一実施形態の透視図である。この図は、開口と歯の間の材料オーバラップを示している。
【図27】図27A〜Bは、マイクロファブリケーションによって形成された冷間圧接用のシールフィーチャを有する2つのケイ素基材の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの基材を合わせて気密封止する方法であって、
第1の金属を含む第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供すること、
第2の金属を含む第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供すること、および
前記接合面を、1つまたは複数の界面で、前記接合面の前記第1の金属と前記第2の金属の間に金属−金属結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮すること
を含む方法。
【請求項2】
前記圧縮ステップの前に、前記少なくとも1つの第2のジョイント構造の上に前記少なくとも1つの第1のジョイント構造の1つまたは複数のオーバラップ部分を与えるように、前記少なくとも1つの第2のジョイント構造の上に前記少なくとも1つの第1のジョイント構造を整列させることをさらに含み、
前記1つまたは複数のオーバラップ部分が、前記圧縮ステップ中に、前記接合面の前記1つまたは複数の界面を形成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のオーバラップ部分が、表面汚染物を置換し、前記接合面間の密接を入熱なしに促進するのに有効である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1のジョイント構造が少なくとも1つのタング構造を含み、前記少なくとも1つの第2のジョイント構造が少なくとも1つのグルーブ構造を含み、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮することが、前記少なくとも1つのタング構造を前記少なくとも1つのグルーブ構造の中に少なくとも部分的に圧入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのタング構造が、1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のタング高さおよび1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のタング幅を有し、前記少なくとも1つのグルーブ構造が、1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のグルーブ深さおよび1ミクロンから100ミクロンまで範囲のグルーブ幅を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の金属または前記第2の金属あるいはその両方が金または白金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の金属または前記第2の金属あるいはその両方が、金、インジウム、アルミニウム、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、カドミウム、チタン、タングステン、スズおよびこれらの組合せからなるグループから選択された金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の金属と前記第2の金属が異なる金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の基材または前記第2の基材あるいはその両方が、ケイ素、ガラス、セラミック、ポリマー、金属およびこれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造あるいはその両方が、金属、セラミック、ガラス、ケイ素およびこれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造あるいはその両方が、インジウム、アルミニウム、金、クロム、白金、銅、ニッケル、スズ、これらの合金、およびこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1のジョイント構造が、前もって形成された少なくとも1つの構造体を前記第1の基材に結合することによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の接合面が、電気めっきプロセス、蒸着、化学蒸着プロセス、スパッタリング、電子ビーム蒸着またはウェットエッチングプロセスによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の基材と前記第2の基材の間に1つまたは複数のプリフォームを提供することをさらに含み、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮する前記ステップが、さらに、前記基材または前記接合面とのプリフォーム界面で、前記1つまたは複数のプリフォームを変形させ、剪断することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記プリフォームが、金属、ポリマーまたは金属被覆されたポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のジョイント構造および第1の接合面が、前記第1の基材の表面の少なくとも一部分を被覆する金属の層である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の界面で前記接合面を加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記圧縮ステップと前記加熱ステップが実質的に同時に実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接合面の前記加熱がマイクロヒータを用いて実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記接合面の、前記1つまたは複数の界面に、超音波エネルギーを加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の基材と前記第2の基材とを合わせて締め付け、またははんだ付けすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記結合された基材が、その中に画成された少なくとも1つのキャビティを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも第1の基材が、リザーバ内容物を含む別個の複数のリザーバを含み、前記リザーバがそれぞれ、互いからおよび外部環境から気密封止される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記リザーバ内容物がバイオセンサまたは他の2次装置を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リザーバ内容物が薬物製剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記リザーバ内容物が、芳香または香気化合物、染料または他の着色剤、甘味料、あるいは矯味矯臭剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記変形が真空下で実施される、または、大気中で実施された場合に起こるであろう前記ジョイント構造の酸化に比べて前記ジョイント構造の酸化を低減させるのに有効な不活性ガス雰囲気で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の基材がキャビティを含み、前記第1のジョイント構造と前記第2のジョイント構造とが合わせて圧縮される前に前記キャビティの中に第3の基材が配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記第3の基材が、センサ、MEMS装置またはこれらの組合せを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも2つの基材を合わせて気密封止する方法であって、
