説明

冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだ、これを用いた冷陰極蛍光ランプのリード線及びその接続

【課題】透明管の長尺化、小径化、機械的強度の向上を図り、高輝度を図るためリード線に大電流を通過させ、電極からの大量の熱伝導を受ける冷陰極蛍光ランプのリード線のはんだを用いた接続部分に生じる摺動音の発生を抑制することができる冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを提供する。
【解決手段】スズ及びビスマスを主成分とし、銅及びリンを含有する。スズを50質量%以上85質量%以下、ビスマスを15質量%以上50%以下、銅を0質量%を超え1.0質量%以下、リンを0質量%を超え0.1質量%以下の範囲で、但し総ての組成の合計が100質量%となるように含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだ、これを用いた冷陰極蛍光ランプのリード線及びその接続に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、コンピューター等の液晶表示装置に適用されるバックライト、ファクシミリ等の読み取り用光源、複写機のイレーサー用光源、各種表示用等に冷陰極蛍光ランプが、高輝度、高演色性、長寿命、低消費電力性等に優れることから、多用されている。冷陰極蛍光ランプは、例えば、以下のような構成を有する。図3に示すように、ガラス製等の透明管2の両端がビードガラス等の封止部材3で気密に封止されて構成されている。透明管2の外径は、例えば、1.5〜6.0mmの範囲を挙げることができ、好ましくは1.5〜5.0mmの範囲ある。透明管の内壁面には、そのほぼ全長に亘って蛍光体層4が設けられる。蛍光体層に用いる蛍光体としては、緑色を発光する蛍光体、青色を発光する蛍光体、赤色を発光する蛍光体等から適宜選択された蛍光体を組合せ、白色光を発光させることもできる。透明管の内部空間5には、水銀と、希ガス、例えば、アルゴン、キセノン等が所定量導入され、内部圧力は大気圧の数十分の一程度に減圧されている。透明管の長手方向両端には、それぞれカップ状の電極7が、開口部10が対向するように配置されている。電極のカップ状の底面にはそれぞれリード線9がその一端が溶接され、他端は封止部材3を貫通して透明管の外部に引き出されている。
【0003】
このような冷陰極蛍光ランプにおいて、電極間に電圧が印加されると透明管内に僅かに存在する電子により希ガスを電離させ、電離した希ガスを電極に衝突させて二次電子を放出させグロー放電を生起させ、これにより水銀を励起して、253.7nm、360nm等の紫外線を放射させる。これを受けた透明管の内壁に設けられる蛍光体から蛍光が発光され、これらが演色されて白色を発光するようになっている。
【0004】
このような冷陰極蛍光ランプは、液晶表示装置が薄く大面積化が要請されるに伴い、透明管に対し、長尺化、小径化が求められ、機械的強度が高いことの要求が高くなっている。更に、冷陰極蛍光ランプに対する高輝度化の要請に伴い、電極への供給電流も大きくなり、電極部において発生する熱も大きくなる。
【0005】
このような発熱を伴う冷陰極蛍光ランプにおいて、リード線は、製造時の電極との溶接において酸化劣化を受けず、また、使用時に発生する熱による熱膨張率が封止部材、延いては透明管に近似し、封止部材間を気密に保持すると共に、リード線を介して電極部に発生する熱を透明管外へ放出する熱伝導性を有するものが好ましい。これらの要請を満たすため、リード線には、図4に示すように、電極に融着される部分に銅−コバール線等のリード線9aが使用され、リード線9aに透明管2の外部で接続される鉄ニッケル等のアウターリード9bが使用され、アウターリード9bが、外部電源に接続されるソケットにはんだによって接続され、外部電源を電極7へ供給するようになっている。
【0006】
このようなリード線を、ソケットに接続する際用いるはんだには、環境負荷が問題となる鉛を含有するはんだの代換として、スズ、銀、アルミニウムを含むものが使用されている。しかしながら、電極で発生する熱量が大きく、リード線を介して外部へ伝導して放出される熱によりリード線が膨張して、リード線とソケットとが摺動し、摺動音が発生するという事態が生じる場合がある。
【0007】
一方、特許文献1には高温高湿環境下におけるめっき線の表面の酸化による変色を抑制した無鉛錫合金はんだめっき線が記載されている。しかし、特許文献1には、大面積、薄型液晶表示装置に使用されるために、透明管の長尺化、小径化、機械的強度の向上を図った冷陰極蛍光ランプのリード線に適用した場合、リード線に大電流を通過させ、電極からの大量の熱伝導により生じる摺動音の発生を抑制することができるはんだについては記載されていない。
【特許文献1】特開2002−180226
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、透明管の長尺化、小径化、機械的強度の向上を図り、高輝度を図るためリード線に大電流を通過させ、電極からの大量の熱伝導を受ける冷陰極蛍光ランプのリード線のはんだを用いた接続部分に生じる摺動音の発生を抑制することができる冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スズ及びビスマスを主成分とし、銅及びリンを含有することを特徴とする冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだに関する。
【0010】
