冷間圧接治具、冷間圧接システム、及び冷間圧接方法
【課題】金属線材の長手方向と直交する直交方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材の端部同士を圧接することができる冷間圧接治具、冷間圧接システム、および冷間圧接方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1Vブロック2A、第2Vブロック2BをY方向において互いに接近方向に移動させる第1Y方向駆動部5A,5Bを備え、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B及びダイス片32A,32Bには、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力Fから、ダイス片32A,32BをX方向に押圧して、金属線材Wを挟持させるための第1分力Fxと、ダイス片32A,32BをY方向に移動させて、対向する金属線材Wの端部同士を圧接するための第2分力Fyとを発生させる傾斜面2a,2b、傾斜面32a,32bを形成した。
【解決手段】第1Vブロック2A、第2Vブロック2BをY方向において互いに接近方向に移動させる第1Y方向駆動部5A,5Bを備え、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B及びダイス片32A,32Bには、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力Fから、ダイス片32A,32BをX方向に押圧して、金属線材Wを挟持させるための第1分力Fxと、ダイス片32A,32BをY方向に移動させて、対向する金属線材Wの端部同士を圧接するための第2分力Fyとを発生させる傾斜面2a,2b、傾斜面32a,32bを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の移動ブロックと、該移動ブロックの間に配置した複数のダイス片からなるダイスとを備えた冷間圧接治具、冷間圧接システム、及び冷間圧接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の金属性導体(金属線材)同士を、金属の再結晶温度以下にて圧接する技術が知られており、下記特許文献1では、金属線材の冷間圧接を行なうための治具(工具)が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された冷間圧接治具(工具)では、本体に固定した固定Vブロックと、該固定Vブロックに対して金属線材の長手方向(延び方向)と直交する直交方向に移動可能な移動Vブロックとを対向して配置すると共に、これら両Vブロックの間には、冷間圧接の対象となる金属線材を挟むように配置した複数(4つ)のダイス片からなるダイスを設けている。
【0004】
また、両Vブロック及び各ダイス片には、両者が対向する部位において、前記直交方向に対して傾斜する傾斜面(摺動面)を形成している。このため、前記直交方向において移動Vブロックを固定Vブロックに向かって移動させた時には、この移動に伴って発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させることができるようになっている。
【0005】
このように、前記直交方向において、移動Vブロックを固定Vブロックに向かって移動させることにより、先ずは、ダイス片が前記第1分力によって前記直交方向に移動し、金属線材を挟持する。その後、さらに前記押圧力を作用させると、金属線材の挟持力に対する反力と、ダイス片の傾斜面を押圧する押圧力との合力が、傾斜面同士の摩擦力を超えるまで前記挟持力は増大することになる。
【0006】
そして、さらに前記押圧力を作用させ、前記合力が傾斜面同士の摩擦力を超えると、傾斜面においてダイス片がVブロック対して相対移動(摺動)を開始する。そして、ダイス片は、この摺動によって前記長手方向に移動することができ、このダイス片の移動によって挟持している前記金属線材の端部同士を圧接する。
【0007】
下記特許文献1に開示された冷間圧接治具では、移動Vブロックが固定Vブロックに対して前記直交方向に移動可能となっており、これによって、ダイス片が金属線材を挟持する際には、極めて高い挟持力を発生させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−128561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1の場合、移動Vブロックの移動ストロークを確保するために、冷間圧接治具周辺では、前記直交方向において大きなスペースが必要になるという問題があった。
【0010】
一般的に、上述したような冷間圧接治具を備えた製造施設では、複数本の金属線材を同時に圧接処理するために、冷間圧接治具が前記直交方向に複数並設されており、特に、製造施設内において設置スペースに制約がある場合には、冷間圧接治具同士を狭ピッチで配置することが求められる。
【0011】
このため、移動Vブロックを前記直交方向に移動させるような構成にすると、移動Vブロックと隣接する金属線材等との干渉を招く虞があることから、多数の冷間圧接治具を設置できなくなってしまう。
【0012】
この発明は、金属線材の長手方向と直交する直交方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材の端部同士を圧接することができる冷間圧接治具、冷間圧接システム、および冷間圧接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の冷間圧接治具は、金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックと、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に移動可能な複数のダイス片を、前記移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置したダイスとを備えた冷間圧接治具であって、前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させる圧接駆動手段を備え、前記移動ブロック及び前記ダイス片には、互いに対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜すると共に、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、対向する前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させる傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明の態様として、前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間には、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を相殺して、前記第1分力を前記ダイス片に伝達する中間部材を設け、該中間部材には、前記移動ブロックの傾斜面と対向する部位に第1摺動面を形成すると共に、前記ダイス片の傾斜面に対向する部位に第2摺動面を形成した構成とすることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部よりも内側部を肉厚に設定した構成とすることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも小さく設定した構成とすることができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記中間部材を、前記外側部から内側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部に、前記ダイス片の前記離反方向への移動を規制する移動規制部を備えた構成とすることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記中間部材において、前記外側部を内側部よりも肉厚に設定し、前記移動規制部を、肉厚の前記外側部により構成することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも大きく設定した構成とすることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記中間部材を、前記内側部から外側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを互いに離反する離反方向に移動させる構成とすると共に、前記移動ブロックの前記離反方向への移動に伴い、該移動ブロックと前記ダイス片とを互いに離反させる離反手段を設けた構成とすることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを前記長手方向に移動させ、前記金属線材の圧接部位に形成されたバリを前記ダイス片により除去させるバリ取り駆動手段を備えた構成とすることができる。
【0024】
またこの発明は、上述の冷間圧接治具を、前記直交方向に並設した冷間圧接システムであることを特徴とする。
【0025】
またこの発明は、金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックの移動により、該移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置した複数のダイス片を、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に押圧し、前記金属線材を前記ダイス片で挟持しながら、対向する前記金属線材の端部同士を圧接する冷間圧接方法であって、圧接駆動手段により、前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させると共に、前記移動ブロック及び前記ダイス片とが対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜するように形成した傾斜面により、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させることを特徴とする。
【0026】
この発明の態様として、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い前記押圧力が発生した時、前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間に設けた中間部材の第1摺動面に対し前記押圧力を作用させ、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を前記中間部材で相殺することにより、前記第1分力を前記ダイス片に伝達し、該ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させると共に、前記押圧力をさらに作用させ、前記ダイス片の傾斜面を前記中間部材の第2摺動面に対して摺動させつつ、前記移動ブロックの傾斜面を前記中間部材の第1摺動面に対して摺動させることにより、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、金属線材の長手方向と直交する直交方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材の端部同士を圧接することができる冷間圧接治具、冷間圧接システム、および冷間圧接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の第1実施形態に係る冷間圧接治具により構成される冷間圧接システムの正面図。
【図2】第1実施形態に係る冷間圧接治具の概略斜視図。
【図3】第1実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図4】金属線材の端部同士の圧接方法を説明するための説明図。
【図5】金属線材同士の圧接後のバリ取り方法を説明するための説明図。
【図6】第2実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図7】金属線材の端部同士の圧接方法を説明するための説明図。
【図8】第3実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図9】第3実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図10】第4実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図11】第5実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図12】第5実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図13】第6実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図14】第7実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る冷間圧接治具1は、図1乃至図5に示すように、金属線材Wの長手方向において対向するように配置した複数の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bと、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に移動可能な複数のダイス片32A,32Bを、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの間において金属線材Wを挟むように配置したダイス3とを備えると共に、複数の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させる第1Y方向駆動部5A,5Bを備え、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B及びダイス片32A,32Bには、互いに対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜すると共に、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力Fから、前記ダイス片32A,32Bを前記直交方向に押圧して、金属線材Wを挟持させるための第1分力Fxと、ダイス片32A,32Bを前記長手方向に移動させて、対向する金属線材Wの端部同士を圧接するための第2分力Fyとを発生させる傾斜面2a,2b、及び傾斜面32a,32bを形成している。
