凍結乾燥によるワクチンの安定化
本発明は、ワクチンなどの薬学的組成物、ならびにそのような組成物の作製および使用の方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ワクチンなどの薬学的組成物、ならびにそのような組成物の作製および使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ワクチン接種は医学の最大の功績の1つであり、破壊的威力のある疾患の影響から数百万人もの人々の命を救ってきた。ワクチンが広く用いられるようになる以前には、感染症のために米国だけでも毎年数千人もの小児および成人が死亡し、世界中ではさらに多数が死亡していた。ワクチン接種は細菌、ウイルスおよび他の病原体による感染症を予防および治療するために広く用いられている上、癌の予防および治療に用いられるアプローチでもある。死滅病原体、生きている弱毒化病原体および不活性病原体サブユニットの投与を含む、いくつかの異なるアプローチがワクチン接種に用いられている。ウイルス感染症の場合には、生ワクチンが、最も効力が強く長続きする防御免疫応答を付与することが見いだされている。
【0003】
弱毒化生ワクチンは、感染した蚊およびダニによって一般に伝染する、エンベロープを有する小型のプラス鎖RNAウイルスであるフラビウイルスに対して開発されている。フラビウイルス科のフラビウイルス属にはおよそ70種のウイルスが含まれ、黄熱病(YF)ウイルス、デング熱(DEN)ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルスおよびダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスといったその多くは、重大なヒト病原体である(Burke and Monath, Fields Virology, 4th Ed., 1043-1126, 2001(非特許文献1)における総説)。
【0004】
フラビウイルスに対するワクチンの開発には、種々のアプローチが用いられてきた。例えば、黄熱病ウイルスの場合には、連続継代によって2種のワクチン(黄熱病17Dおよびフランス向神経性(French neurotropic)ワクチン)が開発されている(Monath, 「Yellow Fever,」 Plotkin and Orenstein, Vaccines, 3rd ed., Saunders, Philadelphia, pp. 815-979, 1999(非特許文献2))。ワクチン接種に用いるためのフラビウイルスの弱毒化のためのもう1つのアプローチは、2つ(またはそれ以上)の異なるフラビウイルスの成分を含むキメラフラビウイルスの構築を伴う。そのようなキメラがどのようにして構築されるかの理解のためには、フラビウイルスゲノムの構造の説明が必要である。
【0005】
単一の長いオープンリーディングフレームの翻訳によってポリタンパク質が生じた後に、宿主およびウイルスのプロテアーゼの組み合わせによる複雑な一連のポリタンパク質の翻訳後タンパク質分解切断を受けて成熟ウイルスタンパク質が生じることによって、フラビウイルスタンパク質は産生される(Amberg et al., J. Virol. 73:8083-8094, 1999(非特許文献3);Rice, 「Flaviviridae,」 Virology, Fields (ed.), Raven-Lippincott, New York, 1995, Volume I, p.937(非特許文献4))。そのウイルス構造タンパク質は、ポリタンパク質においてC-prM-Eの順に配置されており、ここで「C」はキャプシド、「prM」はウイルスエンベロープ結合Mタンパク質の前駆体、および「E」はエンベロープタンパク質である。これらのタンパク質はポリタンパク質のN末端領域に存在し、一方、非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4BおよびNS5)は、ポリタンパク質のC末端領域に位置する。
【0006】
異なるフラビウイルス由来の構造タンパク質および非構造タンパク質を含むキメラフラビウイルスが作製されている。例えば、いわゆるChimeriVax(商標)技術は、黄熱病17Dウイルスのキャプシドおよび非構造タンパク質を利用して、他のフラビウイルスのエンベロープタンパク質(prMおよびE)を送達する(例えば、Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999(非特許文献5)を参照)。この技術は、デング熱ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、西ナイルウイルス(WN)、およびセントルイス脳炎(SLE)ウイルスに対するワクチン候補を開発するために用いられている(例えば、Pugachev et al., New Generation Vaccines, 3rd ed., Levine et al., eds., Marcel Dekker, New York, Basel, pp. 559-571, 2004(非特許文献6);Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999(非特許文献7);Guirakhoo et al., Virology 257:363-372, 1999(非特許文献8);Monath et al., Vaccine 17:1869-1882, 1999(非特許文献9);Guirakhoo et al., J. Virol. 74:5477-5485, 2000(非特許文献10);Arroyo et al., Trends Mol. Med. 7:350-354, 2001(非特許文献11);Guirakhoo et al., J. Virol. 78:4761-4775, 2004(非特許文献12);Guirakhoo et al., J. Virol. 78:9998-10008, 2004(非特許文献13);Monath et al., J. Infect. Dis. 188:1213-1230, 2003(非特許文献14);Arroyo et al., J. Virol. 78:12497-12507, 2004(非特許文献15);およびPugachev et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 71:639-645, 2004(非特許文献16)を参照)。
【0007】
ワクチンの使用および商業化が成功するために最も重要なのは、ワクチンが出荷されて使用前に保存される条件下での効力の安定性および維持が保証されるように、それらが加工処理および製剤化される様式である。凍結乾燥(lyophilization)はワクチン製品の加工処理にかかわるアプローチであり、本質的には、低圧下で昇華によって水を除去し、製品が少量の水分を伴う乾燥ケーキ(dried cake)として残る冷凍乾燥(freeze-drying)プロセスである。このプロセスは上記のキメラフラビウイルスワクチンを含むワクチンにとって有利であるが、それはこの種のワクチンは低湿度環境でより安定な傾向があるためである。凍結乾燥はまた、製品の保存温度を高くして、それを輸送するのをより容易にすることもできる。凍結乾燥プロセスの効力に影響を及ぼす決定的な要因は、ワクチンの製剤化である。例えば、製剤は、水が除去された時に製品の安定性を高めることが望ましい。典型的には、ワクチン製剤は以下の成分のいずれかまたはすべてを含むと考えられる:増量剤(例えば、糖)、安定化剤(例えば、糖またはタンパク質)および緩衝剤。このため、有効かつ効率的な加工処理の方法および製剤の開発は、以上に考察したように、フラビウイルスワクチンを含む、臨床的に有効で、かつ商業的な成功も収めるワクチンの開発にとって極めて重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Burke and Monath, Fields Virology, 4th Ed., 1043-1126, 2001
【非特許文献2】Monath, 「Yellow Fever,」 Plotkin and Orenstein, Vaccines, 3rd ed., Saunders, Philadelphia, pp. 815-979, 1999
【非特許文献3】Amberg et al., J. Virol. 73:8083-8094, 1999
【非特許文献4】Rice, 「Flaviviridae,」 Virology, Fields (ed.), Raven-Lippincott, New York, 1995, Volume I, p.937
【非特許文献5】Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999
【非特許文献6】Pugachev et al., New Generation Vaccines, 3rd ed., Levine et al., eds., Marcel Dekker, New York, Basel, pp. 559-571, 2004
【非特許文献7】Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999
【非特許文献8】Guirakhoo et al., Virology 257:363-372, 1999
【非特許文献9】Monath et al., Vaccine 17:1869-1882, 1999
【非特許文献10】Guirakhoo et al., J. Virol. 74:5477-5485, 2000
【非特許文献11】Arroyo et al., Trends Mol. Med. 7:350-354, 2001
【非特許文献12】Guirakhoo et al., J. Virol. 78:4761-4775, 2004
【非特許文献13】Guirakhoo et al., J. Virol. 78:9998-10008, 2004
【非特許文献14】Monath et al., J. Infect. Dis. 188:1213-1230, 2003
【非特許文献15】Arroyo et al., J. Virol. 78:12497-12507, 2004
【非特許文献16】Pugachev et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 71:639-645, 2004
【発明の概要】
【0009】
本発明は、1つまたは複数の弱毒化生フラビウイルスワクチン、1つまたは複数の安定化剤、1つまたは複数の増量剤、および1つまたは複数の緩衝成分を含む組成物を提供する。一例として、安定化剤はヒト血清アルブミン(HSA)(例えば、非組換えヒト血清アルブミン(HSA)または組換えヒト血清アルブミン(rHA))(例えば、約0.05〜2.0%または0.1%)である。本発明の組成物中に含めることのできる増量剤の例にはラクトース(例えば、約2〜10%または4%)および/またはマンニトール(例えば、約2〜10%または5%)があり、一方組成物中に含めることのできる緩衝成分の例にはヒスチジン(例えば、約1〜20mMまたは10mM)および/またはグルタミン酸カリウム(例えば、約20〜80mMまたは50mM)がある。組成物は、冷凍乾燥形態に、または冷凍乾燥の前に液体形態であり得る。さらに、組成物のpHは、例えば、6〜10、7〜9、7.5〜8.5または7.9〜8.1であり得る。
【0010】
本発明の組成物に含まれる弱毒化生フラビウイルスワクチンは、例えば、第1のフラビウイルスの構造タンパク質および第2の異なるフラビウイルスの非構造タンパク質を含むキメラフラビウイルスのようなキメラフラビウイルスであり得る。一例として、そのようなキメラフラビウイルスは、第1のフラビウイルスのプレメンブラン(pre-membrane)/膜タンパク質およびエンベロープタンパク質、ならびに第2の異なるフラビウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質を含む。
【0011】
第1および第2のフラビウイルスは、黄熱病(例えば、YF17D)ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱1型ウイルス、デング熱2型ウイルス、デング熱3型ウイルス、デング熱4型ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、ロシオ(Rocio)脳炎ウイルス、イルヘウスウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、アルクフルマ(Alkhurma)ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセットアローブ(Absettarov)ウイルス、ハンザローバ(Hansalova)ウイルス、アポイウイルスおよびHyprウイルスからなる群より独立に選択することができる。具体的な例において、第1のフラビウイルスは日本脳炎ウイルスまたは西ナイルウイルスであり、第2のフラビウイルスは黄熱病ウイルス(例えば、YF17D)である。
【0012】
同じく本発明に含まれるのは、1つまたは複数のタンパク質および/もしくはウイルスを基にした薬学的生成物、ヒト血清アルブミン(例えば、非組換えヒト血清アルブミン(HSA)または組換えヒト血清アルブミン(rHA))(例えば、約0.05〜2.0%または0.1%)、グルタミン酸アルカリ金属塩(例えば、グルタミン酸カリウム)(例えば、約20〜80mMまたは50mM)、1つまたは複数の追加的なアミノ酸(例えば、ヒスチジン)(例えば、約1〜20mMまたは10mM)、ならびに1つまたは複数の糖または糖アルコール(例えば、ラクトースおよび/またはマンニトール)(例えば、約2〜10%、4%または5%)を含む組成物である。組成物は、冷凍乾燥形態に、または冷凍乾燥の前に液体形態にあることができる。さらに、組成物のpHは、例えば、6〜10、7〜9、7.5〜8.5または7.9〜8.1であり得る。
【0013】
一例として、ウイルスを基にした薬学的生成物は、痘瘡ワクチン(例えば、ワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルス、例えば、ACAM1000、ACAM2000または改変ワクシニア-アンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA)など)を含む。もう1つの例において、タンパク質を基にした薬学的生成物は、B型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物(例えば、1つまたは複数のインフルエンザM2eペプチドをさらに含むB型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物)を含む。さらに、もう1つの例において、タンパク質を基にした薬学的生成物は、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素またはトキソイドを含む。
【0014】
同じく本発明に含まれるのは、上記のような組成物を冷凍乾燥プロセスに供する工程を伴う、治療用組成物を調製する方法である。このプロセスは、冷凍、一次乾燥および二次乾燥の工程を伴い得る。一例として、冷凍工程は、約-50℃での約120分間にわたる冷凍を伴う。一次乾燥工程は、約+0.1℃/分で約-40℃の棚温度にランピング(ramping)して約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-35℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-30℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと、および約+0.1℃/分で約-25℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを含む、ランプ(ramp)工程を伴い得る。この例において、二次乾燥工程は、約+0.1℃/分で約+20℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを含む、ランプ工程を伴い得る。
【0015】
もう1つの例において、冷凍工程は、約-40℃での約60分間にわたる冷凍を伴い得る。一次乾燥工程は、約+0.5℃/分で約-5℃の棚温度にランピングして約300分間保つこと;および約-0.5℃/分で約-0℃の棚温度にランピングして約300分間保つことを含む、ランプ工程を伴い得る。二次乾燥工程は、約+0.2℃/分で約+30℃の棚温度にランピングして約600分間保つこと;および約-1.0℃/分で約+5℃の棚温度にランピングして約9999分間保つことを含む、ランプ工程を伴い得る。
【0016】
本発明はまた、対象における1つまたは複数の疾患または病状を予防または治療する方法を含み、本方法は、上記および本明細書中の他の箇所に記載されたような1つまたは複数の本発明の組成物の投与を含む。これらの方法のある例において、対象は、フラビウイルス(例えば、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルスまたは黄熱病ウイルスの感染症)、痘瘡、インフルエンザまたはクロストリジウム-ディフィシレを発症するリスクがあるか、またはそれを有する。さらに、本発明は、本明細書に記載されたような疾患および病状の予防および治療における、ならびにこれらの目的に用いるための薬剤の調製のための、本明細書に記載された組成物および調製物の使用も含む。一般に本方法は、対象が本発明の材料または組成物の投与の前に、疾患、病状、または感染症を有しなければ、対象の疾患、病状、または感染症を「予防する」ために行われる。本方法は、対象がそのような疾患、病状、または感染症を有するならば、対象の疾患、病状、または感染症を「治療する」ために行われる。投与がなされなければ受けるであろう影響を軽減するため、またはそのような影響をなくすために、予防および/または治療を行うことができる。
【0017】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、以上に考察したように、ワクチンなどのタンパク質および/またはウイルス成分を含む薬学的組成物の有効な使用のためには、組成物がさまざまな出荷および保存の条件下で安定であり続けることが重要である。以下にさらに考察するように、本発明は、安定性の向上した組成物の調製を結果的にもたらす、製剤および加工処理工程を提供する。本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実験JEPD-018における、37℃での保存による力価損失を示しているグラフである。
【図2】実験WNPD-033における、ヒスチジンの存在下および非存在下での安定性を示しているグラフである。
【図3】実験WNPD-045における、37℃での、グルタミン酸カリウムの存在下および非存在下での安定性を示しているグラフである。
【図4】実験JEPD-145における、37℃での、種々の濃度のラクトースの存在下での安定性を示しているグラフである。
【図5】37℃での単一糖製剤の安定性をマンニトール/ラクトースの組み合わせと比較して示しているグラフである。
【図6】アニーリングした試料における37℃での保存による力価損失を示しているグラフである。
【図7】ガラス転移点が-32.6℃である、4%ラクトース溶液のサーマルグラム(thermalgram)である。
【図8】5%マンニトールを製剤に添加すると、ガラス転移温度がおよそ6℃から-38℃に下げられることを示しているサーマルグラムである。
【図9】最終的な製剤の-80℃でのリアルタイム安定性を示しているグラフである。
【図10】分解能を改善するために変調型DSCを用いて分析したWNPD-045試料のサーマルグラムである。
【図11】変調型走査を用いずに十分な分解能を示した、JEPD-172からの試料のサーマルグラムである。
【図12】表記の実験における、凍結乾燥ChimeriVax(商標)の安定性と残留水分との相関を示しているグラフである。
