説明

凍結融解安定性を有するラテックスバインダー、水性コーティング及び塗料並びにそれらの使用方法

優れた凍結融解安定性、開放時間、耐汚染性、低温フィルム形成、耐発泡性、耐ブロッキング性、接着性、水感度及び低voc含有量を有するラテックスポリマー及び水性コーティング組成物が開示される。ラテックスポリマー及び水性コーティング組成物としては、アルコキシ化化合物と共重合又は混合されるモノマーコポリマーから誘導されるラテックスポリマー、例えばアルコキシ化トリスチリルフェノール又はアルコキシ化トリブチルフェノールを含む。また、少なくとも1つのラテックスポリマー、少なくとも1つの顔料、水及び少なくとも1つの凍結融解添加剤を含む水性コーティング組成物が提供される。典型的には、凍結融解添加剤が、ポリマーの約1.3%、2%、4%、75%、10%又は20質量%を超える量で加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年1月18日に出願された米国仮出願第61/022,206号、2008年1月21日に出願された米国仮出願第61/022,443号、及び2008年11月21日に出願された米国仮出願第61/199,936号(全て参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する2009年1月16日に出願された米国出願第12/321,256号(参照により本明細書に援用される)の継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、塗料及び紙コーティング組成物などの水性コーティング組成物の凍結融解安定性及び開放時間を向上させるための特定の種類のアルコキシ化化合物、例えば、アルコキシ化トリスチリルフェノール及びアルコキシ化トリブチルフェノールの使用に関する。具体的には、本発明は、水性ラテックス分散体、水性ラテックスバインダー及び水性ラテックス塗料の凍結融解安定性のための特定の反応性アルコキシ化化合物系モノマー、界面活性アルコキシ化化合物界面活性剤、及び界面活性アルコキシ化化合物添加剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ラテックス塗料が、内外部、並びに平面、半光沢及び光沢塗装を含む様々な塗装のために使用される。しかし、塗料及び水性ラテックス分散体、特に低VOC塗料及びラテックス分散体は、凍結融解安定性の欠如により悪影響を受けている。
【0004】
凍結融解プロセス、不安定化機構、及びポリマー構造を含むラテックス凍結融解(本明細書では「F/T」という場合がある)安定性は、1950年から継続的に研究されている。Blackley、D.C.の「Polymer Lattices−Science and Technology、2nd Ed.,Vol.1,Chapman & Hall,1997」では、凍結によるラテックス類のコロイド不安定化の包括的レビューが与えられている。この凍結プロセスは、氷晶の形成につながる温度の減少によって始まる。氷晶構造は、未凍結水中のラテックス粒子濃度を徐々に増加させる。最終的に、ラテックス粒子は、氷晶構造を成長させる圧力で互いに接触させられて、粒子凝集又は粒子間融合を起こす。凍結融解安定性を有する水性媒体又はラテックス塗料中の安定なラテックス分散液を形成するために、様々な取り組みが採用された。不凍剤(例えば、グリコール誘導体)の追加が、凍結融解安定性を得るためにラテックス塗料へ適用された。したがって、ラテックス塗料は、それらが凍結条件に供された後でさえも、その塗料を使用できるようにするために不凍剤を含む。典型的な不凍剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0005】
Bosen,S.F., Bowles、W.A., Ford,E.A.,及びPerson,B.D.の「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、5th Ed.、Vol.A3,VCH Verlag,pages 23−32,1985」の「Antifreezes」を参照されたい。しかし、低又は無VOCの要求とは、使用される場合があるグリコール濃度を減らすか、又は無くさなければならないことを意味する。Aslamazova,T.R.の「Colloid Journal,Vol.61, No.3,1999,pp.268−273」では、アクリレートラテックス類の凍結抵抗性が研究され、ラテックス粒子相互作用の位置エネルギーに対する静電的寄与の役割が明らかになった。コロイド表面上の静電作用を用いると、帯電したラテックス粒子間のクーロン反発力の相互作用が、より高い位置エネルギーを導く。この電気的作用は、凍結及び融解プロセスにおいてラテックス粒子を安定化する。
【0006】
Rajeev Farwahaらは、共重合可能な両性界面活性剤を開示し、そしてその共重合可能な両性界面活性剤を含むラテックスコポリマーがラテックス塗料に凍結融解安定性を与えることを開示した(米国特許第5,399,617号)。
【0007】
Cheng−Le Zhaoらは、重合可能なアルコキシ化界面活性剤を含むラテックスポリマーを開示し、そしてその低VOC水性コーティングが、優良な凍結融解安定性を有することを開示した(米国特許第6,933,415号明細書)。
【0008】
Rajeev Farwahaらは、安定な凍結融解ラテックスを得るためにモノマーに長鎖ポリエチレングリコール構造を組み込むことを開示した(米国特許第5,610,225号)。
【0009】
Masayoshi Okuboらは、エチレン性不飽和モノマーを含むラテックスポリマーの凍結融解安定性を開示した(米国特許第6,410,655号明細書)。
【0010】
不凍剤として使用される添加剤は、それらが揮発性有機化合物(VOC)であるために、それらの目的に有効であるが、ますます好ましくなくなる。ラテックス塗料の基材への塗布後、VOCは徐々に周囲へ揮発する。
【0011】
コーティング中の揮発性有機化合物(VOC)の量の減少を要求している厳格な環境立法下では、VOC含有物を含まないか、又は実質的に減少させている塗料配合物(それは、とりわけ、融合剤及び凍結融解剤を含み得る)を有することが好ましい。したがって、ラテックスバインダー製造業者が、塗料及びコーティング工業界の要求を満たす低VOCバインダーを開発しなければならない。しかし、低VOCコーティング及び塗料は、その業界に設けられたコーティング性能標準を満たすか、又は越えなければならない。
【0012】
建築コーティングのための従来のラテックスバインダーにおいて、そのガラス転移温度は10℃〜約40℃である。しかし、そのような建築コーティングは、そのようなラテックスバインダーを軟化させる(すなわち、10℃を超えて約40℃までの範囲のTgを比較的有するラテックスバインダーを軟化させる)ための融合助剤又は不凍剤を必要とし、それらを含むことが多く、それらの両方は、典型的には高VOC溶媒である。したがって、より高いTgラテックスバインダーを有するこれらの従来の建築コーティングは、溶媒なしで低VOCになるように配合されることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
低VOC用途の(すなわち、低Tg)バインダーのために、その平均Tgは、0℃付近であるか、又は0℃を下回る。しかし、低Tgを有するラテックスバインダーは、凍結/融解サイクル並びに機械的せん断に供されるときに、粗粒の原因となる。得られた塗膜は、十分に乾燥した後でさえも、より軟らかく、より粘着性であり、ブロッキング及び吸塵効果の影響を受けやすい。また、そのような低Tgラテックスバインダー及び得られたラテックス塗料は、安定ではなく、そして冷えている環境の貯蔵又は輸送プロセスにおいてゲル化する。低Tgラテックスバインダー及び低VOC塗料の凍結融解安定性は、輸送、貯蔵、及び実際の適用にとって非常に重要である。したがって、ゼロ又は低VOCの要求を満たし、同時にラテックス塗料及びラテックス粒子分散体の凍結融解安定性を犠牲にすることなく、良好な機械的性能及びフィルム性能を提供するエマルションポリマー技術を用いて、ラテックス塗料及びラテックス粒子分散体を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明は、とりわけ、ラテックスバインダー、塗料及びコーティングの凍結融解安定性、並びに開放時間、低温フィルム形成、耐汚染性、フィルム光沢、分散性、耐隠蔽及び擦傷性、耐発泡性、耐ブロッキング性、接着剤及び水感度などの他の性質を向上させるために、かさ高い疎水性基を有するアルコキシ化化合物(例えば、アルコキシ化トリスチリルフェノール又はアルコキシ化トリブチルフェノール)の特定の種類を使用することに関する。ラテックス分散体及び塗料配合物における凍結融解プロセスのうちの融解プロセス中、高Tgを有するラテックス粒子は、容易に正常な状態に戻る一方で、比較的低いTgを有する粒子は、ゲル化する凝集又は融合状態から戻ることができないと分かっている。
【0015】
作用機序に拘束されるものではないが、本発明は、より大きな疎水性基の立体効果を用いて、そのラテックス粒子を部分的に安定化して、軟らかいラテックス粒子の表面に保護層を形成することが理論化されている。ラテックス粒子上へ吸着若しくはグラフトされているか、又はラテックス粒子中へ共重合されている大きな疎水性基は、これらのラテックス粒子が他の軟らかいラテックス粒子の表面に到達しないようにして、軟らかいラテックス粒子間の分離距離を増加させる。アルコキシ化化合物鎖から成る界面活性剤に由来するアルキレン(例えば、エチレンオキシド単位)も水性媒体と相互作用する層を形成する。
【0016】
本発明によれば、アルコキシ化化合物を含む水性コーティング組成物(例えば、ラテックス塗料、ラテックス分散液)は、グリコール、融合助剤及び高VOC成分などの他の不凍剤をほとんど又は全く用いずに、より典型的には、不凍剤なしで、優れた凍結融解安定性を有するアルコキシ化化合物を含む水性コーティング組成物(例えば、ラテックス塗料、ラテックス分散液)が製造されることができる。一般に、凍結融解安定性又は「凍結融解安定性である」とは、その組成物/配合物が3回以上のF/Tサイクル、典型的には5回以上のF/Tサイクルにおいて、ゲル化しないことを意味すると理解されたい。
【0017】
アルコキシ化化合物が、ラテックスバインダー、塗料及びコーティングの凍結融解安定性を向上させるための複数の方法に利用されることができる。本発明は、ラテックスポリマーを形成するために、乳化重合中に、重合可能な反応性アルコキシ化モノマーを反応物として利用してよい。本発明は、ラテックスポリマーを形成するために、乳化重合中に、界面活性剤(乳化剤)として本明細書で説明された1つ以上の界面活性アルコキシ化化合物を利用してよい。本発明は、ラテックスポリマー含有水性分散体又は濃縮体への添加剤として界面活性アルコキシ化化合物を利用してよい。
【0018】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの第一モノマー、及び構造式IA:
【化1】