また、冷間圧接治具1を前記直交方向に並設した冷間圧接システムSとしている。
【0030】
上述する冷間圧接装置1、および冷間圧接システムSの構成について、図1乃至5とともに詳述する。
なお、図1は、冷間圧接システムSを示す正面図であり、図2は、冷間圧接治具1を示す概略斜視図、図3は、同正面図である。また、図4は、金属線材Wの端部同士の圧接方法を説明するための説明図であり、図5は、金属線材W同士の圧接後のバリ取り方法を説明するための説明図である。
【0031】
冷間圧接治具1は、例えば、銅、またはその合金等からなる金属線材Wの端部同士を圧接すると共に、圧接部位の外周部分に生じた鍔状のバリを除去するいわゆるバリ取りを行なう装置である。
【0032】
図1に示す冷間圧接システムSを構成する冷間圧接治具1は、図2、図3に示すように、第1Vブロック2A、第2ブロック2Bと、金属線材Wの挿入を許容するダイス孔31を形成する4つのダイス片32A、32Bからなるダイス3とを備えると共に、第1、第2Vブロック2A,2Bを金属線材Wの長手方向(図1中のY方向)に移動させる圧接駆動手段としての第1Y方向駆動部5A,5Bと、Y方向移動台6A,6Bと、Y方向駆動伝達部7A,7Bと、該Y方向駆動伝達部7A,7Bを介してY方向移動台6A,6Bを移動させるバリ取り駆動手段としての第2Y方向駆動部8A,8Bと、線材支持台9と、フィンガ10A,10Bと、ダイス片32A,32A同士、ダイス片32B,32B同士のY方向における位置を規制するためのバネ11A,11B及びピン12A,12B(図3参照)とを備えている。
【0033】
そして、図1に示す冷間圧接システムSでは、冷間圧接の対象となる金属線材Wが上下方向に延びた状態となるように(図中のY方向が上下方向となるように)、上述した冷間圧接治具1を配置すると共に、この冷間圧接治具1を、Y方向と直交するX方向に複数並設している。
【0034】
また、冷間圧接システムSでは、冷間圧接治具1,1,…の配置が、X方向及びY方向と直交する方向(図1の紙面表裏方向)において交互にずれたいわゆる千鳥配置となっており、隣接する冷間圧接治具1,1,…同士が一部正面視で重複するような位置関係となっている。これにより、冷間圧接システムSでは、冷間圧接治具1,1,…の並設方向(X方向)における省スペース化を図っている。
【0035】
ところで、冷間圧接治具1では、同型の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを2つずつ備えており、それぞれをY方向において対向するように配置すると共に、このようにして対向配置した第1Vブロック2A、第2ブロック2Bを、金属線材Wを挟むようにして対向配置している(金属線材Wを対称軸として対称に配置している)。
【0036】
また、冷間圧接治具1では、ダイス3を構成する同型の4つのダイス片32A,32Bを、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの間に配置している。そして、2つの第1Vブロック2Aの間に配置した2つのダイス片32A,32Aを、Y方向において対向するように配置すると共に、2つの第2Vブロック2Bの間に配置した2つのダイス片32B,32Bを、Y方向において対向するように配置しており、2つのダイス片32Aと、2つのダイス片32Bとを、金属線材Wを挟むようにして対向配置している。
【0037】
また、第1Vブロック2A及びダイス片32Aには、両者が対向する部位において、Y方向に対して傾斜する傾斜面2a、32aを形成している。そして、これら傾斜面2a、32aには、面接触の状態で相対的に摺動することが可能になっている。
【0038】
また、第2Vブロック2B及びダイス片32Bは、両者が対向する部位において、Y方向に対して傾斜する傾斜面2b、32bを形成しており、これら傾斜面2b、32bは、面接触の状態で相対的に摺動することが可能になっている。
【0039】
また、冷間圧接治具1では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bやダイス片32A,32Bと同様、それぞれ同型の第1Y方向駆動部5A,5B、Y方向移動台6A,6B、Y方向駆動伝達部7A,7B、第2Y方向駆動部8A,8B、フィンガ10A,10B、バネ11A,11B及びピン12A,12Bを、金属線材Wを挟むように対向配置している。
【0040】
このうち、第1Y方向駆動部5A,5Bは、それぞれ第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bに対応して配置されており、Y方向に延びる螺子軸13を介してそれぞれ対応する第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bに接続されている。
【0041】
ここで、第1Y方向駆動部5A,5Bは、駆動力伝達手段としての螺子軸13を回転駆動させるものであり、この螺子軸13の正逆回転駆動により、第1Vブロック2A、第2Vブロック2BをY方向において往復移動させることができるようになっている。
【0042】
なお、本実施形態では、2つの第1Vブロック2A及び2つの第2Vブロック2Bのそれぞれに対応して第1Y方向駆動部5A,5Bを設けることとしたが、2つの第1Vブロック2Aに共通する単一の第1Y方向駆動部、及び2つの第2Vブロック2Bに共通する単一の第1Y方向駆動部を備え、無端ベルト等の適宜の駆動力伝達手段によって、対向するVブロック同士を接近、離反させるように構成してもよい。
【0043】
また、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを移動させるための駆動力伝達手段として螺子軸13を用いたが、この他にも、例えば、直動ガイド(リニアガイド)、カム機構、又はラックとピニオン等の適宜の駆動力伝達手段を用いることができる。
【0044】
Y方向移動台6A,6Bは、Y方向駆動伝達部7A,7Bに対してY方向へ移動可能に設けられており、Y方向駆動伝達部7A,7Bは、Y方向移動台6A,6BをY方向に移動させるために備えた第2Y方向駆動部8A,8Bの駆動力をY方向移動台6A,6Bに伝達する駆動力伝達手段として機能する。
【0045】
線材支持台9は、金属線材Wを支持すべく縦長の板状をなしており、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bやダイス片32A,32Bの底面側においてY方向に延設されている。
【0046】
線材支持台9上では、フィンガ10A,10Bを、ダイス3に対しY方向の両外側に枢着しており、フィンガ10A,10Bは、線材支持台9上での回動によりダイス孔31に挿入した金属線材Wを保持、開放することができるようになっている。
【0047】
次に、図4、図5をさらに参照して、冷間圧接装置1を用いた金属線材W同士の圧接及びバリ取りの手順について説明する。
金属線材W同士を圧接するにあたっては、先ず、フィンガ10A,10Bを開放状態とし、2本の金属線材Wの端部を、Y方向の両側から、4つのダイス片32A,32Bにより形成したダイス孔31へ挿入する。これにより、図4(a)に示すように、ダイス孔31の中間部分において金属線材Wの端部同士が軽く突き合わされた状態となる。
【0048】
次に、第1Y方向駆動部5A,5Bを作動させ、螺子軸13を回転駆動させることにより、第1Vブロック2A,2A、及び対向する第2Vブロック2B,2Bを、Y方向において互いに接近する接近方向に移動させる。
【0049】
この第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動により、図4(b)に示すように、対向するダイス片32A,32A及び対向するダイス片32B,32Bが互いに面接触するまでこれらをY方向に移動させることができる。
【0050】
ここで、上述したように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B、及びダイス片32A,32Bは、それぞれ傾斜面2a,2b、傾斜面32a,32bを形成しているが、これら傾斜面2a,2b、傾斜面32a,32bにより、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記接近方向に移動させた時には、図4(b)に示すように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動に伴い発生する押圧力Fから、ダイス片32A,32BをX方向に押圧して、金属線材Wを挟持させるための挟持力に寄与する第1分力Fxと、ダイス片32A,32BをY方向に移動させて、対向する金属線材Wの端部同士を圧接するための圧接力に寄与する第2分力Fyとを発生させることができるようになっている。
【0051】
このため、ダイス片32A,32Bは、第1分力Fxの作用による挟持力によって金属線材Wを挟持しながら、第2分力Fyの作用による圧接力によって互いに接近する接近方向へ移動することができる(図4(b)参照)。冷間圧接治具1では、このようにしてダイス片32A,32Bを接近方向へ移動させる動作を複数回(例えば、5回程度)繰り返すことにより、金属線材Wの端部同士を圧接する。
【0052】
ところで、金属線材Wの端部同士を圧接した後には、一般的に、図4(c)に示すように、圧接部位Weの外周部分において鍔状に突出したバリαが発生する。なお、図4(c)は、図4(b)の領域Z1部の拡大図である。そこで、図5(a)に示すように、ダイス片32A,32Bによって金属線材Wを挟持した状態で第2Y方向駆動部8A,8Bを作動させ、Y方向駆動伝達部7A,7Bを介してY方向移動台6A,6BをY方向に移動させる。
【0053】
ここで、本実施形態では、図5(a)に示すように、Y方向移動台6A,6BをY方向に移動させる際、これらをY方向において互いに反対方向(図5(a)中矢印で示す方向D1,D2参照)に相対移動させる。
【0054】
そして、このY方向移動台6Aの移動に伴って、第1Vブロック2Aとダイス片32Aとが方向D1に一体的に移動する一方、第2Vブロック2Bとダイス片32Bとが方向D2に一体的に移動する。
【0055】
これら第1Vブロック2A、第1Vブロック2Bとダイス片32A、32Bとの一体的な移動により、図5(a)に示すように、2つのダイス片32A,32Aのうちの一方のダイス片32Aと、2つのダイス片32Bのうちの一方のダイス片32Bとがバリαに接触し、該バリαを除去することができる。なお、図5(b)は、図5(a)の領域Z2部の拡大図を示す。
【0056】
このようにして、バリαを除去した後は、第2Y方向駆動部8A,8Bを作動させ、Y方向駆動伝達部7A,7Bを介してY方向移動台6A,6BをY方向の元の位置に戻す。そして、第1Y方向駆動部5A,5Bを作動させ、第1Vブロック2A,2A及び第2Vブロック2B,2Bを接近する方向に移動させる場合と逆の方向に螺子軸13を回転駆動させることで、第1Vブロック2A,2A、及び第2Vブロック2B,2Bを互いに離反する離反方向に移動させる。
【0057】
この時、ダイス片32A,32Bは、バネ11A,11Bの弾性力によって離反方向に移動しつつ、ダイス片32A,32Bの挟持力は減少するようになっている。このため、金属線材Wがダイス片32A,32Bによって挟持されている状態を解除することができ、金属線材Wをダイス孔13から取り出すことが可能になる。これによって、冷間圧接治具1は、次の金属線材W同士の圧接に備えることができる。
【0058】
このように、本実施形態では、第1Vブロック2A、及び第2Vブロック2Bの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力Fから、傾斜面2a,2b、及び傾斜面32a,32bによって第1分力Fx、第2分力Fyを発生させることにより、第1Vブロック2A、第2Vブロック2BをX方向に移動させることなく、ダイス片32A,32Bで金属線材Wを挟持しながら、その端部同士を圧接することができる。この場合、冷間圧接治具1では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動ストロークをX方向にて確保する必要がないため、X方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材Wの端部同士を圧接することができる。
【0059】
また、図1に示すように、冷間圧接治具1をX方向に並設した冷間圧接システムSでは、製造施設内において設置スペースに制約があったとしても、隣接する金属線材Wと干渉することなく、多数の冷間圧接治具1を設置することができる。
【0060】
(第2実施形態)
以下に、図6、図7を参照して本発明の第2実施形態に係る冷間圧接治具50について詳細に説明する。なお、図6、図7において、図1乃至図5に示す第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図6は、冷間圧接治具50を示す正面図であり、図7は、金属線材Wの端部同士の圧接方法を説明するための説明図である。
【0061】
本発明の第2実施形態に係る冷間圧接治具50は、図6、図7に示すように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの傾斜面2a,2bとダイス片32A,32Bの傾斜面32a、32bとの間に、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力Fyを相殺して、第1分力Fxをダイス片32A,32Bに伝達する中間部材51A,51Bを設け、該中間部材51A,51Bには、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの傾斜面2a,2bと対向する部位に第1摺動面51c,51gを形成すると共に、ダイス片32A,32Bの傾斜面32a、32bに対向する部位に第2摺動面51d,51hを形成している。
【0062】
本実施形態に係る冷間圧接治具50では、第1Vブロック2Aの傾斜面2aとダイス片32Aの傾斜面32aとの間、及び第1Vブロック2Bの傾斜面2bとダイス片32Bの傾斜面32bとの間に、板状をなす同型の中間部材51A,51Bを合計4枚配置している。
【0063】
また、冷間圧接治具50では、2枚の中間部材51A,51A、及び2枚の中間部材51B,51Bを、Y方向においてそれぞれ対向するように配置すると共に、中間部材51Aと中間部材51Bとを、金属線材Wを挟むようにして対向配置している。
