説明

凝集体の製造方法

【課題】少なくとも1種の炭素相とケイ素含有種相又は金属含有相とを有する凝集体を製造する。
【解決手段】第1の供給原料を(9)に導入し、下流の(10)で第2の供給原料を導入する。第1及び第2の原料は、カーボンブラック用供給原料及び、ケイ素含有化合物、又は金属含有化合物を含む。反応器は、ケイ素含有化合物、又は金属含有化合物を分解し且つカーボンブラック用供給原料を熱分解するのに十分な温度で操作する。カーボン相とケイ素含有種相とを含む凝集体を製造するのと並んで、シリカ及び/又はカーボンブラックも本発明の方法からもたらされることがある。供給原料を導入する少なくとも2つの段階を有する多段反応器を使用して、カーボンブラック相と金属含有種相とを有する凝集体を製造することを含む更なる方法を開示する。本発明の凝集体はエラストマー配合物に組み込むと、改良された湿りスキッド抵抗ところがり抵抗の性質をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段プロセスを使用した凝集体の製造に関する。とりわけ、本プロセスは、多段反応器を使用した、少なくともカーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体の製造方法に関する。また、本発明は、カーボンブラックと金属含有種相を含む凝集体の製造方法に関する。さらに、本発明は、エラストマー組成物のような組成物中にこれらの1種以上の凝集体を使用することに関し、また、転がり抵抗と湿りトラクションを改良する方法に関し、また、これらの特性を有するエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、顔料、フィラー、ゴムその他のエラストマー配合物の配合と調製における強化材として広く使用されている。カーボンブラックは、タイヤの製造に使用されるエラストマー配合物の調製における強化材として特に有用である。
カーボンブラックは、一般に、カーボンブラック供給原料を高温燃焼ガスで熱分解し、微粒カーボンブラックを含む燃焼生成物を生成させるファーネス型反応器で製造される。カーボンブラックは凝集体の形態で存在する。この凝集体は、カーボンブラック粒子からなる。ここで、カーボンブラック粒子は、一般に、カーボンブラック凝集体とは独立して存在しない。カーボンブラックは、一般に、限定されるものではないが、粒子サイズと比表面積、凝集体サイズ、形状、分布などの分析特性、及び表面の物理的・化学的特性に基づいて特徴づけられる。カーボンブラック特性は、当該技術で公知の試験によって分析評価される。例えば、窒素吸着表面積(ASTM試験法のD3037方法A又はD4820方法Bによって測定)とセチルトリメチル臭化アンモニウム吸着値(CTAB)(ASTM試験法D3765〔09.01〕によって測定)は、比表面積の尺度である。圧潰後のジブチルフタレート吸油量(CDBP)(ASTM試験法のD3493−86によって測定)と未圧潰のジブチルフタレート吸油量(DBP)(ASTM試験法のD2414−93によって測定)は凝集体構造に関する。結合ゴム値は、カーボンブラックの表面活性に関係する。所与のカーボンブラックの特性は製造条件によって決まり、例えば、温度、圧力、供給原料、滞留時間、クエンチ時間、処理量、その他のパラメーターを変えることによって変化させることができる。
【0003】
タイヤ製造において、トレッドその他のタイヤ部分を構成するとき、カーボンブラック含有配合物を使用することが一般に望ましい。例えば、適切なトレッド配合物は、いろいろな温度で高い耐磨耗性と良好なヒステリシスバランスを提供するエラストマー配合物を使用する。高い耐磨耗性を有するタイヤは、耐磨耗性がタイヤの寿命に比例するため望まれる。カーボンブラックの物理的特性は、トレッド配合物の耐磨耗性とヒステリシスに直接影響する。一般に、高い表面積と小さい粒子サイズを有するカーボンブラックは、トレッド配合物に高い耐磨耗性と高いヒステリシス付与する。また、カーボンブラック充填量は、エラストマー組成物の耐磨耗性に影響する。耐磨耗性は、少なくとも最適値までは充填量とともに増加し、それを超えると耐磨耗性は事実上低下する。
エラストマー配合物のヒステリシスは、周期的変形下のエネルギー散逸に関係する。言い換えると、エラストマー組成物のヒステリシスは、エラストマー組成物を変形させるために加えられたエネルギーと、エラストマー組成物がその元の変形していない状態に回復するときに放出されるエネルギーの差異に関係する。ヒステリシスは損失正接(tanδ)によって特徴づけられ、これは、損失モジュラス/貯蔵モジュラスの比(即ち、粘性モジュラス/弾性モジュラス)である。40℃以上のような割合に高い温度で測定したときに割合に低いヒステリシスを有するタイヤ配合物で製造されたタイヤは、そのタイヤを用いた車両による削減された燃焼消費をもたらす。同時に、濡れ表面上で割合に高い摩擦係数を有するタイヤトレッドは、高い湿りトラクション(traction)と湿りスキッド抵抗を有するタイヤをもたらす。即ち、高い温度での低いヒステリシスと低い温度での高いヒステリシスを呈するタイヤトレッド配合物は、良好なヒステリシスバランスを有すると言える。
【0004】
良好なヒステリシスバランスを示すが耐磨耗性がそれ程重要ではない因子のエラストマーを提供することは、多くのその他の用途に有用である。こうした用途には、タイヤ構成部分に限定されるものではないが、アンダートレッド、ウェッジ配合物、側壁、カーカス、アペックス、ビートフィラー、ワイヤスキム、エンジンマウント、及び工業的な駆動・自動ベルトに使用されるベース配合物が挙げられる。
また、シリカはエラストマーの強化材(又はフィラー)として有用である。しかしながら、エラストマーの強化材としてシリカのみを使用すると、カーボンブラックのみを強化材として含む場合に比較して劣った性能をもたらす。これは、強いフィラー間の相互作用と乏しいフィラーとエラストマーの相互作用とがシリカの劣った性能の原因になると説明される。シリカとエラストマーの相互作用は、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(ドイツのデグッサAGよりSi−69として市販)のような化学的カップリング剤を用いてこの2つを化学的に結合させることによって改良することができる。Si−69のようなカップリング剤は、エラストマーとシリカの間に化学的結合を形成し、それによってシリカをエラストマーに結合させる。
シリカがエラストマーに化学的に結合すると、得られるエラストマー組成物の特定の性能特性が向上する。車両タイヤに混入されると、このようなエラストマー配合物は、改良されたヒステリシスバランスを提供する。しかしながら、主たる強化材としてシリカを含むエラストマー配合物は、低い熱伝導率、高い電気抵抗率、高い密度、及び劣った加工性を呈する。
エラストマー組成物の強化材としてカーボンブラックを単独で使用すると、カーボンブラックはエラストマーと化学的に結合しないが、カーボンブラック表面がエラストマーと相互作用するための多くの箇所を提供する。カーボンブラックとカップリング剤を併用すると、エラストマー組成物にある程度の性能の改良を提供することがあるが、その改良は、カップリング剤をシリカに使用した場合のそれとは比較にならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、少なくともカーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体の製造方法に関する。本方法において、2段階の供給原料注入システムとして、第1供給原料が多段反応器の第1段階に注入される。第1供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、シリカ含有化合物、又はこれらの混合物を含んでなる。また、本方法は、第1段階の下流位置で反応器中に第2供給原料を注入する工程をさらに含む。第2供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、シリカ含有化合物、又はこれらの混合物を含んでなるが、但し、第1供給原料がカーボンブラック生成用供給原料のみを含めば(シリカ含有化合物を含まない)、第2供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料とシリカ含有化合物の混合物か、シリカ含有化合物のみのいずれかである。第1供給原料と第2供給原料の少なくとも一方の供給原料は、少なくともカーボンブラック生成用供給原料を含み、第1供給原料と第2供給原料の少なくとも一方の供給原料は、少なくともシリカ含有化合物を含む。ここで、段数は任意であるが、少なくとも2つでなければならない。多段反応器は、シリカ含有化合物を分解してカーボンブラック生成用供給原料を熱分解するのに十分な温度に維持される。
【0006】
また、本発明は、カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体の製造方法に関するものであり、ここで、反応器中に供給原料を導入するための少なくとも3段階を有する多段リアクターが使用される。第2段階と第3段階及び付加的な段階は、第1段階の下流に位置する。各段階に注入された供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、シリカ含有化合物、又はこれらの混合物を含んでなる。少なくとも1つの段階は、カーボンブラック生成用原料を含み、少なくとも1つの段階は、シリカ含有化合物を含む。反応器は、シリカ含有化合物を分解してカーボンブラック生成用供給原料を熱分解するのに十分な温度に維持される。
本発明の凝集体は、好ましくは、凝集体のBET(N2 )表面積とt−面積の差で測定される粗い表面を有する。HF(フッ化水素酸)処理の後、この凝集体のBET面積とt−面積は好ましくは増加する。DCP(ディスク式の遠心光沈降器)で測定したHF処理後の凝集体サイズは、一般に低下し、シリカのある量が凝集体の中に残る。500℃の空気中でのカーボン相の熱処理後に残るシリカは、好ましくは高い表面積を有する。
【0007】
また、本発明は、カーボン相と金属含有種相を含む凝集体の製造方法に関するものであり、ここでは、反応器に供給原料を導入するための少なくとも2つの段階を有する多段反応器が使用される。第2の段階と随意の付加的段階は、第1の段階の下流に位置する。各段階で導入される供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、金属含有化合物、又はこれらの混合物を含む。また、供給原料の1種以上は、所望により、ケイ素含有化合物を含む。少なくとも1つの段階は、カーボンブラック生成用供給原料を含み、少なくとも1つの段階は、金属含有化合物を含む。反応器は、金属含有化合物を分解し、カーボンブラック生成用供給原料を熱分解するのに十分な温度に維持される。
上記の方法から得られる凝集体は、エラストマー組成物に混和される。これらのエラストマー組成物は、カーボン相とケイ素含有種相が存在する凝集体を含まないエラストマー組成物に比較し、改良された湿りスキッド抵抗ところがり抵抗を提供することができる。
上記の説明と以下の詳細な説明は、代表的なものであって例示に過ぎなく、請求の範囲に示した本発明を説明するためのものであることを理解されたい。本発明のこの他の特徴と効果は、下記の説明の中に示され、下記の説明から明らかであり、下記の説明から教示され、又は本発明の実施例から理解されるであろう。本発明の目的とその他の効果は、記載の説明と請求の範囲に特に示した要素とその組み合わせから理解・習得されるであろう。
本願に含まれてその一部を構成する添付の図面は、本発明の説明と併せて本発明の態様を説明するものであり、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の凝集体を製造するのに使用可能な1つのタイプの多段反応器の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つの態様は、カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体の製造方法に関する。カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体を製造することに加え、本発明の方法は、所望により、カーボンブラック及び/又はシリカを製造することもできる。