{式中、R、R2及びR3は:独立して、−H、tert‐ブチル、ブチル、イソブチル、
【化2】

から選択され、Xは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基から選択される二価炭化水素基であり、nは1〜100の整数であり、そしてRはエチレン性不飽和基を含む。}
を有する少なくとも1つの重合可能な反応性アルコキシ化第二モノマーから誘導されたラテックスポリマーである。
【0019】
一実施形態では、Rは、アクリレート、C〜Cアルキルアクリレート、アリル、ビニル、マレエート、イタコネート(イタコン酸エステル)又はフマレートであることができる。また、Rは、アクリロ、メタクリロ、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアリルアミノ、アリルエーテル、ビニルエーテル、α−アルケニル、マレイミド、スチレニル、及び/又はα−アルキルスチレニル基から選択されることができる。
【0020】
別の実施形態では、Rは、化学構造:RCH=C(R)COO−{式中、RがHであるならば、RはH、C〜Cアルキル、又は−CHCOOXであり;Rが−C(O)OXであるならば、RはH又は−CHC(O)OXであり;又はRがCHであるならば、RはHであり;そしてXはH又はC〜Cアルキルである。}を有する。別の実施形態では、Rは、化学構造:−HC=CYZ又は−OCH=CYZ{式中、Yは、H、CH、又はClであり;Zは、CN、Cl、−COOR、−C、−COOR、又は−HC=CHであり;Rは、C〜Cアルキル又はC〜Cヒドロキシアルキルであり;Rは、H、Cl、Br、又はC〜Cアルキルである。}を有することができる。
【0021】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの第一モノマー、及び構造式IB:
【化3】

{式中、nは約1〜約100の整数であり、そしてRは、H及びC〜Cアルキルから選択される。}
を有する少なくとも1つの第二モノマーから誘導されるラテックスポリマーである。
【0022】
一実施形態では、nは、約3〜約80、典型的には約10〜約60、より典型的には約20〜約50の整数である。一実施形態では、少なくとも1つの第一モノマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルから成る群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーを含むことができる。別の実施形態では、ラテックスポリマーは、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ウレイドメタクリレート、酢酸ビニル、分岐鎖三級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン、又はC〜C共役ジエンから選択される1つ以上のモノマーから誘導されることができる。
【0023】
別の実施形態では、本発明の組成物は凍結融解安定性であり、そのポリマーは、約−15℃〜約15℃、典型的には約−15℃〜約12℃、より典型的には約−5℃〜約5℃、さらに典型的には約−5℃〜約0℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0024】
別の実施形態では、本発明のポリマーは、約200nm未満の平均粒径(平均粒子直径D50という場合がある)、より典型的には約190nm未満の平均粒径、最も典型的には約175nm未満の平均粒径を有する。
【0025】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、凍結融解安定性であり、そのポリマーは、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有することができる。
【0026】
別の態様では、本発明は:(a)上記のような又は本明細書のいずれかで説明されたようなラテックスポリマー;及び(b)水を含むラテックスコーティング組成物である。このラテックスコーティング組成物は、限定されるものではないが、殺生剤、界面活性剤、顔料、分散剤などを含む他の添加剤/含有物を含むことができると理解されたい。このラテックスコーティング組成物は、構造式IC:
【化4】

{式中、nは1〜100の整数であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、又は四級アンモニウムイオンであり、そしてMは、限定されるものではないが、H、Na、NH、K又はLiを含むカチオンである。}
を有するエトキシ化トリスチリルフェノールを含む凍結融解添加剤をさらに含むことができる。
【0027】
一実施形態では、nは約1〜40の整数である。
【0028】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、組成物に凍結融解安定性を与えるのに有効な量の凍結融解添加剤を含む。一実施形態では、この有効量は、ポリマーの約1.3質量%を超える量、典型的にはポリマーの約1.6質量%を超える量である。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約2質量%を超える量の、典型的にはポリマーの約4質量%を超える量の凍結融解添加剤を含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約7.5質量%を超える量の、典型的にはポリマーの約8質量%を超える量の凍結融解添加剤を含む。さらに別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約10質量%を超える量の凍結融解添加剤を含む。さらに別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約20質量%を超える量の凍結融解添加剤を含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約1.6質量%〜7.5質量%の量の凍結融解添加剤を含む。
【0029】
一実施形態では、前述のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性であり、そのラテックスポリマーは、約−20℃〜約12℃、典型的には約−5℃〜約5℃、より典型的には約−5℃〜約0℃のガラス転移温度(Tg)を含む。別の実施形態では、前述のラテックスコーティング中のラテックスポリマーは、約200nm未満、より典型的には約190nm未満、最も典型的には約175未満の平均粒径を有する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、(1)少なくとも1つの第一モノマーに(2)少なくとも1つの第二モノマーを共重合させる工程であって、該第二モノマーは、構造式IA:
【化5】

{式中、R、R及びRは、独立して:−H、tert‐ブチル、ブチル、イソブチル、
【化6】

から選択され、Xは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基から選択される二価炭化水素基であり、nは1〜100の範囲にあり、そしてRは、限定されるものではないが、アクリレート、C〜Cアルキルアクリレート、アリル、ビニル、マレエート、イタコネート又はフマレートを含むエチレン性不飽和基である。}
を有する重合可能な反応性トリスチリルフェノールである工程を含む、ラテックスポリマーの製造方法である。
【0031】
また、Rは、アクリロ、メタクリロ、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアリルアミノ、アリルエーテル、ビニルエーテル、α−アルケニル、マレイミド、スチレニル、及び/又はα−アルキルスチレニル基から選択されることができる。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、(1)少なくとも1つのラテックスモノマーに(2)構造式IB:
【化7】

{式中、nは1〜100の整数であり、そしてRは、H及びC〜C10アルキル、典型的にはC〜Cアルキルから選択される。}
を有する少なくとも1つの重合可能な反応性トリスチリルフェノールを共重合させる工程を含む、ラテックスポリマーの製造方法である。
【0033】
一実施形態では、前述の方法の一方又は両方において、ポリマーが、約−20℃〜約20℃、より典型的には約−15℃〜約12℃、最も典型的には約−5℃〜約0℃のガラス転移温度(Tg)を含む場合には、そのポリマーの水性分散体は凍結融解安定性である。別の実施形態では、上述の方法の1つ以上に利用されるポリマーは、約200nm未満の平均粒径、より典型的には約190nm未満の平均粒径、最も典型的には約175nm未満の平均粒径を含む。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、(1)少なくとも1つの第一モノマーに(2)構造式IB:
【化8】

{式中、nは1〜100の範囲にあり、Rは、H及びC〜Cアルキルから成る群から選択される。}
を有する少なくとも1つの第二モノマーを共重合させる工程を含む、凍結融解安定性ラテックスポリマーの製造方法であって、該ポリマーは、約−15℃〜約12℃のガラス転移温度(Tg)及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する、前記方法である。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、(a)少なくとも1つのラテックスポリマー;(b)少なくとも1つの顔料;(c)水;及び(d)該ポリマーの約1.6質量%を超える量の、構造式IIA:
【化9】

{式中、nは1〜100の整数であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、又は四級アンモニウムイオンであり、そしてMは、限定されるものではないが、H、Na、NH、K又はLiを含むカチオンである。}
を有するエトキシ化トリスチリルフェノールを含む凍結融解添加剤;を含む低VOCラテックスコーティング組成物である。
【0036】
一実施形態では、nは約1〜40の整数である。
【0037】
一実施形態では、凍結融解添加剤は、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約2質量%を超える量で存在する。別の実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約4質量%を超える量で存在する。さらに別の実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約7.5質量%を超える量で存在する。さらなる実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約20質量%を超える量で存在する。さらなる実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約1.6質量%〜7.5質量%の量で存在する。
【0038】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物中の少なくとも1つのラテックスモノマーは、約−15℃〜約12℃、典型的には約−5℃〜約5℃、より典型的には約−5℃〜約0℃のガラス転移温度(Tg)を含む。
【0039】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物中の少なくとも1つのラテックスポリマーは、約200nm未満、典型的には約190nm未満、より典型的には約175nm未満の平均粒径を含む。
【0040】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる。
【0041】
さらなる実施形態では、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0042】
別の実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に有効量(一実施形態では、それは、ポリマーの約2質量%を超える)で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0043】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約4質量%を超える量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0044】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約7.5質量%を超える量で存在する場合と、該ポリマーは、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、該ラテックスコーティング組成物は、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0045】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約20質量%を超える量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0046】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約1.6質量%〜7.5質量%の量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は:(a)少なくとも1つのラテックスポリマー;(b)少なくとも1つの顔料;(c)水;及び(d)該ポリマーの約1.6質量%を超える量の、構造式IIB:
【化10】

