説明

凍結乾燥FSH/LH製剤

本発明は、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の混合物の医薬製剤の分野、及び当該製剤の製剤方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、及びFSHと黄体形成ホルモン(LH)の混合物の凍結乾燥製剤の分野、並びに当該製剤の製造方法に関する。
【0002】
卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)及び絨毛性ゴナドトロピン(CG)は、ゴナドトロピンのクラスに分類される注射可能なタンパク質である。FSH、LH及びhCGは、単独で、そして組み合わせて、女性及び男性両方の患者の不妊症及び繁殖障害の治療に使用される。
【0003】
本来、FSH及びLHは下垂体によって産生される。医薬用途の場合、FSH及びLH並びにそれらの変異体は組換え技術で産生されることがあり(rFSH及びrLH)、あるいはそれらは閉経後の女性の尿から産生されることがある(uFSH及びuLH)。
【0004】
FSHは、排卵誘発(OI)及び過排卵誘起(COH)の女性の患者において、生殖補助医療(ART)に使用される。排卵誘発の典型的な治療計画において、患者は、FSH又は変異体(約75〜300IU FSH/日)を約6〜約12日間毎日注射で投与される。過排卵誘起の典型的な治療計画において、患者は、FSH又は変異体(約150〜600IU FSH/日)を約6〜約12日間毎日注射で投与される。
【0005】
FSHはまた、精子減少症に罹患している男性の精子形成を誘導するのにも使用される。150IUのFSHを週3回、2500IUのhCGを週2回、併用する計画は、低ゴナドトロピン性性機能低下症に罹患している男性の精子数の向上をもたらすのに成功している1
【0006】
LHは、OI及びCOHにおいて、女性患者、特に非常に低い内因性のLHレベルを有するか、又はLHに対して抵抗性のある患者、例えば低ゴナドトロピン性性機能低下症(HH、WHOグループI)に罹患している女性又は年配の患者(すなわち、35歳以上)、及び胚着床又は早期流産が問題となっている患者においてFSHと組み合わせて使用される。LHとFSHとの組み合わせは、閉経後の女性の尿から抽出されたヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)と称される製剤において伝統的に利用されている。hMGは1:1のFSH:LH活性比を有する。
【0007】
CGはLHと同一の受容体に作用し、そして同一の反応を誘発する。CGはLHよりも長い循環(circulation)半減期を有しており、そのため、長時間作用型のLH活性原として一般的に使用されている。CGは、自然のLHピークに似せて排卵を引き起こすためにOI及びCOHにおいて使用されている。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の注射は、FSH又はFSHとLHの混合物による刺激の終了時に排卵を引き起こすために使用される。CGはまた、LH活性が所望とされる患者、例えば上文で言及した者の刺激の間、LH活性を提供するために、OI及びCOH用の刺激の間FSHと一緒に使用されることもある。
【0008】
FSH、LH及びCGは、ヘテロ二量体の糖タンパク質ホルモンファミリーのメンバーであり、これには甲状腺刺激ホルモン(TSH)も含まれる。このファミリーのメンバーは、α−サブユニット及びβ−サブユニットを含んで成るヘテロ二量体である。当該サブユニットは、非共有結合性の相互作用によって一緒に保持されている。ヒトFSH(hFSH)ヘテロ二量体は、(i)他のヒトファミリーメンバー(すなわち、絨毛性ゴナドトロピン(「CG」)、黄体形成ホルモン(「LH」)及び甲状腺刺激ホルモン(「TSH」)にとっても共通の、成熟92アミノ酸糖タンパク質アルファサブユニット;及び(ii)FSHに特有の成熟111アミノ酸ベータサブユニット、から成る2。ヒトLHへテロ二量体は、(i)成熟92アミノ酸糖タンパク質アルファサブユニット;及び(ii)LHに特有の成熟112ベータサブユニット、から成る3。前記糖タンパク質のアルファ及びベータサブユニットは、防腐剤、界面活性剤及び他の賦形剤との相互作用により、製剤中で解離しやすいことがある。前記サブユニットの解離は生物学的効力の損失をもたらす4
【0009】
FSHは、筋肉内(IM)又は皮下(SC)注射用に製剤化される。FSHは、2〜25℃で保存した場合に1年半から2年の貯蔵寿命を有する75IU/バイアル及び150IU/バイアルのバイアル又はアンプルにおいて凍結乾燥(固体)型で供給される。注射溶液は、凍結乾燥型の製品を注射用水(WFI)で再構成することで形成する。排卵誘発又は過排卵誘起の場合、75IU〜600IUの開始用量での最大約10日間の連日注射が推奨される。患者の反応に応じて、漸増用量のFSHを用いる最大3サイクルの治療が使用されうる。凍結乾燥製剤を用いる場合、患者は新規バイアル中の凍結乾燥材料を希釈剤で再構成し、そして毎日それを再構成直後に投与する必要がある[Serono Laboratories, Inc., Randolph, MAにより皮下注射用のFertinex(登録商標)(精製型注射用尿性卵胞性刺激ホルモン)について1996年2月に発行された添付文書N1700101A]。
【0010】
FSHはまた、単回投与又は多数回投与用の液体フォーマットのいずれにおいてもバイアル又はアンプルにおいて調製されてきた。単回投与フォーマットは、使用前の保存の際安定で且つ強力なままでなければならない。多数回投与フォーマットは、使用前の保存の際安定で且つ強力なままでなければならないだけでなく、アンプルの密封が損なわれた後、多数回投与に使用するための治療計画の投与期間を通じて安定で、強力で、且つ比較的細菌を含まない状態で維持されなければならない。このため、多数回投与フォーマットは静菌剤を含んでいる。