本発明の目的において、本発明の方法によって得られるカーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体は、ケイ素処理カーボンブラックと表示することができる。カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体において、ケイ素含有種相(限定されるものではないが、ケイ素の酸化物と炭化物を含む)は、凝集体の少なくとも一部に分布し、これは、カーボン相も含む凝集体の本質的部分である。言い換えると、ケイ素処理カーボンブラック又は凝集体は、別個なカーボンブラック凝集体と別個なシリカ凝集体の混合物ではない。むしろ、本発明のケイ素処理カーボンブラックは、ケイ素処理カーボンブラックの一部として、少なくとも1つのケイ素含有領域を含み、そのケイ素含有領域は、ケイ素処理カーボンブラックの表面及び/又は中に位置する。本発明の凝集体の一部であるケイ素含有種相は、シランカップリング剤のようにカーボンブラック凝集体に結合せず、事実上カーボン相と同じ凝集体の一部である。米国特許第08/446141号(1995年5月22日出願、現在特許)、同第08/446142号(1995年5月22日出願)、同第08/750016号(1996年11月22日出願、PCT公開公報WO/96/37547の国内段階)は、本願でも参考にして取り入れられている。
ケイ素処理カーボンブラックをSTEM−EDXで評価すると、ケイ素含有種に対応するケイ素のシグナルが個々のカーボンブラック凝集体の中に存在することが分かる。比較として、例えば、シリカとカーボンブラックの物理的混合物においては、STEM−EDX分析は、明確に異なるシリカとカーボンブラックの凝集体を示す。
好ましくは本発明の方法によって得られた凝集体は、本発明の凝集体がエラストマー組成物に混和されたとき、好ましくは、エラストマー組成物に改良された湿りスキッド抵抗及び/又はころがり抵抗特性をもたらす。
【0010】
本発明の方法に関し、本発明の凝集体又はケイ素処理カーボンブラックは、1種以上の気化可能及び/又は分解可能なケイ素含有化合物の存在下でカーボン相(即ち、炭素相)を製造又は生成させることによって得ることができる。図面に示したようなモジュール式又は「段階式」のファーネスカーボンブラック反応器が好適に使用される。このファーネス又はリアクターは、好ましくは、供給原料の、1を上回る段階又は注入箇所を有する。図面に示したように、反応器は、好ましくは、先細の直径のゾーン2を備えた燃焼ゾーン1、狭められた直径を有する供給原料注入ゾーン3、及び反応ゾーン4を有する。
上記の反応器によって本発明の凝集体又はケイ素処理カーボンブラックを製造するため、液体又は気体の燃料に適切な酸化剤流体の空気、酸素、又は空気と酸素の混合物を接触させることにより、燃焼ゾーン1の中に高温燃焼ガスを発生させる。高温燃焼ガスを発生させために燃焼ゾーン1で酸化剤の流れに接触させるのに適切な燃料には、任意の容易に燃焼する気体又は液体の流れが挙げられ、例えば、天然ガス、水素、メタン、アセチレン、アルコール、ケロシンである。ここで、一般に、炭素含有成分、とりわけ炭化水素の高含有率の燃料を使用することが好ましい。空気/燃料の比は、使用する燃料の種類によって異なる。本発明のカーボン相を製造するのに天然ガスが使用される場合、空気/燃料の比は約10:1〜約1000:1でよい。高温燃焼ガスの発生を促進するため、酸化剤の流れを予熱することができる。米国特許第3952087号と同3725103号は、本願でも参考にして取り入れられており、カーボンブラック生成用供給原料、反応器構成、及び条件を記載している。
【0011】
高温燃焼ガスの流れは、ゾーン1と2から下流にゾーン3と4に流れる。高温燃焼ガスの流れ方向は、図面に矢印で示されている。第1供給原料は、位置6で導入され、入口箇所9で供給原料注入ゾーン3に入る。この態様において、供給原料は、先に生じた燃焼ガスの流れの中に導入又は注入され、下流の方向に流れる。図面は、原料注入用の入口箇所9と10を示しているが、供給原料は、クエンチ位置の手前でケイ素処理カーボンブラックを生成させるのに十分な温度と滞留時間があれば、リアクターの任意の位置で導入することができる。供給原料は、好ましくは、ガスの流れの中のオイルの最適分布のために設計されたノズルを通してガスの流れの中に導入される。このノズルは、単一流体又は二流体のいずれでもよい。二流体ノズルは、スチーム又は空気を使用し、燃焼を噴霧することができる。単一流体ノズルは、圧力噴霧することができ、又は供給原料をガスの流れの中に直接注入することもできる。後者の場合、噴霧がガスの流れの力によって生じる。
【0012】
本発明のある態様において、第1供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、ケイ素含有化合物、又はこれらの混合物を含む。また、第1供給原料及び下記に説明する全ての供給原料は、通常のカーボンブラックを製造するのに一般に使用される付加的な材料又は組成物を含むことができる。また、1種以上の供給原料は、ホウ素含有化合物を含むことができる。
第1の供給原料が反応器の供給原料注入ゾーン3で導入される箇所の下流の位置で、例えば、箇所7を通して供給原料注入ゾーン3に第2の供給原料が導入される。第2の供給原料は、例えば入口箇所10で供給原料注入ゾーンに入ることができる。第2及び以降の供給原料は、好ましくは、その手前の供給原料が主として反応して凝集体を生成する実質的な反応ゾーンに添加される。第2供給原料は、カーボンブラック生成用原料、ケイ素含有化合物、又はこれらの混合物を含む。第1供給原料の場合のように、付加的な化合物又は材料を供給原料の一部として含めることができる。また、第1供給原料と第2供給原料は、供給原料について同じ又は異なることができる。
【0013】
2段リアクターが使用される場合、本発明のある態様の目的として、第1供給原料がカーボンブラック生成用供給原料を含むならば(ケイ素含化合物を含まない)、第2供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料とケイ素含有化合物の混合物、又はケイ素含有化合物のみである。言い換えると、一方又は双方の供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料を含み、少なくとも一方の供給原料は、さらにケイ素含有化合物を含むことができる。
また、第1と第2の供給原料用の第1及び/又は第2の注入箇所の下流に位置することができる付加的な注入箇所によって、付加的な供給原料を供給原料注入ゾーンに導入することもできる。必要により、反応器を変更し、付加的な注入箇所を受け入れるように供給原料注入ゾーンを長くすることができる。
カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体を製造するために2段階反応器が使用される本発明の目的において、少なくとも1種の供給原料がカーボンブラック生成用供給原料を含まなければならず、少なくとも1種の供給原料がケイ素含有供給原料を含まなければならない。即ち、1つの例に過ぎないが、第1供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料とケイ素含有化合物の混合物を含むことができ、一方、第2供給原料は、やはりカーボンブラック生成用供給原料とケイ素含有化合物を含むかケイ素含有化合物のみを含むことができる。第1及び第2供給原料は共に、カーボンブラック生成用供給原料を含むことができ、第2供給原料はさらにケイ素含有化合物を含むことができる。したがって、同じ又は別な供給原料の中にカーボンブラック生成用供給原料とケイ素含有化合物が存在する限り、供給原料の殆ど全ての組み合わせが、2段階プロセスで可能である。前述のように、2段階プロセスにおいて、第1の供給原料がカーボンブラック生成用供給原料を含むならば(ケイ素含化合物を含まない)、第2の供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料とケイ素含有化合物の混合物、又はケイ素含有化合物のみを含む。
【0014】
第1供給原料がカーボンブラック生成用供給原料を含んで、本方法に使用されるカーボンブラック生成用供給原料の全量の少なくとも約5重量%が第1供給原料に存在することが好ましい。より好ましくは、本方法で使用されるカーボンブラック生成用供給原料の全量の約10重量%〜約100重量%、さらに好ましくは約40重量%〜約100重量%が第1供給原料に存在することが好ましい。
本発明のもう1つの態様において、本発明の凝集体又はケイ素処理カーボンブラックは、多段反応器を用いて製造することができ、ここで、反応器は、供給原料を反応器に導入するための少なくとも3つの段階を有する。第2と第3の段階及び任意の付加的な段階は、第1段階の下流に位置する。前述のように、クエンチが生じる手前でケイ素処理カーボンブラックを生成させるのに十分な温度と滞留時間があれば、これらの段階は下流の任意の位置にあることができる。各段階に導入される供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、ケイ素含有化合物、又はこれらの混合物を含む。少なくとも1つの段階は、カーボンブラック生成用供給原料を含み、少なくとも1つの段階は(カーボンブラック生成用供給原料を含む同じ段階であることができる)、ケイ素含有化合物を含む。反応器は、ケイ素含有化合物を分解してカーボンブラック生成用供給原料を熱分解するのに十分な温度に維持される。
【0015】
再度図面に関し、供給原料と燃焼ガスの混合物は、ゾーン3と4を通って下流に流れる。反応器の反応ゾーンにおいて、カーボンブラック生成用供給原料を含む供給原料の一部は、熱分解してカーボンブラックになり、凝集体のカーボン相を生成する。ケイ素含有化合物を含む原料部分は、気化・熱分解を受け、好ましくは、反応ゾーンの他の種と反応してケイ素含有種相を生成する。反応器にカーボンブラック生成用供給原料とケイ素含有化合物が存在することは、カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体をもたらす。ケイ素含有種は、凝集体の本質的部分であり、カーボン相と同じ凝集体の一部である。ケイ素含有種の例はシリカである。また、気化可能な化合物の他に、分解可能化合物(気化可能である必要はない)を使用し、本発明の凝集体のケイ素含有種相を生成させることもできる。前述のように、カーボン相とケイ素処理種相を含む凝集体の生成の他に、カーボンブラック及び/又はシリカう付加的に生成させることもできる。
次いで、反応ゾーンの反応を、反応のクエンチゾーンで停止させる。クエンチ8は、原料注入箇所と反応ゾーンの下流に位置し、ここでは急冷用流体(一般に水)を、生成した凝集体又はケイ素処理カーボンブラックと、存在し得る何らかのカーボンブラック及び/又はシリカの流れの中にスプレーする。クエンチは、凝集体又は粒子を冷却し、ガスの流れの温度を下げ、反応速度を低下させるのに役立つ。Qは、反応開始ゾーン4からクエンチ8までの距離であり、クエンチの位置によって変えることができる。所望により、クエンチは段階式であることができ、反応器の複数の箇所で行うことができる。
凝集体又は粒子がクエンチされた後、冷却されたガスと凝集体は、下流の通常の冷却・分離手段の中を通り、それにより凝集体と随意の同時製造されたカーボンブラック及び/又はシリカが回収される。ガスの流れからの凝集体の分離は、集塵機、サイクロン分離機、バッグフィルター、又は当業者に公知のその他の手段によって容易に行われる。凝集体をガスの流れから分離した後、所望により、造粒工程に供される。
【0016】
