説明

冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルム、ラミネートフィルム、および成形体

【課題】シール基材とのラミネート後に優れた冷間成形性を付与できる冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルム、およびそれを用いたラミネートフィルム、およびそのラミネートフィルムを冷間成形してなる成形体を提供する。
【解決手段】冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムは、当該フィルムの引張試験(試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度100mm/min)で得られた応力−ひずみ曲線において、ひずみが0.5のときの引張応力σの値が4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)のいずれにおいても120MPa以上、240MPa以下であり、前記ひずみが0.5のときの前記4方向におけるそれぞれの応力のうち、最大となる応力σmaxと最小となる応力σminとの比(σmax/σmin)が、1.6以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルム、およびそれを用いたラミネートフィルム、およびそのラミネートフィルムを冷間成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ナイロンフィルムは、強度や耐衝撃性、耐ピンホール性等に優れるため、重量物包装や水物包装など大きな強度負荷が掛かる用途に多く用いられている。
ここで、従来、深絞り成形や張り出し成形等の成形用の包材に、ナイロンを使用する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
具体的に、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂を含有する基材層と、この基材層の両面または一方の片面に1または2層以上積層されている機能層とを有する冷間成形用樹脂シートが示されている。そして、上記機能層として、ナイロン樹脂を含有する耐磨耗層を、冷間成形用樹脂シートの表層に設ける構成が示されている。
このような冷間成形用樹脂シートによれば、耐衝撃性に優れかつ保形性を有する冷間成形加工品を得ることが可能となる。そして、ナイロン樹脂を含有する耐磨耗層を表層に設けることで、冷間成形時にシートの表層が損傷することを防止可能としている。
なお、特許文献1にも記載されているように、冷間成形は、熱間成形に比して、加熱装置を不要とし装置の小型化が図れると共に、高速連続成形が可能である点で優れている。
【0003】
一方、特許文献2には、シール層がポリプロピレン樹脂層、中間層が酸素バリアー樹脂層、ナイロン樹脂層およびポリエチレン樹脂層を含み、最外層が吸湿性のある素材からなるシートをラミネートしてなる深絞り成形用複合シートが示されている。
このような深絞り成形用複合シートによれば、中間層にナイロン樹脂層を設けることで、複合シートに機械的強度を付与できる。これにより、150℃程度での深絞り成形時にピンホールが発生することを防止可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−74795号公報
【特許文献2】特開2004−98600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1には、冷間成形用樹脂シートの表層に設けるナイロン樹脂層についての具体的記載がないため、使用するナイロン樹脂層によっては、冷間成形における成形性や、成形体の強度、および成形体の耐ピンホール性に問題を生じるおそれがある。特に、冷間成形でシャープな形状の成形品を得ようとした場合に、ピンホールが発生しやすく問題となる。
また、特許文献2では、ナイロン樹脂層の使用原料について具体的記載はあるものの、ナイロン樹脂層の伸び率等の機械的特性については具体的記載がない。さらに、150℃程度の深絞り成形については言及されているものの、冷間での成形については言及されていない。このため、上記特許文献1と同様の問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、シール基材とのラミネート後に優れた冷間成形性を付与できる冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルム、およびそれを用いたラミネートフィルム、およびそのラミネートフィルムを冷間成形してなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)ナイロン6を原料とする冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムであって、当該フィルムの引張試験(試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度100mm/min)で得られた応力−ひずみ曲線において、ひずみが0.5のときの引張応力σ0.5の値が4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)のいずれにおいても120MPa以上、240MPa以下であり、前記ひずみが0.5のときの前記4方向におけるそれぞれの応力のうち、最大となる応力σmaxと最小となる応力σminとの比(σmax/σmin)が、1.6以下であることを特徴とする冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルム。
