説明

凝固点降下表面コーティング

本発明は、外層が、式(I)


[式中、置換基は本明細書中に記載された定義を有する]で表される官能基を有することを特徴とする官能化外層を含む基材、凝固点降下表面、特に特定の表面層の施与により凝固点降下の効果を示す表面に関し、さらには該表面を得るに適した化合物、該表面を含む構造部材、該化合物、表面および構造部材を製造する方法、ならびにさまざまな応用範囲における該化合物および表面の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固点降下表面、特には特定表面層の施与により凝固点降下の効果を示す表面に関し、さらには該表面を形成するのに適した化合物、該表面を含む構造部材、該化合物、表面および構造部材を製造する方法、ならびにさまざまな応用領域における該化合物および表面の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
表面の凍結(「freezing」)、またはそのような凍結の防止もしくは遅延は、公知であり、多くの研究がなされている領域である。望ましくない凍結現象は、さまざまな表面において生じ、例えば、エネルギー発生設備(風力発電設備の回転翼など)、輸送手段(翼表面ならびに回転体の表面、風防など)、および包装材料の表面が挙げられよう。
【0003】
Ayresら(J. Coat. Technol. Res.、4巻(4)473〜481頁、2007年)(非特許文献1)は、チタンアルコキシラート、トリプロピレングリコールおよびグリコールを含むゾル・ゲル系を基材とするコーティングを開示している。それらのコーティングは、グリコールの遊離が遅れることに起因する凍結防止効果を示す。この効果は、グリコールでは以前から知られている束一性によるものである。この凍結防止効果は分子の遊離によってのみ起こり得るので、本発明の意味における凝固点降下ではない。Ayresらにより記載されたコーティングは、さまざまな理由により、特に作用持続期間に限界及び用途が制限されるために不都合とみなされる。
【0004】
Heneghanら(Chemical Physics letters、385巻、(2004年)、441〜445頁)(非特許文献2)では、非置換アルキルシロキサンの自己組織化単一層を施与したガラス表面にみられる結晶化が研究されている。しかしこの文献からは、凝固点降下表面を製造するための具体的な方法は示唆されていない。
【0005】
Somloら(Mechanics of Materials、33巻(2001年)、471〜480頁)(非特許文献3)は、非置換アルキルシロキサンの自己組織化単一層を施与したアルミニウム表面、および氷に対するその付着の低減作用について記載している。したがって、Somloらは、表面に対する氷の付着の低減を達成するが、それは本発明の範囲における凝固点降下ではない。著者らは、自分たちの観察から凍結防止効果として適していると推論している。これらのコーティングは、さまざまな理由から、特に有効性および耐久性に限界があるために不都合とみなされる。
【0006】
Okoroafor(Applied Thermal Engineering、20巻(2000年)737〜758頁)(非特許文献4)は、架橋されたポリビニルピロリドンまたはポリメチルメタクリレートで被覆したアルミニウム表面を記載している。これらのコーティングは、前記ポリマーの膨潤作用に起因する凍結防止効果を示す。Okoraforらは縮合の遅延を記述しているが、それは本発明の意味における凝固点降下ではない。表面に対するポリマーの不充分な付着が欠点であり、そのため著者らによりPIBマトリクスまたはポリエステルネットと組み合わせることが提案されている。さらに、提案されたコーティングは、作用および耐久性の両面で充分に有効ではないことが明らかである。
【0007】
欧州特許第0738771号(特許文献1)は、フルオロアルキル−アルコキシシランおよびアミン基を含有するアルコキシシランから形成される水溶性表面処理剤を開示している。さらにこの文献は、そのようなコーティングのさまざまな特性の他に、凍結防止特性についても言及している。
【0008】
国際公開第2006/013060号(特許文献2)は、出発物質としてヒドロキシ置換シロキサンをも使用した、置換オルガノポリシロキサンを開示している。さらにこの文献は、表面処理剤としてのポリシロキサンの使用については言及しているが、それを凍結防止特性と関連して使用することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0738771号
【特許文献2】国際公開第2006/013060号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ayresら、J. Coat. Technol. Res.、4巻(4)473〜481頁、2007年
【非特許文献2】Heneghanら、Chemical Physics letters 385巻(2004年)441〜445頁
【非特許文献3】Somloら、Mechanics of Materials 33巻(2001年)471〜480頁
【非特許文献4】Okoroaforら、Applied Thermal Engineering 20巻(2000年)737〜758頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の課題は、凝固点がさらに降下(特に改善)した凍結防止(「アンチフリージング」)表面を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1の特徴部分に従って解決される。本発明のさらなる態様は、独立請求項、および本明細書中に示されている。有利な実施形態は、従属請求項、および本明細書中に示されている。本発明の範囲において、さまざまな実施形態と好ましい範囲を任意に組み合わせることもできる。さらに、特定の実施形態、範囲、または定義は、適用せず、または除外してもよい。
【0013】
本発明の範囲において、重要な概念を以下に詳しく説明するが、特段の記載がない限り、これらの説明が適用されるものとする。
【0014】
「ゾル・ゲル」という概念は周知であり、特に加水分解および縮合によってSi−アルコキシドおよび/または金属アルコキシドを形成するゾル・ゲルを含む。ゾル・ゲルは、一種の前駆体からなるものでもまたはさまざまな前駆体の混合物からなるものでもよい。
【0015】
「ポリマー」という概念は周知であり、特に、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレートの群から得られる特に工業的なポリマーを包含する。したがってポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、またはブレンドとして存在し得る。
【0016】
「自己組織化分子」(self assembled molecules:SAM)または「自己組織化分子層」という概念は周知であり、特に基材と接触したときに自己組織化能が内在している分子を表す。
【0017】
化合物(ポリマー、モノマー、前駆体など)を「官能化」または「非官能化」と言う場合、式(I)で表される官能基の有無を示す。官能性(Funktionalisierung)が存在すると言う場合、特に望ましい効果を得るのに有効な量の官能基があることを指す。
【0018】
「基材」という概念は周知であり、特に、被覆可能な固体表面を有するすべての物体を包含する。したがって、基材という概念は、特定の機能または寸法とは別である。基材は、「未被覆」のものであっても「被覆済み」のものであってもよい。「未被覆」という表現は、本発明に基づく外層を欠く基材を指すが、他の層(例えばラッカー塗膜)の存在を排除するものではない。
【0019】
「官能基」という概念は周知であり、これを有する分子の物性および反応挙動に決定的な影響を及ぼす、分子中の原子群を指す。本発明の枠内において、この表現は特に、ゾル・ゲル、ポリマーまたは自己組織化分子に共有結合している基を表す。
【0020】
「ヘテロ基」という概念は周知である。この概念は特に、アルキル鎖が介在する原子団であって、介在するアルキル鎖が、好ましくはN、SおよびOからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する、2個以上の原子(水素原子は考慮の対象外)、好ましくは2〜6個の原子(水素原子は考慮の対象外)からなる原子団を包含する。例えば、−O−、−S−、N(H)−はこの用語の概念に含まれないが、原子団−N(H)−O−および−N(H)−C(O)−S−はこの用語に含まれる。
【0021】
「凝固点降下」という概念は、「凝固点降下コーティング」のような複合表現としても周知である。本発明に基づく凝固点降下とは、特に、融点には有意な影響を与えない(すなわち、全くまたは殆ど全く、例えば2℃未満だけ)、凝固点の一時的または永続的な低下を意味する。凝固点降下の効果は、例えば温度ヒステリシスによる、または凝固の遅延によるなど、さまざまな機序によって生じ得る。温度ヒステリシスによる場合、凝固点降下が物質の非束一性に基づくことが前提となっており、これは、例えば溶液中の凍結防止タンパク質において観察されている。凝固の遅延による場合、凝固点降下が結晶核の不在に基づくことが前提とされ、これは0℃未満まで冷却可能であり一定時間を過ぎると自然に凍結する純水において観察される。
【0022】
したがって、本発明は第1の態様において、官能化外層を含む基材において、該外層が式(I)で表される官能基を有することを特徴とする基材に関する。
【0023】
【化1】