【0011】
LHは筋肉内(IM)又は皮下(SC)注射用に調製される。LHは、2〜25℃で保存した場合に1年半から2年の貯蔵寿命を有する75IU/バイアルのバイアル又はアンプルにおいて凍結乾燥(固体)型で供給される。注射溶液は、凍結乾燥型の製品を注射用水(WFI)で再構成することで形成する。排卵誘発又は過排卵誘起の場合、FSHと併用して、75IU〜600IUのLHの開始用量での最大約10日間の連日注射が推奨される。
【0012】
EP0 618 808(Applied Research Systems ARS Holding N.V.)は、ゴナドトロピンと、安定量のスクロース単独又はスクロースとグリシンの固形均質混合物を含んで成る安定な液体医薬組成物を開示している。
【0013】
EP0 814 841(Applied Research Systems ARS Holding N.V.)は、組換えヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と安定量のマンニトールを含んで成る液体医薬組成物を開示している。
【0014】
EP0 448 146(AKZO N. V.)は、1重量部のゴナドトロピン;及び当該ゴナドトロピンと会合した200〜10,000重量部のジカルボン酸塩の安定化剤を含んで成る安定化したゴナドトロピン含有凍結乾燥物を開示している。
【0015】
EP0 853 945(Akzo Nobel N. V.)は、ゴナドトロピンと、安定化量のポリカルボン酸又はその塩及びチオエーテル化合物を含んで成ることを特徴とする液体ゴナドトロピン含有製剤を開示している。
【0016】
WO00/04913(Eli Lilly and Co.)は、アルファサブユニット及びベータサブユニットを含むFSH又はFSH変異体、及びフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、又はそれらの混合物から成る群から選択される防腐剤、を水性希釈剤中に含んで成る製剤を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、FSHとLHの混合物の新規凍結乾燥製剤を提供すること、それらの調製方法、及び繁殖障害の治療におけるそれらの医薬用途又は獣医学的用途のための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第一の観点において、本発明は、FSH又はその変異体並びにLH又はその変異体、及びTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤、を含んで成る凍結乾燥製剤を提供する。
【0019】
第二の観点において、本発明は、凍結乾燥製剤の製造方法であって、FSH又はその変異体並びにLH又はその変異体と、Tween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤との混合物を形成し、そして当該混合物を凍結乾燥にかけること、を含んで成る方法を提供する。
【0020】
第三の観点において、本発明は、ヒト用医薬用途のための製品であって、凍結乾燥したFSH及びLHあるいはFSH又はLHの変異体、及びTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤を含んで成る第一容器及び再構成用溶媒を含んで成る第二容器、を含んで成る製品、を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の混合FSH/LH製剤は、向上した又はより適当な特性又は安定性を有しており、そして女性及び/又は男性における不妊治療にとって有用である。これらの製剤及び製品は、注射及び別の送達系、例えば、限定しないが、経鼻、経肺、経粘膜、経皮、経口、皮下、筋肉内又は非経口からの徐放における使用に更に適している。特に好ましい態様において、本発明の製剤は皮下及び/又は筋肉内注射用である。提供するFSH、LH又はFSH若しくはLH変異体製剤は、また、活性又は安定性の損失を防ぎ又は軽減することで、あるいは投与の有効性又は望ましさのあらゆる観点、例えば形態、頻度、用量、快適性、使いやすさ、in vitro又はin vivoでの生物学的活性等のうちの少なくとも1つを改善することで、既知の商品と比較して長期間in vivoでの効力を増大させることができる。
【0022】
卵胞刺激ホルモン、又はFSHは、本明細書で使用する場合、完全長の成熟タンパク質として産生されるFSHを意味し、これには、限定しないがヒトFSH又は「hFSH」が含まれており、組換え技術で産生されているか、ヒト起源のもの、例えば閉経後の女性の尿から単離されているかを問わない。ヒト糖タンパク質アルファサブユニットのタンパク質配列を配列番号1に示し、そしてヒトFSHベータサブユニットのタンパク質配列を配列番号2に示す。
【0023】
「FSH変異体」の表現は、ヒトFSHとアミノ酸配列、グリコシル化パターン又はサブユニット間の連結が異なるが、FSH活性を示す分子を包含することを意味する。例としては長期作用性修飾型組換えFSHであるCTP−FSHがあり、これは野生型α−サブユニット及び、hCGのカルボキシ末端ペプチドがFSHのβ−サブユニットのC末端と融合しているハイブリッドβ−サブユニットから成る[LaPolt et al. ; Endocrinology; 1992, 131, 2514- 2520; or Klein et al. ; Development and characterization of a long-acting recombinant hFSH agonist; Human Reprod. 2003,18, 50-56に記載のとおり]。また、一本鎖分子である一本鎖CTP−FSHも含まれ、これは以下の配列(N末端からC末端へ)から成り:
【化1】

(ここで、βFSHはFSHのβ−サブユニットを表しており、βhCG CTP(113−145)はhCGのカルボキシ末端ペプチドを表し、そしてαFSHはFSHのα−サブユニットを表している)、これはKleinらにより説明されたとおりである5。FSH変異体の他の例には、WO01/58493(Maxygen)、特にWO01/58493の請求項10及び11に開示されているような、α−サブユニット及び/又はβ−サブユニットに組み込まれた追加のグリコシル化部位を有するFSH分子、そしてWO98/58957に開示されているようなサブユニット間S−S結合を有するFSH分子が含まれる。
【0024】
本明細書で言及されるFSH変異体には、配列番号2の完全長成熟タンパク質よりも短いベータサブユニットのカルボキシ末端を欠失したものも含まれる。ヒトベータサブユニットのカルボキシ末端の欠失は、配列番号3,4及び5に示す。ベータ鎖のカルボキシ末端変異体は、既知のアルファサブユニットと二量体を形成してFSH変異体ヘテロ二量体を形成すると解される。
【0025】
FSHヘテロ二量体又はFSH変異体ヘテロ二量体は、任意の適当な方法、組み換え技術により、場合によっては天然起源からの単離又は精製により、化学合成により、あるいはそれらの任意な組み合わせにより、産生することができる。
【0026】
用語「組換え体」の使用は、FSH、LH又は組み替えDNA技術(WO85/01958を参照のこと)の使用を通じて産生されるFSH及びLF変異体の調製物を意味する。FSHのゲノムクローン及びcDNAクローンの配列は、複数の種のアルファサブユニット及びベータサブユニットについて知られている6。組換え技術を用いてFSH又はLHを発現させる方法の一例は、真核細胞にFSH又はLHのアルファサブユニット及びベータサブユニットをコードするDNA配列をトランスフェクションすることによるものであり、これは、欧州特許EP0211894及びEP0487512に記載のように、それぞれ別個のプロモーターを有するサブユニットを持つ1つのベクター又は2つのベクターのいずれかで提供される。FSH又はLHを産生するための組換え技術の使用の別の例は、欧州特許EP0505500(Applied Research Systems ARS Holding NV)に記載のように、FSH又はLHのサブユニットをコードする内因性配列に、作用可能に連結するよう異種の制御セグメントを挿入するための相同組換えの使用によるものである。
【0027】
本発明に従い使用されるFSH又はFSH変異体は、組換え手段により、例えば哺乳類細胞から産生されるだけでなく、他の生物学的起源、例えば尿起源から精製されることもある。許容される方法には、Hakola, K. Molecular and Cellular Endocrinology, 127: 59-69,1997 ; Keene, et al., J. Biol. Chem. , 264: 4769- 4775,1989 ; Cerpa-Poijak, et al., Endocrinology, 132: 351-356,1993 ; Dias, et al., J. Biol. Chem. , 269: 25289-25294,1994 ; Flack, et al., J. Biol. Chem. , 269: 14015-14020, 1994; 及びValove, et al., Endocrinology, 135: 2657-2661, 1994, 米国特許第3,119,740号及び米国特許第5,767,067号に記載のものが含まれる。
【0028】
黄体形成ホルモン、又はLHは、本明細書で使用する場合、完全長の成熟タンパク質として産生されるLHを意味し、これには、限定しないがヒトLH又は「hLH」が含まれており、組換え技術で産生されているか、ヒト起源のもの、例えば閉経後の女性の尿から単離されているかを問わない。ヒト糖タンパク質アルファサブユニットのタンパク質配列を配列番号1に示し、そしてヒトLHベータサブユニットのタンパク質配列を配列番号6に示す。好ましい態様において、LHは組換え体である。
【0029】
「LH変異体」の表現は、ヒトLHとアミノ酸配列、グリコシル化パターン又はサブユニット間の連結が異なるが、LH活性を示す分子を包含することを意味する。
【0030】
LHヘテロ二量体又はLH変異体ヘテロ二量体は、任意の適当な方法、組み換え技術により、場合によっては天然起源からの単離又は精製により、化学合成により、あるいはそれらの任意な組み合わせにより、産生することができる。
【0031】
用語「投与する」又は「投与」とは、本発明の製剤を、疾患又は症状を治療することが必要な患者の体内に導入することを意味する。
【0032】
用語「患者」は、疾患又は症状が治療される哺乳類を意味する。患者は、限定しないが、以下の出身のもの、ヒト、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、ウサギ等である。
【0033】
用語「効力」は、FSH活性との関連においては、FSH製剤又は混合製剤がFSHに関連する生物学的反応、例えばSteelman-Pohleyアッセイ8における卵巣の増量、又は雌性患者の卵胞発育を誘発する能力を意味する。雌性患者の卵胞発育は、超音波によって、例えば刺激8日目の約16mmの平均直径を有する卵胞の数の観点で評価されうる。生物学的活性は、FSHについて許容されている基準に関して評価される。
【0034】
