説明

冷陰極蛍光ランプの製造方法

【課題】 ガラス管の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる冷陰極蛍光ランプの製造方法を提供する。
【解決手段】 蛍光体溶液2の塗布工程後においては、ガラス管1を傾けた状態で乾燥機3により蛍光体溶液を乾燥させる。このように、ガラス管1を傾けた状態で蛍光体溶液を乾燥させる工程を設けたことで、ガラス管1内の蛍光体溶液の流動性を低くできるので、ガラス管1の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の背面照明用光源や小型の照明光源として使用される冷陰極蛍光ランプの製造方法に関し、特に、ガラス管の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる冷陰極蛍光ランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷陰極蛍光ランプは、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、モニター等の液晶表示装置の液晶表示装置の背面照明用光源や、小型の照明光源として使用され、ガラス管の両端内部に一対の冷陰極を備えた構成を有している。そして、ガラス管の内壁に蛍光体溶液を塗布し乾燥させることにより蛍光体層が形成されている。
【0003】
図7は、従来の冷陰極蛍光ランプの製造方法における蛍光体溶液の塗布及び乾燥の工程を示す図である。
【0004】
先ず、塗布工程においては、直立に固定されたガラス管1の下端部から、赤、緑及び青それぞれの蛍光体を混合した蛍光体溶液2を規定の位置まで吸い上げることにより、ガラス管1の内壁に蛍光体溶液を塗布する。次の乾燥工程においては、乾燥機3によりガラス管内に空気を吹き込む。このとき、内部の蛍光体溶液が乾燥して内壁に付着し蛍光体層となる。一方、乾燥付着しなかった余剰分の蛍光体溶液はガラス管1内を流れて落下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の冷陰極蛍光ランプの製造方法で用いられる蛍光体溶液においては、緑の蛍光体の比重は他の色の蛍光体の比重より大きいため、ガラス管内での流動性が他の色のものよりも速く、したがって下部へ流れやすい。一方、青の蛍光体の比重は他の色の蛍光体の比重より小さいため、ガラス管内での流動性が他の色のものよりも低く、したがってガラス管内の上部に残りやすい。そのため、冷陰極蛍光ランプの軸方向において、3色の蛍光体の配合比率が微妙に変化し膜厚が不均一になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラス管の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる冷陰極蛍光ランプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法は、請求項1記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法は、ガラス管の内壁に蛍光体溶液を塗布する工程と、前記ガラス管を傾けた状態で前記塗布された蛍光体溶液を乾燥させる工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
この請求項1記載の製造方法によれば、ガラス管を傾けた状態で蛍光体溶液を乾燥させる工程を設けたことで、ガラス管内の蛍光体溶液の流動性を低くできるので、ガラス管の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる。
【0009】
また、請求項2記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法は、請求項1記載の製造方法において、前記傾けた状態のガラス管の角度を調整することを特徴とする。
【0010】
この請求項2記載の製造方法によれば、蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できることに加えて、傾けた状態のガラス管の角度を調整することで、蛍光体溶液の流動性を調整できるので、管の軸方向における蛍光体層の膜厚を調整することができる。
【0011】
また、請求項3記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法は、請求項1または2記載の製造方法において、前記傾けた状態のガラス管が鉛直方向に対して有する角度は70度以上で且つ80度以下であることを特徴とする。
【0012】
この請求項3記載の製造方法によれば、蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できることに加えて、傾けた状態のガラス管が鉛直方向に対して有する角度を70度以上で且つ80度以下としたことで、軸方向における蛍光体層の膜厚が適切な冷陰極蛍光ランプを製造できる。