式中、
は、OH、SH、NH、NH(C−Cアルキル)、N(C−Cアルキル)を表し、かつ
pは、整数1を表すか、または
は、Hを表し、かつ
pは、整数0を表し、
は、OH、SH、NH、NH(C−Cアルキル)、N(C−Cアルキル)を表し、
は、H、C−Cアルキル、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
nは、整数0、1または2を表し、
Aは、共有結合しているスペーサーを表す。
【発明の効果】
【0024】
驚くべきことに、このように少なくとも末端にある、1,2−、1,3−および/または1,4−置換官能基は、スペーサーを介して共有結合している場合、水に対する著しい凝固点降下効果または表面に対する温度ヒステリシスを有することが分かっている。この効果は、1,3−位にジオール単位を有するポリビニルアルコールから得られるコーティングが比肩する効果を示さないので、特に驚きに値するとみなされる。特定の理論に縛られずとも、一方で表面に付いた親水基が前記の特定の位置(末端の、1,2−、1,3−および/または1,4−位)にあり、かつ、他方でスペーサーの存在によって官能基の可動性および空間的配置が改善される場合、こうした凝固点降下が可能になることが前提となっている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を以下に詳しく説明する。
式(I)で表される官能基:これらの基は前に定義されており、2つの異なる領域、スペーサー「A」および頭部を有する。式(I)から分かるように、分子断片だけが図示されており、分子の残りの部分(「分子の残り部分(Molekuelrest)」)は引き出し線により象徴的に示されている。分子の残り部分の選択に応じて、分子全体は、式(I)で表される1つの官能基(特に、後述するようなSAMの場合)だけを含んでいてもよく、また式(I)で表される多数の官能基(特に、後述するようなポリマーまたはゾル・ゲルの場合)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明に基づく頭部の選択は、前述した定義の枠内で行うことができる。しかし頭部について、後述する基準のうち1つまたは複数が満たされる場合、特に優れた結果が得られる。
は好ましくは、OH、SH、NHを表す。
は特に好ましくは、OH、SHを表す。
はとりわけ好ましくは、OHを表す。
は好ましくは、OH、SH、NHを表す。
は特に好ましくは、OH、SHを表す。
はとりわけ好ましくは、OHを表す。
は好ましくは、H、OH、SH、NHを表す。
は特に好ましくは、H、OH、SHを表す。
はとりわけ好ましくは、HまたはOHを表す。
nは好ましくは、整数0または1を表す。
nは特に好ましくは、整数0を表す。
【0027】
本発明によればスペーサーの選択は重要ではなく、スペーサー分野の当業者なら多くのものを使用することができる。しかし、スペーサーについて後述する基準のうち1つまたは複数が満たされる場合、特に優れた効果が得られる。すなわち、適切なスペーサーは、短い分岐鎖または直鎖、好ましくは直鎖の状態で配列している、1〜20個、好ましくは2〜15個の炭素原子を含む。当該炭素原子の50%未満、特に20%未満にしか分岐が存在しない場合、そのC鎖はわずかしか分岐してないとみなされる。そのC鎖において、炭素原子の1個または複数が、ヘテロ原子、ヘテロ基、アリール基および/またはヘテロアリール基、好ましくはヘテロ基、アリール基および/またはヘテロアリール基で置換されている。好ましいヘテロ原子またはヘテロ原子群は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)O−、−N(H)−、−N(C−C−アルキル)−、−C(O)−、−C(NH)−、ならびに−N(H)C(O)−、−N(H)−C(O)−O−または−N(H)−C(O)−S−のようなそれらの組合せである。好ましいアリール基は、任意に1〜4個のC1−4アルキルで置換されているフェニルおよびナフチルである。好ましいヘテロアリール基は、任意に1または2個のC1−4アルキルで置換されている、ピリジル、ピリミジル、イミダゾリル、チエニル、フラニルである。式(I)から分かるように、スペーサーAは一方で頭部に結合し、他方でここでは示されていない分子の残り部分に結合している。頭部への結合は、図示の炭素原子の1つにおいて、共有単結合、例えばC−C−、C−N−、C−O−、C−S−結合、好ましくはC−C結合を介して行われる。前記の分子の残り部分への結合はまた、共有単結合、例えばC−C−、C−Si−、C−O−、C−N−結合を介して、好ましくはC−Si−結合を介して行われる。
【0028】
式(I)で表される特に好ましい官能基は、式(I’)で表されるものである。
【0029】
【化2】

(式中、A、n、X、XおよびXは前述した意味を有する)
【0030】
式(I)で表されるとりわけ好ましい官能基は、式(I’’)で表されるものである。
【0031】
【化3】

(式中、A、XおよびXは前述した意味を有する)
【0032】
式(I)で表されるとりわけ好ましい官能基は、式(I’’’)で表されるものである。
【0033】
【化4】

(式中、A、n、XおよびXは前述した意味を有する)
【0034】
式(I)で表されるとりわけ好ましい官能基は、式(I’’’’)で表されるものである。
【0035】
【化5】