用語「効力」は、LH活性との関連においては、LH製剤又は混合製剤がLHに関連する生物学的反応を誘発する能力を意味し、例えば精嚢増量法9による。LHの生物学的活性は、LHについて許容されている基準に関して評価される。
【0035】
用語「水性希釈剤」とは、水を含む液体溶媒を意味する。液体溶媒系は水のみから成ることもあり、あるいは水と1又は複数の混和性溶媒から成ることもあり、そして溶解した溶質、例えば糖、緩衝剤、塩又は他の賦形剤を含むこともある。更に一般的に使用される非水性溶媒は、短鎖有機性アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、短鎖ケトン、例えばアセトン、及びポリアルコール、例えばグリセロールである。
【0036】
「等張性物質」は、生理学的に許容され、且つ適当な等張性を製剤に賦与して、細胞と接触している細胞膜の水の正味の流れ(net flow)を防ぐ化合物である。化合物、例えばグリセリンは、このような目的のために既知の濃度で一般的に使用されている。他の適当な等張性物質には、限定しないが、アミノ酸又はタンパク質(例えば、グリシン又はアルブミン)、塩(例えば、塩化ナトリウム)、及び糖(例えば、デキストロース、スクロース及びラクトース)が含まれる。
【0037】
用語「緩衝液」又は「生理学的に許容される緩衝液」とは、医薬用途又は獣医学的用途について製剤中で安全であることが知られており、且つ当該製剤について所望とされるpH範囲内に製剤のpHを維持又は調節する作用を有する化合物の溶液を意味する。適度に酸性のpHを適度に塩基性のpHに調節するのに許容される緩衝液は、限定しないが、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、TRIS、及びヒスチジンの様な化合物を含む。「TRIS」は、2−アミノ−−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらの医薬として許容される塩を意味する。好ましい緩衝液は、食塩水又は許容される塩を含む塩酸塩の緩衝液である。
【0038】
用語「リン酸緩衝液」とは、リン酸又はその塩を含み、所望のpHに調節された溶液を意味する。通常、リン酸緩衝液は、リン酸、又はリン酸塩、例えば、限定しないが、ナトリウム塩及びカリウム塩、から調製される。複数のリン酸塩が当業界で知られており、例えば、当該酸の一塩基性、二塩基性、そして三塩基性のナトリウム及びカリウム塩である。リン酸塩はまた、発生している塩の水和物として発生することも知られている。リン酸緩衝液は、あるpH範囲、例えば約pH4〜約pH10のpH範囲、好ましくは約pH5〜約pH9の範囲、そして最も好ましくは約6.0〜約8.0の範囲をカバーすることができ、好ましくは約pH7.0である。
【0039】
用語「バイアル」又は「容器」は、封じ込められた無菌状態で固体又は液体のFSHを保持するのに適した貯蔵のためのものを広く意味する。本明細書で使用する場合のバイアルの例には、アンプル、カートリッジ、ブリスター・パッケージ、又は、シリンジ、ポンプ(例えば浸透圧ポンプ)、カテーテル、経皮パッチ、経肺若しくは経粘膜的スプレーを患者へのFSHの送達に適した他の前記のような貯蔵するためのものが含まれる。非経口、経肺、経粘膜、又は経皮投与用の製品を梱包するのに適したバイアルは周知であり、当業界で認識されている。
【0040】
用語「安定性」は、本発明の製剤におけるFSH及びLHの物理的、化学的、且つ高次構造的な安定性を意味する(例えば、生物学的効力の維持)。タンパク質製剤の不安定性は、当該タンパク質分子が化学的に分解又は凝集して高次ポリマーを形成することにより、ヘテロ二量体がモノマーに解離することにより、本発明に含まれるFSHポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を低下させる脱グリコシル化、グリコシル化の修飾、酸化(特にαサブユニットの酸化)又はそれ以外の構造的修飾により引き起こされることがある。
【0041】
「安定な」溶液又は製剤は、その中に含まれるタンパク質の分解、修飾、凝集、生物学的活性の損失等の程度が受け入れられるほど調節されており、且つ時間とともに受け入れられないほど増大しないものである。好ましくは、当該製剤は、少なくとも約80%の標識FSH活性及び少なくとも約80%の標識LH活性を6ヶ月の期間にわたり約2〜8℃、更に好ましくは約2〜8℃、更に好ましくは約4〜5℃で保持する。FSH活性は、Steelman-Pohley卵巣増量アッセイ5を用いて測定されうる。LH活性は精嚢増量バイオアッセイ10を用いて測定されうる。
【0042】
用語「治療」は、FSH及び/又はLHの投与が卵胞又は精巣の刺激あるいはFSH及び/又はLHによって制御されるあらゆる他の生理学的応答の目的にとって望ましい、患者への投与、患者のフォローアップ、管理及び/又はケアを意味する。従って、治療には、限定しないが雄性における精子の品質の誘導又は向上、テストステロン放出の刺激、あるいは雌性における卵胞発達、又は排卵誘発のためのFSH及び/又はLHの投与が含まれることがある。
【0043】
タンパク質の「塩」は、酸又は塩基の付加塩である。そのような塩は、好ましくは当該タンパク質中の荷電基のうちのいずれか1又は複数と、生理学的に許容される非毒性の陽イオン又は陰イオンのうちのいずれか1つ又は複数との間で形成される。有機塩及び無機塩には、例えば、酸、例えば塩酸、硫酸、スルホン酸、酒石酸、フマル酸、臭化水素酸、グリコール酸、クエン酸、マレイン酸、リン酸、コハク酸、酢酸、硝酸、安息香酸、アスコルビン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、カルボン酸等から調製されるもの、あるいは、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウムから調製されるものが含まれる。