【図13】実験JEPD-151の熱電対温度を示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、以下にさらに記載するように、生ウイルスワクチンを含む、ウイルスおよび/またはタンパク質を基にした薬学的生成物の調製のために用いることのできる組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、以下に記載するように、本発明者らがワクチンの調製に有利であることを見いだした成分(例えば、特定の安定化剤、増量剤および緩衝剤)を含み、本方法は、同じく利点をもたらす、凍結乾燥を伴う工程を含む。本発明はまた、本明細書に記載された組成物を用いる予防的および治療的な方法も提供する。本発明の組成物および方法について、以下にさらに記載する。
【0020】
本発明の組成物は、1つまたは複数のタンパク質および/もしくはウイルスを基にした治療薬、ならびに1つまたは複数の安定化剤、増量剤、および/または緩衝成分を含む。本発明の組成物の具体的な一例は、以下にさらに詳細に記載しており、これはキメラフラビウイルスワクチン、安定化剤としてのヒト血清アルブミン(0.1%)、増量剤としてのマンニトール(5%)およびラクトース(4%)、ならびに緩衝成分としてのヒスチジン(10mM)およびグルタミン酸カリウム(50mM)を含む。この具体的な例に加えて、本発明はまた、下記の通り、これらの種類の成分が実体および/または量の点で異なる組成物も含む。
【0021】
本発明の組成物中に存在し得る安定化剤には、血清アルブミンタンパク質が含まれる。好ましい血清アルブミンタンパク質は、非組換え形態または組換え形態のいずれでも、ヒト血清アルブミン(HSA)である。本発明の組成物中に含めることのできる血清アルブミンタンパク質のそのほかの例は、ウシ血清アルブミンである。血清アルブミンに加えて、本発明の組成物中に含めることのできる他の安定化剤には、ヒトゼラチン(例えば、組換えヒトゼラチン、これは野生型でも操作されたものでもよい)およびブタゼラチンなどのゼラチン、カゼイン、PVP、ならびに本明細書で言及している安定化剤(または当技術分野で公知である他のもの)のいずれかの組み合わせがある。ヒト血清アルブミンの場合には、この成分の量は、例えば、約0.05〜2.0%、0.075〜1.0%または0.1%であり得る。
【0022】
本発明の組成物中に存在し得る増量剤には、ラクトース、スクロースおよびフルクトースなどの糖、ならびに/またはマンニトールおよびソルビトールなどの糖アルコールが含まれる。以下にさらに考察するように、マンニトールを含む本発明の組成物においては、この成分が結晶形態であるよりも非晶質形態にあることが好ましいと考えられる。さらに、ある例においては、本発明の組成物が糖および/または糖アルコールの組み合わせを含むことが好ましいと考えられる。以下にさらに記載している一例において、本発明の組成物はラクトースおよびマンニトールの組み合わせを含むことができ、このうち後者は非晶質形態にあることが好ましい。一例として、ラクトースは約1〜10%、2〜8%または4〜6%(例えば、4%)で存在し、一方、マンニトールは約1〜10%、2〜8%または4〜6%(例えば、5%)で存在する。
【0023】
上記のように、本発明の組成物は、安定化剤および増量剤に加えて、アミノ酸などの緩衝成分を含むことができ、これは例えば、特定のpHレベルもしくは範囲、および/または製品安定性の維持に寄与する役を果たすと考えられる。本発明の組成物中に含めることのできる緩衝成分の一例はヒスチジンであり、これは例えば、約1〜20mM、5〜15mMまたは10mMの濃度で組成物中に存在してよい。緩衝成分のもう1つの例は、グルタミン酸ナトリウムまたはグルタミン酸カリウムなどのグルタミン酸アルカリ金属塩であり、これは約10〜100mM、25〜75mMまたは50mMの濃度で組成物中に存在してよい。さらに、組成物はpHが一般に、例えば6〜10、7〜9、7.5〜8.5または7.9〜8.1である。
【0024】
本発明の組成物はまた、活性のある1つまたは複数の治療用成分も含み、これはペプチドまたはタンパク質を基にした治療薬、ならびに弱毒化生ウイルスワクチンなどのウイルスであり得る。後者の群のタイプの治療薬(弱毒化生ウイルスワクチン)の一例は、黄熱病ウイルスワクチンなどのフラビウイルスワクチンである。そのような黄熱病ウイルスワクチンの具体的な一例は、YF17Dワクチン株である(Smithburn et al., 「Yellow Fever Vaccination,」 World Health Org., p. 238, 1956;Freestone, Plotkin et al. (eds.), Vaccines, 2nd edition, W. B. Saunders, Philadelphia, 1995)。他の黄熱病ウイルス株、例えば、YF17DD(GenBankアクセッション番号U 17066)およびYF17D-213(GenBankアクセッション番号U 17067)(dos Santos et al., Virus Res. 35:35-41, 1995)、YF17D-204 France(X15067、X15062)、YF17D-204, 234 US(Rice et al., Science 229:726-733, 1985;Rice et al., New Biologist 1:285-296, 1989;C 03700,K 02749)、ならびにGaller et al., Vaccine 16 (9/10):1024-1028, 1998によって記載された黄熱病ウイルス株も、本発明の組成物中に存在し得る。
【0025】
本発明の組成物中に存在し得るさらなるフラビウイルスには、他の蚊媒介フラビウイルス、例えば日本脳炎ウイルス(例えば、SA14-14-2)、デング熱ウイルス(血清型1〜4)、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、ロシオ脳炎ウイルスおよびイルヘウスウイルスなど;ダニ媒介フラビウイルス、例えば中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、アルクフルマウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセットアローブウイルス、ハンザローバウイルス、アポイウイルスおよびHyprウイルスなど;ならびにヘパシウイルス属のウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス)が含まれる。
【0026】
以上に列記したウイルス、ならびに他のフラビウイルスに加えて、キメラフラビウイルスを本発明の組成物中に含めることもできる。これらのキメラは、フラビウイルス(すなわち、バックボーンのフラビウイルス)から構成することができ、そこでは1つの(または複数の)構造タンパク質が、第2のウイルス(すなわち、被験ウイルスまたは規定のウイルス、例えばフラビウイルスなど;例えば、米国特許第6,696,281号;米国特許第6,184,024号;米国特許第6,676,936号;および米国特許第6,497,884号を参照)の対応する1つの(または複数の)構造タンパク質によって置き換えられている。例えばキメラは、バックボーンのフラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス)から構成することができ、そこではフラビウイルスの膜タンパク質およびエンベロープタンパク質が、第2の被験ウイルス(例えば、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス(血清型1、2、3または4)、日本脳炎ウイルスまたは別のウイルス、例えば本明細書中で言及しているもののいずれかなど)の膜およびエンベロープによって置き換えられている。キメラウイルスは、ウイルスの任意の組み合わせから作製することができるが、典型的には、それに対する免疫が探索されるウイルスが、挿入される構造タンパク質の供給源である。
【0027】
本発明の組成物中に含めることのできる種類のキメラウイルスの具体的な一例は、黄熱病ヒトワクチン株YF17Dであり、その中では膜タンパク質およびエンベロープタンパク質が、別のフラビウイルス、例えば西ナイルウイルス、デング熱ウイルス(血清型1、2、3または4)、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、または以上に列記したものの1つのような任意の他のフラビウイルスなどの膜タンパク質およびエンベロープタンパク質によって置き換えられている。このアプローチを用いて作製されたキメラフラビウイルスは、いわゆる「ChimeriVax」ウイルスと名付けられている。ChimeriVax(商標)技術を用いて作製され、ブダペスト条約の条項に従ってManassas、Virginia、U.S.A.にあるAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、1998年1月6日の寄託日を付与された以下のキメラフラビウイルスを用いて、本発明のウイルスを作製することができる:キメラ黄熱病17D/デング2型ウイルス(YF/DEN-2;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2593)およびキメラ黄熱病17D/日本脳炎SA14-14-2ウイルス(YF/JE A1.3;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2594)。
【0028】
本発明で用いることができるキメラウイルスの作製に関する詳細は、例えば、以下の刊行物中に提示されている:WO 98/37911;WO 01/39802;Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999;WO 03/103571;WO 2004/045529;米国特許第6,696,281号;米国特許第6,184,024号;米国特許第6,676,936号;および米国特許第6,497,884号。本発明の組成物中に存在することができ、特定の弱毒化突然変異を含み得るキメラフラビウイルスのもう1つの具体例は、例えば、WO 02/072835、WO 02/102828、WO 03/103571、WO 2004/045529、WO 2005/082020、WO 2006/044857、WO 2006/116182および米国特許第6,589,531号に記載されている。
【0029】
本発明の組成物中に存在し得るさらなるウイルスワクチンには、痘瘡ワクチン(例えば、ACAM1000、ACAM2000、改変ワクシニア-アンカラ(MVA)およびリスター(Lister)を含む、ワクシニアウイルスを基にしたワクチン、ならびにサル痘を基にしたワクチン)、ならびにヘルペスウイルスおよびワクチン(例えば、HSV-1およびその組換え体ならびにHSV-2およびその組換え体)が含まれる(例えば、米国特許第7,115,270号を参照)。
【0030】
ウイルスに加えて、本発明の組成物は、治療用またはワクチン用のペプチドまたはタンパク質、例えば、B型肝炎コアタンパク質融合構築物(例えば、M2eなどの1つまたは複数のインフルエンザペプチドと融合したB型肝炎コアタンパク質;例えば、WO 2005/055957を参照)、およびC.ディフィシレ(C. difficile)トキソイドワクチン(例えば、トキソイドAおよび/またはBを含む)も含むことができる。
【0031】
上記および本明細書中の他の箇所に記載されたような組成物は、冷凍乾燥形態にあること、または冷凍乾燥プロセスの前もしくは後などに液体の形態にあることができる。本明細書中の別の箇所でさらに詳細に考察しているように、本発明の組成物は、活性成分の安定性が理由で特に有利であり、これは主として、製剤化と、凍結乾燥を伴う製品を調製するプロセスに起因する。一般に、このプロセスは以下の工程を含む:冷凍、一次乾燥、二次乾燥、および封栓(stoppering)。本プロセスは、実験例の項で、以下にさらに詳細に記載するが、プロセスの一例は以下の通りである。
【0032】
冷凍工程では、凍結乾燥器の棚を-50℃に予冷する。一旦すべてのトレイを装填した上で、棚を-50℃に120分間保つ。一次乾燥工程では、25mTに減圧を設定し、以下のランプ工程を実施する:+0.1℃/分で-40℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-35℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-30℃の棚温度にランピングして500分間保つ、および+0.1℃/分で-25℃の棚温度にランピングして800分間保つ。二次乾燥工程では、減圧を25mTのままにして、+0.1℃/分で+20℃の棚温度にランピングして800分間保つようにランプ工程を実施する。必要であれば、製品を+20℃、25mTにさらに最長24時間保ち、その後に封栓を行う。封栓工程では、0.22μmのフィルターを通した乾燥窒素ガスを用いてチャンバーのガス抜きを行い、減圧を800mbar(軽い減圧)に設定して、栓をバイアルに押し込む。本発明において用い得る代替的な凍結乾燥サイクルを、以下の表にまとめている。
【0033】
(表1)代替的な凍結乾燥サイクル
【0034】
したがって、本発明の方法は、例えば、ちょうどまたは約-70℃〜30℃(例えば、-60℃〜-40℃、または-50℃)での冷凍を伴うことができる。冷凍は約30〜240分間(例えば、60〜120分間)またはそれよりも長く行うことができる。続いて材料を、本明細書に記載されているように、1つまたは複数の乾燥工程に供することができる。これらの工程では、減圧を適用することができ(例えば、25mT)、温度を、ある期間(例えば、100〜1000分間、例えば、200〜600分間または300〜500分間)にわたって徐々に変化させることができる(例えば、0.1〜1.0℃/分、または0.5℃/分)。一次乾燥では、温度を、例えば、ちょうどまたは約-30℃から+10℃に、例えば、-20℃から+5℃に、または-15℃から0℃に上昇させることができ、一方、二次乾燥では、温度を例えば+5℃から+35℃に、例えば、10℃から30℃に、または15℃から20℃に変化させることができる。当業者には公知であるように、これらのパラメーター(例えば、温度、保持時間、ランプ速度および減圧レベル)は、例えば、得られた結果に基づいて変化させることができる。
【0035】
製剤化の前に、本発明の組成物中に含めてもよいウイルス(キメラを含む)を、当技術分野における標準的な方法を用いて作製することができる。例えば、ウイルスのゲノムに対応するRNA分子を、初代細胞、ニワトリ胚または二倍体細胞系に導入することができ、続いてそれから(またはその上清から)子孫ウイルスを精製することができる。ウイルスを産生するために用いることができる別の方法では、Vero細胞などの異数体細胞を利用する(Yasumura et al., Nihon Rinsho 21:1201-1215, 1963)。この方法では、ウイルスのゲノムに対応する核酸分子(例えば、RNA分子)を異数体細胞に導入して、細胞を培養した培地からウイルスを収集し、収集したウイルスをヌクレアーゼ(例えば、DNAおよびRNAの両方を分解するエンドヌクレアーゼ、例えばBenzonase(商標)など;米国特許第5,173,418号)で処理し、ヌクレアーゼ処理したウイルスを濃縮して(例えば、分子量カットオフが例えば500kDaであるフィルターを用いる限外濾過を用いて)、濃縮したウイルスをワクチン接種の目的で製剤化する。この方法の詳細はWO 03/060088A2に提示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
本発明のワクチン組成物は、感染のリスクがある者に対して一次予防薬として投与することができ、または感染した患者を治療するための二次薬として用いることもできる。これらの組成物のいくつかにおけるウイルスは弱毒化されているため、それらは、高齢者、小児、またはHIV感染者といった「リスクのある個体」に対する投与に特によく適している。そのようなワクチンを、獣医学的状況で、例えば、西ナイルウイルス感染に対するウマのワクチン接種に、または鳥類(例えば、価値のある鳥類、絶滅の危機に瀕した鳥類、または家畜化された鳥類、例えばそれぞれフラミンゴ、ハクトウワシ、およびガチョウなど)のワクチン接種に用いることもできる。さらに、本発明のワクチンは、特定の突然変異を含むキメラウイルスなどのウイルスを、そのような突然変異を欠くウイルスとの混合物中に含むことができる。
【0037】
本発明のワクチンは、当業者に周知の方法を用いて投与することができ、投与しようとするワクチンの適切な量は当業者が容易に決定することができる。投与されるウイルスの適切な量であると決定されるものは、例えば、ウイルスを投与しようとする対象のサイズおよび全般的健康状態といった要因の考慮によって決定され得る。例えば、本発明のウイルスは、例えば、筋肉内、皮下または皮内の経路によって投与しようとする0.1〜1.0mlの投与容積中に、102〜108、例えば、103〜107感染単位(例えばプラーク形成単位または組織培養感染用量)を含む滅菌水溶液として製剤化することができる。加えて、フラビウイルスは経口経路などの粘膜経路を介してヒト宿主を感染する能力を有し得るため(Gresikova et al., 「Tick-borne Encephalitis,」 The Arboviruses, Ecology and Epidemiology, Monath (ed.), CRC Press, Boca Raton, Florida, 1988, Volume IV, 177-203)、本発明のフラビウィルスベースのワクチンを同様に粘膜経路によって投与することもできる。さらに、本発明のワクチンは、単回用量で投与することもでき、または任意で、投与は、初回刺激用量、およびそれに続いて、当業者により適切であると決定される、例えば2〜6カ月後に投与される追加刺激用量の使用を含むことができる。
【0038】
実施例
以下に記載した実験は、ChimeriVax(商標)-WN(黄熱病ウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質ならびに西ナイルウイルスのプレメンブラン/膜タンパク質およびエンベロープタンパク質を含むキメラフラビウイルス)およびChimeriVax(商標)-JE(黄熱病ウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質ならびに日本脳炎ウイルスのプレメンブラン/膜タンパク質およびエンベロープタンパク質を含むキメラフラビウイルス)という2種類のワクチンの製剤化および凍結乾燥のための開発プログラムで実施されたが、これらのアプローチは、上記の通り他のタンパク質/ペプチドおよび/またはウイルスを含む治療薬の製剤化および加工処理に関しても本発明に含められる。
【0039】
したがって、一例において、本発明の製剤は、10mMヒスチジン(アミノ酸)、50mMグルタミン酸カリウム(アミノ酸)、0.1% HSA(ヒト血清アルブミン、USP)、5%マンニトールおよび4%ラクトース、pH 7.9〜8.1を含む。本発明の方法の一例において、凍結乾燥は以下の通りに行われる。凍結乾燥器の棚を-50℃に予冷し、一旦すべてのトレイを装填した上で、棚を-50℃に120分間保つ。一次乾燥工程では、25mTに減圧を設定し、工程は以下のものを含む:+0.1℃/分で-40℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-35℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-30℃の棚温度にランピングして500分間保つ;および+0.1℃/分で-25℃の棚温度にランピングして800分間保つ。二次乾燥工程では、減圧を25mTのままにして、+0.1℃/分で+20℃の棚温度にランピングして800分間保つ。必要であれば、製品を+20℃、25mTにさらに最長24時間保つことができ、その後に封栓を行う。封栓工程では、0.22μmのフィルターを通した乾燥窒素ガスを用いてチャンバーのガス抜きを行い、減圧を800mbar(軽い減圧)に設定して、栓をバイアルに押し込む。本実施例の基盤、ならびに本発明に含まれる他の製剤および方法について、以下に一部を提示する。