(式中、AおよびXは前述した意味を有する)
【0036】
本発明によれば、本明細書中に記載する式(I)で表される1個または複数の官能基が外層に存在することができる。優れた特性を組合せまたは強化(相乗効果)するために、または混合物の製造が個々の化合物の製造よりも容易である場合には、さまざまな官能基の組合せ(または混合(Mischung))が好ましい。
【0037】
本発明は特に、式(I)で表される有効量の官能基を付与されている外層に関する。こうした官能基は、表面にのみ直接および/または外層全体にわたって存在していてよい。官能基が表面にのみ直接存在する場合でも、官能基はその有効量を、例えばXPSにより実験的に決定可能である。有効量はとりわけ、官能基が表面にのみ直接存在するか、および/または外層全体にわたって存在するかによって左右される。
【0038】
外層:本発明によれば外層の選択は重要ではなく、当分野の当業者なら多くのものを使用することができる。適切な外層としては、ポリマー層(例えば、ポリウレタン、アクリレート、エポキシドなど)、ゾル・ゲルタイプの層、自己組織化分子層(例えば、「SAM」など)が挙げられる。適切な層の選択はとりわけ、基材、および官能基の選択に依存するが、当業者なら簡単な試験で決定することができる。ゾル・ゲルタイプの層は特に良好な効果を示し、非常に柔軟に使用可能であり製造可能であるので、このような層が好ましい。
【0039】
基材に対する外層の結合は、共有結合、イオン結合、双極子相互作用、またはファンデルワールス相互作用によって生じるものでよい。自己組織化分子層およびゾル・ゲルは、共有相互作用を介して基材に結合することが好ましい。ポリマーは実質的に双極子相互作用またはファンデルワールス相互作用によって基材表面に付着する。
【0040】
外層における層の厚さは重要ではなく、広範囲にわたって変わり得る。自己組織化分子層の典型的な厚さは、1〜1000nm、好ましくは1〜50nmであり、ポリマーから得られるコーティングの典型的な厚さは、0.5〜1000μm、好ましくは10〜500μmであり、ゾル・ゲルから得られるコーティングの典型的な厚さは、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μmである。
【0041】
本明細書中に記載される「外層」は、式(I)(または(I’)〜(I’’’’))で表される官能基を含み、これらの官能基は層の表面および/または内側に有効量で存在することが好ましい。文脈に応じて(例えば、製造方法を記載する場合)、それらは「官能化外層」と称される。それとは逆に、外層のすべての特性を備えているが、式(I)(または(I’)〜(I’’’’))で表される官能基が未だ付与されていない場合は「非官能化外層」とみなすべきである。
【0042】
基材:本発明によれば基材の選択は重要ではなく、当分野の当業者なら多くのものを使用することができる。適切な基材としては、金属材料、セラミック材料、ガラス材料および/またはポリマー材料が挙げられる。本発明に関して好ましい金属材料は、アルミニウム、鉄およびチタニウムの合金である。本発明に関して好ましいポリマー材料は、重合体、重縮合体、重付加体、樹脂、および複合材料(例えば、GFK)である。基材自体は、複数の層から形成すること(「サンドイッチ構造」)ができ、すでにコーティングを含んでいて(例えば、ラッカー塗膜)もよく、または機械的もしくは化学的に処理すること(例えば、エッチング、研磨)もできる。
【0043】
本発明はさらに、前述した式(I)の官能基を有する外層を、凝固点降下(「凍結防止」)コーティングとして使用することに関する。前述した定義の他に、置換基はさらなる意味を持ち得る。すなわち、Xはさらに、pが整数0を表すとき、Hを表してもよい。したがって、本発明は、官能基が二または三官能性である(p=1であって、XがHを表さない)か、または単官能性(p=0およびX=H)であるコーティングにも関する。Aはさらに、1個または複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されている炭素原子数1〜20のスペーサーを表してもよい。したがって、本発明はまた、スペーサーが、エーテル(−O−)、チオエーテル(−S−)、アミン(−NH−)、アルキルアミン(−N(C1−C4アルキル)−)によって形成されているコーティングにも関する。
【0044】
本発明はさらに、本明細書中に記載されているような外層を凍結防止コーティングとして使用する方法に関する。
【0045】
驚くべきことに、本明細書中に記載する改変された表面において、前記で定義されたような凝固点降下を達成することができた。温度ヒステリシス/凝固遅延を実験で決定するのは手間がかかるので、ガラス表面上の水と本発明に基づいて改変された表面における水の凝固点の差を求め、その差を凝固点降下の尺度とみなす。
【0046】
本発明は第2の態様において、前述したような外層を有する基材の製造方法に関する。
【0047】
被覆済み基材の製造自体は知られているが、本明細書中に記載する特定の成分にはまだ適用されていない。この製造方法は、原理的に、式(I)で表される基の官能化がいかなる製造工程で起きるかに基づいている。さらに製造方法は、外層がゾル・ゲルタイプの層、ポリマー層、または自己組織化分子層であるかによって異なる。
【0048】
したがって、本発明は、本明細書中に記載されたような基材の製造方法であって、
a)未被覆基材を調製し、これを本明細書中に記載されたような官能化外層で被覆すること、またはb)非官能化外層で被覆された基材を調製し、これに式(I)の官能基を付与することを特徴とする製造方法に関する。
【0049】
方法a)官能化外層による被覆は、原理的にあらゆる既知の方法を用いて行うことができ、好ましい実施形態は後述する。式(I)の官能基を含む材料((I)を含むゾル・ゲル、ポリマーまたは自己組織化分子)の製造はそれ自体知られており、既知の方法と同様に行うことができ、後に説明する。
【0050】
方法b)官能化されていないが官能化可能な外層を含む基材は、それ自体知られているか、または既知の方法と同様に製造することができる。基材への式(I)の官能基の付与方法には、それ自体既知の、式(I)の適切な前駆体の非官能化外層との化学反応が挙げられ、典型的な反応としては、任意に触媒を用いる付加反応または置換反応がある。
【0051】
記載された製造方法の適切な実施形態は、以下に詳しく説明する。さらに、さまざまな製造方法に関して例示的形態を挙げる。
【0052】
ゾル・ゲル層:外層がゾル・ゲルタイプである場合、本発明に基づく基材の製造方法は、i)ゾル・ゲルを調製し、未被覆基材にゾル・ゲルを塗布するか、またはii)ゾル・ゲル前駆体を調製して未被覆基材に塗布し、続いてゾル・ゲルの形成中に加水分解および縮合を行うかである。対応する前駆体からゾル・ゲルを製造することは既知であるか、または加水分解および縮合を受ける適切な前駆体を使用して既知の方法と同様に行うことができる。ゾル・ゲルまたはゾル・ゲル前駆体の塗布は、それ自体知られており、既知の方法に準じ、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、スプレイまたはフラッドコーティングにより行うことができる。これらの方法に用いられる前駆体は、本明細書中に記載した式(I)の基をすでに含んでいる。i)による製造が好ましい。
【0053】
ポリマー層:外層がポリマー層である場合、本発明による基材の製造は、i)任意に液体中で分離するポリマーを調製し、未被覆基材に該ポリマーを塗布するか、またはii)未被覆基材に対して、任意に液体中で分離するモノマーを塗布し、続いて重合を行うか、またはiii)官能化されていないが官能化可能なポリマー外層を有する基材を調製し、該ポリマー層を式(I)の官能基を含む化合物により転換するかを含む。対応するモノマーから式(I)の官能基を含むポリマーの製造は既知であるか、または既知の方法と同様にポリマー形成反応(重合、重縮合、重付加)を受ける適切なモノマーの使用により行うことができる。そのようなポリマー形成反応は、例えば、触媒的、ラジカル的、光化学的(例えばUVを用いて)、または熱的に開始することができる。さらに、式(I)の官能基を含むモノマーを重合させる(iおよびiiの変形例)か、または式(I)の官能基を全く含まないモノマーを重合し、形成された非官能化ポリマーを1つまたは複数のさらなる反応で官能化ポリマーに転換する(iiiの変形例)。さらに、その製造工程の進行中に式(I)の官能基へ保護基を付与することが必要または適切な場合もある。ポリマーまたは対応するモノマーの調製は、物質の状態で、または希釈した状態、すなわちポリマー/モノマーを含む液体(懸濁液、乳濁液、溶液)で行うことができる。ポリマーまたはモノマーの塗布は、それ自体知られており既知の方法と同様に、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、スプレイまたはフラッドコーティングにより行うことができる。
【0054】
自己組織化分子層:外層が自己組織化分子層である場合、本発明による基材の製造には、i)自己組織化分子によって未被覆層を転換するか、またはii)官能化されていないが官能化可能な未官能化SAM外層を有する基材を調製し、式(I)の官能基を含む化合物によってこのSAM層を転換することが挙げられる。自己組織化分子を対応する出発物質から製造することは既知であるか、または既知の方法と同様に適切な出発物質を使用して、例えば置換および/または酸化還元反応によって行うことができる。前記分子による未被覆基材の転換はそれ自体既知であり、既知の方法と同様に、例えば、CVD、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレイまたはフラッドコーティングによって行うことができる。方法i)で使用される分子は本明細書中に記載された式(I)の官能基をすでに含んでおり、方法ii)で使用される分子は式(I)の官能基をまだ含んでない。式(I)の官能基が比較的高い分子量を有するときは、方法ii)が好ましい。
【0055】
さらに、製造工程の進行中に式(I)の官能基に保護基を導入することが必要または適切なこともある。このような分子の保護および脱保護自体は、当業者に既知である。
【0056】
本明細書中に記載された製造方法に追加して、それ自体は既知の精製工程、仕上げ工程、および/または活性化工程を先行または後続させることができる。こうような追加の工程は、とりわけ成分の選択に依存しており、当業者には周知である。追加の工程としては、機械的手法(例えば、研磨)または化学的手法(例えば、エッチング、パッシベーション、活性化、酸洗い)が挙げられる。
【0057】
本発明は第3の態様において、前述したような被覆済み基材を含んでなる装置に関する。
【0058】
すでに冒頭で記述したように、さまざまな装置において、凍結防止特性を備えたいとの要求がある。したがって、本発明は最も広い意味においてそのような装置に関する。特に、エネルギー発生およびエネルギー供給設備に使用される装置、輸送手段に使用される装置、食品分野に使用される装置、計測および制御機器に使用される装置、熱伝導システムに使用される装置、石油および天然ガスの輸送手段に使用される装置が含まれる。例としては、以下の装置・装備が挙げられる。
【0059】
エネルギー発生およびエネルギー供給設備:風力発電設備の回転翼、高圧電線がある。
【0060】
輸送手段および装備:航空機においては主翼のほか、回転翼、機体、アンテナおよび風防があり、自動車の風防があり、船舶においては船体のほか、マスト操舵翼および艤装であり、鉄道車両の外装があり、交通標識の表面がある。
【0061】
食品分野:冷凍庫の内張り、食品の包装材がある。
【0062】
計測および制御機器:各種センサーがある。
【0063】
熱伝導システム:凍土の輸送用装置、太陽発電設備の表面、熱交換器の表面がある。
【0064】
石油および天然ガスの輸送:石油および天然ガスを輸送する際に、ガス水和物の形成を避けるために設けられるガスとの接触面がある。
【0065】
本発明に基づき本明細書中に記載される外層は、前記装置を全体的または部分的に覆うことができる。被覆の程度は、とりわけ技術的必要性に依存する。したがって、回転翼においては充分な効果を得るために先端部を被覆すれば足りるが、風防のコーティングではそれに対して、完全またはほぼ完全な被覆が有利である。凝固点降下特性を保証するには、本明細書に記載の官能化層が最も外側(最も上)の層として存在することが重要である。
【0066】
本発明は第4の態様において、前述した装置の製造方法であって、
方法a)未被覆基材を含む装置を準備し、該装置を本明細書中に記載されたような官能化外層で被覆すること、または
方法b)本明細書中に記載されたような官能化外層を含む基材を準備し、該基材を前記装置に結合させることのいずれかを特徴とする製造方法に関する。
【0067】
これらの方法自体は既知であるが、それらの特定の基材には応用されてはいなかった。方法a)とb)は、官能化外層を施与する時点が実質的に異なる。
【0068】
方法a)によれば、まず所望の装置が製造され、次いで被覆される。このために、一般的なあらゆるコーティング方法、特にラッカー塗装、プリント、またはラミネートの分野で一般的といえる方法が考慮の対象になる。
【0069】
方法b)によれば、まず中間生成物(被覆済み基材)が生成され、これが半製品と結合されて、前記の装置が得られる。そのために、物質結合、力結合または形状結合の一般的なすべての結合方法が考慮の対象となる。典型的には、フィルムを接着するか、または接着、溶接、鋲接、もしくは同等の方法によって形状物を固定する。
【0070】
本発明は第5の態様において、式(II)で表される化合物に関する。
【0071】
【化6】

