説明

凝縮効果が最少にされた蒸着源

材料を基板に堆積させるための、熱による物理的蒸着源であって、その材料を収容する細長い容器と、その容器内の材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにするためのヒーターとを備えており、その容器は、長手方向にコンダクタンスCBを持っている。この容器は、少なくとも1つの部材と、その容器のそれぞれの側を加熱してその容器の表面に凝縮する材料を減らす端部ヒーターとを備えていて、前記部材の長さ方向には複数の開口部が規定されていて、その開口部の全コンダクタンスがCAであって、式(I)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に材料をより均一に蒸着する改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光デバイス(有機エレクトロルミネッセンス・デバイスとも呼ばれる)は、2つ以上の有機層を第1の電極と第2の電極の間に挟むことによって構成できる。
【0003】
従来型構造のパッシブ・マトリックス有機発光デバイス(OLED)では、横方向に間隔を空けて並んだ複数の透光性アノード(例えばインジウム-スズ-酸化物(ITO)アノード)が、第1の電極群として透光性基板(例えばガラス基板)の表面にまず最初に形成される。次に、減圧状態(一般に10-3トル(1.33×10-1Pa)未満)に維持したチェンバーの中で、2つ以上の有機層が、それぞれの蒸着源からそれぞれの有機材料を蒸着することによって順番に形成される。OLEDの製造に用いられる典型的な有機層は、ドープされた、またはドープされていない有機発光材料に加え、ドープされた、またはドープされていない有機正孔注入材料と、ドープされた、またはドープされていない有機正孔輸送材料と、ドープされた、またはドープされていない有機電子輸送材料である。なおドープするとは、電気的性能、光学的性能、安定性を向上させるとともに、所定の材料の寿命、またはその材料で構成されたデバイスの寿命を長くするため、少量成分を添加することを意味する。横方向に間隔を空けて並んだ複数のカソードを、第2の電極群として、最も上に位置する有機層の上に配置する。カソードは、アノードとある角度(一般に直角)をなしている。
【0004】
電位(駆動電圧とも呼ばれる)を印加すると、このような従来型パッシブ・マトリックス有機発光デバイスは適切な列(アノード)とそれぞれの行(カソード)の間で順番に作動する。カソードのバイアスをアノードに対して負にすると、カソードとアノードが重なった領域によって規定される1つの画素から光が放出され、その光がアノードと基板を通過して見ている人に到達する。
【0005】
アクティブ・マトリックス有機発光デバイス(OLED)では、薄膜トランジスタ(TFT)によるアノード・アレイがそれぞれの発光部分に接続された第1の電極として備わっている。2つ以上の有機層が、上記のパッシブ・マトリックス・デバイスを構成する場合と実質的に同じようにして、蒸着により順番に形成される。共通する1つのカソードを、第2の電極として最も上に位置する有機層の上に配置する。アクティブ・マトリックス有機発光デバイスの構成と機能は、アメリカ合衆国特許第5,550,066号に記載されている(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0006】
有機発光デバイスを構成する上で有用な有機材料、蒸着する有機層の厚さ、層構造は、例えばアメリカ合衆国特許第4,356,429号、第4,539,507号、第4,720,432号、第4,769,292号に記載されている(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0007】
他の種類のイメージング装置(例えばコンピュータ化した放射線写真法のためのイメージング用リン光体、ディジタル式放射線写真法のためのX線光伝導装置)は、活性な材料を大面積にわたって均一に被覆する能力に依存する。
【0008】
十分に小さな基板だと、点状蒸着源を実現することが可能である。この場合、局在している加熱したるつぼから堆積させる材料が放出されるが、基板を局在している気化領域から十分に離すことで、コーティングが基板に沿って十分に均一になるようにする。基板のサイズが大きくなるか、作業距離が小さくなるにつれ、局在している蒸着源に対して基板を回転運動または遊星運動させる必要が出てくることがしばしばある。
【0009】
蒸着源を細長くし、蒸着源と基板を互いに並進移動させることにより、はるかに短い作業距離で望ましい均一性を実現することができるため、望むのであれば、速度をはるかに大きくすることと、材料をよりよく利用することができる。この方法を大面積(すなわち少なくとも一方向のサイズが15cmを超える基板)に拡張することは、点蒸着源の場合よりもかなり簡単である。
【0010】
有機発光デバイスを製造するためにある構造体の表面に有機層を熱によって物理的に蒸着するための細長い蒸着源が、譲受人に譲渡されたRobert G. Spahnによるアメリカ合衆国特許第6,237,529号に開示されている。Spahnが開示している蒸着源はハウジングを備えており、そのハウジングが、気化させることのできる固体有機材料を収容する囲いを規定している。ハウジングはさらに、上部プレートによって範囲が定められている。この上部プレートには蒸気流出スリット-開口部が設けられているため、気化した有機材料がスリットを通過して構造体の表面に到達できる。囲いを規定するハウジングは上部プレートに接続されている。Spahnが開示している蒸着源はさらに、上部プレートに取り付けられた熱伝導性バッフル部材を備えている。このバッフル部材は、囲いの中にある固体有機材料の表面から見える範囲からは有機材料の粒子が近づけないようにすることで、その有機材料の粒子が上部プレートのスリットを通過することを防止する。電位をハウジングに印加して熱を囲いの中にある有機固体材料に加えることでその有機固体材料を気化させると、粒子を固体材料の表面から放出させることができる。バッフルのサイズと間隔を適切に選択すると、気化した材料と放出されたすべての粒子は、まず最初に蒸着源の内側にある少なくとも1つの内面に衝突してからスリットを通って出て行かねばならない。
【0011】
譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第6,237,529号に開示されている蒸着源に対する改良が、上部プレートにスリットの代わりに開口部アレイを設けることで実現された。そのことが、Dennis R. Freemanらによる譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願公開第2003/0168013 A1号に開示されている。Freemanらは、開口部相互の間隔を変える(末端部近くで間隔をより狭くする)ことで、スリットの形状に伴う不均一性を解消できることに加え、末端部の効果(すなわち、蒸着源の長さが有限であるために蒸着源の末端部で蒸着速度が相対的に小さくなること)を打ち消せることを示している。
【0012】
さらに、ヒーターから発生する熱のあらゆる不均一性、または堆積させる材料による熱の吸収、または蒸着源の内部におけるその材料の分布により、蒸着源の長さ方向に沿った堆積が不均一になる可能性がある。不均一性を生じさせる可能性のあるさらに別の原因は、蒸着源の囲いから、予想に反し、気化した材料の供給に用いる開口部ではないところを通って漏れていくことである。このような漏れが蒸着源の末端部に存在している場合には、蒸着源の末端部から中心部に向かう蒸気流が、蒸着源の内部に圧力勾配を発生させ、その結果として、得られる堆積物が不均一になる可能性がある。
【0013】
Forrestら(アメリカ合衆国特許第6,337,102 B1号)は、有機材料と有機前躯体を気化させ、それを反応容器に供給する方法を開示している。反応容器の中には基板が配置してあり、固体または液体から発生した蒸気の供給は、キャリア・ガスを用いてなされる。Forrestらは、自分たちの発明の一実施態様において、適度に大きな反応容器の内部に基板を配置しており、その反応容器に供給される蒸気が混じり合って基板上で反応または凝縮する。彼らの別の実施態様は応用に関するものであり、例えば大面積の基板のコーティングや、そのようないくつかの堆積プロセスの連続的な実行が含まれる。Forrestらは、この実施態様において、基板の移動方向に対して垂直に材料を堆積させる連続ラインを形成するため、(この特許文書では、一列に並んだ穴を有する中空のチューブとして定義されている)ガス・マニホールドから供給されるガスのカーテンを使用することを開示している。
【0014】
Forrestらが開示している蒸気の供給という方法は、装置の中の蒸着ゾーンの外部(より多いのは、蒸着チェンバーの外部)で材料が蒸気に変換されるという“遠隔気化”を特徴とする。有機物の蒸気は、単独で、またはキャリア・ガスと組み合わさって蒸着チェンバーに運ばれ、最終的に基板の表面へと運ばれる。この方法を利用するときは十分に注意し、適切な加熱法を用いることで供給ラインにおける望ましくない凝縮を避けねばならない。この問題は、実質的により高温で望む程度まで気化する無機材料を用いることを考えるとき、より一層重要になる。さらに、気化した材料を供給して大面積を均一にコーティングする際には、ガス・マニホールドを用いる必要がある。Forrestらは、そのようなガス・マニホールドが必要であることに言及していない。
【0015】
Forrestらの開示内容からわかるように、当業者であれば、蒸着ゾーン内で蒸着源の長さ方向に沿って材料が気化する細長い蒸着源から均一な膜を形成するのは困難であることが予想できよう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、加熱式の直線状蒸着源を用いて堆積させた材料層が不均一になる可能性があることの理由の1つは、気化する材料が、蒸着源の内部に(特にいずれかの端部に位置する内壁に)凝縮し、したがって蒸着プロセスの間に蒸着源の中心からいずれかの端部へと向かう長さ方向の蒸気流が生じることであることが見いだされた。
【0017】
本発明の1つの目的は、蒸着ゾーン内で材料が蒸着源の長さ方向に沿って気化するとき、材料の内部凝縮を最少にして上記の問題を回避するという改善された物理的蒸着システムを提供することである。
【0018】
この目的は、材料を基板に堆積させるための、熱による物理的蒸着源であって、
a)長さ方向のコンダクタンスCBを持つ、該材料を収容するための細長い容器を含むこと;
b)該容器内の該材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにするためのヒーターを含むこと;
c)該容器は少なくとも1つの部材を有し、その部材の長さ方向に配置された複数の開口部が画定されており、該開口部の全コンダクタンスはCAであって、CA/CB≦0.5を満たすこと;そして
d)該容器のそれぞれの側を加熱してその容器の表面に凝縮する材料を減らすための端部加熱手段を備えていること
を特徴とする蒸着源によって達成される。
【0019】
本発明によれば、複数の開口部を有する細長い容器からの材料の蒸着を、蒸着中に起こるその材料の内部凝縮を減らすことにより、顕著に改善することができる。このことは、材料凝縮を減らすため容器の両端部を加熱する種々の配置において達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の説明は有機発光デバイスに関するものであるが、本発明は、ハロゲン化アルカリ・リン光体、アモルファス半導体や、他の発光層、リン光層、感光層(例えばイオン化放射線(例えば、X線、γ線、電子や、原子または分子をイオン化させるのに十分なエネルギーを持つ他のエネルギー種)の作用によって発光する層)の蒸着のほか、このような発光層または感光層をベースとしたデバイスで用いられる多彩な他の材料の蒸着にも応用できることが容易にわかるはずである。
【0021】
本発明により、容器の端部を加熱して容器表面への材料の凝縮を減らす構成にすることにより、内部凝縮効果を最少にする方法が提供される。
【0022】
材料の分布と加熱に関する不均一性や、漏れによって蒸着源の長さ方向に沿って生じる蒸気流の影響を受けないように設計した直線状の熱蒸着源が、Jeremy M. Graceらによって2003年1月28日に「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号に記載されている(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。この優れた性能を実現するために設計においてカギとなるパラメータは、コンダクタンス比、すなわち、蒸着源本体または“ボート”の長さ方向に沿ったコンダクタンスCBに対する複数の開口部の全コンダクタンスCAの比である。
【0023】
蒸着源本体またはボートは、気化させる材料を直接収容する容器にすること、またはそのような材料を収容するための容器と、その容器に備えつけたるつぼの組み合わせにすること、または蒸着源の内部に材料を収容し、気化した材料を開口部に分配する任意の構造体にすることが可能であることが理解されよう。CBは、ボートの長さ方向に沿った蒸気流に対する正味のコンダクタンスを表わす。コンダクタンスCAは、開口部の蒸気流に対するコンダクタンスを意味する。
