説明

冷陰極電離真空計及び圧力測定方法

【課題】強酸化性ガスやその他の膜生成ガスなどカソード汚染ガスを含む圧力被測定環境において、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度に圧力を測定すること。
【解決手段】カソード2a、2bから熱電子放出を起こさないような温度にカソード2a、2bを加熱し、該アノード1とカソード2a、2bの間に直流電圧を印加し、かつアノード1とカソード2a、2bの間の空間に磁場を形成して放電を発生させ、その放電電流を測定することによって、真空容器12内の圧力を測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置内の圧力(真空度)を測定する冷陰極電離真空計及び該冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁場を用いる冷陰極電離真空計は基本的にアノードとカソードの2電極で構成される放電現象を利用する真空計で、カソードを略室温で用いることから冷陰極型電離真空計と称される。図7に示すようなペニング型のもの、図8に示すようなマグネトロン型のもの、また図9に示すような逆マグネトロン型のもの等が知られている。
【0003】
図7、図8、図9に示した冷陰極電離真空計は、真空容器C内に種々の形状のアノードAと、カソードKとを備え、更にアノードAに接続される直流電源と、アノードAの軸に沿う磁場Bを形成する手段とを備えている。
【0004】
このような冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法では、アノードAとカソードKの間に直流電圧を印加し、かつ磁場Bを形成してアノードAとカソードKとで画定される空間に持続放電を発生させ、その放電電流を測定することによって真空容器C内の圧力を測定する。即ち、アノードAとカソードKとで画定される空間で電界放出や宇宙線などの原因で電子が発生すると、電子はカソードKからアノードAに向かって加速されるが、電界と磁界が存在するために電子はローレンツ力を受けて、すぐにはアノードAに到達せず、空間内で螺旋運動して、長い距離を移動する。その結果、空間内の残留ガスと衝突して残留ガスをイオン化する確率が増し、カソードKとアノードAの間に持続放電が発生する。放電電流は空間の残留ガス分子の数に依存するので、放電電流を測定することによって空間内の圧力、ひいては真空計とつながっている被測定真空容器内の圧力を知ることができる。
【0005】
上記冷陰極電離真空計は、熱陰極電離真空計であるベアード−アルパート(BA)型真空計と異なり、いずれも熱電子を放出する熱陰極フィラメントを持たないため、計測中にフィラメントが切れる心配がなく、スパッターや真空蒸着の製造工場や長期間運転される加速器など過酷な条件や長期安定性を求められる分野では不可欠な真空計となっている。
【特許文献1】特開平6−26967号公報
【特許文献2】特開平10−19711号公報
【特許文献3】特開2000−39375号公報(特許3746376号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷陰極電離真空計は、以下に説明するように、大気開放などを繰り返した場合、或いは汚染物質分子を含むガス組成の環境で使用した場合、電離真空計の感度が徐々に低下し、正確な圧力測定ができなくなる問題が生じる。
【0007】
即ち、最近の真空装置では、真空モータ、ソレノイド、位置検出計など有機絶縁物で製作された電気部品が真空装置内に取り付けられるため、有機絶縁物、例えばシリコンゴムなどからはシロキサン、有機機械部品からは熱可塑性樹脂の可塑剤として添加されるフタル酸、アジピン酸などが蒸気となって放出され、真空計を汚染する。図7、図8、或いは図9に示す冷陰極電離真空計を用いた場合、最悪1日程度で放電が停止してしまうような問題が発生する。汚染分子が電離真空計内に飛び込むと、その汚染分子は電子衝撃を受けて分解、イオン化し、陽イオンとなってカソードKに到達する。カソードKに到達した汚染物質(分解分子)は電子を受け取って中性になるが、ラジカル状態にあるから次々と飛び込んでくる汚染物質同士と重合反応を起こし高分子化してカソードK表面に堆積し、電気を通しにくい被膜を形成する。このため、後から飛来する陽イオンはカソードKに流れ込みにくくなり、これにより感度が低下する。更にその被膜が厚くなると、最悪の場合、その被膜により放電が停止ししたり、放電が起動しないなどの問題が発生する。
【0008】
このような問題が発生すると、真空計としての機能は失われるため、真空装置を使う量産工場では、製造される製品にバラツキが発生したり、不良品が出たりするなど、大問題が発生してしまう。これを避けるために、現在は電離真空計の測定子を定期的に交換して使用するなどしているが、手間もコストもかかる。また、頻繁に測定子の交換を行ったとしても、感度の低下は連続して起こるので、交換直後だけが正しい圧力を示し、それ以降は常に低い圧力を示すようになり正しい圧力を測定できなくなる。
【0009】
また、従来の図7、図8、及び図9の冷陰極電離真空計のカソードKを構成する材料は、通常金属で製作されているため、汚染物質が強酸化性のガス分子(例えば酸素、オゾン、ハロゲン、ハロゲン化物)であった場合、カソードKは容易に酸化されてしまい、金属酸化物の被膜が形成されてしまう。金属酸化膜は通常は不導体であることが多く、これにより放電が停止してしまう。従って、このような環境では、従来の冷陰極電離真空計により圧力計測を行うことは不可能であった。
