説明

凝縮型液体洗濯洗剤組成物

凝集型液体又はゲル状洗濯洗剤組成物、こうした組成物を製造するための方法であり、この組成物は、アルカノールアミン及びカップリングポリマー成分を有する相分離に対する安定化系を少なくとも含み、相分離に対する安定化系は好ましくは、アルカノールアミン、カップリングポリマー、及び結晶性構造剤成分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮型液体又はゲル状洗濯洗剤組成物、及びこうした組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
持続性は、市場における消費者の選択を左右し得るものである。このため、環境に対する影響が少ない製品を提供しようとする動向がある。液体洗濯洗剤の分野においては、こうした動向は、比較的低い洗浄温度において効果を示し得る新たな配合の開発につながっている。低い洗浄温度を使用することでエネルギーを節約し得るばかりでなく、衣類の使用寿命を延ばし得ることから、これらの新たな配合は望ましいものである。
【0003】
特定の場合では、従来の希釈液体状のものを濃縮された液体又はゲル状に濃縮することで新たな洗剤の配合が得られている。これらのいわゆる「凝縮型」洗剤は、パッケージング材料が少なくて済み、大量輸送が容易であり、商品棚で占めるスペースが小さいことからも望ましいものである。
【0004】
上記に基づけば、液体洗濯洗剤の凝縮化と、優れた低温性能の両者を組み合わせることが望ましい。しかしながら、現在の凝縮化方法では、通常よりも低い洗浄温度において速やかかつ効果的に溶解する濃縮された洗剤を得ることはできない。
【0005】
液体洗濯洗剤の凝縮化は、現在のところ、複数の手段を用いて実現されている。1つの手段は、界面活性剤の濃度を高め、有機溶媒を除去することによる。これにより得られる洗剤は、界面活性剤に基づくレオロジー特性を示し得るものであり、しばしば「内部構造化」されていると呼ばれる。しかしながら、内部構造化された液体洗濯洗剤は極めて粘度が高く、相不安定性が高くなり得る。更に、内部構造化された液体洗濯洗剤は、洗濯槽中に溶解した際に更に粘度が高くなる場合がある。このため、これらの凝縮化洗剤は、凝縮化されていない液体洗濯洗剤においてすら溶解性が問題となり得る低温での洗濯においては、特に効果的でなくなる可能性がある。これは、短い洗濯機サイクルが用いられる場合に特にそうなる可能性がある。
【0006】
液体洗濯洗剤を凝縮する別の手段は、水を除去する一方で洗剤中の有機溶媒の割合を保つことである。このアプローチは、洗剤を可溶性のフィルムパケットに配合することと一致する。こうした洗剤の一般的な水分量は、例えば洗剤の保管中にPVAフィルムなどの可溶成分の溶解を防止するために、約5〜10重量%程度と低くなっている。しかしながらこの配合のアプローチは、大きな水分の割合を有する形態で市販されている多くの洗濯洗剤成分を乾燥、又はほぼ乾燥した形態に転換するための高いコストを考慮したものとはなっていない。これらの成分から水分を除去するコスト以外にも、これらの濃縮された洗剤の製造方法は、乾燥又は極めて粘度の高い原材料を洗剤に加工処理することができるように大幅に改変する必要がある。
【0007】
多くの地理的状況において、そのよく知られた水の硬度調節特性の点から、洗剤の配合物にビルダーを添加する更なる必要性が生じる。しかしながら、ビルダーは、その塩析効果(クエン酸塩の場合)又は界面活性剤に対する粘度増強効果(脂肪酸ビルダーの場合)のため、洗剤の凝縮化に更なる制約を加えるものである。それでもなお、凝縮型洗濯洗剤のゲル配合物にはこうした物質を添加することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、洗剤の大幅な凝縮化の効果の両方を与えるとともに、特に効果的な溶解により、溶解したビルダーの存在下において低温で所望の性能パラメータを実現する、コスト効率の高い洗剤配合物、及びこれを製造するための付随する方法を提供することが求められている。一態様では、本発明は、単位用量で与えられる一部の液体洗剤において一般的である、極めて低い水分量に頼ることなくこの問題を解決するものである。
【0009】
上記の問題に密接に関連した別の態様では、濃縮された水性の液体又はゲル状の洗濯洗剤であって、少なくとも10%の少なくとも1種類のアニオン性非石鹸界面活性剤と、全界面活性剤濃度が少なくとも20%となるように少なくとも0.1%の他の界面活性剤(特に非イオン性界面活性剤)とを含むことにより、前記洗剤に含まれる有機非アミノ官能性溶媒が15%以下となる、相分離しない洗濯洗剤を製造するための方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、本発明は、少なくとも10%の少なくとも1種類のアニオン性非石鹸界面活性剤と、全界面活性剤濃度が少なくとも20%となるように少なくとも0.1%の他の界面活性剤と、15%以下の有機非アミノ官能性溶媒と、を含む濃縮された水性液体又はゲル状洗濯洗剤を製造するための方法であって、(i)前記洗剤をアルカノールアミンと配合する少なくとも1つの工程と、(ii)前記洗剤をカップリングポリマーと配合する少なくとも1つの工程と、(iii)前記洗剤を洗濯補助剤と配合する少なくとも1つの工程とを任意の順序で含む方法を提供することによって、凝縮型液体又はゲル状洗濯洗剤の技術的課題を解決する。シャンプー又は硬質表面の洗浄剤などの他の種類の洗浄組成物と異なり、製品を洗濯組成物としての使用に充分に適したものとするために、洗濯補助剤を添加することが不可欠である。洗濯補助剤は衣類の洗濯において特有の効果を有する任意の物質であり、洗剤活性酵素、繊維蛍光増白剤、及び布地色相染料から好ましくは選択される。好ましい方法の1つでは、前記カップリングポリマーは、前記洗剤の0.1重量%〜5重量%の濃度であり、少なくとも2個の窒素原子を含み、ポリ(エトキシレート)部分を含む少なくとも2個の側鎖が結合した主鎖を有する水溶性の極性両親媒性コポリマーからなる群から選択される。
【0011】
別の実施形態では、本方法は上記に定義したようなものであるが、ただしそれに加えて、あるいは更に、前記洗剤中に、前記洗剤の0.05重量%〜2重量%の結晶性構造剤を配合する工程(iv)を、工程(i)、(ii)、及び(iii)に対して任意の順序で含み、前記結晶性構造剤のいかなる意味においても限定的ではない適当な例は水素添加ヒマシ油である。
【0012】
したがって、本発明には、(a)アルカノールアミン、(b)カップリングポリマー、及び(c)結晶性構造剤を含む3成分安定化系を有する洗濯洗剤を配合する好ましい方法が含まれる。
【0013】
更に、本発明は、以下のように定義される相分離に対する安定性を有する、本発明の方法の生成物として特徴付けることが可能な洗濯洗剤を提供する。すなわち、ガラスジャー内に300mLの組成物を21℃で21日間置くことによって、洗剤の相安定性を評価する。洗剤は、上記の期間の間に、(i)2層以上の層に分離しないか、あるいは、(ii)前記組成物が層に分離した場合には、組成物の少なくとも90重量%、好ましくは95重量%をなす主層が存在する場合に、相分離に対して安定である。好ましい実施形態では、洗剤は2層以上の層に分離しない。
【0014】
更に本発明は、(I)可変の用量の供給が可能であるパッケージであって、好ましくは前処理注ぎ口を備えるパッケージと、(II)50mL以下の自動洗濯機における1回の洗い当たりの用量を推奨する用量説明書が貼付されたラベルと、(III)前記洗剤とを含む、パッケージングされた水性洗濯洗剤組成物を提供するものであり、一実施形態では、前記洗剤は、少なくともアニオン性非石鹸界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を1:2〜約100:0の重量比で含む、重量比率で約25重量%〜約55重量%の全界面活性剤と、(a)アルカノールアミン、(b)結晶性構造剤、及び(c)カップリングポリマーを含む相分離に対する安定化系を含み、ただし、前記洗剤が、5%水溶液で6〜9の水性pHを有し、前記洗剤は、20s−1で約1000センチポアズよりも高い注入粘度、及び0.01s−1で約100,000センチポアズよりも高い低せん断粘度を有する。
【0015】
本発明は驚くべき結果を達成したものである。一態様においては、当該技術分野において「会合性相分離」として知られる現象を生じることのない窒素官能性カップリングポリマーの選択が予期せずして特定された。このよく知られた現象は、洗剤組成物の安定化よりもむしろ不安定化につながるものと予想されるものである。結晶性構造剤が、洗剤の溶解度に悪影響を及ぼすことなく安定性に寄与することも驚きである。なぜなら、構造剤は結晶性であり、ほぼ溶解しないことから、洗剤の安定化よりもむしろ凝集又は不安定化及び/又は溶解度の低下が起こるものと予想されていたのである。
【0016】
更に下記に実施例において示されるように、本組成物の安定性及び洗浄の結果は、必要とされる合格基準を満たすものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書において使用するところの「凝縮型液体洗濯洗剤組成物」とは、家庭用洗濯機で布地(例えば、衣類)を濡らして洗浄することが可能な液体を含む任意の洗濯処理組成物のことを指す。組成物は、固体又は気体を適宜分割された形態で含み得るものであるが、組成物全体としては、錠剤又は顆粒などの、全体として非流動性の製品形態は除外する。全体として気体である組成物も除外される。凝縮型流体洗剤組成物は、固形添加剤はすべて除外するが気泡が存在する場合はこれをすべて含むものとして、約0.9〜約1.3グラム/立方cm、より詳細には約1.00〜約1.10グラム/立方cmの範囲の密度を有する。
【0018】
凝縮型液体洗濯洗剤組成物の例としては、自動洗濯機の洗いサイクルにおいて使用されるヘビーデューティー液体洗濯洗剤、例えばシルク又はウール製の衣類などのデリケートな衣類を手洗い又は自動洗濯機の洗いサイクルで洗浄するのに適したものなどの液体ファインウォッシュ及び液体カラーケア洗剤が挙げられる。ゲル又はペーストとして知られる、流動性であるがより堅めの稠度を有する対応する組成物も同様に含まれる。ずり減粘ゲルのレオロジーについては文献により詳細に述べられており、例えば国際特許出願公開第04027010A1号(ユニリーバ(Unilever))を参照されたい。
【0019】
一般に、本明細書における凝縮型液体洗濯洗剤組成物は、濃縮された水性の液体又はゲル状の洗濯洗剤組成物であってよい。これらの組成物は等方性又は非等方性であってよいが、好ましい実施形態では相分離に対して安定的である。すなわち、これらの組成物は、一般的に、使用に先立って混合する(例えば、ボトルを振ることによって)ことによって均質化されるように設計された、当該技術分野において述べられている相分離型洗剤のように保管時に別々の相に分離することがない。特定の例示的な組成物の1つは非等方性であり、前記組成物は保管時に(i)2層に分離しないか、あるいは(ii)前記組成物が層に分離する場合には、他の層に対して水分に富んだ単一の主層が存在し、前記主層が組成物の少なくとも約80重量%、より具体的には約90重量%よりも多く、更により具体的には約95重量%よりも多くを構成する。他の例示的組成物は等方性である。
【0020】