【0064】
そして、中間部材51A,51Aでは、前記接近方向を指向する内側端部(内側部)51aと、第1Vブロック2Aの接近方向と反対の方向を指向する外側端部(外側部)51bとを有しており、このうち、内側端部51aでは、その端面同士を突き合わせた状態で面接触させている。
【0065】
また、中間部材51A,51Aには、第1Vブロックの傾斜面2aと対向する部位に第1摺動面51cを形成すると共に、ダイス片32Aの傾斜面32aに対向する部位に第2摺動面51dを形成しており、各摺動面51c,51dは、それぞれ傾斜面2a,32aに対して相対的に摺動可能となっている。
【0066】
また、中間部材51B,51Bでは、中間部材51A,51Aと同様、前記接近方向を指向する内側端部51eと、第2Vブロック2Bの接近方向と反対の方向を指向する外側端部51fとを有しており、このうち、内側端部51eでは、その端面同士を突き合わせた状態で面接触させている。
【0067】
また、中間部材51B,51Bには、第2Vブロックの傾斜面2bと対向する部位に第1摺動面51gを形成すると共に、ダイス片32Aの傾斜面32bに対向する部位に第2摺動面51hを形成しており、各摺動面51g,51hは、それぞれ傾斜面2b,32bに対して相対的に摺動可能となっている。
【0068】
本実施形態では、第1Y方向駆動部5A,5Bの作動によって、第1Vブロック2A,2A、及び第2Vブロック2B,2Bを互いに接近方向に移動させると、第1実施形態と同様、図7(b)に示すように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動に伴って押圧力Fが発生するが、この押圧力Fにより発生する第1分力Fx、第2分力Fyは、中間部材51A,51Bに作用することになる。
【0069】
ここで、第1Y方向駆動部5A,5Bが同じ大きさの駆動力を出力する場合を考えてみる。この場合、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B、及びダイス片32A,32Bが同型であることにより、Y方向において反対方向に発生する押圧力Fの大きさは同じとなり、その結果、Y方向において互いに反対方向に発生する第2分力Fyの大きさも同じとなる。
【0070】
本実施形態では、Y方向において互いに反対方向に発生する同じ大きさの第2分力Fyが中間部材51A,51A、及び中間部材51B,51Bに作用すると、上述したようにY方向において対向する中間部材51A,51A、及び中間部材51B,51Bの内側端部51a,51eの端面同士が面接触していることにより、第2分力Fyは、中間部材51A,51Bにて相殺され、ダイス片32A,32Bには、第1分力Fxのみが伝達される。
【0071】
このため、第1Y方向駆動部5A,5Bを作動させた直後では、金属線材Wを挟持するための挟持力が第1分力Fxによって増大するのみとなり、ダイス片32A,32Bの接近方向への移動は、中間部材51A,51Bによって規制されることになる。
【0072】
その後、さらに押圧力Fを作用させると、金属線材Wの挟持力に対する反力Fa(図7(b)参照)と、第1分力Fxの伝達に伴い第2摺動面51d,51hが傾斜面32a,32bを押圧する押圧力Fb(図7(b)参照)との合力Fc(図7(b)参照)が、第1摺動面51d,51hと傾斜面32a,32bとの間の摩擦力を超えるまで前記挟持力は増大することになる。
【0073】
そして、さらに押圧力Fを作用させ、前記合力Fcが前記摩擦力を超えると、図7(b)に示すように、ダイス片32A,32Bが第2摺動面51d,51hに対して摺動を開始すると共に、第1Vブロック2A,2Bの傾斜面2a,2bが、第1摺動面51c,51gに対して摺動する。これにより、ダイス片32A,32Bは、Y方向において接近方向に移動することができ、この時、冷間圧接治具50では、大きな挟持力で金属線材Wを挟持しながら、その端部同士を圧接することができる。
【0074】
ところで、上述した第1実施形態では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記接近方向に移動させると、この第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動につられて対応するダイス片32A,32Bも一体的に前記接近方向に移動する可能性がある。このため、傾斜面2a,2b及び傾斜面32a,32bによって第1分力Fxを発生させたとしても、ダイス片32A,32Bの前記接近方向への移動によって金属線材Wを十分な挟持力で挟持できないという懸念がある。
【0075】
そこで、前記挟持力を補完するために、ダイス片32A,32BをX方向において互いに接近させる方向へ付勢する付勢手段を新たに備えることが考えられる。しかしながら、大きな挟持力を得ようとすると、より大きな付勢手段が必要となり、結果として冷間圧接治具1の大型化を招くことになってしまう。
【0076】
そこで、本実施形態では、上述したように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bとダイス片32A,32Bとの間に中間部材51A,51Bを配置すると共に、互いに反対方向に発生する第2分力Fyを中間部材51A,51Bで相殺して、第1分力Fxのみをダイス片32A,32Bに伝達するように構成している。これにより、第1Y方向駆動部5A,5Bが作動した直後では、ダイス片32A,32Bの前記接近方向への移動が抑制されるため、前記挟持力を確実に増大させることができる。
【0077】
そして、中間部材51A,51Bに第1摺動面51c,51g、第2摺動面51d,51hを形成したことにより、押圧力Fが所定以上作用した時には、傾斜面32a,32bを第2摺動面51d,51hに対して摺動させ、かつ傾斜面2a,2bを第1摺動面51c,51gに対して摺動させることができる。このため、ダイス片32A,32Bを前記接近方向に移動させることができ、金属線材Wを確実に挟持した状態で、その端部同士を圧接することができる。
【0078】
また、本実施形態の場合、付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させることができるため、冷間圧接治具50の小型化を実現することができ、その結果、X方向における省スペース化を図ることができる。
【0079】
ところで、第2Y方向駆動部8A,8Bの作動によってバリ取りを行なう場合、バリα(図4(b)参照)を圧接部位Weの外周部分に残留させることなく完全に除去するためには、前記挟持力、換言すればX方向における金属線材Wの押圧力を、圧接時と同様十分に作用させる必要がある。従って、本実施形態のように、付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させ、冷間圧接治具50の小型化、つまりはX方向における省スペース化を図れるという効果は、バリ取りを行なうための構成(第2Y方向駆動部8A,8B)をさらに備えたものにおいてより顕著なものになると言える。
【0080】
(第3実施形態)
以下に、図8、図9を参照して本発明の第3実施形態に係る冷間圧接治具60について詳細に説明する。なお、図8、図9において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図8は、本実施形態に係る冷間圧接治具60を示す正面図であり、図9は、冷間圧接治具60の要部拡大図である。
【0081】
本発明の第3実施形態に係る冷間圧接治具60は、図8、図9に示すように、中間部材61A,61Bにおいて、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側端部61b,61fに、ダイス片72A,72Bの前記離反方向への移動を規制する移動規制部を備えている。
【0082】
また、中間部材61A,61Bにおいて、外側端部61b,61fを、前記接近方向を指向する内側端部61a,61eよりも肉厚に設定し、前記移動規制部を、肉厚の外側端部61b,61fにより構成している。
【0083】
また、第2摺動面61d,61hが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ2を、第1摺動面61c,61gが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ1よりも大きく設定している。
【0084】
本実施形態に係る冷間圧接治具60では、このように、第2摺動面61d,61hの傾斜角度θ2を、第1摺動面61c,61gの傾斜角度θ1よりも大きく設定することにより、外側端部61b,61f(端面の厚みt2)を、内側端部61a,61e(端面の厚みt1)よりも肉厚(t2>t1)に設定している。
【0085】
一方、ダイス70のダイス片72A,72Bでは、その傾斜面72a,72bが、対向する第2摺動面61d,61hと面接触すべく、該第2摺動面61d,61hの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している。
【0086】
本実施形態では、図9に示すように、ダイス片72A,72Bが接近方向に移動して、金属線材Wの端部同士を圧接する時、ダイス片72A,72Bが金属線材Wの端部同士を圧接する方向と反対の離反方向に移動することを、肉厚に設定した外側端部61b,61fにより規制することができる。
【0087】
この場合、相対的に肉厚とされた外側端部61b,61fは、移動規制部として機能し、金属線材Wの端部同士の圧接時において、ダイス片72A,72BがY方向にぶれることを抑制できる。このため、ダイス片72A,72Bのぶれに起因する前記挟持力の低下を防止でき、金属線材Wの端部同士の圧接をより安定して行なうことができる。
【0088】
また、本実施形態では、第1摺動面61c,61gと第2摺動面61d,61hとにおいて異なる傾斜角度θ1,θ2を設定することのみによって外側端部61b,61fの肉厚化を実現しており、これにより、中間部材61A,61Bの成形を容易にすることができる。
【0089】
(第4実施形態)
以下に、図10を参照して本発明の第4実施形態に係る冷間圧接治具80について詳細に説明する。なお、図10において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図10は、冷間圧接治具80の要部拡大図であり、図10では、いずれの中間部材、ダイス片も同型であるため、1組の中間部材81A、ダイス片92Aのみを示す。
【0090】
本発明の第4実施形態に係る冷間圧接治具80は、図10に示すように、中間部材81Aを、内側端部81aから外側端部81bに向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成している。
【0091】
本実施形態では、第2摺動面81dにおいて、外側端部81bが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ4を、第1摺動面81cの傾斜角度θ3よりも大きくなるように設定する一方、内側端部81aが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ3を、第1摺動面81cの傾斜角度θ3と同じに設定している。中間部材81Aは、この第2摺動面81dにおける傾斜角度の段階的な変化により、内側端部81a(端面の厚みt3)から外側端部81b(端面の厚みt4)に向かうにつれて段階的に肉厚(t4>t3)となっている。
【0092】
一方、ダイス90のダイス片92Aでは、その傾斜面92aが、対向する第2摺動面81dと面接触すべく、該第2摺動面81dの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している(対応する形状をなしている)。
【0093】
このため、本実施形態においても、上述した第3実施形態と同様、ダイス片92Aが接近方向に移動して、金属線材Wの端部同士を圧接する時、ダイス片92Aが離反方向に移動することを、肉厚に設定した移動規制部としての外側端部81bにより規制することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、第2摺動面81dの傾斜角度、つまりは中間部材81Aの肉厚が1段階だけ変化する場合について説明したが、前記傾斜角度及び肉厚を複数段階変化させるようにしてもよい。
【0095】
(第5実施形態)
以下に、図11、図12を参照して本発明の第5実施形態に係る冷間圧接治具100について詳細に説明する。なお、図11、図12において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図11は、本実施形態に係る冷間圧接治具100を示す正面図であり、図12は、冷間圧接治具100の要部拡大図である。
【0096】
本発明の第5実施形態に係る冷間圧接治具100は、図11、図12に示すように、中間部材101A,101Bにおいて、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側端部101b,101fよりも内側端部101a,101eを肉厚に設定している。
【0097】
また、第2摺動面101d,101hが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ6を、第1摺動面101c,101gが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ5よりも小さく設定している。
【0098】
本実施形態に係る冷間圧接治具100では、このように、第2摺動面101d,101hの傾斜角度θ6を、第1摺動面101c,101gの傾斜角度θ5よりも小さく設定することにより、内側端部101a,101e(端面の厚みt6)を、外側端部101b,101d(端面の厚みt5)よりも肉厚(t6>t5)に設定している。
【0099】
一方、ダイス110のダイス片112A,112Bでは、その傾斜面112a,112bが、対向する第2摺動面101d,101hと面接触すべく、該第2摺動面101d,101hの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している。
【0100】
本実施形態では、ダイス片112A,112BがY方向(接近方向)に移動すると、これに伴ってくさび効果が発生し、ダイス片112A,112BをX方向に押圧する力が増大する。このため、金属線材Wを挟持させるための挟持力が増大することになる。従って、ダイス片112A,112BをX方向において互いに接近させる方向へ付勢する付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させ、冷間圧接治具100の小型化、つまりはX方向における省スペース化を図れるという効果がある。