【0010】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、強酸化性ガスやその他の膜生成ガスなどカソード汚染ガスを含む圧力被測定環境において、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度に圧力を測定することができる冷陰極電離真空計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、第1の発明は、冷陰極電離真空計に係り、真空容器と、前記真空容器内に設けられたアノードと、前記真空容器内に設けられたカソードと、前記アノードと前記カソードの間に直流電圧を印加する手段と、前記アノードと前記カソードの間の空間に磁場を形成する手段とを備え、前記真空容器内の圧力を測定する冷陰極電離真空計であって、前記圧力の測定中、前記カソードからの熱電子放出を起こさないような温度範囲内で前記カソードを加熱する手段を備えたことを特徴とし、
第2の発明は、第1の発明の冷陰極電離真空計に係り、前記温度範囲の下限は200℃であることを特徴とし、
第3の発明は、第1又は第2の発明の何れか一の冷陰極電離真空計に係り、前記カソードの加熱は、前記カソードに接続された電力供給源によって行われ、該電力供給源により前記カソードに電力を供給することにより、前記カソード自身の抵抗に該電力を消費させて前記カソード自身を発熱させることを特徴とし、
第4の発明は、第3の発明の冷陰極電離真空計に係り、前記電力供給源より前記電力を連続的に供給し、又は前記電力を断続的に供給することを特徴とし、
第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れか一の冷陰極電離真空計に係り、前記カソードを構成する材料は、タンタル、タングステン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム、白金、イリジウム、チタン、或いはこれらの少なくともいずれか一を含む合金のうちいずれか一であることを特徴とし、
第6の発明は、第1乃至第4の発明の何れか一の冷陰極電離真空計に係り、前記カソードを構成する材料は導電性セラミック、電気伝導性酸化物又は黒鉛で構成されていることを特徴とし、
第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れか一の冷陰極電離真空計に係り、前記冷陰極電離真空計は、ペニング型、マグネトロン型、或いは逆マグネトロン型のいずれか一である
第8の発明は、圧力測定方法に係り、真空容器と、前記真空容器内のアノードと、前記真空容器内のカソードと、前記アノードと前記カソードの間に直流電圧を印加する手段と、前記アノードと前記カソードの間の空間に磁場を形成する手段とを備えた冷陰極電離真空計を用い、該カソードから熱電子放出を起こさない温度に前記カソードを加熱し、該アノードと該カソードの間に直流電圧を印加し、かつ該アノードと該カソードの間の空間に磁場を形成して放電を発生させ、その放電電流を測定することによって、前記真空容器内の圧力を測定することを特徴とし、
第9の発明は、第8の発明の圧力測定方法に係り、前記温度範囲の下限は200℃であることを特徴とし、
第10の発明は、第8又は第9の発明のいずれか一の圧力測定方法に係り、前記放電を発生させる前に、前記カソードを予備加熱することを特徴とし、
第11の発明は、第10の発明の圧力測定方法に係り、前記カソードを予備加熱するため、前記カソードに断続的に電力を印加することを特徴とし、
第12の発明は、第8乃至第10の発明のいずれか一の圧力測定方法に係り、前記放電の起動のため、前記圧力測定時の温度よりも高い温度で前記カソードを加熱することを特徴とし、
第13の発明は、第12の発明の圧力測定方法に係り、前記起動用放電を発生させるため、前記カソードに断続的に電力を印加して前記カソードを加熱することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷陰極電離真空計においては、真空容器内にアノードとカソードとを備え、さらに、圧力の測定中、カソードからの熱電子放出を起こさないような温度範囲内でカソードを加熱する手段を備えている。
【0013】
本発明では、元々熱電子を放出するためにカソードを加熱せず、カソードに到達した汚染物質を除くためにカソードを加熱している。これにより、カソード表面に汚染物質による高分子絶縁膜が形成されるのを防止することが可能になるので、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0014】
このとき、温度範囲の下限を200℃としている。カソードを昇温し、特にカソードの表面温度を200℃以上に昇温することにより、カソードに到達した汚染物質を、カソード表面から速やかに離脱させることができる。
【0015】
また、カソードの加熱温度の上限は、カソードから熱電子が発生しない温度以下に抑えられているため、ベアード−アルパート(BA)型電離真空計の熱陰極フィラメントの加熱温度(1100℃以上)に比べて、低い(1000℃以下)。しかも、ペニング型の場合、カソードは板状であるため、昇温中に断線する心配は全くない。また、マグネトロン型や逆マグネトロン型においてもカソードは棒状であり、熱陰極フィラメントに比べれば、100倍以上太くすることが可能であるため、断線の心配はない。
【0016】
更に、カソードの加熱温度の上限が、カソードから熱電子が発生しない温度以下に抑えられているため、カソードから熱電子が放出されることが無く、従って、通常のアノードとカソードの2電極で構成される放電現象を擾乱せずに、放電電流を計測することが可能となる。これにより、汚染の影響を受けず、長期間にわたり安定で、信頼性の高い圧力測定を行うことが可能となる。
【0017】