【0024】
蒸気流は、堆積させる気化した材料の圧力Pmから生じる可能性、または追加のガスが気化した材料の部分圧Pmと組み合わさることによって生じる可能性がある。追加のガスは、不活性ガス(例えばアルゴン、他のあらゆる希ガス、窒素)または熱的、化学的に安定な他の分子ガスであることが好ましい。Jeremy M. Graceらによって2003年1月28日に「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているように、コンダクタンス比が小さいこと(0.5未満であり、0.1未満が好ましい)が、ボートの長さ方向に沿った圧力の不均一性を最少にする上で不可欠である。
【0025】
コンダクタンス比は、開口部のサイズを小さくすることによって、または蒸着源本体の断面のサイズ(断面のサイズは高さと幅であり、長さは、開口プレートの長軸に沿った長さとして定義される)を大きくすることによって、小さくすることができる。前者の場合、所定の蒸着速度にするのに必要な圧力は、開口部のサイズが小さくなるにつれて大きくなる。そのため有機材料をより高い動作温度に加熱する必要があろう。これは、熱分解しやすい有機材料にとって望ましくない。後者の場合、断面が大きいというのは、いずれかの端部に大きな壁面を持つことを意味する。
【0026】
コンダクタンス比CA/CBは、蒸着源本体内の圧力(Pm、またはPmと不活性ガスの部分圧)を大きくして過渡流状態または粘性流状態に到達させ、したがってコンダクタンスCBが圧力とともに大きくなるようにすることによっても小さくすることができる。蒸着源本体の圧力が大きくなったときに開口部が分子流または初期過渡流のままに留まっている(すなわち開口部のクヌーセン数Kが1よりも大きいかほぼ1に留まっている)場合には、それに合わせるようにしてCBがCAよりも大きくなるため、コンダクタンス比は小さくなる。ここにクヌーセン数Kは、クヌーセン数を調べようとする物体の最も小さなサイズに対するガス分子の平均自由行程の比である。
【0027】
過渡流状態は、0.01<K<1であるときに適用される。K>1では、蒸気流は分子流であり、分子が壁面と衝突して再び放出されることによって生じる。K<0.01だと粘性流が発生する。粘性流では、コンダクタンスは、粘性率に対する圧力の比と、形状因子とに依存する。アルミニウムトリス-キノレート(Alq)のサイズの分子に関しては、ほぼ0.5mmという小さなサイズの開口部が、Pm<13Paにおいて分子流となる。この圧力を超えた場合や開口部のサイズがより大きい場合には、Pmまたは開口部のサイズが連続的に大きくなるにつれ、流れは過渡流から粘性流へと変化することになる。
【0028】
容器またはるつぼの端部壁面が蒸着源の中央領域にある壁面や他の表面よりも顕著に冷たい場合には、材料がその端部壁面に凝縮する傾向がある。この凝縮によって蒸着源本体の内部で顕著な蒸気流が発生し、そのことによって蒸着源の中心からそれぞれの端部に向かって圧力が低下する。すると蒸着源の長さ方向に沿って蒸着速度が不均一になる。蒸発材料は、凝縮した材料の表面を加熱して気化させることができて凝縮する蒸気流に対抗できるようになるまで、蒸着源の端部に凝縮し続ける。凝縮した材料の加熱、気化は、その材料の熱伝導率が小さいことや、その材料の表面が熱源(すなわちバッフルと開口プレート、または独立に電力を供給されるヒーター)により近いことのいずれかまたは両方を通じて実現される。この点を過ぎると圧力の不均一性が実質的に緩和され、均一性に関する性能が向上する。
【0029】
蒸着源の均一性が蒸着源の内部での凝縮効果の悪影響を受ける過渡期間は、蒸着源からの蒸気の望ましい質量流量、蒸着源内部の形状因子、蒸着源にどのように熱が供給されるかの詳細、コンダクタンス比によって異なる。いくつかの実際的な形状と速度に関しては、過渡期間が何時間にもなる可能性があるため、その結果として製造時間と材料が無駄になる可能性がある。
【0030】
ここで図1を参照すると、長方形断面の細長い容器1を備える細長い蒸着源の概略図が示してある。細長い容器1には、気化させることのできる材料2(蒸発材料)が装填されている。カバーまたは蓋3が蒸着源本体を封止している。図1では、複数の開口部4が、カバー3の中心軸に沿って一列に配置されている。開口部4は、容器の封止に用いる上面に示してあるが、上面にある必要はなく、封止面(すなわちカバーまたは蓋)も容器の上面にある必要はない。部材(その中に開口部も含まれる)という用語を使用するときには、この用語に上記のすべての構造が含まれる。
【0031】
開口部4は、細長い任意のパターンにすることができる。例えば、互い違いになっているか揃っている複数の列にする。開口部4は任意の形状にすることが可能であり、例えば円形、長方形、楕円形、卵型、正方形にできる。容器1の断面は長方形以外の形状にすることができる(例えば円形、楕円形、多角形)。さらに、カバーまたは蓋3は、容器1を直接封止するか、容器1の開いているところを覆うことができる。さまざまな種類の締め具またはワイヤ(例えば伸縮バンド、ネジ式万力型締め具、ボルトと雌ネジが切られた穴を備えた内側フランジ、貫通穴とナットを備えた外側フランジなど)を用いてカバーまたは蓋を容器に接触させた状態で固定することができる。
【0032】
開口部4は、蒸着源の端部近傍での蒸着速度の低下を補償するため、さまざまなサイズ、形状、間隔で配置することができる。そのため得られるコーティングの厚さの均一性が改善される。開口部4のサイズは、(John F. O'Hanlon、『真空技術のユーザー・ガイド』、ジョン・ワイリー&サンズ社、ニューヨーク、1989年、第3章に与えられている公式に従って計算することにより得られる)開口部の全コンダクタンスCAが0.5CBよりも小さくなるように(好ましくは0.1CBよりも小さくなるように)選択する(ただしCBは、ボート(容器)の蒸気流に対する長さ方向に沿ったコンダクタンスである)。CBは、John F. O'Hanlon、『真空技術のユーザー・ガイド』、ジョン・ワイリー&サンズ社、ニューヨーク、1989年、第3章に与えられている公式に従って計算することにより得られる。Jeremy M. Graceらによって2003年1月28日に「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されているように、蒸発源の動作圧は、(望む被覆速度から決まる)望む質量スループットと、開口部の全コンダクタンスCAとによって決まる。コンダクタンスCAとCBを計算するときにはこの動作圧を考慮する必要がある。