【0101】
また、本実施形態では、第1摺動面101c,101gと第2摺動面101d,101hとにおいて異なる傾斜角度θ5,θ6を設定することのみによって内側端部101a,101eの肉厚化を実現しており、これにより、中間部材101A,101Bの成形を容易にすることができる。
【0102】
(第6実施形態)
以下に、図13を参照して本発明の第6実施形態に係る冷間圧接治具200について詳細に説明する。なお、図13において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図13は、冷間圧接治具200の要部拡大図であり、図13では、いずれの中間部材、ダイス片も同型であるため、1組の中間部材201A、ダイス片212Aのみを示す。
【0103】
本発明の第6実施形態に係る冷間圧接治具200は、図13に示すように、中間部材201Aを、外側端部201bから内側端部201aに向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成している。
【0104】
本実施形態では、第2摺動面201dにおいて、内側端部201aが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ7を、第1摺動面201cの傾斜角度θ8よりも小さくなるように設定する一方、外側端部101bが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ8を、第1摺動面201cの傾斜角度θ8と同じに設定している。中間部材201Aは、この第2摺動面201dにおける傾斜角度の段階的な変化により、外側端部201b(端面の厚みt8)から内側端部201a(端面の厚みt7)に向かうにつれて段階的に肉厚(t7>t8)となっている。
【0105】
一方、ダイス210のダイス片212Aでは、その傾斜面212aが、対向する第2摺動面201dと面接触すべく、該第2摺動面201dの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している(対応する形状をなしている)。
【0106】
このため、本実施形態においても、上述した第5実施形態と同様、ダイス片212AがY方向(接近方向)に移動すると、これに伴ってくさび効果が発生し、金属線材Wを挟持させるための挟持力が増大する。従って、ダイス片212A等をX方向において互いに接近させる方向へ付勢する付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させ、冷間圧接治具200の小型化、つまりはX方向における省スペース化を図れるという効果がある。
【0107】
なお、本実施形態では、第2摺動面201dの傾斜角度、つまりは中間部材201Aの肉厚が1段階だけ変化する場合について説明したが、前記傾斜角度及び肉厚を複数段階変化させるようにしてもよい。
【0108】
(第7実施形態)
以下に、図14を参照して本発明の第7実施形態に係る冷間圧接治具300について詳細に説明する。なお、図14において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図14は、本実施形態に係る冷間圧接治具300を示す正面図である。
【0109】
上述したように、前記挟持力の向上を図るべく中間部材51A,51Bを備えた場合には、大きな挟持力でダイス片32A,32Bが金属線材Wを挟持するために、稀に金属線材Wがダイス片に噛み込む可能性がある。
【0110】
ここで、金属線材Wの端部同士を圧接し、バリ取りを行なった後は、上述したように、第1Vブロック2A,2A及び第2Vブロック2B,2Bを互いに離反方向に移動させることによって、金属線材Wが挟持された状態を解除するようになっているが、仮に、金属線材Wがダイス片32A,32Bに噛み込んでしまうと、ダイス片32A,32Bが金属線材Wを挟持したまま、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bは前記離反方向に移動することになる。この時、バネ11A,11Bの弾性力によってダイス片32A,32Bが離反方向に移動する等、何らかの要因で金属線材Wが前記離反方向に引張られると、場合によっては、圧接端部We(図4等参照)が切断される虞がある。
【0111】
そこで、本発明の第7実施形態に係る冷間圧接治具300は、図14に示すように、第1Y方向駆動部5A,5Bにより複数の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記接近方向に移動させ、金属線材Wの端部同士を圧接した後、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを互いに離反する離反方向に移動させる構成とすると共に、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの前記離反方向への移動に伴い、該第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bとダイス片32A,32Bとを互いに離反させるバネ301を設けている。
【0112】
本実施形態に係る冷間圧接治具300では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bが前記離反方向に移動する時、バネ301の弾性力によって第1移動ブロック2A,2Bをダイス片32A,32Bから離反させることで、ダイス片32A,32Bを前記接近方向に押圧することができるようになっている。これにより、金属線材Wが前記離反方向に引張られることを防止でき、その結果、圧接端部Weの切断を確実に防止することができる。
【0113】
また、X方向においてダイス片32A,32Bを離反方向に移動させることが可能なバネを備えた場合には、金属線材Wがダイス片32A,32Bに噛みこんだ状態を、圧接端部Weを切断することなく容易に解除することができる。
【0114】
(その他の実施形態)
なお、第2〜第7実施形態では、2枚の中間部材をY方向において対向配置したものを、さらにX方向において金属線材Wを挟むようにして対向配置することで、合計4枚の中間部材を備えることとしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、Y方向において対向する中間部材を1枚の板状部材として一体成形してもよい。
【0115】
また、第3、第4実施形態では、中間部材の外側端部を内側端部よりも肉厚に形成することで、ダイス片の離反方向への移動を規制するようにしたが、外側端部を肉厚に形成することには必ずしも限定されず、例えば、第2摺動面の外側端部の摩擦係数を、内側端部の摩擦係数よりも大きくなるように構成してもよい。
【0116】
また、第4、第6実施形態では、第2摺動面における傾斜角度を段階的に変化させる構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第1摺動面(及びVブロックの傾斜面)における傾斜角度を段階的に変化させる構成としてもよい。
【0117】
また、第7実施形態では、第1Vブロック、第2Vブロックとダイス片とを離反させるための手段としてバネを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第1Vブロック、第2Vブロックの離反方向への移動を検出するセンサと、該センサの検出結果に基づいて、ダイス片を第1Vブロック、第2Vブロックから離反させる方向に押圧する押圧手段とを備える構成にしてもよい。
【0118】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、移動ブロックは、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bに対応し、
以下同様に、
圧接駆動手段は、第1Y方向駆動部5A,5Bに対応し、
移動規制部は、外側端部61b,61f,81bに対応し、
離反手段は、バネ301に対応し、
バリ取り駆動手段は、第2Y方向駆動部8A,8Bに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0119】
1,50,60,80,100,200,300…冷間圧接治具
2A…第1Vブロック
2B…第2Vブロック
2a,2b,32a,32b,72a,72b,92a,112a,112b,212a…傾斜面
3,70,90,110,210…ダイス
5A,5B…第1Y方向駆動部
8A,8B…第2Y方向駆動部
32A,32B,72A,72B,92A,112A,112B,212A…ダイス片
51A,51B,61A,61B,81A,101A,101B,201A…中間部材
51a,51e,61a,61e,81a,101a,101e,201a…内側端部
51b,51f,61b,61f,81b,101b,101f,201b…外側端部
51c,51g,61c,61g,81c,101c,101g,201c…第1摺動面
51d,51h,61d,61h,81d,101d,101h,201d…第2摺動面
301…バネ
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の移動ブロックと、該移動ブロックの間に配置した複数のダイス片からなるダイスとを備えた冷間圧接治具、冷間圧接システム、及び冷間圧接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の金属性導体(金属線材)同士を、金属の再結晶温度以下にて圧接する技術が知られており、下記特許文献1では、金属線材の冷間圧接を行なうための治具(工具)が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された冷間圧接治具(工具)では、本体に固定した固定Vブロックと、該固定Vブロックに対して金属線材の長手方向(延び方向)と直交する直交方向に移動可能な移動Vブロックとを対向して配置すると共に、これら両Vブロックの間には、冷間圧接の対象となる金属線材を挟むように配置した複数(4つ)のダイス片からなるダイスを設けている。
【0004】
また、両Vブロック及び各ダイス片には、両者が対向する部位において、前記直交方向に対して傾斜する傾斜面(摺動面)を形成している。このため、前記直交方向において移動Vブロックを固定Vブロックに向かって移動させた時には、この移動に伴って発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させることができるようになっている。
【0005】
このように、前記直交方向において、移動Vブロックを固定Vブロックに向かって移動させることにより、先ずは、ダイス片が前記第1分力によって前記直交方向に移動し、金属線材を挟持する。その後、さらに前記押圧力を作用させると、金属線材の挟持力に対する反力と、ダイス片の傾斜面を押圧する押圧力との合力が、傾斜面同士の摩擦力を超えるまで前記挟持力は増大することになる。
【0006】
そして、さらに前記押圧力を作用させ、前記合力が傾斜面同士の摩擦力を超えると、傾斜面においてダイス片がVブロック対して相対移動(摺動)を開始する。そして、ダイス片は、この摺動によって前記長手方向に移動することができ、このダイス片の移動によって挟持している前記金属線材の端部同士を圧接する。
【0007】
下記特許文献1に開示された冷間圧接治具では、移動Vブロックが固定Vブロックに対して前記直交方向に移動可能となっており、これによって、ダイス片が金属線材を挟持する際には、極めて高い挟持力を発生させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−128561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1の場合、移動Vブロックの移動ストロークを確保するために、冷間圧接治具周辺では、前記直交方向において大きなスペースが必要になるという問題があった。
【0010】
一般的に、上述したような冷間圧接治具を備えた製造施設では、複数本の金属線材を同時に圧接処理するために、冷間圧接治具が前記直交方向に複数並設されており、特に、製造施設内において設置スペースに制約がある場合には、冷間圧接治具同士を狭ピッチで配置することが求められる。
【0011】
このため、移動Vブロックを前記直交方向に移動させるような構成にすると、移動Vブロックと隣接する金属線材等との干渉を招く虞があることから、多数の冷間圧接治具を設置できなくなってしまう。
【0012】