また、カソードの構成材料として、酸化物焼結体などの電気伝導性酸化物や導電性セラミックを用いることにより、酸素やオゾンなどの酸化性ガス中で動作させたとしても、酸化物で構成されたカソードの酸化は進行しない。即ち、これまでの金属製のカソードを備えた冷陰極電離真空計を用いては、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止によって圧力計測が不可能であった圧力被測定雰囲気中でも、酸化物焼結体などの電気伝導性酸化物又は導電性セラミックを用いることにより、酸化物の生成による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0018】
また、カソードの構成材料として、黒鉛を用いた場合はハロゲンガスやハロゲン化合物の汚染ガスとの反応が起こりにくく、長期間に渡って信頼性の高い安定な圧力測定が可能である。
【0019】
本発明の冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法においては、放電を発生させる前に、カソードを予備加熱している。
【0020】
ところで、圧力測定前にカソード表面に汚染物質が形成されていた場合、放電開始が困難になることや感度が低下することが考えられる。このような場合、本発明の冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法のように、放電開始前に圧力測定中の温度よりも高い温度でカソードを予備加熱して、圧力測定前にカソード表面から汚染物質を除去することにより、放電を確実に起こさせるとともに、感度の低下を防止して、より安定で、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0021】
また、アノードとカソードの間に直流電圧を印加し、かつアノードとカソードの間の空間に磁場を形成するとともに圧力測定時の温度よりも高い温度でカソードを加熱することにより起動用の初期放電を発生させ、その後に、放電を持続しつつ、カソードの表面温度を200℃以上で、かつカソードから熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保ち、真空容器内の圧力測定を開始している。
【0022】
圧力測定前にカソード表面が汚染されていた場合、汚染が大量であった場合、或いは圧力が低い場合など、放電開始が困難になること、或いは放電中に放電停止が起こることも予想される。この場合、好ましくはパルス状の比較的大きい電力を印加してカソードを加熱することによりカソードからガスが放出され、これによりカソード周辺の圧力を増大させることができるため放電が起きやすくなる。このように起動用の放電を起こさせてから、放電を持続しつつ、真空容器内の圧力測定を開始するようにすることで、広範囲な圧力測定環境において容易に、かつ確実に放電を起こさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るペニング型の冷陰極電離真空計を示す模式斜視図である。
【0025】
冷陰極電離真空計が収納される一点鎖線で示した真空容器12は、フランジ部(図示せず)を介して、矢印13の方向にある内部圧力が測定される真空容器(被測定真空容器)のフランジに取り付けられる。
【0026】
図1に示すペニング型の冷陰極電離真空計では、真空容器12内に、円筒状のアノード1が配置され、円筒状のアノード1の上部及び下部両方に円筒の開口端に対向し、覆い被さるようにそれぞれ円板状のカソード2a、2bが配置されている。
【0027】
アノード1は、リード線5を介して高圧電流導入端子7に接続され、さらにこの高圧電流導入端子7を介して直流電源9の正側の出力端子に接続されている。この場合、高圧電流導入端子7は真空容器壁8に形成された貫通穴を通して真空容器12の内部から外部に引き出されている。また、直流電源9の負側の出力端子は放電電流を計測するための電流計10を介して接地されている。アノード1には直流電源9により通常2乃至5kVの正の直流電圧が印加される。
【0028】
上部のカソード2aは一端が加熱用電源(加熱手段)11に接続され、下部のカソード2bは一端が接地されている。さらに、上部のカソード2a及び下部のカソード2bの他端同士は接続導線3によって相互に接続されている。
【0029】
なお、上部のカソード2aと加熱用電源11の間、及び下部のカソード2bと接地の間の詳細な接続は、次のようになっている。即ち、上部のカソード2aはリード線4aを介して電流導入端子6に接続され、更にこの電流導入端子6を介して加熱用電源(加熱手段)11の一端子に接続されている。電流導入端子6は真空容器壁8に形成された絶縁された貫通穴を通して真空容器12の内部から外部に引き出されている。また、下部のカソード2bは、リード線4bを介して、接地された真空容器壁8に接続されている。
【0030】
カソード2a、2bは比較的抵抗の高い導電材料が用いられる。そのような導電材料として、例えば、タンタル、タングステン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム、白金、イリジウム、チタン、或いはこれらの少なくともいずれか一を含む合金のうちいずれか一や、酸化レニウム焼結体のような電気導電性酸化物や、黒鉛のような非金属の電気伝導体などを用いることができる。
【0031】
以上のように、上部のカソード2a及び下部のカソード2bは加熱用電源11に対して直列接続されており、上部のカソード2a及び下部のカソード2bに加熱用電源11から交流電力が供給されることにより、カソード2a、2bの電気抵抗により電力が消費され、カソード2a、2b自身が発熱する。
【0032】
さらに、図示してはいないが、カソード2a、2bの表面温度を200℃以上で、かつカソード2a、2bから熱電子の放出が起こらないような温度範囲内に保つように加熱用電源11による加熱を制御するマイコンなど制御装置(制御手段)を備えている。なお、マイコンなどの制御装置によらなくても手動で加熱用電源11による加熱を制御することもできる。