(2)上述の(1)に記載の冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムにおいて、前記引張試験における4方向のいずれにおいても、破断までの伸び率が70%以上200%以下であることを特徴とする冷間成形用二軸延伸フィルム。
(3)上述の(1)または(2)に記載の冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムをラミネートしてなることを特徴とするラミネートフィルム。
(4)上述の(3)に記載のラミネートフィルムを冷間成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた冷間成形性を有する冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムを提供できる。そして、当該ナイロンフィルムを含んで構成されたラミネートフィルムによれば、冷間における深絞り成形等の際に当該ナイロンフィルムにピンホールが発生しにくく、シャープな形状の成形品を製造することができる。
【0009】
なお、本発明における冷間成形とは、樹脂のガラス転移点(Tg)未満の温度雰囲気下で行う成形をいう。かかる冷間成形はアルミニウム箔等の成形に用いられる冷間成形機を用いて、シート材料を雌金型に対して雄金型で押し込み、高速でプレスすることが好ましく、かかる冷間成形によると、加熱することなく型付け、曲げ、剪断、絞り等の塑性変形を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るONyフィルムに対して引張試験を行った際に得られる応力−ひずみ曲線の一例(実施例1)。
【図2】本発明の実施形態に係るONyフィルムに対して引張試験を行った際に得られる応力−ひずみ曲線の他の例(実施例2)。
【図3】前記実施形態に係るONyフィルムを製造する二軸延伸装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について詳述する。
〔二軸延伸ナイロンフィルムの構成〕
本実施形態に係る二軸延伸ナイロンフィルム(以下、「ONyフィルム」ともいう。)は、ナイロン6(以下、「Ny6」ともいう)を原料とする未延伸原反フィルムを二軸延伸し、所定の温度で熱処理(熱固定)して形成したものである。このように未延伸原反フィルムを二軸延伸することで、耐ピンホール性、耐衝撃性に優れたONyフィルムが得られる。
【0012】
本実施形態において、ONyフィルムの4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)における引張破断までの伸び率、応力比(σmax/σmin)、および引張破断強度σは、当該ONyフィルムについて引張試験(試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度100mm/min)を実施し、これにより得られた応力−ひずみ曲線に基づいて求める。
ここで、上記引張試験により得られる応力−ひずみ曲線としては、例えば図1、2に示すものが挙げられる。当該曲線を有するONyフィルムの製造法は実施例にて詳述する。
図1、2において、縦軸はONyフィルムの引張応力σ(MPa)を示し、横軸はONyフィルムのひずみε(ε=Δl/l、l:フィルムの初期長さ、Δl:フィルムの増加長)を示す。ONyフィルムの引張試験を実施すると、ひずみεの増加に伴い、引張応力σが略一次関数的に増加し、所定のひずみにおいて引張応力σの増加傾向が大きく変化する。本発明ではこの点を降伏点と呼ぶ。そして、ひずみεが更に増加すると、これに伴い引張応力σも増加し、所定のひずみεに至ると、フィルムが破断する。図1、2は、このような応力−ひずみ曲線を、4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)の各々について示したものである。
【0013】
本実施形態に係るONyフィルムでは、上記引張試験における4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)の破断までの伸び率が、70%以上であることが好ましい。つまり、図1、2の応力−ひずみ曲線のように、フィルム破断時のひずみεが0.7以上であることが好ましい。これにより、ONyフィルムがバランス良く伸びるようになり、ラミネート材としたときの絞り成形性が良くなる。なお、上記4方向のうちいずれか一方の伸び率が70%未満であると、冷間での深絞り成形等の際にフィルムが破断し易くなり、良好な成形性が得られない場合がある。一方、この伸び率が200%を超えると、変形に対する抵抗力が小さくなり易く、フィルムの偏肉精度が不良となり、良好な成形性が得られない場合がある。
【0014】
本実施形態に係るONyフィルムでは、例えば図1、2に示す応力−ひずみ曲線において、ひずみが0.5のときの引張応力σ0.5は、4方向いずれにおいても120MPa以上であることが必要であり、好ましくは130MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上である。これにより、冷間での深絞り成形等におけるピンホールの発生を十分に防止でき、シャープな形状の成形品を製造できる。なお、少なくとも一方向でも引張応力が120MPa未満であると、偏肉が悪く局所的に薄くなり、フィルムが破断するおそれがある。