この発明は、金属線材の長手方向と直交する直交方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材の端部同士を圧接することができる冷間圧接治具、冷間圧接システム、および冷間圧接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の冷間圧接治具は、金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックと、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に移動可能な複数のダイス片を、前記移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置したダイスとを備えた冷間圧接治具であって、前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させる圧接駆動手段を備え、前記移動ブロック及び前記ダイス片には、互いに対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜すると共に、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、対向する前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させる傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明の態様として、前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間には、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を相殺して、前記第1分力を前記ダイス片に伝達する中間部材を設け、該中間部材には、前記移動ブロックの傾斜面と対向する部位に第1摺動面を形成すると共に、前記ダイス片の傾斜面に対向する部位に第2摺動面を形成した構成とすることができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部よりも内側部を肉厚に設定した構成とすることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも小さく設定した構成とすることができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記中間部材を、前記外側部から内側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部に、前記ダイス片の前記離反方向への移動を規制する移動規制部を備えた構成とすることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記中間部材において、前記外側部を内側部よりも肉厚に設定し、前記移動規制部を、肉厚の前記外側部により構成することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも大きく設定した構成とすることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記中間部材を、前記内側部から外側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを互いに離反する離反方向に移動させる構成とすると共に、前記移動ブロックの前記離反方向への移動に伴い、該移動ブロックと前記ダイス片とを互いに離反させる離反手段を設けた構成とすることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを前記長手方向に移動させ、前記金属線材の圧接部位に形成されたバリを前記ダイス片により除去させるバリ取り駆動手段を備えた構成とすることができる。
【0024】
またこの発明は、上述の冷間圧接治具を、前記直交方向に並設した冷間圧接システムであることを特徴とする。
【0025】
またこの発明は、金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックの移動により、該移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置した複数のダイス片を、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に押圧し、前記金属線材を前記ダイス片で挟持しながら、対向する前記金属線材の端部同士を圧接する冷間圧接方法であって、圧接駆動手段により、前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させると共に、前記移動ブロック及び前記ダイス片とが対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜するように形成した傾斜面により、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させることを特徴とする。
【0026】
この発明の態様として、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い前記押圧力が発生した時、前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間に設けた中間部材の第1摺動面に対し前記押圧力を作用させ、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を前記中間部材で相殺することにより、前記第1分力を前記ダイス片に伝達し、該ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させると共に、前記押圧力をさらに作用させ、前記ダイス片の傾斜面を前記中間部材の第2摺動面に対して摺動させつつ、前記移動ブロックの傾斜面を前記中間部材の第1摺動面に対して摺動させることにより、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、金属線材の長手方向と直交する直交方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材の端部同士を圧接することができる冷間圧接治具、冷間圧接システム、および冷間圧接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の第1実施形態に係る冷間圧接治具により構成される冷間圧接システムの正面図。
【図2】第1実施形態に係る冷間圧接治具の概略斜視図。
【図3】第1実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図4】金属線材の端部同士の圧接方法を説明するための説明図。
【図5】金属線材同士の圧接後のバリ取り方法を説明するための説明図。
【図6】第2実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図7】金属線材の端部同士の圧接方法を説明するための説明図。
【図8】第3実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図9】第3実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図10】第4実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図11】第5実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【図12】第5実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図13】第6実施形態に係る冷間圧接治具の要部拡大図。
【図14】第7実施形態に係る冷間圧接治具の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る冷間圧接治具1は、図1乃至図5に示すように、金属線材Wの長手方向において対向するように配置した複数の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bと、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に移動可能な複数のダイス片32A,32Bを、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの間において金属線材Wを挟むように配置したダイス3とを備えると共に、複数の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させる第1Y方向駆動部5A,5Bを備え、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B及びダイス片32A,32Bには、互いに対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜すると共に、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力Fから、前記ダイス片32A,32Bを前記直交方向に押圧して、金属線材Wを挟持させるための第1分力Fxと、ダイス片32A,32Bを前記長手方向に移動させて、対向する金属線材Wの端部同士を圧接するための第2分力Fyとを発生させる傾斜面2a,2b、及び傾斜面32a,32bを形成している。
また、冷間圧接治具1を前記直交方向に並設した冷間圧接システムSとしている。
【0030】
上述する冷間圧接装置1、および冷間圧接システムSの構成について、図1乃至5とともに詳述する。
なお、図1は、冷間圧接システムSを示す正面図であり、図2は、冷間圧接治具1を示す概略斜視図、図3は、同正面図である。また、図4は、金属線材Wの端部同士の圧接方法を説明するための説明図であり、図5は、金属線材W同士の圧接後のバリ取り方法を説明するための説明図である。
【0031】
冷間圧接治具1は、例えば、銅、またはその合金等からなる金属線材Wの端部同士を圧接すると共に、圧接部位の外周部分に生じた鍔状のバリを除去するいわゆるバリ取りを行なう装置である。
【0032】
図1に示す冷間圧接システムSを構成する冷間圧接治具1は、図2、図3に示すように、第1Vブロック2A、第2ブロック2Bと、金属線材Wの挿入を許容するダイス孔31を形成する4つのダイス片32A、32Bからなるダイス3とを備えると共に、第1、第2Vブロック2A,2Bを金属線材Wの長手方向(図1中のY方向)に移動させる圧接駆動手段としての第1Y方向駆動部5A,5Bと、Y方向移動台6A,6Bと、Y方向駆動伝達部7A,7Bと、該Y方向駆動伝達部7A,7Bを介してY方向移動台6A,6Bを移動させるバリ取り駆動手段としての第2Y方向駆動部8A,8Bと、線材支持台9と、フィンガ10A,10Bと、ダイス片32A,32A同士、ダイス片32B,32B同士のY方向における位置を規制するためのバネ11A,11B及びピン12A,12B(図3参照)とを備えている。
【0033】
そして、図1に示す冷間圧接システムSでは、冷間圧接の対象となる金属線材Wが上下方向に延びた状態となるように(図中のY方向が上下方向となるように)、上述した冷間圧接治具1を配置すると共に、この冷間圧接治具1を、Y方向と直交するX方向に複数並設している。
【0034】
また、冷間圧接システムSでは、冷間圧接治具1,1,…の配置が、X方向及びY方向と直交する方向(図1の紙面表裏方向)において交互にずれたいわゆる千鳥配置となっており、隣接する冷間圧接治具1,1,…同士が一部正面視で重複するような位置関係となっている。これにより、冷間圧接システムSでは、冷間圧接治具1,1,…の並設方向(X方向)における省スペース化を図っている。
【0035】
ところで、冷間圧接治具1では、同型の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを2つずつ備えており、それぞれをY方向において対向するように配置すると共に、このようにして対向配置した第1Vブロック2A、第2ブロック2Bを、金属線材Wを挟むようにして対向配置している(金属線材Wを対称軸として対称に配置している)。
【0036】
また、冷間圧接治具1では、ダイス3を構成する同型の4つのダイス片32A,32Bを、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの間に配置している。そして、2つの第1Vブロック2Aの間に配置した2つのダイス片32A,32Aを、Y方向において対向するように配置すると共に、2つの第2Vブロック2Bの間に配置した2つのダイス片32B,32Bを、Y方向において対向するように配置しており、2つのダイス片32Aと、2つのダイス片32Bとを、金属線材Wを挟むようにして対向配置している。
【0037】
また、第1Vブロック2A及びダイス片32Aには、両者が対向する部位において、Y方向に対して傾斜する傾斜面2a、32aを形成している。そして、これら傾斜面2a、32aには、面接触の状態で相対的に摺動することが可能になっている。
【0038】
また、第2Vブロック2B及びダイス片32Bは、両者が対向する部位において、Y方向に対して傾斜する傾斜面2b、32bを形成しており、これら傾斜面2b、32bは、面接触の状態で相対的に摺動することが可能になっている。
【0039】
また、冷間圧接治具1では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bやダイス片32A,32Bと同様、それぞれ同型の第1Y方向駆動部5A,5B、Y方向移動台6A,6B、Y方向駆動伝達部7A,7B、第2Y方向駆動部8A,8B、フィンガ10A,10B、バネ11A,11B及びピン12A,12Bを、金属線材Wを挟むように対向配置している。
【0040】
このうち、第1Y方向駆動部5A,5Bは、それぞれ第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bに対応して配置されており、Y方向に延びる螺子軸13を介してそれぞれ対応する第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bに接続されている。
【0041】
ここで、第1Y方向駆動部5A,5Bは、駆動力伝達手段としての螺子軸13を回転駆動させるものであり、この螺子軸13の正逆回転駆動により、第1Vブロック2A、第2Vブロック2BをY方向において往復移動させることができるようになっている。
【0042】
なお、本実施形態では、2つの第1Vブロック2A及び2つの第2Vブロック2Bのそれぞれに対応して第1Y方向駆動部5A,5Bを設けることとしたが、2つの第1Vブロック2Aに共通する単一の第1Y方向駆動部、及び2つの第2Vブロック2Bに共通する単一の第1Y方向駆動部を備え、無端ベルト等の適宜の駆動力伝達手段によって、対向するVブロック同士を接近、離反させるように構成してもよい。
【0043】
また、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを移動させるための駆動力伝達手段として螺子軸13を用いたが、この他にも、例えば、直動ガイド(リニアガイド)、カム機構、又はラックとピニオン等の適宜の駆動力伝達手段を用いることができる。
【0044】
Y方向移動台6A,6Bは、Y方向駆動伝達部7A,7Bに対してY方向へ移動可能に設けられており、Y方向駆動伝達部7A,7Bは、Y方向移動台6A,6BをY方向に移動させるために備えた第2Y方向駆動部8A,8Bの駆動力をY方向移動台6A,6Bに伝達する駆動力伝達手段として機能する。
【0045】
線材支持台9は、金属線材Wを支持すべく縦長の板状をなしており、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bやダイス片32A,32Bの底面側においてY方向に延設されている。
【0046】
線材支持台9上では、フィンガ10A,10Bを、ダイス3に対しY方向の両外側に枢着しており、フィンガ10A,10Bは、線材支持台9上での回動によりダイス孔31に挿入した金属線材Wを保持、開放することができるようになっている。
【0047】
次に、図4、図5をさらに参照して、冷間圧接装置1を用いた金属線材W同士の圧接及びバリ取りの手順について説明する。