【0033】
加熱する温度の下限を200℃とする理由は、発明者として本願発明者を含む特開2000−39375号公報(特許3746376号)に記載されているように、本発明者の実証に基づく。即ち、超高真空の圧力を測定する際、超高真空領域の残留ガス分子(水素と一酸化炭素)が熱陰極電離真空計のグリッド電極に吸着することによって誤差が発生するが、グリッド電極を昇温させることによって吸着分子を減らすことが可能であることが分かった。この場合、特に200℃を越えたあたりから600℃にかけて、誤差となる残留ガス分子の吸着が減少している。従って、金属表面上で、汚染物質の吸着を抑える温度を200℃以上に設定することが重要であり、これは、熱陰極電離真空計のグリッド電極に限らず、本発明における冷陰極電離真空計を構成するカソードにも適用できるものである。
【0034】
この冷陰極電離真空計では、さらに、真空容器12の外側に円筒状のアノード1の中心軸方向(符号B方向)に磁場を形成するように磁石(図示せず)が配置されている。
【0035】
上記冷陰極電離真空計においては、カソード2a、2bの表面温度を200℃以上で、かつカソード2a、2bから熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保った状態で、アノード1とカソード2a、2bの間に直流電圧を印加し、かつ磁場Bを利用してアノード1とカソード2a、2bとで画定される空間に持続放電を発生させ、その放電電流を測定することによって真空容器12内の圧力を測定する。
【0036】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る冷陰極電離真空計においては、真空容器12内にアノード1とカソード2a、2bとを備え、さらに、カソード2a、2bを加熱するための加熱用電源11と、カソード2a、2bの表面温度を200℃以上で、かつカソードが熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保つように加熱用電源11による加熱を制御する制御装置とを備えている。
【0037】
このような装置構成により、カソード2a、2bを昇温し、特にカソード2a、2bの表面温度を200℃以上の温度範囲内に昇温することにより、カソード2a、2bに到達した汚染物質及び汚染物質イオンを、カソード2a、2b表面から速やかに離脱させることができる。これにより、カソード2a、2b表面に高分子絶縁膜が形成されるのを防止することが可能になるので、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0038】
また、カソード2a、2bの加熱温度の上限は、カソード2a、2bから熱電子が発生しない温度以下に抑えられているため、ベアード−アルパート(BA)型電離真空計の熱陰極フィラメントの加熱温度(1100℃以上)に比べて、低い(1000℃以下)。しかも、カソード2a、2bは板状であるため、昇温中に断線する心配は全くない。
【0039】
更に、カソード2a、2bの加熱温度の上限が、カソード2a、2bから熱電子が発生しない温度以下に抑えられているため、カソード2a、2bから熱電子が放出されることが無く、従って、アノード1とカソード2a、2bの2電極で構成される放電現象を擾乱せずに、放電電流を計測することが可能となる。これにより、汚染の影響を受けず、長期間にわたり安定で、信頼性の高い圧力測定を行うことが可能となる。なお、カソード2a、2bの温度を上げて熱電子を放出した場合は、電子レンジに使用されているようなマグネトロン発振器のようなマイクロ波発生現象が起こるとともに、熱陰極マグネトロン真空計のような熱陰極型電離真空計になってしまう。
【0040】
また、カソード2a、2bの構成材料として、酸化物焼結体などの電気導電性酸化物や導電性セラミックを用いることにより、酸素やオゾンなどの酸化性ガス中で動作させたとしても、酸化物であるカソードの酸化は進行しない。即ち、これまでの金属製のカソードを備えた冷陰極電離真空計を用いては、酸化物の形成による感度の低下、及び放電停止によって圧力計測が不可能であった圧力被測定雰囲気中でも、酸化物焼結体などの導電性セラミックを用いることにより、酸化物の形成による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0041】
また、カソード2a、2bの構成材料として、黒鉛を用いた場合はハロゲンガスやハロゲン化合物の汚染ガスとの反応が起こりにくく、長期間に渡って信頼性の高い安定な圧力測定が可能である。
【0042】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係るペニング型の例陰極電離真空計の別の構成を示す模式斜視図である。
【0043】
図2の構成において、図1の構成と相違する点は、カソード2c、2dと、カソード2c、2d同士を直列接続する接続導体3aとが、一枚の金属板を逆コの字状に曲げて、一体的に形成されていることである。
【0044】
その他の構成については、図1と同じであり、図2において、図1の構成要素と同じ構成要素は図1と同じ符号で示す。
【0045】
この実施形態のペニング型の冷陰極電離真空計においても、第1の実施形態と同じように、上部のカソード2c及び下部のカソード2dは加熱用電源11に対して直列接続されており、上部のカソード2c及び下部のカソード2dには加熱用電源11から交流電力が供給され、これにより、カソード2c、2dの電気抵抗により電力が消費されて、カソード2c、2d自身が発熱する。
【0046】