有用な気化可能なケイ素含有化合物には、カーボンブラックの反応器温度で蒸発可能な任意の化合物が挙げられる。例としては、限定されるものではないが、シリケート、例えばテトラエトキシオルトシリケート(TEOS)やテトラメトキシオルトシリケート、シラン、例えばアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、及びアリールアルキルアルコキシシラン、例を挙げるとテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジエトキシプロピルエトキシシラン、ハロゲン化有機シラン、例えばテトラクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、ジメチルエチルクロロシラン、ジメチルエチルブロモシラン、シリコーンオイル、ポリシロキサン及び環状ポリシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMTS)、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及びシラザン、例えばヘキサメチルジシラザンが挙げられる。気化可能化合物の他に、分解可能なケイ素含有化合物(必ずしも気化可能である必要はない)もまた、ケイ素処理カーボンブラックを製造するのに使用可能である。ケイ素含有化合物は「Encyclopedia of Science and Engineering, Vol.15, 2nd Ed pp.204-308」と英国特許出願第2296915号に記載されており、本願では共に参考にして記載に含める。これらの化合物の有用性は、それらの気化能力及び/又は分解性で容易に判断される。低分子量のケイ素含有化合物が好ましい。気化可能化合物の流量は、ケイ素処理カーボンブラック中のケイ素の重量割合で決定することができる。
【0017】
一般に、ケイ素含有化合物がカーボンブラック生成用供給原料と実質的に同時に導入されるならば、ケイ素含有種相は凝集体の全体にわたって分布する。ケイ素含有化合物が、カーボンブラックの生成が開始したが反応流れがクエンチに供される前(即ち、カーボン相の生成の間)の反応ゾーンに導入されるならば、ケイ素含有種相は、主として凝集体の表面又はその付近に存在するが、依然としてカーボン相と同じ凝集体の一部である。
一般に、本発明の多相凝集体は、未凝縮形態(即ち、ルーズ(fluffy))又は凝縮形態で使用可能である。多相凝集体は、当該技術で公知の湿式又は乾式プロセスで凝縮させることができる。湿式凝縮プロセスの際、いろいろなタイプの造粒助剤(例えば、バインダーなど)を造粒水に添加することができ、例えば、本願でも参考にして記載に含めるWO96/29710を参照されたい。また、本願でも全てを参考にして記載に含める米国特許出願第08/850145号に記載のように、造粒の前又は後で凝集体にカップリング剤を結合させることもできる。
【0018】
本発明の凝集体は、下記の種々の特性の1つ以上によって特徴づけることができる。例えば、BET(N2 )表面積とt−面積の差によって評価される粗い表面を有することができ、これは好ましくは約2〜約100m2 /gの範囲である。100m2 /gを上回るt−面積を有する凝集体について、BET(N2 )表面積とt−面積の差は、好ましくは約10〜約50m2 /gである。HF処理凝集体の表面積は、BET(N2 )表面積とt−面積の差によって特徴づけられ、これは一般に約1〜約50m2 /g、より好ましくは約5〜約40m2 /gである。HF処理の後、凝集体は依然として粗い表面を有する。HF処理凝集体の表面粗さは、HF処理なしの元の凝集体サンプルのケイ素含有率(重量%)に対する、HF処理の前後の凝集体間のBET(N2 )表面積の差の比によって特徴づけられる。この比は、好ましくは約0.1〜約10であり、より好ましくは約0.5〜約5である。HF処理後のDCPによって測定される重量平均凝集体サイズは、未処理凝集体に比較して一般に約5%〜約40%低下する。シリカの有意な量が、HF処理の後に存在することができる。残存シリカの灰分は、HF処理サンプルの重量を基準に好ましくは約0.05〜約1%の範囲である。この凝集体中のシリカ灰分の量は、ケイ素含有化合物から生じるシリカ灰分であり、カーボンブラック生成用供給原料からのものではない。500℃の空気中での熱処理後に得られる凝集体中のシリカ灰分のBET表面積は、一般に約200m2 /g〜約1000m2 /gであり、好ましくは約200m2 /g〜約700m2 /gである。前述のように、種々の特性の組み合わせが可能であり、本凝集体は、任意の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は全部の特性を有することができる。また、これらの凝集体はいずれも、一般に、凝集体の重量を基準に約0.1〜約5重量%のあるレベルの硫黄及び/又は窒素を含むことができる。
【0019】
ケイ素処理カーボンブラック中のケイ素の重量割合は、好ましくは、凝集体の重量を基準に約0.1〜約25%、より好ましくは約0.5〜約10%、最も好ましくは約4%〜約10%又は約8%〜約15%である。経済的な見地から、適切な性能特性が得られるならば、凝集体の製造コストを抑える程度まで少ないケイ素を使用することが好ましい。カーボンブラック反応器にケイ素含有化合物を注入することは、生産品のストラクチャー(例えばCDBP)の増加をもたらすことが可能なことが見出されている。
ケイ素含有化合物等の供給原料中に希釈剤が存在することが好ましい。この希釈剤は、好ましくはケイ素含有化合物と共に反応器中に導入されるため、気化可能及び/又は分解可能であるべきである。希釈剤は、カーボンブラック生成用供給原料としても役立つことができる。例えば、希釈剤は、アルコール又はその混合物であり、カーボンブラック生成用供給原料と同時に希釈剤として機能することができる。希釈剤は、好ましくは、それが含まれる供給原料の質量流量を高めることができ、及び/又は希釈剤を含む供給原料の導入位置の付近の反応器温度を下げることができる。より低い温度は、シリカドメイン凝集体がより微細でより多数にすることを助長する。希釈剤は液体及び/又は気体であることができ、必須ではないが、ケイ素含有化合物と混和性であることが好ましい。希釈剤の例は、水や水を主成分とした溶液である。希釈剤は、任意の量で存在することができ、供給原料の質量流量を高める及び/又は供給原料の導入位置の付近の反応器温度を下げる量で存在することが好ましい。また、希釈剤は、ケイ素含有化合物を含まない供給原料に含めることができ、又は別な段階で導入することもできる。
【0020】
本発明の別な態様において、カーボン相と金属含有種相を含む凝集体は、多段反応器を用いて製造することができ、その反応器は、供給原料を反応器に導入するための少なくとも2つの段階を有する。第2の段階及び付加的な随意の段階は、第1の段階の下流に位置する。各段階に導入される供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料、金属含有化合物、又はこれらの混合物を含む。少なくとも1つの供給原料は、カーボンブラック生成用供給原料を含み、少なくとも1つの段階は(カーボンブラック生成用供給原料を有する同じ段階であることができる)、金属含有化合物を含む。また、供給原料の任意の1つは、ケイ素含有化合物及び/又はホウ素含有化合物を含む。反応器は、金属含有化合物を分解してカーボンブラック生成用供給原料を生成させる(即ち、カーボンブラック生成用供給原料の熱分解)のに十分な温度に維持される。何らかのケイ素含有化合物又はホウ素含有化合物が付加的に存在する場合、反応器は、ケイ素含有化合物又はホウ素含有化合物を分解させるのに十分な温度に維持されるべきである。この方法によって生成する凝集体は、金属処理カーボンブラック又は金属処理カーボンブラック凝集体と考えることができる。
【0021】
金属処理カーボンブラックは、凝集体の表面又はその付近に又は凝集体の中に濃縮した1つの金属含有領域を含む(依然として凝集体の一部を構成する)。このように、金属処理カーボンブラックは、2つの相を有し、その1つはカーボンで、他方は金属含有種である。凝集体に含められた金属含有種相は、シリカカップリング剤のようにカーボンブラック凝集体に結合するのではなく、又は既に生成した凝集体の上をコーティングするのではなく、事実上、カーボン相と同じ凝集体の一部である。また、供給原料の中に2種類以上の金属含有化合物を使用することも本発明の範囲内である。2種類以上の金属含有化合物が供給原料として使用される場合、カーボン相と2種類以上の異なる金属含有種相が生成する。また、ケイ素含有化合物が供給原料の1つに含められる場合、ケイ素含有種もまた、カーボン相と金属含有種相(複数でもよい)を含む同じ凝集体の一部をなす。また、ホウ素含有化合物が供給原料に含められて存在するならば、ホウ素含有種は、カーボン相と金属含有種相を含む同じ凝集体の一部をなす。したがって、本発明の目的において製造された金属処理カーボンブラックは、2つ以上の異なるタイプの金属含有種相及び/又は付加的な非金属種相を有することができる。カーボン相とケイ素含有種相を含む凝集体を製造するのに使用される方法は、カーボン相と金属含有種相を含む凝集体を製造する方法と実質的に同じである。
カーボン相と金属含有種相を含む凝集体を製造する他、カーボンブラック及び/又は金属酸化物が本発明の方法によって得られる。本方法の共生成物として1種類以上の金属酸化物及び/又はカーボンブラックの随意の生成が考えられ、これは、カーボン相と金属含有種相を含む凝集体と共存することができ、エラストマー組成物に混和されたときに付加的な効果を提供することができる。
【0022】
金属含有種には、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、及びモリブデンを含む化合物が挙げられる。好ましくは、金属含有種相は、アルミニウム又は亜鉛を含む種の相である。金属含有種相は、限定されるものではないが、金属酸化物を含む。
有用な気化可能化合物(即ち、金属含有化合物)には、カーボンブラック反応器の温度で蒸発する任意の化合物が挙げられる。例として、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、錫、アンチモン、クロム、ネオジム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、又はモリブデンを含む気化可能又は分解可能な化合物が挙げられる。特定の例として、限定されるものではないが、ブトキシド、例えばアルミニウムIII n-ブトキシドとアルミニウムIII s-ブトキシド、プロポキシド、例えばアルミニウムIII イソプロポキシドがある。適切な亜鉛含有化合物の例には、限定されるものではないが、亜鉛ナフテネートと亜鉛オクトアートが挙げられる。別な例として、限定されるものではないが、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド、カルシウムプロポキシド、チタンイソプロポキシド、コバルトナフテネート、スズジエチルオキシド、ネオジムオキサレートなどが挙げられる。気化可能化合物の流量は、処理カーボンブラック中の金属の重量割合を決める。金属処理カーボンブラック中の元素金属の重量割合は、一般に、凝集体の重量を基準に約0.1%〜25%であるが、凝集体の50重量%以下、50重量%以上、99重量%以下のように任意の所望のレベルに調節することができる。
気化可能化合物の他に、分解可能金属含有化合物(必ずしも気化可能である必要はない)もまた金属処理カーボンブラックを製造するために使用可能である。
【0023】
本発明の方法によって製造された凝集体は、エラストマー配合物の中に混和することができ、これは、エラストマー配合物の特性をさらに向上させるために1種類以上のカップリング剤をさらに配合することができる。
本願における用語「カップリング剤」は、カーボンブラックやシリカのようなフィラーをエラストマーに結合させることができる化合物をいう。シリカ又はカーボンブラックをエラストマーに結合させるのに有用なカップリング剤は、ケイ素処理カーボンブラックにも有用であると考えられる。有用なカップリング剤には、限定されるものではないが、シランカップリング剤、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(Si−69)、3-チオシアネートプロピルトリエトキシシラン(Si−264、ドイツのデグッサAGよりとして市販)、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(A189、コネクティカット州のダンバリーにあるユニオンカーバイド社より)、ジルコネートカップリング剤の例えばジルコニウムジネオアルカノラトジ(3-メルカプト)プスピオネート−O(NZ66A、ニュージャージー州のバイオネにあるケンリッチペトロケミカルズ社より)、チタネートカップリング剤、ニトロカップリング剤の例えばN,N'- ビス(2-メチル-2- ニトロプロピル)-1,6- ジアミノヘキサン(スミファイン1162、日本の住友化学社より)、ポリアルコキシシラン(例えば、ゼルマ、日本の横浜ゴム社より)、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。カップリング剤は、適切なキャリヤーとの混合物として提供されることができ、例えば、X50−Sは、デグッサAGから入手可能なSi−69とN330カーボンブラックの混合物である。