【0040】
実施例I‐マンニトール/ラクトース製剤を用いた西ナイル凍結乾燥試験(WNPD-045)実験
本実施例に記載した実験において、本発明者らは、5%マンニトール、4%ラクトースおよび10mMヒスチジンを基剤とする西ナイルの製剤を調査した。完成した製剤を、付随するガラス転移温度とともに表2に示している。
【0041】
(表2)WNPD-045 製剤およびガラス転移温度
【0042】
製剤化緩衝液中へのWNPD-001 精製したバルク(Clarified Bulk)の1:100希釈を行うことによってウイルスを製剤化した。製剤化はBSCで行った。凍結乾燥は以下の条件下で行った:0.5℃/分で-55℃の棚温度にランピングして120分間保つ;製品温度が-50℃に達したところで15分間保つ;150mTのチャンバーおよび100mTのフォアライン(foreline)で乾燥させる;0.2℃/分で-20℃の棚温度にランピングして50mTで1034分間保つ;および、0.53℃/分で20℃の棚温度にランピングして50mTで概ね862分保つ。この凍結乾燥サイクルはおよそ38時間で完了した。
【0043】
凍結乾燥した材料に対して加速安定性試験を行った。多数の凍結乾燥バイアルを37℃でインキュベートした。第7日および第14日にバイアルを取り出し、ラベルを付けて、保存のために-80℃で置いた。グルタミン酸カリウムを伴うすべての製剤は、37℃で7日後にかなりのケーキの縮小を来した。グルタミン酸カリウムを伴わない製剤はこの縮小を来さなかった。実験WNPD-049およびWNPD-051は、これらの製剤中でのウイルスの安定性を決定するためのPFUアッセイであった。試料はすべてWFIにより再構成した。
【0044】
結果
製剤はすべて、凍結乾燥後に極めて類似した外観であった。ケーキは充実性(full)であり、著しい体積損失を被っているようには見えなかった。いくつかのケーキはバイアル壁から離脱していたが、これは製剤間でランダムであるように思われた。表3は、製剤化に用いた精製したバルク材料と比較した、冷凍収率および凍結乾燥を介した収率を示している。表4は、37℃での加速安定性試験の結果を示している。
【0045】
(表3)WNPD-045 凍結乾燥および冷凍の収率
【0046】
(表4)WNPD-045 37℃での安定性
【0047】
結論
HSAを伴う製剤は極めて良好な成績を示し、本発明者らが今日までに得た中でも最良の結果のいくつかを収めた。-80℃での保存で有意な損失はみられなかった。これらの製剤は極めて優れた凍結乾燥収率も示し、平均収率は73%であった。これらの試料のケーキの外観は、これまでのいかなる他の製剤におけるよりもはるかにより均一であったことに注目すべきである。HSA製剤の安定性は極めて期待が持てるものであった。どちらの製剤も、37℃で14日後に<0.5 log未満の損失を示した。グルタミン酸カリウムを有することは製剤化のために有益であるように思われる。
【0048】
組換えヒトゼラチンrHG-272を伴う製剤は、HSAに関するものほど優れた結果は生み出さなかったが、0.1%の濃度を上昇させれば改善される可能性がある。これらの製剤は-80℃で冷凍させた場合に低い収率を示した。このことは、rHG-272製剤において冷凍後に低い回収性を示した、WNPD-033(以下参照)でみられたデータを裏づける。組換えゼラチンを伴う製剤も、37℃で14日後の安定性試験において損失(>1 log)を示した。
【0049】
実施例II‐ChimeriVax(商標)-WNおよびChimeriVax(商標)-JE製品のための凍結乾燥ワクチンの開発
本実施例は、ChimeriVax(商標)-WNワクチンおよびChimeriVax(商標)-JEワクチンのために適した製剤の開発および特性決定、ならびにこれらのワクチンのための凍結乾燥サイクルの開発および最適化を記載する。
【0050】
実験手順および結果
手順
製剤化
凍結乾燥実験のためのバルクを製剤化するために、製剤化緩衝液中への濃縮ChimeriVax(商標)-WNまたはChimeriVax(商標)-JEの1:100希釈を実施した。製剤化緩衝液組成物は実験計画によって異なる。製剤化したバルクの試料を凍結乾燥の前に採取して、「凍結乾燥前(pre-lyo)」試料として-80℃で保存した。
【0051】
凍結乾燥
WNPD-070まで、およびJEPD-144までに関する実験については、FTS DuraStop MPシステムを用いて凍結乾燥を行った。JEPD-145以後は、Kinetics LyoStar IIシステムを用いた。凍結乾燥パラメーターは実験計画によって異なった。3mLバイアルをすべての実験のために用いた。典型的には、0.5mLの充填容積を用いたが、0.3mLの充填容積も併せて実験しており、適用可能な場合は指摘する。
【0052】
ChimeriVax(商標)-WNプラークアッセイ
プラークアッセイを用いて、凍結乾燥プロセスおよび安定性試験でのウイルス回収率を評価した。凍結乾燥したChimeriVax(商標)-WN試料を、注射用水(WFI)または注射用0.9%塩化ナトリウムのいずれかで再構成した。再構成した試料をWN PFU培地で希釈した。希釈物をO-Veroプレート上に1ウェル当たり100μlプレーティングし、1ウェル当たり2×105個を播種した。プレートを37℃および5% CO2下で1時間インキュベートし、続いてメチルセルロース重層物で表面を覆った。プレートを37℃および5% CO2下で96±12時間インキュベートし、続いて70%メタノール中の1%クリスタルバイオレットで染色した。染色したプレートをすすぎ洗いし、その後に計数した。許容される希釈度は1ウェル当たり10〜120プラークであり、各希釈度に関して計数したすべてのウェルについての相対標準偏差は<40%であった。
【0053】
ChimeriVax(商標)-JEプラークアッセイ
プラークアッセイを用いて、凍結乾燥プロセスおよび安定性試験でのウイルス回収率を評価した。凍結乾燥したChimeriVax(商標)-JE試料を、注射用水(WFI)または注射用0.9%塩化ナトリウムのいずれかで再構成した。再構成した試料をJE PFU培地で希釈した。希釈物をO-Veroプレート上に1ウェル当たり100μlプレーティングし、1ウェル当たり3×105個を播種した。プレートを37℃および5% CO2下で1時間インキュベートし、続いてメチルセルロース重層で表面を覆った。プレートを37℃および5% CO2下で96±12時間インキュベートし、続いて70%メタノール中の1%クリスタルバイオレットで染色した。染色したプレートをすすぎ洗いし、その後に計数した。許容される希釈度は1ウェル当たり10〜120プラークであり、各希釈度に関して計数したすべてのウェルについての相対標準偏差は<40%であった。
【0054】
安定性試験
安定性試験をさまざまな温度で実施した。加速安定性試験は37℃インキュベーター内で行った。また、試料を周囲温度(15〜30℃)、25℃、2〜8℃および-20℃にも保った。ゼロ時点の試料を-80℃で保存した。いくつかの場合には、温度を上昇させたものから試料を特定の日に取り出して、後日にアッセイするために-80℃で保存した。
【0055】
残留水分分析
残留水分分析は、Coulometric Karl Fischerへの直接的な試料注入を用いて行った。検査は、Canton、MAのAcambis社の品質管理部門により、US02-FRM-158-02に従って行われた。
【0056】
示差走査熱量測定法
示差走査熱量測定法はTA Instruments Q1000を用いて行った。液体試料を-70℃に冷却し、続いて20℃にランピングした。より高い分解能が必要であった時には、変調法を用いた。これらの方法により、製剤化緩衝液候補のガラス転移温度が得られた。固体試料を0℃から120℃にランピングした。この方法を用いて、凍結乾燥材料のガラス転移温度を評価し、保存条件を決定した。
【0057】
結果
製剤開発の概略
製剤を以下の基準に基づいて評価した:
・Tg'‐冷凍材料のガラス転移温度
・凍結乾燥ケーキの外観
・凍結乾燥回収率
・凍結乾燥材料の37℃での安定性
・凍結乾燥材料の残留水分
・Tg‐凍結乾燥材料のガラス転移温度
【0058】
多数の添加剤を、初期の製剤化実験で用いた。最初にスクリーニングした成分は以下を含む:ソルビトール、マンニトール、スクロース、デキストラン、ラクトース、グリシン、Heatstarch、Pentastarch、PEG 3350、PVP 40K、塩化ナトリウム、塩化カリウム、Tween-80、ヒスチジン、アラニン、HEPES、TRIS、グルタミン酸カリウム、トリポリリン酸塩およびリン酸カリウム。いくつかの製剤は許容されるケーキを生成することができず、凍結乾燥後のウイルス回収率が非常に低かった(30%未満)。ウイルス回収率は、製剤に安定化剤としてHSAを添加することによって改善し始めた。
【0059】
HSA実験
実験WNPD-021では、まずHSAを安定化剤として用いた。種々の濃度のHSAを2種類の基剤製剤に添加した。2種類の製剤は以下の通り:
・1%ヘタスターチ、1%スクロース、0.1%ソルビトールおよび50mMグルタミン酸カリウム
・4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニンおよび50mMグルタミン酸カリウム
であり、HSAは0%、0.2%、1%および2%の濃度で添加した。
【0060】
プラークアッセイにより、WFIで再構成した場合には以下の収率が示された。
【0061】
(表5)WNPD-021 凍結乾燥収率
【0062】
実験JEPD-018ではさらに、凍結乾燥製剤における、安定剤としてのHSAの影響を調査した。この実験には、4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニンおよび50mMグルタミン酸カリウムの製剤を用い、0%、0.05%、0.1%、1%および2%のHSA濃度を調べた。凍結乾燥の後に、加速安定性試験において試料を37℃で保存した。表6は、HSAの存在が凍結乾燥後のウイルス収率を大きく改善することを示している。37℃で5、12および19日後に力価判定した試料は、顕著に優れた回収率を示した(図1)。0.1%よりも高いHSA濃度で有意な改善はみられないようであったため、0.1% HSAを用いた製剤に対象を絞ることに決定した。
【0063】
(表6)JEPD-018 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0064】
HSAを含めない可能性について調査するために、組換え安定化剤についても評価した。実験JEPD-080では、Delta Biologics社の組換えHSAおよびFibrogen社の組換えヒトゼラチン(2系統‐野生型および操作型)の使用について調べた。組換えヒトゼラチン(rHG)製品は0.5%および1%の濃度で用いた。安定化剤はすべて、5%マンニトール、4%ラクトース、10mMヒスチジンおよび50mMグルタミン酸カリウムの基剤製剤中で用いた。組換えHSAは非組換え体と同等の成績を示したが、ゼラチン製品は一般に凍結乾燥回収率が低く、37℃での試験で低い安定性を示した。
【0065】
(表7)JEDP-080 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0066】
緩衝成分の選択
ChimeriVax(商標)製品の至適pH範囲に近いpK値を有することから、ヒスチジンを緩衝成分として選択した。本発明者らの標的pH範囲は7.9〜8.1であり、ヒスチジンのpK3'は8.97である。実験WNPD-033では、5%スクロース、0.1% HSAおよび50mMグルタミン酸カリウムを含み、10mMヒスチジンは伴うか伴わないかのいずれかである製剤を検査した。これらの製剤を凍結乾燥し、37℃での加速安定性試験を実施した。この2種の凍結乾燥製剤は再構成後に極めて類似した収率を示し(ヒスチジンを含まないものは74%、ヒスチジンを含むものは87%)、37℃で類似の安定性プロフィールを示した(図2)。ヒスチジンを含むものと含まないものとのプロフィールの類似にもかかわらず、これを製剤化成分として選択したのは、標的pH範囲にあるその緩衝能力のためであった。
【0067】
実験WNPD-045では、5%マンニトール、4%ラクトース、0.1% HSAおよび10mMヒスチジンを含み、50mMグルタミン酸カリウムは伴うか伴わないかのいずれかとした製剤を調べた。これらの2種の製剤を凍結乾燥し、続いて37℃で28日間インキュベートした。試料を37℃でのインキュベーション中に7日間隔で採取し、図3に示された安定性プロフィールを得た。どちらの製剤も凍結乾燥後に同等の収率を示した(80%を上回る)。50mMグルタミン酸カリウムを伴う製剤は、伴わないものよりも37℃でより優れた安定性を示した。28日後に、グルタミン酸カリウムを伴う製剤についての力価の損失は0.26 logであった。グルタミン酸カリウムを伴わない場合、損失は0.56 logであった。これらのデータに基づき、50mMグルタミン酸カリウムを製剤に含めることを決めた。
【0068】
増量剤の選択
まずラクトースを、WNPD-021における製剤化成分として調べた。この実験では表5に示された期待の持てる凍結乾燥収率が得られ、JEPD-018でラクトースについてさらに調べたところ、加速安定性試験において極めて有望な結果が示された(表6および図1)。
【0069】
実験WNPD-029は、これらの期待の持てる結果についてさらに検討した。この実験には、4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニンおよび50mMグルタミン酸カリウムの基剤製剤を用いた。以下のデータにより、HSAを安定化成分として用いることの有益性がさらに裏づけられた。
【0070】
(表8)WNPD-029 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0071】
実験JEPD-145では、ラクトース濃度をさまざまに変化させた。2%ラクトース、3%ラクトースおよび4%ラクトースのすべての濃度を、5%マンニトール、0.1% HSA、10mMヒスチジンおよび50mMグルタミン酸カリウムと組み合わせて凍結乾燥させた。この実験により、加速安定性試験において3%および4%ラクトースは類似の挙動を示すが、2%ラクトースはそれらよりも成績が低いことが示された(図4)。3%ラクトースを用いることには認知し得る有利さがなかったため、ラクトース濃度として4%を用いて試験を続けた。
【0072】
実験WNPD-036では、以下の3種の製剤を比較した:
・4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニン、50mMグルタミン酸カリウム、0.1% HSA
・4%ラクトース、3%スクロース、10mMヒスチジン、50mMグルタミン酸カリウム、0.1% HSA
・4%ラクトース、3%マンニトール、10mMヒスチジン、0.1% HAS
【0073】
(表9)WNPD-036 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0074】
ラクトース/マンニトール製剤は良好な成績を示した。これは凍結乾燥後に優れた回収率を示し、37℃での2週後の力価の損失は0.15 logに過ぎなかった。これを以降の研究のための候補として選択した。マンニトールの結晶化特性は、凍結乾燥サイクルを速めるために利用し得ることが期待された。
【0075】
単一糖製剤
他の実験では、これらの増量剤を別々に用いて調査した。WNPD-030では、マンニトールまたはスクロースのいずれかのみを含む製剤を調べた。ラクトースについてはWNPD-047で調べた。これらの製剤を、WNPD-045による、5%マンニトールおよび4%ラクトースという2つの糖の組み合わせを含む製剤と比較した。WNPD-045製剤(5%マンニトール、4%ラクトース、0.1% HSA、10mMヒスチジン、50mMグルタミン酸カリウム)の安定性は、いずれの単一糖製剤のものもはるかに上回った。単一糖製剤はすべて、37℃での14日後のウイルス力価損失が0.9 logを上回った。マンニトール/ラクトース製剤は、同じ期間での損失が0.46 logに過ぎなかった。これは図5に図示されている。
【0076】
アニーリング
2件の凍結乾燥実験、JEPD-166およびJEPD-172では、アニーリングを試みた。これらの実験では、バイアルを-50℃で冷凍させ、続いて0.8℃/分で-15℃まで温度を上昇させた上で、アニーリングするために180分間保った。次に、温度を0.8℃/分で-50℃に低下させ、さらに120分間保った後に一次乾燥を開始した。
【0077】
どちらの実験でも優れたケーキが生成された。アニーリングはマンニトールを結晶化させ、ケーキ外観は典型的な結晶性マンニトールケーキのそれであった。しかし、アニーリングした材料は、アニーリングを伴わずにケーキを生成させたいずれの実験と比較しても安定性が低かった。アニーリングした試料は、37℃での2週間の保存後に、ほぼ1.0 logの損失を示したが、アニーリングしていない試料は同じ期間で、典型的には0.3〜0.5 logの範囲内の損失を来した(図6)。
【0078】
これらのデータを単一糖の系によるデータと総合すると、結晶性マンニトールはChimeriVax(商標)製品の安定性に対して有益でないという結論が導かれる。
【0079】
示差走査熱量測定法では、アニーリングがマンニトールのすべてを本質的には結晶化させたことが確かめられた。図7は、4%ラクトース溶液のサーマルグラムを示しており、-32.6℃のガラス転移を有した。図8は、5%マンニトールを製剤に添加すると、ガラス転移温度がおよそ6℃から-38℃に下げられることを示している。しかし、アニーリングは、マンニトールを結晶化させて、ガラス転移温度をラクトースのみのサーマルグラムで認められる範囲に復帰させることができる。このガラス転移の低下の消失は、マンニトールが完全に結晶化されたことを裏づけている。
【0080】
もう1つの結論を、これらのデータから引き出すことができる。ラクトースは凍結乾燥された場合に常に非晶質状態にあり続ける。マンニトールは単独での製剤中では結晶材料として凍結すると考えられるが、他の糖と組み合わせた場合には、マンニトールは結晶性または非晶質のいずれにもなり得る。以前の実験により、以下の場合には安定性が低いことが示されている:
・ラクトース単独(4%)‐この場合にはラクトースは非晶質である
・マンニトール単独(5%)‐この場合にはマンニトールは結晶性である
・ラクトース(4%)およびマンニトール(5%)、アニーリングを行う‐この場合にはマンニトールは結晶性であり、ラクトースは非晶質である。
【0081】
優れた安定性はこれらの2つの成分を伴う製剤の一方のみで示されている。いずれのアニーリング工程も伴わずにラクトース(4%)およびマンニトール(5%)を凍結乾燥させた場合には、ラクトースおよびマンニトールの両方が非晶質状態であり続けた。このため、非晶質マンニトール、または非晶質マンニトール/ラクトースの組み合わせは、凍結乾燥されたChimeriVax(商標)に対してより優れた安定性を付与する。非晶質ラクトース単独では有効でないことが実証されており、いかなる種類の結晶状態にあるマンニトールについても同様である。
【0082】
最終的な製剤に関するデータの裏づけ
以上に概略を示したように、5%マンニトール、4%ラクトース、0.1% HSA、10mMヒスチジンおよび50mMグルタミン酸カリウム(pH 7.9〜8.1)を、ChimeriVax(商標)ワクチンのための製剤化緩衝液として選択した。製剤の特性決定、ならびに凍結乾燥サイクルの作成および最適化のために、さまざまな実験を行った。
【0083】
液体安定性