式中、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、H、C−Cアルキル、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
nは、整数0、1または2を表し、
mは、整数0、1または2を表し、
oは、整数0または1を表し、
pは、整数1を表し、
は、ヘテロ原子またはヘテロ基を表し、
は、任意に1個または複数の炭素原子が互いに独立に、アリール基、ヘテロ原子またはヘテロアリール基で置換されている炭素原子数1〜20のアルカンジイルを表し、
Rは、互いに独立に、任意に置換されている直鎖または分岐鎖C1−C8アルキルを表すか、
あるいは
は、Hを表し、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、H、C−Cアルキル、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
mは、整数0、1または2を表し、
nは、整数0、1または2を表し、
oは、整数0または1を表し、
pは、整数0を表し、
は、ヘテロ原子またはヘテロ基を表し、
は、任意に1個または複数の炭素原子が互いに独立に、アリール基、ヘテロ原子またはヘテロアリール基で置換されている炭素原子数1〜20のアルカンジイルを表し、
Rは、互いに独立に、任意に置換されている直鎖または分岐鎖C1−C8アルキルを表すか、
あるいは
は、Hを表し、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、Hを表し、
mは、整数0、1または2を表し、
nは、整数0、1または2を表し、
oは、整数1を表し、
pは、整数0または1を表し、
は、ヘテロ基を表し、
は、任意に1個または複数の炭素原子が互いに独立に、アリール基、ヘテロ原子またはヘテロアリール基で置換されている炭素原子数1〜20のアルカンジイルを表し、
Rは、互いに独立に、任意に置換されている、直鎖または分岐鎖C1−C8アルキルを表し、
ただし、化合物
4−ヒドロキシ−N−(3−トリエトキシシリル)プロピル)ブチルアミド、
3−(2−(トリメトキシシリル)エチルチオ)プロパン−1,2−ジオール、
2−エチル−2−((3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)メチル)プロパン−1,3−ジオール、
2−エチル−2−((3−(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)プロパン−1,3−ジオールは除く。
【0072】
これらの化合物は、トリアルコキシシラン基の存在ゆえに、後述するようにゾル・ゲルの適切な前駆体である。
【0073】
さらに、式(II)の化合物と式(I)で表される官能基との関係は明らかにされている。式(I)に基づくスペーサー「A」は、式(II)における以下の特定の原子団
【0074】
【化7】