【0033】
バッフル6により、粒子状物質が開口部に向かって放出されることを阻止し、開口部から出て行く蒸気が容器の内面とぶつかって物質流がうまく確立されるようにする。カバーまたは蓋3は導電性にすることができ、本体または容器は絶縁性にすること、またはその逆にすること、または両方とも絶縁性または導電性にすることが可能である。上面を抵抗式ヒーターとして利用する場合には、端部コンタクト5を用いて物理的に固定したり、その上面と電気的に接触させたりすることができる。あるいは電気的フィードスルー(図示せず)を容器の表面を貫通させて配置し、容器1内のバッフル6または追加ヒーター(図示せず)のいずれかと電気的に接触させることができる。開口部4を有するカバーまたは蓋3の表面は、バッフル6とは別に、またはバッフル6(または内部ヒーター)と直列または並列に加熱することができる。あるいは蒸発源は、外部熱源(図示せず)を用いて放射によって加熱することができる。
【0034】
容器の傾斜した端部壁面7(または両端部にあって上方に傾斜している底面)により熱源の視野因子が大きくなり、したがって端部壁面が鉛直方向である場合よりも蒸着源の両端部近くの温度が高温に維持されるため、その壁面上の内部凝縮が減る。傾斜した端部壁面7(または端部壁面7の近くにあって上方に傾斜している底面)により、傾斜していなければ細長い蒸着源の中心部よりも顕著に冷たくなったであろう領域に材料が蓄積することも防止される。傾斜した端部壁面7は、容器1の壁面ではなく、材料を保持するるつぼ(図示せず)の内面に実現することもできる。さらに、るつぼ(図示せず)の内壁面と外壁面の両方を、容器1の傾斜した端部壁面7に適合した形状にすることができる。
【0035】
内部凝縮効果を緩和する別の方法を図2に示してある。この図には、長方形断面の細長い蒸着源の概略が示してある。図1と同様、容器11には蒸発材料12が装填されている。開口部14とコンタクト15を有するカバー13を使用して蒸発材料を加熱する。バッフル16により、粒子状物質が開口部に向かって放出されることを阻止し、開口部から出て行く蒸気が容器の内面とぶつかって物質流がうまく確立されるようにする。上記の要素のさまざまな配置と、熱を加えるためのさまざまな構成と方法は、図1に関して説明した通りである。開口部14と容器11のサイズは、上記のようにコンダクタンスの基準に従って選択する。さらに、2つの延長部18が加熱される部材13に固定されていて、鉛直方向を向いた端部壁面に沿って下方に突起しているため、容器11の両端部が放射によって加熱され、したがって蒸発源の両端部における内部凝縮効果が緩和される。その代わりに、あるいは、それに加えて、延長部19をバッフル16に固定し、容器11の両端部が放射によって加熱され、したがって蒸発源の両端部における内部凝縮効果が緩和されるようにする。
【0036】
内部凝縮効果を小さくするための図1と図2に示した方法は受動的な方法である。端部凝縮効果を小さくする能動的な方法を図3に示してある。この図は、細長い蒸着源の縦断面の概略図である。前の図で説明したように、蒸着源は、容器21と、蒸発材料22と、加熱されるカバー23と、開口部14と、端部のコンタクト25と、バッフル26を備えている。開口部24と容器21のサイズは、上記のようにコンダクタンスの基準に従って選択する。
【0037】
さらに、加熱要素29が容器21の端部近くに配置されていて、熱を鉛直方向を向いた端部壁面に供給する。端部にある加熱要素29は、カバーまたは蓋23のそれぞれの側のそれぞれの端部開口部24に隣接した位置で容器21の端部を加熱する1つの方法を提供し、容器21の表面に凝縮する材料を減らすことで、容器21の端部壁面への内部凝縮を防止する。加熱要素29は、容器21の両端部と、その容器の中にあるるつぼ34を加熱する形状にできることが好ましい。電気リード線30を用い、加熱されるカバー23とは別に端部加熱要素29に電流を供給する。あるいは放射による蒸着源の両端部の加熱は、外部熱源によって実現できる。
【0038】
さらに、図3には、下部放射シールド31と、上部放射シールド32と、断熱絶縁プレート33が示してある。放射シールド31または32と断熱絶縁プレート33は、図1と図2に示した蒸着源と組み合わせて実現することもできるが、これらの図に示してはいない。これらの部材は、両端部を外部から放射によって加熱できるように、または図3に示してあるように両端部を内部加熱できるように配置することができる。上部放射シールド32は上面に開放領域を備えているため、蒸発材料が蒸着源から基板に行くことができる。断熱絶縁プレート33も同じ目的の開放領域を備えているため、加熱されるカバー23を容器21から断熱するとともに電気的に絶縁するのに役立つ。
【0039】
さらに、基板36を保持して並進移動させる基板並進移動組立体35と、容器を並進移動させる蒸着源並進移動組立体37が存在している。基板並進移動組立体35と蒸着源並進移動組立体37は、容器と基板36を相対的に移動させる。るつぼ34と、基板並進移動組立体35と、蒸着源並進移動組立体37は、図1と図2に示した蒸着源と組み合わせて実現することができる。基板36と容器21の並進移動は、モーターで駆動されるウォーム歯車、またはモーターで駆動されるリード・スクリューとリード・スクリュー・フォロワーの組み合わせ、または磁気的にカップルした滑動メカニズム、または基板36と容器21を相対運動させる他の構成によって実現し、基板が容器21の長軸に対して垂直に運動するようにする。容器21または基板36を並進移動させる手段は、堆積した材料がその並進移動メカニズムに蓄積するのを防ぐため、蛇腹式組立体か、ネスト式または伸縮式のシールドも備えることができる。
【0040】
単一の電源38、または複数の電源38を使用し、電気リード線30を通じて端部の加熱要素29に電流を供給する。電源38を用いる場合、変圧器や可変抵抗器を使用することによって、または交流波形(電圧または電流)のデューティ・サイクルを変化させることによって、印加する電流を調節することができる。
【実施例】
【0041】
本発明とその利点を以下の具体的な実施例によってさらに説明する。それぞれの実施例において、材料を収容する細長い容器を用意する。その容器の細長い方向のコンダクタンスはCBである。ヒーターが容器内の材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにする。容器は少なくとも1つの部材を備えており、その部材の長さ方向に沿って複数の開口部が規定されている。開口部の全コンダクタンスはCAであり、CA/CB≦0.5になっている。
【0042】
例1
端部にヒーターがない場合
【0043】