WNPD-052、JEPD-072およびJEPD-087からのデータを検討することで、この製剤化がリアルタイムの-80℃保存試験で優れた安定性を与えることを示すことができる。これらの実験では、保存に起因する統計学的に有意な力価損失は全く観察されなかった(図9)。この製剤は、凍結乾燥前に-80℃で保存した場合に、ChimeriVax(商標)製品に十分な安定性を与えるであろう。
【0084】
示差走査熱量測定法
示差走査熱量測定法(DSC)を、この製剤のガラス転移温度(Tg')を決定するために用いた。図10は、WNPD-045試料によるサーマルグラムを示している。これは、分解能を改善するために変調型DSCを用いて分析した。図11は、変調型走査を用いずに十分な分解能を示した、JEPD-172からの試料である。どちらの試料も、-38〜-40℃の範囲にある低いガラス転移温度(中点による)を示している。
【0085】
水分分析
残留水分の量と37℃での2週後のワクチンの安定性とを比較すると、ある傾向を見いだすことができる。図12は、実験JEPD-072、JEPD-087、JEPD-145、JEPD-147およびJEPD-151から収集したデータを提示しており、力価の損失を残留水分のパーセンテージと比較して示している。
【0086】
凍結乾燥パラメーター
表10に示した実験は、最終的な製剤の凍結乾燥に用いたパラメーターの詳細を示している。これはまた、凍結乾燥後のウイルス収率、凍結乾燥ケーキの水分パーセント、凍結乾燥ケーキの外観、ならびに、37℃インキュベーションによる1週間および2週間、さらには最長時点での37℃での加速安定性データも取り込んでいる。
【0087】
(表10)最終的な製剤を用いる実験に関する凍結乾燥パラメーター
* 数値が安定性曲線から外挿されていることを表す
【0088】
これらのデータに基づき、委託製造業者に委譲し得ると考えられる凍結乾燥サイクルを確立することが必要になった。JEPD-151は、最も高い凍結乾燥後の収率、37℃での2週後の最も優れた安定性、最も低い残留水分を有し、審美的見地から最も優れたケーキのいくつかを生じた(図13)。この実験による凍結乾燥サイクルを、委託製造業者に与える技術仕様書のモデルとして利用した。
【0089】
技術仕様書
これらの技術仕様書はJEPD-151を基にしているが、保持時間は、異なる凍結乾燥器による可能性のある規模の問題を補正するために延長した。これらの仕様書は、ChimeriVax(商標)-WNおよびChimeriVax(商標)-JEの第I相/第II相用材料の委託による充填-仕上げのために、Walter Reed Army Institute of Researchに委譲された。
【0090】
冷凍サイクル
・凍結乾燥器の棚を-50℃に予冷する。
・一旦すべてのトレイを装填した上で、棚を-50℃に120分間保つ。
一次乾燥
・25mTに減圧を設定する。
・+0.1℃/分で-40℃の棚温度にランピングして500分間保つ。
・+0.1℃/分で-35℃の棚温度にランピングして500分間保つ。
・+0.1℃/分で-30℃の棚温度にランピングして500分間保つ。
・+0.1℃/分で-25℃の棚温度にランピングして800分間保つ。
二次乾燥
・減圧を25mTのままにする。
・+0.1℃/分で+20℃の棚温度にランピングして800分間保つ。
・必要であれば、製品を+20℃、25mTにさらに最長24時間保ち、その後に封栓を行う。
封栓
・0.22μmのフィルターを通した乾燥窒素ガスを用いてチャンバーのガス抜きを行う。
・減圧を800mbar(軽い減圧)に設定する。
・栓をバイアルに押し込む。
【0091】
材料および等価物
材料
・WN PFU培地‐10% FBS(Hyclone、カタログ番号SH30070.03)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma、P4333)を含むM199培地(Gibco、カタログ番号12340-030)
・JE PFU培地‐10% FBS(Hyclone、カタログ番号SH30070.03)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma, P4333)、1×L-グルタミン(2mM)(Gibco、カタログ番号25030-018)および20mM HEPESを含むEMEM培地。
・メチルセルロース重層物‐5%または10% FBS(Hyclone、カタログ番号SH30070.03)、1×L-グルタミン(Gibco、カタログ番号25030-018)、1×抗生物質/抗真菌薬(Gibco、カタログ番号15240-062)を含むメチルセルロース(SOP# 502-066により調製)
【0092】
装置
・FTS Durastop MP凍結乾燥器
・Kinetics Lyostar II凍結乾燥器
・Orion Karl Fischer Coulometric TitratorモデルAF7LC
・TA Instruments DSC Q1000(ID# 8769)
・Heraeus Heracell 240 Incubator(ID# 9055)
・VWR Low Temperature Incubator Model 2005(ID# 8618および8617)
・VWR Refrigerator(ID# 8663)
・Fischer Scientific Isotemp(ID# 9059)
・Revco Ultima II(ID# 9061)
【0093】
結論/考察
本実施例に提示したデータは、ChimeriVax(商標)製品の凍結乾燥を意図した製剤の選択および開発の概略を示している。製剤は詳細に特性決定され、液体形態での十分な安定性、ならびに凍結乾燥後の優れた回収率および安定性が示されている。凍結乾燥の前に、製剤化されたワクチンを液体形態にて-80℃で保存することができ、これは力価に著しい影響は及ぼさない。本実施例はまた、3mLバイアルへの0.5mL充填のための凍結乾燥サイクルの開発と最適化も取り入れている。このサイクルにより、許容される外観のケーキ、ウイルスの高い回収率(>70%)および低い残留水分(<2%)が得られる。凍結乾燥した製品は温度を上昇させても優れた安定性を示しており、<-10℃の保存条件で保存した場合に著しい力価損失を示す可能性は低いと考えられる。
【0094】
以上に言及したすべての参考文献の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。その他の態様は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ワクチンなどの薬学的組成物、ならびにそのような組成物の作製および使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ワクチン接種は医学の最大の功績の1つであり、破壊的威力のある疾患の影響から数百万人もの人々の命を救ってきた。ワクチンが広く用いられるようになる以前には、感染症のために米国だけでも毎年数千人もの小児および成人が死亡し、世界中ではさらに多数が死亡していた。ワクチン接種は細菌、ウイルスおよび他の病原体による感染症を予防および治療するために広く用いられている上、癌の予防および治療に用いられるアプローチでもある。死滅病原体、生きている弱毒化病原体および不活性病原体サブユニットの投与を含む、いくつかの異なるアプローチがワクチン接種に用いられている。ウイルス感染症の場合には、生ワクチンが、最も効力が強く長続きする防御免疫応答を付与することが見いだされている。
【0003】
弱毒化生ワクチンは、感染した蚊およびダニによって一般に伝染する、エンベロープを有する小型のプラス鎖RNAウイルスであるフラビウイルスに対して開発されている。フラビウイルス科のフラビウイルス属にはおよそ70種のウイルスが含まれ、黄熱病(YF)ウイルス、デング熱(DEN)ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルスおよびダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスといったその多くは、重大なヒト病原体である(Burke and Monath, Fields Virology, 4th Ed., 1043-1126, 2001(非特許文献1)における総説)。
【0004】
フラビウイルスに対するワクチンの開発には、種々のアプローチが用いられてきた。例えば、黄熱病ウイルスの場合には、連続継代によって2種のワクチン(黄熱病17Dおよびフランス向神経性(French neurotropic)ワクチン)が開発されている(Monath, 「Yellow Fever,」 Plotkin and Orenstein, Vaccines, 3rd ed., Saunders, Philadelphia, pp. 815-979, 1999(非特許文献2))。ワクチン接種に用いるためのフラビウイルスの弱毒化のためのもう1つのアプローチは、2つ(またはそれ以上)の異なるフラビウイルスの成分を含むキメラフラビウイルスの構築を伴う。そのようなキメラがどのようにして構築されるかの理解のためには、フラビウイルスゲノムの構造の説明が必要である。
【0005】
単一の長いオープンリーディングフレームの翻訳によってポリタンパク質が生じた後に、宿主およびウイルスのプロテアーゼの組み合わせによる複雑な一連のポリタンパク質の翻訳後タンパク質分解切断を受けて成熟ウイルスタンパク質が生じることによって、フラビウイルスタンパク質は産生される(Amberg et al., J. Virol. 73:8083-8094, 1999(非特許文献3);Rice, 「Flaviviridae,」 Virology, Fields (ed.), Raven-Lippincott, New York, 1995, Volume I, p.937(非特許文献4))。そのウイルス構造タンパク質は、ポリタンパク質においてC-prM-Eの順に配置されており、ここで「C」はキャプシド、「prM」はウイルスエンベロープ結合Mタンパク質の前駆体、および「E」はエンベロープタンパク質である。これらのタンパク質はポリタンパク質のN末端領域に存在し、一方、非構造タンパク質(NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4BおよびNS5)は、ポリタンパク質のC末端領域に位置する。
【0006】
異なるフラビウイルス由来の構造タンパク質および非構造タンパク質を含むキメラフラビウイルスが作製されている。例えば、いわゆるChimeriVax(商標)技術は、黄熱病17Dウイルスのキャプシドおよび非構造タンパク質を利用して、他のフラビウイルスのエンベロープタンパク質(prMおよびE)を送達する(例えば、Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999(非特許文献5)を参照)。この技術は、デング熱ウイルス、日本脳炎(JE)ウイルス、西ナイルウイルス(WN)、およびセントルイス脳炎(SLE)ウイルスに対するワクチン候補を開発するために用いられている(例えば、Pugachev et al., New Generation Vaccines, 3rd ed., Levine et al., eds., Marcel Dekker, New York, Basel, pp. 559-571, 2004(非特許文献6);Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999(非特許文献7);Guirakhoo et al., Virology 257:363-372, 1999(非特許文献8);Monath et al., Vaccine 17:1869-1882, 1999(非特許文献9);Guirakhoo et al., J. Virol. 74:5477-5485, 2000(非特許文献10);Arroyo et al., Trends Mol. Med. 7:350-354, 2001(非特許文献11);Guirakhoo et al., J. Virol. 78:4761-4775, 2004(非特許文献12);Guirakhoo et al., J. Virol. 78:9998-10008, 2004(非特許文献13);Monath et al., J. Infect. Dis. 188:1213-1230, 2003(非特許文献14);Arroyo et al., J. Virol. 78:12497-12507, 2004(非特許文献15);およびPugachev et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 71:639-645, 2004(非特許文献16)を参照)。
【0007】
ワクチンの使用および商業化が成功するために最も重要なのは、ワクチンが出荷されて使用前に保存される条件下での効力の安定性および維持が保証されるように、それらが加工処理および製剤化される様式である。凍結乾燥(lyophilization)はワクチン製品の加工処理にかかわるアプローチであり、本質的には、低圧下で昇華によって水を除去し、製品が少量の水分を伴う乾燥ケーキ(dried cake)として残る冷凍乾燥(freeze-drying)プロセスである。このプロセスは上記のキメラフラビウイルスワクチンを含むワクチンにとって有利であるが、それはこの種のワクチンは低湿度環境でより安定な傾向があるためである。凍結乾燥はまた、製品の保存温度を高くして、それを輸送するのをより容易にすることもできる。凍結乾燥プロセスの効力に影響を及ぼす決定的な要因は、ワクチンの製剤化である。例えば、製剤は、水が除去された時に製品の安定性を高めることが望ましい。典型的には、ワクチン製剤は以下の成分のいずれかまたはすべてを含むと考えられる:増量剤(例えば、糖)、安定化剤(例えば、糖またはタンパク質)および緩衝剤。このため、有効かつ効率的な加工処理の方法および製剤の開発は、以上に考察したように、フラビウイルスワクチンを含む、臨床的に有効で、かつ商業的な成功も収めるワクチンの開発にとって極めて重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Burke and Monath, Fields Virology, 4th Ed., 1043-1126, 2001
【非特許文献2】Monath, 「Yellow Fever,」 Plotkin and Orenstein, Vaccines, 3rd ed., Saunders, Philadelphia, pp. 815-979, 1999
【非特許文献3】Amberg et al., J. Virol. 73:8083-8094, 1999
【非特許文献4】Rice, 「Flaviviridae,」 Virology, Fields (ed.), Raven-Lippincott, New York, 1995, Volume I, p.937
【非特許文献5】Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999
【非特許文献6】Pugachev et al., New Generation Vaccines, 3rd ed., Levine et al., eds., Marcel Dekker, New York, Basel, pp. 559-571, 2004
【非特許文献7】Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999
【非特許文献8】Guirakhoo et al., Virology 257:363-372, 1999
【非特許文献9】Monath et al., Vaccine 17:1869-1882, 1999
【非特許文献10】Guirakhoo et al., J. Virol. 74:5477-5485, 2000
【非特許文献11】Arroyo et al., Trends Mol. Med. 7:350-354, 2001
【非特許文献12】Guirakhoo et al., J. Virol. 78:4761-4775, 2004
【非特許文献13】Guirakhoo et al., J. Virol. 78:9998-10008, 2004
【非特許文献14】Monath et al., J. Infect. Dis. 188:1213-1230, 2003
【非特許文献15】Arroyo et al., J. Virol. 78:12497-12507, 2004
【非特許文献16】Pugachev et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 71:639-645, 2004
【発明の概要】
【0009】
本発明は、1つまたは複数の弱毒化生フラビウイルスワクチン、1つまたは複数の安定化剤、1つまたは複数の増量剤、および1つまたは複数の緩衝成分を含む組成物を提供する。一例として、安定化剤はヒト血清アルブミン(HSA)(例えば、非組換えヒト血清アルブミン(HSA)または組換えヒト血清アルブミン(rHA))(例えば、約0.05〜2.0%または0.1%)である。本発明の組成物中に含めることのできる増量剤の例にはラクトース(例えば、約2〜10%または4%)および/またはマンニトール(例えば、約2〜10%または5%)があり、一方組成物中に含めることのできる緩衝成分の例にはヒスチジン(例えば、約1〜20mMまたは10mM)および/またはグルタミン酸カリウム(例えば、約20〜80mMまたは50mM)がある。組成物は、冷凍乾燥形態に、または冷凍乾燥の前に液体形態であり得る。さらに、組成物のpHは、例えば、6〜10、7〜9、7.5〜8.5または7.9〜8.1であり得る。
【0010】
本発明の組成物に含まれる弱毒化生フラビウイルスワクチンは、例えば、第1のフラビウイルスの構造タンパク質および第2の異なるフラビウイルスの非構造タンパク質を含むキメラフラビウイルスのようなキメラフラビウイルスであり得る。一例として、そのようなキメラフラビウイルスは、第1のフラビウイルスのプレメンブラン(pre-membrane)/膜タンパク質およびエンベロープタンパク質、ならびに第2の異なるフラビウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質を含む。
【0011】
第1および第2のフラビウイルスは、黄熱病(例えば、YF17D)ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱1型ウイルス、デング熱2型ウイルス、デング熱3型ウイルス、デング熱4型ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、ロシオ(Rocio)脳炎ウイルス、イルヘウスウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、アルクフルマ(Alkhurma)ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセットアローブ(Absettarov)ウイルス、ハンザローバ(Hansalova)ウイルス、アポイウイルスおよびHyprウイルスからなる群より独立に選択することができる。具体的な例において、第1のフラビウイルスは日本脳炎ウイルスまたは西ナイルウイルスであり、第2のフラビウイルスは黄熱病ウイルス(例えば、YF17D)である。
【0012】
同じく本発明に含まれるのは、1つまたは複数のタンパク質および/もしくはウイルスを基にした薬学的生成物、ヒト血清アルブミン(例えば、非組換えヒト血清アルブミン(HSA)または組換えヒト血清アルブミン(rHA))(例えば、約0.05〜2.0%または0.1%)、グルタミン酸アルカリ金属塩(例えば、グルタミン酸カリウム)(例えば、約20〜80mMまたは50mM)、1つまたは複数の追加的なアミノ酸(例えば、ヒスチジン)(例えば、約1〜20mMまたは10mM)、ならびに1つまたは複数の糖または糖アルコール(例えば、ラクトースおよび/またはマンニトール)(例えば、約2〜10%、4%または5%)を含む組成物である。組成物は、冷凍乾燥形態に、または冷凍乾燥の前に液体形態にあることができる。さらに、組成物のpHは、例えば、6〜10、7〜9、7.5〜8.5または7.9〜8.1であり得る。
【0013】