一方、ひずみが0.5のときの引張応力σ0.5は、4方向いずれにおいても240MPa以下であることが必要である。この引張応力σ0.5が少なくとも一方向でも240MPaを超えると、ラミネートフィルムの変形が起こり難くなるので好ましくない。それ故、好ましい引張応力は4方向とも230MPa以下である。
【0015】
また、ひずみが0.5のときのこれら4方向におけるそれぞれの応力のうち、最大となる応力σmaxと最小となる応力σminとの比(σmax/σmin)が、1.6以下であることが必要であり、好ましくは1.5以下である。前記した条件の他にさらにこの条件を満たすことで、冷間成形時にフィルムがバランス良く伸び、均一な厚みの成形品を製造できる。なお、σmax/σminが1.6を超えると偏肉精度が悪く局所的に薄くなり、フィルムが破断する場合がある。また、各測定方向における引張応力の比が大きいということは、引張応力が相対的に低い部分が存在することを意味し、引張応力が高めのところに比べて、低めのところに応力が集中して局所的な変形が進行し易くなり、結果としてピンホールが発生し易くなる。
【0016】
さらに、本実施形態に係るONyフィルムは、例えば図1、2に示す応力−ひずみ曲線において、4方向における引張破断強度σが、それぞれ250MPa以上であることが好ましく、280MPa以上であることがさらに好ましい。これにより、十分な加工強度を得ることができ、冷間での深絞り成形等の際にONyフィルムがより破断し難くなる。なお、ここでいう加工強度とは冷間成形に対する抵抗力を意味する。
【0017】
〔ONyフィルムの製造方法〕
以上のようなONyフィルムは、Ny6を原料とする未延伸原反フィルムに対して、MD方向およびTD方向のそれぞれの延伸倍率が2.8倍以上3.7倍以下となる条件で二軸延伸した後、190〜215℃で5秒〜1分間の熱処理をすることで得られる。
そして、上述した製造方法の中で、MD方向やTD方向における延伸倍率や熱処理条件を適宜調整することで、ONyフィルムの4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)における引張破断までの伸び率、引張破断強度σ、ひずみが0.5のときの引張応力σ0.5、および所定の応力比(σmax/σmin)を制御できる。
なお、二軸延伸方法としては、例えばチューブラー方式やテンター方式による同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を採用できるが、フィルム面内の強度バランスの点で、チューブラー法による同時二軸延伸により行うことが好ましい。
【0018】
具体的には、本実施形態のONyフィルムは、次のようにして製造できる。
まず、Ny6ペレットを押出機中、270℃で溶融混練した後、溶融物をダイスから円筒状のフィルムとして押出し、引き続き水で急冷して原反フィルムを作製する。
次に、例えば図3に示すように、この原反フィルム11を一対のニップロール12間に挿通した後、中に気体を圧入しながらヒータ13で加熱すると共に、延伸開始点にエアーリング14よりエアー15を吹き付けてバブル16に膨張させ、下流側の一対のニップロール17で引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向およびTD方向の同時二軸延伸を行った。この際、MD方向およびTD方向のそれぞれの延伸倍率が2.8倍以上である必要がある。延伸倍率が2.8倍未満である場合、衝撃強度が低下して実用性に問題が生ずる。
【0019】
この後、この延伸フィルムをテンター式熱処理炉(図示せず)に入れ、190〜215℃で熱処理を行うことにより、本実施形態のONyフィルム18を得ることができる。なお、熱処理温度が215℃よりも高い場合は、ボーイング現象が大きくなり過ぎて幅方向での異方性が増加し、また、結晶化度が高くなり過ぎるために強度が低下してしまう。一方、熱処理温度が190℃よりも低い場合は、フィルム収縮率が大きくなり過ぎるために、二次加工時にフィルムが縮み易くなる。そうなると、ラミネートフィルムを製造したときに、基材フィルム間で剥離してしまうおそれが増す。
【0020】
〔ラミネートフィルムの構成〕
本実施形態のラミネートフィルムは、上記したONyフィルムの少なくともいずれか一方の面に、1層あるいは2層以上の他のラミネート基材を積層して構成される。具体的に、他のラミネート基材としては、例えばアルミニウム層やアルミニウム層を含むフィルム等が挙げられる。
一般に、アルミニウム層を含むラミネートフィルムは、冷間成形の際にアルミニウム層においてネッキングによる破断が生じ易いため冷間成形に適していない。この点、本実施形態のラミネートフィルムによれば、上記したONyフィルムが優れた成形性、耐衝撃性および耐ピンホール性を有するため、冷間での張出し成形や深絞り成形等の際に、アルミニウム層の破断を抑制でき、包材におけるピンホールの発生を抑制できる。したがって、ラミネートフィルムの総厚みが薄い場合でも、シャープな形状かつ高強度の成形体が得られる。
【0021】
本実施形態のラミネートフィルムは、ONyフィルムと他のラミネート基材との全体の厚みが200μm以下であることが好ましい。かかる全体の厚みが200μmを超える場合、冷間成形によるコーナー部の成形が困難となり、シャープな形状の成形品が得られないおそれがある。