金属の薄層で金属被覆された第1のコンプライアントポリマーを含む第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を有する第1の基材を提供すること、
金属の薄層で金属被覆された第2のコンプライアントポリマーを含む第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材を提供すること、
前記接合面を、1つまたは複数の界面で、前記第1の接合面と前記第2の接合面の間に結合を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させるために、前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とを合わせて圧縮すること
を含む方法。
【請求項31】
金属被覆された前記第1のポリマーの前記金属層または金属被覆された前記第2のポリマーの前記金属層、あるいはその両方が、金、白金またはこれらの組合せを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項32】
前面と背面とを有する第1の基材であって、第1の金属である第1の接合面を含む少なくとも1つの第1のジョイント構造を含む第1の基材と、
第2の金属である第2の接合面を含む少なくとも1つの第2のジョイント構造を有する第2の基材と、
前記第1の基材と前記第2の基材の間に形成された、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合するハーメチックシールであって、前記第1の接合面と前記第2の接合面とを1つまたは複数の界面で冷間圧接することによって作製されたハーメチックシールと、
前記第1の基材と前記第2の基材の間の前記ハーメチックシールの内側に、外部環境から気密封止されるように画成された少なくとも1つの封じ込め空間と
を含む封じ込め装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの封じ込め空間が、前記少なくとも第1の基材の中に、前記前面と前記背面の間に配置された別個の複数のリザーバを含む、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つの封じ込め空間が、センサ、MEMS装置またはこれらの組合せを含む、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記少なくとも1つの封じ込め空間が薬物製剤を含む、請求項32に記載の装置。
【請求項36】
前記接合面が、入熱なしで形成された金属−金属結合によって互いに接合された、請求項32に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも1つの第1のジョイント構造と前記少なくとも1つの第2のジョイント構造とがタングアンドグルーブジョイントを含む、請求項32に記載の装置。
【請求項38】
前記第1の金属または前記第2の金属あるいはその両方の金属が、金、白金またはこれらの組合せを含む、請求項32に記載の装置。
【請求項39】
前記基材が、ケイ素、金属、セラミック、ポリマー、ガラスおよびこれらの組合せからなるグループから選択された材料を含む、請求項32に記載の装置。
【請求項40】
前記第1のジョイント構造と前記第2のジョイント構造の間でプリフォーム構造が変形した、請求項32に記載の装置。
【請求項41】
前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造がマイクロヒータを含む、請求項32に記載の装置。
【請求項42】
前記マイクロヒータに隣接した中間層をさらに含む、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記第1のジョイント構造または前記第2のジョイント構造が、外部誘導ヒータを介して前記構造を加熱するのに有効な磁性材料を含む、請求項41に記載の装置。
【請求項44】
前記基材を互いに接合するためのクランプをさらに含む、請求項32に記載の装置。
【請求項45】
前記第1の基材と前記第2の基材とを合わせて固定するはんだ材料をさらに含む、請求項32に記載の装置。
【請求項46】
前記第1の基材が、前記少なくとも1つの封じ込め空間と連通した別個の複数の開口をさらに含み、前記開口が、別個の複数のリザーバキャップによって閉じられた、請求項32に記載の装置。
【請求項47】
前記リザーバキャップが金属フィルムを含み、前記装置が、前記リザーバキャップを選択的に崩壊させる手段を含む、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
気密封止されたリザーバ内に位置する内容物の制御された露出または放出のための埋込み可能な医療装置であって、
第1の基材と、
前記第1の基材内に配置され、第1の開口と、前記第1の開口の遠位側にある第2の開口とを有する、別個の複数のリザーバと、
前記リザーバ内に位置し、薬物またはバイオセンサを含むリザーバ内容物と、
前記第1の開口を閉じる別個の複数のリザーバキャップと、
前記リザーバキャップを選択的に崩壊させる手段と、
第2の基材と、前記第2の開口を密閉する、冷間圧接によって作製されたハーメチックジョイントと
を含む装置。
【請求項49】
前記ハーメチックジョイントがタングアンドグルーブ界面を含む、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
電気バイア接続を形成する方法であって、
貫通する開口を有する第1の非導電性基材であって、前記開口を画成する前記第1の基材の内面が第1の導電材料の層を含む第1の非導電性基材を提供すること、
第2の導電材料から形成されたまたは第2の導電材料で被覆された突出部材が表面から延出した第2の非導電性基材を提供すること、ならびに
前記第1および/または第2の導電層を、前記第1の導電層と前記第2の導電層の間に結合および電気的接続を形成するのに有効な量だけ、局所的に変形させ、剪断するために、前記第2の基材の前記突出部材を前記第1の基材の前記開口に圧入すること
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2008−518790(P2008−518790A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540081(P2007−540081)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/040049
【国際公開番号】WO2006/052763
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(501228004)マイクロチップス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】