一例として、ウイルスを基にした薬学的生成物は、痘瘡ワクチン(例えば、ワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルス、例えば、ACAM1000、ACAM2000または改変ワクシニア-アンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA)など)を含む。もう1つの例において、タンパク質を基にした薬学的生成物は、B型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物(例えば、1つまたは複数のインフルエンザM2eペプチドをさらに含むB型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物)を含む。さらに、もう1つの例において、タンパク質を基にした薬学的生成物は、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素またはトキソイドを含む。
【0014】
同じく本発明に含まれるのは、上記のような組成物を冷凍乾燥プロセスに供する工程を伴う、治療用組成物を調製する方法である。このプロセスは、冷凍、一次乾燥および二次乾燥の工程を伴い得る。一例として、冷凍工程は、約-50℃での約120分間にわたる冷凍を伴う。一次乾燥工程は、約+0.1℃/分で約-40℃の棚温度にランピング(ramping)して約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-35℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-30℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと、および約+0.1℃/分で約-25℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを含む、ランプ(ramp)工程を伴い得る。この例において、二次乾燥工程は、約+0.1℃/分で約+20℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを含む、ランプ工程を伴い得る。
【0015】
もう1つの例において、冷凍工程は、約-40℃での約60分間にわたる冷凍を伴い得る。一次乾燥工程は、約+0.5℃/分で約-5℃の棚温度にランピングして約300分間保つこと;および約-0.5℃/分で約-0℃の棚温度にランピングして約300分間保つことを含む、ランプ工程を伴い得る。二次乾燥工程は、約+0.2℃/分で約+30℃の棚温度にランピングして約600分間保つこと;および約-1.0℃/分で約+5℃の棚温度にランピングして約9999分間保つことを含む、ランプ工程を伴い得る。
【0016】
本発明はまた、対象における1つまたは複数の疾患または病状を予防または治療する方法を含み、本方法は、上記および本明細書中の他の箇所に記載されたような1つまたは複数の本発明の組成物の投与を含む。これらの方法のある例において、対象は、フラビウイルス(例えば、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルスまたは黄熱病ウイルスの感染症)、痘瘡、インフルエンザまたはクロストリジウム-ディフィシレを発症するリスクがあるか、またはそれを有する。さらに、本発明は、本明細書に記載されたような疾患および病状の予防および治療における、ならびにこれらの目的に用いるための薬剤の調製のための、本明細書に記載された組成物および調製物の使用も含む。一般に本方法は、対象が本発明の材料または組成物の投与の前に、疾患、病状、または感染症を有しなければ、対象の疾患、病状、または感染症を「予防する」ために行われる。本方法は、対象がそのような疾患、病状、または感染症を有するならば、対象の疾患、病状、または感染症を「治療する」ために行われる。投与がなされなければ受けるであろう影響を軽減するため、またはそのような影響をなくすために、予防および/または治療を行うことができる。
【0017】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、以上に考察したように、ワクチンなどのタンパク質および/またはウイルス成分を含む薬学的組成物の有効な使用のためには、組成物がさまざまな出荷および保存の条件下で安定であり続けることが重要である。以下にさらに考察するように、本発明は、安定性の向上した組成物の調製を結果的にもたらす、製剤および加工処理工程を提供する。本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実験JEPD-018における、37℃での保存による力価損失を示しているグラフである。
【図2】実験WNPD-033における、ヒスチジンの存在下および非存在下での安定性を示しているグラフである。
【図3】実験WNPD-045における、37℃での、グルタミン酸カリウムの存在下および非存在下での安定性を示しているグラフである。
【図4】実験JEPD-145における、37℃での、種々の濃度のラクトースの存在下での安定性を示しているグラフである。
【図5】37℃での単一糖製剤の安定性をマンニトール/ラクトースの組み合わせと比較して示しているグラフである。
【図6】アニーリングした試料における37℃での保存による力価損失を示しているグラフである。
【図7】ガラス転移点が-32.6℃である、4%ラクトース溶液のサーマルグラム(thermalgram)である。
【図8】5%マンニトールを製剤に添加すると、ガラス転移温度がおよそ6℃から-38℃に下げられることを示しているサーマルグラムである。
【図9】最終的な製剤の-80℃でのリアルタイム安定性を示しているグラフである。
【図10】分解能を改善するために変調型DSCを用いて分析したWNPD-045試料のサーマルグラムである。
【図11】変調型走査を用いずに十分な分解能を示した、JEPD-172からの試料のサーマルグラムである。
【図12】表記の実験における、凍結乾燥ChimeriVax(商標)の安定性と残留水分との相関を示しているグラフである。
【図13】実験JEPD-151の熱電対温度を示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、以下にさらに記載するように、生ウイルスワクチンを含む、ウイルスおよび/またはタンパク質を基にした薬学的生成物の調製のために用いることのできる組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、以下に記載するように、本発明者らがワクチンの調製に有利であることを見いだした成分(例えば、特定の安定化剤、増量剤および緩衝剤)を含み、本方法は、同じく利点をもたらす、凍結乾燥を伴う工程を含む。本発明はまた、本明細書に記載された組成物を用いる予防的および治療的な方法も提供する。本発明の組成物および方法について、以下にさらに記載する。
【0020】
本発明の組成物は、1つまたは複数のタンパク質および/もしくはウイルスを基にした治療薬、ならびに1つまたは複数の安定化剤、増量剤、および/または緩衝成分を含む。本発明の組成物の具体的な一例は、以下にさらに詳細に記載しており、これはキメラフラビウイルスワクチン、安定化剤としてのヒト血清アルブミン(0.1%)、増量剤としてのマンニトール(5%)およびラクトース(4%)、ならびに緩衝成分としてのヒスチジン(10mM)およびグルタミン酸カリウム(50mM)を含む。この具体的な例に加えて、本発明はまた、下記の通り、これらの種類の成分が実体および/または量の点で異なる組成物も含む。
【0021】
本発明の組成物中に存在し得る安定化剤には、血清アルブミンタンパク質が含まれる。好ましい血清アルブミンタンパク質は、非組換え形態または組換え形態のいずれでも、ヒト血清アルブミン(HSA)である。本発明の組成物中に含めることのできる血清アルブミンタンパク質のそのほかの例は、ウシ血清アルブミンである。血清アルブミンに加えて、本発明の組成物中に含めることのできる他の安定化剤には、ヒトゼラチン(例えば、組換えヒトゼラチン、これは野生型でも操作されたものでもよい)およびブタゼラチンなどのゼラチン、カゼイン、PVP、ならびに本明細書で言及している安定化剤(または当技術分野で公知である他のもの)のいずれかの組み合わせがある。ヒト血清アルブミンの場合には、この成分の量は、例えば、約0.05〜2.0%、0.075〜1.0%または0.1%であり得る。
【0022】
本発明の組成物中に存在し得る増量剤には、ラクトース、スクロースおよびフルクトースなどの糖、ならびに/またはマンニトールおよびソルビトールなどの糖アルコールが含まれる。以下にさらに考察するように、マンニトールを含む本発明の組成物においては、この成分が結晶形態であるよりも非晶質形態にあることが好ましいと考えられる。さらに、ある例においては、本発明の組成物が糖および/または糖アルコールの組み合わせを含むことが好ましいと考えられる。以下にさらに記載している一例において、本発明の組成物はラクトースおよびマンニトールの組み合わせを含むことができ、このうち後者は非晶質形態にあることが好ましい。一例として、ラクトースは約1〜10%、2〜8%または4〜6%(例えば、4%)で存在し、一方、マンニトールは約1〜10%、2〜8%または4〜6%(例えば、5%)で存在する。
【0023】
上記のように、本発明の組成物は、安定化剤および増量剤に加えて、アミノ酸などの緩衝成分を含むことができ、これは例えば、特定のpHレベルもしくは範囲、および/または製品安定性の維持に寄与する役を果たすと考えられる。本発明の組成物中に含めることのできる緩衝成分の一例はヒスチジンであり、これは例えば、約1〜20mM、5〜15mMまたは10mMの濃度で組成物中に存在してよい。緩衝成分のもう1つの例は、グルタミン酸ナトリウムまたはグルタミン酸カリウムなどのグルタミン酸アルカリ金属塩であり、これは約10〜100mM、25〜75mMまたは50mMの濃度で組成物中に存在してよい。さらに、組成物はpHが一般に、例えば6〜10、7〜9、7.5〜8.5または7.9〜8.1である。
【0024】
本発明の組成物はまた、活性のある1つまたは複数の治療用成分も含み、これはペプチドまたはタンパク質を基にした治療薬、ならびに弱毒化生ウイルスワクチンなどのウイルスであり得る。後者の群のタイプの治療薬(弱毒化生ウイルスワクチン)の一例は、黄熱病ウイルスワクチンなどのフラビウイルスワクチンである。そのような黄熱病ウイルスワクチンの具体的な一例は、YF17Dワクチン株である(Smithburn et al., 「Yellow Fever Vaccination,」 World Health Org., p. 238, 1956;Freestone, Plotkin et al. (eds.), Vaccines, 2nd edition, W. B. Saunders, Philadelphia, 1995)。他の黄熱病ウイルス株、例えば、YF17DD(GenBankアクセッション番号U 17066)およびYF17D-213(GenBankアクセッション番号U 17067)(dos Santos et al., Virus Res. 35:35-41, 1995)、YF17D-204 France(X15067、X15062)、YF17D-204, 234 US(Rice et al., Science 229:726-733, 1985;Rice et al., New Biologist 1:285-296, 1989;C 03700,K 02749)、ならびにGaller et al., Vaccine 16 (9/10):1024-1028, 1998によって記載された黄熱病ウイルス株も、本発明の組成物中に存在し得る。
【0025】
本発明の組成物中に存在し得るさらなるフラビウイルスには、他の蚊媒介フラビウイルス、例えば日本脳炎ウイルス(例えば、SA14-14-2)、デング熱ウイルス(血清型1〜4)、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、ロシオ脳炎ウイルスおよびイルヘウスウイルスなど;ダニ媒介フラビウイルス、例えば中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、アルクフルマウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセットアローブウイルス、ハンザローバウイルス、アポイウイルスおよびHyprウイルスなど;ならびにヘパシウイルス属のウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス)が含まれる。
【0026】
以上に列記したウイルス、ならびに他のフラビウイルスに加えて、キメラフラビウイルスを本発明の組成物中に含めることもできる。これらのキメラは、フラビウイルス(すなわち、バックボーンのフラビウイルス)から構成することができ、そこでは1つの(または複数の)構造タンパク質が、第2のウイルス(すなわち、被験ウイルスまたは規定のウイルス、例えばフラビウイルスなど;例えば、米国特許第6,696,281号;米国特許第6,184,024号;米国特許第6,676,936号;および米国特許第6,497,884号を参照)の対応する1つの(または複数の)構造タンパク質によって置き換えられている。例えばキメラは、バックボーンのフラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス)から構成することができ、そこではフラビウイルスの膜タンパク質およびエンベロープタンパク質が、第2の被験ウイルス(例えば、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス(血清型1、2、3または4)、日本脳炎ウイルスまたは別のウイルス、例えば本明細書中で言及しているもののいずれかなど)の膜およびエンベロープによって置き換えられている。キメラウイルスは、ウイルスの任意の組み合わせから作製することができるが、典型的には、それに対する免疫が探索されるウイルスが、挿入される構造タンパク質の供給源である。
【0027】
本発明の組成物中に含めることのできる種類のキメラウイルスの具体的な一例は、黄熱病ヒトワクチン株YF17Dであり、その中では膜タンパク質およびエンベロープタンパク質が、別のフラビウイルス、例えば西ナイルウイルス、デング熱ウイルス(血清型1、2、3または4)、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、または以上に列記したものの1つのような任意の他のフラビウイルスなどの膜タンパク質およびエンベロープタンパク質によって置き換えられている。このアプローチを用いて作製されたキメラフラビウイルスは、いわゆる「ChimeriVax」ウイルスと名付けられている。ChimeriVax(商標)技術を用いて作製され、ブダペスト条約の条項に従ってManassas、Virginia、U.S.A.にあるAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、1998年1月6日の寄託日を付与された以下のキメラフラビウイルスを用いて、本発明のウイルスを作製することができる:キメラ黄熱病17D/デング2型ウイルス(YF/DEN-2;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2593)およびキメラ黄熱病17D/日本脳炎SA14-14-2ウイルス(YF/JE A1.3;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2594)。
【0028】
本発明で用いることができるキメラウイルスの作製に関する詳細は、例えば、以下の刊行物中に提示されている:WO 98/37911;WO 01/39802;Chambers et al., J. Virol. 73:3095-3101, 1999;WO 03/103571;WO 2004/045529;米国特許第6,696,281号;米国特許第6,184,024号;米国特許第6,676,936号;および米国特許第6,497,884号。本発明の組成物中に存在することができ、特定の弱毒化突然変異を含み得るキメラフラビウイルスのもう1つの具体例は、例えば、WO 02/072835、WO 02/102828、WO 03/103571、WO 2004/045529、WO 2005/082020、WO 2006/044857、WO 2006/116182および米国特許第6,589,531号に記載されている。
【0029】
本発明の組成物中に存在し得るさらなるウイルスワクチンには、痘瘡ワクチン(例えば、ACAM1000、ACAM2000、改変ワクシニア-アンカラ(MVA)およびリスター(Lister)を含む、ワクシニアウイルスを基にしたワクチン、ならびにサル痘を基にしたワクチン)、ならびにヘルペスウイルスおよびワクチン(例えば、HSV-1およびその組換え体ならびにHSV-2およびその組換え体)が含まれる(例えば、米国特許第7,115,270号を参照)。
【0030】
ウイルスに加えて、本発明の組成物は、治療用またはワクチン用のペプチドまたはタンパク質、例えば、B型肝炎コアタンパク質融合構築物(例えば、M2eなどの1つまたは複数のインフルエンザペプチドと融合したB型肝炎コアタンパク質;例えば、WO 2005/055957を参照)、およびC.ディフィシレ(C. difficile)トキソイドワクチン(例えば、トキソイドAおよび/またはBを含む)も含むことができる。
【0031】
上記および本明細書中の他の箇所に記載されたような組成物は、冷凍乾燥形態にあること、または冷凍乾燥プロセスの前もしくは後などに液体の形態にあることができる。本明細書中の別の箇所でさらに詳細に考察しているように、本発明の組成物は、活性成分の安定性が理由で特に有利であり、これは主として、製剤化と、凍結乾燥を伴う製品を調製するプロセスに起因する。一般に、このプロセスは以下の工程を含む:冷凍、一次乾燥、二次乾燥、および封栓(stoppering)。本プロセスは、実験例の項で、以下にさらに詳細に記載するが、プロセスの一例は以下の通りである。
【0032】
冷凍工程では、凍結乾燥器の棚を-50℃に予冷する。一旦すべてのトレイを装填した上で、棚を-50℃に120分間保つ。一次乾燥工程では、25mTに減圧を設定し、以下のランプ工程を実施する:+0.1℃/分で-40℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-35℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-30℃の棚温度にランピングして500分間保つ、および+0.1℃/分で-25℃の棚温度にランピングして800分間保つ。二次乾燥工程では、減圧を25mTのままにして、+0.1℃/分で+20℃の棚温度にランピングして800分間保つようにランプ工程を実施する。必要であれば、製品を+20℃、25mTにさらに最長24時間保ち、その後に封栓を行う。封栓工程では、0.22μmのフィルターを通した乾燥窒素ガスを用いてチャンバーのガス抜きを行い、減圧を800mbar(軽い減圧)に設定して、栓をバイアルに押し込む。本発明において用い得る代替的な凍結乾燥サイクルを、以下の表にまとめている。
【0033】
(表1)代替的な凍結乾燥サイクル
【0034】
したがって、本発明の方法は、例えば、ちょうどまたは約-70℃〜30℃(例えば、-60℃〜-40℃、または-50℃)での冷凍を伴うことができる。冷凍は約30〜240分間(例えば、60〜120分間)またはそれよりも長く行うことができる。続いて材料を、本明細書に記載されているように、1つまたは複数の乾燥工程に供することができる。これらの工程では、減圧を適用することができ(例えば、25mT)、温度を、ある期間(例えば、100〜1000分間、例えば、200〜600分間または300〜500分間)にわたって徐々に変化させることができる(例えば、0.1〜1.0℃/分、または0.5℃/分)。一次乾燥では、温度を、例えば、ちょうどまたは約-30℃から+10℃に、例えば、-20℃から+5℃に、または-15℃から0℃に上昇させることができ、一方、二次乾燥では、温度を例えば+5℃から+35℃に、例えば、10℃から30℃に、または15℃から20℃に変化させることができる。当業者には公知であるように、これらのパラメーター(例えば、温度、保持時間、ランプ速度および減圧レベル)は、例えば、得られた結果に基づいて変化させることができる。