金属線材W同士を圧接するにあたっては、先ず、フィンガ10A,10Bを開放状態とし、2本の金属線材Wの端部を、Y方向の両側から、4つのダイス片32A,32Bにより形成したダイス孔31へ挿入する。これにより、図4(a)に示すように、ダイス孔31の中間部分において金属線材Wの端部同士が軽く突き合わされた状態となる。
【0048】
次に、第1Y方向駆動部5A,5Bを作動させ、螺子軸13を回転駆動させることにより、第1Vブロック2A,2A、及び対向する第2Vブロック2B,2Bを、Y方向において互いに接近する接近方向に移動させる。
【0049】
この第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動により、図4(b)に示すように、対向するダイス片32A,32A及び対向するダイス片32B,32Bが互いに面接触するまでこれらをY方向に移動させることができる。
【0050】
ここで、上述したように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B、及びダイス片32A,32Bは、それぞれ傾斜面2a,2b、傾斜面32a,32bを形成しているが、これら傾斜面2a,2b、傾斜面32a,32bにより、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記接近方向に移動させた時には、図4(b)に示すように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動に伴い発生する押圧力Fから、ダイス片32A,32BをX方向に押圧して、金属線材Wを挟持させるための挟持力に寄与する第1分力Fxと、ダイス片32A,32BをY方向に移動させて、対向する金属線材Wの端部同士を圧接するための圧接力に寄与する第2分力Fyとを発生させることができるようになっている。
【0051】
このため、ダイス片32A,32Bは、第1分力Fxの作用による挟持力によって金属線材Wを挟持しながら、第2分力Fyの作用による圧接力によって互いに接近する接近方向へ移動することができる(図4(b)参照)。冷間圧接治具1では、このようにしてダイス片32A,32Bを接近方向へ移動させる動作を複数回(例えば、5回程度)繰り返すことにより、金属線材Wの端部同士を圧接する。
【0052】
ところで、金属線材Wの端部同士を圧接した後には、一般的に、図4(c)に示すように、圧接部位Weの外周部分において鍔状に突出したバリαが発生する。なお、図4(c)は、図4(b)の領域Z1部の拡大図である。そこで、図5(a)に示すように、ダイス片32A,32Bによって金属線材Wを挟持した状態で第2Y方向駆動部8A,8Bを作動させ、Y方向駆動伝達部7A,7Bを介してY方向移動台6A,6BをY方向に移動させる。
【0053】
ここで、本実施形態では、図5(a)に示すように、Y方向移動台6A,6BをY方向に移動させる際、これらをY方向において互いに反対方向(図5(a)中矢印で示す方向D1,D2参照)に相対移動させる。
【0054】
そして、このY方向移動台6Aの移動に伴って、第1Vブロック2Aとダイス片32Aとが方向D1に一体的に移動する一方、第2Vブロック2Bとダイス片32Bとが方向D2に一体的に移動する。
【0055】
これら第1Vブロック2A、第1Vブロック2Bとダイス片32A、32Bとの一体的な移動により、図5(a)に示すように、2つのダイス片32A,32Aのうちの一方のダイス片32Aと、2つのダイス片32Bのうちの一方のダイス片32Bとがバリαに接触し、該バリαを除去することができる。なお、図5(b)は、図5(a)の領域Z2部の拡大図を示す。
【0056】
このようにして、バリαを除去した後は、第2Y方向駆動部8A,8Bを作動させ、Y方向駆動伝達部7A,7Bを介してY方向移動台6A,6BをY方向の元の位置に戻す。そして、第1Y方向駆動部5A,5Bを作動させ、第1Vブロック2A,2A及び第2Vブロック2B,2Bを接近する方向に移動させる場合と逆の方向に螺子軸13を回転駆動させることで、第1Vブロック2A,2A、及び第2Vブロック2B,2Bを互いに離反する離反方向に移動させる。
【0057】
この時、ダイス片32A,32Bは、バネ11A,11Bの弾性力によって離反方向に移動しつつ、ダイス片32A,32Bの挟持力は減少するようになっている。このため、金属線材Wがダイス片32A,32Bによって挟持されている状態を解除することができ、金属線材Wをダイス孔13から取り出すことが可能になる。これによって、冷間圧接治具1は、次の金属線材W同士の圧接に備えることができる。
【0058】
このように、本実施形態では、第1Vブロック2A、及び第2Vブロック2Bの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力Fから、傾斜面2a,2b、及び傾斜面32a,32bによって第1分力Fx、第2分力Fyを発生させることにより、第1Vブロック2A、第2Vブロック2BをX方向に移動させることなく、ダイス片32A,32Bで金属線材Wを挟持しながら、その端部同士を圧接することができる。この場合、冷間圧接治具1では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動ストロークをX方向にて確保する必要がないため、X方向において大きなスペースを必要とすることなく、金属線材Wの端部同士を圧接することができる。
【0059】
また、図1に示すように、冷間圧接治具1をX方向に並設した冷間圧接システムSでは、製造施設内において設置スペースに制約があったとしても、隣接する金属線材Wと干渉することなく、多数の冷間圧接治具1を設置することができる。
【0060】
(第2実施形態)
以下に、図6、図7を参照して本発明の第2実施形態に係る冷間圧接治具50について詳細に説明する。なお、図6、図7において、図1乃至図5に示す第1実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図6は、冷間圧接治具50を示す正面図であり、図7は、金属線材Wの端部同士の圧接方法を説明するための説明図である。
【0061】
本発明の第2実施形態に係る冷間圧接治具50は、図6、図7に示すように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの傾斜面2a,2bとダイス片32A,32Bの傾斜面32a、32bとの間に、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力Fyを相殺して、第1分力Fxをダイス片32A,32Bに伝達する中間部材51A,51Bを設け、該中間部材51A,51Bには、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの傾斜面2a,2bと対向する部位に第1摺動面51c,51gを形成すると共に、ダイス片32A,32Bの傾斜面32a、32bに対向する部位に第2摺動面51d,51hを形成している。
【0062】
本実施形態に係る冷間圧接治具50では、第1Vブロック2Aの傾斜面2aとダイス片32Aの傾斜面32aとの間、及び第1Vブロック2Bの傾斜面2bとダイス片32Bの傾斜面32bとの間に、板状をなす同型の中間部材51A,51Bを合計4枚配置している。
【0063】
また、冷間圧接治具50では、2枚の中間部材51A,51A、及び2枚の中間部材51B,51Bを、Y方向においてそれぞれ対向するように配置すると共に、中間部材51Aと中間部材51Bとを、金属線材Wを挟むようにして対向配置している。
【0064】
そして、中間部材51A,51Aでは、前記接近方向を指向する内側端部(内側部)51aと、第1Vブロック2Aの接近方向と反対の方向を指向する外側端部(外側部)51bとを有しており、このうち、内側端部51aでは、その端面同士を突き合わせた状態で面接触させている。
【0065】
また、中間部材51A,51Aには、第1Vブロックの傾斜面2aと対向する部位に第1摺動面51cを形成すると共に、ダイス片32Aの傾斜面32aに対向する部位に第2摺動面51dを形成しており、各摺動面51c,51dは、それぞれ傾斜面2a,32aに対して相対的に摺動可能となっている。
【0066】
また、中間部材51B,51Bでは、中間部材51A,51Aと同様、前記接近方向を指向する内側端部51eと、第2Vブロック2Bの接近方向と反対の方向を指向する外側端部51fとを有しており、このうち、内側端部51eでは、その端面同士を突き合わせた状態で面接触させている。
【0067】
また、中間部材51B,51Bには、第2Vブロックの傾斜面2bと対向する部位に第1摺動面51gを形成すると共に、ダイス片32Aの傾斜面32bに対向する部位に第2摺動面51hを形成しており、各摺動面51g,51hは、それぞれ傾斜面2b,32bに対して相対的に摺動可能となっている。
【0068】
本実施形態では、第1Y方向駆動部5A,5Bの作動によって、第1Vブロック2A,2A、及び第2Vブロック2B,2Bを互いに接近方向に移動させると、第1実施形態と同様、図7(b)に示すように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動に伴って押圧力Fが発生するが、この押圧力Fにより発生する第1分力Fx、第2分力Fyは、中間部材51A,51Bに作用することになる。
【0069】
ここで、第1Y方向駆動部5A,5Bが同じ大きさの駆動力を出力する場合を考えてみる。この場合、第1Vブロック2A、第2Vブロック2B、及びダイス片32A,32Bが同型であることにより、Y方向において反対方向に発生する押圧力Fの大きさは同じとなり、その結果、Y方向において互いに反対方向に発生する第2分力Fyの大きさも同じとなる。
【0070】
本実施形態では、Y方向において互いに反対方向に発生する同じ大きさの第2分力Fyが中間部材51A,51A、及び中間部材51B,51Bに作用すると、上述したようにY方向において対向する中間部材51A,51A、及び中間部材51B,51Bの内側端部51a,51eの端面同士が面接触していることにより、第2分力Fyは、中間部材51A,51Bにて相殺され、ダイス片32A,32Bには、第1分力Fxのみが伝達される。
【0071】
このため、第1Y方向駆動部5A,5Bを作動させた直後では、金属線材Wを挟持するための挟持力が第1分力Fxによって増大するのみとなり、ダイス片32A,32Bの接近方向への移動は、中間部材51A,51Bによって規制されることになる。
【0072】
その後、さらに押圧力Fを作用させると、金属線材Wの挟持力に対する反力Fa(図7(b)参照)と、第1分力Fxの伝達に伴い第2摺動面51d,51hが傾斜面32a,32bを押圧する押圧力Fb(図7(b)参照)との合力Fc(図7(b)参照)が、第1摺動面51d,51hと傾斜面32a,32bとの間の摩擦力を超えるまで前記挟持力は増大することになる。
【0073】
そして、さらに押圧力Fを作用させ、前記合力Fcが前記摩擦力を超えると、図7(b)に示すように、ダイス片32A,32Bが第2摺動面51d,51hに対して摺動を開始すると共に、第1Vブロック2A,2Bの傾斜面2a,2bが、第1摺動面51c,51gに対して摺動する。これにより、ダイス片32A,32Bは、Y方向において接近方向に移動することができ、この時、冷間圧接治具50では、大きな挟持力で金属線材Wを挟持しながら、その端部同士を圧接することができる。
【0074】
ところで、上述した第1実施形態では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記接近方向に移動させると、この第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの移動につられて対応するダイス片32A,32Bも一体的に前記接近方向に移動する可能性がある。このため、傾斜面2a,2b及び傾斜面32a,32bによって第1分力Fxを発生させたとしても、ダイス片32A,32Bの前記接近方向への移動によって金属線材Wを十分な挟持力で挟持できないという懸念がある。
【0075】
そこで、前記挟持力を補完するために、ダイス片32A,32BをX方向において互いに接近させる方向へ付勢する付勢手段を新たに備えることが考えられる。しかしながら、大きな挟持力を得ようとすると、より大きな付勢手段が必要となり、結果として冷間圧接治具1の大型化を招くことになってしまう。
【0076】
そこで、本実施形態では、上述したように、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bとダイス片32A,32Bとの間に中間部材51A,51Bを配置すると共に、互いに反対方向に発生する第2分力Fyを中間部材51A,51Bで相殺して、第1分力Fxのみをダイス片32A,32Bに伝達するように構成している。これにより、第1Y方向駆動部5A,5Bが作動した直後では、ダイス片32A,32Bの前記接近方向への移動が抑制されるため、前記挟持力を確実に増大させることができる。
【0077】
そして、中間部材51A,51Bに第1摺動面51c,51g、第2摺動面51d,51hを形成したことにより、押圧力Fが所定以上作用した時には、傾斜面32a,32bを第2摺動面51d,51hに対して摺動させ、かつ傾斜面2a,2bを第1摺動面51c,51gに対して摺動させることができる。このため、ダイス片32A,32Bを前記接近方向に移動させることができ、金属線材Wを確実に挟持した状態で、その端部同士を圧接することができる。
【0078】
また、本実施形態の場合、付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させることができるため、冷間圧接治具50の小型化を実現することができ、その結果、X方向における省スペース化を図ることができる。
【0079】
ところで、第2Y方向駆動部8A,8Bの作動によってバリ取りを行なう場合、バリα(図4(b)参照)を圧接部位Weの外周部分に残留させることなく完全に除去するためには、前記挟持力、換言すればX方向における金属線材Wの押圧力を、圧接時と同様十分に作用させる必要がある。従って、本実施形態のように、付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させ、冷間圧接治具50の小型化、つまりはX方向における省スペース化を図れるという効果は、バリ取りを行なうための構成(第2Y方向駆動部8A,8B)をさらに備えたものにおいてより顕著なものになると言える。
【0080】
(第3実施形態)