【0024】
本発明のエラストマー配合物に含められるケイ素処理カーボンブラックは、酸化されること及び/又はカップリング剤と結合されることができる。適切な酸化剤には、限定されるものではないが、硝酸やオゾンが挙げられる。酸化されたカーボンブラックに使用されるカップリング剤には、限定されるものではないが、上記の任意のカップリング剤が挙げられる。
また、本発明のケイ素処理カーボンブラックと金属処理カーボンブラックは、結合した有機基を有することができる。
凝集体に有機基を結合させる1つの方法は、ジアゾニウム塩を還元するために十分な外的印加電流が存在しない中で少なくとも1種のジアゾニウム塩と凝集体を反応させることを含む。即ち、ジアゾニウム塩と凝集体の反応は、ジアゾニウム塩を還元するのに十分な外的電子源なしに進行する。いろいろなジアゾニウム塩の混合物を本方法で使用することができる。本方法は、種々の反応条件と任意のタイプのプロトン性や非プロトン性又はスラリーなどの反応媒体の中で行うことができる。
【0025】
別な方法において、少なくとも1種のジアゾニウム塩が、プロトン性反応媒体の中で凝集体と反応する。本方法において、いろいろなジアゾニウム塩の混合物を使用することができる。また、本方法は、種々の反応条件下で行うことができる。
好ましくは、上記の両方の方法において、ジアゾニウム塩をその場で生成させる。所望により、いずれかの方法において、カーボンブラック生成物を当該技術で公知の手段により分離・乾燥させることができる。また、得られたカーボンブラック生成物は、公知技術によって不純物を除去するように処理することができる。本発明のいろいろな好ましい態様を下記に説明する。
これらの方法は、様々な条件下で行うことができ、一般に特定の条件に限定されない。反応条件は、特定のジアゾニウム塩が十分に安定でケイ素処理カーボンブラックとの反応を可能にするものでなければならない。即ち、本方法は、ジアゾニウム塩の寿命が短い反応条件下で行うことができる。ジアゾニウム塩とケイ素処理カーボンブラックとの反応は、例えば、広範囲なpHと温度で生じる。本方法は、酸性、中性、塩基性のpHで生じることができる。好ましくは、pHの範囲は約1〜9である。反応温度は、好ましくは0℃〜100℃であることができる。
【0026】
当該技術で公知のように、ジアゾニウム塩は、第1アミンと亜硝酸水溶液の反応によって生成させることができる。ジアゾニウム塩の概説とそれらの合成方法は、「Morrison and Boyd, Organic Chemistry, 5th Ed., pp.973-983 (Allyn and Bacon, Inc. 1987)」と「Advanced Organic Chemistry Reactions Mechanisms and Structures. 4th Ed., (Wiley, 1992)」に見られる。本発明では、ジアゾニウム塩は1つ以上のジアゾニウム基を有する有機化合物である。
ジアゾニウム塩は、ケイ素処理カーボンブラックとの反応に先立って調製することができ、より好ましくは、当該分野で公知の技術を用いてその場で生成させる。また、その場での生成は、アルキルジアゾニウム塩のような不安定なジアゾニウム塩の使用を可能にし、ジアゾニウム塩の不必要な取扱いや操作を回避する。特に好ましい方法において、亜硝酸とジアゾニウム塩をその場で生成させる。
ジアゾニウム塩は、当該分野で公知なように、第1アミン、亜硝酸塩、及び酸を反応させることによって生成させることができる。亜硝酸塩は、任意の金属亜硝酸塩でよく、好ましくは、亜硝酸リウチム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸亜鉛、又は任意の有機亜硝酸塩、例えばイソアミル亜硝酸塩、又は亜硝酸エチルが挙げられる。酸は、ジアゾニウム塩の生成に有効な任意の有機又は無機酸でよい。適切な酸には、亜硝酸、HNO3 、塩酸HCl、硫酸H2 SO4 が挙げられる。
また、ジアゾニウム塩は、第1アミンと二酸化窒素水溶液を反応させることによって生成させることができる。二酸化窒素水溶液NO2 /H2 Oは、ジアゾニウム塩を発生させるのに必要な亜硝酸を与える。
過剰なHClの存在下でのジアゾニウム塩の発生は、HClがステンレス鋼に腐食性であるため、別な条件よりも好ましくないことがある。NO2 /H2 Oを用いたジアゾニウム塩の生成は、ステンレス鋼その他の反応器で一般に使用される金属に対して腐食性が比較的少ないという付加的な利益がある。H2 SO4 /NaNO2 又はHNO3 /NaNO2 を用いた生成も割合に腐食性がない。
【0027】
一般に、第1アミン、亜硝酸塩、及び酸からジアゾニウム塩を生成することは、使用されるアミンの量を基準に2当量の酸を必要とする。その場のプロセスにおいて、ジアゾニウム塩は、1当量の酸を用いて発生させることができる。第1アミンが強酸基を含む場合、別な酸を添加することは必要ないことがある。第1アミンの酸基(複数でもよい)は、必要な当量の酸の一方又は両方を供給することができる。第1アミンが強酸基を含む場合、好ましくは、付加的な酸を添加しないか又は1当量の酸を、本発明のプロセスに添加し、ジアゾニウム塩をその場で生成させる。若干過剰の付加的な酸を使用することができる。こうした第1アミンの1つの例は、パラアミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)である。
一般に、ジアゾニウム塩は熱的に不安定である。それらは、一般に、0〜5℃のような低温の溶液中で調製され、塩を単離せずに使用される。あるジアゾニウム塩の溶液を加熱すると、窒素を遊離し、酸性媒体中で相当のアルコール又は塩基性媒体中で有機フリーラジカルを生成する。 ここで、ジアゾニウム塩は、ケイ素処理カーボンブラックとの反応を可能にするに十分な安定性があればよい。即ち、本方法は、ある種のジアゾニウム塩その他の不安定と考えられて分解に供されるものを用いて行うことができる。ある分解プロセスは、ケイ素処理カーボンブラックとジアゾニウム塩の反応で完了することができ、ケイ素処理カーボンブラックに結合した有機基の合計数を減らすことができる。また、反応は、多くのジアゾニウム塩が分解を受けることができる高温で行うことができる。また、高温は、反応媒体中のジアゾニウム塩の溶解性を好適に高め、プロセス間のその取扱性を改良することができる。ここで、高温は、別な分解プロセスによってジアゾニウム塩の一部の損失を招くことがある。
【0028】
反応媒体(例えば水)の中のケイ素処理カーボンブラックのサスペンションに薬剤を添加し、その場でジアゾニウム塩を生成させることができる。即ち、使用されるカーボンブラックサスペンションは、既に1種以上の薬剤を含んでジアゾニウム塩を発生させ、残りの薬剤を添加して行うこともできる。
ジアゾニウム塩を生成させる反応は、有機化合物に通常見られる様々な官能基に適合することができる。即ち、ケイ素処理カーボンブラックとの反応のためのジアゾニウム塩の有用性のみが本方法を制約する。
本方法は、ジアゾニウム塩とケイ素処理カーボンブラックの反応の進行を可能にする任意の反応媒体中で行うことができる。好ましくは、反応媒体は溶媒を主成分とした系である。溶媒は、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、又は溶媒混合物でよい。プロトン性溶媒は、酸素又は窒素に結合した水素を含む水やメタノールのような溶媒であり、水素結合を生成させるのに十分に酸性のものである。非プロトン性溶媒は、上記のような酸性水素を含まない溶媒である。非プロトン性溶媒には、例えば、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ベンゾニトリルのような溶媒が挙げられる。プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の説明は「Morrison Boyd, Organic Chemistry, 5th Ed., pp.228-231 (Allyn and Bacon, Inc. 1987)」に見られる。
【0029】
好ましくは、本方法はプロトン性反応媒体中で行う。ここでプロトン性媒体とは、プロトン性溶媒単独又は、少なくとも1種のプロトン性溶媒を含む溶媒の混合物である。好ましいプロトン性媒体は、限定をするわけではないが、水と他の溶媒を含有する水性媒体、アルコール、アルコールを含有する任意の媒体、又はそのような溶媒の混合物である。
ジアゾニウム塩とケイ素処理カーボンブラックとの反応は、任意のタイプのケイ素処理カーボンブラック、例えばペレット状又はペレット状のケイ素処理カーボンブラックで行うことができる。製造費用を減少させることを意図した1つの態様では、ケイ素処理カーボンブラックペレットの形成処理の間に反応を行う。例えば、本発明のケイ素処理カーボンブラック生成物は、ケイ素処理カーボンブラックにジアゾニウム塩の溶液又はスラリーを噴霧することによって乾燥ドラム内で調製することができる。あるいは、ケイ素処理カーボンブラック生成物は、溶媒系の存在下でケイ素処理カーボンブラックをペレット化して調製することができる。ここで溶媒は例えば、ジアゾニウム塩又はジアゾニウム塩をその場で発生させる薬剤を含有している水である。従ってもう1つの態様は、ペレット化装置にケイ素処理カーボンブラックとジアゾニウム塩の水性スラリー又は溶液を導入し、ジアゾニウム塩をケイ素処理カーボンブラックと反応させてケイ素処理カーボンブラックに有機基を結合させ、そして結合した有機基を持つ得られたケイ素処理カーボンブラックをペレット化すること、を含むペレット化されたケイ素処理カーボンブラックを製造する方法を提供する。ペレット化されたケイ素処理カーボンブラック生成物は、その後従来の技術を使用して乾燥することができる。
【0030】
一般に、この方法は無機副生成物、例えば塩を作る。最終用途によっては、以下に示すように、これらの副生成物は好ましくない。望ましくない無機副生成物又は塩なしでケイ素処理カーボンブラック生成物を作る可能な方法は以下のようなものである。
第1に、従来技術で知られる手段を使用して望ましくない無機副生成物を除去することによって使用の前にジアゾニウム塩を純化することができる。第2に、ジアゾ化剤は無機塩ではなく対応するアルコールをもたらすので、有機亜硝酸を使用してジアゾニウム塩をもたらすことができる。第3に、水性NO2 と酸基を有するアミンからジアゾニウム塩を発生させると、無機塩は形成されない。他の方法も当業者に知られている。
無機副生成物に加えて、この方法は有機副生成物をもたらすこともある。それらは、例えば有機溶媒での抽出によって除去することができる。望ましくない有機副生成物なしで生成物を得る他の方法も当業者に知られており、これらは洗浄又は逆浸透によるイオンの除去を含む。
ジアゾニウム塩とケイ素処理カーボンブラックとの反応は、ケイ素処理カーボンブラックに結合した有機基を有するケイ素処理カーボンブラック生成物を形成する。当業者に知られる他の方法によって、本発明のケイ素処理カーボンブラック生成物を製造することも可能である。
有機基は脂肪族基、環状有機基、又は脂肪族部分及び環状部分を有する有機化合物でよい。上述のように、本発明で使用するジアゾニウム塩は、これらの基の1つを持ち且つ一時的にしてもジアゾニウム塩を形成することができ第1アミンから導くことができる。有機基は置換されている又は置換されていない、枝分かれした又は枝分かれしていないものでよい。脂肪族基は例えば、アルカン、アルケン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、及び炭水化物から導かれた基でよい。環状有機基は、限定をするわけではないが、脂環式炭化水素基(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)、ヘテロ環式炭化水素基(例えば、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、モルホリニル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル等)、及びヘテロアリール基(イミダゾール、ピラゾリル、ピリジニル、チエニル、チアゾニル、フリル、インドリル等)を含む。置換基の立体障害が大きくなると、ジアゾニウム塩とケイ素処理カーボンブラックの反応によってケイ素処理カーボンブラックに結合する有機基の数が減少することがある。
