説明

凍結止水装置および凍結止水方法

【課題】 管体内の流体を凍結させて作業を行うに当たり、管体内の流体を短期間で凍結させ、もって工期の短縮を図ることができる凍結止水装置を提供する。
【解決手段】 シールド掘進機1は、チャンバ14に導入された掘削土砂をスクリュコンベア17によって排出する。スクリュコンベア17の補修等を行う際には、スクリュコンベア17に巻き付けられたフレキシブルホース21にブラインを供給することよってスクリュコンベア17のケーシング内における土砂を凍結させる。このとき、フレキシブルホース21は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料とし、前記主材料よりも熱伝導率が高い副材料が前記主材料に混入されてなる冷熱伝導部22で覆われている。このため、スクリュコンベア17内の土砂を短時間で凍結させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結止水装置および凍結止水方法に係り、特に、シールド掘進機やトンネルなどの地中埋設物内への地下水や土砂の流入を防止する凍結止水装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルを形成する際に用いられる土圧式シールド掘進機は、シールド機本体を有しており、シールド機本体の前方位置にはカッタヘッドが設けられている。カッタヘッドの後方位置には隔壁が設けられており、カッタヘッドと隔壁との間にチャンバが形成されている。カッタヘッドによって掘削された土砂は、このチャンバ内の流入し、隔壁に取り付けられたスクリュコンベアによってチャンバから排出される。また、スクリュコンベアには、土砂によるプラグが形成されており、このプラグによって地中からの地下水がシールド機本体内へ流入することを阻止している。
【0003】
このシールド掘進機においては、シールドトンネルの掘進中にスクリュコンベアのスクリュに磨耗や損傷が発生した場合にはスクリュの修理や交換を行う必要が生じる。スクリュコンベアを隔壁から取り外すとプラグの作用がなくなってしまうことから、スクリュの修理や交換を行う際には、シールド機本体内への地下水の流入を阻止する手段が別途必要となる。
【0004】
シールド機本体内への地下水の流入を阻止する方法として、従来、スクリュコンベアのケーシングのうち、チャンバにもっとも近いケーシング部材の外周面を凍結材で冷却して、ケーシング部材内の土砂や水を凍結させる凍結工法が開示されている(たとえば特許文献1)。
【0005】
他方、シールド孔を並行に掘進した後、これらのシールド孔の間に中間部の山止め工として複数の推進管を掛け渡し、その内側を拡幅する、いわゆるパイプルーフ工法も知られている(たとえば特許文献2)。このパイプルーフ工法では、シールド孔の外壁には、地中に向けて推進管を推進させ、または地中からの推進管を受け入れる開口部が形成されている。
【特許文献1】特公平7−113320号公報
【特許文献2】特開2004−353377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された凍結工法においては、ケーシングを凍結させるにあたり、ケーシングの外周面にドライアイスの小片よりなる凍結材を円周方向に並べて複数列にわたって貼り付け、凍結材の周囲を断熱効果の高い断熱カバーで覆っているのみである。このため、ケーシング内の土砂や水を凍結させるために時間がかかってしまい、スクリュの補修や交換に長時間を要するという問題があった。
【0007】
他方、上記特許文献1に開示された開口部において、推進管が発進した後になんらかの事故が生じた場合には、開口部からの地下水の流入を阻止する必要がある。このとき、上記特許文献1に開示されたシールド掘進機および上記特許文献2に開示されたシールド孔をそれぞれ地中埋設物と見立てると、いずれも地下水の流入を阻止するために、土砂などを凍結させることになるものであるが、土砂などを凍結させるのに時間がかかり、工期の長期化を招くことになるという問題があった。さらに、このような問題は、地中埋設物に限らず、たとえば建築物の鋼管などの管体を止水して、管体などの補修を行う場合などに、鋼管内の水などを凍結させる際にも、生じるものである。
【0008】
そこで、本発明の課題は、管体内の流体を凍結させて作業を行うに当たり、管体内の流体を効率よく短期間で凍結させ、もって工期の短縮を図ることができる凍結止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係る地中埋設物の凍結止水装置は、管体内における流体を凍結させて、管体内を止水する凍結止水装置であって、管体内に流通する流体を凍結させるブラインが流通する冷却配管が管体の周囲に配設され、管体との間で冷却配管を覆う冷熱伝導材が配設されており、冷熱伝導材は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料とし、主材料よりも熱伝導率が高い副材料が主材料に混入されてなるものである。