【0044】
本発明者は、ポリソルベート、特にTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)の群から選択される界面活性剤が、LHとFSHの混合物を含んで成る安定製剤を調製するのに適した賦形剤であることを発見した。好ましい界面活性剤はTween 20である。ポリソルベートは市販の界面活性剤である(例えばMerckから市販されている)。
【0045】
界面活性剤、例えばTween 20は、好ましくは凍結乾燥製剤中に、全製剤の1mg当たり約0.001〜約0.1mgの濃度で、更に好ましくは約0.01〜約0.075/mgで存在する。
【0046】
好ましくは、Tween、特にTween 20の濃度は、再構成した製剤中、約0.01mg/ml〜約1mg/ml、更に好ましくは約0.05mg/ml〜約0.5mg/ml、更に特に好ましくは約0.2mg/ml〜約0.4mg/ml、最も好ましくは約0.1mg/mlである。
【0047】
卵胞刺激ホルモン(FSH)は、凍結乾燥製剤中、好ましくは全製剤1mg当たり約0.1〜10μgの濃度(w/w)で存在する。1つの態様において、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、全製剤1mg当たり約0.3〜5μgの濃度で存在する。更なる態様において、卵胞刺激ホルモン(FSH)は全製剤1mg当たり約0.37〜2μgの濃度で存在する。
【0048】
黄体形成ホルモン(LH)は、凍結乾燥製剤中、好ましくは全製剤1mg当たり約0.1〜3μgの濃度(w/w)で存在する。1つの態様において、黄体形成ホルモン(LH)は、全製剤1mg当たり約0.1〜1μgの濃度で存在する。更なる態様において、黄体形成ホルモン(LH)は全製剤1mg当たり約0.1〜0.6μgの濃度で存在する。
【0049】
再構成した製剤において、当該製剤中のFSHの濃度は好ましくは約150IU/ml〜約2,000IU/mlであり、更に好ましくは約300IU/ml〜約1,500IU/ml、更に特に好ましくは約450〜約750、最も好ましくは約600IU/mlである。
【0050】
再構成した製剤において、当該製剤中のLHの濃度は好ましくは約50IU/ml〜約2,000IU/mlであり、更に好ましくは約150IU/ml〜約1,500IU/ml、更に特に好ましくは約300〜約750、最も好ましくは約625IU/mlである。
【0051】
FSHとLHの比率(FSH:LH、IU:IU。FSHはラットの卵巣増量アッセイを用いて測定し、そしてLHはラットの精嚢増量アッセイを用いて測定した)は、好ましくは約6:1〜約1:6の範囲内であり、更に好ましくは約4:1〜約1:2、更に特に好ましくは約3:1〜約1:1である。特に好ましい比率は1:1及び2:1である。
【0052】
好ましくは、FSH及びLHは組換え技術で産生され、特に好ましくは、それらはFSH又はLHのヒト糖タンパク質アルファサブユニット及びベータサブユニットをコードするDNAを含んで成る1又は複数のベクターでトランスフェクションされたチャイニーズハムスター卵巣細胞において産生される。当該アルファサブユニット及びベータサブユニットをコードするDNAは、同一の又は異なるベクター上に存在してもよい。
【0053】
組換えFSH及びLHは、それらの尿の対応物よりも複数の利点を有する。組換え細胞を用いた培養及び単離技術は、バッチ間での一貫性を可能にする。対照的に、尿FSH及びLHは、前記サブユニットの純度、グリコシル化パターン、シアリル化及び酸化のような特性においてバッチ間で大きく変化する。組換えFSH及びLHのバッチ間での一貫性及び純度がより高ければ、前記ホルモンは、等電点電気泳動(IEF)のような技術を用いて容易に同定し、そして定量することができる。組換えFSH及びLHを同定し、そして定量することが容易であることで、バイオアッセイで充填するよりむしろ、バイアルをホルモンの質量当たり充填することが可能となる(fill-by-mass)。
【0054】
好ましくは、本発明の凍結乾燥製剤は緩衝液、好ましくはリン酸緩衝液を含み、但し、対イオンはナトリウム又はカリウムイオンである。リン酸緩衝食塩水は当業界で周知であり、例えばダルベッコリン酸緩衝液である。全溶液中の緩衝液の濃度は約5mM、9.5mM、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、そして500mMの間を変化することがある。好ましくは、緩衝液の濃度は約10mMである。特に好ましいのは、pH7.0のリン酸イオンの10mM緩衝液である。
【0055】
好ましくは、緩衝液は、本発明の凍結乾燥製剤の再構成した製剤が、約6.0〜約8.0、更に好ましくは約6.8〜約7.8の間のpHを有するように調節され、例えば約pH7.0、pH7.2、及び7.4である。
【0056】
好ましくは、緩衝液は、本発明のFSHとLHの混合物の再構成した製剤が、約6.0〜約9.0、更に好ましくは約6.8〜約8.5の間のpHを有するように調節され、例えば約pH7.0、pH8.0、及び8.2、最も好ましくは約pH8.0である。
【0057】
本発明の注射可能な凍結乾燥製剤を提供するために、再構成には適当な溶媒が用いられる。好ましい溶媒は注射用水である。
【0058】
更に具体的な態様において、本発明は、FSH及びLH、Tween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤、を含んで成る凍結乾燥製剤を提供する。好ましくは、FSH及びLHは約2:1〜約1:1の比率(FSH:LH)で存在する。
【0059】