【0022】
本実施形態のラミネートフィルムにおけるONyフィルムの厚みは、5μmから50μmまでであることが好ましく、より好ましい厚みは10μmから40μmまでである。ここで、ONyフィルムの厚みが5μmよりも薄い場合は、ラミネートフィルムの耐衝撃性が低くなり、冷間成形性が不十分となる。一方、ONyフィルムの厚みが50μmを超えても、ラミネートフィルムの耐衝撃性の更なる向上効果は得られず、フィルムの総厚みが増加するばかりで好ましくない。
【0023】
本実施形態のラミネートフィルムに使用するアルミニウム層としては、純アルミニウムまたはアルミニウム−鉄系合金の軟質材からなるアルミ箔を使用することができる。この場合、アルミニウム箔には、ラミネート性能を向上する観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等によるアンダーコート処理、あるいはコロナ放電処理等の前処理を施してから、ONyフィルムに積層することが好ましい。
このようなアルミニウム層の厚さは20μmから100μmまでであることが好ましい。これにより、成形品の形状を良好に保持することが可能となり、また、酸素や水分等が包材中を透過することを防止できる。
なお、アルミニウム層の厚さが20μm未満である場合、ラミネートフィルムの冷間成形時にアルミニウム層の破断が生じ易く、また、破断しない場合でもピンホール等が発生し易くなる。このため、包材中を酸素や水分等が透過してしまうおそれがある。一方、アルミニウム層の厚さが100μmを超える場合、冷間成形時の破断の改善効果もピンホール発生防止効果も特に改善されるわけではなく、単に包材総厚が厚くなるだけであるため好ましくない。
【0024】
なお、本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した材質、層構成などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0025】
例えば、本実施形態では、二軸延伸方法としてチューブラー方式を採用したが、テンター方式でもよい。さらに、延伸方法としては同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でもよい。
また、ONyフィルムには、必要な添加剤を適宜添加することができる。このような添加剤として、例えばアンチブロッキング剤(無機フィラー等)、はっ水剤(エチレンビスステアリン酸エステル等)、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)を挙げることができる。
さらに、上記実施形態では、ONyフィルムにアルミニウム層等を積層したラミネート包材を例示したが、これに限定されず、本発明のラミネート包材としては、さらにシーラント層や帯電防止層、印刷層、バリア層、強度補強層などの種々の機能層を積層したものも挙げられる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
(ONyフィルムの製造)
Ny6ペレットを押出機中、270℃で溶融混練した後、溶融物をダイスから円筒状のフィルムとして押出し、引き続き水で急冷して原反フィルムを作製した。Ny6として使用したものは、宇部興産(株)製ナイロン6〔UBEナイロン 1023FD(商品名)、相対粘度 ηr=3.6〕である。
次に、図3に示すように、この原反フィルム11を一対のニップロール12間に挿通した後、中に気体を圧入しながらヒータ13で加熱すると共に、延伸開始点にエアーリング14よりエアー15を吹き付けてバブル16に膨張させ、下流側の一対のニップロール17で引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向およびTD方向の同時二軸延伸を行った。この延伸の際の倍率は、MD方向では3.0倍、TD方向では3.5倍であった。
次に、この延伸フィルムをテンター式熱処理炉(図示せず)に入れ、210℃で熱処理を施して本実施例に係るONyフィルム18(以後、ONyフィルム18ともいう)を得た。フィルム厚みは、25μmである。
【0028】
〔実施例2〕
延伸倍率を、MD方向で3.0倍、TD方向で3.3倍とし、熱処理温度を200℃とした以外は実施例1と同様にして製造した。フィルム厚みは、25μmである。
【0029】
〔実施例3〕
延伸倍率を、MD方向で3.0倍、TD方向で3.4倍とし、熱処理温度を205℃とした以外は実施例1と同様にして製造した。フィルム厚みは、15μmである。
【0030】
〔実施例4〕
延伸倍率を、MD方向で3.0倍、TD方向で3.2倍とし、熱処理温度を195℃とした以外は実施例1と同様にして製造した。フィルム厚みは、15μmである。
【0031】
〔実施例5〕
延伸倍率を、MD方向で3.2倍、TD方向で3.4倍とし、熱処理温度を210℃とした以外は実施例1と同様にして製造した。フィルム厚みは、25μmである。
【0032】
〔実施例6〕
延伸倍率を、MD方向で3.1倍、TD方向で3.6倍とし、熱処理温度を205℃とした以外は実施例1と同様にして製造した。フィルム厚みは、12μmである。
【0033】
〔実施例7〕
延伸倍率を、MD方向で2.9倍、TD方向で3.4倍とし、熱処理温度を210℃とした以外は実施例1と同様にして製造した。フィルム厚みは、20μmである。