ステンレス鋼からなるシート材料でできた長さ50cmの容器を開口プレート/ヒーター組立体で覆った。グラフォイル(登録商標)ガスケットを用いてカバーを容器に密着させて封止し、コジェミカ(登録商標)でできたガスケットを用いてカバーと容器が電気的に短絡するのを防いだ。ガスケット、カバー、締め具式固定具は、周辺部のまわりに複数の穴を備えていた。その穴にボルトを通して容器に対して締めつけ、カバーを容器に固定した。
【0044】
開口プレートは49個の開口部を備えている。開口部は、その開口プレートの中心部32cmにわたって1cm間隔で配置し、両端部では、間隔を以下のように変える。開口部1〜9は、中心が、それぞれ0、6、12、19、26、34、42、51、60mmの位置にある。開口部40〜49は、中心が、それぞれ380、389、398、406、414、421、428、434、440mmの位置にある。開口部のこのような間隔パターンは、蒸着源のサイズが有限であること(すると蒸着源の両端部近傍で蒸着速度の低下が生じる)を補償するために選択した。開口部は、幅0.0125cm×長さ0.5cmの長方形のスロットである。
【0045】
長さ50cmの容器は断面が長方形であり、幅3.3cm、深さ4.6cmになっている。開口プレート/ヒーター組立体が固定されたこの容器の内部のサイズは、大まかに、幅3.2cm×深さ4.6cmである。容器を真空チェンバー内のステンレス鋼製放射シールド囲い込み部の中に配置し、高電流リード線を開口プレート(カバー)のそれぞれの端部に取り付けた(端部接続)。
【0046】
開口部と基板の距離は12.5cmである。基板平面内には、8個の水晶モニターからなるアレイを、蒸着源の中心を通る長軸の真上に、蒸着源の長さ方向に沿って配置した。これらセンサーの位置は以下の通りである。センサー1は、開口部1の真上に配置した(すでに述べたように高さ12.5cmの位置)。次にセンサー2〜8を蒸着源の軸線に沿って、センサー1からそれぞれ6.3、12.6、18.9、25.1、31.4、37.7、44cmの位置に配置した。センサー1とセンサー8を使用し、蒸着源の有限サイズ効果によって生じる蒸着源の両端部における出力の低下をモニターした。センサー2〜7を使用し、不均一性[不均一性=(最大速度-最低速度)/(最大速度+最低速度)]と、平均速度(センサー2〜7の読み取り値の平均)を計算した。細長い蒸着源からの堆積プロファイルは一般に中心に対して対称であるため、センサーの読み取り値をペア(2と7、3と6、4と5)にして平均し、センサーの作動に伴うノイズを減らした。不均一性は、3対のセンサーの平均値をもとにして計算した。
【0047】
この蒸着源は圧力Pmが約6.5Paで作動し、開口と基板の距離が12.5cmだと(中心領域における)アルミニウムトリスキノレート(Alq)の堆積速度が50オングストローム/秒となる。開口部のサイズが上記の値だと、材料が2.6cmの深さに装填されていて、上に説明した堆積速度が1オングストローム/秒である場合にはコンダクタンス比CA/CBの計算値が0.4未満になり、50オングストローム/秒の速度ではコンダクタンス比が0.05未満まで低下する。材料が1.3cmの深さに装填されていて、上に説明した堆積速度が1オングストローム/秒である場合には、コンダクタンス比CA/CBの計算値が0.2未満になり、50オングストローム/秒の速度ではコンダクタンス比が0.02未満まで低下する。(装填する材料が微量である場合の)コンダクタンス比の極限値は、堆積速度が1オングストローム/秒(Pmが約0.13Pa)では0.1未満であり、50オングストローム/秒(Pmが約6.5Pa)では0.01未満である。
【0048】
蒸着源に200gのアルミニウムトリスキノレート(Alq)を1.3cmの深さに装填し、アルミニウム製バッフルを蒸着源の長さ方向に沿って蒸着源の両端部からつり下げて配置した。その結果、バッフルは開口プレートの2.7mm下に位置する。蒸着源組立体を水晶モニター・アレイの下に配置し、いずれかの端部に(開口プレートに接続することによって)電流リード線を取り付け、このシステムをベース圧力となる2×10-6ミリバール以下まで減圧した。
【0049】
ヒーター電流を開口プレートに沿って印加すると蒸着源の出力が大きくなり、センサー・アレイで観察できる堆積速度になった。ヒーター電流を利用して速度を制御し、8時間かけて平均速度をゼロから約50オングストローム/秒まで増加させた後、4〜8オングストローム/秒まで低下させ、14時間にわたって放置した。次にこの速度を3時間かけて再び約50オングストローム/秒まで増加させた後、2時間かけて10オングストローム/秒まで低下させ、次いで4時間かけて2オングストローム/秒まで低下させた。次に蒸着源を放置して冷却し、速度をゼロにした。
【0050】
図4に、速度が最初の8時間に増加していくときの結果(白丸○)と、次の24時間にわたって作動させたときの結果(黒い菱形◆)が示してある。不均一性は、平均速度の関数としてプロットしてある。図4からわかるように、作動させた初期段階では、速度が大きくなる(そして作動時間が長くなる)と不均一性が小さくなる。
【0051】
最初は速度が大きくなるとともに不均一性が小さくなるという結果は、蒸発源の動作圧が大きくなり、それに伴って蒸発源の内部コンダクタンスが大きくなることによって生じる(そのことは、Jeremy M. Graceらによって2003年1月28日に「熱による物理的蒸着システムの設計法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されている)。すると蒸発源の長さ方向に沿った蒸気流に対する蒸発源の許容度が大きくなる。なおこの蒸気流は、この蒸発源の両端部における内部凝縮によって生じる。より大きな速度(40〜50オングストローム/秒)で不均一性がその後急激に小さくなるのは、端部での凝縮効果が小さくなるにつれて蒸発源の長さ方向に沿った蒸気流が少なくなることと関係している。この点を過ぎると、蒸発源の長さ方向に沿った蒸気流は、その効果が無視できる程度まで小さくなり、不均一性は、広い範囲の蒸着速度にわたってほぼ5%になる。
【0052】
蒸着源を冷却して数時間放置した後、チェンバーから取り出し、調べた。そのとき、明らかに蒸発源の容器内の周辺部に移動していたAlq蒸発材料の位置は変えなかった。次に蒸発源を再び組み立て、チェンバーに戻した。ヒーター電流を印加し、蒸発源の出力を3時間かけて10オングストローム/秒まで増加させた後、10時間にわたってその速度を維持した。次に、蒸発源の出力を50オングストローム/秒まで増加させ、4オングストローム/秒まで低下るという操作を14時間かけて行なった。速度をさらにもう一度50オングストローム/秒まで増加させ、10オングストローム/秒に戻すという操作を12時間かけて実行した後、速度を2時間かけて2オングストローム/秒まで低下させた。次に蒸発源への電流供給を停止し、放置して冷却した。