【0035】
製剤化の前に、本発明の組成物中に含めてもよいウイルス(キメラを含む)を、当技術分野における標準的な方法を用いて作製することができる。例えば、ウイルスのゲノムに対応するRNA分子を、初代細胞、ニワトリ胚または二倍体細胞系に導入することができ、続いてそれから(またはその上清から)子孫ウイルスを精製することができる。ウイルスを産生するために用いることができる別の方法では、Vero細胞などの異数体細胞を利用する(Yasumura et al., Nihon Rinsho 21:1201-1215, 1963)。この方法では、ウイルスのゲノムに対応する核酸分子(例えば、RNA分子)を異数体細胞に導入して、細胞を培養した培地からウイルスを収集し、収集したウイルスをヌクレアーゼ(例えば、DNAおよびRNAの両方を分解するエンドヌクレアーゼ、例えばBenzonase(商標)など;米国特許第5,173,418号)で処理し、ヌクレアーゼ処理したウイルスを濃縮して(例えば、分子量カットオフが例えば500kDaであるフィルターを用いる限外濾過を用いて)、濃縮したウイルスをワクチン接種の目的で製剤化する。この方法の詳細はWO 03/060088A2に提示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
本発明のワクチン組成物は、感染のリスクがある者に対して一次予防薬として投与することができ、または感染した患者を治療するための二次薬として用いることもできる。これらの組成物のいくつかにおけるウイルスは弱毒化されているため、それらは、高齢者、小児、またはHIV感染者といった「リスクのある個体」に対する投与に特によく適している。そのようなワクチンを、獣医学的状況で、例えば、西ナイルウイルス感染に対するウマのワクチン接種に、または鳥類(例えば、価値のある鳥類、絶滅の危機に瀕した鳥類、または家畜化された鳥類、例えばそれぞれフラミンゴ、ハクトウワシ、およびガチョウなど)のワクチン接種に用いることもできる。さらに、本発明のワクチンは、特定の突然変異を含むキメラウイルスなどのウイルスを、そのような突然変異を欠くウイルスとの混合物中に含むことができる。
【0037】
本発明のワクチンは、当業者に周知の方法を用いて投与することができ、投与しようとするワクチンの適切な量は当業者が容易に決定することができる。投与されるウイルスの適切な量であると決定されるものは、例えば、ウイルスを投与しようとする対象のサイズおよび全般的健康状態といった要因の考慮によって決定され得る。例えば、本発明のウイルスは、例えば、筋肉内、皮下または皮内の経路によって投与しようとする0.1〜1.0mlの投与容積中に、102〜108、例えば、103〜107感染単位(例えばプラーク形成単位または組織培養感染用量)を含む滅菌水溶液として製剤化することができる。加えて、フラビウイルスは経口経路などの粘膜経路を介してヒト宿主を感染する能力を有し得るため(Gresikova et al., 「Tick-borne Encephalitis,」 The Arboviruses, Ecology and Epidemiology, Monath (ed.), CRC Press, Boca Raton, Florida, 1988, Volume IV, 177-203)、本発明のフラビウィルスベースのワクチンを同様に粘膜経路によって投与することもできる。さらに、本発明のワクチンは、単回用量で投与することもでき、または任意で、投与は、初回刺激用量、およびそれに続いて、当業者により適切であると決定される、例えば2〜6カ月後に投与される追加刺激用量の使用を含むことができる。
【0038】
実施例
以下に記載した実験は、ChimeriVax(商標)-WN(黄熱病ウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質ならびに西ナイルウイルスのプレメンブラン/膜タンパク質およびエンベロープタンパク質を含むキメラフラビウイルス)およびChimeriVax(商標)-JE(黄熱病ウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質ならびに日本脳炎ウイルスのプレメンブラン/膜タンパク質およびエンベロープタンパク質を含むキメラフラビウイルス)という2種類のワクチンの製剤化および凍結乾燥のための開発プログラムで実施されたが、これらのアプローチは、上記の通り他のタンパク質/ペプチドおよび/またはウイルスを含む治療薬の製剤化および加工処理に関しても本発明に含められる。
【0039】
したがって、一例において、本発明の製剤は、10mMヒスチジン(アミノ酸)、50mMグルタミン酸カリウム(アミノ酸)、0.1% HSA(ヒト血清アルブミン、USP)、5%マンニトールおよび4%ラクトース、pH 7.9〜8.1を含む。本発明の方法の一例において、凍結乾燥は以下の通りに行われる。凍結乾燥器の棚を-50℃に予冷し、一旦すべてのトレイを装填した上で、棚を-50℃に120分間保つ。一次乾燥工程では、25mTに減圧を設定し、工程は以下のものを含む:+0.1℃/分で-40℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-35℃の棚温度にランピングして500分間保つ;+0.1℃/分で-30℃の棚温度にランピングして500分間保つ;および+0.1℃/分で-25℃の棚温度にランピングして800分間保つ。二次乾燥工程では、減圧を25mTのままにして、+0.1℃/分で+20℃の棚温度にランピングして800分間保つ。必要であれば、製品を+20℃、25mTにさらに最長24時間保つことができ、その後に封栓を行う。封栓工程では、0.22μmのフィルターを通した乾燥窒素ガスを用いてチャンバーのガス抜きを行い、減圧を800mbar(軽い減圧)に設定して、栓をバイアルに押し込む。本実施例の基盤、ならびに本発明に含まれる他の製剤および方法について、以下に一部を提示する。
【0040】
実施例I‐マンニトール/ラクトース製剤を用いた西ナイル凍結乾燥試験(WNPD-045)実験
本実施例に記載した実験において、本発明者らは、5%マンニトール、4%ラクトースおよび10mMヒスチジンを基剤とする西ナイルの製剤を調査した。完成した製剤を、付随するガラス転移温度とともに表2に示している。
【0041】
(表2)WNPD-045 製剤およびガラス転移温度
【0042】
製剤化緩衝液中へのWNPD-001 精製したバルク(Clarified Bulk)の1:100希釈を行うことによってウイルスを製剤化した。製剤化はBSCで行った。凍結乾燥は以下の条件下で行った:0.5℃/分で-55℃の棚温度にランピングして120分間保つ;製品温度が-50℃に達したところで15分間保つ;150mTのチャンバーおよび100mTのフォアライン(foreline)で乾燥させる;0.2℃/分で-20℃の棚温度にランピングして50mTで1034分間保つ;および、0.53℃/分で20℃の棚温度にランピングして50mTで概ね862分保つ。この凍結乾燥サイクルはおよそ38時間で完了した。
【0043】
凍結乾燥した材料に対して加速安定性試験を行った。多数の凍結乾燥バイアルを37℃でインキュベートした。第7日および第14日にバイアルを取り出し、ラベルを付けて、保存のために-80℃で置いた。グルタミン酸カリウムを伴うすべての製剤は、37℃で7日後にかなりのケーキの縮小を来した。グルタミン酸カリウムを伴わない製剤はこの縮小を来さなかった。実験WNPD-049およびWNPD-051は、これらの製剤中でのウイルスの安定性を決定するためのPFUアッセイであった。試料はすべてWFIにより再構成した。
【0044】
結果
製剤はすべて、凍結乾燥後に極めて類似した外観であった。ケーキは充実性(full)であり、著しい体積損失を被っているようには見えなかった。いくつかのケーキはバイアル壁から離脱していたが、これは製剤間でランダムであるように思われた。表3は、製剤化に用いた精製したバルク材料と比較した、冷凍収率および凍結乾燥を介した収率を示している。表4は、37℃での加速安定性試験の結果を示している。
【0045】
(表3)WNPD-045 凍結乾燥および冷凍の収率
【0046】
(表4)WNPD-045 37℃での安定性
【0047】
結論
HSAを伴う製剤は極めて良好な成績を示し、本発明者らが今日までに得た中でも最良の結果のいくつかを収めた。-80℃での保存で有意な損失はみられなかった。これらの製剤は極めて優れた凍結乾燥収率も示し、平均収率は73%であった。これらの試料のケーキの外観は、これまでのいかなる他の製剤におけるよりもはるかにより均一であったことに注目すべきである。HSA製剤の安定性は極めて期待が持てるものであった。どちらの製剤も、37℃で14日後に<0.5 log未満の損失を示した。グルタミン酸カリウムを有することは製剤化のために有益であるように思われる。
【0048】
組換えヒトゼラチンrHG-272を伴う製剤は、HSAに関するものほど優れた結果は生み出さなかったが、0.1%の濃度を上昇させれば改善される可能性がある。これらの製剤は-80℃で冷凍させた場合に低い収率を示した。このことは、rHG-272製剤において冷凍後に低い回収性を示した、WNPD-033(以下参照)でみられたデータを裏づける。組換えゼラチンを伴う製剤も、37℃で14日後の安定性試験において損失(>1 log)を示した。
【0049】
実施例II‐ChimeriVax(商標)-WNおよびChimeriVax(商標)-JE製品のための凍結乾燥ワクチンの開発
本実施例は、ChimeriVax(商標)-WNワクチンおよびChimeriVax(商標)-JEワクチンのために適した製剤の開発および特性決定、ならびにこれらのワクチンのための凍結乾燥サイクルの開発および最適化を記載する。
【0050】
実験手順および結果
手順
製剤化
凍結乾燥実験のためのバルクを製剤化するために、製剤化緩衝液中への濃縮ChimeriVax(商標)-WNまたはChimeriVax(商標)-JEの1:100希釈を実施した。製剤化緩衝液組成物は実験計画によって異なる。製剤化したバルクの試料を凍結乾燥の前に採取して、「凍結乾燥前(pre-lyo)」試料として-80℃で保存した。
【0051】
凍結乾燥
WNPD-070まで、およびJEPD-144までに関する実験については、FTS DuraStop MPシステムを用いて凍結乾燥を行った。JEPD-145以後は、Kinetics LyoStar IIシステムを用いた。凍結乾燥パラメーターは実験計画によって異なった。3mLバイアルをすべての実験のために用いた。典型的には、0.5mLの充填容積を用いたが、0.3mLの充填容積も併せて実験しており、適用可能な場合は指摘する。
【0052】
ChimeriVax(商標)-WNプラークアッセイ
プラークアッセイを用いて、凍結乾燥プロセスおよび安定性試験でのウイルス回収率を評価した。凍結乾燥したChimeriVax(商標)-WN試料を、注射用水(WFI)または注射用0.9%塩化ナトリウムのいずれかで再構成した。再構成した試料をWN PFU培地で希釈した。希釈物をO-Veroプレート上に1ウェル当たり100μlプレーティングし、1ウェル当たり2×105個を播種した。プレートを37℃および5% CO2下で1時間インキュベートし、続いてメチルセルロース重層物で表面を覆った。プレートを37℃および5% CO2下で96±12時間インキュベートし、続いて70%メタノール中の1%クリスタルバイオレットで染色した。染色したプレートをすすぎ洗いし、その後に計数した。許容される希釈度は1ウェル当たり10〜120プラークであり、各希釈度に関して計数したすべてのウェルについての相対標準偏差は<40%であった。
【0053】
ChimeriVax(商標)-JEプラークアッセイ
プラークアッセイを用いて、凍結乾燥プロセスおよび安定性試験でのウイルス回収率を評価した。凍結乾燥したChimeriVax(商標)-JE試料を、注射用水(WFI)または注射用0.9%塩化ナトリウムのいずれかで再構成した。再構成した試料をJE PFU培地で希釈した。希釈物をO-Veroプレート上に1ウェル当たり100μlプレーティングし、1ウェル当たり3×105個を播種した。プレートを37℃および5% CO2下で1時間インキュベートし、続いてメチルセルロース重層で表面を覆った。プレートを37℃および5% CO2下で96±12時間インキュベートし、続いて70%メタノール中の1%クリスタルバイオレットで染色した。染色したプレートをすすぎ洗いし、その後に計数した。許容される希釈度は1ウェル当たり10〜120プラークであり、各希釈度に関して計数したすべてのウェルについての相対標準偏差は<40%であった。
【0054】
安定性試験
安定性試験をさまざまな温度で実施した。加速安定性試験は37℃インキュベーター内で行った。また、試料を周囲温度(15〜30℃)、25℃、2〜8℃および-20℃にも保った。ゼロ時点の試料を-80℃で保存した。いくつかの場合には、温度を上昇させたものから試料を特定の日に取り出して、後日にアッセイするために-80℃で保存した。
【0055】
残留水分分析
残留水分分析は、Coulometric Karl Fischerへの直接的な試料注入を用いて行った。検査は、Canton、MAのAcambis社の品質管理部門により、US02-FRM-158-02に従って行われた。
【0056】
示差走査熱量測定法
示差走査熱量測定法はTA Instruments Q1000を用いて行った。液体試料を-70℃に冷却し、続いて20℃にランピングした。より高い分解能が必要であった時には、変調法を用いた。これらの方法により、製剤化緩衝液候補のガラス転移温度が得られた。固体試料を0℃から120℃にランピングした。この方法を用いて、凍結乾燥材料のガラス転移温度を評価し、保存条件を決定した。
【0057】
結果
製剤開発の概略
製剤を以下の基準に基づいて評価した:
・Tg'‐冷凍材料のガラス転移温度
・凍結乾燥ケーキの外観
・凍結乾燥回収率
・凍結乾燥材料の37℃での安定性
・凍結乾燥材料の残留水分
・Tg‐凍結乾燥材料のガラス転移温度
【0058】
多数の添加剤を、初期の製剤化実験で用いた。最初にスクリーニングした成分は以下を含む:ソルビトール、マンニトール、スクロース、デキストラン、ラクトース、グリシン、Heatstarch、Pentastarch、PEG 3350、PVP 40K、塩化ナトリウム、塩化カリウム、Tween-80、ヒスチジン、アラニン、HEPES、TRIS、グルタミン酸カリウム、トリポリリン酸塩およびリン酸カリウム。いくつかの製剤は許容されるケーキを生成することができず、凍結乾燥後のウイルス回収率が非常に低かった(30%未満)。ウイルス回収率は、製剤に安定化剤としてHSAを添加することによって改善し始めた。
【0059】
HSA実験
実験WNPD-021では、まずHSAを安定化剤として用いた。種々の濃度のHSAを2種類の基剤製剤に添加した。2種類の製剤は以下の通り:
・1%ヘタスターチ、1%スクロース、0.1%ソルビトールおよび50mMグルタミン酸カリウム
・4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニンおよび50mMグルタミン酸カリウム
であり、HSAは0%、0.2%、1%および2%の濃度で添加した。
【0060】
プラークアッセイにより、WFIで再構成した場合には以下の収率が示された。
【0061】
(表5)WNPD-021 凍結乾燥収率
【0062】
実験JEPD-018ではさらに、凍結乾燥製剤における、安定剤としてのHSAの影響を調査した。この実験には、4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニンおよび50mMグルタミン酸カリウムの製剤を用い、0%、0.05%、0.1%、1%および2%のHSA濃度を調べた。凍結乾燥の後に、加速安定性試験において試料を37℃で保存した。表6は、HSAの存在が凍結乾燥後のウイルス収率を大きく改善することを示している。37℃で5、12および19日後に力価判定した試料は、顕著に優れた回収率を示した(図1)。0.1%よりも高いHSA濃度で有意な改善はみられないようであったため、0.1% HSAを用いた製剤に対象を絞ることに決定した。
【0063】
(表6)JEPD-018 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0064】
HSAを含めない可能性について調査するために、組換え安定化剤についても評価した。実験JEPD-080では、Delta Biologics社の組換えHSAおよびFibrogen社の組換えヒトゼラチン(2系統‐野生型および操作型)の使用について調べた。組換えヒトゼラチン(rHG)製品は0.5%および1%の濃度で用いた。安定化剤はすべて、5%マンニトール、4%ラクトース、10mMヒスチジンおよび50mMグルタミン酸カリウムの基剤製剤中で用いた。組換えHSAは非組換え体と同等の成績を示したが、ゼラチン製品は一般に凍結乾燥回収率が低く、37℃での試験で低い安定性を示した。
【0065】
(表7)JEDP-080 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0066】
緩衝成分の選択
ChimeriVax(商標)製品の至適pH範囲に近いpK値を有することから、ヒスチジンを緩衝成分として選択した。本発明者らの標的pH範囲は7.9〜8.1であり、ヒスチジンのpK3'は8.97である。実験WNPD-033では、5%スクロース、0.1% HSAおよび50mMグルタミン酸カリウムを含み、10mMヒスチジンは伴うか伴わないかのいずれかである製剤を検査した。これらの製剤を凍結乾燥し、37℃での加速安定性試験を実施した。この2種の凍結乾燥製剤は再構成後に極めて類似した収率を示し(ヒスチジンを含まないものは74%、ヒスチジンを含むものは87%)、37℃で類似の安定性プロフィールを示した(図2)。ヒスチジンを含むものと含まないものとのプロフィールの類似にもかかわらず、これを製剤化成分として選択したのは、標的pH範囲にあるその緩衝能力のためであった。
【0067】
実験WNPD-045では、5%マンニトール、4%ラクトース、0.1% HSAおよび10mMヒスチジンを含み、50mMグルタミン酸カリウムは伴うか伴わないかのいずれかとした製剤を調べた。これらの2種の製剤を凍結乾燥し、続いて37℃で28日間インキュベートした。試料を37℃でのインキュベーション中に7日間隔で採取し、図3に示された安定性プロフィールを得た。どちらの製剤も凍結乾燥後に同等の収率を示した(80%を上回る)。50mMグルタミン酸カリウムを伴う製剤は、伴わないものよりも37℃でより優れた安定性を示した。28日後に、グルタミン酸カリウムを伴う製剤についての力価の損失は0.26 logであった。グルタミン酸カリウムを伴わない場合、損失は0.56 logであった。これらのデータに基づき、50mMグルタミン酸カリウムを製剤に含めることを決めた。
【0068】
増量剤の選択
まずラクトースを、WNPD-021における製剤化成分として調べた。この実験では表5に示された期待の持てる凍結乾燥収率が得られ、JEPD-018でラクトースについてさらに調べたところ、加速安定性試験において極めて有望な結果が示された(表6および図1)。
【0069】
実験WNPD-029は、これらの期待の持てる結果についてさらに検討した。この実験には、4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニンおよび50mMグルタミン酸カリウムの基剤製剤を用いた。以下のデータにより、HSAを安定化成分として用いることの有益性がさらに裏づけられた。
【0070】
(表8)WNPD-029 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0071】