この実施形態においても、第1の実施形態と同じように、カソード2c、2dを加熱するための加熱用電源11と、カソード2c、2dの表面温度を200℃以上で、かつカソードが熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保つように加熱電源11による加熱を制御する制御装置とを備えているため、圧力測定中に、カソード2c、2d表面に高分子絶縁膜が形成されるのを防止することが可能になる。これにより、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0047】
また、カソード2a、2bの加熱温度の上限は、低く、しかも、カソード2c、2dは板状であるため、昇温中に断線する心配は全くない。
【0048】
さらに、カソード2c、2dから熱電子が放出されることが無いため、アノード1とカソード2c、2dの2電極で構成される放電現象を擾乱せずに、放電電流を計測することが可能となる。これにより、汚染の影響を受けず、長期間にわたり安定で、信頼性の高い圧力測定を行うことが可能となる。
【0049】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係るマグネトロン型の冷陰極電離真空計の構成を示す模式斜視図である。
【0050】
図3に示すマグネトロン型の冷陰極電離真空計においては、一点鎖線で示された真空容器12内に、円筒の両側開放端が絞られた形状のアノード1aが配置され、円筒状アノード1aの中心軸上に棒状のカソード2eが配置されている。
【0051】
アノード1aは、リード線5及び高圧電流導入端子7を介して直流電源9の正側に接続されている。直流電源9の負側は電流計10を介して接地されている。高圧電流導入端子7は真空容器壁8の絶縁された貫通穴を介して真空容器12の内部から外部に引き出されている。アノード1aには直流電源9により通常2乃至5kVの正の直流電圧が印加される。
【0052】
棒状のカソード2eは上端でリード線4a及び電流導入端子6を介して加熱用電源11に接続され、その下端でリード線4bを介して、接地された真空容器12の容器壁8に接続されている。電流導入端子6は真空容器壁8の絶縁された貫通穴を介して真空容器12の内部から外部に引き出されている。カソード2eに加熱用電源11から交流電力が供給されると、カソード2eの電気抵抗により電力が消費され、カソード2e自身が発熱する。
【0053】
また、第1の実施形態と同様な構成の制御装置を有する。
【0054】
また、真空容器12の外側には円筒状のアノード1aの軸方向に磁場を形成する磁石(図示せず)が配置され、符号B方向の磁力線を形成している。
【0055】
上記冷陰極電離真空計においても、カソード2eの表面温度を200℃以上で、かつカソード2eから熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保った状態で、アノード1aとカソード2eの間に直流電圧を印加し、かつ磁場Bを利用してアノード1aとカソード2eとで画定される空間に持続放電を発生させ、その放電電流を測定することによって真空容器12内の圧力を測定する。
【0056】
以上のように、この実施形態においても、第1の実施形態と同じように、真空容器12内にアノード1aとカソード2eとを備え、さらに、カソード2eを加熱するための加熱用電源11と、カソード2eの表面温度を200℃以上で、かつカソード2eが熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保つように加熱用電源11による加熱を制御する制御装置とを備えている。
【0057】
これにより、圧力測定中、カソード2e表面に高分子絶縁膜が形成されるのを防止することができるので、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0058】
また、カソード2eの加熱温度の上限は、低く、しかも、カソード2eは棒状であり、熱陰極フィラメントに比べれば、100倍以上太くすることが可能であるため、断線の心配はない。
【0059】
さらに、カソード2eから熱電子が放出されることが無いため、アノード1aとカソード2eの2電極で構成される放電現象を擾乱せずに、放電電流を計測することが可能となる。これにより、汚染の影響を受けず、長期間にわたり安定で、信頼性の高い圧力測定を行うことが可能となる。
【0060】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係るマグネトロン型の冷陰極電離真空計の別の構成を示す模式斜視図である。
【0061】
図4の構成において、図3の構成と相違する点は、棒状カソード2fがヘアピン構造となっていることである。その端はリード線4a、4bを介して真空壁8の外部と接続されている。その外部接続構成は図3と同じ構成になっている。図4において、図3の構成要素と同じ構成要素は図3と同じ符号で示す。更に、その他の構成は図1の実施例と実質的に同じ構成となっている。
【0062】
この構成の真空計は、リード線4a、4b、5の3本全てを磁力線Bと平行な方向(図4における縦軸方向)で真空壁の側にだけ向かわせて構成することが可能であるため、円筒状の永久磁石で軸方向に着磁した中心に、円筒状の真空壁を挿入した、特開平10−19711号公報の図14に類似の構成の電離真空計とすることができる。
【0063】
以上の構成により、カソード2fには加熱用電源11から交流電力が供給されると、カソード2fの電気抵抗により電力が消費され、カソード2f自身が発熱する。
【0064】