{式中、nは1〜100の整数であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、又は四級アンモニウムイオンであり、そしてMは、限定されるものではないが、H、Na、NH、K又はLiを含むカチオンである。}
を有するエトキシ化トリブチルフェノールを含む凍結融解添加剤;を含むラテックスコーティング組成物である。
【0048】
一実施形態では、nは約1〜40の整数である。
【0049】
一実施形態では、凍結融解添加剤は、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約2質量%を超える量で存在する。別の実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約4質量%を超える量で存在する。さらに別の実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約7.5質量%を超える量で存在する。さらなる実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約20質量%を超える量で存在する。さらなる実施形態では、凍結融解添加剤は、ポリマーの約1.6質量%〜7.5質量%の量で存在する。
【0050】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物中の少なくとも1つのラテックスモノマーは、約−15℃〜約12℃、典型的には約−5℃〜約5℃、より典型的には約−5℃〜約0℃のガラス転移温度(Tg)を含む。
【0051】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物中の少なくとも1つのラテックスモノマーは、約200nm未満、典型的には約190nm未満、より典型的には約175nm未満の平均粒径を有する。
【0052】
一実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる。
【0053】
さらなる実施形態では、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0054】
別の実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約2質量%を超える量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0055】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約4質量%を超える量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0056】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約7.5質量%を超える量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0057】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約20質量%を超える量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0058】
さらなる実施形態では、凍結融解添加剤が、ラテックスコーティング組成物中に、ポリマーの約1.3質量%〜7.5質量%の量で存在する場合と、ポリマーが、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有する場合と、ラテックスコーティング組成物が、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる場合には、本発明のラテックスコーティング組成物は凍結融解安定性である。
【0059】
本発明の好ましい及び代替的な実施形態の両方を記載している下記の詳細な説明を検討することによって、本発明のこれらの及び他の性質及び利点が、当業者にとって、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】乳化重合中に様々な乳化界面活性剤を使用したときの(出願第’514号明細書から調製された)ラテックスバインダーのガラス転移温度(Tg)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、ラテックスバインダー及び塗料の凍結融解安定性を向上させるためのエチレンオキシド鎖を提供された特定の種類のアルコキシ化化合物(例えば、アルコキシ化トリスチリルフェノール及びアルコキシ化トリブチルフェノール)の使用に関する。この種類のアルコキシ化化合物は、さらに他の性質、例えば、とりわけ、開放時間、耐汚染性、フィルム光沢、分散性、耐隠蔽及び擦傷性、低温フィルム形成、耐発泡性、耐ブロッキング性、接着性及び水感度を向上させることができる。
【0062】
本明細書では、用語「アルキル」とは、直鎖、分岐鎖又は環状でよい飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシルなどを意味する。
【0063】
本明細書では、用語「シクロアルキル」とは、1つ以上の環状アルキルを含む飽和炭化水素基、例えば、シクロペンチル、シクロオクチル、及びアダマンタニルなどを意味する。
【0064】
本明細書では、用語「ヒドロキシアルキル」とは、アルキル基、より典型的にはヒドロキシル基で置換されたアルキル基、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシデシルなどを意味する。
【0065】
本明細書では、用語「アルキレン」とは、限定されるものではないが、メチレン、ポリメチレン、及びアルキル置換化ポリメチレン基を含む二価の非環式飽和炭化水素基、例えば、ジメチレン、テトラメチレン、及び2−メチルトリメチレンなどを意味する。
【0066】
本明細書では、用語「アルケニル」とは、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む不飽和直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基、例えば、エテニル基、1−プロペニル、2−プロペニルなどを意味する。
【0067】
本明細書では、用語「アリール」とは、1つ以上の6員炭素環(その環では、不飽和が3つの共役二重結合により表されてよく、その環の炭素の1つ以上が、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、又はアミノで置換されていてよい)を含む一価の不飽和炭化水素基、例えば、フェノキシ、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、クロロフェニル、トリクロロメチルフェニル、アミノフェニルなどを意味する。
【0068】
本明細書では、用語「アラルキル」とは、1つ以上のアリール基で置換されたアルキル基、例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、トリフェニルメチルなどを意味する。
【0069】
本明細書では、有機基に関する専門用語「(C〜C)」{ただし、n及びmは、それぞれ整数である。}は、その基が、1個の基当たりn個〜m個の炭素原子を含んでよいことを示す。
【0070】
本明細書では、専門用語「エチレン性不飽和」とは、終端(つまり、例えば、α、β)炭素−炭素二重結合を意味する。
【0071】
本発明は、従来の水性コーティング組成物と比べて低いVOC含有量並びに優れた凍結融解安定性及び開放時間の性質を有するラテックスポリマー及びラテックス分散体、並びにそれらの使用の方法を含む。そのようなラテックスポリマーは、特定の種類のアルコキシ化化合物を共重合されているか、又は混合されている少なくとも1つのラテックスを含むことができる。そのラテックスは、典型的には20℃未満、より典型的には15℃未満、さらに典型的には5℃未満のTgを有する。より典型的には、そのラテックスは、約−15℃〜約12℃、より典型的には約−5℃〜約5℃、さらに典型的には−5℃〜約0℃の範囲のTgを有する。一実施形態では、本発明のラテックスポリマーは、約1,000〜5,000,000、典型的には5,000〜2,000,000の重量平均分子量を有する。別の実施形態では、本発明のラテックスポリマーは、約10,000〜250,000の重量平均分子量を有する。
【0072】
本発明は、従来の水性コーティング組成物と比べて低いVOC含有量並びに優れた凍結融解安定性及び開放時間の性質を有する水性組成物(例えば、水性コーティング組成物)を提供する。本発明の水性組成物は、特定の種類のアルコキシ化化合物(例えば、アルコキシ化トリスチリルフェノール)を共重合されているか、又は混合されている少なくとも1つのラテックスを含む水性ポリマー分散体である。一般に、そのラテックスポリマーは、そのような水性組成物又は塗料中に、半光沢塗装のためには組成物の約15質量%〜約40質量%で存在し、そして艶消し塗料のためには組成物の約5質量%から約75質量%以下、典型的には約5質量%〜約50質量%で存在する。典型的には、本発明の塗料又は他の水性コーティングは、少なくとも1つの顔料をさらに含む。
【0073】
特定の種類のアルコキシ化化合物(例えば、アルコキシ化トリスチリルフェノール及び/又はトリブチルフェノール)の幾つかが、ラテックスバインダー及び塗料の凍結融解安定性を向上させるための複数の方法に利用されることができる。ラテックスコモノマー、ラテックスポリマー形成中に存在させることになる界面活性剤(乳化剤)としての界面活性アルコキシ化化合物、及び/又はラテックスポリマー若しくはコポリマーの水性分散体に対する添加剤としての界面活性アルコキシ化化合物を形成するために、本発明は、重合可能な反応性アルコキシ化モノマーを利用してよい。
【0074】
重合可能な反応性トリスチリルフェノールエトキシレート
一実施形態では、下記式IAの重合可能な反応性アルコキシ化(第二)モノマーが、(第一モノマーと)共重合されて、ラテックスポリマーの骨格になることができる。
【化11】

【0075】
式IA中、Bは、5又は6員シクロアルキル環(例えば、シクロヘキシル環)、
又は6員環を有する単環芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン環)である。
【0076】
式IA中、R、R及びRは、独立して:−H、ブチル、tert‐ブチル、イソブチル、
【化12】

から選択される。ただし、R、R及びRの1つは−Hであるか、又はR、R及びRのいずれも−Hではない。
【0077】
式IA中、Xは、C、C、又はCであるか、又はXは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基から選択される二価炭化水素基であり;nは1〜100の整数(例えば約4〜80又は8〜25)であり;そしてRはエチレン性不飽和基である。
【0078】
一実施形態では、nは4〜80の整数である。一実施形態では、nは4〜60の整数である。一実施形態では、nは10〜50の整数である。一実施形態では、nは10〜25の整数である。
【0079】
典型的には、Rとしては、アクリレート、又はC〜Cアルキルアクリレート、例えば、メタクリレート、アリル、ビニル、マレエート、イタコネート又はフマレートが挙げられ、典型的には、Rはアクリレート又はメタクリレートである。
【0080】
適切な重合性官能基Rとしては、例えば、アクリロ、メタクリロ、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアリルアミノ、アリルエーテル、ビニルエーテル、α−アルケニル、マレイミド、スチレニル、及びα−アルキルスチレニル基が挙げられる。
【0081】
例えば、適切な重合性官能基Rは、化学構造:RCH=C(R)COO−{式中、RがHであるならば、RはH、C〜Cアルキル、又は−CHCOOXであり;Rが−C(O)OXであるならば、RはH又は−CHC(O)OXであり;又はRがCHであるならば、RはHであり;そしてXはH又はC〜Cアルキルである。}を有する。
【0082】
例えば、他の適切な重合性官能基Rは、化学構造:−HC=CYZ又は−OCH=CYZ{式中、Yは、H、CH又はClであり;Zは、CN、Cl、−COOR、−C、−COOR、又は−HC=CHであり;Rは、C〜Cアルキル又はC〜Cヒドロキシアルキルであり;Rは、H、Cl、Br、又はC〜Cアルキルである。}を有する。
【0083】
典型的には、モノマーは、式IB:
【化13】

{式中、R、R、R、R、X及びnは、式IAの構造について定義された通りである。}
を有する。
【0084】
所望により、構造式IBに示される芳香族環は、飽和していてよい。例えば、そのような飽和モノマーは、HがR位にあるモノマーの形態を飽和させて、次に、他の上記で列挙したR基の1つで該R位のHを置換することにより、形成されることができる。
【0085】
一実施形態では、少なくとも1つのモノマーが、下記構造IB−1を有する第二モノマーと共重合されることができる。
【化14】