【0031】
有機基を置換するとき、その有機基に、ジアゾニウム塩を生成するのに適合した官能基を含有させることができる。好ましい官能基としては、限定されないが、R;OR;COR;COOR;OCOR;COOLi,COONa,COOK,COO -NR4 + などのカルボン酸塩:ハロゲン;CN;NR2 ;SO3 H;SO3 Li,SO3 Na, SO3 K, SO3 - NR4 + などのスルホン酸塩;OSO3 H;OSO3 - 塩;NR(COR);CONR2 ;NO2 ;PO32 ;PO3 HNaおよびPO3 Na2 などのリン酸塩;OPO3 HNaおよびOPO3 Na2 などのリン酸塩;N=NR; NR3 +-;PR3 +-;Sk R;SSO3 H;SSO3 - 塩;SO2 NRR′,SO2 SR;SNRR′;SNQ;SO2 NQ;CO2 NQ;S−(1,4−ピペラジンジイル)−SR;2−(1,3−ジチアニル)2−(1,3−ジチオラニル);SOR;およびSO2 Rがある。RとR′は、同じでも異なっていてもよく、独立に、水素;分枝もしくは非分枝のC1 〜C20置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の炭化水素、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル;置換もしくは非置換のアリール;置換もしくは非置換のヘテロアリール;置換もしくは非置換のアルキルアリール;または置換もしくは非置換のアリールアルキルである。整数kは1〜8の範囲内の整数であり好ましくは2〜4である。アニオンX- はハロゲン化物イオンまたは無機酸もしくは有機酸由来のアニオンである。Qは、(CH2w ,(CH2x O(CH22, (CH2x NR(CH22 、または(CH2x S(CH22 であり、式中、wは2〜6の整数であり、xとzは1〜6の整数である。
好ましい有機基は、式:A yArNH2 で表される第一級アミンに対応する、式:A yAY−で表される芳香族基である。この式における可変部分は以下の意味をもっている。Ar はアリール基またはヘテロアリール基などの芳香族基である。好ましくは、Ar は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ビフェニル、ピリジニル、ベンゾチアジアゾリルおよびベンゾチアゾリルからなる群から選択され;Aは、上記芳香族基の置換基であって上記の好ましい官能基から独立して選択されるか、またはAは直鎖、分枝鎖または環式の炭化水素基(好ましくは1〜20個の炭素原子を含有している)であって一つ以上の上記官能基で置換されていないかもしくは置換されている基であり;そして、yは1から前記芳香族基中の−CH基の合計数の整数である。例えば、yは、Ar がフェニルの場合、1〜5の整数であり、Ar がナフチルの場合1〜7であり、Ar がアントラセニル、フェナントレニルもしくはビフェニルの場合、1〜9であり、またはAr がピリジニルの場合、1〜4である。上記式におけるRとR′の具体例は、NH2 −C64 −, CH2 CH2 −C64 −NH2 ,CH2 −C64 −NH2 およびC65 である。
【0032】
ケイ素処理カーボンブラックに結合できる他の好ましい一組の有機基は、官能基としてのイオン基またはイオン化可能な基で置換された有機基である。イオン化可能な基は、使用される媒体中でイオン基を生成できる基である。そのイオン基は、アニオン基またはカチオン基であり、イオン化可能な基はアニオンまたはカチオンを生成する。
アニオンを生成するイオン化可能な官能基としては、例えば、酸性基または酸性基の塩がある。したがって、有機基としては有機酸から誘導される基がある。好ましくは、有機基がアニオンを生成するイオン化可能な基を含有している場合、かような有機基は、a)芳香族基およびb)pKaが11未満の少なくとも一つの酸性基またはpKaが11未満の少なくとも一つの酸性基の塩またはpKaが11未満の少なくとも一つの酸性基とpKaが11未満の少なくとも一つの酸性基の塩の混合物を有している。酸性基のpKaとは、有機基の酸性置換基だけでなく有機基全体としてのpKaを意味する。そのpKaは、より好ましくは10未満であり、最も好ましくは9未満である。有機基の芳香族基は、好ましくはケイ素処理カーボンブラックに直接結合される。その芳香族基は、例えば、さらにアルキル基で置換されてもよくまたは置換されなくてもよい。より好ましくは、有機基はフェニル基またはナフチル基であり、そして酸性基はスルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基またはカルボン酸基である。これら酸性基およびその塩の例については先に論じた。最も好ましくは、有機基は、置換もしくは非置換のスルホフェニル基もしくはその塩;置換もしくは非置換の(ポリスルホ)フェニル基もしくはその塩;置換もしくは非置換のスルホナフチル基もしくはその塩;または置換もしくは非置換の(ポリスルホ)ナフチル基もしくはその塩である。好ましい置換スルホフェニル基はヒドロキシスルホフェニル基またはその塩である。
アニオン(およびその対応する第一級アミン)を生成するイオン化可能な官能基を有する具体的な有機基は、p−スルホフェニル(p−スルファニル酸)、4−ヒドロキシ−3−スルホフェニル(2−ヒドロキシ−5−アミノ−ベンゼンスルホン酸)および2−スルホエチル(2−アミノエタンスルホン酸)である。アニオンを形成するイオン化可能な官能基を有する他の有機基も使用できる。
【0033】
アミンは、カチオン基を生成するイオン化可能な官能基の代表的な例である。例えば、アミンはプロトン化されて、酸性媒体中でアンモニウム基を生成する。アミン置換基を有する有機基は、好ましくは、pKbが5未満である。第四級アンモニウム基(−NR3 + ) および第四級ホスホニウム基(−PR3 + ) も、カチオン基の代表例である。有機基は、好ましくは、フェニル基もしくはナフチル基などの芳香族基、および第四級アンモニウム基もしくは第四級ホスホニウム基を含有している。その芳香族基は好ましくはカーボンブラックに直接結合される。四級化環式アミンおよび四級化芳香族アミンでさえも有機基として使用できる。したがって、N−置換ピリジニウム化合物、例えばN−メチル−ピリジルはこれに関連して使用できる。有機基の例としては、限定されないが、(C54 N) C25 + , C64 (NC55+ , C64 COCH2 N(CH33 + , C64 COCH2 (NC55+ , (C54 N) CH3 + およびC64 CH2 N(CH33 + がある。
イオン基またはイオン化可能な基で置換された有機基が結合したケイ素処理カーボンブラック製品の利点は、そのケイ素処理がカーボンブラック製品が、対応する未処理のカーボンブラックに比べて水分散度が増大しているということである。ケイ素処理カーボンブラック製品の水分散度は、ケイ素処理カーボンブラックに結合した、イオン化可能な基を有する有機基の数、および与えられた有機基に結合したイオン化可能な基の数とともに増大する。したがってケイ素処理カーボンブラック製品と結合しているイオン化可能の基の数が増大するとその製品の水分散度が増大するはずなので、水分散度を所望のレベルに制御することができる。ケイ素処理カーボンブラックに結合した有機基としてアミンを含有するケイ素処理カーボンブラック製品の水分散度は、水性媒体を酸性にすることによって増大させることができることに注目すべきである。
【0034】
ケイ素処理カーボンブラック製品の水分散度は、ある程度、電荷の安定化によって決まる。したがって、水性媒体のイオン強度は0.1モル未満が好ましい。より好ましくは、イオン強度は0.01モル未満である。
このような水分散性のケイ素処理カーボンブラック製品を製造するとき、イオン基またはイオン化可能な基は反応媒体中でイオン化させることが好ましい。得られる製品の溶液またはスラリーは、そのまままたは使用する前に希釈して使用してもよい。あるいは、ケイ素処理カーボンブラック製品は、従来のカーボンブラックに使用される方法で乾燥できる。これらの方法としては、限定されないが、炉およびロータリーキルンで乾燥する方法がある。しかし、乾燥しすぎると、水分散度の損失を起こすことがある。
イオン基またはイオン化可能な基で置換された有機基を有するケイ素処理カーボンブラック製品は、その水分散度に加えて、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびホルムアミドなどの極性有機溶媒にも分散可能である。メタノールまたはエタノールなどのアルコール中で、クラウンエーテルなどの錯化剤を使用すると、酸性基の金属塩を含有する有機基を有するケイ素処理カーボンブラック製品の分散度が増大する。
芳香族硫化物基は、他のグループの好ましい有機基を構成している。芳香族硫化物基を有するケイ素処理カーボンブラック製品は、ゴム組成物に特に有用である。これらの芳香族硫化物基は、式:Ar (CH2qk (CH2r Ar′またはAr (CH2qk (CH2r Ar″で表される。なおこれら式中、ArとAr′は独立して、置換または非置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、Ar″はアリール基またはヘテロアリール基であり、kは1〜8であり、そしてqとrは0〜4である。置換アリール基としては置換アルキルアリール基がある。好ましいアリーレン基としてはフェニレン基があり、特にp−フェニレン基またはベンゾチアゾリレン基がある。好ましいアリール基としては、フェニル、ナフチルおよびベンゾチアゾリルがある。kによって定義される、存在する硫黄の数は、好ましくは2〜4の範囲内である。好ましいケイ素処理カーボンブラック製品は、式:−(C64 )−Sk −(C64 )−で表される芳香族硫化物有機基が結合した製品である。なおこの式中、kは1〜8の整数であり、より好ましくはkは2〜4の範囲内である。特に好ましい芳香族硫化物基は、ビス−パラ−(C64 )−S2 −(C64 )−とパラ−(C64 )−S2 −(C65 )である。これら芳香族硫化物基のジアゾニウム塩は、それらの対応する第一級アミンのH2 N−Ar−Sk −Ar′−NH2 またはH2 N−Ar−Sk −Ar″から好都合に製造される。好ましい基は、ジチオジ−4,1−フェニレン、テトラチオジ−4,1−フェニレン、フェニルジチオフェニレン、ジチオジ−4,1−(3−クロロフェニレン)、−(4−C64 )−S−S−(2−C74 NS),−(4−C64 )−S−S−(4−C64 )−OH,−6−(2−C73 NS)−SH,−(4−C64 )−CH2 CH2 −S−S−CH2 CH2 −(4−C64 )−,−(4−C64 )−CH2 CH2 −S−S−S−CH2 CH2 −(4−C64 )−,−(2−C64 )−S−S−(2−C64 )−,−(3−C64 )−S−S−(3−C64 )−,−6−(C632 S),−6−(2−C73 NS)−S−NRR′、ここで式中、RR′は−CH2 CH2 OCH2 CH2 −であり、−(4−C64 )−S−S−S−S−(4−C64 )−,−(4−C64 )−CH=CH2 ,−(4−C64 )−S−SO3 H,−(4−C64 )−SO2 NH−(4−C64 )−S−S−(4−C64 )−NHSO2 −(4−C64 )−,−6−(2−C73 NS)−S−S−2−(6−C73 NS)−,−(4−C64 )−S−CH2 −(4−C64 )−,−(4−C64 )−SO2 −S−(4−C64 )−,−(4−C64 )−CH2 −S−CH2 −(4−C64 )−,−(3−C64 )−CH2 −S−CH2 −(3−C64 )−,−(4−C64 )−CH2 −S−S−CH2 −(4−C64 )−,−(3−C64 )−CH2 −S−S−CH2 −(3−C64 )−,−(4−C64 )−,S−NRR′ここで式中、RR′は−CH2 CH2 OCH2 CH2 −であり、−(4−C64 )−SO2 NH−CH2 CH2 −S−S−CH2 CH2 −NHSO2 −(4−C64 )−,−(4−C64 )−2−(1,3−ジチアニル)、および−(4−C64 )−S−(−1,4−ピペリジンジイル)−S−(4−C64 )−を含む。
