説明

凍結乾燥甘酒

【課題】従来の凍結乾燥甘酒よりも短い時間で喫食可能に復元できる凍結乾燥甘酒を提供する。
【解決手段】ペースト状の果実(マンゴーピューレ等)を含有してある凍結乾燥甘酒である。米麹に代えてペースト状の果実を添加すれば、さらに復元時間を短縮することができる。また、果肉を添加することにより、ペースト状の果実と相俟って果実味をさらに増すことができる。特に米麹に代えてペースト状の果実を使用した場合に果肉を添加すれば、米麹が有していた甘酒特有の食感(粒々感)を果肉によって実現できるので、甘酒特有の食感も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱湯または水を注ぐだけで喫食できる凍結乾燥甘酒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空凍結乾燥技術(フリーズドライ)を利用して製造した凍結乾燥食品が数多く提案され、このうち、酒かすや米麹を主素材とする組成物を凍結乾燥処理してなる甘酒用凍結乾燥食品もよく知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−283143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、米麹を主素材とする凍結乾燥甘酒は、湯又は水により元の甘酒の形態に戻したとき、米麹が完全に復元しなかったり、復元するのに長い時間を要したりするという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の凍結乾燥甘酒よりも短い時間で復元できる凍結乾燥甘酒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ペースト状の果実を甘酒に添加して凍結乾燥すれば、従来よりも短い時間で復元できることを知見して、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の凍結乾燥甘酒は、ペースト状の果実を含有してあることを特徴とするものである。
【0007】
これによると、米麹のみを使用した通常の凍結乾燥甘酒よりも短い時間で復元できる。特に、本発明の凍結乾燥甘酒は、お湯によってだけでなく、水によっても短時間で復元するという極めて有利な効果を奏する。
【0008】
ペースト状の果実を添加すればなぜ甘酒の復元時間が短縮化できるのか、その詳細な理由は不明であるが、後記の実施例に示すとおり、ペースト状の果実を添加すれば、米麹を含有している場合でも、凍結乾燥甘酒の復元時間を短縮することができ、この点が本発明の大きな特徴をなしているものである。
【0009】
一つの好適な態様として、本発明の凍結乾燥甘酒は、米麹を添加せず、その米麹に代えてペースト状の果実を添加するという構成を採用することができる。これによると、米麹を添加しない分、さらに短い時間で復元できる。
【0010】
また、本発明の凍結乾燥甘酒は、さらに果肉を添加するという構成を採用することができる。これによると、ペースト状の果実と相俟って、果実味をさらに増すことができる。特に、米麹に代えてペースト状の果実を添加した凍結乾燥甘酒に果肉を添加した場合は、米麹が有していた甘酒特有の食感(粒々感)を果肉によって実現できるので、甘酒特有の食感も得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の凍結乾燥甘酒によれば、従来の凍結乾燥甘酒よりも短い時間で喫食可能に復元することができるという優れた効果を奏する。また、お湯によってだけでなく、水によっても短時間で復元するという極めて有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の凍結乾燥甘酒の好適な実施形態を説明する。
【0013】
本発明に係る凍結乾燥甘酒は、ペースト状の果実を含有してあることを特徴とする。
さらに具体的には、本発明の凍結乾燥甘酒は、酒かすおよびペースト状の果実などを含む主素材と、水や砂糖、さらには、必要に応じて、その他の原料、例えばでん粉や食塩などを含む組成物(甘酒原料)を凍結乾燥処理したものである。
果実としては、たとえば、マンゴー、桃、イチゴ、メロン、パイナップルなどを例示することができる。
【0014】