本明細書において使用するところの、組成物及び/又は方法が特定の成分を「ほぼ含まない」とは、特定の成分が具体的には一切、あるいはいずれにしても機能的に有用な量で組成物に意図的に加えられていないことを意味する。当業者であれは、微量の各種成分が不純物として存在し得ることは理解されるであろう。それでも疑義を避けるために言えば、あらゆる非触媒成分との関連において「ほぼ含まない」とは、組成物中の指定成分の含量が組成物の約0.1重量%未満、具体的には0.01重量%未満であることを意味するものとして解されるべきである。触媒活性成分の場合では、大幅に低い成分濃度で顕著な技術的効果を有し得るものであり、したがって「ほぼ含まない」とは、組成物があらゆるこうした成分の触媒的な有効量を添加して意図的に配合されたものではないことを意味するものとして解されるべきである。当該技術分野において知られるところの「触媒的な有効量」とは、例えば10億分の1〜100万分の1のレベルのように極めて低量であり得る。
【0021】
本明細書において使用するところの「結晶性構造剤」とは、組成物の洗剤界面活性剤のあらゆる構造化効果とは独立して、あるいは無関係に、洗剤組成物に構造を与える選択された化合物又は化合物の混合物のことを指す。構造化効果には、広範囲の粒径及び密度を有する粒子を懸濁するのに適した降伏応力に達することが含まれる。
【0022】
「内部構造化」とは、洗濯成分の主要なクラスを形成する洗剤界面活性剤が構造化効果を担っていることを意味する。本発明は、逆の意味の「外部構造化」を目的とするものであり、これは、所望のレオロジー及び粒子懸濁力を得るために、構造剤として例えば水素添加ヒマシ油などの(ただしこれに限定されない)結晶化グリセリドなどの非界面活性剤に頼った構造化を意味する。
【0023】
本明細書において使用するところのマーカッシュ形式は、特に断らないかぎりは、個々のマーカッシュ群の要素の組み合わせを含むものである。
【0024】
本明細書で用いる百分率、比率、及び割合はすべて、特に断らないかぎりは組成物の重量%である。平均値はすべて、特に明確に断らないかぎりは、組成物又はその成分の「重量」に基づいて計算したものである。
【0025】
本明細書において開示される数値範囲はすべて、その範囲内のそれぞれの個々の数値を含み、開示される範囲の上限値及び下限値のあらゆる組み合わせを含むものとする。
【0026】
本明細書において開示される寸法及び値は、記載される正確な数値に厳密に限定されるものとして解すべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、こうした各寸法は、記載される値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0027】
本発明の好ましい方法の実施形態では、少なくとも1種類のアルカノールアミン及び少なくとも1種類のカップリングポリマーを、洗剤活性酵素、繊維蛍光増白剤、及び布地色相染料から選択される洗濯補助剤を含有する特定の洗濯洗剤濃縮物に混合することが必要とされる。更なる好ましい方法では、カップリングポリマー、アルカノールアミン、及び結晶性構造剤を含む3成分安定化系を洗剤に混合することが必要とされる。
【0028】
したがって、本発明の好ましい洗濯洗剤組成物の実施形態は、カップリングポリマー、アルカノールアミン、結晶性構造剤(特に水素添加ヒマシ油)、アニオン性非石鹸界面活性剤(特にアルキル(ポリアルコキシ)サルフェートなど)、他の界面活性剤(特に非イオン性界面活性剤);特に洗剤活性酵素、繊維蛍光増白剤、及び布地色相染料から選択される洗濯補助剤、多価水溶性有機ビルダー及び/又はキレート剤、有機非アミノ官能性溶媒、及び水を含む。
【0029】
他の実施形態は更に、アミンオキシドなどの半極性非イオン性共活性剤、芳香剤マイクロカプセルなどの芳香剤、カプセル化漂白剤などの漂白剤、染料、顔料、乳白剤などの美観剤系、布地ケア活性成分などを含み得る。
【0030】
カップリングポリマー
より詳細には、本発明では、選択されるポリマーが洗剤の相を相分離に対して安定化させるために各相をカップリングするうえで有用であるという点に基づいて、洗濯洗剤において様々な用途が知られる無数のポリマーから絞り込んで選択する。
【0031】
驚くべきことに、当該技術分野を考慮した場合、ポリアクリレート、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、スチレン/アクリル酸コポリマー、PEG/アクリル酸ビニルコポリマー、シリコーンコポリマー、及びPVP、PVP/VIなどの多くのカチオン性ポリマー、デンプン、ガム、並びに、ポリ(dmdaac)などの当該技術分野では周知の多くのポリクオタニウムポリマーなどの広範なポリマーが、本発明の相カップリングの目的における代用物としては有用ではない。更に、本発明において選択されるポリマーと構造的に極めて類似した特定のポリマーであっても、本発明の組成物の相カップリングには有用ではない。
【0032】
やはり驚くべきことに、当該技術分野を考慮した場合、本カップリングポリマーは、濃縮された界面活性剤の層状分散液を安定化させるうえで有用であることが以前に見出されている、アクリル酸ナトリウムとメタクリル酸ラウリルとのコポリマーなどのいわゆる「脱カップリングポリマー」とは異なっている。例えば、Blonkら、Colloids and Surfaces A,Physiochemical and Engineering Aspects、144(1998)287〜294及びVan de Pasら、Colloids and Surfaces A,Physiochemical and Engineering Aspects、85(1994)221〜236を参照されたい。実際、本発明のカップリングポリマーは、当該技術分野で知られる「脱凝集ポリマー」(deflocculating polymer)又は「脱カップリングポリマー」(decoupling polymer)を除外した特定のものである。
【0033】
本明細書における好ましいカップリングポリマーは、洗濯洗剤組成物の0.1重量%〜5重量%の濃度で存在し、好ましいカップリングポリマーは、(ii)ポリ(アルコキシレート)部分を含む少なくとも2個の側鎖が結合した、(i)少なくとも2個の窒素原子を含む脂肪族主鎖によって特徴付けられる。極めて驚くべきことに、前記ポリ(アルコキシレート)部分が、ポリ(エトキシレート)部分から本質的になる場合に向上した結果が得られる。これは換言すれば、プロポキシル化、又は部分プロポキシル化がポリ(エトキシレート)部分において好ましくないということである。
【0034】
理論によって束縛されることを意図するものではないが、本カップリングポリマーは、界面活性剤アニオンに対する電荷による親和性の適正な組み合わせにより両親媒性であること、また、適正な電荷遮蔽の割合を有することの結果としてその有用な目的を果たし、これにより、ポリマーはアニオン性界面活性剤と会合してこれを相分離に対して安定化させ、なおかつ、固相コアセルベート沈殿物を形成することなくこれを行うものと考えられる(布地ケア活性成分が本組成物中に存在する場合、その存在にも関わらずコアセルベートの液相を安定化させることが可能である)。やはり理論によって束縛されることを意図するものではないが、本カップリングポリマーは、サイズの小さい界面活性剤のコロイド状分散液を安定化させるものと考えられる。その一方で、本発明は、カップリングポリマーのみに頼ったものではなく、最低限でもカップリングポリマーとアルカノールアミンとの組み合わせに頼ったものとなっている。これは、本発明が関連するアニオン性界面活性剤の濃度領域(concentration regime)において両方の成分が必要とされ、アルカノールアミンが、それ自体で何らかの電荷調整効果によって、又はアニオン性界面活性剤成分のクラフト境界の低下作用(下記のアニオン性界面活性剤についての開示を参照)によって、カップリングポリマーの効果を増強していることによるものと考えられる。最後に、最良の全体の効果を得るためには、本発明の好ましい組成物の実施形態は更に結晶性構造剤を必要とするが、こうした結晶性構造剤は、相分離に対して本発明の組成物を驚くべきことに更に安定化させるものである。
【0035】
電荷の観点からは、本カップリングポリマーは双性イオン性(アニオン性部分及びカチオン性部分を含み、全体の電荷は0となっている)であり、完全に四級化されている(カチオン性部分を含む)か、あるいは完全に四級化された窒素部分と、pHの変化にともなって電荷が変化するpH依存性のアミノ部分との組み合わせを含み得る。
【0036】
全体の幾何形状の観点からは、本カップリングポリマーは球状ポリマーを含み、「超分枝状」又は「樹状」と称されるポリマーを含む。
【0037】
分子量の観点からは、本カップリングポリマーは極めて幅広い分子量を有し得るものであり、カップリングポリマーを製造するために用いられる正確な方法に応じて異なる多分散度を示し得る。しかしながら、コスト及び有効性の両方の観点から過剰に単分散性のカップリングポリマーは避けられることが好ましく、また、過剰に大きな分子量は避けられることが好ましい(例えば好ましい実施形態では、数平均分子量が約110,000よりも低く、より好ましくは50,000よりも低い)。
【0038】
本明細書において有用な選択されるカップリングポリマーの例としては、米国特許第4551506号(例えば、エトキシル化及び四級化されたTEPA)、同第4622378号(双性イオン性ポリマーを与えるようにエトキシル化、四級化、及び硫酸化されたTEPA又はPEI)、同第4659802号(例えば、第四級PEA189E24又は第四級HMDA E24)、同第4661288号(例えば、第四級PEA189 E24サルフェート)に開示されるものがある。
【0039】
カップリングポリマーとして使用するうえで極めて好ましいポリマーは、下記の構造を有する。
【化1】

【0040】
別の、しかし意外にもより好ましくないカップリングポリマー群は、下記の構造を有する。
【化2】

【0041】
本明細書において使用するための好ましいカップリングポリマー群については、国際特許出願公開第06113314A1号に述べられている。本明細書において使用するための好ましいカップリングポリマー群については、米国特許出願公開第2007/0179270A1号にも述べられている。
【0042】
これらの実施形態において、本洗濯洗剤組成物は、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約3重量%のカップリングポリマーの組成物を含む。
【0043】
本組成物の適当なカップリングポリマーは、約300〜約10000の重量平均分子量、好ましくは約400〜約7500の重量平均分子量、好ましくは約500〜約1900の重量平均分子量、好ましくは約3000〜6000の重量平均分子量を有するポリエチレンイミン主鎖を有する。
【0044】
ポリエチレンイミン主鎖の修飾は以下のものを含む。すなわち、(1)修飾がポリエチレンイミン主鎖の内部窒素原子又は末端窒素原子のいずれで起きるかによって、窒素原子1個当たり1個又は2個のアルコキシル化修飾(ただしアルコキシル化修飾は、修飾1個当たり平均で約1個〜約40個のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖によって水素原子が置換されたものであり、アルコキシル化修飾の末端アルコキシ部分は、水素、C〜Cアルキル、又はこれらの組み合わせによってキャップされている)、(2)置換がポリエチレンイミン主鎖の内部窒素原子又は末端窒素原子のいずれで起きるかによって、窒素原子1個当たり1個のC〜Cアルキル部分による置換、及び1個又は2個のアルコキシル化修飾(ただしアルコキシル化修飾は、修飾1個当たり平均で約1個〜約40個のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖によって水素原子が置換されたものであり、末端アルコキシ部分は、水素、C〜Cアルキル又はこれらの組み合わせによってキャップされている)、又は(3)これらの組み合わせ。