該カーボンブラックに結合できる他の好ましい一組の有機基は、(C64 )−NH2 ,(C64 )−CH2 −(C64 )−NH2 ,(C64 )−SO2 −(C64 )−NH2 などのアミノフェニル基を有する有機基である。好ましい有機基としては、式:Ar−Sn−Ar′またはAr−Sn−Ar″で表される芳香族硫化物基もある。なお式中、ArとAr′は独立にアリーレン基であり、Ar″はアリールであり、そしてnは1〜8である。このような有機基をカーボンブラックに結合させる方法は、米国特許第5,554,739号と同第5,559,169号;米国特許願第08/356,660号と同第08/572,525号;およびPCT特許願公開第WO96/18688号と同第WO96/18696号で考察されている。なおこれら文献の開示事項はすべて、本明細書に援用するものである。
【0035】
先に述べたように、ケイ素処理カーボンブラックまたは金属処理カーボンブラックは、改質して、ケイ素処理カーボンブラックに少なくとも一つの有機基を結合させることができる。あるいはケイ素処理カーボンブラックおよび/または金属処理カーボンブラックと、有機基が少なくとも一つ結合した改質カーボンブラックとの混合物を使用してもよい。 さらに、シリカと、ケイ素処理カーボンブラックおよび/または金属処理カーボンブラックとの混合物を使用することも、本出願の範囲内にある。また、追加の成分と、ケイ素処理カーボンブラックまたは金属処理カーボンブラックとの組合せとして、例えば以下のものの一つ以上を利用できる。
a)シランカップリング剤で任意に処理された有機基を結合されたケイ素処理カーボンブラック;
b)有機基を結合された改質カーボンブラック;
c)シリカで少なくとも一部がコートされたカーボンブラック;
d)シリカ;
e)改質シリカ、例えば、カップリング基を結合されたシリカ;
および/または
f)カーボンブラック。
用語“シリカ”には、限定されないが、シリカ、沈降シリカ、アモルファスシリカ、石英ガラス、ヒュームドシリカ、融解シリカ、シリケート類(例えばアルミノシリケート類)、およびクレイ、タルク、ケイ灰石などの充填剤を含有する他のSiがある。シリカ類は、次のような供給者から市販されている。すなわちCabot Corporation から登録商標Cab−O−Silで、PPG Industriesから商品名Hi−SilとCeptaneで、Rhone-Poulexc から商品名Zeosilで、ならびにDegussa AGから商品名UltrasilおよびCoupsilで市販されている。
【0036】
本発明のエラストマー配合物は、カーボンブラックを配合するのに有用なエラストマーを含むエラストマーを配合することによって、ケイ素処理カーボンブラックおよび/または金属処理カーボンブラックから製造することができる。
適切なエラストマーは、ケイ素処理カーボンブラックおよび/または金属処理カーボンブラックに配合して、本発明のエラストマー配合物を提供することができる。かようなエラストマーとしては、限定されないが、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレンおよびプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーがある。そのエラストマーは好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が約−120℃〜約0℃の範囲内にある。その例としては、限定されないがスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびこれらの油展誘導体がある。上記のもののいずれかの混合物も使用できる。
本発明に使用するのに適切なゴムとしては天然ゴムと、塩化ゴムなどの天然ゴムの誘導体がある。また、本発明のケイ素処理カーボンブラック製品または金属処理カーボンブラック製品は、次のような合成ゴムとともに使用できる。その合成ゴムとしては:約10〜約70重量%のスチレンと約90〜約30重量%のブタジエンの共重合体、例えば19量部のスチレンと81量部のブタジエンの共重合体、30量部のスチレンと70量部のブタジエンの共重合体、43量部のスチレンと57量部のフタジエンとの共重合体、および50量部のスチレンと50量部のブタジエンの共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどの共役ジエン類などの重合体および共重合体;ならびにかような共役ジエン類と、これらジエン類と共重合可能なエチレン基含有単量体例えばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2−ビニル−ピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アルキル置換アクリレート類、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ナチルビニルエーテル、αメチレンカルボン酸類およびそのエステルとアミド例えばアクリル酸とジアルキルアクリル酸アミドとの共重合体があり、また、エチレンと、他の高級αオレフィン例えばプロピレン、ブタジエン−1およびペンテン−1などの共重合体も本発明に使用するのに適している。
それ故、本発明のゴム組成物は、エラストマー、硬化剤、補強充填剤、カップリング剤ならびに任意に各種の加工助剤、油展剤および劣化防止剤を含有していてもよい。上記の例に加えて、エラストマーは、限定されないが、1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどで製造される重合体(例えば単一重合体、共重合体およびターポリマー)でもよい。これらのエラストマーは、DSCで測定したガラス転移点(Tg)が−120℃〜0℃であることが好ましい。このようなエラストマーの例としては、ポリ(ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)およびポリ(イソプレン)がある。
本発明に開示されているエラストマー組成物としては、限定されないが、加硫組成物(VR)、熱可塑性加硫物(TPV)熱可塑性エラストマー(TPE)および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)がある。TPV,TPEおよびTPOの物質は、性能の特性の損失なしで、数回押出し成形されるそれら物質の性能によってさらに分類されている。
【0037】
上記エラストマー組成物は、一種以上の硬化剤、例えば硫黄、硫黄供与剤、活性化剤、加硫促進剤、過酸化物、およびエラストマー組成物の加硫を行うのに用いられる他の系を含有していてもよい。
本発明の凝集体を含有しかつ一種以上のカップリング剤を任意に含有する、得られたエラストマー配合物は、例えば、トレッド配合物、アンダートレッド配合物、サイドウォール配合物、ワイヤスキム配合物(wire skim compound)、インナーライナー配合物、ビード、エペックス、カーカスに使用される配合物および専用タイヤの他の部品、産業用ゴム製品、シール、タイミングベルト、動力伝達ベルト、ならびに他のゴム製品などの各種エラストマー製品に使用できる。
本発明のエラストマー組成物は、本発明の凝集体を含有していない同じエラストマー組成物と比べて、特にタイヤ配合物用に、ころがり抵抗および/またはウェットトラクションを改良されたものが好ましい。両特性の増強は、カーボンブラックを含有しているが本発明の凝集体を含有していない同じエラストマー組成物と比べて、好ましくは少なくとも3%であり、より好ましくは少なくとも8%、そしてさらに好ましくは約3%〜約20%である。
本発明を以下の実施例によってさらに明確にするが、これら実施例は、本発明を単に例示することを目的としている。
【実施例】
【0038】
実施例1
本発明のケイ素処理カーボンブラックを、さきに一般的に説明して図面に示したパイロットスケールの反応器を使用して製造した。なおその反応器の寸法は次のとおりである。すなわちD1 =7.25インチ、D2 =4.5インチ、D3 =5.3インチ、D4 =13.5インチ、L1 =24インチ、L2 =12インチ、L2 ′=45インチ(例えばOMTS−CB−A′)およびL2 ′=25インチ(例えば、OMTS−CB−B′,C′,D′、およびE′)、ならびにQ=8.583フィート(例えばOMTS−CB−A′、B′およびC′)、Q=6.5フィート(例えばOMTS−CB−D′およびE′)。以下の表1に記載の反応条件を採用した。
図に示すように、第一の供給原料をポイント6で導入しかつ第二の供給原料をポイント7で導入した。第一の供給原料は炭化水素(すなわちカーボンブラック用供給原料)を含有し、そして第二の供給原料は炭化水素、およびOMTS(すなわちケイ素含有化合物)具体名を述べるとオクタメチル−シクロテトラシロキサンを含有していた。この化合物は、米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Corning Corporation が“D4”として販売している。得られたケイ素処理カーボンブラックは、本明細書ではOMTS−CBとして識別する。
【0039】
反応器の温度を変えると、カーボンブラックの表面積が変化することが知られており、そして反応器の温度は、注入領域(図中の領域3)における供給原料の全流量に対して非常に敏感であるから、供給原料の流量は、気化可能なケイ素含有化合物の導入をほぼ補償するため、下方に調節した。その結果、得られたケイ素処理カーボンブラックの外部表面積(t面積で測定した)がほぼ一定になる。N234カーボンブラックを製造するのに必要な他のすべての条件を維持した。構造制御添加剤(酢酸カリウム溶液)を、供給原料に注入して、N234カーボンブラックの規格構造を維持した。この添加剤の流量は、下記諸実施例全体で述べられているケイ素処理カーボンブラックを製造する際、一定に維持した。
BET(N2 )表面積は、ASTM D4820法Bに記載の手順にしたがって測定した。
外部表面積(t−面積)は ASTM D5816に記載の試料の調製および測定の手順にしたがって測定した。この測定を行う場合、窒素吸着等温式を、0.55相対圧まで延長した。
相対圧は、飽和圧(P0 )(窒素が凝縮する圧力)で割り算した圧力(P)である。次に吸着層の厚み(t1 )を下記関係式を用いて算出した。
【0040】
1 =13.99/(0.034−log(P/P0))1/2
次に吸着した窒素の容積(V)をt1 に対してプロットした。3.9〜6.2オングストロームのt1 値のデータプロットを通じて直線を当てはめた。この直線の勾配から次のようにしてt−面積を得た。
t−面積(m2 /g)=15.47×勾配
試料のHF(フッ化水素酸)処理を、5%v/v濃度のHFを、沸点温度で使って、1時間実施した。この処理を行った後、試料を、フィルター上で、水を用いて20回洗浄し、次に、洗浄済の凝集体を乾燥して、その後の分析に供した。
その凝集体の灰分は、ASTM D1506法Aに記載の手順に従って測定した。
充填材のアグリゲートの大きさは、L. E. Oppenheimer, J. Colloid and Interface Science, 92 巻350 頁1983年に記載の方法にしたがってDCPで測定した。なおこの文献は本明細書に援用するものである。
【0041】
【表1】

【0042】
ケイ素処理カーボンブラックの分析特性を表2に示す。これらのケイ素処理カーボンブラックを使ってゴム配合物を製造するのに利用した各種配合と混合手順は表3と表4に示してある。ケイ素処理カーボンブラックの性能は表5に示す。上記方法を用いて製造した本発明の凝集体は、British Portable Skid Testerで測定した湿りスキッド抵抗が(従来のカーボンブラックと比較して)6〜10%改良されていることが分かる。
湿りスキッド抵抗(すなわち湿りトラクション)は、Quyangらが報告した手順を用い、改良British Portable Skid Tester (BPST)で測定した(1993年5月18〜21日に米国コロラド州デンバーで開催されたACSのRubber Division会議で提出されたG. B. Quyang, N. Tokita およびC. H. Shieh の「Carbon Black Effects on Friction Properties of Tread Compound Using a modified ASTM-E303 Pendulum Skid Tester 」)。摩擦係数は、カーボンブラックN234を充填した配合物(100%)を標準にした。この数値が高ければ高いほど、湿りスキッド抵抗は高くなる(良好になる)。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