【0034】
〔比較例1〜7〕
以下のような市販のONyフィルムを用いた。
比較例1:A社品、テンター法逐次二軸延伸フィルム(15μm)
比較例2:B社品、テンター法逐次二軸延伸フィルム(15μm)
比較例3:B社品、テンター法同時二軸延伸フィルム(15μm)
比較例4:B社品、テンター法同時二軸延伸フィルム(25μm)
比較例5:C社品、チューブラー法同時二軸延伸フィルム(15μm)
比較例6:D社品、チューブラー法同時二軸延伸フィルム(25μm)
比較例7:D社品、チューブラー法同時二軸延伸フィルム(15μm)
【0035】
〔評価方法〕
(引張試験)
ONyフィルムの引張試験は、インストロン社製5564型を使用し、試料幅15mm、標点間距離50mm、100mm/minの引張速度で実施した。
ONyフィルムのMD方向/TD方向/45°方向/135°方向のそれぞれについて破断するまで測定を行った。各方向について得られた応力−ひずみ曲線に基づいて、各方向の破断伸び率、各方向の破断強度σ、各方向のひずみ0.5における引張応力値σ0.5、および、4方向のσ0.5の最大値(σmax)と最小値(σmin)との比率σmax/σminを求めた。なお、図1、2は、各々実施例1、2のONyフィルムを用いたときの応力−ひずみ曲線である。
【0036】
(冷間成形性)
ONyフィルムを積層したラミネートフィルムの冷間成形性(絞り成形性)を評価した。
具体的には、まず、実施例・比較例に係るONyフィルムを表基材フィルムとし、L−LDPEフィルム〔ユニラックス LS−711C(商品名)、出光ユニテック(株)製、厚さ120μm〕をシーラントフィルムとして、両者をドライラミネートすることによりラミネートフィルムを得た。なお、ドライラミネート用の接着剤としては、三井タケダケミカル製のタケラックA−615/タケネートA−65の配合品(配合比16/1)を用いた。また、ドライラミネート後のラミネート包材は、40℃で3日間エージングを行った。
このようにして作製した各ラミネートフィルムについて、平面視長方形(5mm×10mm)の金型を用いて、冷間(常温)で深絞り成形を実施した。この深絞り成形を各ラミネート包材のそれぞれについて10回ずつ実施し、ピンホールやクラックなどの欠陥の発生数を調べた。欠陥の発生数が10回中0回である場合は◎、1〜2回である場合は○、3〜5回である場合は△、6回以上である場合は×として評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
〔評価結果〕
表1に示すように、各実施例に係るラミネートフィルムでは、用いたONyフィルムがσ0.5、およびσmax/σminについて所定の条件を満足しているため、優れた深絞り成形性(冷間成形性)を示している。
一方、比較例に係るラミネートフィルムは、上述のいずれかの条件を満たしていないため、いずれも冷間成形性に劣っている。参考までに、σ0.5とσmax/σminについて、本発明の範囲からはずれているものをアンダーライン付きイタリック体で示した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、冷間成形用包材等に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
11 原反フィルム
12 ニップロール
13 ヒータ
14 エアーリング
15 エアー
16 バブル
17 ニップロール
18 延伸フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン6を原料とする冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムであって、
当該フィルムの引張試験(試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度100mm/min)で得られた応力−ひずみ曲線において、ひずみが0.5のときの引張応力σ0.5の値が4方向(MD方向、TD方向、45°方向、135°方向)のいずれにおいても120MPa以上、240MPa以下であり、
前記ひずみが0.5のときの前記4方向におけるそれぞれの応力のうち、最大となる応力σmaxと最小となる応力σminとの比(σmax/σmin)が、1.6以下である
ことを特徴とする冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムにおいて、
前記引張試験における4方向のいずれにおいても、破断までの伸び率が70%以上200%以下である
ことを特徴とする冷間成形用二軸延伸フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷間成形用二軸延伸ナイロンフィルムをラミネートしてなるラミネートフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のラミネートフィルムを冷間成形してなることを特徴とする成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22773(P2013−22773A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157204(P2011−157204)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】