説明

凍結乾燥豆腐及びその製造方法

【課題】滑らか且つ柔らかな食感を有する凍結乾燥豆腐を提供する。
【解決手段】本発明は、豆腐を凍結乾燥して得られた凍結乾燥豆腐であり、上記凍結乾燥豆腐におけるタンパク質の含有量が32.5〜37.5重量%である凍結乾燥豆腐に関する。また、本発明の凍結乾燥豆腐の製造方法は、豆乳を含む豆乳混合液に凝固剤を添加し凝固して豆腐を得る工程と、得られた豆腐を凍結乾燥する工程を含み、上記豆乳は、タンパク質の含有量が30〜35重量%である大豆を水に浸漬し、すりつぶして得られた呉汁をろ過して分離することにより得られており、上記豆乳の固形分の濃度がBrix8〜Brix12である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥豆腐及びその製造方法に関し、特に湯で復元することにより豆腐本来の食感が得られる凍結乾燥豆腐及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐を凍結乾燥して得られた凍結乾燥豆腐は、即席の味噌汁などの具材として多く利用されている。しかし、豆腐を単に凍結乾燥するとタンパク質変性が生じやすく、スポンジ化していわゆる“凍り豆腐”(別名高野豆腐又は凍み豆腐ともいう。)のようなものになりやすく、水で復元しても豆腐本来の食感が得られにくいという問題がある。
【0003】
そこで、従来から凍結乾燥豆腐を復元した時の食感を改善するための検討が行われてきた。例えば、特許文献1には、オリゴ糖や多糖類を添加した豆乳を用いることにより、食感を向上させた凍結乾燥豆腐を製造することが提案されている。特許文献2には、酵素、増粘類や澱粉を添加した豆乳を用いることにより、食感を向上させた凍結乾燥豆腐を製造することが提案されている。特許文献3には、澱粉糊を添加した豆乳を用いることにより、食感を向上させた凍結乾燥豆腐を製造することが提案されている。
【0004】
しかし、上記特許文献1〜3で提案された凍結乾燥豆腐は、食感がある程度向上したものの、更なる改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−271972号公報
【特許文献2】特開平11−313630号公報
【特許文献3】特開2002−34488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、滑らか且つ柔らかな食感を有する凍結乾燥豆腐及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、豆腐を凍結乾燥して得られた凍結乾燥豆腐であり、上記凍結乾燥豆腐におけるタンパク質の含有量が32.5〜37.5重量%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の凍結乾燥豆腐を製造する方法であって、豆乳を含む豆乳混合液に凝固剤を添加し凝固して豆腐を得る工程と、得られた豆腐を凍結乾燥する工程を含み、上記豆乳は、タンパク質の含有量が30〜35重量%である大豆を水に浸漬し、すりつぶして得られた呉汁をろ過して分離することにより得られており、上記豆乳の固形分の濃度がBrix8〜Brix12であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、凍結乾燥豆腐におけるタンパク質の含有量を32.5〜37.5重量%にすることにより、滑らか且つ柔らかな食感を有する凍結乾燥豆腐を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、タンパク質の含有量が30〜35重量%である大豆を用い、豆乳の固形分の濃度をBrix8〜Brix12に調整することにより、タンパク質の含有量が32.5〜37.5重量%である凍結乾燥豆腐を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施例で得られる凍結乾燥豆腐の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】図2は、本発明の一比較例で得られる凍結乾燥豆腐の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記凍結乾燥豆腐において、タンパク質の含有量は32.5〜37.5重量%であり、好ましくは34〜36重量%であり、より好ましくは、35〜36重量%である。凍結乾燥豆腐におけるタンパク質の含有量が32.5〜37.5重量%であることにより、復元した時柔らか且つ滑らかな食感が得られる。また、タンパク質の含有量が33.5〜36.5重量%であると、柔らか且つ滑らかな食感を有するとともに、ひび割れが少なく外観にも優れる。長さ、幅、高さがそれぞれ10mm、10mm、8mm以上の大きなサイズの凍結乾燥豆腐を作るときは、タンパク質の含有量が33〜36重量%であれば、ひび割れが少なく外観にも優れる。本発明において、「タンパク質の含有量」は、ケルダール法で測定したものをいう。