【0013】
また、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法において、前記傾けた状態のガラス管をその軸中心に回転させてもよい。
【0014】
この製造方法によれば、蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できることに加えて、傾けた状態のガラス管をその軸中心に回転させることで、蛍光体溶液が周回しながら乾燥していくので、蛍光体層の膜厚が周方向において不均一になるのを防止できる。
【0015】
また、この製造方法において、前記ガラス管は横断面が楕円形状又は扁平形状を有するものであり、当該横断面における長径が垂直なときの回転速度を水平なときの回転速度より遅くしてもよい。
【0016】
この製造方法によれば、蛍光体層の膜厚が管の軸方向及び周方向で不均一になるのを防止できることに加えて、横断面における長径が垂直なときの回転速度を水平なときの回転速度より遅くすることで、長径が垂直になるときの時間が長くなり、表面張力に抗して蛍光体溶液が流動するようになるので、横断面が楕円形状又は扁平形状を有するガラス管に形成される蛍光体層の膜厚が周方向において不均一になるのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の冷陰極蛍光ランプの製造方法によれば、ガラス管を傾けた状態で蛍光体溶液を乾燥させる工程を設けたことで、ガラス管内の蛍光体溶液の流動性を低くできるので、ガラス管の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態における蛍光体溶液の乾燥工程を示す図である。ここでは、図7を用いて説明した塗布工程が行われたこととして説明を行う。
【0020】
蛍光体溶液2の塗布工程後においては、図1に示すように、ガラス管1を傾けた状態とし、管上端部に配置した乾燥機3により、塗布された蛍光体溶液を乾燥させる。例えば、乾燥機3の位置を中心にしてガラス管1を回動させることによりガラス管1を傾けることができる。
【0021】
このように、ガラス管1を傾けた状態で蛍光体溶液を乾燥させる工程を設けたことで、ガラス管1内における蛍光体溶液の流動性を低くできるので、ガラス管1の内壁に形成される蛍光体層の膜厚が管の軸方向で不均一になるのを防止できる。
【0022】
また、各色の蛍光体の含有量の不均一化を防止できるので、軸方向の色度差を低減することができる。
【0023】
また、傾けた状態のガラス管1の角度を調整することで、蛍光体溶液の流動性を調整できるので、管の軸方向における蛍光体層の膜厚及び色度差を調整することができる。
【0024】
また、ガラス管1の角度を変化させながら乾燥を行うようにしてもよい。
【0025】
特に、管の軸方向における膜厚の不均一を防止するため、傾けた状態のガラス管が鉛直方向に対して有する角度を70度以上で且つ80度以下とするのが望ましい。
【0026】
また、本実施の形態の製造方法を、例えば、内径が0.8mm以上8.0mm以下のガラス管を用いた冷陰極蛍光ランプに適用することができる。
【0027】
次に、本実施の形態では、傾けた状態のガラス管1を管の軸中心に回転させる。このように、ガラス管1を管の軸中心に回転させることで、ガラス管1の内壁上を蛍光体溶液が周回しながら乾燥していくので、蛍光体層の膜厚が周方向において不均一となりムラが発生するのを防止することができる。
【0028】
なお、傾けた状態のガラス管1の角度を調整しながら回転させるようにしてもよい。
【0029】
ところで、上記した製造方法を横断面が扁平形状のガラス管1を用いた冷陰極蛍光ランプに適用した場合、図2に示すように、蛍光体溶液は、その表面張力により、横断面の長径の端部近傍に溜まる傾向があり、そのため、周方向の膜厚を均一化することが難しい。
【0030】
この不都合を防止するため、本実施の形態では、横断面が扁平形状のガラス管1を用いた場合には、横断面における長径が垂直なときの回転速度を水平なときの回転速度より遅くしている。
【0031】
図3は、横断面が扁平形状のガラス管1を用いた場合の回転速度の推移を示すグラフである。
【0032】
図3の横軸に示す回転角aやbのとき、つまり、扁平形状のガラス管1の横断面の長径が垂直なときに回転速度は最低になる。一方、図3に示す回転角cのとき、つまり、長径が水平なときに回転速度が最高になる。例えば、長径が垂直のときの回転速度は10乃至20rpm(回転/分)であり、長径が水平のときの回転速度は120rpm(回転/分)である。
【0033】
図4は、横断面が扁平形状のガラス管1を管軸中心に回転させた場合の各横断面を示す図である。
【0034】
同図の左に示すように、横断面の長径が垂直であり、その長径の下端近傍に蛍光体溶液2が溜まっているときに、ガラス管1を180度回動させると、同図の中央に示すように蛍光体溶液2が見かけ上、長径の上端近傍に移動する。本実施の形態では、同図の中央に示すように長径が垂直なときの回転速度を水平なときの回転速度より遅くしたので、表面張力に抗して蛍光体溶液が流動するようになり、これにより、同図の右に示すよう、長径の上端近傍の膜厚と下端近傍の膜厚とを等しくすることができる。