以上のように、この実施形態においては、第1の実施形態と同じように、カソード2fを加熱するための加熱用電源11と、カソード2fの表面温度を200℃以上で、かつカソードが熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保つように加熱用電源11による加熱を制御する制御装置とを備えている。
【0065】
これにより、カソード2f表面に高分子絶縁膜が形成されるのを防止することが可能になるため、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0066】
また、カソード2fの加熱温度の上限は、低く、しかも、カソード2fは棒状であり、熱陰極フィラメントに比べれば、100倍以上太くすることが可能であるため、断線の心配はない。
【0067】
さらに、カソード2fから熱電子が放出されることが無いため、アノード1aとカソード2fの2電極で構成される放電現象を擾乱せずに、放電電流を測定することが可能となる。これにより、汚染の影響を受けず、長期間にわたり安定で、信頼性の高い圧力測定を行うことが可能となる。
【0068】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態に係る逆マグネトロン型の電離真空計の構成を示す模式斜視図である。
【0069】
図5に示すように、この実施形態の逆マグネトロン型の冷陰極電離真空計においては、真空容器12内に、棒状のアノード1bを中心にして棒状でスパイラル状のカソード2gが配置されている。この実施形態の逆マグネトロン型の冷陰極電離真空計においては、図3、4のマグネトロン型の電離真空計とアノードとカソードの電極配置が逆転しており、逆マグネトロン型電離真空計と称される所以である。
【0070】
棒状のアノード1bには、リード線5及び高圧電流導入端子7を介して直流電源9が接続されている。また、直流電源9の負側は電流計10を介して接地されている。高圧電流導入端子7は真空容器壁8の絶縁された貫通穴を介して真空容器12の内部から外部に引き出されている。アノード1bには直流電源9から通常2乃至5kVの正の直流電圧が印加される。
【0071】
棒状でスパイラル状のカソード2gの上端はリード線4a及び電流導入端子6を介して加熱用電源11に接続され、その下端はリード線4bを介して、接地された真空容器12の容器壁8に接続されている。電流導入端子6は容器壁8の絶縁された貫通穴を介して真空容器12の内部から外部に引き出されている。カソード2gには加熱用電源11から交流電力が供給されると、カソード2gの電気抵抗により電力が消費され、カソード2g自身が発熱する。
【0072】
また、第1の実施形態と同様な構成の制御装置を有する。
【0073】
さらに、真空容器12の外側には円筒状のアノード1bの軸方向に磁場を形成する磁石(図示せず)が配置され、符号B方向の磁力線を形成している。
【0074】
上記冷陰極電離真空計においても、カソード2gの表面温度を200℃以上で、かつカソード2gから熱電子放出を起こさないような温度範囲内に保った状態で、アノード1bとカソード2gの間に直流電圧を印加し、かつ磁場Bを利用してアノード1aとカソード2gとで画定される空間に持続放電を発生させ、その放電電流を測定することによって真空容器12内の圧力を測定する。
【0075】
以上のように、この実施形態においても、カソード2gの表面温度を200℃以上の温度範囲内に昇温することにより、カソード2gに到達した汚染物質を、カソード2g表面から速やかに離脱させることができる。これにより、カソード2g表面に高分子絶縁膜が形成されるのを防止することができるので、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0076】
また、カソード2gの加熱温度の上限は、カソード2gから熱電子が発生しない温度以下に抑えられているため、熱陰極フィラメントに比べて低く、しかも、カソード2fは棒状であり、熱陰極フィラメントに比べれば、100倍以上太くすることが可能であるため、断線の心配はない。
【0077】
さらに、カソード2gの加熱温度の上限は、カソード2gから熱電子が発生しない温度以下に抑えられているため、カソード2gから熱電子が放出されることが無く、従って、アノード1aとカソード2gの2電極で構成される放電現象を擾乱せずに、放電電流を測定することが可能となる。これにより、汚染の影響を受けず、長期間にわたり安定で、信頼性の高い圧力測定を行うことが可能となる。
【0078】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る、上記冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法について説明する。図6は、本実施形態である、上記冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法を示すフローチャートである。
【0079】
図1及び図2の実施形態の場合、円筒状アノード1と板状のカソード(2a、2b)、(2c、2d)で挟まれた空間に、電界と磁界を発生させる。また、図3と図4の実施形態の場合、円筒状アノード1aと棒状カソード2eまたはヘアピン形状カソード2fで挟まれた空間に、電界と磁界を発生させる。さらに、図5に示す実施形態の場合、スパイラル状カソード2gと棒状アノード1bで挟まれた空間に電界と磁界を発生させる。これにより、何れもその空間で放電が起こるようになっている。
【0080】
以下では、これらのうち、代表して、図1に示すペニング型の電離真空計を用いた圧力測定方法について説明する。
【0081】
図6に示すように、まず、カソード2a、2bに、カソード2a、2bを加熱するための加熱用電源11を接続する。
【0082】