【0045】
例えばこれらに限定されるものではないが、ポリエチレンイミン主鎖の末端窒素原子に対する可能な修飾を以下に示す(ただし、Rはエチレンスペーサーを表し、EはC〜Cアルキル部分を表し、Xは適当な水溶性対イオンを表す)。
【化3】

【0046】
更に、例えば、これらに限定されるものではないが、ポリエチレンイミン主鎖の内部窒素原子に対する可能な修飾を以下に示す(ただし、Rはエチレンスペーサーを表し、EはC〜Cアルキル部分を表し、X−は適当な水溶性対イオンを表す)。
【化4】

【0047】
ポリエチレンイミン主鎖のアルコキシル化修飾は、平均で約1個〜約40個のアルコキシ部分、好ましくは約5個〜約20個のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖によって水素原子が置換されたものである。アルコキシ部分は、エトキシ(EO)、1,2−プロポキシ(1,2−PO)、1,3−プロポキシ(1,3−PO)、ブトキシ(BO)及びこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、ポリアルコキシレン鎖は、エトキシ部分、及びプロポキシ部分の上限量が限定されたエトキシ/プロポキシブロック部分から選択される。より好ましくは、ポリアルコキシレン鎖は約5〜約25の平均度のエトキシ部分である。エトキシ/プロポキシブロック部分が存在する場合には、約5〜約15の平均エトキシル化度、及び約5以下の平均プロポキシ化度を有し、プロポキシ部分のブロックは末端アルコキシ部分のブロックである。エトキシ部分のみが存在することがより好ましい。
【0048】
この修飾により、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子は永久的に四級化され得る。永久的な四級化の程度は、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の0%〜約30%であり得る。永久的に四級化されるポリエチレンイミン主鎖の窒素原子は、30%未満であることが好ましい。
【0049】
適当な修飾ポリエチレンイミンは、式(I)の一般構造を有する。
【化5】

式中、ポリエチレンイミン主鎖の重量平均分子量は5000であり、式(I)のnの平均は7であり、式(I)のRは、水素、C〜Cアルキル及びこれらの混合物から選択される。
【0050】
別の適当なポリエチレンイミンは、式(II)の一般構造を有する。
【化6】

式中、ポリエチレンイミン主鎖の重量平均分子量は5000であり、式(II)のnの平均は10であり、式(II)のmの平均は7であり、式(II)のRは、水素、C〜Cアルキル及びこれらの混合物から選択される。式(II)の永続的な4級化の度合は、ポリエチレンイミン主鎖窒素原子の0%〜約22%であり得る。
【0051】
更にもう1つの適当なポリエチレンイミンは、式(II)と同じ一般構造を有し、ポリエチレンイミン主鎖が重量平均分子量600を有し、式(II)のnの平均値は10、式(II)のmの平均値は7であり、式(II)のRは、水素、C〜Cアルキル及びこれらの混合物から選択される。式(II)の永久的な四級化の程度は、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の0%〜約22%であり得る。
【0052】
これらのポリエチレンイミンは、例えば、二酸化炭素、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸、過酸化水素、塩酸、酢酸などの触媒の存在下でエチレンイミンを重合させることによって調製することができる。これらのポリアミン主鎖を調製する具体的な方法については、1939年12月5日発行の米国特許第2,182,306号(ウルリク(Ulrich)ら)、1962年5月8日発行の米国特許第3,033,746号(メイリー(Mayle)ら)、1940年7月16日発行の米国特許第2,208,095号(エッセルマン(Esselmann)ら)、1957年9月17日発行の米国特許第2,806,839号(クラウザー(Crowther))、及び1951年5月21日発行の米国特許第2,553,696号(ウィルソン(Wilson))において開示されている。
【0053】
アルカノールアミン
アルカノールアミンは、本発明の不可欠な成分である。理論によって束縛されることを望むものではないが、アルカノールアミンは多官能性であると考えられる。本目的にとって最も重要な点として、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンなどの特定のアルカノールアミンは、層状相を抑制するように機能する、すなわちカップリング剤として機能するうえで、低濃度で有効である。当該技術分野においては、アルカノールアミンは、充分な量が存在する場合に緩衝剤として、及びアミノ官能性溶媒として機能することも知られているが、これは本方法及び組成物においてアルカノールアミンを提供することの主たる目的ではない。言うまでもなくアルカノールアミンは、アニオン性界面活性剤化学種の酸型と反応してアルカノールアミンで中和されたアニオン性界面活性剤を形成することができる。このため、アルカノールアミンとアニオン性界面活性剤の酸型とを合わせる(例えば、プレミックス中でHLASとそのまま)か、あるいは、HLASをアルカノールアミンで別に中和し、この中性のアルカノールアミン−LASをプレミックスに加えるなどの他の任意の適当な手段により、プレミックス中にアルカノールアミンを導入することができる。しかしながら、特定の実施形態では、プレミックス中に存在するアニオン性界面活性剤の酸型を中和するために必要とされる量に対して、化学量論的過剰量のアルカノールアミンを結晶性構造剤プレミックス中に予め配合することが望ましい場合がある。このような実施形態では、アルカノールアミンは、結晶性構造剤に対する乳化界面活性剤の一部として、及び緩衝剤としての2重の目的を果たすことができる。特定の実施形態では、アルカノールアミンは構造化システムの約2重量%〜約10重量%、約3重量%〜約8重量%、又は約3重量%〜約6重量%の濃度で存在すればよい。特定の実施形態では、アルカノールアミンは構造化システムの約5重量%で存在すればよい。
【0054】
一般に、あらゆる適当なアルカノールアミン又はアルカノールアミンの混合物を本発明において用いることができる。適当なアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミンなどの低級アルカノールモノ−、ジ−、及びトリアルカノールアミン、又はこれらの混合物から選択することができる。高級アルカノールアミンは分子量がより大きく、本目的にとっては質量効率(mass efficiency)が低くなり得る。モノ−及びジ−アルカノールアミンは、質量効率上の理由から好ましい。モノエタノールアミンは特に好ましいが、トリエタノールアミンなどの更なるアルカノールアミンが、特定の実施形態では緩衝剤として有用となり得る。更に、本発明の特定の実施形態では、結晶性構造剤プレミックスの調製に使用される一定分量以外のアニオン性界面活性剤のアルカノールアミン塩を、例えば、溶解作用、緩衝作用、洗浄液中の塩素の管理、及び/又は洗濯洗剤製品中の酵素安定化などの既知の目的のために最終的な洗剤配合物に別途加えることも考えられる。
【0055】
結晶性構造剤
本組成物は、約0.01%〜約5%、好ましくは約0.05%〜約1.5%の任意の適当な結晶性構造剤を含む。適当な結晶性構造剤の非限定的な例としては、約40℃〜約100℃の融点を有する結晶性グリセリド又は結晶性グリセリドの混合物がある。
【0056】
本明細書において使用する結晶性グリセリドには「水素添加ヒマシ油」又は「HCO」が含まれる。本明細書において用いるところのHCOは、プレミックス中で結晶化して最終的な洗剤組成物中に結晶性構造剤を与えることが可能なものであれば、いずれの水素添加ヒマシ油であってもよい。ヒマシ油には、水酸基を有するC10〜C22のアルキル又はアルケニル部分を含むグリセリド、特にトリグリセリドが含まれる。HCOを製造するためのヒマシ油の水素添加は、開始物質の油中にリシノレイル部分として存在し得る二重結合を変換し、リシノレイル部分を飽和ヒドロキシアルキル部分(例えば、ヒドロキシステアリル)に変換する。本明細書におけるHCOは、特定の実施形態では、トリヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、及びこれらの混合物から選択することができる。HCOは、固体、溶融物、及びこれらの混合物から選択されるものを含むが、これらに限定されない任意の適当な開始形態で加工処理することができる。HCOは一般的に、約2重量%〜約10重量%、約3重量%〜約8重量%、又は約4重量%〜約6重量%の構造化システムの濃度で本発明の構造剤プレミックス中に存在する。特定の実施形態では、完成した洗濯洗剤製品中に導入される水素添加ヒマシ油の対応する比率は、約1.0%未満、一般的には0.1%〜0.8%である。
【0057】
有用なHCOは以下の特性を有し得る。すなわち、約40℃〜約100℃、又は約65℃〜約95℃の融点、及び/又は約0〜約5、0〜約4、又は0〜約2.6のヨウ素価の範囲である。HCOの融点は、いずれもDSC、すなわち示差走査熱量測定法を用いた試験であるASTM D3418又はISO 11357を使用して測定することができる。
【0058】
本発明において使用されるHCOには市販のものが含まれる。本発明において使用される市販のHCOの非限定的な例としては、レオックス社(Rheox, Inc.)より販売されるTHIXCIN(登録商標)が挙げられる。更なる有用なHCOの更なる例を米国特許第5,340,390号に見ることができる。水素添加してHCOを生成するためのヒマシ油の入手元は、ブラジル又はインドなどのいずれの適当な原産地であってもよい。適当な一実施形態では、ヒマシ油は、例えばパラジウム触媒などの貴金属を使用して水素添加し、水素添加温度及び圧力を制御して、許容できないレベルの脱水酸基化を防止しつつ、天然ヒマシ油の二重結合の水素添加を最適化する。
【0059】
本発明は、水素添加ヒマシ油の使用のみを対象とするものではない。他の任意の適当な結晶性グリセリドを使用することができる。1つの例では、構造剤は、12−ヒドロキシステアリン酸のほぼ純粋なトリグリセリドである。この分子は、12−ヒドロキシ−9−シス−オクタデセン酸の完全に水素添加されたトリグリセリドの純粋な形態を表す。本来、ヒマシ油の組成は比較的一定であるが、ある程度は変化し得る。同様に、水素添加の手順も変化し得る。少なくとも80重量%がヒマシ油に由来するトリグリセリドの混合物など、他の任意の適当な等価な物質を使用することができる。例示的な等価な物質は、トリグリセリドを主として含むか若しくはトリグリセリドから本質的になるもの、又はジグリセリドとトリグリセリドとの混合物を主として含むか若しくはその混合物から本質的になるもの、又はトリグリセリドとジグリセリドと限定された量(例えば、グリセリド混合物の約20重量%未満)のモノグリセリドとの混合物を主として含むか若しくはその混合物から本質的になるもの、又は上記のグリセリドの内の任意のものと、限定された量(例えば、約20重量%未満)の上記のグリセリドの内の任意のものの対応する酸加水分解物との混合物を主として含むか若しくはその混合物から本質的になるものである。上記における条件の1つは、すべての前記グリセリドの大部分、通常は少なくとも80重量%が、完全に水素添加されたリシノール酸のグリセリド(すなわち、12−ヒドロキシステアリン酸のグリセリド)と化学的に同一であるということである。例えば、特定のトリグリセリド中に2個の12−ヒドロキシステアリン酸部分と1個のステアリン酸部分が存在するように、水素添加ヒマシ油を修飾することは当該技術分野ではよく知られていることである。同様に、水素添加ヒマシ油が完全に水素添加されていない場合も考えられる。これに対して、本発明では、ポリ(オキシアルキル化)ヒマシ油は、溶融条件を満たさない場合には除外する。