また、本発明は、上記冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを含むはんだ層で被覆されたことを特徴とする冷陰極蛍光ランプのリード線や、冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを用いたことを特徴とする冷陰極蛍光ランプのリード線の接続に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだは、透明管の長尺化、小径化、機械的強度の向上を図り、高輝度を図るためリード線に大電流を通過させ、電極からの大量の熱伝導を受ける冷陰極蛍光ランプのリード線のはんだを用いた接続部分に生じる摺動音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだは、スズ及びビスマスを主成分とし、銅及びリンを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだは、スズ及びビスマスを主成分とする。
【0014】
スズははんだによる接続に耐食性を付与し、また、リード線の接続時のはんだのぬれ性を向上させ、良好な接続を得ることができる。
【0015】
スズのはんだ中の含有量は、50質量%以上85質量%以下であることが好ましい。但し、はんだを構成する他の金属の含有割合が所望の割合となるように、即ち、合計が100質量%となるように調整することが好ましい。スズの含有量が50質量%以上であれば、はんだによる接続に耐食性を付与し、リード線と被接続部間の良好な接続を維持することができる。スズの含有量が85質量%以下であれば、接続が柔軟になって、リード線が被接続部と摺動し摺動音を発生するのを抑制することができる。
【0016】
ビスマスははんだによる接続に強度を付与し、リード線が熱膨張した場合であっても、その接続を保持することができ、リード線と被接続部とが摺動して摺動音を発生するのを抑制することができる。
【0017】
ビスマスのはんだ中の含有量は、15質量%以上50質量%以下であることが好ましい。ビスマスの含有量が15質量%以上であれば、はんだによる接続の強度が増加し、はんだによる接続部分のリード線が膨張しても被接続部との接続を維持することができる。また、ビスマスの含有量が50質量%以下であればはんだによる接続に柔軟性を付与し、はんだ部分が高硬度になり、機械的強度が低下するのを抑制することができる。
【0018】
銅ははんだによる接続部に柔軟性を付与し、屈曲性が低下するのを抑制する。
【0019】
銅のはんだ中の含有量は、0質量%を超え1.0質量%以下であることが好ましい。銅を含有することにより、はんだによる接続に柔軟性を付与することができ、ビスマスを含有することにより屈曲性が低下するのを抑制することができる。銅の含有量が1.0質量%以下であれば、はんだによる接続の強度を保持し、リード線と被接続部との摺動による摺動音の発生を抑制することができる。
【0020】
リンははんだによる接続が酸化するのを抑制する。
【0021】
リンのはんだ中の含有量は、0質量%を超え0.1質量%以下であることが好ましい。リンを含有することにより、はんだによる接続が変色することを抑制することができる。リンはビスマス、銅、スズより酸化されやすく、これらが酸化される前に無色の五酸化リンに酸化されるため、有色の酸化スズ、酸化ビスマス、酸化銅が形成されることによりはんだの接続部が変色するのを抑制することができる。リンのはんだ中の含有量が0.1質量%以下であれば、不要なリンを含有することによりはんだによる接続が酸化が促進するのを抑制し、更に、接続部が劣化してリード線と被接続部が摺動して摺動音を発生するのを抑制することができる。
【0022】
このような冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだには、上記組成の機能を阻害しない範囲で、その他の含有物を含有していてもよい。
【0023】
上記冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを製造するには、銅を融点近傍の温度で熔融し、順次、各金属の融点付近でビスマス、スズ、リンを添加して熔融する方法を挙げることができる。
【0024】
また、これらの金属を含む金属塩を用い、所望の割合で混合して得ることもできる。
【0025】
このような冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだ(以下、リード線用はんだともいう。)が適用されるリード線としては、特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すように、鉄とニッケルの合金の芯線11の周囲に、銅層12を有するものを挙げることができる。芯線の直径は、例えば、0.6mm、銅層の膜厚は、例えば、60μmを挙げることができる。銅層は、冷陰極蛍光ランプの製造時の電極への融着時や、透明管端部の封止時の加熱により銅層の表面が酸化されることにより芯線が酸化されるのを抑制し、はんだによる接続の際、銅層の酸化された表面を溶剤で溶融除去することにより、リード線のはんだによる良好な接続を得ることができる。
【0026】
上記リード線用はんだを用いて、冷陰極蛍光ランプのリード線を被接続部に接続する方法としては、被接続部とリード線間にリード線用はんだを介在させ加熱することもできるが、リード線の表面に、例えば、図1に示すように、予め、リード線用はんだを被覆したはんだ層13を有するリード線を形成し、これを用いて被接続部に接触させ加熱してもよい。
【0027】
はんだ層を有するリード線の作製は、熔融した上記リード線用はんだを、コーティング、浸漬等、リード線に塗布する方法によることができる。例えば、収納したはんだ槽中にリード線を導入し、熔融したはんだにリード線を浸漬し、その後、大気中で冷却して、はんだ層を形成する方法を挙げることができる。はんだ槽の気相部は不活性ガスを充填してもよい。はんだ層の厚さとしては、例えば、1〜20μmを挙げることができる。