【0012】
上記凍結乾燥豆腐は、復元後の硬さが0.05〜0.14kgの範囲であることが好ましく、0.07〜0.13kgであることがより好ましく、0.08〜0.12kgであることがさらに好ましい。本発明において、「復元後の硬さ」とは、凍結乾燥豆腐を95℃の湯で復元した後、テクスチュロメーターGTX−2(株式会社全研製)用い、冶具9mmφクロム、クリアランス1.2mm、電圧10V、咀嚼スピード6回/分という測定条件で測定した硬さをいう。
【0013】
上記凍結乾燥豆腐は、氷結晶痕跡のサイズが15000μm2以下であることが好ましく、2100〜7500μm2であることがより好ましく、2100〜7000μm2であることがさらに好ましく、2100〜6500μm2であることが特に好ましい。本発明において、「氷結晶痕跡のサイズ」とは、凍結乾燥豆腐の表面の走査電子顕微鏡写真をTIFF形式の画像に変換し、TIFF形式の画像を、RGB140未満のドットをRGB0(白)に、RGB140以上のドットをRGB255(黒)として表示するように、バイナリ化し、バイナリ化した後、連続する黒ドットから構成される領域を氷結晶痕跡とし、画像解析ソフトにて面積を計算したものをいう。なお、面積2000μm2(直径50μmの円に相当)以下の領域はノイズとして除去する。氷結晶痕跡が15000μm2以下であることにより、食感に優れるとともに、保形性も良好である。
【0014】
上記凍結乾燥豆腐は、特に限定されないが、例えば豆乳を含む豆乳混合液に凝固剤を添加し凝固して得られた豆腐を凍結乾燥することにより得ることができる。
【0015】
先ず、豆乳混合液を調製する。上記豆乳は、特に限定されず、周知の方法で調製される種々の豆乳を用いることができる。例えば、大豆を水に浸漬し、すりつぶして得られた呉汁をろ過して豆乳を分離することにより得ることができる。また、上記において、分離後の豆乳は93〜100℃で煮沸されることが好ましく、97〜100℃で煮沸されることがより好ましい。煮沸の際、豆乳に消泡剤を含ませることが好ましい。上記消泡剤としては、例えばシリコーン樹脂、グリセリン脂肪酸エステルなどを用いることができる。
【0016】
上記大豆としては、特に限定されないが、凍結乾燥豆腐におけるタンパク質の含有量を32.5〜37.5重量%にするという観点から、(粗)タンパク質の含有量が30〜35重量%の大豆を用いることが好ましい。また、凍結乾燥豆腐のタンパク質の含有量を32.5〜37.5重量%にしやすいという観点から、上記豆乳の固形分の濃度は、Brix8以上であることが好ましく、より好ましくはBrix9〜Brix12であり、さらに好ましくはBrix10〜Brix11である。
【0017】
上記豆乳混合液は、澱粉を含むことが好ましい。澱粉により、大豆タンパク質の凍結変性を防止することができ、復元した時、豆腐本来の滑らかな食感が得られやすい。上記澱粉としては、食用に供することができる澱粉であればよく、特に限定されない。例えば、穀類、芋類から得られる生澱粉、又はこれらを加工した加工澱粉を用いることができる。具体的には、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉などが挙げられる。凍結乾燥豆腐の復元後の食感及び風味を低下させないという観点から、上記豆乳混合液における澱粉の含有量は、豆乳の固形分100重量部に対し、5.5〜8.3重量部であることが好ましく、5.5〜7.4重量部であることがより好ましく、6.1〜6.7重量部であることがさらに好ましい。
【0018】
上記豆乳混合液は、さらにオリゴ糖を含むことが好ましい。オリゴ糖により、大豆タンパク質の凍結変性を防止することができ、水で復元した時、豆腐本来の滑らかな食感が得られやすい。上記オリゴ糖としては、特に限定されないが、例えば、麦芽糖、テフィノース、スタキオースなどを用いることができる。凍結乾燥豆腐の復元後の食感及び風味を低下させないという観点から、上記豆乳混合液におけるオリゴ糖の含有量は、豆乳の固形分100重量部に対し、12.0重量部以下であることが好ましく、7.5〜11.2重量部であることがより好ましく、8.2〜9.0重量部であることがさらに好ましい。