実験JEPD-145では、ラクトース濃度をさまざまに変化させた。2%ラクトース、3%ラクトースおよび4%ラクトースのすべての濃度を、5%マンニトール、0.1% HSA、10mMヒスチジンおよび50mMグルタミン酸カリウムと組み合わせて凍結乾燥させた。この実験により、加速安定性試験において3%および4%ラクトースは類似の挙動を示すが、2%ラクトースはそれらよりも成績が低いことが示された(図4)。3%ラクトースを用いることには認知し得る有利さがなかったため、ラクトース濃度として4%を用いて試験を続けた。
【0072】
実験WNPD-036では、以下の3種の製剤を比較した:
・4%ラクトース、2%ソルビトール、10mMヒスチジン、10mMアラニン、50mMグルタミン酸カリウム、0.1% HSA
・4%ラクトース、3%スクロース、10mMヒスチジン、50mMグルタミン酸カリウム、0.1% HSA
・4%ラクトース、3%マンニトール、10mMヒスチジン、0.1% HAS
【0073】
(表9)WNPD-036 凍結乾燥収率および37℃での加速安定性データ
【0074】
ラクトース/マンニトール製剤は良好な成績を示した。これは凍結乾燥後に優れた回収率を示し、37℃での2週後の力価の損失は0.15 logに過ぎなかった。これを以降の研究のための候補として選択した。マンニトールの結晶化特性は、凍結乾燥サイクルを速めるために利用し得ることが期待された。
【0075】
単一糖製剤
他の実験では、これらの増量剤を別々に用いて調査した。WNPD-030では、マンニトールまたはスクロースのいずれかのみを含む製剤を調べた。ラクトースについてはWNPD-047で調べた。これらの製剤を、WNPD-045による、5%マンニトールおよび4%ラクトースという2つの糖の組み合わせを含む製剤と比較した。WNPD-045製剤(5%マンニトール、4%ラクトース、0.1% HSA、10mMヒスチジン、50mMグルタミン酸カリウム)の安定性は、いずれの単一糖製剤のものもはるかに上回った。単一糖製剤はすべて、37℃での14日後のウイルス力価損失が0.9 logを上回った。マンニトール/ラクトース製剤は、同じ期間での損失が0.46 logに過ぎなかった。これは図5に図示されている。
【0076】
アニーリング
2件の凍結乾燥実験、JEPD-166およびJEPD-172では、アニーリングを試みた。これらの実験では、バイアルを-50℃で冷凍させ、続いて0.8℃/分で-15℃まで温度を上昇させた上で、アニーリングするために180分間保った。次に、温度を0.8℃/分で-50℃に低下させ、さらに120分間保った後に一次乾燥を開始した。
【0077】
どちらの実験でも優れたケーキが生成された。アニーリングはマンニトールを結晶化させ、ケーキ外観は典型的な結晶性マンニトールケーキのそれであった。しかし、アニーリングした材料は、アニーリングを伴わずにケーキを生成させたいずれの実験と比較しても安定性が低かった。アニーリングした試料は、37℃での2週間の保存後に、ほぼ1.0 logの損失を示したが、アニーリングしていない試料は同じ期間で、典型的には0.3〜0.5 logの範囲内の損失を来した(図6)。
【0078】
これらのデータを単一糖の系によるデータと総合すると、結晶性マンニトールはChimeriVax(商標)製品の安定性に対して有益でないという結論が導かれる。
【0079】
示差走査熱量測定法では、アニーリングがマンニトールのすべてを本質的には結晶化させたことが確かめられた。図7は、4%ラクトース溶液のサーマルグラムを示しており、-32.6℃のガラス転移を有した。図8は、5%マンニトールを製剤に添加すると、ガラス転移温度がおよそ6℃から-38℃に下げられることを示している。しかし、アニーリングは、マンニトールを結晶化させて、ガラス転移温度をラクトースのみのサーマルグラムで認められる範囲に復帰させることができる。このガラス転移の低下の消失は、マンニトールが完全に結晶化されたことを裏づけている。
【0080】
もう1つの結論を、これらのデータから引き出すことができる。ラクトースは凍結乾燥された場合に常に非晶質状態にあり続ける。マンニトールは単独での製剤中では結晶材料として凍結すると考えられるが、他の糖と組み合わせた場合には、マンニトールは結晶性または非晶質のいずれにもなり得る。以前の実験により、以下の場合には安定性が低いことが示されている:
・ラクトース単独(4%)‐この場合にはラクトースは非晶質である
・マンニトール単独(5%)‐この場合にはマンニトールは結晶性である
・ラクトース(4%)およびマンニトール(5%)、アニーリングを行う‐この場合にはマンニトールは結晶性であり、ラクトースは非晶質である。
【0081】
優れた安定性はこれらの2つの成分を伴う製剤の一方のみで示されている。いずれのアニーリング工程も伴わずにラクトース(4%)およびマンニトール(5%)を凍結乾燥させた場合には、ラクトースおよびマンニトールの両方が非晶質状態であり続けた。このため、非晶質マンニトール、または非晶質マンニトール/ラクトースの組み合わせは、凍結乾燥されたChimeriVax(商標)に対してより優れた安定性を付与する。非晶質ラクトース単独では有効でないことが実証されており、いかなる種類の結晶状態にあるマンニトールについても同様である。
【0082】
最終的な製剤に関するデータの裏づけ
以上に概略を示したように、5%マンニトール、4%ラクトース、0.1% HSA、10mMヒスチジンおよび50mMグルタミン酸カリウム(pH 7.9〜8.1)を、ChimeriVax(商標)ワクチンのための製剤化緩衝液として選択した。製剤の特性決定、ならびに凍結乾燥サイクルの作成および最適化のために、さまざまな実験を行った。
【0083】
液体安定性
WNPD-052、JEPD-072およびJEPD-087からのデータを検討することで、この製剤化がリアルタイムの-80℃保存試験で優れた安定性を与えることを示すことができる。これらの実験では、保存に起因する統計学的に有意な力価損失は全く観察されなかった(図9)。この製剤は、凍結乾燥前に-80℃で保存した場合に、ChimeriVax(商標)製品に十分な安定性を与えるであろう。
【0084】
示差走査熱量測定法
示差走査熱量測定法(DSC)を、この製剤のガラス転移温度(Tg')を決定するために用いた。図10は、WNPD-045試料によるサーマルグラムを示している。これは、分解能を改善するために変調型DSCを用いて分析した。図11は、変調型走査を用いずに十分な分解能を示した、JEPD-172からの試料である。どちらの試料も、-38〜-40℃の範囲にある低いガラス転移温度(中点による)を示している。
【0085】
水分分析
残留水分の量と37℃での2週後のワクチンの安定性とを比較すると、ある傾向を見いだすことができる。図12は、実験JEPD-072、JEPD-087、JEPD-145、JEPD-147およびJEPD-151から収集したデータを提示しており、力価の損失を残留水分のパーセンテージと比較して示している。
【0086】
凍結乾燥パラメーター
表10に示した実験は、最終的な製剤の凍結乾燥に用いたパラメーターの詳細を示している。これはまた、凍結乾燥後のウイルス収率、凍結乾燥ケーキの水分パーセント、凍結乾燥ケーキの外観、ならびに、37℃インキュベーションによる1週間および2週間、さらには最長時点での37℃での加速安定性データも取り込んでいる。
【0087】
(表10)最終的な製剤を用いる実験に関する凍結乾燥パラメーター
* 数値が安定性曲線から外挿されていることを表す
【0088】
これらのデータに基づき、委託製造業者に委譲し得ると考えられる凍結乾燥サイクルを確立することが必要になった。JEPD-151は、最も高い凍結乾燥後の収率、37℃での2週後の最も優れた安定性、最も低い残留水分を有し、審美的見地から最も優れたケーキのいくつかを生じた(図13)。この実験による凍結乾燥サイクルを、委託製造業者に与える技術仕様書のモデルとして利用した。
【0089】
技術仕様書
これらの技術仕様書はJEPD-151を基にしているが、保持時間は、異なる凍結乾燥器による可能性のある規模の問題を補正するために延長した。これらの仕様書は、ChimeriVax(商標)-WNおよびChimeriVax(商標)-JEの第I相/第II相用材料の委託による充填-仕上げのために、Walter Reed Army Institute of Researchに委譲された。
【0090】
冷凍サイクル
・凍結乾燥器の棚を-50℃に予冷する。
・一旦すべてのトレイを装填した上で、棚を-50℃に120分間保つ。
一次乾燥
・25mTに減圧を設定する。
・+0.1℃/分で-40℃の棚温度にランピングして500分間保つ。
・+0.1℃/分で-35℃の棚温度にランピングして500分間保つ。
・+0.1℃/分で-30℃の棚温度にランピングして500分間保つ。
・+0.1℃/分で-25℃の棚温度にランピングして800分間保つ。
二次乾燥
・減圧を25mTのままにする。
・+0.1℃/分で+20℃の棚温度にランピングして800分間保つ。
・必要であれば、製品を+20℃、25mTにさらに最長24時間保ち、その後に封栓を行う。
封栓
・0.22μmのフィルターを通した乾燥窒素ガスを用いてチャンバーのガス抜きを行う。
・減圧を800mbar(軽い減圧)に設定する。
・栓をバイアルに押し込む。
【0091】
材料および等価物
材料
・WN PFU培地‐10% FBS(Hyclone、カタログ番号SH30070.03)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma、P4333)を含むM199培地(Gibco、カタログ番号12340-030)
・JE PFU培地‐10% FBS(Hyclone、カタログ番号SH30070.03)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma, P4333)、1×L-グルタミン(2mM)(Gibco、カタログ番号25030-018)および20mM HEPESを含むEMEM培地。
・メチルセルロース重層物‐5%または10% FBS(Hyclone、カタログ番号SH30070.03)、1×L-グルタミン(Gibco、カタログ番号25030-018)、1×抗生物質/抗真菌薬(Gibco、カタログ番号15240-062)を含むメチルセルロース(SOP# 502-066により調製)
【0092】
装置
・FTS Durastop MP凍結乾燥器
・Kinetics Lyostar II凍結乾燥器
・Orion Karl Fischer Coulometric TitratorモデルAF7LC
・TA Instruments DSC Q1000(ID# 8769)
・Heraeus Heracell 240 Incubator(ID# 9055)
・VWR Low Temperature Incubator Model 2005(ID# 8618および8617)
・VWR Refrigerator(ID# 8663)
・Fischer Scientific Isotemp(ID# 9059)
・Revco Ultima II(ID# 9061)
【0093】
結論/考察
本実施例に提示したデータは、ChimeriVax(商標)製品の凍結乾燥を意図した製剤の選択および開発の概略を示している。製剤は詳細に特性決定され、液体形態での十分な安定性、ならびに凍結乾燥後の優れた回収率および安定性が示されている。凍結乾燥の前に、製剤化されたワクチンを液体形態にて-80℃で保存することができ、これは力価に著しい影響は及ぼさない。本実施例はまた、3mLバイアルへの0.5mL充填のための凍結乾燥サイクルの開発と最適化も取り入れている。このサイクルにより、許容される外観のケーキ、ウイルスの高い回収率(>70%)および低い残留水分(<2%)が得られる。凍結乾燥した製品は温度を上昇させても優れた安定性を示しており、<-10℃の保存条件で保存した場合に著しい力価損失を示す可能性は低いと考えられる。
【0094】
以上に言及したすべての参考文献の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。その他の態様は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化生フラビウイルスワクチン、1つまたは複数の安定化剤、1つまたは複数の増量剤、および1つまたは複数の緩衝成分を含む、組成物。
【請求項2】
安定化剤がヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ヒト血清アルブミンが非組換えヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ヒト血清アルブミンが組換えヒト血清アルブミン(rHA)である、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ラクトースを増量剤として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
マンニトールを増量剤として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ラクトースおよびマンニトールを増量剤として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ヒスチジンを緩衝成分として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
グルタミン酸カリウムを緩衝成分として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ヒスチジンおよびグルタミン酸カリウムを緩衝成分として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.05〜2.0%の濃度で存在する、請求項2記載の組成物。
【請求項12】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.1%の濃度で存在する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
ラクトースが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項5または7記載の組成物。
【請求項14】
ラクトースが組成物中に約4%の濃度で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
マンニトールが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項6または7記載の組成物。
【請求項16】
マンニトールが組成物中に約5%の濃度で存在する、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
ヒスチジンが組成物中に約1〜20mMの濃度で存在する、請求項8または10記載の組成物。
【請求項18】
ヒスチジンが組成物中に約10mMの濃度で存在する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約20〜80mMの濃度で存在する、請求項9または10記載の組成物。
【請求項20】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約50mMの濃度で存在する、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
弱毒化生フラビウイルスがキメラフラビウイルスである、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
キメラフラビウイルスが、第1のフラビウイルスの構造タンパク質および第2の異なるフラビウイルスの非構造タンパク質を含む、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
キメラフラビウイルスが、第1のフラビウイルスの膜タンパク質およびエンベロープタンパク質、ならびに第2の異なるフラビウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
第1および第2のフラビウイルスが、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱1型ウイルス、デング熱2型ウイルス、デング熱3型ウイルス、デング熱4型ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、ロシオ(Rocio)脳炎ウイルス、イルヘウスウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、アルクフルマ(Alkhurma)ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセットアローブ(Absettarov)ウイルス、ハンザローバ(Hansalova)ウイルス、アポイウイルスおよびHyprウイルスからなる群より独立に選択される、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
第2のフラビウイルスが黄熱病ウイルスである、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
黄熱病ウイルスがYF17Dである、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
第1のフラビウイルスが日本脳炎ウイルスまたは西ナイルウイルスである、請求項23記載の組成物。
【請求項28】
冷凍乾燥(freeze-dried)形態にある、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
pHが7.9〜8.1である、請求項1記載の組成物。
【請求項30】
タンパク質またはウイルスを基にした薬学的生成物、ヒト血清アルブミン、グルタミン酸アルカリ金属塩、1つまたは複数の追加的なアミノ酸、および1つまたは複数の糖または糖アルコールを含む、組成物。
【請求項31】
ヒト血清アルブミンが非組換えヒト血清アルブミンである、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
ヒト血清アルブミンが組換えヒト血清アルブミンである、請求項30記載の組成物。
【請求項33】
グルタミン酸アルカリ金属塩がグルタミン酸カリウムである、請求項30記載の組成物。
【請求項34】
1つまたは複数の追加的なアミノ酸がヒスチジンである、請求項30記載の組成物。
【請求項35】
1つまたは複数の糖または糖アルコールが、ラクトースおよび/またはマンニトールである、請求項30記載の組成物。
【請求項36】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.05〜2.0%の濃度で存在する、請求項30記載の組成物。
【請求項37】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.1%の濃度で存在する、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
ラクトースが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項35記載の組成物。
【請求項39】
ラクトースが組成物中に約4%の濃度で存在する、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
マンニトールが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項35記載の組成物。
【請求項41】
マンニトールが組成物中に約5%の濃度で存在する、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
ヒスチジンが組成物中に約1〜20mMの濃度で存在する、請求項34記載の組成物。
【請求項43】