に相当する。式(I)および式(II)の頭部は同一であり、式(I)で定義された「共有結合」は、式(II)においては−SiOR−残基への単結合により達成される。
【0075】
有利な実施形態において、式(II)で表される化合物の置換基は、以下の意味を有する。
は好ましくは、OH、SH、NHを表す。
は特に好ましくは、OH、SHを表す。
はとりわけ好ましくは、OHを表す。
は好ましくは、OH、SH、NHを表す。
は特に好ましくは、OH、SHを表す。
はとりわけ好ましくは、OHを表す。
は好ましくは、H、OH、SH、NHを表す。
は特に好ましくは、H、OH、SHを表す。
はとりわけ好ましくは、HまたはOHを表す。
Rは好ましくは、置換基がハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシを含む群から選択される、任意に置換されている直鎖または分岐鎖C1−6アルキルを表し、
Rは特に好ましくは、直鎖または分岐鎖C1−6アルキル、特にメチル、エチル、n−、iso−プロピル、n−、iso−、sec−、tert−ブチル、n−ヘキシルを表し、
Rはとりわけ好ましくは、メチル、エチルを表す。
mは好ましくは、整数1を表す。
nは好ましくは、整数0または1を表す。
nは特に好ましくは、整数0を表す。
oは好ましくは、整数1を表す。
pは好ましくは、整数1を表す。
は好ましくは、O、S、N(H)を含む群から選択されるヘテロ原子、またはS(O)、−N(H)−C(O)−、−N(H)−C(O)−O−、−N(H)−C(O)−S−、−N(H)−C(O)−N(H)−もしくは−O−S(O)−を含む群から選択されるヘテロ基を表す。
は特に好ましくは、−N(H)−C(O)−、−N(H)−C(O)−O−、−N(H)−C(O)−S−、−N(H)−C(O)−N(H)−および−O−S(O)−を含む群から選択されるヘテロ基を表す。
はとりわけ好ましくは、ヘテロ基−N(H)−C(O)−S−を表す。
は好ましくは、任意に炭素原子の1個がフェニル基で置換されている炭素原子数2〜15のアルカンジイルを表す。
【0076】
式(II)で表される特に好ましい化合物は、式(II’)で表されるものである。
【0077】
【化8】

式中、置換基は前述で定義されたとおりであって、Aは好ましくは、S、O、NH、特に好ましくはSを表す。
【0078】
式(II)で表される特に好ましい化合物は、式(II’’)で表されるものである。
【0079】
【化9】

式中、置換基は前述で定義されたとおりであって、Xは、S、O、CH、NHを表し、好ましくはS、O、NHを表し、特に好ましくはSを表す。
【0080】
式(II)で表される特に好ましい化合物は、式(II’’’)で表されるものである
【0081】
【化10】

式中、置換基で定義されたとおりであって、Aはヘテロ基を表す。式(II’’’)の化合物において、Aは好ましくは、−N(H)−C(O)−、−N(H)−C(O)−O−、−N(H)−C(O)−S−、−N(H)−C(O)−N(H)−および−O−S(O)−、ならびに特に好ましくは、−N(H)−C(O)−S−を表す。式(II’’’)の化合物において、mは好ましくは0を表す。式(II’’’)の化合物において、Xは好ましくは、OH、SH、特に好ましくはOHを表す。式(II’’’)の化合物において、Aは好ましくは、任意に炭素原子の1つがフェニル基で置換されている炭素原子数2〜15のアルカンジイルを表す。
【0082】
式(II)で表される化合物は、さまざまな光学異性体の形で存在し得て、本発明は、エナンシオマー、ジアステレオマーまたはアトロプ異性体のようなあらゆる形、ならびにラセミ混合物、光学的に濃縮された混合物、または光学的に純粋な化合物に関する。
【0083】
さらに式(II)で表される化合物は、さまざまな塩の形で存在してもよく、本発明はそのすべての形、特にハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩のような酸付加塩、およびアルカリまたはアルカリ土類金属の塩に関する。
【0084】
本発明は第6の態様において、式(II)で表される化合物の製造方法に関する。本明細書中に記載されている種々の製造方法a)、b)、c)は、原理的には既知ではあるが、いままで特定の出発物質には適用されなかった反応であり、したがって新規の(類似の)方法として本発明の対象となる。
【0085】
方法a)は、Aが基−X−C(O)−N(H)−を表すとき、任意に希釈剤の存在下および任意に反応助剤の存在下で、式(III)で表される化合物
【0086】
【化11】

[式中、置換基は式(II)で定義されたとおりであり、XはS、O、CH、NHを表す]を、式(IV)で表される化合物
【0087】
【化12】

[式中、置換基は式(II)で定義されたとおりである]により転換することを含む。H酸性化合物(H−aciden Verbindungen)(III)を用いたイソシアネート(IV)の転換は、それ自体知られており、既知の方法に準じて行うことができる。式(III)および(IV)で表される出発物質は既知であるか、または既知の方法に従って製造することができる。
【0088】
方法b)は、記号oが1を表す(すなわち、A1が存在する)とき、任意に希釈剤の存在下および任意に反応助剤の存在下で、式(V)で表される化合物
【0089】
【化13】

[式中、置換基は式(II)で定義されたとおりである]を、式(VI)で表される化合物
【0090】
【化14】

[式中、置換基は式(II)で定義されたとおりであり、LGは離脱基(特にハロゲン、例えばCl、Br、I)を表す]により転換することを含む。式(V)で表されるH酸性化合物による、式(VI)で表される活性型化合物の転換は、典型的な求核置換反応であり、それ自体既知であって、既知の方法に準じて行うことができる。式(V)および(VI)で表される出発物質は既知であるか、または既知の方法を用いて製造することができる。
【0091】
方法c)は、任意に希釈剤の存在下および任意に反応助剤の存在下、式(VII)で表される化合物
【0092】
【化15】