【0086】
式IB−1中、Rは、
【化15】

であり;
、R及びRは、それぞれ独立して、H、分岐鎖(C〜Cアルキル)、分岐鎖(C〜C)アルケン又はR−R−であり;
は、アリール又は(C〜C)シクロアルキルであり;
は、(C〜C)アルキレンであり;
は、二価の連結基、O、(C〜C)アルキレン、
【化16】

であるか、又は存在せず;
はH又はメチルであり;
はO又はNR10であり;
10はH又は(C〜C)アルキルであり;
nは2〜4の整数であり;そして
mは1〜100整数である。
【0087】
一実施形態では、R、R及びRは、独立して:−H、ブチル、tert‐ブチル、イソブチル、
【化17】

から選択される。
【0088】
一実施形態では、Rは、アクリレート、C〜Cアルキルアクリレート、アリル、ビニル、マレエート、イタコネート又はフマレートであることができる。一実施形態では、Rは、アクリロ、メタクリロ、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアリルアミノ、アリルエーテル、ビニルエーテル、α−アルケニル、マレイミド、スチレニル、及び/又はα−アルキルスチレニル基の少なくとも1つである。
【0089】
別の実施形態では、第二モノマーはエトキシ化トリブチルフェノールである。別の実施形態では、そのモノマーはエトキシ化トリスチリルフェノールである。下記の通り、重合可能な反応性エトキシ化トリスチリルフェノールは、構造式ICを有し、そして重合可能な反応性エトキシ化トリブチルフェノールは、構造式IC−1を有する:
【化18】

【化19】

{式中、nは、1〜100、例えば、4〜60又は8〜25の整数であり;そして
は、H、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cアルキル(例えば、CH又はC)の基の1つである。}
【0090】
したがって、重合可能な反応性エトキシ化トリスチリルフェノールモノマーは、重合のために、トリスチリルフェノール部分、アルキレンオキシド部分及び反応性置換又は非置換アクリル末端基を有する。同様に、重合可能な反応性エトキシ化トリブチルフェノールモノマーは、重合のために、トリブチルフェノール部分、アルキレンオキシド部分及び反応性置換又は非置換アクリル末端基を有する。所望により、構造式IC又はIC−1に示されたエチレンオキシド基は、それぞれ、アルコキシ化トリスチリルフェノール又はトリブチルフェノールを形成するために、上記で検討された−(OX)−基で置換されることができ、そして−C(O)−CHRCH末端基は、アリル、ビニル、マレエート、イタコネート又はフマレートで置換されることができる。
【0091】
他の用途のためのトリスチリルフェノールエトキシレートは、米国特許出願第6,146,570号、国際公開第98/012921号パンフレット及び国際公開第98/045212号パンフレット(これらは、参照により本明細書に援用される)により開示されている。
【0092】
所望により、式IC中のスチリル基の芳香族環は、飽和していてよい。
【0093】
IA、IB、IC及び/又はIC−1の重合可能な反応性アルコキシ化モノマーが共重合されて、ラテックスポリマーの骨格になるとき、反応性トリスチリルフェノール又はトリブチルフェノールモノマーが、コポリマーを形成するために使用されるモノマー100質量部当たり1〜20質量部であり、より典型的には、コポリマーを形成するために使用されるモノマー100質量部当たり2〜15、2〜8又は2〜6質量部である混合物から、そのラテックスポリマーは形成される。一実施形態では、式IC及びIC−1の両方の重合可能な反応性アルコキシ化モノマーが利用され、そして共重合されて、ラテックスポリマーの骨格になる。
【0094】
他のモノマー
重合性トリスチリルフェノールモノマー及び/又は重合性トリブチルフェノールモノマーに加えて、典型的には、水性コーティング組成物(例えば、塗料)に使用される少なくとも1つのラテックスポリマーが誘導される他のモノマーがある。この説明のために、ラテックスポリマーが誘導されることができるこれらの他のモノマーは、ラテックスモノマーと呼ばれる。典型的には、これらの他のラテックスモノマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルから成る群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーを含む。
【0095】
さらに、ラテックスポリマーを形成するための他のモノマーは、所望により、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ウレイドメタクリレート、酢酸ビニル、分岐鎖三級モノカルボン酸のビニルエステル(例えば、シェル・ケミカル(Shell Chemical)社から「VEOVA」の名で入手できるか、又はエクソンモービル・ケミカル(ExxonMobil Chemical)社により「EXXAR Neo Vinyl Esters」として販売されているビニルエステル)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びエチレンから成る群から選択される1つ以上のモノマーから選択されることができる。
【0096】
また、1,3−ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンなどのC〜C共役ジエンを含むことが可能である。典型的には、モノマーとしては、n‐アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートから成る群から選択される1つ以上のモノマーが挙げられる。典型的には、ラテックスポリマーは、(主モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)純アクリル;(主モノマーとして、スチレン並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)スチレンアクリル類;(主モノマーとして、酢酸ビニル並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)ビニルアクリル類;及び(主モノマーとして、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)アクリル化エチレン−酢酸ビニルコポリマーから成る群から選択される。
【0097】
また、当業者には容易に理解されるであろうが、モノマーは、アクリルアミド及びアクリロニトリルなどの他の主モノマー、並びにイタコン酸及びウレイドメタクリレートなどの1つ以上の官能性モノマーを含むことができる。特に好ましい実施形態では、ラテックスポリマーは、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルを含むモノマーから誘導されるアクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルコポリマーなどの純アクリルである。
【0098】
一実施形態では、式IA、IB、IC及び/又はIC−1の重合可能な反応性アルコキシ化モノマーが利用され、そして反応条件下で、「他のモノマー」として列挙されたモノマーの1つと共重合されて、ラテックスポリマーの骨格になる。別の実施形態では、式IA、IB、IC及び/又はIC−1の重合可能な反応性アルコキシ化モノマーが利用されて、そして反応条件下で、「他のモノマー」として列挙されたモノマーの2つ以上と共重合されて、ラテックスポリマーの骨格になる。別の実施形態では、式IA、IB、IC及び/又はIC−1の重合可能な反応性アルコキシ化モノマーの1つ以上が利用されて、そして反応条件下で、「他のモノマー」として列挙されたモノマーの1つ以上と共重合されて、ラテックスポリマーの骨格になる。
【0099】
典型的には、ラテックスポリマー分散液は、約30〜約75%の固形分、及び約70〜約650nmの平均ラテックス粒径を含む。別の実施形態では、本発明のポリマーは、約400nm未満の平均粒径、典型的には約200nm未満の平均粒径、より典型的には約190nm未満の平均粒径、そして最も典型的には約175nm未満の平均粒径を有する。別の実施形態では、そのポリマーは、約75nm〜約400nmの平均粒径を有する。
【0100】
典型的には、ラテックスポリマーは、水性コーティング組成物中に、約5〜約60質量%の量(すなわち、コーティング組成物の全質量を基準とした乾燥ラテックスポリマーの質量百分率)、より典型的には約8〜約40質量%の量で存在する。
【0101】
本発明のポリマーを含む得られた水性コーティング組成物は、上述の通り、不凍剤を加える必要がなく、又は少量の不凍剤を加えることにより、凍結融解安定性になる。それ故に、その水性コーティング組成物は、本発明に従って製造されることができて、従来の水性コーティング組成物より低いVOC濃度を保持し、したがって、より環境的に好ましい。
【0102】
別の実施形態では、得られたラテックスポリマーは、後述されるような本発明のエマルション界面活性剤及び/又は後述されるような本発明の凍結融解添加剤とともに、水性コーティング組成物中に組み込まれることができる。凍結融解添加剤の追加は、水性コーティング組成物のVOC濃度にほとんど又は全く影響しないので、水性コーティング組成物は、従来の水性コーティング組成物より低いVOC濃度を保持した状態で製造されることができる。そのような実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、本明細書で説明されるような凍結融解添加剤を、ポリマーの約1.3質量%を超える量で含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、本明細書で説明されるような凍結融解添加剤を、ポリマーの約1.6質量%を超える量で含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、本明細書で説明されるような凍結融解添加剤を、ポリマーの約2質量%を超える量で含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、本明細書で説明されるような凍結融解添加剤を、ポリマーの約4質量%を超える量で含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、本明細書で説明されるような凍結融解添加剤を、ポリマーの約7.5質量%を超える量で含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、本明細書で説明されるような凍結融解添加剤を、ポリマーの約8質量%を超える量で含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約1.6質量%〜7.5質量%の量の凍結融解添加剤を含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ポリマーの約1.6質量%〜45質量%、典型的にはポリマーの約1.6質量%〜35質量%の量の凍結融解添加剤を含む。
【0103】
さらなる実施形態では、本発明のポリマーは、凍結融解安定性であり、そして約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有することができる。
【0104】
式IA、IB又はICの重合可能な反応性アルコキシ化モノマーを含むラテックスポリマーは、水性コーティング組成物において、重合性又は非重合性のいずれかである他のイオン性又は非イオン性の種類の界面活性剤と併用されることができる。具体的には、ポリマーラテックスバインダーは、少なくとも1つの開始剤及び式IA、IB、IC又はIC−1の少なくとも1つの重合可能な反応性アルコキシ化モノマーの存在下で、ラテックスバインダーを形成するために使用されるモノマーを反応器に供給し、そしてモノマーを重合してラテックスバインダーを製造することにより、乳化重合を用いて製造されることができる。典型的には、ポリマーラテックスバインダーを調製するために反応器へ供給されるモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルから成る群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーが挙げられる。さらに、そのモノマーは、スチレン、酢酸ビニル、又はエチレンを含むことができる。また、そのモノマーは、スチレン、[α]−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ウレイドメタクリレート、酢酸ビニル、分岐鎖三級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びエチレンから成る群から選択される1つ以上のモノマーを含むことができる。また、1,3−ブタジエン、イソプレン又はクロロプレンなどのC〜C共役ジエンを含むことも可能である。典型的には、そのモノマーとしては、n‐アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートから成る群から選択される1つ以上のモノマーが挙げられる。
【0105】
開始剤は、乳化重合で用いる当技術分野で知られているような任意の開始剤(過硫酸アンモニウム若しくはカリウム、又は典型的には酸化剤及び還元剤を含むレドックス製剤など)でよい。一般に使用されるレドックス開始剤は、例えば、「Progress in Polymer Science 24(1999)、1149−1204」においてA.S.Saracにより記述されている。
【0106】
ポリマーラテックスバインダーは、開始剤及び水を含む開始剤溶液を最初に調製することにより製造されることができる。また、ラテックスポリマーを形成するために使用されることになるモノマーの少なくとも一部分、1つ以上の界面活性剤(乳化剤)、水、及びNaOHなどの追加の添加剤を含むエマルション前モノマーも調製される。エマルション前モノマー中の1つ以上の界面活性剤としては、本発明の重合可能な反応性アルコキシ化モノマーのいずれかが挙げられる。次に、開始剤溶液及びエマルション前モノマーは、所定の期間(例えば、1.5〜5時間)に亘って反応器に連続的に加えられ、モノマーの重合を起こすことによって、ラテックスポリマーを製造する。典型的には、エマルション前モノマーを加える前に、開始剤溶液の少なくとも一部分が反応器に加えられる。開始剤溶液及びエマルション前モノマーの追加前に、ポリスチレン種ラテックスなどの種ラテックスが、反応器に加えられることができる。さらに、開始剤とエマルション前モノマーを加える前に、水、1つ以上の界面活性剤、及びエマルション前モノマーとして提供されていない任意のモノマーが、反応器に加えられることができる。
【0107】
少なくともポリマーラテックスバインダーを調製するためにモノマーが供給されるまで、反応器は高温で操作される。ポリマーラテックスバインダーが調製されると直ぐに、それは、典型的には化学的ストリッピングされることによって、その残留モノマー含有量を減らす。典型的には、それは、ペルオキシド(例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド)などの酸化剤及び還元剤(例えば、ナトリウム・アセトン亜硫酸水素塩)、又は別のレドックス対(例えば、「Progress in Polymer Science 24(1999)、1149−1204」においてA.S.Saracにより記述されているものなど)を連続的に加えることにより、高温で所定の期間(例えば、0.5時間)に亘って、ラテックスバインダーへ化学的にストリッピングされる。次に、ラテックスバインダーのpHが調整されることができ、そして化学的ストリッピング工程後、殺生剤又は他の添加剤が加えられる。
【0108】
前記水性コーティング組成物は、様々な種類の材料(例えば、紙、木材、コンクリート、金属、ガラス、セラミック類、プラスチック類、石こうなど、及びアスファルトコーティングなどの屋根用基材、屋根用フェルト、発泡ポリウレタン絶縁体など);又は事前に塗装されているか、下塗りされているか、下塗装されているか、若しくは摩耗しているか、若しくは風化している基材に適用できる安定な流体である。本発明の水性コーティング組成物は、当技術分野でよく知られているような各種の技術(例えば、ブラシ、ローラー類、モップ類、空気補助又は無気スプレー、静電スプレーなど)によって、それらの材料に適用されることができる。
【0109】
界面活性(乳化剤)化合物を含むラテックスポリマー組成物
別の実施形態では、構造式IIAの界面活性化合物が、ラテックスポリマーを形成するために使用される乳化重合反応中に、乳化剤として使用されることができる。
【化20】