以下に、図8、図9を参照して本発明の第3実施形態に係る冷間圧接治具60について詳細に説明する。なお、図8、図9において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図8は、本実施形態に係る冷間圧接治具60を示す正面図であり、図9は、冷間圧接治具60の要部拡大図である。
【0081】
本発明の第3実施形態に係る冷間圧接治具60は、図8、図9に示すように、中間部材61A,61Bにおいて、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側端部61b,61fに、ダイス片72A,72Bの前記離反方向への移動を規制する移動規制部を備えている。
【0082】
また、中間部材61A,61Bにおいて、外側端部61b,61fを、前記接近方向を指向する内側端部61a,61eよりも肉厚に設定し、前記移動規制部を、肉厚の外側端部61b,61fにより構成している。
【0083】
また、第2摺動面61d,61hが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ2を、第1摺動面61c,61gが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ1よりも大きく設定している。
【0084】
本実施形態に係る冷間圧接治具60では、このように、第2摺動面61d,61hの傾斜角度θ2を、第1摺動面61c,61gの傾斜角度θ1よりも大きく設定することにより、外側端部61b,61f(端面の厚みt2)を、内側端部61a,61e(端面の厚みt1)よりも肉厚(t2>t1)に設定している。
【0085】
一方、ダイス70のダイス片72A,72Bでは、その傾斜面72a,72bが、対向する第2摺動面61d,61hと面接触すべく、該第2摺動面61d,61hの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している。
【0086】
本実施形態では、図9に示すように、ダイス片72A,72Bが接近方向に移動して、金属線材Wの端部同士を圧接する時、ダイス片72A,72Bが金属線材Wの端部同士を圧接する方向と反対の離反方向に移動することを、肉厚に設定した外側端部61b,61fにより規制することができる。
【0087】
この場合、相対的に肉厚とされた外側端部61b,61fは、移動規制部として機能し、金属線材Wの端部同士の圧接時において、ダイス片72A,72BがY方向にぶれることを抑制できる。このため、ダイス片72A,72Bのぶれに起因する前記挟持力の低下を防止でき、金属線材Wの端部同士の圧接をより安定して行なうことができる。
【0088】
また、本実施形態では、第1摺動面61c,61gと第2摺動面61d,61hとにおいて異なる傾斜角度θ1,θ2を設定することのみによって外側端部61b,61fの肉厚化を実現しており、これにより、中間部材61A,61Bの成形を容易にすることができる。
【0089】
(第4実施形態)
以下に、図10を参照して本発明の第4実施形態に係る冷間圧接治具80について詳細に説明する。なお、図10において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図10は、冷間圧接治具80の要部拡大図であり、図10では、いずれの中間部材、ダイス片も同型であるため、1組の中間部材81A、ダイス片92Aのみを示す。
【0090】
本発明の第4実施形態に係る冷間圧接治具80は、図10に示すように、中間部材81Aを、内側端部81aから外側端部81bに向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成している。
【0091】
本実施形態では、第2摺動面81dにおいて、外側端部81bが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ4を、第1摺動面81cの傾斜角度θ3よりも大きくなるように設定する一方、内側端部81aが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ3を、第1摺動面81cの傾斜角度θ3と同じに設定している。中間部材81Aは、この第2摺動面81dにおける傾斜角度の段階的な変化により、内側端部81a(端面の厚みt3)から外側端部81b(端面の厚みt4)に向かうにつれて段階的に肉厚(t4>t3)となっている。
【0092】
一方、ダイス90のダイス片92Aでは、その傾斜面92aが、対向する第2摺動面81dと面接触すべく、該第2摺動面81dの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している(対応する形状をなしている)。
【0093】
このため、本実施形態においても、上述した第3実施形態と同様、ダイス片92Aが接近方向に移動して、金属線材Wの端部同士を圧接する時、ダイス片92Aが離反方向に移動することを、肉厚に設定した移動規制部としての外側端部81bにより規制することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、第2摺動面81dの傾斜角度、つまりは中間部材81Aの肉厚が1段階だけ変化する場合について説明したが、前記傾斜角度及び肉厚を複数段階変化させるようにしてもよい。
【0095】
(第5実施形態)
以下に、図11、図12を参照して本発明の第5実施形態に係る冷間圧接治具100について詳細に説明する。なお、図11、図12において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図11は、本実施形態に係る冷間圧接治具100を示す正面図であり、図12は、冷間圧接治具100の要部拡大図である。
【0096】
本発明の第5実施形態に係る冷間圧接治具100は、図11、図12に示すように、中間部材101A,101Bにおいて、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側端部101b,101fよりも内側端部101a,101eを肉厚に設定している。
【0097】
また、第2摺動面101d,101hが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ6を、第1摺動面101c,101gが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ5よりも小さく設定している。
【0098】
本実施形態に係る冷間圧接治具100では、このように、第2摺動面101d,101hの傾斜角度θ6を、第1摺動面101c,101gの傾斜角度θ5よりも小さく設定することにより、内側端部101a,101e(端面の厚みt6)を、外側端部101b,101d(端面の厚みt5)よりも肉厚(t6>t5)に設定している。
【0099】
一方、ダイス110のダイス片112A,112Bでは、その傾斜面112a,112bが、対向する第2摺動面101d,101hと面接触すべく、該第2摺動面101d,101hの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している。
【0100】
本実施形態では、ダイス片112A,112BがY方向(接近方向)に移動すると、これに伴ってくさび効果が発生し、ダイス片112A,112BをX方向に押圧する力が増大する。このため、金属線材Wを挟持させるための挟持力が増大することになる。従って、ダイス片112A,112BをX方向において互いに接近させる方向へ付勢する付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させ、冷間圧接治具100の小型化、つまりはX方向における省スペース化を図れるという効果がある。
【0101】
また、本実施形態では、第1摺動面101c,101gと第2摺動面101d,101hとにおいて異なる傾斜角度θ5,θ6を設定することのみによって内側端部101a,101eの肉厚化を実現しており、これにより、中間部材101A,101Bの成形を容易にすることができる。
【0102】
(第6実施形態)
以下に、図13を参照して本発明の第6実施形態に係る冷間圧接治具200について詳細に説明する。なお、図13において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図13は、冷間圧接治具200の要部拡大図であり、図13では、いずれの中間部材、ダイス片も同型であるため、1組の中間部材201A、ダイス片212Aのみを示す。
【0103】
本発明の第6実施形態に係る冷間圧接治具200は、図13に示すように、中間部材201Aを、外側端部201bから内側端部201aに向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成している。
【0104】
本実施形態では、第2摺動面201dにおいて、内側端部201aが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ7を、第1摺動面201cの傾斜角度θ8よりも小さくなるように設定する一方、外側端部101bが前記長手方向に対してなす傾斜角度θ8を、第1摺動面201cの傾斜角度θ8と同じに設定している。中間部材201Aは、この第2摺動面201dにおける傾斜角度の段階的な変化により、外側端部201b(端面の厚みt8)から内側端部201a(端面の厚みt7)に向かうにつれて段階的に肉厚(t7>t8)となっている。
【0105】
一方、ダイス210のダイス片212Aでは、その傾斜面212aが、対向する第2摺動面201dと面接触すべく、該第2摺動面201dの傾斜に対応した傾斜角度で傾斜している(対応する形状をなしている)。
【0106】
このため、本実施形態においても、上述した第5実施形態と同様、ダイス片212AがY方向(接近方向)に移動すると、これに伴ってくさび効果が発生し、金属線材Wを挟持させるための挟持力が増大する。従って、ダイス片212A等をX方向において互いに接近させる方向へ付勢する付勢手段を新たに備えなくても、または付勢手段を大型化しなくても前記挟持力を確実に増大させ、冷間圧接治具200の小型化、つまりはX方向における省スペース化を図れるという効果がある。
【0107】
なお、本実施形態では、第2摺動面201dの傾斜角度、つまりは中間部材201Aの肉厚が1段階だけ変化する場合について説明したが、前記傾斜角度及び肉厚を複数段階変化させるようにしてもよい。
【0108】
(第7実施形態)
以下に、図14を参照して本発明の第7実施形態に係る冷間圧接治具300について詳細に説明する。なお、図14において、図1乃至図7に示す第1、第2実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。なお、図14は、本実施形態に係る冷間圧接治具300を示す正面図である。
【0109】
上述したように、前記挟持力の向上を図るべく中間部材51A,51Bを備えた場合には、大きな挟持力でダイス片32A,32Bが金属線材Wを挟持するために、稀に金属線材Wがダイス片に噛み込む可能性がある。
【0110】
ここで、金属線材Wの端部同士を圧接し、バリ取りを行なった後は、上述したように、第1Vブロック2A,2A及び第2Vブロック2B,2Bを互いに離反方向に移動させることによって、金属線材Wが挟持された状態を解除するようになっているが、仮に、金属線材Wがダイス片32A,32Bに噛み込んでしまうと、ダイス片32A,32Bが金属線材Wを挟持したまま、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bは前記離反方向に移動することになる。この時、バネ11A,11Bの弾性力によってダイス片32A,32Bが離反方向に移動する等、何らかの要因で金属線材Wが前記離反方向に引張られると、場合によっては、圧接端部We(図4等参照)が切断される虞がある。
【0111】
そこで、本発明の第7実施形態に係る冷間圧接治具300は、図14に示すように、第1Y方向駆動部5A,5Bにより複数の第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを前記接近方向に移動させ、金属線材Wの端部同士を圧接した後、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bを互いに離反する離反方向に移動させる構成とすると共に、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bの前記離反方向への移動に伴い、該第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bとダイス片32A,32Bとを互いに離反させるバネ301を設けている。
【0112】
本実施形態に係る冷間圧接治具300では、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bが前記離反方向に移動する時、バネ301の弾性力によって第1移動ブロック2A,2Bをダイス片32A,32Bから離反させることで、ダイス片32A,32Bを前記接近方向に押圧することができるようになっている。これにより、金属線材Wが前記離反方向に引張られることを防止でき、その結果、圧接端部Weの切断を確実に防止することができる。
【0113】
また、X方向においてダイス片32A,32Bを離反方向に移動させることが可能なバネを備えた場合には、金属線材Wがダイス片32A,32Bに噛みこんだ状態を、圧接端部Weを切断することなく容易に解除することができる。
【0114】
(その他の実施形態)
なお、第2〜第7実施形態では、2枚の中間部材をY方向において対向配置したものを、さらにX方向において金属線材Wを挟むようにして対向配置することで、合計4枚の中間部材を備えることとしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、Y方向において対向する中間部材を1枚の板状部材として一体成形してもよい。
【0115】
また、第3、第4実施形態では、中間部材の外側端部を内側端部よりも肉厚に形成することで、ダイス片の離反方向への移動を規制するようにしたが、外側端部を肉厚に形成することには必ずしも限定されず、例えば、第2摺動面の外側端部の摩擦係数を、内側端部の摩擦係数よりも大きくなるように構成してもよい。
【0116】
また、第4、第6実施形態では、第2摺動面における傾斜角度を段階的に変化させる構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第1摺動面(及びVブロックの傾斜面)における傾斜角度を段階的に変化させる構成としてもよい。
【0117】