更に具体的な態様において、本発明は、凍結乾燥製剤の製造方法であって、FSHとLH、そしてTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤との混合物を形成し、そして当該混合物を凍結乾燥にかけることを含んで成る方法を提供する。
【0060】
更に別の好ましい態様において、本発明は、梱包された医薬組成物の製造方法であって、FSHとLH、そしてTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤とを含んで成る凍結乾燥混合物を容器に分注することを含んで成る方法を提供する。
【0061】
更に別の好ましい態様において、本発明は、ヒト用医薬用途のための製品であって、凍結乾燥したFSH又はFSH変異体並びにLH又はLH変異体、並びにTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)から選択される界面活性剤を含んで成る第一容器又はバイアルを含んで成る製品、を提供する。第二容器又はバイアルは再構成のための希釈剤、好ましくは水を含む。
【0062】
本発明の凍結乾燥製剤は、少なくとも約6ヶ月、12ヶ月又は24ヶ月の間保管することができる。好ましい保存条件下では、最初の使用前に、当該製剤は明るい光から遠ざけられ(好ましくは暗い場所に保管される)、約25℃、好ましくは約2〜8℃、更に好ましくは約4〜5℃の温度で保管される。
【0063】
好ましくは、本発明の凍結乾燥製剤は、抗酸化剤、例えばメチオニン、亜硫酸水素ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む。最も好ましいのはメチオニンである。抗酸化剤はFSH及びLHの酸化を防ぐ(特にαサブユニット)。
【0064】
抗酸化剤、例えばメチオニンは、好ましくは、全製剤1mg当たり約0.0001〜約0.1mgの濃度で存在し、更に好ましくは約0.01〜約0.075mg/mgである。
【0065】
再構成した製剤において、メチオニンは好ましくは約0.01〜約1.0mg/mlの濃度、更に好ましくは約0.05〜約0.5mg/ml、最も好ましくは約0.1mg/mlの濃度で存在する。
【0066】
好ましくは、本発明の凍結乾燥製剤は、安定化剤及び等張性調節物質として単糖又は二糖又は糖アルコール、例えばスクロース、デキストロース、ラクトース、マンニトール及び/又はグリセロールを含む。最も好ましいのはスクロースである。再構成した製剤において、スクロースは約60mg/mlで存在する。
【0067】
上述のとおり、本発明は、凍結乾燥製剤、特に使い捨てのものを提供する。本発明の製剤は医薬用途又は獣医学的用途に適したものである。
【0068】
上述のとおり、好ましい態様において、本発明は、凍結乾燥FSH及びLH並びにTween 20を含んで成る梱包材料及びバイアルを含んで成る製品を提供する。第二の容器は希釈剤としての注射用水を含む。
【0069】
本発明の製剤中のタンパク質ホルモンの範囲には、再構成時に約1.0μg/ml〜約50mg/mlの濃度をもたらす量が含まれ、但し、それ以下、そしてそれ以上の濃度でも実施可能であり、そして意図する送達担体に依存し、例えば、溶液製剤は、経皮パッチ、経肺、経粘膜的な方法、又は浸透圧ポンプ若しくはマイクロポンプ法とは異なる。タンパク質ホルモンの濃度は好ましくは約5.0μg/ml〜約2mg/ml、更に好ましくは約10μg/ml〜約1mg/ml、最も好ましくは約50μg/ml〜約200μg/mlである。
【0070】
好ましくは、本発明の製剤は、梱包時のFSH活性及び/又はLH活性の少なくとも約80%を(最初の使用前)24ヶ月の期間にわたり保持する。FSH活性はSteelman-Pohley卵巣増量バイオアッセイ5を用いて測定されうる。LH活性はラットの精嚢増量バイオアッセイを用いて測定されうる。
【0071】
本発明の製剤は、FSHとLH、そしてTween20、並びに追加の賦形剤、例えば抗酸化剤及び/又は緩衝液とを混合し、そして当該混合物を凍結乾燥にかけることを含んで成る方法により調製することができる。前記の成分を混合し、そしてそれらを凍結乾燥することは、常用の手順を用いて実施される。適当な製剤を調製するために、例えば、測定量のFSH又はFSH変異体、LH又はLH変異体は、Tween20と混合され、そして生じた混合物は凍結乾燥された後、バイアル、アンプル又はカートリッジに分注される。この方法の変更は当業者により認識されている。例えば、前記成分を添加する順番、追加の添加物を使用するか否か、製剤を調製する温度及びpHは、全て、前記濃度及び使用する投与手段のために最適化されうる因子である。
【0072】
本発明の凍結乾燥製剤から得られる再構成製剤は、認識されている器具を用いて投与されうる。これらの単一のバイアル系を含んで成る例には、溶液の送達のためのペン型注射器、例えば、Easy-Ject(登録商標)、Gonal-F(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B-D(登録商標)ペン、AutoPen(登録商標)及びOptiPen(登録商標)が含まれる。
【0073】
本願の特許請求の範囲に記載の製品には、梱包材料が含まれる。梱包材料は、監督官庁が要求する情報に加えて、当該製品が使用されうる条件を提供する。本発明の梱包材料は、患者が本発明の凍結乾燥製剤を再構成して溶液を形成させ、そして当該溶液を2つのバイアルの湿潤/乾燥製品について24時間以上の期間にわたり当該溶液を使用するための指示を提供する。1つのバイアルの溶液製品の場合、ラベルは、当該溶液が最初の使用後24時間以上の期間、好ましくは最大12又は14日の期間保存されうることを示している。本願の特許請求の範囲に記載の製品は、ヒトの医薬製品の使用にとって有用である。