[式中、置換基は式(II)で定義されたとおりであり、A2’は炭素原子2個だけ短い鎖を有するAの意味を有する]を、式(IIX)で表される化合物により転換することを含む。
H−SiOR (IIX)
【0093】
式中、Rは式(II)で定義されたとおりである。式(VII)で表されるアルケン誘導体による、式(IIX)で表されるシランの転換は、典型的な求核付加であり、それ自体は既知であって、既知の方法に準じて行うことができる。式(VII)および(IIX)で表される出発物質は既知であるか、または既知の方法を用いて製造することができる。この方法は、インデックスoが0の(すなわち、Aが存在しない)とき、特に有利なことが知られている。
【0094】
a)、b)またはc)の方法による転換では、それに続いて、精製、単離、後続反応といったさらなる工程を行うことができる。前記の転換では、反応混合物が生じることもある(例えば、位置異性体、立体異性体)。そのような反応混合物は、後述するゾル・ゲル形成に直接使用するか、またはまず単離および精製を行い、次いで転換させることもできる。対応する精製工程および単離工程は、当業者には知られており、式(II)の化合物が生成する置換様式に依存する。典型的な精製工程としては、結晶化(任意に塩形成の後)、クロマトグラフィーによる精製(例えば、分取HPLCによる)が挙げられる。
【0095】
本発明に基づく方法は、希釈剤(溶剤または懸濁化剤)の存在下で実施することができる。個々の反応に対して適切な希釈剤は既知であるか、または簡単な実験で同定することができる。また、それらの反応は、希釈剤を用いずに[すなわち、物質のままで(in Substanz)]実施することもできる。この場合は、任意に最後に成分を添加してもよい。
【0096】
本発明に基づく方法は、反応助剤(触媒、酸、塩基、緩衝剤、活性化剤など)の存在下で実施することができる。個々の反応に対する適切な反応助剤は、既知であるか、簡単な実験で同定することができる。
【0097】
本発明に基づく方法は、以下の反応図式によっていっそう明らかになるはずであり、詳しくは本明細書中の例示的実施形態を参照にされたい。後述する例示的実施形態に挙げられる化合物が、特に好ましく、本発明の対象である。以下の図式、特にc)において、保護基の導入が有利であるかまたは必要であることが判明している。そのような保護基は、例えば、トリメチルシリルクロリドを用いて導入することができる。
【0098】
方法a)の例
【0099】
【化16】