【0010】
本発明に係る凍結止水装置では、冷熱伝導材として、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料とし、この土質材料に熱伝導率が高い副材料を混入している。このような主材料を用いていることにより、冷却配管と管体との間に隙間をほとんど生じさせることなく、主材料を配置できる。また、この主材料に熱伝導率が高い副材料を混入しているので、この副材料の熱伝導率により、熱伝導性材料全体としての熱伝導率を高くすることができる。したがって、冷却配管と管体との間で隙間がほとんどない状態でかつ高い熱伝導率で冷熱体の熱を管体に伝熱することができるので、管体内の流体に対して冷熱を流体に効率よく伝導することができる。このような冷熱伝導材によって冷却配管を流通するブラインの冷熱が管体に伝熱されるため、管体内の流体を凍結させて作業を行うに当たり、管体内の流体を短期間で凍結させ、もって工期の短縮を図ることができる。
【0011】
ここで、管体は、地中に埋設された地中埋設物と地中とを連通しており、冷却配管を流通するブラインの冷熱で管体内の流体を凍結させることにより、地中埋設物に対する地中からの地下水の流入を阻止する態様とすることができる。この態様の場合、地中構造物で行われる作業を迅速に行うことができ、工期の短縮を図ることができる。
【0012】
また、地中埋設物は、地盤を掘進するシールド機本体を有し、シールド機本体における掘進方向前方位置に、地盤を掘削するカッタヘッドと、カッタヘッドにより掘削された土砂が流入するチャンバと、が形成されたシールド掘進機であり、管体は、チャンバに連通し、チャンバ内の土砂を排出する排泥管である態様とすることができる。
【0013】
この態様では、たとえば排泥管に損傷や磨耗が生じた場合にその補修や交換といった作業を迅速に行うことができ、工期の短縮に貢献することができる。
【0014】
このとき、排泥管における冷却配管が設けられた部位に、排泥管内で流体が凍結して形成された凍結体の凍着力を増加させるジベルが設けられている態様とすることができる。
【0015】
たとえば、排泥管が単なる管体のみで構成される泥水式シールド掘進機の場合、単に排泥管を冷却するのみでは、形成される凍結体の凍着力が低い場合がある。このときに、本発明では、止水凍結部にジベルが設けられていることから、凍結体の凍着力を向上させることができ、止水性能および安全性能を向上させることができる。
【0016】
また、地中埋設物は、地中に形成されたトンネルの外壁であり、外壁には、地中に向けて推進管を発進させ、または地中からの推進管を受け入れる開口部が形成されており、冷却配管および冷熱伝導材が、開口部に形成されている態様とすることもできる。
【0017】
この態様では、たとえば地中に向けて推進管を発進させ、または地中からの推進管を受け入れる開口部の補修や交換が必要な場合に、開口部内の流体を早期に凍結させることができる。したがって、これらの作業を迅速に行うことができ、工期の短縮に貢献することができる。
【0018】
このとき、止水を行う際に前記開口部に取り付けられ、管状の本体部を有し、本体部の内側面に沿って冷却配管が配設された冷却部材が配設されている態様とすることができる。
【0019】
このように、開口部に冷却管が配設されている態様とすることにより、開口部を効率よく冷却することができ、開口部内の流体を迅速に凍結させることができる。工期の短縮に寄与することができる。
【0020】
他方、副材料が金属材料または炭素材料である態様とすることができる。金属材料または炭素材料は熱伝導性に優れるので、副材料が金属材料または炭素材料であることにより、熱伝導性材料の熱伝導性をさらに良好なものとすることができる。
【0021】
また、副材料が粉状、粒状、塊状、および繊維状のいずれかの形状とされている態様とすることもできる。副材料がこれらの形状とされていることにより、主材料に対して副材料を均等に混入しやすくすることができる。
【0022】
さらに、土質材料が膨潤性ベントナイトであり、液体が可塑剤である態様とすることもできる。
【0023】
このように、土質材料が膨潤性ベントナイトであると、塑性となるために多量の水を必要とすることから、主材料の熱伝導性が低下することが懸念される。そこで、土質材料が膨潤性ベントナイトである場合に、液体が可塑剤であることにより、必要な水分量減少させることができ、もって熱伝導性の低下を防止することができる。なお、本発明の「可塑剤」としては、アルカリ金属塩を含む水溶液、エタノールなどを例示することができる。