【0074】
以下の実施例は単に本発明の製剤及び組成物の調製を例示するために提供される。本発明の範囲は、以下の実施例のみから成るとみなされるべきではない。
【実施例】
【0075】
本発明の組換えゴナドトロピン(FSH/LH)は、欧州特許EP160699及びEP211894に記載の技術に従い相当の組換えDNAで形質転換されたCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞における発現により調製した。
【0076】
本実施例で使用するその他の物質は以下のとおりである:
−スクロースエキストラピュアMerckコード番号1.07653
−リン酸二水素ナトリウム一水和物(以下、NaH2PO420として示す)Merckコード番号1.06346
−リン酸水素二ナトリウム二水和物(以下、Na2HPO4 2H20として示す)Merckコード番号1.06580
−Tween 20Merckコード番号1822184
−L−メチオニン Rexim
−注射用水
−オルトリン酸85%エキストラピュアMerckコード番号1.00563
−オルトリン酸(約17%w/w)溶液
−水酸化ナトリウムペレットエキストラピュアMerckコード番号1.06498
【0077】
FSH及びLHの凍結乾燥製剤
以下の組成を有する凍結乾燥製剤Aを調製した:
製剤A
FSH μg 12.0(156I.U.)
LH μg 3.7(92I.U.)
スクロース mg 30.0
NaH2PO420 mg 0.45
Na2HPO4 2H20 mg 1.11
Tween 20 mg 0.05
L−メチオニン mg 0.1
【0078】
この製法は、薬物原料を直接前記成分と混合し、得られた溶液を濾過し、そして濾過物を凍結乾燥することによる。
【0079】
当該方法の各工程の説明は以下に記すとおりである:
−風袋を計った容器にWFI、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、スクロース、5%のTween20及びL−メチオニンを添加し、そして完全に溶解するまで10分間攪拌する。
−pHを調べ、そして最終的にそれを10%NaOH又は希釈したH3PO4でpH7.00±0.2に修正する。
−FSH及びLHを上記の調製した混合物に添加し、そして得られた溶液を10分間穏やかに攪拌する。
−再びpHを調べ、そして最終的にそれを10%NaOH又は希釈したH3PO4でpH7.0±0.1に修正する。
−15g/cm2以上の濾過率を有する0.22μmのDurapore膜を用い、1.5atm(151987.5Pa)の窒素ガス流のもと溶液を濾過する。
−前記溶液を予め滅菌したフラスコに回収する。
−濾過した溶液をガラス容器に充填し、ストッパーで封をし、そして充填したバイアルをステンレス鋼のトレイに置く。
−前記トレイを凍結乾燥機に載せ、そして以下の凍結乾燥サイクルを用いて生成物を凍結乾燥する:
・+4℃で約20分間平衡化する。
・棚の温度を−25℃にし、そして2時間維持する。
・棚の温度を−15℃にし、そして1時間維持する。
・棚の温度を−45℃にし、そして3時間維持する。
・濃縮機の温度を−65℃にする。
・チャンバーを真空状態にする。
・真空が7x10-2mBarの値に達したら、棚の温度を−10℃にまで上昇させ、そして14時間維持する。
・棚の温度を8時間で+35℃にまで上昇させ、そしてこのサイクルの最後まで維持する(14時間)。
・真空状態を中断して乾燥窒素をチャンバー内に封入する。
・凍結乾燥機の自動システムにより蓋をする。
・蓋をしたバイアルを適切なフリップオフキャップで密封する。
【0080】
製剤A及びBを25±2℃で保存し、そして後述するように安定性及び生物学的活性について試験した。組成を解析する前に、それらを注射用水を用いて再構成する。
【0081】
安定性及び生物学的活性は以下のとおりに決定した:
・FSHのin vivoアッセイ:製剤は、FSH活性についてSteelman-Pohley卵巣増量バイオアッセイを用いて試験した。
・LHのin vivoアッセイ:製剤は、LH活性についてラット精嚢増量バイオアッセイを用いて試験した。
・酸化型アルファサブユニットのアッセイ:酸化型アルファサブユニットのパーセンテージは、逆相HPLC(RP−HPLC)法で測定した。
・遊離サブユニット(rFSH+rLH)の評価:遊離サブユニットのパーセンテージをSDS−PAGEで評価した。
・凝集物の評価:凝集物のパーセンテージは、遊離サブユニットの評価について上述したようにSDS−PAGEにより評価した。
【0082】
生物学的試験は、欧州薬局方の規則に従い実施した。特に、当該試験は、「メノトロピン」のモノグラフにおいて報告されている。
【0083】
表1は製剤Aの安定性及び生物学的活性に関する解析試験の結果を要約する。値は4つのチェックポイント:ゼロ時、保存から1ヶ月後、3ヵ月後及び6ヵ月後に、25±2℃の保存温度でのものを決定した。
【0084】
【表1】

【0085】
表2中、40±2℃で保存した製剤Aについての安定性及び生物学的活性に関連する解析試験の結果を、4つのチェックポイント:ゼロ時、保存から3ヶ月後、6ヵ月後及び9ヵ月後について要約する。
【0086】
【表2】

【0087】
表1及び2から、製剤Aの生物学的活性は保存から9ヶ月後でもよく保全されていることを結論付けることができる。
【0088】
配列:
配列番号1:ヒト糖タンパク質α−サブユニット
配列番号2:hFSHβ−サブユニット
配列番号3:hFSHβ−サブユニット変異体1
配列番号4:hFSHβ−サブユニット変異体2
配列番号5:hFSHβ−サブユニット変異体3
配列番号6:hLHβ−サブユニット