また、第7実施形態では、第1Vブロック、第2Vブロックとダイス片とを離反させるための手段としてバネを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第1Vブロック、第2Vブロックの離反方向への移動を検出するセンサと、該センサの検出結果に基づいて、ダイス片を第1Vブロック、第2Vブロックから離反させる方向に押圧する押圧手段とを備える構成にしてもよい。
【0118】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、移動ブロックは、第1Vブロック2A、第2Vブロック2Bに対応し、
以下同様に、
圧接駆動手段は、第1Y方向駆動部5A,5Bに対応し、
移動規制部は、外側端部61b,61f,81bに対応し、
離反手段は、バネ301に対応し、
バリ取り駆動手段は、第2Y方向駆動部8A,8Bに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0119】
1,50,60,80,100,200,300…冷間圧接治具
2A…第1Vブロック
2B…第2Vブロック
2a,2b,32a,32b,72a,72b,92a,112a,112b,212a…傾斜面
3,70,90,110,210…ダイス
5A,5B…第1Y方向駆動部
8A,8B…第2Y方向駆動部
32A,32B,72A,72B,92A,112A,112B,212A…ダイス片
51A,51B,61A,61B,81A,101A,101B,201A…中間部材
51a,51e,61a,61e,81a,101a,101e,201a…内側端部
51b,51f,61b,61f,81b,101b,101f,201b…外側端部
51c,51g,61c,61g,81c,101c,101g,201c…第1摺動面
51d,51h,61d,61h,81d,101d,101h,201d…第2摺動面
301…バネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックと、
前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に移動可能な複数のダイス片を、前記移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置したダイスとを備えた冷間圧接治具であって、
前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させる圧接駆動手段を備え、
前記移動ブロック及び前記ダイス片には、互いに対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜すると共に、
前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、対向する前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させる傾斜面を形成した
冷間圧接治具。
【請求項2】
前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間には、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を相殺して、前記第1分力を前記ダイス片に伝達する中間部材を設け、
該中間部材には、前記移動ブロックの傾斜面と対向する部位に第1摺動面を形成すると共に、
前記ダイス片の傾斜面に対向する部位に第2摺動面を形成した
請求項1に記載の冷間圧接治具。
【請求項3】
前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部よりも内側部を肉厚に設定した
請求項2に記載の冷間圧接治具。
【請求項4】
前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも小さく設定した
請求項3に記載の冷間圧接治具。
【請求項5】
前記中間部材を、前記外側部から内側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成した
請求項3に記載の冷間圧接治具。
【請求項6】
前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部に、前記ダイス片の前記離反方向への移動を規制する移動規制部を備えた
請求項2に記載の冷間圧接治具。
【請求項7】
前記中間部材において、前記外側部を内側部よりも肉厚に設定し、
前記移動規制部を、肉厚の前記外側部により構成した
請求項6に記載の冷間圧接治具。
【請求項8】
前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも大きく設定した
請求項7に記載の冷間圧接治具。
【請求項9】
前記中間部材を、前記内側部から外側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成した
請求項7に記載の冷間圧接治具。
【請求項10】
前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを互いに離反する離反方向に移動させる構成とすると共に、
前記移動ブロックの前記離反方向への移動に伴い、該移動ブロックと前記ダイス片とを互いに離反させる離反手段を設けた
請求項2から9のうちいずれかに記載の冷間圧接治具。
【請求項11】
前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを前記長手方向に移動させ、前記金属線材の圧接部位に形成されたバリを前記ダイス片により除去させるバリ取り駆動手段を備えた
請求項2から10のうちいずれかに記載の冷間圧接治具。
【請求項12】
請求項1から11のうちいずれかに記載の冷間圧接治具を、前記直交方向に並設した
冷間圧接システム。
【請求項13】
金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックの移動により、該移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置した複数のダイス片を、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に押圧し、前記金属線材を前記ダイス片で挟持しながら、対向する前記金属線材の端部同士を圧接する冷間圧接方法であって、
圧接駆動手段により、前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させると共に、
前記移動ブロック及び前記ダイス片とが対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜するように形成した傾斜面により、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させる
冷間圧接方法。
【請求項14】
前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い前記押圧力が発生した時、前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間に設けた中間部材の第1摺動面に対し前記押圧力を作用させ、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を前記中間部材で相殺することにより、前記第1分力を前記ダイス片に伝達し、該ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させると共に、
前記押圧力をさらに作用させ、前記ダイス片の傾斜面を前記中間部材の第2摺動面に対して摺動させつつ、前記移動ブロックの傾斜面を前記中間部材の第1摺動面に対して摺動させることにより、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接する
請求項13に記載の冷間圧接方法。
【請求項1】
金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックと、
前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に移動可能な複数のダイス片を、前記移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置したダイスとを備えた冷間圧接治具であって、
前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させる圧接駆動手段を備え、
前記移動ブロック及び前記ダイス片には、互いに対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜すると共に、
前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、対向する前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させる傾斜面を形成した
冷間圧接治具。
【請求項2】
前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間には、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を相殺して、前記第1分力を前記ダイス片に伝達する中間部材を設け、
該中間部材には、前記移動ブロックの傾斜面と対向する部位に第1摺動面を形成すると共に、
前記ダイス片の傾斜面に対向する部位に第2摺動面を形成した
請求項1に記載の冷間圧接治具。
【請求項3】
前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部よりも内側部を肉厚に設定した
請求項2に記載の冷間圧接治具。
【請求項4】
前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも小さく設定した
請求項3に記載の冷間圧接治具。
【請求項5】
前記中間部材を、前記外側部から内側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成した
請求項3に記載の冷間圧接治具。
【請求項6】
前記中間部材において、前記接近方向と反対の離反方向を指向する外側部に、前記ダイス片の前記離反方向への移動を規制する移動規制部を備えた
請求項2に記載の冷間圧接治具。
【請求項7】
前記中間部材において、前記外側部を内側部よりも肉厚に設定し、
前記移動規制部を、肉厚の前記外側部により構成した
請求項6に記載の冷間圧接治具。
【請求項8】
前記第2摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度を、前記第1摺動面が前記長手方向に対してなす傾斜角度よりも大きく設定した
請求項7に記載の冷間圧接治具。
【請求項9】
前記中間部材を、前記内側部から外側部に向かうにつれて段階的に肉厚となるように構成した
請求項7に記載の冷間圧接治具。
【請求項10】
前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを互いに離反する離反方向に移動させる構成とすると共に、
前記移動ブロックの前記離反方向への移動に伴い、該移動ブロックと前記ダイス片とを互いに離反させる離反手段を設けた
請求項2から9のうちいずれかに記載の冷間圧接治具。
【請求項11】
前記圧接駆動手段により前記複数の移動ブロックを前記接近方向に移動させ、前記金属線材の端部同士を圧接した後、前記複数の移動ブロックを前記長手方向に移動させ、前記金属線材の圧接部位に形成されたバリを前記ダイス片により除去させるバリ取り駆動手段を備えた
請求項2から10のうちいずれかに記載の冷間圧接治具。
【請求項12】
請求項1から11のうちいずれかに記載の冷間圧接治具を、前記直交方向に並設した
冷間圧接システム。
【請求項13】
金属線材の長手方向において対向するように配置した複数の移動ブロックの移動により、該移動ブロックの間において前記金属線材を挟むように配置した複数のダイス片を、前記長手方向及び該長手方向と直交する直交方向に押圧し、前記金属線材を前記ダイス片で挟持しながら、対向する前記金属線材の端部同士を圧接する冷間圧接方法であって、
圧接駆動手段により、前記複数の移動ブロックを前記長手方向において互いに接近する接近方向に移動させると共に、
前記移動ブロック及び前記ダイス片とが対向する部位において、前記長手方向に対して傾斜するように形成した傾斜面により、前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い発生する押圧力から、前記ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させるための第1分力と、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接するための第2分力とを発生させる
冷間圧接方法。
【請求項14】
前記移動ブロックの前記接近方向への移動に伴い前記押圧力が発生した時、前記移動ブロックの傾斜面と前記ダイス片の傾斜面との間に設けた中間部材の第1摺動面に対し前記押圧力を作用させ、前記長手方向において互いに反対方向に発生する前記第2分力を前記中間部材で相殺することにより、前記第1分力を前記ダイス片に伝達し、該ダイス片を前記直交方向に押圧して、前記金属線材を挟持させると共に、
前記押圧力をさらに作用させ、前記ダイス片の傾斜面を前記中間部材の第2摺動面に対して摺動させつつ、前記移動ブロックの傾斜面を前記中間部材の第1摺動面に対して摺動させることにより、前記ダイス片を前記長手方向に移動させて、前記金属線材の端部同士を圧接する
請求項13に記載の冷間圧接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−152797(P2012−152797A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15110(P2011−15110)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(509216094)古河マグネットワイヤ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(509216094)古河マグネットワイヤ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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