【0019】
また、必要に応じ、上記豆乳混合液は、澱粉とオリゴ糖以外に凍結乾燥豆腐の品質向上に効果がある品質改質剤を含んでもよい。例えば、食感の改良や離水防止、保型性の向上、復元時の割れの防止に使用されるグアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、グルコマンナン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、寒天などの増粘剤を含んでもよい。
【0020】
次に、上記豆乳混合液に凝固剤を添加して豆乳凝固液を得る。上記凝固剤としては、豆腐用凝固剤であればよく、特に限定されない。例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び硫酸カルシウム等の2価金属塩、グルコノデルタラクトン、乳酸、リンゴ酸及びクエン酸等の酸類などを用いることができる。上記凝固剤の添加量は、通常の豆腐製造の場合と同様の量でよい。例えば、硫酸カルシウムを凝固剤として用いる場合は、豆乳の固形分100重量部に対し、5.4〜7.2重量部であることが好ましく、5.9〜6.5重量部であることがより好ましい。
【0021】
次に、上記豆乳凝固液を凝固して豆腐を得る。凝固のための加熱温度は、上記凝固剤が作用する温度以上であればよい。例えば、品温75〜90℃で15〜30分間保持することが好ましく、品温80〜85℃で15〜30分間保持することがより好ましい。また、凝固は、上記豆乳凝固液を充填豆腐用容器、凝固缶や充填用トレーなど所望の容器に充填して行うことがよい。
【0022】
上記のように加熱凝固して得られた豆腐を、0〜10℃で冷却処理した後、凍結乾燥処理する。通常、凍結乾燥処理される前に、原料豆腐は適当なサイズ、例えば長さx幅x高さが15mm×12mm×8mm、12mm×12mm×12mm、12mm×12mm×6mm等になるようにカットされ、凍結される。凍結は、空気凍結、エアブラスト凍結、接触式凍結、浸漬式凍結、液化ガス吹付け式凍結、真空凍結などの各方式で行うことができる。凍結のための温度は特に限定されないが、一般的に、−10℃〜−100℃、好ましくは、−20℃〜−70℃の範囲内である。凍結を急速凍結で行えば、豆腐の凍結変性が防止され、優れた品質の凍結乾燥豆腐が得られる。また、凍結を、真空凍結で行うと、氷結晶痕跡のサイズが小さくなり、例えば15000μm2以下になり、好ましくは2100〜7500μm2になり、より好ましくは2100〜7000μm2になり、さらに好ましくは2100〜6500μm2になり、復元した時の食感がより優れたものになる。凍結を真空凍結で行う場合、真空下での凍結の条件は豆腐がもつ共晶点以下の温度になるような真空圧、例えば4Torr(533.2Pa)以下にすればよい。凍結後、常用の真空凍結乾燥機で凍結乾燥する。凍結乾燥時の、棚加熱温度は40〜90℃であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましい。
【0023】
上記凍結乾燥豆腐は熱湯で簡単に復元することができ、即席食品の具材や液状食品の具材として使用することができる。即席食品として、即席麺、即席スープなどが挙げられる。液状食品として、ラーメン、スープ、味噌汁、鍋類などが挙げられる。復元性に優れるという観点から、80℃以上の湯で復元することが好ましく、90℃以上の湯で復元することがより好ましい。
【実施例】
【0024】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
タンパク質の含有量が33重量%の大豆を水に浸漬し、すりつぶして得られた呉汁をろ過して豆乳を分離した。分離後の豆乳に消泡剤としてシリコーン樹脂の含有量が30重量%のシリコーン樹脂製剤(信越化学工業(株)製「KM-72F」)を0.0133重量%になるように添加した後、97℃で7分間煮沸した。その後、豆乳の固形分の濃度がBrix8になるように調整した後、70℃まで冷却した。冷却後の豆乳に、澱粉と、水あめ(日本食品加工(株)製「ハイマルトースシラップ」)と、水を、それぞれ0.665重量%、1.200重量%、2.933重量%になるように添加し、豆乳混合液を得た。得られた豆乳混合液に、凝固剤としての硫酸カルシウムと、水を、それぞれ0.622重量%、4.156重量%になるように添加し、豆乳凝固液を得た。得られた豆乳凝固液を充填用トレーに流し込み、スチームにより80℃に加熱した後、15分間保持することにより、豆乳凝固液を凝固させて豆腐を得た。豆腐を品温が5℃ぐらいまで冷却した後、長さx幅x高さが15mmx12mmx8mmになるようにカットし、真空凍結乾燥機に入れて、100Pa以下になるような真空圧下で、凍結させた。その後、真空凍結乾燥機で、水分含有量が3%以下になるまで乾燥し、凍結乾燥豆腐を得た。