【0110】
式IIA中、Bは、5又は6員シクロアルキル環(例えば、シクロヘキシル環)、又は6員環を有する単環芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン環)である。
【0111】
式IIA中、R、R及びRは、独立して:−H、tert−ブチル、ブチル、
【化21】

から選択される。ただし、R、R及びRの1つは−Hであるか、又はR、R及びRのいずれも−Hではない。
【0112】
式IIA中、Xは、C、C、又はCから成る群から選択される少なくとも1つであるか、又はXは、2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基から選択される二価炭化水素基であり;nは、1〜100、例えば、3〜80、4〜50、4〜40又は8〜25である。
【0113】
式IIA中、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、又は四級アンモニウムイオンであり、そしてMは、限定されるものではないが、H、Na、NH、K又はLiを含むカチオンである。
【0114】
一実施形態では、Rは、四級アンモニウムイオン:
【化22】

から選択される。
【0115】
一実施形態では、nは4〜80の整数である。一実施形態では、nは4〜60の整数である。一実施形態では、nは10〜50の整数である。一実施形態では、nは10〜25の整数である。
【0116】
典型的には、アルコキシ化界面活性化合物は、式IIB:
【化23】

{式中、R、R、R、R、X及びnは、式IIAの構造について定義された通りである。}
を有する。所望により、構造式IIBに示された芳香族環は、飽和していてよい。
【0117】
より典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用される乳化重合反応中に、界面活性アルコキシ化トリスチリルフェノール(例えば、エトキシ化トリスチリルフェノール)又は界面活性アルコキシ化トリブチルフェノール(例えば、エトキシ化トリブチルフェノール)が、乳化剤として使用されることができる。下記に示す通り、それぞれ、界面活性エトキシ化トリスチリルフェノールは構造式IICを有し、そして界面活性エトキシ化トリブチルフェノールは構造式IIC−1を有する:
【化24】

【化25】

{式中、nは、1〜100の整数、例えば4〜60又は8〜25であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、又は四級アンモニウムイオンであり、そしてMは、限定されるものではないが、H、Na、NH、K又はLiを含むカチオンである。}
【0118】
一実施形態では、Rは、四級アンモニウムイオン:
【化26】