【0024】
また、主材料に固化材、補強繊維材、および増粘材のうちの少なくとも1つが混入されている態様とすることもできる。このように、固化材、補強繊維材、および増粘材のうちの少なくとも1つが混入されていることにより、主材料の強度、ひいては熱伝導性材料の強度を増加させることができる。
【0025】
なお、本発明にいう「固化材」としては、セメント系固化材、石膏系固化材、薬液系固化材、および酸化マグネシウム系固化材などを例示することができる。また、「繊維材料」としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニルなどを例示することができる。さらに、「増粘材」としては、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアルコール、増粘多糖類(グアガム)、β−1,3グルカンなど、コンクリート技術で用いられる一般的な増粘材を例示することができる。
【0026】
また、上記課題を解決した本発明に係る地中埋設物の凍結止水方法は、管体内における流体を凍結させて、管体内を止水する凍結止水方法であって、冷却配管を管体の周囲に配設し、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料とし、主材料よりも熱伝導率が高い副材料が主材料に混入されてなる冷熱伝導材を管体との間で冷却配管を覆うように配設し、冷却配管にブラインが流通させることにより、管体内に流通する流体を凍結させて、管体内を止水するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る凍結止水装置によれば、管体内の流体を凍結させて作業を行うに当たり、管体内の流体を効率よく短期間で凍結させ、もって工期の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0029】
図1は本発明の第一の実施形態に係る凍結止水装置が適用されるシールド掘進機の側断面図、図2はシールド掘進機で掘削・形成されたシールドトンネルの側断面図である。
【0030】
凍結止水装置の説明の前に、シールド掘進機について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機1は、いわゆる泥土圧式シールド掘進機である。シールド掘進機1は、シールド機本体11を備えている。シールド機本体11の前方位置には、カッタヘッド12が設けられており、カッタヘッド12のやや後方位置に隔壁13が設けられている。これらのカッタヘッド12および隔壁13の間にチャンバ14が形成されている。
【0031】
また、シールド機本体11の後方位置には、シールドジャッキ15が設けられており、その後方にセグメントSを組み立てるエレクタ16が設けられている。さらに、隔壁13の背面側には、チャンバ14内に溜まった土砂を排出する排泥管としてスクリュコンベア17が配設されている。スクリュコンベア17は、ケーシング17Aを備えており、ケーシング17Aの内側にスクリュ17Bが設けられている。このスクリュコンベア17によって、地中とシールド掘進機1とがチャンバ14を介して連通されている。
【0032】
シールド掘進機1は、カッタヘッド12によって地盤を掘削するとともに、シールドジャッキ15を伸長させることにより、組み立てたセグメントSに反力をとって掘進する。シールド掘進機1の掘進の際に掘削される土砂は、チャンバ14内に導入される。チャンバ14内の土砂は、スクリュ17Bを回転させることにより、水と混合されて泥水となり、ケーシング17Aの先端側から内部に導入され、後端側から排出される。
【0033】
次に、凍結止水装置について説明する。図1に示すように、凍結止水装置2は、冷却配管であるフレキシブルホース21を備えている、フレキシブルホース21は、スクリュコンベア17のケーシング17Aにおける隔壁13の近傍位置に巻きつけられている。スクリュコンベア17のケーシング17Aにおけるフレキシブルホース21が巻きつけられている位置には、冷熱伝導材による冷熱伝導部22が形成されている。冷熱伝導部22を構成する熱伝導性材料は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料としている。この主材料に主材料よりも熱伝導率が高い副材料が混入されて熱伝導性材料が構成されている。冷熱伝導部22の配合割合の一例を表1に、配合量の一例を表2にそれぞれ示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