【0060】
本明細書における他の適当な結晶性構造剤は、任意の公知の種類のものであってよい。例えば、微小繊維化セルロースは、本明細書において使用するうえで有用な別の結晶性構造剤である。
【0061】
アニオン性非石鹸界面活性剤
本組成物は、洗剤組成物中の全界面活性剤濃度が、後述する他の界面活性剤も含めて少なくとも20重量%であるものとして、少なくとも10%、より好ましくは例えば約15%〜約30%の任意の適当なアニオン性非石鹸界面活性剤を含む。好ましくは、アニオン性非石鹸界面活性剤の少なくとも1%は、アルキル(ポリアルコキシ)サルフェートである。配合物全体を説明する目的では、「石鹸」及び「脂肪酸」はビルダーとして説明される。あるいは、任意の適当なアニオン性非石鹸界面活性剤を本発明で使用することができる。
【0062】
本明細書における好ましいアニオン性界面活性剤は、「低いクラフト温度」と呼ばれる性質を有している。本明細書において用いるところの「クラフト温度」なる用語は、界面活性剤技術の分野の従事者には周知の技術用語である。クラフト温度は、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker, Inc.)により1978年に刊行された、Paul Becherの翻訳の協力を得た、K.Shinodaによる文献「Principles of Solution and Solubility」の160〜161頁に述べられている。本目的における「クラフト温度」は、単一の鎖長を有するアニオン性界面活性剤のナトリウム塩を使用し、その界面活性剤の1重量%溶液の透明化温度を測定することによって測定される。別の周知の方法としては、示差走査熱量測定法(DSC)がある。W.Kunzら、Green Chem.,2008、10巻、433〜435頁を参照されたい。本発明の好ましい実施形態では、対応するナトリウム塩が、約50℃未満、より好ましくは約40℃未満、更により好ましくは約30℃未満、更により好ましくは約10℃未満又は約20℃未満、又は0℃未満のクラフト温度を有するアニオン性界面活性剤を使用する。
【0063】
簡潔に述べれば、アニオン性界面活性剤の水に対する溶解度は、その点(すなわち、クラフト温度)まで温度上昇とともに比較的ゆっくりと増大し、クラフト温度において極めて急速な上昇を示す。クラフト温度よりも高い温度である約4℃の温度では、ほとんどすべての可溶性のアニオン性界面活性剤の界面活性剤溶液は単一の均質な相となる。一般的に、任意の特定の種類のアニオン性界面活性剤のクラフト温度はヒドロカルビル基の鎖長とともに変化するが、これは界面活性剤分子の疎水性部分の変化にともなう水溶性の変化によるものである。
【0064】
本明細書のアニオン性界面活性剤が異なるアルキル鎖長の混合物を含む状況下では、クラフト温度は1つの温度ではなく、「クラフト境界」として示される。こうした事柄は、界面活性剤/溶液測定の技術分野における当業者には周知のものである。いずれにしても、こうしたアニオン性界面活性剤の混合物においては、混合物の少なくとも10重量%の濃度で存在する少なくとも最も長い鎖長の界面活性剤のクラフト温度が測定される。
【0065】
単一の界面活性剤種のクラフト温度は、融点と関連している。水素添加ヒマシ油又は同様に結晶性のグリセリドを乳化させるために、アニオン性界面活性剤の混合物を使用する場合の本明細書における一般的な目的は、アニオン性界面活性剤混合物中のアニオン性界面活性剤分子の集合体の低い融点を得ることである。
【0066】
本明細書において添加するための好ましいアニオン性界面活性剤群としては、特定のHI指数を有する合成アニオン性界面活性剤がある。本明細書におけるアニオン性界面活性剤の「親水性指数」(「HI」)は、国際特許出願公開第00/27958A1号(レディー(Reddy)ら)に定義されているものである。低HIの合成アニオン性界面活性剤(例えば、HI<8)が、本明細書では好ましい。
【0067】
より詳細には、アニオン性界面活性剤の対応するナトリウム塩が、8未満、好ましくは6未満、より好ましくは5未満のHIを有するような、合成アニオン性非石鹸界面活性剤のアルカノールアミン中和型を使用することが好ましい。
【0068】
理論によって限定されることを意図するものではないが、アニオン性界面活性剤の溶融がその疎水性基によって主として影響されるのに対して、HIは親水性基と疎水性基とのバランス比によって決まる。
【0069】
例えば、AE3Sは、HIに基づけば結晶性構造剤プレミックス中で使用するには不要に親水性であり、結晶性構造剤プレミックス中での使用に望ましい低いクラフト点及び融点を有しているのに対して、LAS、特に限定された量よりも多くの2−フェノール異性体を有しないLASは、HI値に基づけば結晶性構造剤プレミックス中で使用するうえで理想的に親水性であるのと同時に、結晶性構造剤プレミックス中でのその使用を好ましくするような低い融点を有するように選択する(低いクラフト点を有する分子を含めて)ことができる。しかしながら、洗濯洗剤組成物のバランスを調整する際には、そのよく知られた水の硬度に対する耐性及び良好な白色度効果から、適量のAES型の界面活性剤を、結晶性構造剤プレミックスとは別に導入することが特定の実施形態においては望ましい場合がある点に注意されたい。
【0070】
一実施形態では、結晶性構造剤プレミックス中で使用されるアニオン性界面活性剤は、7未満のpKa値を有し得るが、他のpKa値を有するアニオン性界面活性剤も使用することが可能である。
【0071】
本明細書で使用するのに適したアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、アルキルサルフェート(AS)、アルキルエトキシル化スルホネート(AES)、ラウレスサルフェート及びこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、アニオン性界面活性剤は、約5%〜約50%の濃度で外部の構造化システム中に存在し得る。しかしながら、約25重量%よりも多いアニオン性界面活性剤の結晶性構造剤プレミックスを使用する場合、水以外に有機溶媒を用いて界面活性剤を希釈する必要が一般にある点に注意されたい。適当な溶媒を下記に列記する。
【0072】
更に、結晶性構造剤プレミックスのアニオン性界面活性剤を選択し、この目的でアルキルベンゼンスルホネート界面活性剤を選択する場合、(1)HF方法から誘導される直鎖アルキルベンゼンから選択されるアルキルベンゼンスルホネート、及び/又は(2)中鎖分枝状LAS(異なる量のメチル側鎖を有するもの、例えば米国特許第6306817号、同第6589927号、同第6583096号、同第6602840号、同第6514926号、同第6593285号を参照されたい。)のいずれかを使用することが好ましい。他の好ましいLASの供給元としては、(3)セプサ・ラブ社(Cepsa LAB)より販売されるもの(国際特許出願公開第09/071709A1号を参照)、及び(4)ユー・オー・ピー・ラブ社(UOP LAB)より販売されるもの(国際特許出願公開第08/055121A2号)などが挙げられる。これに対して、DETAL(商標)方法から誘導されるLAS(ユー・オー・ピー社(UOP,LLC)、イリノイ州デスプレーンズ)、及び/又はハンツマン(Huntsman)により教示されるような高含量の2−フェニルを有するLAS(例えば米国特許第6849588号、又は米国特許出願公開第2003/0096726A1号を参照。例えば、70%又は80%よりも高い2−フェニル異性体の含量を有するもの)は、最終的な洗濯洗剤組成物中に添加することはできるが、結晶性構造剤プレミックス中への使用は避けることが好ましい。理論によって限定されることを意図するものではないが、過剰な2−フェニル異性体の含量はLASの融点が不要に高くなる。
【0073】
上記に述べたように、アニオン性界面活性剤は界面活性剤の酸型として結晶性構造剤プレミックス中に導入するか、かつ/又はアルカノールアミンで予め中和することができる。いずれの場合にも、アニオン性界面活性剤はナトリウム中和型としては使用されず、より一般的には、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、又はカルシウム塩などのいずれの一価又は二価の無機カチオン塩の形態でも使用されない。好ましくは、本明細書における結晶性構造剤プレミックス及び洗濯洗剤は、約5%、2%、又は1%未満のナトリウム又はカリウムなどの一価の無機カチオンを含む。好ましい一実施形態では、結晶性構造剤プレミックスには一価及び/又は二価の無機金属イオンは一切加えられず(すなわち、0%)、結晶性構造剤プレミックスの製造において石鹸は意図的には一切加えられない。換言すれば、結晶性構造剤プレミックスは、一価及び/又は二価の無機金属イオンをほぼ含まないということである。
【0074】
他の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤
本組成物は、好ましい実施形態において少なくとも1%、好ましくは約5%〜約15%の任意の適当な非イオン性界面活性剤を含む。本明細書において有用な適当な非イオン性界面活性剤は、液体洗剤製品において通常使用される従来の非イオン性界面活性剤のいずれのタイプのものを含んでもよい。これらにはアルコキシル化脂肪族アルコールが含まれる。本明細書の液体洗剤製品における使用において好ましいものは、通常は液体である非イオン性界面活性剤である。本明細書において使用する好ましい非イオン性界面活性剤には、アルコールアルコシキレート非イオン性界面活性剤が含まれる。アルコールアルコキシレートは、下記一般式に相当する物質である。
(C2mO)OH
式中、R1はC8〜C16のアルキル基であり、mは2〜4であり、nは約2〜12の範囲である。好ましくは、R1は、一級又は二級であってよい、約9個〜15個の炭素原子、より好ましくは約10個〜14個の炭素原子を有するアルキル基である。好ましくは、アルコキシル化脂肪族アルコールは、1分子当たり約2個〜12個のエチレンオキシド部分、より好ましくは1分子当たり約3個〜10個のエチレンオキシド部分を含むエトキシル化物質でもある。
【0075】
本明細書の液体洗剤組成物において有用なアルコキシル化脂肪族アルコール物質はしばしば、約3〜17の範囲の親水親油バランス(HLB)値を有する。より好ましくはこの物質のHLB値は、約6〜15、最も好ましくは約8〜15の範囲である。アルコキシル化脂肪族アルコール非イオン性界面活性剤は、Neodol(商標)及びDobanol(商標)の商品名でシェル・ケミカル社(Shell Chemical Company)(テキサス州ヒューストン)より販売されている。