ヒスチジンが組成物中に約10mMの濃度で存在する、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約20〜80mMの濃度で存在する、請求項33記載の組成物。
【請求項45】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約50mMの濃度で存在する、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
冷凍乾燥形態にある、請求項30記載の組成物。
【請求項47】
pHが7.9〜8.1である、請求項30記載の組成物。
【請求項48】
ウイルスを基にした薬学的生成物が痘瘡ワクチンを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項49】
痘瘡ワクチンがワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルスを含む、請求項48記載の組成物。
【請求項50】
ワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルスが、ACAM1000、ACAM2000または改変ワクシニア-アンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA)である、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
タンパク質を基にした薬学的生成物が、B型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物を含む、請求項30記載の組成物。
【請求項52】
B型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物が、1つまたは複数のインフルエンザM2eペプチドをさらに含む、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
タンパク質を基にした薬学的生成物が、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素またはトキソイドを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項54】
請求項1または30記載の組成物を冷凍乾燥プロセスに供する工程を含む、治療用組成物を調製する方法。
【請求項55】
冷凍、一次乾燥、および二次乾燥の工程を含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
冷凍工程が、約-50℃で約120分間にわたる冷凍を含む、請求項55記載の方法。
【請求項57】
一次乾燥工程が、約+0.1℃/分で約-40℃の棚温度にランピング(ramping)して約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-35℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-30℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと;および約+0.1℃/分で約-25℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを伴うランプ(ramp)工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
二次乾燥工程が、約+0.1℃/分で約+20℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを伴うランプ工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項59】
冷凍工程が、約-40℃で約60分間にわたる冷凍を含む、請求項55記載の方法。
【請求項60】
一次乾燥工程が、約+0.5℃/分で約-5℃の棚温度にランピングして約300分間保つこと;および約-0.5℃/分で約-0℃の棚温度にランピングして約300分間保つことを伴うランプ工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項61】
二次乾燥工程が、約+0.2℃/分で約+30℃の棚温度にランピングして約600分間保つこと;および約-1.0℃/分で約+5℃の棚温度にランピングして約9999分間保つことを伴うランプ工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項62】
請求項1または30記載の組成物を対象に投与する工程を含む、対象における疾患または病状を予防または治療する方法。
【請求項63】
対象が、フラビウイルス感染症を発症するリスクがあるかまたはフラビウイルス感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項64】
フラビウイルス感染症が、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、または黄熱病ウイルスの感染症である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
対象が、痘瘡感染症を発症するリスクがあるかまたは痘瘡感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項66】
対象が、インフルエンザ感染症を発症するリスクがあるかまたはインフルエンザ感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項67】
対象が、クロストリジウム-ディフィシレ感染症を発症するリスクがあるかまたはクロストリジウム-ディフィシレ感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項1】
弱毒化生フラビウイルスワクチン、1つまたは複数の安定化剤、1つまたは複数の増量剤、および1つまたは複数の緩衝成分を含む、組成物。
【請求項2】
安定化剤がヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ヒト血清アルブミンが非組換えヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ヒト血清アルブミンが組換えヒト血清アルブミン(rHA)である、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ラクトースを増量剤として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
マンニトールを増量剤として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ラクトースおよびマンニトールを増量剤として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ヒスチジンを緩衝成分として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
グルタミン酸カリウムを緩衝成分として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ヒスチジンおよびグルタミン酸カリウムを緩衝成分として含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.05〜2.0%の濃度で存在する、請求項2記載の組成物。
【請求項12】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.1%の濃度で存在する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
ラクトースが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項5または7記載の組成物。
【請求項14】
ラクトースが組成物中に約4%の濃度で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
マンニトールが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項6または7記載の組成物。
【請求項16】
マンニトールが組成物中に約5%の濃度で存在する、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
ヒスチジンが組成物中に約1〜20mMの濃度で存在する、請求項8または10記載の組成物。
【請求項18】
ヒスチジンが組成物中に約10mMの濃度で存在する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約20〜80mMの濃度で存在する、請求項9または10記載の組成物。
【請求項20】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約50mMの濃度で存在する、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
弱毒化生フラビウイルスがキメラフラビウイルスである、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
キメラフラビウイルスが、第1のフラビウイルスの構造タンパク質および第2の異なるフラビウイルスの非構造タンパク質を含む、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
キメラフラビウイルスが、第1のフラビウイルスの膜タンパク質およびエンベロープタンパク質、ならびに第2の異なるフラビウイルスのキャプシドタンパク質および非構造タンパク質を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
第1および第2のフラビウイルスが、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱1型ウイルス、デング熱2型ウイルス、デング熱3型ウイルス、デング熱4型ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、ロシオ(Rocio)脳炎ウイルス、イルヘウスウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、シベリア脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、アルクフルマ(Alkhurma)ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス、ネギシウイルス、アブセットアローブ(Absettarov)ウイルス、ハンザローバ(Hansalova)ウイルス、アポイウイルスおよびHyprウイルスからなる群より独立に選択される、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
第2のフラビウイルスが黄熱病ウイルスである、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
黄熱病ウイルスがYF17Dである、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
第1のフラビウイルスが日本脳炎ウイルスまたは西ナイルウイルスである、請求項23記載の組成物。
【請求項28】
冷凍乾燥(freeze-dried)形態にある、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
pHが7.9〜8.1である、請求項1記載の組成物。
【請求項30】
タンパク質またはウイルスを基にした薬学的生成物、ヒト血清アルブミン、グルタミン酸アルカリ金属塩、1つまたは複数の追加的なアミノ酸、および1つまたは複数の糖または糖アルコールを含む、組成物。
【請求項31】
ヒト血清アルブミンが非組換えヒト血清アルブミンである、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
ヒト血清アルブミンが組換えヒト血清アルブミンである、請求項30記載の組成物。
【請求項33】
グルタミン酸アルカリ金属塩がグルタミン酸カリウムである、請求項30記載の組成物。
【請求項34】
1つまたは複数の追加的なアミノ酸がヒスチジンである、請求項30記載の組成物。
【請求項35】
1つまたは複数の糖または糖アルコールが、ラクトースおよび/またはマンニトールである、請求項30記載の組成物。
【請求項36】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.05〜2.0%の濃度で存在する、請求項30記載の組成物。
【請求項37】
ヒト血清アルブミンが組成物中に約0.1%の濃度で存在する、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
ラクトースが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項35記載の組成物。
【請求項39】
ラクトースが組成物中に約4%の濃度で存在する、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
マンニトールが組成物中に約2〜10%の濃度で存在する、請求項35記載の組成物。
【請求項41】
マンニトールが組成物中に約5%の濃度で存在する、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
ヒスチジンが組成物中に約1〜20mMの濃度で存在する、請求項34記載の組成物。
【請求項43】
ヒスチジンが組成物中に約10mMの濃度で存在する、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約20〜80mMの濃度で存在する、請求項33記載の組成物。
【請求項45】
グルタミン酸カリウムが組成物中に約50mMの濃度で存在する、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
冷凍乾燥形態にある、請求項30記載の組成物。
【請求項47】
pHが7.9〜8.1である、請求項30記載の組成物。
【請求項48】
ウイルスを基にした薬学的生成物が痘瘡ワクチンを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項49】
痘瘡ワクチンがワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルスを含む、請求項48記載の組成物。
【請求項50】
ワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルスが、ACAM1000、ACAM2000または改変ワクシニア-アンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA)である、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
タンパク質を基にした薬学的生成物が、B型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物を含む、請求項30記載の組成物。
【請求項52】
B型肝炎ウイルスコアタンパク質融合物が、1つまたは複数のインフルエンザM2eペプチドをさらに含む、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
タンパク質を基にした薬学的生成物が、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile)の毒素またはトキソイドを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項54】
請求項1または30記載の組成物を冷凍乾燥プロセスに供する工程を含む、治療用組成物を調製する方法。
【請求項55】
冷凍、一次乾燥、および二次乾燥の工程を含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
冷凍工程が、約-50℃で約120分間にわたる冷凍を含む、請求項55記載の方法。
【請求項57】
一次乾燥工程が、約+0.1℃/分で約-40℃の棚温度にランピング(ramping)して約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-35℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと;約+0.1℃/分で約-30℃の棚温度にランピングして約500分間保つこと;および約+0.1℃/分で約-25℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを伴うランプ(ramp)工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
二次乾燥工程が、約+0.1℃/分で約+20℃の棚温度にランピングして約800分間保つことを伴うランプ工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項59】
冷凍工程が、約-40℃で約60分間にわたる冷凍を含む、請求項55記載の方法。
【請求項60】
一次乾燥工程が、約+0.5℃/分で約-5℃の棚温度にランピングして約300分間保つこと;および約-0.5℃/分で約-0℃の棚温度にランピングして約300分間保つことを伴うランプ工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項61】
二次乾燥工程が、約+0.2℃/分で約+30℃の棚温度にランピングして約600分間保つこと;および約-1.0℃/分で約+5℃の棚温度にランピングして約9999分間保つことを伴うランプ工程を含む、請求項55記載の方法。
【請求項62】
請求項1または30記載の組成物を対象に投与する工程を含む、対象における疾患または病状を予防または治療する方法。
【請求項63】
対象が、フラビウイルス感染症を発症するリスクがあるかまたはフラビウイルス感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項64】
フラビウイルス感染症が、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、または黄熱病ウイルスの感染症である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
対象が、痘瘡感染症を発症するリスクがあるかまたは痘瘡感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項66】
対象が、インフルエンザ感染症を発症するリスクがあるかまたはインフルエンザ感染症を有する、請求項62記載の方法。
【請求項67】
対象が、クロストリジウム-ディフィシレ感染症を発症するリスクがあるかまたはクロストリジウム-ディフィシレ感染症を有する、請求項62記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−509226(P2010−509226A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535362(P2009−535362)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/023421
【国際公開番号】WO2008/057550
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/023421
【国際公開番号】WO2008/057550
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】
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