上記組成物には米麹を使用してもよいし、使用しなくてもよい。
【0015】
上記組成物には、米麹が持つ甘酒特有の食感(粒々感)と同じような食感を実現するために、さらにマンゴー等の果肉を添加することもできる。果肉を添加する場合、好ましくは5×5mm未満の大きさの果肉、より好ましくは3×3mm以下の大きさの果肉、さらに好ましくは20mmメッシュパスの大きさの果肉を使用することが好ましい。果肉の大きさが5×5mmを超えると復元に時間がかかる場合がある。
【0016】
上記組成物に添加されるペースト状の果実の好ましい配合量は、凍結乾燥前の甘酒全体の重量に対する割合で15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。ペースト状の果実の配合量がこれらの範囲にある場合は復元性を顕著に向上できる点で好ましい。また、上記組成物に添加される果肉の好ましい配合量は、凍結乾燥前の甘酒全体の重量に対する割合で20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10%以下である。果肉の配合量がこれらの範囲にある場合は復元性を良好にすることができる。
【0017】
本発明の凍結乾燥甘酒は以下のようにして製造することができる。
【0018】
まず、酒かすに水を加えて磨砕機でペースト状に磨砕処理する。次いで、ニーダーにて、このペースト状の酒かすに、砂糖、でん粉、食塩、酸化防止剤(ビタミンE)等の粉末調味料を水に溶解させたものを加えて、全体を加熱しながら均一に混合・溶解させる。全体が均一に混合・溶解した後、加熱を停止し、不溶成分や不純物等を濾過して除去する。次いで、アルコール分を飛ばすために、前記混合・溶解組成物を再び加熱して、80°C程度の温度で5分間程度保持する。次いで、前記混合・溶解組成物に冷却水又は氷を投入して50°C以下に冷却する。この冷却処理は、冷却後に果実を投入することで果実の風味を保つことを目的としている。
【0019】
次いで、この50°C以下に冷却された混合・溶解組成物に、ペースト状の果実を加えるとともに、必要に応じて果肉を加えて、全体を均一に分散・撹拌する。その際、果実の風味を増すために、果実香料を添加しても良い。
【0020】
こうして得たペースト状の果実を含む甘酒原料を凍結乾燥処理することにより、本発明の凍結乾燥甘酒を得る。凍結乾燥処理するに当たっては、一食分ずつ容器(トレー)に充填して、この容器のまま凍結乾燥処理することが好ましい。凍結乾燥処理は常法のものを使用できるが、一例を挙げると、庫内温度−20°Cで6〜9時間、さらに庫内温度−40°Cで完全に凍結するまで保管して予備凍結させた後、真空度0.5Torr以下に減圧するとともに最高棚温80°C、最終品温50°C程度となるように段階的に昇温させて真空凍結乾燥させることが好ましい。
【0021】
このようにして得られた凍結乾燥甘酒(1食分)はカップ等に入れ、熱湯又は水を注いで溶解復元し、喫食される。
【0022】
以下、本発明の実施例1〜3、及び比較例1について説明する。
【実施例1】
【0023】
以下のとおり、まず、230食分の果実入り甘酒を製造し、これを1食分ずつ容器(パックトレー)に分注・充填し、凍結乾燥させて、実施例1の凍結乾燥甘酒を得た。
まず、酒かす3680.000g(230食分の分量。1食当たり16.000g。以下では、230食分の分量と1食当たりの分量とを併記し、カッコ内に1食当たりの分量を記載する。)に、水3680.000g(16.000g)を加えて磨砕機でペースト状に磨砕した。
他方、砂糖(上白糖)1955.000g(8.500g)、でん粉(ばれいしょ澱粉)138.000g(0.600g)、食塩36.800g(0.160g)、酸化防止剤(ビタミンE)5.980g(0.026g)からなる粉末調味料を用意し、この粉末調味料に水3706.220g(16.114g)を加えて溶解させ、これを上記ペースト状の酒かすに加えて、ニーダーにて、全体を60°Cに加熱しながら、均一に混合・溶解させた。
全体が均一に混合・溶解した後、加熱を停止し、この混合・溶解物を60メッシュパスの条件でろ過して、不溶成分や不純物等を取り除いた。
この不溶成分や不純物等を取り除いたものを再び加熱し、80°Cに達温後、5分間保持した。