【0076】
本明細書において有用な非イオン性界面活性剤の別の適当なタイプは、アミンオキシド界面活性剤を含む。アミンオキシドは、しばしば当該技術分野では「半極性」非イオン性物質と呼ばれる物質である。アミンオキシドは、式R(EO)x(PO)y(BO)zN(O)(CH2R’)2.qH2Oを有する。式中、Rは、飽和又は不飽和、直鎖又は分枝鎖であってよい比較的長鎖のヒドロカルビル部分であり、8個〜20個、好ましくは10個〜16個の炭素原子を有してよく、より好ましくはC12〜C16の一級アルキルである。R’は、好ましくは水素、メチル及び−CH2OHから選択される短鎖部分である。x+y+zが0とは異なる場合、EOはエチレンオキシ、POはプロピレンオキシ、BOはブチレンオキシである。アミンオキシド界面活性剤はC12〜14のアルキルジメチルアミンオキシドによって例示され、存在する場合にその適当な濃度は洗剤組成物の約0.1%〜約5%である。
【0077】
有機非アミノ官能性溶媒
本組成物は、好ましい実施形態において、少なくとも約1%、好ましくは約2%〜約15%の有機非アミノ官能性溶媒を含む。本明細書において用いるところの「非アミノ官能性溶媒」とは、アミノ官能基を含まない、実際に一切の窒素を含まない任意の溶媒のことを指す。非アミノ官能性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール及び/又はプロパノール及び/又は1−エトキシペンタノールなどのC〜Cアルカノール;C〜Cジオール;C〜Cアルキレングリコール;C〜Cアルキレングリコールモノ低級アルキルエーテル;グリコールジアルキルエーテル;低分子量ポリエチレングリコール;グリセロールなどのC〜Cトリオール;並びにこれらの混合物が挙げられる。より詳細には、非アミノ官能性溶媒は周囲温度及び圧力(すなわち、21℃及び0.1MPa(1気圧))において液体であり、炭素、水素及び酸素を含む。
【0078】
したがって、有機非アミノ官能性溶媒は、結晶性構造剤プレミックスを調製する際、又は最終的な洗剤組成物中に存在してよい。好ましい有機非アミノ官能性溶媒としては、一価アルコール、二価アルコール、多価アルコール、グリセロール、グリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。極めて好ましいものとしては、溶媒の混合物、特にエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、及び/又は、1,2−プロパンジオール又は1,3−プロパンジオールなどのジオールなどの低級脂肪族アルコールの混合物、又はこれらとグリセロールとの混合物がある。適当なアルコールとしては、特にC1〜C4アルコールが挙げられる。好ましいものとしては、1,2−プロパンジオール又はエタノール及びこれらの混合物、又はプロパンジオール及びジエチレングリコールとその混合物(ただしその混合物はメタノールもエタノールも含まない)がある。したがって、本発明には、プロパンジオールが使用されるがメタノール及びエタノールが使用されない実施形態が含まれる。結晶性構造剤プレミックス中には、有機非アミノ官能性溶媒は、結晶性構造剤プレミックスの0〜約30重量%、より一般的には0〜約20重量%、特定の実施形態においては約1〜約5重量%の濃度で存在してよい。
【0079】
特に洗剤活性酵素、繊維蛍光増白剤、及び布地色相染料から選択される洗濯補助剤:
酵素:本発明の液体洗剤組成物は、約0.0001重量%〜約5重量%又はそれよりも多い(市販の酵素製剤の活性に応じて)洗剤酵素、あるいは約0.001〜約2重量%、あるいは約0.01〜約1重量%の洗剤酵素を含んでもよい。
【0080】
好ましい一実施形態では、洗剤酵素は、プロテアーゼとアミラーゼ及びセルラーゼ又はキシログルカナーゼとの組み合わせを含み、結晶性構造剤は水素添加ヒマシ油である。更なる別の好ましい実施形態では、洗剤酵素はリパーゼとプロテアーゼ、アミラーゼ及びペクチン酸リアーゼとの組み合わせを含み、結晶性構造剤は微小繊維セルロースである。代表的なリパーゼは、ノボザイムズ社(Novozymes)よりLipolase(登録商標)、Lipolase Ultra(登録商標)、Lipolex(登録商標)、Lipoprime(登録商標)、及びLipex(登録商標)として販売されている。
【0081】
本目的では、2個のアミノ酸配列間の同一性の程度は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、Riceら、2000、Trends in Genetics 16:276〜277;http://emboss.org)のNeedleプログラム(好ましくはバージョン3.0.0以降)によって実行されるようなNeedleman−Wunschアルゴリズム(Needleman及びWunsch、1970、J.Mol.Biol.48:443〜453)を用いて決定される。必要に応じて用いられるパラメータは、ギャップ開始ペナルティが10、ギャップ伸長ペナルティが0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性(longest identity)」と表示されたNeedleの出力(−nobriefオプションを用いて得られる)を同一率として用い、これは以下のように計算される。
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ−アラインメント中のギャップの総数)
【0082】
本発明の目的では、2個のデオキシリボヌクレオチド配列間の同一性の程度は、EMBOSSパッケージ(前掲のEMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、Riceら、2000;http://emboss.org)のNeedleプログラム(好ましくはバージョン3.0.0以降)によって実行されるようなNeedleman−Wunschアルゴリズム(前掲のNeedleman及びWunsch、1970)を用いて決定される。必要に応じて用いられるパラメータは、ギャップ開始ペナルティが10、ギャップ伸長ペナルティが0.5、及びEDNAFULL(EMBOSSバージョンNCBI NUC4.4)置換マトリックスである。「最長同一性」と表示されたNeedle出力(−nobriefオプションを用いて得られる)を同一率として用い、これは以下のように計算される。
(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ−アラインメント中のギャップの総数)
【0083】
本発明の洗剤酵素は液体洗剤中に存在すればよく、かつ/又はカプセル化することができる。洗剤酵素がカプセル化される場合にも、洗剤酵素がカプセル化物質から滲出又は漏出することにより、組成物中の構造剤などの液体洗剤中に存在する酵素感受性の成分に影響する可能性は依然存在する。
【0084】
一実施形態では、組成物は、洗浄性能の効果を与える1以上の更なる洗剤酵素を含み得る。こうした更なる洗剤酵素としては、セルラーゼ、エンドグルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、グルコアミラーゼ、アミラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポオキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、マンナナーゼ、キシログルカナーゼ、又はこれらの混合物から選択される酵素が挙げられる。好ましい組み合わせとしては、プロテアーゼ、アミラーゼ、クチナーゼ、マンナナーゼ、キシログルカナーゼ及び/又はセルラーゼなどの従来の使用可能な酵素の混合物を有する液体洗剤組成物があり、結晶性構造剤は水素添加ヒマシ油である。組成物中に酵素が存在する場合、約0.0001重量%〜約5重量%の活性酵素である。
【0085】
公知のセルラーゼとしては、ノボザイムズ社(Novozymes)より販売されるCELLUCLEAN(登録商標)及びCELLUZYMEなどのバチルス属菌AA349が産生するエンドグルカナーゼ(E.C.3.2.1.4)酵素がある。本発明における使用に適した更なるセルラーゼ酵素としては、国際特許出願公開第2004/053039A2号、同第2002/099091A2号、米国特許出願公開第2004/0002431A1号、米国特許第4,945,053号、及び同第4,978,470号に開示されるものが挙げられる。本発明に基づいて使用することが可能な更なるエンドグルカナーゼ酵素としては、ノボザイムズ社(Novozymes)に付与された国際特許出願公開第0162903A1号に開示されるものが挙げられる。
【0086】
一態様では、本発明の組成物及び方法は、約0.0001重量%〜約5重量%、具体的には約0.001重量%〜約2重量%、より具体的には約0.001重量%〜約1重量%、更により具体的には約0.001重量%〜約0.2重量%、更により一層具体的には約0.005重量%〜約0.1重量%のプロテアーゼ酵素を含み得る。洗剤における使用に適したあらゆるプロテアーゼを使用することができる。こうしたプロテアーゼは、改変されたプロテアーゼ(化学的又は遺伝子的に改変したもの)及び改変されないプロテアーゼを含め、動物、植物、又は微生物由来のものであってよい。
【0087】
適当なプロテアーゼのクラスの1つには、いわゆるセリンエンドペプチダーゼ[E.C.3.4.21]が含まれ、その一例としてセリンプロテアーゼ[E.C.3.4.21.62]が含まれる。セリンプロテアーゼの例示的かつ非限定的な例としては、例えば、サブチリシンBPN及びBPN’、サブチリシンカールスバーグ、サブチリシン309、サブチリシン147、サブチリシン168、サブチリシンPB92、これらの突然変異体及び混合物などのバチルス(例えば、B.サブチリス、B.レンタス、B.リケニフォルミス、B.アミロリケファシエンス、B.アルカロフィラス)由来のサブチリシンなどのサブチリシンが挙げられる。
【0088】
市販のセリンプロテアーゼの例示的かつ非限定的な例としては、ノボザイムズ社(Novozymes)より販売されるAlcalase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Kannase(登録商標)、Everlase(登録商標);ジェネンコア社(Genencor)より販売されるPurafect(登録商標)、Purastar OxAm(登録商標)、Properase(登録商標);ヘンケル社(Henkel)より販売されるBLAP及びBLAP変異体;並びに花王株式会社より販売されるK−16様プロテアーゼが挙げられる。更なる例示的なプロテーゼについては、例えば、欧州特許出願公開第130756号、国際特許出願公開第91/06637号、同第95/10591号、同第99/20726号、米国特許第5030378号(プロテーゼ「A」)、及び欧州特許出願公開第251446号(プロテーゼ「B」)に述べられている。
【0089】