から選択される。
【0119】
一実施形態では、nは4〜80の整数である。一実施形態では、nは4〜60の整数である。一実施形態では、nは10〜50の整数である。一実施形態では、nは10〜25の整数である。
【0120】
界面活性エトキシ化トリスチリルフェノール又はエトキシ化トリブチルフェノールが、ラテックスポリマーを形成するために、乳化重合における乳化剤として利用されるとき、界面活性乳化剤が利用される混合物からラテックスポリマーが形成される。一実施形態では、その乳化剤は、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの1.3質量%を超える量、又はラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの1.6質量%を超える量、典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約2質量%を超える量、より典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約4質量%を超える量、最も典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約7.5質量%を超える量で加えられる。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、乳化剤を、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約8質量%を超える量、又は該ポリマー又はモノマーの約10質量%を超える量で含む。別の実施形態では、その乳化剤は、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.6質量%〜7.5質量%で加えられる。別の実施形態では、乳化剤は、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.6質量%〜45質量%で、典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.6質量%〜35質量%で加えられる。
【0121】
所望により、式IIC又はIIC−1のエチレンオキシド鎖のエチレンオキシド繰り返し単位は、アルコキシ化トリスチリルフェノール又はアルコキシ化トリブチルフェノールを形成するために、上述の−(OX)−基により置換されることができる。
【0122】
少なくとも1つのラテックスポリマーが形成される典型的なモノマー(本明細書では、「第一モノマー」又は「第三モノマー」という場合がある)が、上記「他のモノマー」の項目において説明されている。
【0123】
上述の通り、ポリマーラテックスバインダーは、開始剤及び水を含む開始剤溶液を最初に調製することにより製造されることができる。また、ラテックスポリマーを形成するために使用されることになるモノマーの少なくとも一部分、1つ以上の界面活性剤(乳化剤)、水、及びNaOHなどの追加の添加剤を含むエマルション前モノマーも調製される。エマルション前モノマー中の1つ以上の界面活性剤としては、本発明の界面活性アルコキシ化化合物が挙げられる。したがって、アルコキシ化化合物は、ポリマーラテックスバインダーを形成する他のモノマーと共重合される反応物としてよりはむしろ、混合物を形成するための乳化剤として利用される。次に、開始剤溶液及びエマルション前モノマーは、所定の期間(例えば、1.5〜5時間)に亘って反応器に連続的に加えられ、モノマーの重合を起こすことによって、ラテックスポリマーを製造する。典型的には、エマルション前モノマーを加える前に、開始剤溶液の少なくとも一部分が反応器に加えられる。開始剤溶液及びエマルション前モノマーの追加前に、ポリスチレン種ラテックスなどの種ラテックスが、反応器に加えられることができる。さらに、開始剤とエマルション前モノマーを加える前に、水、1つ以上の界面活性剤、及びエマルション前モノマーとして提供されていない任意のモノマーが、反応器に加えられることができる。
【0124】
少なくともポリマーラテックスバインダーを調製するためにモノマーが供給されるまで、反応器は高温で操作される。ポリマーラテックスバインダーが調製されると直ぐに、それは、典型的には化学的ストリッピングされることによって、その残留モノマー含有量を減らす。典型的には、それは、ペルオキシド(例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド)などの酸化剤及び還元剤(例えば、ナトリウム・アセトン亜硫酸水素塩)、又は別のレドックス対(例えば、「Progress in Polymer Science 24(1999)、1149−1204」においてA.S.Saracにより記述されているものなど)を連続的に加えることにより、高温で所定の期間(例えば、0.5時間)に亘って、ラテックスバインダーへ化学的にストリッピングされる。次に、ラテックスバインダーのpHが調整されることができ、そして化学的ストリッピング工程後、殺生剤又は他の添加剤が加えられる。
【0125】
乳化重合反応混合物中の界面活性アルコキシ化化合物界面活性剤(乳化剤)の組み込みは、水性コーティング組成物の凍結融解安定性を所望の程度に維持しながら、コーティング組成物がより低いVOC含有量を有するようにする。
【0126】
水性ラテックス分散液に対する添加剤
別の実施形態では、構造式IIA、IIB、IIC又はIIC−1の上記の界面活性アルコキシ化化合物(「凍結融解添加剤」という場合がある)は、既に形成されたラテックスポリマー水性分散体に対する添加剤として使用されることができる。限定されるものではないが、乳化工程中、配合中などの、水性コーティング組成物の製造における任意の時点で、凍結融解添加剤を加えることができると理解されたい。また、凍結融解添加剤は、水性コーティング組成物又はその濃縮体に後添加されることができると理解されたい。
【0127】
これは、結果として、界面活性アルコキシ化化合物及びラテックスポリマーを含む水性組成物を形成する。界面活性アルコキシ化化合物が、既に形成された水性ラテックス分散液に対する添加剤として利用されるとき、得られた組成物は、アルコキシ化化合物添加剤を、ラテックスポリマーを形成するために使用されるモノマー100質量部当たり約1〜10部、典型的には2〜8部又は2〜6部の量で有する。
【0128】
ラテックスポリマーが形成される典型的なモノマーは、上記「他のモノマー」の項目で説明されており、上述の通り、本発明の反応性モノマーと共重合されることができる。
【0129】
さらに、本発明は、上記構造式IIA、IIB、IIC及び/又はIIC−1の少なくとも1つの界面活性アルコキシ化化合物界面活性剤(乳化剤)をラテックスポリマーの水性分散体に加えて、ラテックスバインダーを製造する工程を含むラテックスバインダー組成物の製造方法を含む。次に、任意の適切な順序で、得られたラテックスバインダーと少なくとも1つの顔料及び他の添加剤を混合して、水性コーティング組成物を製造することができる。ラテックスポリマーへの構造式IIA、IIB、IIC又はIIC−1の界面活性アルコキシ化化合物の追加は、混合物の凍結融解安定性を所望の程度で維持しながら、より低いVOC含有量を有する混合物を形成する。
【0130】
別の実施形態では、構造式IIA、IIB、IIC又はIIC−1の上記界面活性化合物(「凍結融解添加剤」という場合がある)は、塗料又は水性コーティング組成物の配合中に、添加剤として使用されることができる。配合は、基本となる水性ラテックスポリマー分散液に添加剤を加えて、それを塗料又はコーティングなどの最終生成物にする段階である。既に形成された塗料又は水性コーティング組成物(例えば、水性ラテックスコーティング分散液)への添加剤として界面活性アルコキシ化化合物を利用するとき、得られた組成物は、典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.3質量%を超える量の、より典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.6質量%を超える量の、さらに典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約2質量%を超える量の、さらに典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約4質量%を超える量の、最も典型的には、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約7.5質量%を超える量のアルコキシ化化合物添加剤を有する。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.6質量%〜7.5質量%の量の界面活性アルコキシ化化合物を含む。別の実施形態では、ラテックスコーティング組成物は、ラテックスポリマーを形成するために使用されるポリマー又はモノマーの約1.6質量%〜45質量%、典型的には約1.6質量%〜35質量%の界面活性アルコキシ化化合物を有する。顔料は、例えば、未加工の水性ラテックスポリマー分散液からの塗料の形成中に加えられる典型的な添加剤である。
【0131】
凍結融解添加剤が、上記のようなポリマーに対する質量%の量で水性コーティング組成物に存在する場合と、そのポリマーは、約−15℃〜約12℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約200nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約190nm未満の平均粒径、又は約−15℃〜約12℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約5℃のTg及び約175nm未満の平均粒径、又は約−5℃〜約0℃のTg及び約175nm未満の平均粒径を有することができる場合には、本発明の水性コーティング組成物は凍結融解安定性である。上述のように、その平均粒径は、典型的には、約75nm〜約400nmである。この水性コーティング組成物は、約2分を超える開放時間、約4分を超える開放時間、約6分を超える開放時間又は約12分を超える開放時間により特徴付けられる。
【0132】
さらに、本発明は:少なくとも1つの顔料及び他の添加剤を含む塗料又は水性コーティング組成物の配合中に、上記のような構造式IIA、IIB、IIC及び/又はIIC−1の少なくとも1つの界面活性アルコキシ化化合物を加えて、最終塗料又は水性コーティング組成物を製造する工程を含む、塗料又は水性コーティング組成物の製造方法を含む。塗料又は水性コーティング組成物の配合中における界面活性アルコキシ化化合物界面活性剤(乳化剤)の追加は、水性コーティング組成物の凍結融解安定性を所望の程度に維持しながら、より低いVOC含有量を有するコーティング組成物を形成する。
【0133】
他の添加剤
本発明の水性コーティング組成物は、少なくとも1つのモノマー(例えばアクリルモノマー)から誘導される少なくとも1つのラテックスポリマー、及び/又は他の上述のラテックスモノマーを含む。本発明の水性コーティング組成物は、水性コーティング組成物の全質量を基準として、2質量%未満の、典型的には1.0質量%未満の不凍剤を含む。より典型的には、その水性コーティング組成物は、不凍剤を実質的に含まない。
【0134】
典型的には、水性コーティング組成物は少なくとも1つの顔料を含む。本明細書では、用語「顔料」は、顔料、増量剤、及び充填剤などの非フィルム形成固体を含む。典型的には、少なくとも1つの顔料は、(アナターゼ及びルチルの両方の形態の)TiO、粘土(ケイ酸アルミニウム)、(土及び沈殿物の両方の形態の)CaCO、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、タルク(ケイ酸マグネシウム)、バライト(硫酸バリウム)、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム及びそれらの混合物から成る群から選択される。適切な混合物としては、MINEX(ユニミン・スペシャリティ・マテリアルズ(Unimin Specialty Minerals)社から入手できるケイ素、アルミニウム、ナトリウム及びカリウムの酸化物)、CELITES(セライト(CELITE)社から入手できる酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素)、ATOMITES(イングリッシュ・チャイナ・クレー・インターナショナル(English China Clay International)社から入手できる)、及びATTAGELS(エンゲルハード(Engelhard)社から入手できる)の製品名で販売されているものなどの金属酸化物の混合物が挙げられる。より典型的には、少なくとも1つの顔料としては、TiO、CaCO又は粘土が挙げられる。一般に、顔料の平均粒径は、約0.01〜約50ミクロン(μm)の範囲にある。例えば、水性コーティング組成物に使用されるTiO粒子は、典型的には、約0.15〜約0.40μmの平均粒径を有する。顔料は、粉末又はスラリーの形態として水性コーティング組成物に加えられることができる。顔料は、水性コーティング組成物に、典型的には約5〜約50質量%、より典型的には約10〜約40質量%の量で存在する。
【0135】
所望により、コーティング組成物は、1つ以上のフィルム形成助剤又は融合剤などの添加剤を含むことができる。適切なフィルム形成助剤又は融合剤としては、可塑剤、及び高沸点極性溶媒などの乾燥遅延剤が挙げられる。また、他の従来のコーティング添加剤(例えば、分散剤、追加の界面活性剤(すなわち、湿潤剤)、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、殺生剤、添加剤、有色顔料及び染料などの色材、ワックス、香料、補助溶剤など)も本発明に従って使用されることができる。例えば、非イオン性及び/又はイオン性(例えば、アニオン性若しくはカチオン性)界面活性剤が、ポリマーラテックスを製造するために使用されることができる。これらの添加剤は、コーティング組成物の全質量を基準として、典型的には0〜約15質量%、より典型的には約1〜約10質量%の量で水性コーティング組成物に存在する。
【0136】
上述の通り、幾つかの実施形態における水性コーティング組成物は、水性コーティング組成物の全質量を基準として、2.0%未満の不凍剤を含むことができる。典型的な不凍剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール(1,2,3−トリヒドロキシプロパン)、エタノール、メタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、及びFTS−365(イノヴァケム・スペシャリティ・ケミカルズ(Inovachem Specialty Chemicals)社製の凍結融解安定剤)が挙げられる。より典型的には、水性コーティング組成物は、1.0%未満の不凍剤を含むか、又は不凍剤を実質的に含まない(例えば、0.1%未満の不凍剤を含む)。それ故に、本発明の水性コーティング組成物は、典型的には約100g/L未満、より典型的には約50g/L以下のVOC濃度を有する。本発明の水性コーティング組成物は不凍剤をほとんど又は全く含まないという事実にもかかわらず、本組成物は、本技術分野で好ましい程度の凍結融解安定性を保持する。
【0137】
例えば、本発明の水性コーティング組成物を、凝固させずに、ASTM法D2243−82又はASTM D2243−95を用いて凍結融解サイクルに供することができる。
【0138】
本発明の水性コーティング組成物の残余は水である。大量の水は、ポリマーラテックス分散液と水性コーティング組成物の他の成分とに存在するが、一般に、水も水性コーティング組成物に別々に加えられる。典型的には、水性コーティング組成物は、約10質量%〜約85質量%の、より典型的には約35質量%〜約80質量%の水を含む。つまり、水性コーティング組成物の全固形分含有率は、典型的には約15%〜約90%、より典型的には約20%〜約65%である。
【0139】
典型的には、コーティング組成物は、乾燥コーティングが少なくとも10体積%の乾燥ポリマー固形物、及び追加的には5〜90体積%の顔料形態の非ポリマー固形物を含むように配合される。また、乾燥コーティングは、コーティング組成物の乾燥時に蒸発しない添加剤(可塑剤、分散剤、界面活性剤、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、殺生剤、防かび剤、色材、ワックスなど)も含むことができる。
【0140】
本発明の好ましい一実施形態では、水性コーティング組成物は:アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルから成る群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーと、少なくとも1つの重合性アルコキシ化界面活性剤とから誘導される少なくとも1つのラテックスポリマー;少なくとも1つの顔料;並びに水を含むラテックス塗料組成物である。上述の通り、少なくとも1つのラテックスポリマーは、純アクリル、スチレンアクリル、ビニルアクリル又はアクリル化エチレン−酢酸ビニルコポリマーでよい。
【0141】
さらに、本発明は、少なくとも1つのモノマーから誘導されており、かつ上記のような少なくとも1つのトリスチリルフェノールを共重合又は混合されている少なくとも1つのラテックスポリマーと、少なくとも1つの顔料とを共に混合することにより、水性コーティング組成物を製造する方法を含む。典型的には、ラテックスポリマーは、ラテックスポリマー分散液の形態である。水性コーティング組成物に上記で検討した添加剤を提供するために、それらの添加剤は、任意の適切な順序で、ラテックスポリマー、顔料又はそれらの組み合わせに加えることができる。塗料配合物の場合には、水性コーティング組成物は、典型的には7〜10のpHを有する。
【実施例】
【0142】
本発明は今や以下の非限定的な実施例によりさらに説明されるであろう。上述の通り、本発明は、ラテックスポリマー形成中に存在することになる界面活性剤(乳化剤)としての界面活性アルコキシ化化合物(I)、ラテックスコモノマーを形成するための重合可能な反応性アルコキシ化モノマー(II)、及び/又はラテックスポリマー又はコポリマーの水性分散体に対する添加剤としての界面活性アルコキシ化化合物(III)を利用してよい。
【0143】
実施例
下記実施例1及びその下位例では、本発明を、ラテックスポリマー形成中に存在することになる界面活性剤(乳化剤)として利用される界面活性アルコキシ化化合物として説明する。
【0144】
実施例1
凍結融解安定性研究
実施例1では、対照物を、様々な濃度のTSP−EO及び1%MAA(メタクリル酸)を組み込んでいる本発明の組成物と比較する。TSP−EOは、上記で列挙した構造式IIC{式中、R基はHである}による界面活性エトキシ化トリスチリルフェノールである。
【0145】
2%TSP−EO、1%MAA(メタクリル酸)を有する本発明の試料1;4%TSP−EO、1%MAAを有する本発明の試料2;及び6%TSP−EO、1%MAAを有する本発明の試料3を形成した。表1には、4%TSP−EO、1%MAAを有する本発明の実施形態である試料2の含有物を示す。
【0146】
【表1】

