説明

凝集剤添加管理方法

【課題】濁度に応じて低コストで無駄なく凝集剤を作用させる。
【解決手段】工事対象箇所における土砂等のサンプルを採取し、前記サンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成する工程と、前記作成した異なる濁度の各濁水に関して、所定基準まで濁度を低下させる凝集剤10の添加量を測定し、濁度と凝集剤10の必要量との相関式を推定し、凝集剤10の添加機構8の制御を行う制御装置20に対して、前記推定した相関式を設定する工程と、前記制御装置20により、処理対象となる濁水3の濁度を濁度計25より取得し、当該濁度を前記相関式に当てはめて凝集剤10の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤10が濁水3に添加されるよう前記添加機構8の制御を行う工程とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集剤添加管理方法に関するものであり、具体的には、濁度に応じて低コストで無駄なく凝集剤を作用させることが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば岩盤掘削や各種土工、浚渫工などを伴う工事現場では、泥土等と付近の水流や雨水が混じり合うなどして濁水を成すことがある。こうした濁水は、そのまま河川等に放流することができないため、沈砂施設でその濁度を適宜低減させる必要がある。濁度を低減させる技術として各種の凝集剤を添加するものがある。
【0003】
こうした技術としては例えば、原水を取り入れるとともに凝集剤を添加して攪拌する攪拌槽と、該攪拌槽に凝集剤を添加する凝集剤供給機と、少なくとも一つの沈殿槽とからなる処理装置において、前記凝集剤供給機には、原水の濁度を測定する測定器による測定値と処理水の濁度を測定する測定器による測定値とに基づいて凝集剤の添加量を調整することができる供給量調整機能を備えていることを特徴とする汚濁水の処理装置(特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−34821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のように、原水と処理水の両方の濁度に関して測定を行い、例えば処理水の濁度測定値を凝集剤添加量の決定プロセスにフィードバックさせるとすれば、少なくとも2箇所分の濁度測定機器の導入が必要となってコストが嵩む点や、2つの測定値(原水および処理水)に基づきながらフィードバック制御を行う必要があって凝集剤添加量の制御が複雑化しやすい点など、課題が残されている。また、工事対象の地山や地盤などは、場所によってその岩盤や土砂等の性状が異なることが多く、その場合、工事進行に応じて発生濁水の性状も変化していくことになる。こうした濁水の変化が、従来技術で対応できる通常の濁度範囲に収まっていればよいが、濁度が急激に増大し通常の高濁度の想定範囲を越えてしまった場合、従来技術では対応できなくなる懸念もある。一方、こうした事態に対応しようと、凝集剤の添加量を必要量より常に多めに維持するとすれば、凝集剤の無駄や処理水の白濁等が生じてしまうという不都合もあった。
【0006】
そこで本発明は、濁度に応じて低コストで無駄なく凝集剤を作用させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の凝集剤添加管理方法は、工事対象箇所における土砂等のサンプルを採取し、前記サンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成する工程と、前記作成した異なる濁度の各濁水に関して、所定基準まで濁度を低下させる凝集剤の添加量を測定し、濁度と凝集剤の必要量との相関式を推定し、凝集剤の添加機構の制御を行う制御装置に対して、前記推定した相関式を設定する工程と、前記制御装置により、処理対象となる濁水の濁度を濁度計より取得し、当該濁度を前記相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤が濁水に添加されるよう前記添加機構の制御を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このような技術によれば、工事対象箇所に関して、濁度と凝集剤の必要量との相関式を事前に推定しておき、この相関式に基づいて、原水濁度にマッチした凝集剤添加量の制御を行うことが出来る。前記相関式を推定するため、十分広い範囲の濁度(例えば、0<濁度≦16000ppm)について濁水の作成を行い、こうした濁水に関して必要な凝集剤の添加量を測定することとなるから、推定した相関式としても広範な濁度について必要な添加量を特定できるものとなる。
【0009】
また、濁度測定機器は原水に関する測定を行う分について導入すればよく、また、原水に関する濁度の測定値に基づいて凝集剤添加量の制御を行うことになるため、装置構成も複雑化せずコスト面でも従来より低廉となりやすい。また、濁度の急増等が生じる場合であっても、予め広い濁度範囲に配慮してある前記相関式によって必要な凝集剤添加量を大きな過不足無く決定して適切に対応することができる。つまり、過剰な凝集剤添加による無駄の発生や、処理水の白濁現象等が生じる懸念も少ないと言える。従って本発明によれば、濁度に応じて低コストで無駄なく凝集剤を作用させることが可能となる。
【0010】
また、前記凝集剤添加管理方法において、工事対象箇所に関する地質図に基づいて、異なる地質性状の各領域について前記サンプルの採取を行って、前記各領域について、前記サンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成する工程と、前記各領域に関して作成した異なる濁度の各濁水に関して、所定基準まで濁度を低下させる凝集剤の添加量を測定し、濁度と凝集剤の必要量との相関式を前記各領域について推定し、凝集剤の添加機構の制御を行う制御装置に対して、前記各領域について推定した相関式を設定する工程と、前記各領域のうち現工事対象箇所が含まれる該当領域について前記制御装置に設定し、当該制御装置により、処理対象となる濁水の濁度を濁度計より取得し、当該濁度を前記該当領域に関する相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤が濁水に添加されるよう前記添加機構の制御を行う工程と、を含むとしてもよい。