次いで、真空容器12の外側に磁石(図示せず)を配置し、アノードとカソードとで画定される空間であって円筒状のアノード1の中心軸方向に磁場を形成する。図1では、磁力線が下から上に向く方向(符号B方向)である。なお、磁場の形成は、ここでは行わず次の工程である予備加熱の工程の後に行ってもよい。
【0083】
次に、加熱用電源11から交流電力を供給して、カソード2a、2bを予備加熱する。この場合、カソード2a、2b自身の抵抗による電力消費によりカソード2a、2b自身が発熱する。このときの温度は、放電を発生させて圧力を測定するときの温度よりも高くても低くてもよく、カソード表面から汚染物質を除去できればよい。
【0084】
ところで、圧力測定前の電離真空計のカソード2a、2b表面に汚染物質(高分子絶縁膜又は酸化物)が形成されている場合、放電開始が困難になることや感度が低下することが考えられる。このような場合、圧力測定前にカソードを予備加熱してカソード表面から汚染物質等を除去することにより、放電を確実に起こさせるとともに、感度の低下を防止して、より安定で、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0085】
次に、アノード1とカソード2a、2bとで画定される空間に磁場を形成した状態で、パルス状の比較的大きい電力をカソードに印加してカソードを加熱し、かつアノード1とカソード2a、2bの間に直流電圧を印加し、起動用の放電を起こさせる。この場合、加熱温度は、圧力測定中の加熱温度よりも高くても低くてもよいが、高い方が望ましい。
【0086】
ところで、カソード2a、2b表面に汚染物質が形成されていた場合、汚染が大量であった場合、或いは圧力が低い場合など、放電開始が困難になること、又は放電中に放電停止が起こることも予想される。この場合、好ましくはパルス状の比較的大きい電力を印加してカソード2a、2bを加熱して放電が起きやすくすることが望ましい。これは、カソード2a、2bが加熱されると、カソード2a、2bからガスが放出されるため、カソード2a、2b周辺の圧力が増大し、放電が起きやすくなるためである。
【0087】
アノード1とカソード2a、2bによって画定される空間で電界放出や宇宙線などの原因で電子が発生すると、発生した電子はカソード2a、2bからアノード1に向かって加速されるが、磁界が存在するためローレンツ力を受けて、すぐにはアノード1に到達せず、空間内で螺旋運動して、長い距離を飛行する。その結果、電子が空間内の残留ガスと衝突して、残留ガスをイオン化する確率が増し、カソード2a、2bとアノード1との間に持続放電が発生する。
【0088】
このように起動用の放電を起こさせてから、放電を持続しつつ、真空容器内の圧力測定を開始するようにすることで、広範囲な圧力測定環境において容易に、かつ確実に放電を起こさせることができる。
【0089】
起動用の放電が発生した後、その放電を持続しつつ、加熱用電源11の電圧を適切に選び、カソード2a、2bを加熱する。このとき、カソード2a、2bの表面温度が200℃以上で、かつカソード2a、2bからの熱電子放出が起こらないような温度範囲内に保持する。カソード2a、2bの構成材料として、上記金属又は合金を用いた場合、温度を200℃から1000℃の間に、好ましくは500〜600℃に保持する。
【0090】
この温度を維持し、持続放電を維持して、真空容器12内の圧力測定を開始する。なお、この場合、加熱用電源11は接地電位なので、加熱状態を保ってもカソード2a、2bとアノード1の間の空間内の放電状態を乱すことは無い。なお、放電維持中に放電の停止が起こった場合はパルス電力印加によるパルス昇温によりカソード2a、2bを一時的に1000℃程度で数秒間保持することにより放電を再起動させることが可能である。
【0091】
加熱用電源11によりカソード2a、2b表面を200℃以上に昇温しているので、持続放電を維持して真空容器内の圧力測定中に、真空計内に汚染物分子が飛び込んで来てもカソード2a、2b表面には汚染物分子が付着しない。
【0092】
以下に、カソード2a、2b表面に汚染物分子が付着しない理由についてより詳しく説明する。真空容器12内に昇華温度が400℃の汚染物質の気体分子が飛来することが予想される場合、加熱用電源11の電力を調整してカソード2a、2bの温度を略500℃程度まで昇温しておく。カソード2a、2bに到達した汚染物質イオンは電子を受け取って中性分子となるが、カソード2a、2bを昇温しているため、カソード2a、2bの表面上から速やかに蒸発して飛び去り、その結果、カソード2a、2b表面上に重合反応による高分子膜が形成されるのを防止することができる。
【0093】
以上のように、本発明の実施形態の冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法においては、圧力測定中にカソード2a、2b表面上に重合反応による高分子膜が形成されるのを防止することができるため、カソード汚染による感度の低下、及び放電停止を防止することによって、安定に、かつ高精度な圧力測定が可能になる。
【0094】
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0095】
例えば、上記実施形態では、交流電力を供給する加熱用電源11を用いて交流電力を供給しているが、直流電力を供給する加熱用電源を用いて直流電力を供給してもよい。
【0096】
また、上記第6の実施形態では、予備加熱と起動用放電のための加熱をともに行っているが、予備加熱だけでもよいし、起動用放電のための加熱だけでもよいし、或いは両方行わなくてもよい。
【0097】
また、予備加熱は、連続的に電力を加えてもよいし、断続的(パルス的)に電力を加えてもよい。
【0098】