【0089】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵胞刺激ホルモン(FSH)又はその変異体並びに黄体形成ホルモン(LH)又はその変異体、並びにTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を含むポリソルベートから選択される界面活性剤、を含んで成る凍結乾燥製剤。
【請求項2】
界面活性剤がTween 20である、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
卵胞刺激ホルモンがヒト卵胞刺激ホルモンであり、そして/あるいは黄体形成ホルモン(LH)がヒト黄体形成ホルモン(LH)である、請求項1又は2に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
卵胞刺激ホルモンが尿のヒト卵胞刺激ホルモンであり、そして/あるいは黄体形成ホルモン(LH)が尿のヒト黄体形成ホルモン(LH)である、請求項3に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
卵胞刺激ホルモンが組換えヒト卵胞刺激ホルモンであり、そして/あるいは黄体形成ホルモン(LH)が組換えヒト黄体形成ホルモン(LH)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項6】
卵胞刺激ホルモン(FSH)が全製剤1mg当たり約0.1〜10μgの濃度(w/w)で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項7】
卵胞刺激ホルモン(FSH)が全製剤1mg当たり約0.3〜5μgの濃度で存在する、請求項6に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項8】
卵胞刺激ホルモン(FSH)が全製剤1mg当たり約0.37〜2μgの濃度で存在する、請求項7に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項9】
黄体形成ホルモン(LH)が全製剤1mg当たり約0.1〜3μgの濃度で存在する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項10】
黄体形成ホルモン(LH)が全製剤1mg当たり約0.1〜1μgの濃度で存在する、請求項9に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項11】
黄体形成ホルモン(LH)が全製剤1mg当たり約0.1〜0.6μgの濃度で存在する、請求項10に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項12】
FSH対LHの比率が約6:1〜約1:6の範囲内にある、請求項1〜11のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項13】
FSH対LHの比率が約4:1〜約1:2の範囲内にある、請求項12に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項14】
FSH対LHの比率が約3:1〜約1:1の範囲内にある、請求項13に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項15】
FSH対LHの比率が約2:1〜約1:1の範囲内にある、請求項14に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項16】
更にスクロースを含んで成る、請求項1〜15のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項17】
更にメチオニンを含んで成る、請求項1〜16のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項18】
更にリン酸緩衝液を含んで成る、請求項1〜17のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項19】
以下の成分:rFSH、rLH、Tween 20、スクロース、メチオニン、リン酸緩衝液を含んで成る、請求項1〜18のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項20】
12.0μgの組換えFSH、3.7μgの組換えLH、30.0mgのスクロース、0.45mgのNaH2PO420、1.11mgのNa2HPO4 2H20、0.05mgのTween 20及び0.1mgのL−メチオニンを含んで成る、請求項1〜19のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤を充填した第一容器及び再構成用の溶媒を含んで成る第二容器を含んで成る製品。
【請求項22】
第二容器が再構成用の水を含む、請求項21に記載の製品。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤の製造方法であって、FSHとLT、そしてTween 20との混合物を形成する工程、及び当該混合物を凍結乾燥にかける工程を含んで成る方法。

【公表番号】特表2009−514777(P2009−514777A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516157(P2006−516157)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051138
【国際公開番号】WO2004/112826
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】