また、図2に示すように、フレキシブルホース21の一端部は、シールド掘進機1で掘進した後に形成されたシールドトンネルTにおける図示しない立坑近傍に配置されたタンク23に接続されている。タンク23には、冷媒となる液化窒素LNが充填されている。このタンク23よりフレキシブルホース21に液化窒素が供給される。フレキシブルホース21の他端側は開放された状態となっている。タンク23から供給された液化窒素は、ケーシング17Aにおける泥水との間における熱交換によって気化し、気体となってフレキシブルホース21の他端側から排出される。
【0037】
凍結止水装置2は、シールド掘進機1によって掘進作業を行う通常時には取り付けられておらず、スクリュコンベア17におけるスクリュ17Bの補修や交換が行われる際に、スクリュコンベア17に取り付けられる。凍結止水装置2の取り付け手順について図3を参照して説明すると、図3(a)に示すように、凍結止水装置2を取り付ける前は、スクリュコンベア17のケーシング17Aは表面がむき出しの状態になっている。
【0038】
凍結止水装置2を取り付ける際には、図3(b)に示すように、スクリュコンベア17のケーシング17Aにおける隔壁13に近い位置にフレキシブルホース21を巻き付ける。次に、ケーシング17Aにおけるフレキシブルホース21を巻き付けた位置に、ペースト状の冷熱伝導材をコテなどによって塗布する。このとき、冷熱伝導材は、フレキシブルホース21を完全に覆うようにして塗布する。その後、図3(c)に示すように、冷熱伝導部22が形成される。ここで、冷熱伝導材に固化材が混入されている場合には、冷熱伝導材が固化する。
【0039】
以上の構成を有する本実施形態に係る凍結止水装置の動作・作用について説明する。
シールド掘進機1による掘進作業が正常に行われており、スクリュコンベア17が支障なく作動している際には、スクリュコンベア17に凍結止水装置2が取り付けられることなく、作業が進行する。その後、シールド掘進機1による掘進作業が行われ、スクリュコンベア17のスクリュ17Bが磨耗または損傷して交換や修理が必要となった際に、凍結止水装置2による止水が必要となる。
【0040】
このとき、図3に示す手順によって凍結止水装置2がスクリュコンベア17に取り付けられる。冷熱伝導材が固化して冷熱伝導部22形成されたら、図2に示すタンク23から液化窒素が供給されて、スクリュコンベア17に導入された隔壁13内の泥水が凍結される。この泥水の凍結によりスクリュコンベア17が止水され、チャンバ14を介したシールド機本体11内への地下水の流入が阻止される。
【0041】
ここで、スクリュコンベア17のケーシング17A内の泥水を凍結させるにあたり、冷熱伝導部22を構成する熱伝導性材料は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料としている。この主材料に主材料よりも熱伝導率が高い副材料が混入されて熱伝導性材料が構成されている。
【0042】
土質材料としては、たとえばセメント、石灰、粘土、砂等が用いられ、ここではたとえばセメントが用いられる。この土質材料に液体、たとえば水を加えるとともに、副材料を混入する。副材料としては、土質材料よりも熱伝導性の高い材料、たとえば金属材料や炭素材料が用いられ、ここでは金属材料である鉄が用いられる。
【0043】
また、副材料の形状としては、粉状、粒状、塊状、繊維状などとされており、ここではたとえば粉状とされている。さらに、熱伝導性材料には、適宜固化材、補強繊維材、および増粘材が混入されている。
【0044】
この熱伝導性材料は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料としており、この主材料は、固化するまでの間は流動性を維持している。主材料に混入される副材料は、たとえば固形の金属材料となるが、流動性を有する主材料に混入されることにより、主材料にほぼ均等に混合される。
【0045】
ここで、冷熱伝導部22は、土質材料のほかに熱伝導率が高い副材料が混入された熱伝導性材料によって形成されているので、液化窒素の熱を効率よくケーシング17A内に伝達することができる。したがって、ケーシング17A内の泥水を効率よく凍結させることができる。よって、ケーシング17A内の泥水を短期間で凍結して止水を施すことができるので、スクリュ17Bの修理や交換といった作業を短期間で完了させることができる。
【0046】
このように、本発明に係る熱伝導性材料を用いることにより、高い熱伝導率を発揮することができるので、液化窒素の熱を地盤に効率よく伝熱することができる。このような冷熱伝導材によって冷却配管を流通する液化窒素の冷熱が排泥管に伝熱されるため、地中埋設物における地下水の流入を阻止するために、泥水を短期間で凍結して止水を施すことができ、もって工期の短縮を図ることができる。
【0047】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。図4は、第二の実施形態に係る凍結止水装置が適用されるシールド掘進機の側断面図、図5はジベルの取り付け工程を説明する工程図である。