また、起動用放電のための加熱は、断続的(パルス的)に電力を加えて行っているが、連続的に電力を加えて行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、真空技術が不可欠な半導体産業、各種薄膜の成膜産業、表面分析機器、電子顕微鏡などの各種商品開発、生産技術、更には加速器科学など基礎研究部門等に用いられる真空装置の圧力計測に使用される冷陰極電離真空計及び圧力測定方法において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態であるペニング型の冷陰極電離真空計の模式斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるペニング型の冷陰極電離真空計の模式斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態であるマグネトロン型の冷陰極電離真空計の模式斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施形態であるマグネトロン型の冷陰極電離真空計の模式斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施形態である逆マグネトロン型の冷陰極電離真空計の模式斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施形態である冷陰極電離真空計を用いた圧力測定方法を示すフローチャートである。
【図7】従来技術によるペニング型の冷陰極電離真空計の一例を示す模式斜視図である。
【図8】従来技術によるマグネトロン型の冷陰極電離真空計の一例を示す模式斜視図である。
【図9】従来技術による逆マグネトロン型の冷陰極電離真空計の一例を示す模式斜視図である。
【符号の説明】
【0101】
1、1a、1b アノード
2a〜2g カソード
3 カソード間の接続導線
3a カソード間の接続導体
4a、4b カソードのリード線
5 アノードのリード線
6 電流導入端子
7 高圧電流導入端子
8 真空計を形成する真空容器壁
9 高圧直流電源
10 微少電流計
11 加熱用電源
12 真空計の真空容器
13 被真空測定真空容器への接続関係を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器内に設けられたアノードと、
前記真空容器内に設けられたカソードと、
前記アノードと前記カソードの間に直流電圧を印加する手段と、
前記アノードと前記カソードの間の空間に磁場を形成する手段と
を備え、前記真空容器内の圧力を測定する冷陰極電離真空計であって、
前記圧力の測定中、前記カソードからの熱電子放出を起こさないような温度範囲内で前記カソードを加熱する手段を備えたことを特徴とする冷陰極電離真空計。
【請求項2】
前記温度範囲の下限は200℃であることを特徴とする請求項1記載の冷陰極電離真空計。
【請求項3】
前記カソードの加熱は、前記カソードに接続された電力供給源によって行われ、該電力供給源により前記カソードに電力を供給することにより、前記カソード自身の抵抗に該電力を消費させて前記カソード自身を発熱させることを特徴とする請求項1又は2の何れか一に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項4】
前記電力供給源より、前記電力を連続的に供給し、又は前記電力を断続的に供給することを特徴とする請求項3記載の冷陰極電離真空計。
【請求項5】
前記カソードを構成する材料は、タンタル、タングステン、モリブデン、ハフニウム、ジルコニウム、白金、イリジウム、チタン、或いはこれらの少なくともいずれか一を含む合金のうちいずれか一の金属であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項6】
前記カソードを構成する材料は、導電性セラミック、電気伝導性酸化物又は黒鉛のうちいずれか一の非金属であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項7】
前記冷陰極電離真空計は、ペニング型、マグネトロン型、或いは逆マグネトロン型のいずれか一であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一に記載の冷陰極電離真空計。
【請求項8】
真空容器と、前記真空容器内のアノードと、前記真空容器内のカソードと、前記アノードと前記カソードの間に直流電圧を印加する手段と、前記アノードと前記カソードの間の空間に磁場を形成する手段とを備えた冷陰極電離真空計を用い、
該カソードから熱電子放出を起こさない温度に前記カソードを加熱し、該アノードと該カソードの間に直流電圧を印加し、かつ該アノードと該カソードの間の空間に磁場を形成して放電を発生させ、その放電電流を測定することによって、前記真空容器内の圧力を測定することを特徴とする圧力測定方法。
【請求項9】
前記温度範囲の下限は200℃であることを特徴とする請求項8記載の圧力測定方法。
【請求項10】
前記放電を発生させる前に、前記カソードを予備加熱することを特徴とする請求項8又は9の何れか一に記載の圧力測定方法。
【請求項11】
前記カソードを予備加熱するため、前記カソードに断続的に電力を印加することを特徴とする請求項10記載の圧力測定方法。
【請求項12】
前記放電の起動のため、前記圧力測定時の温度よりも高い温度で前記カソードを加熱することを特徴とする請求項8乃至11の何れか一に記載の圧力測定方法。
【請求項13】
前記起動用放電を発生させるため、前記カソードに断続的に電力を印加して前記カソードを加熱することを特徴とする請求項12記載の圧力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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