Duradene 715−米国オハイオ州アクロン所在のFirestone Synthetic Rubber & Latex Co.から入手できる溶液SBR 。
Tacktene 1203 −米国オハイオ州アクロン所在のBayer Fibresから入手できるポリブタジエン。
Si69−ドイツ所在のDegussa から入手できるビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド。
Sundex 8125 −米国ニュージャージー州トレントン所在のR. E. Carrol Inc. から入手できるオイル。
酸化亜鉛−米国ニュージャージー州所在のNew Jersey Zinc Co. から入手できる。
ステアリン酸−米国オハイオ州シンシナティー所在のEmery Chemicals から入手できる。
Flexzone 7P −米国コネティカット州ミドルバリー所在のUniroyal Chemical Co. から入手できる酸化防止剤のN−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン。
Sunproof Improved −米国コネティカット州ミドルバリー所在のUniroyal Chemical Co. から入手できるワックス。
Durax −米国コネティカット州ノーウォーク所在のR. T. Vanderbilt Co.から入手できる促進剤のN−シクロヘキサン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド。
Vanax DPG −米国コネティカット州ノーウォーク所在のR. T. Vanderbilt Co.から入手できる促進剤のジフェニルグアニジン。
TMTD−米国コネティカット州ミドルバリー所在のUniroyal Chemical Co. から入手できる促進剤のテトラメチルチウラムジスルフィド。
硫黄−米国ニュージャージー州トレントン所在のR. E. Carrol Inc. から入手できる。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
実施例2
先に一般的に説明し図に示した以下の寸法のパイロットスケールの反応器を使用して、本発明の凝集体を製造した。D1 =7.25インチ、D2 =4.5インチ、D3 =5.3インチ、D4 =13.5インチ、L1 =24インチ、L2 =12インチ、L2 ′=29インチ、Q=6.5フィート。下記表1に記載の反応条件を採用した。
図に示すように、第一供給原料を、ポイント6で導入し、そして第二供給原料をポイント7で導入した。第一供給原料は炭化水素(すなわちt−ボンブラック用供給原料)を含有し、そして第二供給原料はアルコールすなわちイソプロパノールおよびOMTS(つまりケイ素含有化合物)すなわちオクタメチル−シクロテトラシロキサンまたはオクタメチル−シクロテトラシロキサン単独を含有していた。この化合物は、「D4」として、米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Corning Corporation が販売している。得られた多相
凝集体はこの実施例ではMPCS1〜4として挙げる。
反応器の温度が変化すると、カーボンブラックの表面積が変わることが知られており、そして反応器の温度は、注入領域(図中の領域3)における供給原料の全流量に対し非常に鋭敏なので、供給原料の流量を調節して、揮発可能なケイ素含有化合物の導入をほぼ補償した。その結果、得られたケイ素処理カーボンブラックの外部表面積(t−面積によって測定した場合)がほぼ一定になる。N234カーボンブラックを製造するのに必要な他のすべての条件を維持した。構造制御添加剤(酢酸カリウム溶液)を供給原料に注入して、N234カーボンブラックの規格構造を維持した。この添加剤の流量は、以下の諸実施例を通じて説明される多相凝集体を製造する際、一定に維持した。
【0049】
【表6】

【0050】
ケイ素処理カーボンブラックの分析特性を表7に示す。これらのケイ素処理カーボンブラックを使用してゴム配合物を製造するのに使用した各種の配合と混合手順を表8と9に示す。ケイ素処理カーボンブラックの性能を表10に示す。上記方法で製造した本発明のアグリゲートは、British Portable Skid Testerで測定した湿りスキッド抵抗が(従来のカーボンブラックに比べて)6〜10%改善されていることが分かる。
【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
【表9】

【0054】
【表10】

【0055】
【表11】

【0056】
上記表から分かるように、本発明の試料は、単一段階の添加を行って製造された多相アグリゲードを含有するエラストマー組成物を超えて改良されたスキッド抵抗などのより優れた特性を有している。
本発明の他の実施態様は、本明細書を検討し、かつ本明細書に開示されている発明を実施することによって、当業技術者には明らかになるであろう。本明細書と実施例は単なる例示とみなし、本発明の真の範囲と精神は以下の特許請求の範囲に示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック相とケイ素含有種相とを有する凝集体を作る方法であって、
(a)多段反応器の第1段階に第1の供給原料を導入し、
(b)前記第1の段階よりも下流の箇所で前記多段階反応器に少なくとも1つの2次供給原料を導入し、
ここで、前記諸供給原料の少なくとも1つが、分解可能な又は気化可能なケイ素含有化合物及びカーボンブラック用供給原料の混合物を含み、
(c)前記ケイ素含有化合物を分解し且つ前記カーボンブラック用供給原料を熱分解して、前記凝集体を作るのに十分な温度で、前記反応器を操作し、そして
(d)前記凝集体を回収する、
工程を含む方法。
【請求項2】
前記多段反応器が、第1の段階と第2の段階を有する2段階の反応器であり、更に、前記2次供給原料を前記第2の段階に導入する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の供給原料がカーボンブラック用供給原料を含み、且つ前記2次供給原料のうちの1つがカーボンブラック用供給原料とケイ素含有化合物とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の供給原料がカーボンブラック用供給原料を含み、且つ前記第2の供給原料がカーボンブラック用供給原料とケイ素含有化合物との混合物を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの供給原料が、希釈剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記希釈剤が、ケイ素含有化合物を含む供給原料中に存在する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物中の前記カーボンブラック用供給原料がアルコールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記供給原料の導入箇所付近において反応器の温度を低下させる又は供給原料の質量流量を増加させるのに十分な量で、前記希釈剤が存在する請求項5に記載の方法。
【請求項9】
カーボンブラックと比較したときに、前記凝集体が比較的劣った耐摩耗性、低温でのほぼ近い又は比較的大きい損失正接、及び高温での比較的小さい損失正接を、エラストマーに与える請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の供給原料が本質的にカーボンブラック用供給原料からなり、前記第2の供給原料が本質的にカーボンブラック用供給原料とケイ素含有化合物との混合物からなる請求項2に記載の方法。
【請求項11】
使用するカーボンブラック用供給原料の合計量の約10重量%〜約100重量%が、前記第1の供給原料中に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
使用するカーボンブラック用供給原料の合計量の約40重量%〜約100重量%が、前記第1の供給原料中に存在する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の供給原料がカーボンブラック用供給原料を含み、前記第2の供給原料がカーボンブラック用供給原料、ケイ素含有化合物及び希釈剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
カーボン相とケイ素含有種相とを含む凝集体の製造方法であって、
第1の供給原料を、供給原料を導入するための少なくとも3つの段階を有する多段反応器の第1の段階に導入し、そして前記第1の段階の下流の箇所で、少なくとも第2と第3の供給原料を前記反応器に導入する、
工程を含み、
ここで、前記諸供給原料の少なくとも1つが、カーボンブラック用供給原料と分解可能な又は気化可能なケイ素含有化合物の混合物を含み、また
前記反応器の温度が、前記ケイ素含有化合物を分解し且つ前記カーボンブラック用供給原料からカーボンブラックを作るのに十分な温度である方法。
【請求項15】
それぞれの供給原料が、カーボンブラック用供給原料を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
それぞれの供給原料が、カーボンブラック用供給原料とケイ素含有化合物との混合物を含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の供給原料が、本質的にケイ素含有化合物からなる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第2及び第3の供給原料が、ケイ素含有化合物とカーボンブラック用供給原料との混合物を含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物中のカーボンブラック用供給原料が、アルコールを含む請求項14に記載の方法。
【請求項20】
使用するカーボンブラック用供給原料の合計量の約10重量%〜約100重量%が、前記第1の供給原料中に存在している請求項14に記載の方法。
【請求項21】
使用するカーボンブラック用供給原料の合計量の約40重量%〜約100重量%が、前記第1の供給原料中に存在する請求項14に記載の方法。
【請求項22】
カーボンブラックと比較したときに、前記凝集体が比較的劣った耐摩耗性、低温でのほぼ近い又は比較的大きい損失正接、及び高温での比較的小さい損失正接を、エラストマーに与える請求項14に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの供給原料が、ホウ素含有化合物を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの供給原料が、ホウ素含有化合物を更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項25】
カーボン相、金属含有種相、及び随意にケイ素含有種相を有する凝集体の製造方法であって、
(a)第1の供給原料を、多段反応器の第1の段階に導入し、
(b)前記第1の段階の下流の箇所で、少なくとも1種の2次供
給原料を前記反応器に導入し、
ここで、少なくとも1つの供給原料がカーボンブラック用供給原料を含み、少なくとも1つの供給原料が少なくとも1種の分解可能な又は気化可能な金属含有化合物を含み、及び随意に、少なくとも1つの供給原料が分解可能な又は気化可能なケイ素含有化合物を更に含み、
(c)前記金属含有化合物を分解又は気化させ、前記カーボンブラック用供給原料を熱分解し、且つもし存在するならば前記ケイ素含有化合物を分解又は気化させて、凝集体を作るのに十分な温度で前記反応器を操作し、そして
(d)前記凝集体を回収する、
工程を含む方法。
【請求項26】