【0048】
図4に示すように、本実施形態に係る凍結止水装置が適用されるシールド掘進機10は、いわゆる泥水式シールド掘進機である。このシールド掘進機10は、上記第一の実施形態で示したシールド掘進機1と比較して、排泥管の構成が主に異なっている。上記第一の実施形態で示したシールド掘進機1では、排泥管がスクリュコンベアであったのに対して、本実施形態に係るシールド掘進機10では、排泥管18はスクリュが設けられていない管体である。その他の構成は、上記第一の実施形態で説明したシールド掘進機1と同様の構成を有している。
【0049】
続いて、凍結止水装置2について説明する。本実施形態で用いられる凍結止水装置2は、上記第一の実施形態と同様、冷却配管となるフレキシブルホース21が排泥管18の周囲に巻き付けられている。ただし、図4では、フレキシブルホースの図示は省略している。また、排泥管18におけるフレキシブルホース21が巻きつけられている位置には、冷熱伝導部22が形成されている。冷熱伝導部22を構成する熱伝導性材料は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料としている。この主材料に主材料よりも熱伝導率が高い副材料が混入されて熱伝導性材料が構成されている。
【0050】
さらに、本実施形態に係る凍結止水装置2は、複数のスタッドジベル23が設けられている。スタッドジベル23は、排泥管18の外周面に固定されたナット24にねじ込まれ、その先端が排泥管18の内部に突出するようにして設けられている。
【0051】
スタッドジベル23の取り付け手順は、図5に示すようにすることがでる。スタッドジベル23を取り付ける際には、まず、図5(a)に示すように、排泥管18の外周面にナット24を溶接Yによって固定する。
【0052】
次に、図5(b)に示すように、ナット24の孔の延長位置における排泥管18の外周部に孔をあける。このとき、排泥管18に孔をあけると、排泥管18内の泥水が若干噴出する可能性があるが、孔は微小なものであるので、その噴出量も微小である。また、孔があいたら即座にその孔に仮蓋をすることにより、泥水の噴出を防止することができる。
【0053】
それから、図5(c)に示すように、ナット24に対してスタッドジベル23をねじ込み、そのまま排泥管18内まで貫通させる。そして、スタッドジベル23の先端部を排泥管18の内部に突出させる。このようにしてスタッドジベル23の取り付けが済んだら、図4に示すように、フレキシブルホース21を排泥管18に巻き付け、さらに冷熱伝導部22を形成する。
【0054】
泥水式シールド掘進機10では、土圧式シールド掘進機1と異なり、スクリュコンベアが設けられていないことから、地山からの水圧を泥水の凍結体と排泥管18との凍着力によって受けることが要求される。したがって、その分高い凍着力が要求される。この点、本実施形態に係る凍結止水装置2では、凍結体の凍着力を高めるためのスタッドジベル23を設けている。このため、排泥管18内の泥水を凍結させた際、泥水の凍結体の凍着力を高めることができ、地山の水圧に高い凍着力をもって対抗することができる。なお、このようなジベルは、泥土圧式シールド掘進機に設けることもできる。
【0055】
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。図6は、パイプルーフ工法の概要を示す断面図、図7は第一シールドトンネルのエントランスパイプ部分の側面図、図8はその推進管を挿入する前の断面図である。本実施形態に係る凍結止水装置は、パイプルーフ工法を行う際に用いられる。
【0056】
図6に示すように、パイプルーフ工法では、シールド掘進機を地中で掘進させて、2本のシールドトンネルT1、T2を設け、これらの並設されたシールドトンネルT1,T2同士の間に、複数の推進管3を掛け渡すものである。図6に示す例では、推進管3は1本のみ描かれているが、推進管3は、シールドトンネルT1,T2の掘進方向に離間して多数設けられている。この推進管3を山止めに用い、推進管3内を掘削することによって、シールドトンネルT1,T2の間に地下構造物などを設けるものである。
【0057】
図7に示すように、第一シールドトンネルT1における外壁となるセグメントSには、推進管3を発進させる際の発進口となる本発明の開口部であるエントランスパイプ31が設けられている。エントランスパイプ31は、第一シールドトンネルT1の半径方向に沿って配設された中空の円筒形状をなしている。エントランスパイプ31における後端側の内側面には、止水ブラシ32が設けられている。推進管3が発進する前は、エントランスパイプ31の先端部は、外殻33によって閉塞されている。
【0058】