【0053】
図5に、(内部凝縮効果によって)すでに移動していた材料を用いて実験を開始して速度が最初に増加していくときの結果(白丸○)と、この実験でその後の残り時間にわたって作動させたときの結果(黒い菱形◆)が示してある。図5からわかるように、均一性は、一般に、広い範囲の速度にわたて操作速度とは独立であり、図5からわかるように速度に対して不均一性がヒステリシスを示すことはない。この実験はさらに、不均一性がヒステリシスを示すという挙動は、すでに説明した内部凝縮効果に伴う一時的な現象であることを明らかにしている。
【0054】
例2
例1と同じ実験装置を使用したが、容器の両端部を加熱する操作を追加することで容器の表面に凝縮する材料を減らした。例1の長方形容器の代わりに(図1の容器に関して概略を示してあるように)傾斜した端部壁面を有する容器(図1)を用いた。壁面は水平から約35°の角度傾斜していた。蒸発源に200gのAlqを装填し、真空チェンバーの中で、例1で説明したようにセンサー・アレイの下に配置した。所定の速度におけるコンダクタンス比と動作圧は、例1で説明した通りにした。
【0055】
ヒーター電流を開口プレートに沿って印加すると蒸着源の出力が大きくなり、センサー・アレイで観察できる堆積速度になった。ヒーター電流を利用して速度を制御し、8時間かけて平均速度をゼロから約50オングストローム/秒まで増加させた後、14時間かけて4〜8オングストローム/秒まで低下させた。次に速度を2時間かけて再び約50オングストローム/秒まで増加させた後、30オングストローム/秒まで低下させ、12時間にわたってその速度を維持した。次に速度を4時間かけて10オングストローム/秒まで低下させた後、さらに2オングストローム/秒まで低下させ、10時間にわたってその速度を維持した。次に蒸発源への電流供給を停止し、放置して冷却した。
【0056】
図6に、速度が最初の8時間に増加していくときの結果(白丸○)と、次の32時間にわたって操作させたときの結果(黒い菱形◆)が示してある。不均一性は、平均速度の関数としてプロットしてある。図6からわかるように、不均一性のヒステリシスは、実施例1の従来技術に関して図4に示したものと比べて顕著に少ない。
【0057】
例1のようにして例2の蒸発源を取り出し、容器内のAlq蒸発材料の分布を乱すことなく調べた。次に蒸発源を再び組み立て、最初の実験を行なったときと同様にして実験を行なった(8時間かけて50オングストローム/秒まで増加させた後、より小さな速度に下げてその状態を維持し、次の22時間かけて50オングストローム/秒まで再び増加させ、次いで遮断して数時間にわたって冷却する)。材料があらかじめ移動していたこの2回目の実験に関する速度の関数としての不均一性は、図5に示したのと同じであった。これは、ヒステリシスが顕著に少ない図6に示した挙動が一時的な効果であったことを示している。
【0058】
例3
例1と同じ実験装置を使用したが、容器のそれぞれの側を加熱して容器の表面に凝縮する材料を減らす構造を付加した。シート金属からなるタブ(図2の延長部18)を開口プレート(図2のカバー13)のそれぞれの端部にスポット溶接した。蒸発源に200gのAlqを装填し、真空チェンバーの中で、実施例1で説明したようにセンサー・アレイの下に配置した。所定の速度におけるコンダクタンス比と動作圧は、例1で説明した通りにした。
【0059】
ヒーター電流を開口プレートに沿って印加すると蒸着源の出力が大きくなり、センサー・アレイで観察できる堆積速度になった。ヒーター電流を利用して速度を制御し、8時間かけて平均速度をゼロから約50オングストローム/秒まで増加させた後、14時間かけて4〜8オングストローム/秒まで低下させた。次に速度を1/2時間かけて再び約50オングストローム/秒まで増加させた後、12時間にわたってその速度を維持した。次に速度を2時間かけて20オングストローム/秒まで低下させた後、2時間かけてさらに10オングストローム/秒まで低下させた。蒸発源への電流供給を停止し、放置して冷却して速度をゼロにした。
【0060】
図7に、速度が最初の8時間に増加していくときの結果(白丸○)と、次の32時間にわたって作動させたときの結果(黒い菱形◆)が示してある。不均一性は、平均速度の関数としてプロットしてある。図7からわかるように、不均一性のヒステリシスは、実施例1の従来技術に関して図4に示したものと比べて顕著に少ない。
【0061】
例1のようにして実施例3の蒸発源を取り出し、容器内のAlq蒸発材料の分布を乱すことなく調べた。次に蒸発源を再び組み立て、最初の実験と同様にして実験を行なった(8時間かけて50オングストローム/秒まで増加させた後、より小さな速度に下げてその状態を維持し、次の22時間かけて50オングストローム/秒まで再び増加させ、次いで電流供給を停止して数時間にわたって冷却する)。材料があらかじめ移動していたこの2回目の実験に関する速度の関数としての不均一性は、図5に示したのと同じであった。これは、ヒステリシスが顕著に少ない図7に示した挙動が一時的な効果であったことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による1つの細長い蒸着源の概略図であり、この蒸着源は、端部領域で材料がよりよく加熱されるようにするため、上方に傾斜した底面を端部に有する。
【図2】本発明による細長い蒸着源の概略図であり、この蒸着源は、端部領域で材料がよりよく加熱されるようにするため、加熱される下方突起延長部を端部に有する。
【図3】本発明による細長い蒸着源の概略図であり、この蒸着源は、能動的に加熱される端部を有する。この場合、熱は、熱入力部から別々に供給されて蒸着源の残りの部分へと向かう。
【図4】従来技術による蒸着源での不均一性を蒸着速度の関数として示したグラフである。このグラフは、蒸着源を最初に加熱し、数時間にわたって作動させた後に記録した。
【図5】従来技術による蒸着源での不均一性を蒸着速度の関数として示したグラフである。このグラフは、図4のデータを得るために蒸着源を数時間にわたって作動させ、次いで一晩かけて冷却した後に記録した。
【図6】本発明に従って製造した図1の蒸着源での不均一性を蒸着速度の関数として示したグラフである。このグラフは、蒸着源を最初に加熱し、数時間にわたって作動させた後に記録した。
【図7】本発明に従って製造した図2の蒸着源での不均一性を蒸着速度の関数として示したグラフである。このグラフは、蒸着源を最初に加熱し、数時間にわたって作動させた後に記録した。