【0100】
方法b)の例
【0101】
【化17】

【0102】
方法c)の例
【0103】
【化18】

【0104】
本発明は第7の態様において、式(II)の化合物を含む(含有する、または、から構成される)ゾル・ゲルに関する。したがって、一実施形態において、本発明に基づくゾル・ゲルは、排他的または実質的に、式(II)で表される化合物の1種または複数、好ましくは1種から構成されている。また別の実施形態においては、本発明に基づくゾル・ゲルは、式(II)で表される化合物の1種または複数、好ましくは1種とともに、さらなるアルコキシシリル化合物から構成されている。そのような組合せにより、例えば、物理化学的特性(吸着、機械的特性、加工性など)にさらなる影響を与えることができる。
【0105】
本発明は第8の態様において、式(II)の化合物を含むゾル・ゲルの製造方法に関する。それに対応する前駆体である式(II)の化合物からゾル・ゲルを製造する方法は、既知の方法と同様に実施することができる。典型的には、ゾル・ゲルの生成は酸または塩基触媒による加水分解、および後続の縮合によって行われる。好ましくは式(II)の化合物を含む溶液がこの反応に使用される。好ましい溶剤は、水および/またはC1−4−アルコール、特にはエタノールである。この反応は酸触媒され、例えば希釈された鉱酸、特には塩酸の存在下で行うことが好ましい。反応温度は幅広い範囲で変えることができ、室温(約25℃)が適切であることが知られている。この製造方法および別の製造方法に関連する詳細は、対応する(式(I)の官能基に関する)前述の説明および製造例を参照にされたい。
【0106】
本発明は第9の態様において、外層として、式(II)で表される1種もしくは複数の化合物、または式(II)で表される1種もしくは複数の化合物を含むゾル・ゲルを含有する被覆済み基材、およびその製造方法に関する。この基材およびその製造方法に関しては、式(I)の官能基についての対応する前記の説明を参照されたい。
【0107】
本発明は第10の態様において、凍結防止コーティングとして、式(II)の化合物および/または式(II)の化合物を含むゾル・ゲルの使用に関する。
【0108】
本発明はさらに、凍結防止コーティングとして、式(II)の化合物および/または式(II)の化合物を含むゾル・ゲルの利用方法に関する。
【0109】
本発明は第11の態様において、外層として式(II)の化合物を含有するゾル・ゲルを含む装置およびその製造方法に関する。この装置およびその製造方法に関しては、式(I)の官能基についての対応する前記の説明を参照されたい。
【実施例】
【0110】
本発明を、非限定的な以下の例によってさらに説明する。
例1
【0111】
前駆体:保護ガス下、50mLの滴下漏斗を装着した50mLの三つ口丸底フラスコ中に1−チオグリセリン(Sigma Aldrich社製)2.01g(18.66mmol)(98%)を投入する。25mLの滴下漏斗中に(3−イソシアネートプロピル)トリエトキシシラン4.42g(18.68mmol)を量り取り、15分間かけて滴下する。その際、成分は直ちに反応して、S−2,3−ジヒドロキシプロピル3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモチオエート(チオグリシラン)になる。この反応生成物を室温にて12時間撹拌した。合成された前駆体は無色で粘性がある。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6中)δ(ppm)、8.05(s,1H)、4.85(d,1H)、4.54(t,1H)、3.75(q,6H)、3.48(m,1H)、3.34(d,1H)、3.28(t,2H)、3.00(m,2H)、2.88(m,1H)、1.45(m,2H)、1.14(t,9H)0.45(m,2H)
13C-NMR(75MHz,DMSO-d6中)δ(ppm)、165.85、71.16、64.47、57.65、42.23、32.66、22.71、18.18、7.17
【0112】
ゾル・ゲル:続いて、生成物3gをエタノール15mL(分析用)中に溶解し、0.01mol/Lの塩酸3mLと混合する。反応混合物を室温にて30時間撹拌し、生成したゾル・ゲルをアルゴン下で5℃にて保存する。
【0113】
官能化基材:前処理したスライドガラスを、ディップコーターにより前記ゾル・ゲル中に浸し、次いで減圧キャビネットデシケーター中で架橋させる(1h/120℃)。
例2
【0114】
前駆体:25mLの滴下漏斗を装着した50mLの三つ口丸底フラスコ中にグリセリン1g(10.96mmol、非含水)およびジメチルホルムアミド15mL(非含水)を投入する。50mLの滴下漏斗中に(3−イソシアネートプロピル)トリエトキシシラン)2.85g(11.52mmol)を量り取り、保護ガス下に20分間かけて滴下し、5h/50℃で撹拌する。反応後、室温にて超真空ポンプによりジメチルホルムアミドを除去し、その際、生成物は高粘度の透明な液体として得られた。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6中)δ(ppm)、7.05(s,1H)、4.85(d,1H)、4.58(t,1H)、3.75(q,6H)、3.48(m,2H)、3.34(m,3H)、2.98(m,2H)、1.45(m,2H)、1.14(t,9H)0.45(m,2H)
13C-NMR(75MHz,DMSO-d6中)δ(ppm)、156.33、69.76、65.38、52.75、42.93、22.94、18.06、7.11
【0115】
ゾル・ゲル:前記の生成物3gをエタノール20mL中に溶解し、0.01mol/Lの塩酸3mLにより加水分解する。この混合物を室温にて24時間撹拌する。生成したゾル・ゲルをアルゴン下で5℃にて保存する。
【0116】
官能化基材:前処理したスライドガラスに、ディップコーターにより前記のゾル・ゲルを被覆し、次いで減圧キャビネットデジケーター中で架橋させる(1h/120℃)。
例3
【0117】
前駆体:25mLの滴下漏斗を装着した50mLの三つ口丸底フラスコ中に2−メルカプトエタノール2g(25.59mmol)(Sigma Aldrich社製)を投入する。50mLの滴下漏斗中に(3−イソ−シアネートプロピル)トリエトキシシラン6.33g(25.59mmol)を量り取り、保護ガス下に15分間かけて滴下する。その際、成分は直ちに反応してS−2−ヒドロキシエチル3−(トリエトキシシリル)プロピル−カルバモチオエートになる。反応物を室温にて12時間撹拌した。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6中)δ(ppm)、8.1(s,1H)、4.85(t,1H)、3.75(q,6H)、3.48(q,2H)、3.05(q,2H)、2.85(t,1H)、1.45(m,2H)、1.14(t,9H)0.45(m,2H
13C-NMR(75MHz,DMSO-d6中)δ(ppm)、165.27、61.00、57.66、43.23、31.33、22.70、18.15、7.17
【0118】
ゾル・ゲル:続いて、生成物3gをエタノール16.4mL(分析用)中に溶解し、0.01mol/Lの塩酸3.3mLと混合する。反応混合物を室温にて24時間撹拌し、生成したゾル・ゲルをアルゴン下で5℃にて保存する。
【0119】
官能化基材:前処理したスライドガラスを、ディップコーターにより前記ゾル・ゲル中に浸し、次いで減圧キャビネットデシケーター中で架橋させる(1h/120℃)。
例4
【0120】
前駆体:4−ヒドロキシ−N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ブチルアミド(ABCR)は購入して使用した。
【0121】
ゾル・ゲル:前駆体3gをエタノール17.4mL(分析用)中に溶解し、0.01mol/Lの塩酸3.5mLと混合する。反応混合物を室温にて24時間撹拌し、生成したゾル・ゲルをアルゴン下で5℃にて保存する。
【0122】
官能化基材:前処理したスライドガラスを、ディップコーターにより前記ゾル・ゲル中に浸し、次いで減圧キャビネットデシケーター中で架橋させる(1h/120℃)。
【0123】
スライドガラスの前処理:
前記スライドを、20%苛性ソーダおよび30%過酸化水素(2:1比)から得られる溶液中で前処理する。前処理(酸洗い)の時間は約3時間である。続いて、このスライドを蒸留水で洗ってエタノール(分析用)ですすぐ。
【0124】
官能化基材の分析:一般的な実験手順:本実験の構成を図5に示すが、そこでの符号の意味は以下のとおりである。
SL 合成空気を含むガスボンベ
LM1 空気流量計(湿度調節用)
LM2 空気流量計(空気流調節用)
LB 空気加湿器
1 HPLC膜(大きな水滴の保持/分離)
FM 湿度計
LM3 空気流流量計(全空気流の測定用)
TK 温度室
M 顕微鏡
2 給水
3 液体窒素ポンプ
4 温度調節器
5 排水
6 窒素
【0125】
ガスボンベの合成空気(窒素・酸素の混合物)は、温度室への湿気輸送に用いられる。空気の湿度調節は、制御可能な空気流量計(ROTA)を介して行われ、その一方は空気の相対湿度を調節するため、もう一方は空気の流量を調節するために一般に設けられている。続いて、合成空気は、水を満たした空気加湿器に導入される。2本の空気流は空気加湿器を通過したのち再び一緒に導かれる。したがって、望まれる空気の相対湿度は、両空気流の変更により望みの値に調整することができる。HPLC膜の機能は、水滴の粒径分布の均一性を確保することであり、大きな水滴ほど保持される。ロートローグ・ハイドロログ(Rotrog Hydrolog)を用いて、加湿された合成空気の相対湿度を測定し、任意にコンピュータ上に表示させる。液体窒素ポンプは温度室の強力な冷却(−100℃まで)のために使用され、水供給は、場合による加熱処理において冷却に役立つ。パラメーターを調節した後、被覆されたスライドを温度室に置き、続いて冷却勾配(Abkuehlrampe)の調整を行う。水の凝固点の観察は顕微鏡を用いて実施され、任意に凍結挙動の画像を記録し、コンピュータで処理する。
【0126】
温度室における測定:冷却勾配で加湿するための空気流を2L/分に、空気の相対湿度を15%に調節した。続いて、半分被覆した小ガラスプレートを温度室に置き、顕微鏡(Zeiss社製、EC Epiplan−NEOFUIAR 10x/0.25 HD DIC Objektiv、またはZeiss社製、LD ACHORPLAN 20x/040 Korr Objektiv)下で、ガラスとコーティングとの界面に焦点を当てた。測定のために、1℃/分の冷却勾配により温度調節器を−100℃の最終温度に設定した。
【0127】
以下の表に、冷却勾配速度1℃/分による、ガラス(対照)とコーティング(例1、2、3、および4)とで生じる凝固点の差を示す。
【0128】
【表1】

【0129】
前記の例に基づいて被覆された基材を、さらに顕微鏡で観察した。図1の顕微鏡写真は、例1に基づく被覆面(左)の水滴および未被覆面(右)の氷を示す。両方の面の温度は同じである。図2の顕微鏡写真は、例2に基づく被覆面(左)の水滴および未被覆面(右)の氷を示す。両面の温度は同じである。図3の顕微鏡写真は、例3に基づく被覆面(左)の水滴および未被覆面(右)の氷を示す。両面の温度は同じである。図4の顕微鏡写真は、例4に基づく被覆面(左)の水滴および未被覆面(右)の氷を示す。両面の温度は同じである。
例5
【0130】
凍結実験において、例3に従って被覆したアルミニウム棒(Aluminiumbalken)3本を未被覆のアルミニウム棒とともに凍結させた。凍結の結果、−8℃にて霰が生じた。これにより、小滴は未被覆棒の表面よりも被覆済み棒の表面で遅く凍ることが明らかになった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化外層を含む基材において、前記外層が式(I)で表される官能基を有し
【化1】