また、推進管3の先端部には、推進機34が取り付けられている。この推進機34によって地盤を掘削しながら、推進管3を地盤内に押し込んでいく。エントランスパイプ31は、推進管3が外殻33を先端の推進機34で切削しながら貫通し、さらに地中を推進する際、地下水や土砂が推進管の周囲から第一シールドトンネルT1内に流入するのを阻止するために設置されている。そのために、エントランスパイプ31の後端部に止水ブラシ32がリング状に複数段取り付けられている。
【0059】
本実施形態に係る凍結止水装置2は、図9に示すように、エントランスパイプ31に取り付けられる。エントランスパイプ31には、その外側に排水バルブ35が設けられており、エントランスパイプ31内に地下水などが流入した場合には、この排水バルブ35を開放することにより、排水が可能となるようにされているが、さらなる止水が必要な場合に、エントランスパイプ31内の土砂や地下水などを凍結止水装置2が作動される。
【0060】
凍結止水装置2におけるフレキシブルホース21は、エントランスパイプ31の外側面に巻き付けられている。このエントランスパイプ31におけるフレキシブルホース21が巻き付けられている位置に、冷熱伝導部22が設けられる。また、フレキシブルホース21の一端部は、図示しないタンクに接続され、このタンクから液化窒素が供給される。
【0061】
以上の構成を有する本実施形態に係る凍結止水装置2においては、上記第一の実施形態と同様、冷熱伝導部22は、土質材料のほかに熱伝導率が高い副材料が混入された熱伝導性材料によって形成されているので、液化窒素の熱を効率よくエントランスパイプ31内に伝達することができる。したがって、エントランスパイプ31内の泥水を効率よく凍結させることができる。よって、エントランスパイプ31内の泥水を短期間で凍結して止水を施すことができるので、作業を短期間で完了させることができる。よって、地中埋設物における地下水の流入を阻止するために、泥水を短期間で凍結して止水を施すことができ、もって工期の短縮を図ることができる。
【0062】
ところで、エントランスパイプ31内の凍結止水を行う状態となっているのは、推進管3やエントランスパイプ31における止水ブラシ32の補修などを行う場合である。したがって、この間、推進管3の推進は中止している。このため、図9に示すように、推進管3の後端部に位置するエントランスパイプ31内に冷却部材40を別途配設する態様とすることもできる。冷却部材40は、管状の本体部41を備えている。本体部41の外径は、エントランスパイプ31の内径よりもわずかに小さくされており、エントランスパイプ31に挿入可能とされている。この本体部41の内側には、フレキシブルホース21がその内壁に沿って配設され、その表面に冷熱伝導部22が形成されている。こうして、フレキシブルホース21は、本体部41の内面に配設され冷熱伝導部22によって覆われている。
【0063】
このような冷却部材40をエントランスパイプ31に代えて推進管3に装着することにより、エントランスパイプ内の土砂をより早期に凍結させることができる。
【0064】
また、上記各実施形態では、スクリュコンベア17、排泥管18、エントランスパイプ31内の土砂を凍結させる凍結止水装置2を設ける態様について説明したが、凍結止水装置2によって凍結させた土砂を解凍させる解凍部材を設ける態様とすることもできる。その例を図1に示す凍結止水装置の変形例として、図10に示して説明する。この例に係るシールド掘進機1には、凍結止水装置2のほかに、温水用フレキシブルホース25が設けられている。温水用フレキシブルホース25は、図示しない温水タンクに接続されており、この温水タンクから温水用フレキシブルホース25に対して温水が供給される。
【0065】
このように、凍結止水装置2によって土砂を凍結させ、スクリュコンベア17の補修を行った後は、早期に凍結した土砂を解凍することにより、掘削作業を早期に再開することができる。ここで、解凍部材が設けられていることにより、凍結した土砂を短時間で解凍することができるので、工期の短縮化に貢献することができる。
【0066】
また、上記各実施形態では、管体として、地中埋設物における管体であるスクリュコンベア、排泥管、およびエントランスパイプを例として説明しているが、たとえば地上などで通常に用いられる配管の内側を凍結させる際にも、本発明の冷凍止水装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第一の実施形態に係る凍結止水装置が適用されるシールド掘進機の側断面図である。
【図2】シールド掘進機で掘削・形成されたシールドトンネルの側断面図である。
【図3】凍結止水装置2の取り付け手順を説明する工程図である。
【図4】第二の実施形態に係る凍結止水装置が適用されるシールド掘進機の側断面図である。