市販のα−アミラーゼ製品の例としては、ジェネンコア社(Genencor)より販売されるPurafect Ox Am(登録商標)、並びにいずれもノボ・ノルディスク社(Novo Nordisk)(デンマーク)より販売されるTermamyl(登録商標)、Termamyl Ultra(登録商標)Ban(登録商標)、Fungamyl(登録商標)及びDuramyl(登録商標)がある。国際特許出願公開第95/26397号は、他の適当なアミラーゼについて述べている。すなわち、Phadebas(登録商標)α−アミラーゼ活性アッセイにより測定した場合に、25℃〜55℃の温度範囲及び8〜10の範囲のpHの値でTermamyl(登録商標)の比活性よりも少なくとも25%高い比活性を有することにより特徴付けられるα−アミラーゼである。国際特許出願公開第96/23873号(ノボ・ノルディスク社(Novo Nordisk))に述べられる上記の酵素の変異体が適当である。活性レベル及び熱安定性とより高い活性レベルの組み合わせに関して性質が向上した他のデンプン分解性酵素が、国際特許出願公開第95/35382号に述べられている。
【0090】
本発明の組成物はマンナナーゼ酵素を更に含み得る。マンナナーゼは、以下の3種類のマンナン分解酵素、すなわちEC 3.2.1.25(β−マンノシダーゼ)、本明細書において以下「マンナナーゼ」と呼ぶ、EC 3.2.1.78(エンド−1,4−β−マンノシダーゼ)、及びEC 3.2.1.100(1,4−β−マンノビオシダーゼ)及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。(IUPAC Classification−Enzyme nomenclature,1992 ISBN 0−12−227165−3 Academic Press)。
【0091】
あるいは、本発明の組成物は、マンナナーゼが存在する場合、マンナナーゼと呼ばれるβ−1,4−マンノシダーゼ(EC 3.2.1.78)を含む。「マンナナーゼ」又は「ガラクトマンナナーゼ」なる用語は、当該技術分野に基づいた正式名称がマンナンエンド−1,4−β−マンノシダーゼであり、β−マンナナーゼ及びエンド−1,4−マンナナーゼの別名を有し、マンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナン及びガラクトグルコマンナンの1,4−β−D−マンノシド結合をランダムに加水分解する反応を触媒するものとして定義されるマンナナーゼ酵素のことを指す。
【0092】
マンナナーゼ(EC 3.2.1.78)は、マンナンを分解する一群のポリサッカラーゼを構成し、マンノース単位を含むポリオース鎖を切断することが可能な、すなわち、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、及びガラクトグルコマンナンのグリコシド結合を切断することが可能な酵素のことを指す。マンナンは、β−1,4−結合したマンノースからなる主鎖を有する多糖類であり、グルコマンナンはある程度規則的に交互に繰り返すβ−1,4−結合したマンノース及びグルコースの主鎖を有する多糖類であり、ガラクトマンナン及びガラクトグルコマンナンは、ガラクトース側鎖がα−1,6結合したマンナン及びグルコマンナンである。これらの化合物はアセチル化されてもよい。
【0093】
本明細書において使用するための洗剤酵素は、酵素を安定化させるための公知の方法を用いて配合することができる。こうした方法では、低濃度(例えば、洗剤組成物の0.01%〜0.2%)の塩化カルシウムなどの可溶性のカルシウム及び/又はマグネシウム塩を使用する。他の公知の酵素安定化剤としては、ホウ砂、ホウ砂−ポリオール複合体(例えば、ソルビトールとの)、4−FPBAなどのプロテアーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0094】
繊維の蛍光増白剤としても知られる蛍光増白剤は、本洗濯洗剤組成物において有用な洗濯補助剤である。適当な使用濃度は、洗濯洗剤組成物の約0.001重量%〜約1重量%である。蛍光増白剤については、例えば欧州特許出願公開第686691B号に開示されており、疎水性タイプと親水性タイプがある。本明細書においてはBrightener 49が好ましい。
【0095】
色相又はシェーディング染料
色相染料、シェーディング染料、又は布地シェーディング剤若しくは色相剤は、本洗濯洗剤組成物において有用な洗濯補助剤である。洗濯におけるこれらの物質の歴史は長く、何年も前の「洗濯青味剤」の使用にさかのぼる。より最近の発展としては亜鉛又はアルミニウム中心原子を有するスルホン化フタロシアニン染料があり、更により最近では、非常に幅広い他の青色及び/又は紫色染料がその色相又はシェーディング効果のために使用されている。例えば、国際特許出願公開第2009/087524 A1号、同第2009/087034A1号、及びそれらの引用文献を参照されたい。本明細書における洗濯洗剤組成物は、一般的に約0.00003重量%〜約0.1重量%、約0.00008重量%〜約0.05重量%、又は更には約0.0001重量%〜約0.04重量%の布地色相剤を含む。
【0096】
多価水溶性有機ビルダー及び/又はキレート剤
本組成物は一般的に、少なくとも約0.1重量%、好ましくはそれよりも多い(例えば、最大で約10重量%)の1以上の多価水溶性有機ビルダー及び/又はキレート剤を含む。例えばMEAクエン酸塩などのクエン酸塩若しくはクエン酸、又はNTA若しくはEDTAなどの他の低分子量の多価カルボン酸塩もこの役割では有用である。
【0097】
多価水溶性有機ビルダー及び/又はキレート剤の他の例としては、アミノアルキレンポリ(アルキレンホスホネート)、アルカリ金属エタン1−ヒドロキシジホスホネート、及びニトリロトリメチレンホスホネートなどの有機ホスホン酸塩が挙げられる。地理的状況に応じて、調節目的でホスホン酸塩が使用されない場合もある。一実施形態では、キレート剤は、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(DDTMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシ−エチレン1,1ジホスホン酸(HEDP)、又はヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸である。
【0098】
本明細書における他の有用なキレート剤及び/又は金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA;VERSENOL 120)、ニトリロ三酢酸(NTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシエチルイミノジコハク酸(HIDS)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HEIDA)、グリシンジ酢酸(GLDA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、又はこれらの混合物が挙げられる。更に、キレート剤又は金属イオン封鎖剤としては、Tiron(商標)などのカテコールスルホネートに関連した調製物、又はこれらと他のキレート剤又は金属イオン封鎖剤との組み合わせを挙げることができる。
【0099】

一実施形態では、本組成物の含水量は約5%〜約45%である。より好ましくは、含水量は約5%〜約35%である。特定の好ましい実施形態では、組成物の水と非アミノ官能性溶媒の総重量は、組成物の5重量%〜45重量%、具体的には10重量%〜30重量%であり、具体的には組成物の約40重量%以下、より具体的には35重量%以下、更により具体的には30重量%以下、更により一層具体的には25重量%以下であり、具体的には組成物の約0重量%〜約25重量%、より具体的には約1重量%〜約20重量%、更により具体的には約5重量%〜約15重量%の非アミノ官能性溶媒を有する。
【0100】
一般的に、本明細書における結晶性構造剤は、通常は5%〜90%、好ましくは10%〜80%、より好ましくは30%〜70%の濃度の水を含むプレミックスとして調製することができる。しかしながら、一般的にC、H及びOから本質的になる(すなわち、非シリコーンであり、かつ異種原子を含まない)有機非アミノ官能性有機溶媒は、特に加工処理時の粘度を調節又は低下させる目的で、結晶性構造剤プレミックス中に溶媒として存在してもよい。水と非アミノ官能性有機溶媒のこうした組み合わせは、しばしば「液体基剤」と呼ばれる。
【0101】
任意成分
本組成物の特定の実施形態では、脂肪酸及び/又はその可溶性の塩が含まれていてもよい。脂肪酸及び/又はその可溶性の塩は、洗剤中で複数の機能を有することが知られており、界面活性剤、ビルダー、増粘剤、発泡抑制剤などとして機能する。したがって、疑義を避けるため、配合を説明する目的で、また、本明細書の好ましい実施形態においては、石鹸と脂肪酸とは別々に記載する。更に、石鹸は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び/又はMEAなどのアルカノールアミンなどの中和剤を用いて配合物中でそのまま中和又は部分的に中和される。
【0102】
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びこれらの混合物を含むあらゆる石鹸又は脂肪酸が、本明細書における使用に適している。通常は複雑な混合物である、天然に得られる脂肪酸も適している(タロー、ココナツ、及びパーム核脂肪酸など)。一実施形態では、組成物の約0重量%〜約15重量%の脂肪酸が組成物中に存在してもよい。
【0103】
防腐剤
微生物による汚染を制限する目的で、可溶性の防腐剤などの防腐剤を結晶性構造剤プレミックス又は最終的な洗剤製品に加えることができる。こうした汚染によって、相分離、(例えば鼻につく)不快臭などにつながり得る細菌及び真菌のコロニーが生じ得る。細菌及び真菌の増殖を阻止する広域抗菌スペクトルを有する防腐剤を使用することが好ましい。単一の微生物群に対してのみ有効な限定されたスペクトルを有する防腐剤を、広域抗菌スペクトルを有する物質と組み合わせて、あるいは付加的な活性を有するスペクトルが限定された防腐剤の「パッケージ」として使用することもできる。製造及び消費者の使用の状況に応じて、1以上の広域抗菌スペクトルを有する防腐剤を使用してあらゆる潜在的汚染の影響を最小に抑えることもできる。
【0104】
殺菌物質(すなわち、細菌及び真菌を殺滅又は破壊する物質)及び制菌防腐剤(すなわち、微生物の増殖を調節又は遅らせる物質)の両方の使用も本発明のために示され得る。
【0105】
環境廃棄物を最小に抑え、配合物の安定性を最大限確保するためには、低濃度で有効な防腐剤を使用することが好ましい。通常、こうした防腐剤は有効量でのみ使用される。本開示の目的において「有効量」なる用語は、製品の安定性及び物性に悪影響が及ぼされないように、特定の時間(すなわち、2週間)にわたって製品中における微生物の増殖を抑制するのに充分な濃度を意味する。多くの防腐剤では、有効量は全配合物の重量に対して約0.00001%〜約0.5%である。しかしながら、有効濃度は使用される物質に応じて変化し得ることは明らかであり、当業者であれば適切な防腐剤及び使用濃度を選択することが可能である。
【0106】
本発明の組成物における好ましい防腐剤としては、有機硫黄化合物、ハロゲン化物質、環状有機窒素化合物、低分子量のアルデヒド、第四級アンモニウム物質、デヒドロ酢酸、フェニル及びフェノキシ化合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0107】