【0147】
「BOTM」は、「全モノマーを基準として(Based On Total Monomer)」の略語である。モノマーエマルションは、ラテックスを形成するための典型的なモノマーを含む。上述の通り、TSP−EOは、上記で列挙された構造式IIC{式中、R基はHである}によれば、そのアルコキシレート鎖中に、約10〜約50個のエチレンオキシド基を有する界面活性トリスチリルフェノールを含む。RHODACAL A−246/L及びABEXは、ニュージャージー州クランブリーのローディア(Rhodia)社から入手できる乳化剤である。
【0148】
表2には、この実施例において試験された対照物に利用された含有物を示す。
【0149】
【表2】

【0150】
手順:
対照物並びに試料1、2及び3の含有物をそれぞれ下記乳化重合反応手順で利用した:
1.Nをパージしながら、ケトル充填物を約80℃へ加熱する。作業の初めから終わりまでN雰囲気を維持する。
2.上記処方に基づいて、モノマーエマルション及び開始剤溶液を調製する。
3.約80℃で、開始剤溶液及びモノマーエマルションをケトルに加える。
4.約80℃で約10〜20分間保つ。
5.反応温度を約80±1℃に維持しながら、モノマーエマルション及び開始剤溶液の残分を3時間に亘って緩やかに加える。
6.モノマーエマルション及び開始剤溶液の追加が完了した後、反応混合物温度を約85℃に加熱し30分間に亘って保つ。
7.反応器含有物を約30℃より低く冷却する。最終反応物のpHを8〜9に調整する。
8.その回分を100メッシュフィルターによりろ過して、特性化のための密閉容器に保管する。
【0151】
試料1には4%TSP−EOが含まれていた。この手順を2%TSP−EO及び6%TSP−EO試料(それらは、TSP−EOの量以外は4%TSP−EO試料と同じである)について繰り返した。
【0152】
表3には、対照物、2%TSP−EO試料(試料1)、上記4%TSP−EO試料(試料2)、及び上記6%TSP−EO試料(試料3)の結果を示す。ポリマー分散体及び配合塗料の凍結融解安定性をASTM標準試験法D2243−95に基づいて測定した。ラテックス及び配合塗料について、半パイントの試料を用いて試験した。その試料を冷凍室にO°F(−18℃)で17時間に亘って保持し、次に冷凍室から取り出して、室温で7時間融解させた。ラテックス又は塗料が凝固するか、又は最大5回のサイクルまで、凍結融解サイクルを続けた。
【0153】
【表3】

【0154】
表3には、本発明の添加剤は、対照物をゲル化させる条件でもゲル化を防ぐことが示される。ラテックスを製造する副生成物として凝固粒子が形成される。一般に当技術分野で知られているようなDSC法を用いて測定されたときのラテックスのTgは、3.63℃であった。
【0155】
実施例1−1
約6個〜約60個のエチレンオキシド基を有する各種のアニオン性又は非イオン性エトキシ化トリスチリルフェノール(TSP)化合物を用いて、上記手順を繰り返した。表4には、これらの実施例の結果を示す。
【0156】
【表4】

【0157】
実施例2では、国際公開第2007/117512号パンフレット(以下では「’512出願」又は「ステファン(Stepan)」という場合がある)の開示内容に対する本発明の比較例を説明する。
【0158】
実施例2
’512出願(p.20)による種ラテックスを調製した。
【0159】
【表5】

【0160】
手順:
1. 150gの水及び7.32gの界面活性剤(SLS)をケトルに加え、約83℃へ加熱する。
2. 42.78gの開始剤溶液を加える。
3. 108gのモノマー混合物をケトルに加え、約83℃で2〜3時間保つ。
4. 乳化重合プロセス中に粒径を測定する。
5. 室温へ冷却し、種ラテックスを今後の使用のために保持する。種ラテックスの有効質量%は36質量%であった。
【0161】
表5及び6には、SLS(対照)を用いる場合と、界面活性乳化剤としての約10〜40個のエチレンオキシド基を有するTSPとSLSとを併用した場合のそれぞれについて、スチレン−アクリルラテックスポリマーの乳化重合を示す。
【0162】
【表6】

【0163】
【表7】

【0164】
手順(表5及び6について):
1)Nをパージしながら、150rpmの攪拌速度で、水及び25gのNaHCO溶液及び30gの種ラテックスをケトルに充填し、そしてケトルを約83℃へ加熱する。作業の初めから終わりまで、N雰囲気を維持する。
2)処方に基づいて、モノマーエマルション及び開始剤溶液を調製する。
3)約83℃で、20.2%の開始剤溶液(20.0g)を加え、8分間保つ。
4)モノマーエマルションの残分を約180分間供給し、約83±1℃で反応温度を維持する。
5)モノマー追加の10分後、79gの過硫酸アンモニウム溶液と125.0gのNaHCO溶液とを180分間供給した。
6)追加後、反応温度を83℃へ加熱し、83±1℃で60分間保つ。
7)その回分を30℃より低く冷却し、濃縮された(28%)水酸化アンモニウム溶液でpHを8.5±0.1に調整した。
8)その回分を100メッシュフィルターによりろ過し、特性化のための密閉容器に保管する。
【0165】
【表8】

【0166】
【表9】

【0167】
表7及び8を参照すると、表5(乳化界面活性剤として使用されるラウリル硫酸ナトリウム)及び表6(ラウリル硫酸ナトリウム及び乳化界面活性剤として使用されるTSP)の両方において調製されたラテックスポリマー分散体の性質は、凍結融解(F/T)安定性を示す。一般に当技術分野で知られているようなDSC法を用いると、表5及び6のラテックス分散液のTg測定値は、約24℃〜27℃の範囲にある。
【0168】
図1を参照して、’512出願に従って調製された様々なラテックスポリマーのTgについて:(1)SLSを用いるラテックスポリマー(約26.5℃のTg測定値を有する)の乳化重合;(2)SLSと界面活性乳化剤としてのTSP−EOとを併用するラテックスポリマー(約25.3℃のTg測定値を有する)の乳化重合;(3)TDA・硫酸ナトリウム塩を用いるラテックスポリマー(約24.5℃のTg測定値を有する)の乳化重合;及び(4)TDA・硫酸ナトリウム塩と界面活性乳化剤としてのTSP−EOとを併用するラテックスポリマー(約26.5℃のTg測定値を有する)の乳化重合;を説明する。
【0169】
下記実施例3及びその下位例では、ラテックスコモノマー又はポリマーを形成するために使用される重合可能な反応性アルコキシ化モノマー(反応性モノマー)として本発明を説明する。
【0170】
実施例3
下記実施例は、ラテックスの調製において反応性モノマーとして利用されるトリスチリルフェノール(TSP)エトキシレート及びトリブチルフェノール(TBP)エトキシレートの使用に関する。
【0171】
実施例3−1−ラテックスポリマーの調製
表9を参照して、TSP/TBPエトキシ化モノマーを使用することなく、乳化重合から対照ラテックスポリマーを調製した。表10を参照して、本発明のTSPエトキシ化モノマー及びTBPエトキシ化モノマーを用いる乳化重合からラテックスポリマーを調製した。ラテックスポリマーの調製手順は下記の通りであった:
をパージしながらケトル充填物を加熱する。作業の初めから終わりまでN雰囲気を維持する。モノマーエマルション及び開始剤溶液を調製する。開始剤溶液及びモノマーエマルションを加える。定常温度を保ち、モノマーエマルション及び開始剤溶液の残分を供給する。反応器を30℃より低く冷却し、次に、その回分をチーズクロスによりろ過する。
【0172】
【表10】