[式中、
は、OH、SHを表し、
は、OH、SHを表し、
は、H、C−Cアルキル、OH、SHを表し、
nは、整数0、1または2を表し、
pは、整数1を表し、
Aは、任意に1個または複数の炭素原子が、ヘテロ基、アリール基および/またはヘテロアリール基で置換されている炭素原子数1〜20のスペーサーを表す]、
該式(1)で表される官能基が共有結合していることを特徴とする基材。
【請求項2】
nが整数0を表すか、またはnが整数1を表し、かつXがH、OH、SHを表すことを特徴とする請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記スペーサーAにおいて、
a.前記ヘテロ原子またはヘテロ原子群が
i.−S(O)−、−S(O)−、−N(H)−、−N(C〜C−アルキル)−、−C(O)−、−C(NH)−、
ii.前記の基の組合せ、および
iii.前記の基と−O−、−S−との組合せ、を含む群から選択され、
b.前記アリール基が、任意に1〜4個のC1−4アルキルで置換されているフェニルおよびナフチルを含む群から選択され、
c.前記ヘテロアリール基が、任意に1または2個のC1−4アルキルで置換されている、ピリジル、ピリミジル、イミダゾリル、チエニル、フラニルを含む群から選択される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の基材。
【請求項4】
前記外層が、ゾル・ゲルタイプの層、ポリマー層(特にポリウレタン)および自己組織化分子層を含む群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の基材。
【請求項5】
前記基材が、金属材料、セラミック材料、ガラス材料、ポリマー材料を含む群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の基材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の式(I)で表される官能基を有し、該式中、
はHを、pは整数0を表し、かつ/または
Aは、1個または複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されている炭素原子数1〜20のスペーサーを表す官能化外層の、凝固点降下(「凍結防止」)コーティングとしての使用。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の基材を製造する方法において、
a.非被覆基材に請求項1〜4のいずれか一つに記載の官能化外層を施与すること、または
b.官能化されていないが官能化可能な外層で被覆された基材に、請求項1〜3のいずれか一つに記載の式(I)で表される官能基を付与することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の基材を含む装置。
【請求項9】
a.風力発電設備の回転翼、高圧電線、
b.航空機における主翼、回転翼、機体、アンテナおよび風防、自動車の風防、船舶における船体、マスト、操舵翼および艤装、鉄道車両の外装、交通標識の表面、
c.冷凍庫の内張り、食品の包装材、
d.センサー、
e.スラッジ輸送装置、太陽発電設備の表面、熱交換器の表面、
f.石油および天然ガスを輸送する際にガスと接触する表面、
を含む群から選択される請求項8に記載の装置。
【請求項10】
請求項8または9のいずれかに記載の装置を製造する方法において、
a.非被覆基材を含む装置を準備し、該装置に請求項1〜4のいずれか一つに記載の官能化外層を施与すること、または
b.請求項1〜5のいずれか一つに記載の基材を準備し、該基材を該装置に結合することのいずれかを特徴とする製造方法。
【請求項11】
式(II)で表される化合物であって
【化2】

[式中、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、H、C−Cアルキル、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
mは、整数0、1もしくは2を表し、
nは、整数0、1もしくは2を表し、
oは、整数0もしくは1を表し、
pは、整数1を表し、
は、ヘテロ原子もしくはヘテロ基を表し、
は、任意に1個もしくは複数の炭素原子が互いに独立に、アリール基、ヘテロ原子もしくはヘテロアリール基で置換されている炭素原子数1〜20のアルカンジイルを表し、
Rは、互いに独立に、任意に置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1−C8アルキルを表すか、
または
は、Hを表し、
は、OH、SH、NH、N(C−Cアルキル)を表し、
は、Hを表し、
mは、整数0、1もしくは2を表し、
nは、整数0、1もしくは2を表し、
oは、整数1を表し、
pは、整数0もしくは1表し、
は、ヘテロ基を表し、
は、任意に1個もしくは複数の炭素炭素原子が互いに独立に、アリール基、ヘテロ原子もしくはヘテロアリール基で置換されている炭素原子数1〜20のアルカンジイルを表し、
Rは、互いに独立に、任意に置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1−C8アルキルを表す]、
ただし化合物
4−ヒドロキシ−N−(3−トリエトキシシリル)プロピル)ブチルアミド、
3−(2−(トリメトキシ−シリル)エチルチオ)プロパン−1,2−ジオール、
2−エチル−2−((3−(トリメトキシシリル)プロポキシ)メチル)プロパン−1,3−ジオール、
2−エチル−2−((3−(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)プロパン−1,3−ジオールを除く化合物。
【請求項12】
前記の式中、
は、H、OH、SHを表し、
mは、整数1を表し、
nは、整数0もしくは1を表し、
oは、整数1を表し、
は、−N(H)−C(O)−、−N(H)−C(O)−O−、−N(H)−C(O)−S−、−N(H)−C(O)−N(H)−および−O−S(O)−を含む群から選択されるヘテロ基を表し、
は、任意に1個の炭素原子がフェニル基で置換されている炭素原子数2〜15のアルカンジイルを表し、
Rは、置換基がハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシを含む群から選択された、任意に置換されている直鎖もしくは分岐鎖C1−6アルキルを表す、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
請求項11または12のいずれかに記載の式(II)の化合物を製造する方法において、
a.Aが基−X−C(O)−N(H)−を表すとき、任意に希釈剤の存在下および任意に反応助剤の存在下で、式(III)
【化3】

[式中、置換基は請求項11で定義されたとおりであり、XはS、O、NHを表す]で表される化合物を、式(IV)
OCN−A−SiOR (IV)
[式中、置換基は請求項11で定義されたとおりである]で表される化合物によって転換させることを含むこと、または
b.記号oが1を表すとき、任意に希釈剤の存在下および任意に反応助剤の存在下で、式(V)
【化4】

[式中、置換基は請求項11で定義されたとおりである]で表される化合物を、式(VI)
LG−A−SiOR (VI)
[式中、置換基は請求項11で定義されたとおりであり、LGは離脱基を表す]で表される化合物によって転換させることを含むこと、または
c.任意に希釈剤の存在下および任意に反応助剤の存在下で、式(VII)
【化5】

[式中、置換基は請求項11で定義されたとおりであり、A2’は炭素原子2個だけ短い鎖を有する請求項11に記載のAの意味をもつ]で表される化合物を、式(IIX)
H−SiOR (IIX)
[式中、Rは請求項11で定義されたとおりである]で表される化合物によって転換させることを含むこと、のいずれかを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項11または12のいずれかに記載の1種または複数の、式(II)で表される化合物を含むゾル・ゲル。
【請求項15】
任意にさらなる加水分解可能および/または縮合可能な化合物の存在下で、請求項11または12に記載の式(II)で表される化合物を加水分解および縮合させることを含む請求項14に記載のゾル・ゲルの製造方法。
【請求項16】
外層を含む基材において、
該層が
a.請求項14に記載のゾル・ゲルを含有するかもしくは該ゾル・ゲルからなるか、または
b.請求項11または12のいずれかに記載の式(II)で表される1種もしくは複数の化合物を含有するかもしくは該化合物からなる、ことを特徴とする基材。
【請求項17】
請求項14に記載のゾル・ゲル、または請求項11もしくは12に記載の式(II)で表される化合物の、凍結防止コーティングとしての使用。
【請求項18】
請求項16に記載の基材を含む装置。

【公表番号】特表2011−529106(P2011−529106A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518999(P2011−518999)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000263
【国際公開番号】WO2010/009569
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】