本発明の組成物において使用するための好ましい防腐剤の例としては、ローム・アンド・ハース社(Rohm & Haas)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)により1.5%水溶液としてKathonの商品名で市販される、約77%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、約23%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物、例えば、アーク・ケミカルズ社(Arch Chemicals)(ジョージア州アトランタ)より商品名Proxel(商標)GXLで販売される20%ジプロピレングリコール溶液としてアベシア社(Avecia)(デラウェア州ウィルミントン)より市販される1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及び、例えばロンザ社(Lonza)(ニュージャージー州フェアローン)よりGlydant Plusとして入手可能な1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオンと、3−ブチル−2−ヨードプロピニルカルバメートとの95:5混合物が挙げられる。上記に述べた防腐剤は一般に、製品の安定性を与える有効量でのみ使用される。しかしながら、本発明の組成物中にこれらの防腐剤をより高い濃度で使用することによって、処理された物品に対して制菌又は抗菌作用を与えることも考えられる。非常に好ましい防腐剤システムとしては、Acticide(商標)MBSとして市販され、活性成分であるメチル−4−イソチアゾリン(MIT)及び1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)をほぼ同じ重量比で、Acticide(商標)MBS中の全濃度が約5%となるように含むものがある。Acticideは、結晶性構造剤プレミックス中の活性成分を100%として、約0.001〜0.1重量%、より一般的には0.01〜0.1重量%の濃度で配合される。
【0108】
結晶性構造剤以外の増粘剤
例えば、ルブリゾール社(Lubrizol)(オハイオ州ウィクリフ)より販売されるCarbopol(商標)、会合性増粘剤として知られるようなアクリレートコポリマーなどのポリマー増粘剤を、結晶性構造剤プレミックスを補うために使用することができる。これらの物質は、結晶性構造剤プレミックス中に、あるいは最終的な洗剤組成物中に別々に加えることができる。これに加えるかあるいはこれに代えて、ジベンジリデンソルビトールなどの公知のLMOG(低分子有機ゲル化剤)を、結晶性構造剤プレミックス中で、あるいは最終的な洗剤中で、組成物に加えることもできる。適当な使用濃度は、最終的な洗剤組成物の約0.01重量%〜約5重量%、又は約0.1重量%〜約1重量%である。
【0109】
結晶性構造剤以外の粒子状物質
本明細書における洗剤組成物は、泡立ち抑制剤、例えばカプセル化された芳香剤、漂白剤、及び酵素などのカプセル化された感応性成分、又は、真珠光沢剤、顔料粒子、雲母などの美観補助剤などの粒子状物質を更に含み得る。適当な使用濃度は、最終的な洗剤組成物の約0.0001重量%〜約5重量%、又は約0.1重量%〜約1重量%である。本発明の実施形態においては、例えば外観上の効果を得るための雲母などの特定の粒子状物質は、結晶性構造剤プレミックス中に直接加える一方で、例えばカプセル化された酵素及び/又は漂白剤などのより感応性の粒子状物質は、より後の時点で最終的な洗剤組成物中に配合することが有用であることが分かっている。
【0110】
一実施形態では、液体洗剤組成物は香料を含む。香料は一般的に、少なくとも約0.001重量%、好ましくは少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.1重量%、かつ約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約3重量%以下の濃度で本組成物に添加される。
【0111】
一実施形態では、本発明の衣類コンディショニング組成物の芳香剤は、約250℃以上の沸点及び約3.0以上のClogPを有する耐久性芳香成分を、より好ましくは芳香剤の少なくとも約25重量%の濃度で含む。適当な芳香剤、芳香剤成分、及び芳香剤基剤については、米国特許第5,500,138号、及び米国特許出願公開第20020035053 A1号に述べられている。
【0112】
別の実施形態では、芳香剤は、芳香剤マイクロカプセル及び/又は芳香剤ナノカプセルを含む。適当な芳香剤マイクロカプセル及び芳香剤ナノカプセルには、以下の文献に述べられるものが挙げられる。すなわち、米国特許出願公開第2003215417 A1号、同第2003216488 A1号、同第2003158344 A1号、同第2003165692 A1号、同第2004071742 A1号、同第2004071746 A1号、同第2004072719 A1号、同第2004072720 A1号、欧州特許出願公開第1393706 A1号、米国特許出願公開第2003203829 A1号、同第2003195133 A1号、同第2004087477 A1号、同第20040106536 A1号、米国特許第6645479号、同第6200949号、同第4882220号、同第4917920号、同第4514461号、米国再発行特許第RE 32713号、米国特許第4234627号。
【0113】
更に別の実施形態では、液体洗剤組成物は、1999年8月24日登録の米国特許第5942217号「臭気防止用非錯体化シクロデキストリン組成物(Uncomplexed cyclodextrin compositions for odor control)」に述べられるような臭気防止剤を含む。臭気防止剤に適した他の物質としては、米国特許第5968404号、同第5955093号、同第6106738号、同第5942217号、及び同第6033679号に述べられるものが挙げられる。
【0114】
ヒドロトロープ
液体洗剤組成物は、液体洗剤組成物が水と相溶するように有効量(すなわち、約0%〜約15%、又は約1%〜10%、又は約3%〜約6%)のヒドロトロープを必要に応じて含む。本明細書における使用に適したヒドロトロープとしては、米国特許第3,915,903号に開示されるような、アニオン型のヒドロトロープ、特にキシレンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸カリウム、及びキシレンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸カリウム及びトルエンスルホン酸アンモニウム、クメンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸カリウム及びクメンスルホン酸アンモニウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0115】
カップリングポリマー以外のポリマー
本発明の組成物は、その通常の濃度において、非置換ポリアルキレンイミンなどの低濃度の芳香剤析出促進ポリマー;例えば約0.0001%〜約1%の濃度のPVP又はPVP/VIなどの染料移行防止ポリマー;約0.001%〜約2%の濃度の、ポリマーシリコーンタイプの泡立ち抑制剤又は異なるシリカとその混合物を含む泡立ち抑制剤;約0.01%〜約5%の濃度の置換又は非置換のキャップ化又は非キャップ化ポリエチレンテレフタレートなどの汚れ分離ポリマー;約0.01%〜約3%の濃度のアミノ官能性シリコーンなどのシリコーン衣類ケアポリマー;及び当該技術分野においてビルダーとして知られるスルホカルボキシレートポリマーを更に含み得る。他の有用であるが必要に応じて用いられるポリマーとしては、懸濁液として配合することが可能なPEG/ビニルアクリレートコポリマー、又は、窒素を含み、エトキシレート及び/又はプロポキシレート部分の組み合わせを有する他の公知の洗浄ポリマーが挙げられる。
【0116】
パッケージング
試験方法
粘度は、ティー・エー・インスツルメンツ社(TA Instruments)(デラウェア州ニューカッスル、米国)より販売されるAR−G2レオメーターを使用して測定する。粘度を21℃で測定し、せん断速度の関数としてプロットする。
【0117】
相分離
最初に、本発明は一態様において、少なくとも10%の少なくとも1種類のアニオン性非石鹸界面活性剤と、全界面活性剤濃度が前記洗剤の重量の少なくとも20%となるように少なくとも0.1%の他の界面活性剤と、前記洗剤の重量の15%以下の有機非アミノ官能性溶媒と、を含む濃縮された水性液体又はゲル状洗濯洗剤を製造するための方法であって、(i)前記洗剤をアルカノールアミンと配合する少なくとも1つの工程と、(ii)前記洗剤をカップリングポリマーと配合する少なくとも1つの工程と、(iii)前記洗剤を、洗剤活性酵素、繊維蛍光増白剤、及び布地色相染料から選択される洗濯補助剤と配合する少なくとも1つの工程と、を任意の順序で含み、好ましい一方法では、前記洗剤中に前記洗剤の0.05重量%〜2重量%の結晶性構造剤を配合する工程(iv)を、工程(i)、(ii)及び(iii)に対して任意の順序で更に含む方法に関するものであることを思い出していただきたい。
【0118】
本相分離、すなわち相安定性の試験方法によれば、
洗剤組成物の相安定性は、300mLの洗剤組成物を、例えば容量500mLの実験用ビーカーなどの透明なガラスジャーに、21日間の間、21℃で入れることによって評価される。洗剤は、上記の期間の間に、(i)2層以上の層に分離しないままであるか、あるいは、(ii)洗剤が層に分離した場合には、組成物の少なくとも90重量%、好ましくは95重量%をなす主層が存在する場合に、相分離に対して安定である。本発明の洗剤製品(実施例1〜5)は、試験条件下では分離しない。
【0119】
低温での溶解速度の目安としての導電率
以下は、自動洗濯機の冷水/ウールサイクルを模すために、低攪拌速度及び20℃の温度で行ったビーカー試験である。この試験は、時間の経過にともなう導電率の変化を調べることにより、濃縮された液体又はゲル状洗濯洗剤の溶解速度を測定するものである。装置:磁気ホットプレート、導電率計、ストップウォッチ。
【0120】
手順:
●3Lのビーカー(高さ=20cm、直径=15cm)を2500グラムの脱塩水で満たし、このビーカーに7×1cmの円筒状の磁気攪拌子を入れる。
●ビーカーを磁気ホットプレート(IKA(登録商標)WERKE社より販売されるRCTベーシックタイプ)上に置く。速度を設定値「6」に設定するが、装置はまだ始動させない。
●7.115mLの洗濯製品をピペットにより上記の水に加える(2.5Lの水に7.115mLを加えると13Lの水に37mLを加えたことに相当し、これは自動洗濯機において使用される洗濯洗剤の濃度と一致する)。
●導電率計(Consort K911型)のプローブを水の中で垂直に固定する(プローブの下端が水面下3cmとなるように)。
●同時に磁気ホットプレート及びストップウォッチをスタートさせる。
●導電率の時間的変化を測定する。
注意:試験は上記に述べた設定値に限定されるものではなく、他の洗浄条件を模するために水温又は混合速度を変えてもよい。これは比較試験であって絶対的な試験ではない。
【0121】
結果:
▲本発明の洗濯洗剤組成物(実施例1〜5)はいずれも、25秒よりも短い時間で50%の溶解率を達成した。
▲比較として、2009年5月に英国において生活協同組合(Co−op)より販売された「Ultra gel」、又は2009年5月に英国においてマークス・アンド・スペンサー社(Marks and Spencer)より販売された「Biological gel」のような市販の濃縮された液体又はゲル状洗剤製品は、約1分を要した。
【0122】
布地の残留物(黒パウチ試験)