【0026】
(実施例2)
豆乳の固形分の濃度がBrix9になるように調整した以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0027】
(実施例3)
豆乳の固形分の濃度がBrix10になるように調整した以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0028】
(実施例4)
豆乳の固形分の濃度がBrix11になるように調整した以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0029】
(実施例5)
豆乳の固形分の濃度がBrix12になるように調整した以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0030】
(比較例1)
豆乳の固形分の濃度がBrix13になるように調整した以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0031】
(比較例2)
凍結を真空下で行っておらず、−30℃の雰囲気下で120分間エアブラスト凍結を行った以外は、比較例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0032】
(比較例3)
豆乳の固形分の濃度がBrix7になるように調整し、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を製造したが、保形性のある凍結乾燥豆腐を得ることができなかった。
【0033】
(比較例4)
タンパク質の含有量が約40重量%の大豆を用い、豆乳の固形分の濃度がBrix11になるように調整した以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0034】
(比較例5)
タンパク質の含有量が約40重量%の大豆を用い、豆乳の固形分の濃度がBrix13になるように調整した以外は、実施例1と同様にして豆乳を調製した。得られた豆乳を70℃まで冷却した。冷却後の豆乳に、澱粉と、水あめ(日本食品加工(株)製「ハイマルトースシラップ」)と、水を、それぞれ0.998重量%、1.800重量%、2.000重量%になるように添加し、豆乳混合液を得た。得られた豆乳混合液を用いた以外は、実施例1と同様にして凍結乾燥豆腐を得た。
【0035】
実施例及び比較例で得られた凍結乾燥豆腐のタンパク質の含有量及び氷結晶痕跡のサイズ、並びに凍結乾燥豆腐を湯で復元した後の硬さを下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例及び比較例で得られた凍結乾燥豆腐の食感及び外観を下記のように官能評価し、その結果を下記表1に示した。また、図1及び図2に、それぞれ、実施例3及び比較例2で得られた凍結乾燥豆腐の表面のSEM写真を示した。
【0036】
(タンパク質の含有量)
タンパク質の含有量は、ケルダール法により測定した。凍結乾燥豆腐に、分解促進剤と濃硫酸を加え、加熱分解した後、放冷し、30%水酸化ナトリウム溶液を添加した。その後、加熱蒸留を行い、4%ホウ酸溶液中にて、捕集し、0.05mol/L硫酸標準溶液にて、滴定、算出を行った。
【0037】
(氷結晶痕跡のサイズ)
凍結乾燥豆腐の表面を走査電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、TIFF形式の画像に変換した。TIFF形式の画像を、RGB140未満のドットをRGB0(白)に、RGB140以上のドットをRGB255(黒)として表示するように、バイナリ化した。バイナリ化した後、連続する黒ドットから構成される領域を氷結晶痕跡とし、画像解析ソフトにて面積を計算し、氷結晶痕跡のサイズとした。なお、面積2000μm2(直径50μmの円に相当)以下の領域はノイズとして除去した。
【0038】
(硬さ)
テクスチュロメーターGTX−2(株式会社全研製)使用し、95℃の湯で30秒間復元した凍結乾燥豆腐の硬さを測定した。硬さの算出方法は、波形のピークの最高値として測定され、硬さ(kg)=最初のピークの高さ/入力電圧とし、算出した。測定条件として冶具を9mmφクロム、クリアランス1.2mm、電圧10V、そしゃくスピード6回/分とした。