次いで、これに冷却水1610.000g(7.000g)を投入して50°C以下に冷却し、ブリックス糖度が23.0±1となるのを確認した後、これに、マンゴー香料及びペースト状の果実としてマンゴーピューレを加えて撹拌し、分散させた。マンゴー香料は、予め水115.000g(0.500g)にマンゴー香料23.000g(0.100g)を溶解させたものを投入した。マンゴーピューレの投入量は460.000g(2.000g)である。
さらに10mmメッシュパスの大きさのマンゴーの果肉690.000g(3.000g)を加えてさらに撹拌し、均一になるまで分散させた。
このようにして得た230食分の果実入り甘酒を、容器(パックトレー)に1食分として70.000gずつ分注・充填した。これを凍結乾燥処理することにより、実施例1の凍結乾燥甘酒を得た。
【実施例2】
【0024】
10mmメッシュパスの大きさのマンゴーの果肉690.000g(3.000g)に代えて、3×3mmの大きさのマンゴーの果肉690.000g(3.000g)を加えた以外は、実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0025】
マンゴーの果肉に代えて米麹690.000g(3.000g)を加えた以外は実施例1と同様にした。
【0026】
[比較例1]
ペースト状のマンゴー(マンゴーピューレ)、マンゴー香料及びマンゴーの果肉を加えず、米麹の入った従来通りの凍結乾燥甘酒を製造し、これを比較例1とした。具体的な製造方法は以下のとおりである。
まず、酒かす3335.000g(230食分の分量。1食当たり14.500g。以下、表記方法において同じ。)に、水3335.000gg(14.500g)を加えて磨砕機でペースト状に磨砕した。
他方、砂糖(上白糖)2070.000g(9.000g)、でん粉(ばれいしょ澱粉)115.000g(0.500g)、食塩36.800g(0.160g)、酸化防止剤(ビタミンE)5.980g(0.026g)からなる粉末調味料を用意し、この粉末調味料に水5067.820g(22.034g)を加えて溶解し、これを上記ペースト状の酒かすに加えて、ニーダーにて、全体を60°Cに加熱しながら、均一に混合・溶解させた。
全体が均一に混合・溶解した後、加熱を停止し、この混合・溶解物を60メッシュパスの条件でろ過し、不溶成分や不純物等を取り除いた。
この不溶成分や不純物等を取り除いたものに米麹662.400g(2.880g)を加えて再び加熱し、80°Cに達温後、5分間保持した。
次いで、これに冷却水1610.000g(7.000g)を加えて50°C以下に冷却した後、喫食時の甘酒に粘度をつける目的で、でん粉(ばれいしょ澱粉)138.000g(0.600g)を水414.000g(1.800g)で溶かして目開き1.5〜2.0mmの篩でろ過したものを加え、全体が均一になるように撹拌した。
このようにして得た230食分の甘酒を、容器(パックトレー)に1食分として73.000gずつ分注・充填した。これを凍結乾燥処理することにより、比較例1の凍結乾燥甘酒を得た。
【0027】
実施例1〜3および比較例1の各凍結乾燥甘酒に熱湯100ml又は水100mlを注いで溶解復元した復元性を評価した。この結果は下記の表1に示すとおりである。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1、2、3では熱湯により10秒、水により20秒で喫食可能に復元できた。これに対し、比較例1では、熱湯による米麹の復元に30秒〜1分程度かかった。
【実施例4】
【0030】
実施例1では、ペースト状のマンゴー(マンゴーピューレ)、マンゴー香料及びマンゴーの果肉を使用したが、実施例4では、これらに代えて、ペースト状の桃(桃ピューレ)、桃の香料及び桃の果肉を使用して凍結乾燥甘酒を製造した。製造工程や原材料の分量等は実施例1とほぼ同じである。
【0031】
この実施例4においても、熱湯により10秒、水により20秒で喫食可能な状態に復元できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状の果実を含有してあることを特徴とする、凍結乾燥甘酒。
【請求項2】
米麹に代えてペースト状の果実を添加してある、請求項1記載の凍結乾燥甘酒。
【請求項3】
さらに果肉を添加してある、請求項1又は2に記載の凍結乾燥甘酒。