前記金属含有化合物が、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、スズ、アンチモン、クロム、チオジウム、鉛、テルル、バリウム、セシウム、鉄、モリブデン、又はそれらの混合物を含有する化合物である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記金属含有種相が、主に前記凝集体の表面に存在する請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記金属含有種相が、前記凝集体中に分散している請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記金属含有種相が、酸化されている請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記金属含有種相が、前記凝集体の重量の約0.1%〜約25%金属元素を含有している請求項25に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの供給原料が、少なくとも2つの異なる金属含有化合物を有する請求項25に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの供給原料が、ホウ素含有化合物を更に含む請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の供給原料と前記第2の供給原料の少なくとも1つがケイ素含有化合物を有し、更に前記凝集体が前記凝集体の重量の約0.1%〜約25%のケイ素を有する請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記金属含有種相と前記ケイ素含有種相が合計で、前記凝集体の重量の約0.1%〜約25%を構成する請求項25に記載の方法。
【請求項35】
供給原料を前記多段反応器に導入する少なくとも3つの段階を含む方法であって、それぞれの段階の供給原料が、
(a)カーボンブラック用供給原料、
(b)少なくとも1つの分解可能な又は気化可能な金属含有化合物、及び随意に、
(c)分解可能な又は気化可能なケイ素含有化合物、
のうちの少なくとも1つを含み、
更に、そのような諸供給原料が合わさって、少なくともカーボンブラック用供給原料と少なくとも1種の分解可能な又は気化可能な金属含有化合物を有する請求項25に記載の方法。
【請求項36】
カーボンブラック、シリカ、又はそれらの混合物を付随的に回収する請求項1に記載の方法。
【請求項37】
カーボンブラック、シリカ、又はそれらの混合物を付随的に回収する請求項14に記載の方法。
【請求項38】
カーボンブラック、金属酸化物、又はそれらの混合物を付随的に回収する請求項25に記載の方法。
【請求項39】
カーボン相とケイ素含有種相とを有する凝集体であって、
(a)BET(N2 )表面積とt−面積との差が、約2〜約100m2 /gであること、
(b)BET(N2 )表面積とt−面積との差が、HF処理の後で約1〜約50m2 /gであること、
(c)(1)HF処理の後と前の凝集体のBET(N2 )表面積の差と、(2)HF処理をしない前記凝集体のケイ素含有物の重量分率と、に基づいた比が約0.1〜約10であること、
(d)HF処理の後でDCPによって測定される重量平均の凝集体サイズが、HF処理をしていない重量平均凝集体サイズに比べて約5%〜約40%減少していること、
(e)前記凝集体中のシリカ灰含有物が、ケイ素含有化合物に起因する灰に基づいて、及びHF処理の後の前記凝集体の重量に基づいて約0.05%〜約1%であること、並びに
(f)前記凝集体のケイ素灰のBET表面積が約200m2 /g〜約700m2 /gであること、
のうちのいずれか1つの特徴によって特徴付けられる凝集体。
【請求項40】
前記特徴のうちの少なくとも2つによって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項41】
前記特徴のうちの少なくとも3つによって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項42】
前記特徴のうちの少なくとも4つによって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項43】
(a)及び(b)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項44】
(a)及び(c)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項45】
(a)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項46】
(b)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項47】
(c)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項48】
(d)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項49】
(e)によって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項50】
(a)及び前記凝集体のシリカ灰のBET表面積が約200m2 /g〜約700m2 /gであることによって特徴付けられる請求項39に記載の凝集体。
【請求項51】
約100m2 /g超のt−面積を有し、BET(N2 )表面積とt−面積の差が約10〜約50m2 /gである請求項39に記載の凝集体。
【請求項52】
HF処理したときに、凝集体の、BET(N2 )表面積とt−面積の差が約5〜約40m2 /gである請求項39に記載の凝集体。
【請求項53】
(c)での比が約0.1〜約5である請求項39に記載の凝集体。
【請求項54】
ケイ素灰のBET表面積が、約200m2 /g〜約700m2 /gである請求項39に記載の凝集体。
【請求項55】
凝集体の重量に基づいて約0.1〜約25重量%のケイ素元素含有率を有する請求項39に記載の凝集体。
【請求項56】
凝集体の重量に基づいて約4〜約10重量%のケイ素元素含有率を有する請求項39に記載の凝集体。
【請求項57】
凝集体の重量に基づいて約8〜約15重量%のケイ素元素含有率を有する請求項39に記載の凝集体。
【請求項58】
カーボンブラックを有するエラストマー組成物と比較すると、同じエラストマー配合物に組み込んだときに、エラストマー配合物の濡れスキッド抵抗が改良される請求項39に記載の凝集体。
【請求項59】
カーボンブラックと比較したときに、前記凝集体が比較的劣った耐摩耗性、低温でのほぼ近い又は比較的大きい損失正接、及び高温での比較的小さい損失正接を、エラストマーに与える請求項39に記載の方法。
【請求項60】
エラストマー配合物に組み込んだときに、カーボンブラックを有する同じエラストマー配合物と比較して、エラストマー配合物のころがり抵抗が改良される請求項39に記載の凝集体。
【請求項61】
少なくとも1種のエラストマーと請求項39に記載の凝集体、及び随意にカップリング剤を有するエラストマー配合物。
【請求項62】
前記エラストマーが、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、SBRエマルション、SBR溶液、官能化SBR、NBR、ブチルゴム、EPDM、EPM、又は1,3−ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、又はそれらの誘導体からなる若しくはこれらに基づくホモポリマー若しくはコポリマーを含む請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項63】
硬化剤、強化繊維、カップリング剤、加工助剤、オイルエキステンダー、劣化防止剤、又はそれらの組み合わせ更に有する請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項64】
シリカ、カーボンブラック、又はそれらの混合物を更に有する請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項65】
シリカ、カーボンブラック、結合した有機基を有する改質カーボンブラック、改質シリカ、シリカで少なくとも部分的にコーティングしたカーボンブラック、又はそれらの組み合わせを更に含む請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項66】
前記凝集体に少なくとも1種の有機基が結合している請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項67】
カーボン相及びケイ素含有種相を有し且つ少なくとも1種の有機基が結合している凝集体を更に含む請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項68】
少なくとも1種の有機基が結合している請求項39に記載の凝集体。
【請求項69】
20℃〜100℃の高温において低いヒステリシスを有する請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項70】
タイヤ配合物中で使用したときに小さいころがり抵抗を持つ請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項71】
カーボンブラックを含有する同じエラストマー配合物に比べて、湿りスキッド抵抗が増加した請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項72】
カーボンブラックを含有する同じエラストマー配合物に比べて、湿りスキッド抵抗が3%よりも増加した請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項73】
カーボンブラックを含有する同じエラストマー配合物に比べて、湿りスキッド抵抗が3%超から約20%まで増加した請求項61に記載のエラストマー配合物。
【請求項74】
請求項39に記載の凝集体をエラストマー配合物に導入することを含むエラストマー配合物の湿りスキッド抵抗の改良方法。
【請求項75】
カーボンブラックを含有する同じエラストマー配合物に比べて、湿りスキッド抵抗が少なくとも3%よりも増加する請求項74に記載の方法。
【請求項76】
カーボンブラックを含有する同じエラストマー配合物に比べて、湿りスキッド抵抗が少なくとも8%増加する請求項74に記載の方法。
【請求項77】
カーボンブラックを含有する同じエラストマー配合物に比べて、湿りスキッド抵抗が少なくとも3%超から約20%まで増加する請求項74に記載の方法。
【請求項78】
請求項39に記載の凝集体をエラストマー配合物に導入することを含む、エラストマー配合物のころがり抵抗の改良方法。
【請求項79】
請求項1の方法によって製造された凝集体。
【請求項80】
カーボン相及びケイ素含有種相を有し、BET(N2 )表面積とt−面積との差が少なくとも19.4m2 /gである凝集体。
【請求項81】
前記差が19.4m2 /g〜52.6m2 /gである請求項80に記載の凝集体。
【請求項82】
ケイ素元素含有率が、凝集体の重量に基づいて約0.1〜約25重量%である請求項80に記載の凝集体。
【請求項83】
ケイ素元素含有率が、凝集体の重量に基づいて約0.5〜約10重量%である請求項80に記載の凝集体。
【請求項84】
カーボンブラックと比べたときに、比較的劣った耐摩耗性、低温でのほぼ近い又は比較的高い損失正接、及び高温での比較的小さい損失正接をエラストマーに与える請求項80に記載の凝集体。
【請求項85】
少なくとも1種のエラストマー及び請求項80に記載の凝集体、及び随意にカップリング剤を有するエラストマー配合物。
【請求項86】
湿りスキッド抵抗が増加した請求項85に記載のエラストマー配合物。
【請求項87】
ころがり抵抗が低下した請求項85に記載のエラストマー配合物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−185295(P2009−185295A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−89405(P2009−89405)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【分割の表示】特願平10−546145の分割
【原出願日】平成10年4月17日(1998.4.17)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】