【符号の説明】
【0063】
1、11、21 容器
2、12、22 蒸発材料
3、13、23 カバー
4、14、24 開口部
5、15、25 端部コンタクト
6、16、26 バッフル
7 傾斜した端部壁面(上方に傾斜している底面)
18、19 延長部
29 端部加熱要素
30 電気リード線
31 下部放射シールド
32 上部放射シールド
33 断熱絶縁プレート
34 るつぼ
35 基板並進移動組立体
36 基板
37 蒸発源並進移動組立体
38 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を基板に堆積させるための、熱による物理的蒸着源であって、
a)長さ方向のコンダクタンスCBを持つ、該材料を収容するための細長い容器を含むこと;
b)該容器内の該材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにするためのヒーターを含むこと;
c)該容器は少なくとも1つの部材を有し、その部材の長さ方向に配置された複数の開口部が画定されており、該開口部の全コンダクタンスはCAであって、CA/CB≦0.5を満たすこと;そして
d)該容器のそれぞれの側を加熱してその容器の表面に凝縮する材料を減らすための端部加熱手段を備えていること
を特徴とする蒸着源。
【請求項2】
上記端部加熱手段が導電性であって抵抗器を備えており、その端部加熱手段が、その抵抗器に電流を印加する手段をさらに備える、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項3】
上記電流印加手段が調節可能である、請求項2に記載の蒸着源。
【請求項4】
上記端部加熱手段が、上記容器のそれぞれの端部に隣接する位置に配置された独立した加熱要素を備える、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項5】
上記容器が、その容器の両端部の近くに、傾斜した端部壁面または上方に傾斜した底面を備える、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項6】
上記端部加熱手段が、上記ヒーターまたは内部バッフルに取り付けられた延長部を備えていて、その延長部が上記容器の両端部への熱の移動を促進する、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項7】
上記端部加熱手段が、上記容器の両端部に外部から取り付けられる、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項8】
上記開口部からの放出が分子流によるものであり、Pm≦13Paである(ただしPmは気化した材料の部分圧である)、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項9】
上記開口部からの放出が粘性流または過渡流であり、Pm>13Paである(ただしPmは気化した材料の部分圧である)、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項10】
上記容器と上記基板を相対運動させる手段をさらに備える、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項11】
上記容器に不活性ガスを導入してCA/CBを小さくする手段をさらに備える、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項12】
上記不活性ガスがアルゴンまたは窒素である、請求項11に記載の蒸着源。
【請求項13】
上記材料が、リン光材料、電界発光材料、光伝導性材料、又はイオン化照射によって発光する材料のいずれかである、請求項1に記載の蒸着源。
【請求項14】
材料を基板に堆積させるための、熱による物理的蒸着源であって、
a)材料収容領域を画定する壁面を持つ細長い容器を含み、該容器は、長手方向のコンダクタンスCBを持ち、複数の開口部を画定する部材を備え、さらに、気化した材料がまず最初に該容器の壁面にぶつかることなく前記部材の開口部を通過することをなくすために前記開口部と前記材料の間にバッフルを含むこと;
b)該容器内の該材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにするための1つ以上の加熱要素を含むこと;
c)該部材の開口部は長さ方向に沿って配置されており、該開口部の全コンダクタンスはCAであって、CA/CB≦0.5を満たすこと;
d)該容器のそれぞれの側を加熱して該容器の表面に凝縮する材料を減らすための端部加熱手段を備えていること
を特徴とする蒸着源。
【請求項15】
上記端部加熱手段が導電性であって抵抗器を備えており、その端部加熱手段が、その抵抗器に電流を印加する手段をさらに備える、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項16】
上記電流印加手段が調節可能である、請求項15に記載の蒸着源。
【請求項17】
上記端部加熱手段が、抵抗式ヒーター、外部式端部加熱手段、内部ヒーターとバッフルの一方または両方に取り付けられた延長部のいずれかを備える、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項18】
上記端部加熱手段が、上記容器の両端部を選択的に加熱して凝縮を減らす形状にされた加熱要素である、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項19】
上記容器が、その容器の両端部の近くに、傾斜した端部壁面または上方に傾斜した底面を備える、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項20】
上記開口部からの放出が分子流によるものであり、Pm≦13Paである(ただしPmは気化した材料の部分圧である)、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項21】
上記開口部からの放出が粘性流または過渡流であり、Pm>13Paである(ただしPmは気化した材料の部分圧である)、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項22】
上記容器と上記基板を相対運動させる手段をさらに備える、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項23】
上記容器に不活性ガスを導入してCA/CBを小さくする手段をさらに備える、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項24】