●1片の黒いベルベット地(概ね20×30cm)を軟らかい部分が外側となるように2つに折る(ベルベット地は、通常、一方の側が比較的に平らで他方の側がより軟らかく/毛羽だっている)。
●2辺を互いにしっかりと縫い付け、1辺は開いたままとする(これでパウチができたことになる)。
●37mLの本発明の液体洗濯洗剤又は推奨される用量の市販の比較用製品(用量の説明書に従う)を、計量装置(適当な計量装置はアリエル・エクセル・ジェル社(Ariel Excel Gel)より販売されている)に入れ、計量装置を黒いパウチの中に入れる。
●残りの辺を互いにしっかりと縫い付ける。これで計量装置はパウチの中に完全に閉じ込められたことになる。
●パウチを、フロントローディング式の家庭用自動衣類洗濯機(適当なモデルはMiele 526)に洗濯物は入れずに入れる。
●40℃のウールサイクルで運転する。
●洗い/濯ぎの後、黒いパウチを取り出す。
●パウチをハサミで切り開き、ベンチの上で乾かす。
●布地が乾燥した時点で、残留物の存在を記録する。
【0123】
試験後の黒パウチの分析:
1)残留物なし:良(本明細書の洗濯洗剤が該当(実施例1〜5を参照))。
2)少なくともある程度の残留物:不良(上記の生活協同組合(Co−op)及びマークス・アンド・スペンサー社(Marks and Spencer)より販売される「ゲル製品」などの、本発明に基づくものではない比較用洗濯洗剤が該当)。
【実施例】
【0124】
表Iを参照すると、表Iに開示される非限定的な実施例には、本発明の幾つかの実施形態の実例となるものが含まれる。
【0125】
実施例1は、本発明に基づく液体洗剤組成物の一例であり、4% HCO、1.9% NaOHによって中和した16%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、及び100部となるだけの水を含むプレミックスを調製し、これを残りの成分を含む洗濯洗剤マトリクスに18.75%の濃度で加えることによって、表Iの洗剤組成物1としたものである。
【0126】
実施例2は、本発明に基づく液体洗剤組成物の一例であり、4% HCO、3.1%モノエタノールアミン(MEA)によって中和した16%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、及び100部となるだけの水を含むプレミックスを調製し、これを残りの成分を含む洗濯洗剤マトリクスに18.75%で加えることによって、表Iの洗剤組成物2としたものである。
【0127】
実施例3〜5は、実施例2と同様の、MEAで中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を含む同じHCOプレミックスを用い、これを残りの成分に同じ濃度(18.75%)で加えた、本発明に基づく液体洗剤組成物の例である。
【0128】
【表1】

【化7】

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の重量比率(%)には、水素添加ヒマシ油結晶性構造剤によって組成物に添加されたものが含まれる。
1個の−NH当たり20個のエトキシレート基を有する、分子量600g/molのポリエチレンイミンコア。
PEG−PVAグラフトコポリマーは、ポリエチレンオキシド主鎖と複数のポリ酢酸ビニル側鎖とを有する、ポリビニルアセテートグラフト化ポリエチレンオキシドコポリマーである。ポリエチレンオキシド主鎖の分子量は約6000であり、ポリ酢酸ビニルに対するポリエチレンオキシドの重量比は約40:60であり、エチレンオキシド単位50個当たりグラフト点は1個以下である。
【0129】
各実施例に基づいて調製された液体洗剤組成物は、スリットバルブを備える倒立型スクイズボトルにパッケージングすることができる。
【0130】
本明細書に開示される寸法及び値は、記載される正確な数値に厳密に限定されるものとして理解すべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、こうした各寸法は、記載される値及びその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0131】
相互参照又は関連するすべての特許又は出願を含め、本明細書において引用するすべての文献は、明確に除外又は限定しないかぎりにおいて、その全容を本明細書に援用するものである。いずれの文献の引用も、こうした引用が本明細書において開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした引用が単独で、若しくは他のいずれの参考文献とのいかなる組み合わせにおいても、こうした発明を教示、提案、又は開示することを容認するものでもない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、援用された文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反するかぎりにおいて、本書においてその用語に付与された定義又は意味が優先するものとする。
【0132】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮された水性液体又はゲル状洗濯洗剤であって、重量比率で、
a)少なくとも10%の少なくとも1種類のアニオン性非石鹸界面活性剤と、
b)全界面活性剤濃度が少なくとも20%となるように少なくとも0.1%の他の界面活性剤と、
c)15%以下の有機非アミノ官能性溶媒と、を含む、濃縮された水性液体又はゲル状洗濯洗剤を製造するための方法であって、
(i)前記洗剤を、好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びこれらの混合物から選択されるアルカノールアミンと配合する少なくとも1つの工程と、
(ii)前記洗剤を、好ましくは前記洗剤の0.1重量%〜5重量%の濃度の、好ましくは少なくとも2個の窒素原子を含み、ポリ(エトキシレート)部分を含む少なくとも2個の側鎖が結合した脂肪族主鎖を有する水溶性の極性両親媒性コポリマーの群から選択されるカップリングポリマーと配合する少なくとも1つの工程と、
(iii)前記洗剤を、洗剤活性酵素、繊維蛍光増白剤、及び布地色相染料、並びにこれらの混合物から選択される洗濯補助剤と配合する少なくとも1つの工程と、を任意の順序で含む、方法。
【請求項2】
前記洗剤中に、前記洗剤の0.05重量%〜2重量%の、好ましくは水素添加ヒマシ油を含む結晶性構造剤を配合する工程(iv)を、工程(i)、(ii)及び(iii)に対して任意の順序で更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
21℃で21日間の保管後に相分離に対して安定である、請求項4に記載の方法の生成物。
【請求項5】
パッケージングされた水性洗濯洗剤組成物であって、重量比率で前記洗剤の25重量%〜55重量%の全界面活性剤を含み、前記界面活性剤が少なくともアニオン性非石鹸界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を1:2〜100:0の重量比で含み、前記洗剤が相分離に対する安定化系を含み、前記安定化系が、
(a)アルカノールアミンと、
(b)結晶性構造剤と、
(c)好ましくは前記洗剤の0.1重量%〜5重量%の濃度で存在するカップリングポリマーであって、
(ii)ポリ(アルコキシレート)部分を含む少なくとも2個の側鎖が結合した、(i)少なくとも2個の窒素原子を含む脂肪族主鎖によって好ましくは特徴付けられる、カップリングポリマーと、を含み、
前記洗剤が、5%水溶液で6〜9の水性pHを有し、前記洗剤が、21℃で測定した場合に20s−1で1000センチポアズよりも高い注入粘度、及び21℃で測定した場合に0.01s−1で100,000センチポアズよりも高い低せん断粘度を有する、水性洗濯洗剤組成物。
【請求項6】
前記組成物が可変の用量の供給が可能であるパッケージに入れられ、前記パッケージが好ましくは前処理注ぎ口を備え、かつ50mL以下の自動洗濯機における1回の洗い当たりの用量を推奨する用量説明書が貼付されたラベルを有する、請求項5に記載の水性洗濯洗剤組成物。
【請求項7】
メタノール又はエタノール以外の少なくとも2種類のアルカノールを好ましくは含む、2%〜15%以下の非アミノ官能性有機溶媒を更に含む、請求項5に記載の水性洗濯洗剤組成物。
【請求項8】
前記アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びこれらの混合物から選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項9】
前記カップリングポリマーが、110,000よりも低い分子量を有し、少なくとも2個の窒素原子を含み、(ii)ポリ(アルコキシレート)部分を含む少なくとも2個の側鎖が結合した脂肪族主鎖を含むポリマーから選択され、前記ポリ(アルコキシレート)部分がポリ(エトキシレート)部分から本質的になる、請求項5〜8のいずれか一項に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項10】
重量比率で、
a.アニオン性界面活性剤の少なくとも1%がアルキル(ポリアルコキシ)サルフェートであるものとして15%〜30%のアニオン性界面活性剤と、
b.5%〜15%の非イオン性界面活性剤と、
d.0.1%〜7%のクエン酸、キレート剤、又はこれらの混合物と、
e.2%〜15%の有機非アミノ官能性溶媒と、
f.0.05%〜1.5%の水素添加ヒマシ油と、
g.1%〜15%のアルカノールアミンと、
h.0.1%〜5%のカップリングポリマーと、
i.5%〜35%以下の水と、を含み、
前記洗剤が、21℃で測定した場合に20s−1で1000センチポアズよりも高い注入粘度、及び21℃で測定した場合に0.01s−1で100,000センチポアズよりも高い低せん断粘度を有する、請求項5〜9のいずれか一項に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項11】
最大で15%の脂肪酸を更に含む、請求項5〜10のいずれか一項に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項12】
衣類を洗濯するための方法であって、
a.請求項5〜11のいずれか一項に記載の前記洗濯洗剤組成物を、10〜70Lの水に対して20〜50gの組成物の濃度にまで自動衣類洗濯機内の水中に加えて、洗浄液を形成する工程と、
b.前記洗浄液に衣類を加える工程と、を含む、方法。
【請求項13】
10L〜20Lの前記洗浄液に0.01kg〜2kgの衣類を加える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記洗浄液が加熱されないか、あるいは40℃以下の温度にまで加熱される、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503950(P2013−503950A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528130(P2012−528130)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048742
【国際公開番号】WO2011/032138
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】