【0035】
このように、横断面における長径が垂直なときの回転速度を水平なときの回転速度より遅くすることで、長径が垂直になるときの時間が長くなり、表面張力に抗して蛍光体溶液が流動するようになるので、横断面が楕円形状又は扁平形状を有するガラス管に形成される蛍光体層の膜厚が周方向において不均一になるのを防止できる。
【0036】
なお、上記した回転速度の制御は、横断面が楕円形状を有するガラス管を用いた冷陰極蛍光ランプの製造方法にも適用可能である。
【0037】
図5(a)は、従来の製造方法と本実施の形態の製造方法によりそれぞれ製造された冷陰極蛍光ランプの蛍光体層の膜厚を示す表である。図5(b)は、膜厚の測定箇所を示すガラス管の横断面図である。特に、これらは横断面が扁平形状のガラス管についてのものである。
【0038】
図5(a)に示すように、従来の製造方法では、横断面の短径の端部(図5(b)の矢印Y1で示す)における蛍光体層の膜厚は9μm程度であり、横断面の長径の端部(図5(b)の矢印Y2で示す)における膜厚20μmよりも薄くなってしまう。これに対し、本実施の形態の製造方法によれば、短径の端部における蛍光体層の膜厚を、長径の端部における膜厚にほぼ等しくなるまで厚くできるので、周方向における蛍光体層の膜厚の均一化を図ることができる。
【0039】
図6は、横断面が円形状のガラス管を用いて、従来の製造方法と本実施の形態の製造方法によりそれぞれ製造された冷陰極蛍光ランプの色度偏差を示す図である。特に、図6(a)は、円周方向の色度偏差(x偏差)を縦軸に、円周方向のある点からの距離を横軸にとったグラフであり、図6(b)は、軸方向の色度偏差(y偏差)を縦軸に、ガラス管の端部からの距離を横軸にとったグラフである。また、これらは、内径が2.4mmで長さが300mmのガラス管を備え、ランプ電流を6mAとしたときの冷陰極蛍光ランプのグラフである。
【0040】
図6(a)に示すように、円周方向の色度偏差については、従来の製造方法による冷陰極蛍光ランプの色度偏差よりも、本実施の形態の製造方法による冷陰極蛍光ランプの色度偏差の方を小さくすることができる。また、図6(b)に示すように、軸方向の色度偏差については、従来の製造方法による色度偏差は0.008程度あったが、本実施の形態の製造方法によれば、色度偏差を0.002程度まで小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本実施の形態における蛍光体溶液の乾燥工程を示す図である。
【図2】図2は、扁平形状である横断面の長径の端部近傍に蛍光体溶液が溜まる様子を示す横断面図である。
【図3】図3は、横断面が扁平形状のガラス管1を用いた場合の回転速度の推移を示すグラフである。
【図4】図4は、横断面が扁平形状のガラス管1を管軸中心に回転させた場合の各横断面を示す図である。
【図5】図5(a)は、従来の製造方法と本実施の形態の製造方法によりそれぞれ製造された冷陰極蛍光ランプの蛍光体層の膜厚を示す表であり、図5(b)は、膜厚の測定箇所を示すガラス管の横断面図である。
【図6】図6は、横断面が円形状のガラス管を用いて、従来の製造方法と本実施の形態の製造方法によりそれぞれ製造された冷陰極蛍光ランプの色度偏差を示す図であり、図6(a)は、円周方向の色度偏差のグラフであり、図6(b)は、軸方向の色度偏差のグラフである。
【図7】図7は、従来における蛍光体溶液の塗布及び乾燥の工程を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ガラス管
2…蛍光体溶液
3…乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管の内壁に蛍光体溶液を塗布する工程と、前記ガラス管を傾けた状態で前記塗布された蛍光体溶液を乾燥させる工程とを備えることを特徴とする冷陰極蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記傾けた状態のガラス管の角度を調整することを特徴とする請求項1記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
前記傾けた状態のガラス管が鉛直方向に対して有する角度は70度以上で且つ80度以下であることを特徴とする請求項1または2記載の冷陰極蛍光ランプの製造方法。







































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−173063(P2006−173063A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367835(P2004−367835)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】