【図5】ジベルの取り付け工程を説明する工程図である。
【図6】パイプルーフ工法の概要を示す断面図である。
【図7】第一シールドトンネルのエントランスパイプ部分の側面図である。
【図8】エントランスパイプ部分の推進管を挿入する前の断面図である。
【図9】エントランスパイプに冷凍部材を挿入した状態の断面図である。
【図10】第一の実施形態に係る凍結止水装置が適用されるシールド掘進機解凍部材を設けた例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…(土圧式)シールド掘進機
2…凍結止水装置
3…推進管
10…(泥水式)シールド掘進機
11…シールド機本体
12…カッタヘッド
13…隔壁
14…チャンバ
17…スクリュコンベア
17A…ケーシング
17B…スクリュ
18…排泥管
21…フレキシブルホース
22…冷熱伝導部
23…スタッドジベル
25…温水用フレキシブルホース
31…エントランスパイプ
32…止水ブラシ
33…外殻
34…推進機
40…冷却部材
S…セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体内における流体を凍結させて、前記管体内を止水する凍結止水装置であって、
前記管体内に流通する流体を凍結させるブラインが流通する冷却配管が前記管体の周囲に配設され、前記管体との間で前記冷却配管を覆う冷熱伝導材が配設されており、
前記冷熱伝導材は、土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料とし、前記主材料よりも熱伝導率が高い副材料が前記主材料に混入されてなることを特徴とする凍結止水装置。
【請求項2】
前記管体は、地中に埋設された地中埋設物と地中とを連通しており、
前記冷却配管を流通するブラインの冷熱で管体内の流体を凍結させることにより、前記地中埋設物に対する地中からの地下水の流入を阻止する請求項1に記載の凍結止水装置。
【請求項3】
前記地中埋設物は、地盤を掘進するシールド機本体を有し、前記シールド機本体における掘進方向前方位置に、地盤を掘削するカッタヘッドと、前記カッタヘッドにより掘削された土砂が流入するチャンバと、が形成されたシールド掘進機であり、
前記管体は、前記チャンバに連通し、前記チャンバ内の土砂を排出する排泥管である請求項2に記載の凍結止水装置。
【請求項4】
前記排泥管における前記冷却配管が設けられた部位に、前記排泥管内で流体が凍結して形成された凍結体の凍着力を増加させるジベルが設けられている請求項3に記載の凍結防止装置。
【請求項5】
前記地中埋設物は、地中に形成されたトンネルの外壁であり、前記外壁には、地中に向けて推進管を発進させ、または地中からの推進管を受け入れる開口部が形成されており、
前記冷却配管および前記冷熱伝導材が、前記開口部に形成されている請求項2に記載の凍結止水装置。
【請求項6】
止水を行う際に前記開口部に取り付けられ、管状の本体部を有し、前記本体部の内側面に沿って前記冷却配管が配設された冷却部材が配設されている請求項5に記載の凍結止水装置。
【請求項7】
前記副材料が金属材料または炭素材料である請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の凍結止水装置。
【請求項8】
前記副材料が粉状、粒状、塊状、および繊維状のいずれかの形状とされている請求項1〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の凍結止水装置。
【請求項9】
前記土質材料が膨潤性ベントナイトであり、
前記液体が可塑剤である請求項1〜請求項8のうちのいずれか1項に記載の凍結止水装置。
【請求項10】
前記主材料に固化材、補強繊維材、および増粘材のうちの少なくとも1つが混入されている請求項1〜請求項9のうちのいずれか1項に記載の凍結止水装置。
【請求項11】
管体内における流体を凍結させて、前記管体内を止水する凍結止水方法であって、
冷却配管を前記管体の周囲に配設し、
土質材料に液体を加えてなる塑性材料を主材料とし、前記主材料よりも熱伝導率が高い副材料が前記主材料に混入されてなる冷熱伝導材を前記管体との間で前記冷却配管を覆うように配設し、
前記冷却配管にブラインが流通させることにより、前記管体内に流通する流体を凍結させて、前記管体内を止水することを特徴とする凍結止水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−247235(P2007−247235A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71082(P2006−71082)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】