【0028】
本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線の接続は、上記リード線用はんだを用いたことを特徴とする。上記冷陰極蛍光ランプのリード線が接続される被接続部としては、外部電源と接続される端子を有するものであり、その一例として、例えば、図2に示すソケットを挙げることができる。図2の斜視図に示すソケット14は、図示しない外部電源に接続される端子15を有する。端子の形状は、リード線を挿入する孔を有する金属部や、リード線を挟持する板バネを構成する2片の金属板等であってもよい。
【0029】
被接続部に上記はんだ層を有するリード線を配置して、加熱して接続を形成する。
【0030】
本発明のリード線の接続は、被接続部にはんだ層を有しないリード線を配置して熔融した上記リード線用はんだを流して、その後、冷却して形成することもできる。
【0031】
このようにリード線用はんだにより接続された冷陰極蛍光ランプのリード線は、リード線を介して、外部電圧が印加された場合でも、耐腐食性を有し、はんだの接続が高い強度を有し、リード線が膨張した場合でも、その接続を維持することができ、摺動音の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0032】
本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを実施例を挙げて説明する。
[実施例1]
0.5質量%となるように銅を熔融し、ビスマスを10質量%となるように添加し、スズを59.55質量%となるように加え、リンを0.05質量%となるように加え熔融させた後、冷却してリード線用はんだを調製した。
【0033】
図4示す冷陰極蛍光ランプに設けた図1に示す、鉄・ニッケル芯線に銅層を有するリード線を、リード線用はんだに浸漬し、大気中で冷却して、10μm厚さにはんだ層を形成し、はんだ用リード線を作製した。
【0034】
得られたはんだ用リード線を、図2に示すソケットの端子に挿入し、加熱してこれらを接続した。このようにして20個の冷陰極蛍光ランプについて、リード線の接続を形成した。
【0035】
[比較例]
ビスマスを加えない他は、実施例1と同様にリード線用はんだを調製し、はんだ用リード線を作製し、ソケットに挿入した。このような接続を実施例1と同数形成した。
【0036】
[摺動音の発生評価]
ソケットを介して、冷陰極蛍光ランプに6.5mAを供給した直後に摺動音が発生した接続数を表1に示す。
【0037】
[実施例2〜4]
ビスマスの含有量を20質量%、30質量%、40質量%となるように加えた他は、実施例1と同様にリード線用はんだを調製し、はんだ用リード線を作製し、摺動音の発生の評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
結果より、ビスマスを含有しないはんだを用いた比較例においては、総ての接続において摺動音が発生したが、はんだ中のビスマスの含有量が増加するに従い摺動音を発生する接続は減少し、ビスマスの含有量が40質量%のはんだにおいては、摺動音を発生する接続はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだの一例により形成されるはんだ層を有する冷陰極蛍光ランプのリード線を示す概略構成図である。
【図2】本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線の接続の一例に用いる被接続部を示す斜視図である。
【図3】本発明の冷陰極蛍光ランプのリ−ド線用はんだの一例を適用するリード線を有する冷陰極蛍光ランプを示す概略構成図である。
【図4】本発明の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを適用するリード線の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 冷陰極蛍光ランプ
2 ガラス管(透明管)
3 ビードガラス
4 蛍光体層
7 電極
9 リード線
9a 銅−コバール線
9b アルターリード
11 芯線
12 銅層
13 はんだ層
14 ソケット
15 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ及びビスマスを主成分とし、銅及びリンを含有することを特徴とする冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだ。
【請求項2】
スズを50質量%以上85質量%以下、ビスマスを15質量%以上50%以下、銅を0質量%を超え1.0質量%以下、リンを0質量%を超え0.1質量%以下の範囲で、但し総ての組成の合計が100質量%となるように含有することを特徴とする請求項1記載の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを含むはんだ層で被覆されたことを特徴とする冷陰極蛍光ランプのリード線。
【請求項4】
請求項1又は2記載の冷陰極蛍光ランプのリード線用はんだを用いたことを特徴とする冷陰極蛍光ランプのリード線の接続。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−149177(P2010−149177A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332987(P2008−332987)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】