説明

冷陰極蛍光ランプ

【課題】 管電圧を低減し、かつ点灯中にもその効果を保持できる冷陰極蛍光ランプを提供する。
【解決手段】 ガラスバルブ1の内壁面に蛍光体被膜2が形成され、ガラスバルブ内に放電媒体が封入され、ガラスバルブの両端部それぞれに、シリカ系化合物の表層31の形成された電極3が互いに対向するように封着された構造の冷陰極蛍光ランプ12。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライト光源や小型照明装置の光源として使用される冷陰極蛍光ランプ10は図7に示すようにガラスバルブ1の内壁面に蛍光体被膜2が形成され、ガラスバルブ1内に水銀と希ガスの放電媒体が封入され、ガラスバルブ1の両端部それぞれに電極3が互いに対向するように封着された構成である。なお、この電極3は導入線4と一体的に接合されていて、これにビーズガラス5を被せ、ガラスバルブ1の端部にビーズガラス5を加熱して封着することによって導入線4と共に取り付けられたものである。
【0003】
一般にこのような構成の冷陰極蛍光ランプの技術的課題の1つは、管電圧を低減することである。管電圧を低減させることができれば、同じ明るさを保ちながら機器の消費電力を低減することができ、また同じ管電圧ならばより明るく照明することができるからである。
【0004】
従来、このような冷陰極蛍光ランプ10に対する管電圧低減技術として電極にエミッタを塗布する対策と電極材料を変更する対策である。前者のエミッタの物質としてはLaB6 やBaAl2 4 などが知られている。図8には、図7に示した冷陰極蛍光ランプ10と同様の構成で、ただし、電極3の表面にエミッタ物質としてLaB6 層30を塗布形成した冷陰極蛍光ランプ11を示している。エミッタを電極表面に塗布することで、初期には大幅な管電圧低減が可能である。しかしながら、エミッタ物質を用いても、点灯時間が長くなれば電極のスパッタリングによって電圧低減効果も減少し、最終的にはエミッタ物質を塗布しない蛍光ランプと同じレベルまで管電圧が上昇してしまう問題点があった。
【0005】
他方、電極材料については、現在主流であるNi電極に変わり、より仕事関数の低いMo,Nb,Ta等を使用して陰極低下電圧を低減する研究開発が進んでいるが、コスト的な問題があり、現在までのところ主流になっていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来の記述的課題に鑑みてなされたもので、管電圧を低減し、かつ点灯中にもその効果を保持できる冷陰極蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の冷陰極蛍光ランプは、ガラスバルブ内壁面に蛍光体被膜が形成され、前記ガラスバルブ内に放電媒体が封入され、前記ガラスバルブの両端部それぞれに、中の電極材料よりも仕事関数の低い物質の表層の形成された電極が互いに対向するように封着されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明の冷陰極蛍光ランプは、ガラスバルブ内壁面に蛍光体被膜が形成され、前記ガラスバルブ内に放電媒体が封入され、前記ガラスバルブの両端部それぞれに、シリカ系化合物の表層の形成された電極が互いに対向するように封着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極表面にシリカ系化合物のように電極材料よりも仕事関数の低い物質の表層を電極表面に形成することによって、管電圧の低減を防ぎ、かつ点灯中にもその効果を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の1つの実施の形態の冷陰極蛍光ランプ11の構成を示している。本実施の形態の冷陰極蛍光ランプ11は、従来例と同様にガラスバルブ1の内壁面に蛍光体被膜2が形成され、ガラスバルブ1内に水銀と希ガス(例えばNeとAr)の放電媒体が封入され、ガラスバルブ1の両端部それぞれに有底筒体の電極3が互いに対向するように封着されている。
【0011】
電極3は、導入線4と一体的に接合されていて、これにビーズガラス5を被せ、ガラスバルブ1の端部にビーズガラス5を加熱して封着することによって導入線4と共に取り付けられたものである。この電極3はNi製の有底筒体であり、図2に示すようにその外周面にシリカ系化合物の表層としてSiO2 層31が形成してある。電極3の表層31のSiO2 は電極材Niよりも仕事関数が低い物質である。図3の表は、NiとSiO2 との仕事関数を示している。
【実施例1】
【0012】
本発明の冷陰極蛍光ランプの実施例1として、バルブ径φ2.2mm、内径φ1.8mm、バルブ全長150mm、電極間距離140mm、放電媒体としてArとNeの混合希ガスと水銀を封入したもので、Ni材の電極3の表層にSiO2 を1μm形成したものを作成した。また比較例1として、実施例1と同寸法であり、ただし電極がNi材であり、表層を形成していないものも作成した。
【0013】
そして、実施例1と比較例1の冷陰極蛍光ランプを点灯させ、それらの管電圧と管壁温度を測定した。管電圧の測定結果は図4に示し、管壁温度の測定結果は図5に示してある。これらの測定結果から、実施例1の冷陰極蛍光ランプは図7に示した従来例に対応する比較例1の冷陰極蛍光ランプよりも約25V管電圧が低減されることが確かめられた。また実施例1の冷陰極蛍光ランプは比較例1のものよりも管壁温度が約15℃低減されることが確かめられた。
【0014】
さらに、比較例2として、図8に示した従来例に対応する冷陰極蛍光ランプを実施例1と同寸法で作成した。そして実施例1と比較例2について、常温寿命特性を測定した。その結果は図6に示してある。この測定結果から、電極表層にLaB6 層を形成した比較例2のものでは3000時間を超えたあたりからランプ電圧が上昇を始めて寿命が到来したが、同層にSiO2 層を形成した実施例1の冷陰極蛍光ランプは6000時間の連続点灯でもランプ電圧が上昇することがなく、ランプ寿命を延すことができることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施の形態の冷陰極蛍光ランプの断面図。
【図2】図1における電極部分の拡大斜視図。
【図3】電極材Niと表層材SiO2 の仕事関数の比較表。
【図4】実施例1と比較例1とのランプ電圧特性の測定グラフ。
【図5】実施例1と比較例1との電極温度特性の測定グラフ。
【図6】実施例1と比較例2とのランプ寿命特性の測定グラフ。
【図7】従来例の断面図。
【図8】別の従来例の断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 ガラスバルブ
2 蛍光体被膜
3 電極
31 SiO2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバルブ内壁面に蛍光体被膜が形成され、
前記ガラスバルブ内に放電媒体が封入され、
前記ガラスバルブの両端部それぞれに、中の電極材料よりも仕事関数の低い物質の表層の形成された電極が互いに対向するように封着されていることを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。
【請求項2】
ガラスバルブ内壁面に蛍光体被膜が形成され、
前記ガラスバルブ内に放電媒体が封入され、
前記ガラスバルブの両端部それぞれに、シリカ系化合物の表層の形成された電極が互いに対向するように封着されていることを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−4663(P2006−4663A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177113(P2004−177113)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】