上記不活性ガスがアルゴンまたは窒素である、請求項23に記載の蒸着源。
【請求項25】
上記材料が、リン光材料、電界発光材料、光伝導性材料、イオン化照射によって発光する材料のいずれかである、請求項14に記載の蒸着源。
【請求項26】
大面積の基板をコーティングする方法であって、
a)加工部品に堆積させる材料を、長手方向のコンダクタンスCBを持つ細長い容器に装填する操作を含むこと;
b)該容器内の該材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにする操作を含むこと;
c)該容器が、長手方向に沿って細長いパターンに並んだ1つ以上の開口部を画定しており、気化した該材料をその開口部を通じて放出させ、その1つ以上の開口部はコンダクタンスがCAであり、CA/CB≦0.5を満たすこと;
d)該容器の表面に凝縮する材料を減らすために該容器のそれぞれの端部を加熱する操作を含むこと;
e)該基板と該細長い容器を、該長手方向に対して実質的に垂直な方向において相対運動させる操作を含むこと
を特徴とする方法。
【請求項27】
作動範囲全体にわたってCA/CB≦0.1である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記開口部が、上記容器の長手方向に沿って気化した材料の実質的に均一な流れが得られるように選択したさまざまなサイズ、または形状、または隣との間隔、またはこれらの組み合わせにされている、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
OLEDの製造に利用する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
上記容器に収容される材料が、ドープされた、またはドープされていない有機正孔注入材料、ドープされた、またはドープされていない有機正孔輸送材料、ドープされた、またはドープされていない有機発光材料、又はドープされた、またはドープされていない有機電子輸送材料を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
上記容器に不活性ガスを導入してCA/CBを小さくする手段をさらに備える、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
上記不活性ガスがアルゴンまたは窒素である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
上記材料が、リン光材料、電界発光材料、光伝導性材料、イオン化照射によって発光する材料のいずれかである、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
材料を基板に堆積させるための、熱による物理的蒸着源であって、
a)壁面を持っていて材料収容領域を画定するるつぼを備えた囲いを画定する細長い容器を備えていて、この容器は長手方向のコンダクタンスCBを持ち、複数の開口部を画定する部材を備え、さらに、気化した材料がまず最初にこの容器の壁面にぶつかることなく前記部材の開口部を通過することをなくすために前記開口部と前記材料の間にバッフルを備えていること;
b)上記容器内の材料を加熱してその材料を気化させ、部分圧Pmにするための1つ以上の加熱要素を備えていること;
c)上記部材に長さ方向に沿って配置された複数の開口部を備えており、その開口部の全コンダクタンスはCAであって、CA/CB≦0.5を満たすこと;
d)上記容器の両端とるつぼを加熱してその容器とるつぼの表面に凝縮する材料を減らすための端部加熱手段を備えていること
を特徴とする蒸着源。
【請求項35】
上記端部加熱手段が導電性であって抵抗器を備えており、その端部加熱手段が、その抵抗器に電流を印加する手段をさらに備える、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項36】
上記電流印加手段が調節可能である、請求項35に記載の蒸着源。
【請求項37】
上記端部加熱手段が、抵抗式ヒーター、外部式端部加熱手段、内部ヒーターとバッフルの一方または両方に取り付けられた延長部のいずれかを備える、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項38】
上記容器の両端部を加熱するための上記端部加熱手段が、上記容器の両端部を優先的に加熱して凝縮を減らす形状にされた加熱要素である、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項39】
上記容器が、その容器の両端部及びるつぼの近くに、傾斜した端部壁面または上方に傾斜した底面を備える、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項40】
上記開口部からの放出が分子流によるものであり、Pm≦13Paである(ただしPmは気化した材料の部分圧である)、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項41】
上記開口部からの放出が粘性流または過渡流であり、Pm>13Paである(ただしPmは気化した材料の部分圧である)、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項42】
上記容器と上記基板を相対運動させる手段をさらに備える、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項43】
上記容器に不活性ガスを導入してCA/CBを小さくする手段をさらに備える、請求項34に記載の蒸着源。
【請求項44】
上記不活性ガスがアルゴンまたは窒素である、請求項43に記載の蒸着源。
【請求項45】
上記材料が、リン光材料、電界発光材料、光伝導性材料、イオン化照射によって発光する材料のいずれかである、請求項34に記載の蒸着源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−524763(P2007−524763A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500861(P2007−500861)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004394
【国際公開番号】WO2005/083145
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】