【0173】
【表11】

【0174】
実施例3−2−塗料配合物
表11、12及び13では、市販の低VOC塗料(そのポリマーラテックスは、約2.4℃のTg及び130〜160のD50を有することが分かっている)を利用する塗料配合物、ラテックスポリマーとして純アクリルを利用する類似配合物、及びラテックスポリマーとして本発明の合成されたラテックスを利用する類似配合物をそれぞれ示す。
【0175】
【表12】

【0176】
【表13】

【0177】
【表14】

【0178】
表14には、低Tg市販ラテックス、純アクリルラテックスを使用するとき、及びTSP/TBPエトキシ化モノマーのエトキシレート基を約3個〜80個に変えるときの上記に関連する塗料配合物の得られた塗料性を示す。
【0179】
【表15】

【0180】
幾つかのTSP/TBPエトキシ化モノマーを組み込んでいるラテックスを用いる配合物(それは、F/T安定性を示した)とは対照的に、市販ラテックス及び純アクリルラテックスを利用する塗料配合物は、1回のF/Tサイクル後にのみゲル化した。
【0181】
実施例3−3
対照物ラテックス(純アクリル)、市販低Tgラテックス、及び本発明のTSP反応性モノマーを用いる塗料配合物の性質を試験した。上記に関連してラテックスの種類を変えた生成塗料配合物は、F/T安定性を除いて、同程度の性質を提供したことが観察される。それ故に、反応性TSP及びTBPモノマーエトキシレートを用いて本発明のラテックスポリマーにF/T安定性を与えても、塗料配合物の他の好ましい性質(最大10〜最低1)を損なうことはない。
【0182】
【表16】

【0183】
【表17】

【0184】
【表18】

【0185】
【表19】

【0186】
【表20】

【0187】
下記実施例4及びその下位例では、ラテックスポリマー又はコポリマーの水性分散体に対する1つ以上の添加剤として利用される界面活性アルコキシ化化合物として本発明を説明する。
【0188】
実施例4
添加剤としての界面活性アルコキシ化化合物
エチレンオキシド基を約3個を超えて約80個まで有する非イオン性TSP界面活性剤を、純アクリル−白色ベースに10ポンド/100ガロンで加えたところ、その配合物は凍結融解安定性を示した。
【0189】
表20には、(純アクリル−白色ベース中の)F/T添加剤としての本発明のアニオン性TSP界面活性剤(10ポンド/100ガロン)を示す。
【0190】
【表21】

【0191】
実施例4−1
表21には、バインダー粒径における本発明のTSPエトキシレートの影響を示す。動的光散乱(DLS)法を利用するゼータサイザー・ナノ(Zetasizer Nano)ZS装置を用いて、その平均粒径を測定した。DLS法は、粒子からのレーザー光の散乱を観察する工程、ストークス−アインシュタインの関係を用いて、このレーザー光の散乱から、拡散速度を決定して粒径を得る工程から基本的に成る。
【0192】
【表22】

【0193】
実施例4−2
表22には、低VOC塗料のF/T安定性における本発明のTSPエトキシレートの充填濃度を示す。
【0194】
【表23】

【0195】
表23を参照すると、全ポリマー質量を基準として、約1.3%で、又は約1.3%を上回って、本発明のTSP−EOを用いたときに、F/T安定性が観察されている。
【0196】
【表24】

【0197】
実施例4−3
TSPエトキシレートの量を変化させて、低又はゼロVOC市販塗料に加え、凍結融解安定性について試験した。表24には、様々な低/ゼロVOC市販塗料のF/T安定性における本発明のTSP−EOの影響を示す。対照物は、TSPエトキシ化界面活性剤(TSP−EO)を含んでいなかった。
【0198】
【表25】

【0199】
実施例4−5
開放時間
表25及び26には、それぞれ、低VOC塗料の「開放時間」におけるTSPエトキシレート非イオン性界面活性剤の影響と、低VOC塗料の「開放時間」におけるTSPエトキシレートアニオン性界面活性剤の影響とを示す。一般に、開放時間は、塗料が塗布された後に、それを(「ウェットエッジ(wet edge)」で)追加の塗布領域と混合することができる時間間隔であると理解されたい。開放時間とは、ブラシの筋及び操作の他の兆候が乾燥フィルム上で視認できるようになる前まで、塗料の新たに塗布された層が有効なままである時間をいう。
【0200】
一般に、開放時間の測定方法は下記の通りである:黒色擦傷試験紙の一片に、10ミル膜をドローダウンする。次に、鉛筆の消しゴム側を用いて、その塗膜を2インチ間隔でクロスハッチングする。次に、最初のクロスハッチに一方向で15回ブラシをかけ;次に、一連のクロスハッチごとに、これを2分間隔で繰り返す。48時間後、クロスハッチの跡が認識できる最早時間について、その乾燥フィルムを審査する。これを一定の湿度及び室温において行う。塗料配合物が、4分を超える、典型的には6分を超える開放時間を有することが好ましい。試薬(非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の両方)の量を、塗料256グラム(g)当たり、約2.5gの界面活性剤から約4.25gの界面活性剤まで変えた。
【0201】
【表26】

【0202】
【表27】

【0203】
表25及び26を参照すると、それぞれについて、非イオン性TSP添加剤又はアニオン性TSP添加剤のいずれかを利用すると、開放時間が有意に増加したことが観察される。
【0204】
上記の詳細な説明では、本発明の実施を可能にするために、好ましい実施形態について詳細に説明している。本発明をこれらの特定の好ましい実施形態に関して説明しているが、本発明はこれらの好ましい実施形態に限定されないことを理解されたい。それどころか、詳細な説明の言及から明らかになるであろうが、本発明は、多数の変化、改良及び均等を含む。本発明の上記説明を読んだ上で、当業者は、それから変形及び変化を生み出し得ると理解されたい。これらの変形及び変化は、下記に添付された特許請求の範囲の理念及び範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

{式中、R、R及びRは、独立して:ブチル、tert‐ブチル、イソブチル、
【化2】

から成る群から選択され;Xは、約2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基を含む二価炭化水素基であり;nは1〜100の整数であり;Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、及び四級アンモニウムイオンから成る群から選択され;そしてMはカチオンである。}を有する、低ガラス転移温度(Tg)エマルションポリマーの製造に使用する乳化剤。
【請求項2】
前記低Tgポリマーは、約−15℃〜約12℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項3】
構造式:
【化3】

又は
【化4】

{式中、nは1〜100の整数であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−OC、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、及び四級アンモニウムイオンから成る群から選択され、そしてMはカチオンである。}を有する、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項4】
構造式:
【化5】

{式中、R、R及びRは、独立して:ブチル、tert‐ブチル、イソブチル、
【化6】

から成る群から選択され;Xは、約2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基を含む二価炭化水素基であり;nは1〜100の整数であり;Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、及び四級アンモニウムイオンから成る群から選択され;そしてM+はカチオンである。}により表される少なくとも1つの乳化剤を用いて調製された少なくとも1つのエマルションポリマーを含む低VOCコーティング組成物であって、該乳化剤の使用が該コーティング組成物の凍結融解安定性を向上させる、前記コーティング組成物。
【請求項5】
nは約20〜約50の整数である、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記乳化剤は、前記ポリマーの約7.5質量%を超える量で存在する、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記乳化剤は、構造式:
【化7】

又は
【化8】

{式中、nは1〜100の整数であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−OC、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、及び四級アンモニウムイオンから成る群から選択され、そしてMはカチオンである。}
を有する、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
(a)式:
【化9】

{式中、R、R及びRは、独立して:ブチル、tert‐ブチル、イソブチル、
【化10】

から成る群から選択され;Xは、約2〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基を含む二価炭化水素基であり;nは1〜100の整数であり;Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、及び四級アンモニウムイオンから成る群から選択され;そしてMはカチオンである。}により表される乳化剤を得る工程;及び
(b)有効量の該乳化剤を用いてエマルションポリマーを調製する工程
を含む、低VOCコーティング組成物の凍結融解安定性を向上させる方法。
【請求項9】
前記乳化剤の有効量は、前記ポリマーの約7.5質量%を超える量である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記乳化剤は、式:
【化11】

又は
【化12】

{式中、nは1〜100の整数であり、Rは、−OH、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13、−Cl、−Br、−CN、ホスホネート(−PO)、ホスフェート(PO)、スルフェート(SO)、スルホネート(SO)、カルボキシレート(COO)、非イオン性基、及び四級アンモニウムイオンから成る群から選択され、そしてMはカチオンである。}を有する、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−515247(P2012−515247A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546236(P2011−546236)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/005281
【国際公開番号】WO2010/082918
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508339035)
【Fターム(参考)】