【0039】
(食感の官能評価1)
凍結乾燥豆腐に95℃の湯を注ぎ、30秒後復元した凍結乾燥豆腐を被験者に食べてもらい、柔らかさを以下のような3段階で評価した。被験者は14名であり、下記表1には平均値を示した。
3 非常柔らかい(通常の絹ごし豆腐並み)
2 柔らかい(通常の木綿豆腐並み)
1 硬い(通常の高野豆腐並み)
【0040】
(食感の官能評価2)
凍結乾燥豆腐に95℃の湯を注ぎ、30秒後復元した凍結乾燥豆腐を被験者に食べてもらい、滑らかさを以下のような3段階で評価した。被験者は14名であり、下記表1には平均値を示した。
3 非常に滑らかである(通常の絹ごし豆腐並み)
2 滑らかである(通常の木綿豆腐並み)
1 ざらつきがある(通常の高野豆腐並み)
【0041】
(外観の官能評価)
凍結乾燥豆腐に95℃の湯を注ぎ、30秒後復元した凍結乾燥豆腐の外観を、以下のような3段階で評価した。被験者は14名であり、下記表1には平均値を示した。
3 ひび割れがほとんどない
2 ひび割れがややある
1 ひび割れが多い
【0042】
【表1】

【0043】
上記表1の結果から、タンパク質の含有量が32.5〜37.5重量%である実施例の凍結乾燥豆腐は、復元後に滑らか且つ柔らかな食感を有することが分かった。また、タンパク質の含有量が33.5〜36.5重量%であると、復元後にひび割れが少なく外観に優れることが分かった。また、タンパク質の含有量が33〜36重量%であると、復元後により滑らかな食感を有することが分かった。タンパク質の含有量が34〜36重量%であると、復元後に柔らか且つ滑らかな食感を有するとともに、ひび割れが少なく外観にも優れることが分かった。凍結乾燥豆腐において、上記外観及び食感を有することは、品位が高いことを示し、絹こし豆腐に近いものである。これに対し、タンパク質の含有量が38重量%である比較例1及び比較例2の凍結乾燥豆腐は、復元後に、硬く、食感も悪かった。特に、図2からも分かるように、凍結を真空下で行っていない比較例2の凍結乾燥豆腐は、氷結晶痕跡のサイズが20000μm2を超えており、復元後に、硬さも0.14kgを大きく超えており、食感も悪かった。また、タンパク質の含有量が37.5重量%を超えている比較例4及び比較例5の凍結乾燥豆腐も、復元後の食感が悪かった。特に、実施例1に比べて澱粉と、水あめの量が1.5倍量である比較例5の凍結乾燥豆腐も、タンパク質の含有量が37.5重量%を超えているため、復元後に、硬く、食感も悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐を凍結乾燥して得られた凍結乾燥豆腐であり、
前記凍結乾燥豆腐におけるタンパク質の含有量が32.5〜37.5重量%である凍結乾燥豆腐。
【請求項2】
前記凍結乾燥豆腐は、復元後の硬さが0.07〜0.14kgの範囲である請求項1に記載の凍結乾燥豆腐。
【請求項3】
前記凍結乾燥豆腐は、氷結晶痕跡のサイズが15000μm2以下である請求項1又は2に記載の凍結乾燥豆腐。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の凍結乾燥豆腐を製造する方法であって、
豆乳を含む豆乳混合液に凝固剤を添加し凝固して豆腐を得る工程と、
得られた豆腐を凍結乾燥する工程を含み、
前記豆乳は、タンパク質の含有量が30〜35重量%である大豆を水に浸漬し、すりつぶして得られた呉汁をろ過して分離することにより得られており、前記豆乳の固形分の濃度がBrix8〜Brix12であることを特徴とする凍結乾燥豆腐の製造方法。
【請求項5】
凍結乾燥する前に、豆腐を真空凍結する工程を含み、前記真空凍結時の真空度が100Pa以下である請求項4に記載の凍結乾燥豆腐の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−31438(P2013−31438A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150651(P2012−150651)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【特許番号】特許第5096635号(P5096635)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(390000664)日本ジフィー食品株式会社 (5)
【Fターム(参考)】