【0011】
このような技術によれば、工事対象の地山や地盤などが場所によってその性状を大きく異ならせ、濁度の急な増大や減少等が生じる場合であっても、予め領域毎に推定してある前記相関式によって必要な凝集剤添加量を大きな過不足無く決定して適切に対応することができる。つまり、地質性状等が場所により異なる場合であったとしても、過剰な凝集剤添加による無駄の発生や、処理水の白濁現象等が生じる懸念も少ないと言える。
【0012】
また、前記凝集剤添加管理方法において、工事対象箇所における土砂等のサンプルを採取し、当該サンプルを前記地質図に照合して、前記各領域のうち現工事対象箇所が含まれる該当領域について特定する工程と、前記特定した該当領域について前記制御装置に設定し、当該制御装置により、処理対象となる濁水の濁度を濁度計より取得し、当該濁度を前記該当領域に関する相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤が濁水に添加されるよう前記添加機構の制御を行う工程と、を含むとしてもよい。
【0013】
このような技術によれば、実際に工事対象となる箇所について、その地質性状に応じて地山等における該当領域を特定し、その領域に関する前記相関式を用いて凝集剤の必要量を決定し制御を行うことができる。つまり、現状の地質性状に応じた凝集剤添加管理を行うことができ、凝集剤を過不足無く濁水に添加することにつながる。
【0014】
なお、前記凝集剤の例としては、例えばアルミニウム系凝集剤と高分子系凝集剤があげられる。そのうち、アルミニウム系凝集剤は、硫酸バンドやPAC(ポリ塩化アルミニウム)等の、溶解性が高く即効性があると言われる凝集剤であり、濁水に過剰溶解すると、pH低下や水酸化アルミニウムによる白濁が発生し、かえって濁度の上昇を招く恐れもあった。また、アルミニウム系凝集剤の過不足が生じると、高分子系凝集剤によるフロックの生成にも悪影響が生じ、全体として凝集剤添加による濁度低下の効率は良くないものとなる。しかし上述のように、本発明によれば濁度に応じて適切な量の凝集剤が添加されることになるから、上述の問題点は解消され、優れた凝集効果が確実に発揮され、凝集速度も向上するという効果も奏することになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、濁度に応じて低コストで無駄なく凝集剤を作用させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における凝集剤添加管理方法の適用例を示す図である。
【図2】本実施形態における凝集剤添加管理方法の処理手順例を示すフロー図である。
【図3】本実施形態における掘削サイクル例を示す図である。
【図4】本実施形態における懸濁物質濃度と濁度の関係例を示す図である。
【図5】本実施形態における凝集剤の必要添加量の例を示す図である。
【図6】本実施形態における処理結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
−−−適用例−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態における凝集剤添加管理方法の適用例を示す図である。図に示す例では、工事等で発生した原水1を沈砂槽2に一旦導いた後、その上澄み水たる濁水3を搬送ライン4経由でシックナー5に導入する構成としている。前記沈砂槽2は数秒で沈降するような比較的粒径の大きな粒子を沈下させる役割を担う。この沈砂槽2の槽内上部には適宜な圧送ポンプ6が設置されており、沈砂槽2での上澄み水すなわち濁水3がこの圧送ポンプ6を経由して搬送ライン4に流入する。流入する濁水3に含まれる粒子は、その沈下に凝集剤の添加が必要になる、いわゆる浮遊懸濁物が主となる。浮遊懸濁物は、電荷を帯びて静電気的な反発力が互いに働いており、時間が経過しても自ら沈降しない上、粒径が非常に小さいため通常の物理的処理では除去が困難である。そこで、電荷を中和する働きを示す凝集剤を濁水中に添加すれば、浮遊懸濁物は静電気的な反発力を失って互いに凝集するようになる。
【0018】
従って搬送ライン4において、濁水3の濁度に応じた量の適切な凝集剤添加が行われると、シックナー5に流れ込む濁水3は適宜なフロックを形成して濁度が低減されたものとなりやすい。そこで搬送ライン4には、ライン反応器7を介して凝集剤添加ポンプ8が接続されている。この凝集剤添加ポンプ8は、凝集剤タンク9より凝集剤10を吸引し、流量調整弁11を介して適宜な分量の凝集剤をライン反応器7に供給する。ライン反応器7は、沈砂槽2から送られてきた濁水3の流れと凝集剤添加ポンプ8からの凝集剤10の流れとを交叉させて互いに混合させる装置である。
【0019】
なお、流量調整弁11には、弁の開閉機構を制御する制御装置たるコンピュータ20が接続されている。このコンピュータ20は、例えば沈砂槽2に設置された濁度計25(例:計測可能濁度域:10〜19990mg/Lのもの)から送られる信号(濁度を示すデータ)を所定のインターフェイスを介して取得し、その信号が示す濁度の値の大小に応じて必要となる凝集剤の必要量を演算し、この必要量(流量)に対応した開度とする指令を前記弁の開閉機構に通知する。コンピュータ20は、前記必要量の演算に際し、予め記憶手段に保持している相関式に前記濁度の値を代入することになる。前記相関式とは、処理対象となる濁水3の濁度と、所定基準までその濁度を低下させる凝集剤10の添加量との関係を示す式である。この相関式の推定手順については後述する。なお、相関式は、工事対象箇所に関する地質図に基づいて、異なる地質性状の各領域について作成されたものであれば、より好適である。
【0020】
また、本実施形態での凝集剤10としては、例えば、PAC(ポリ塩化アルミニウム)と、高分子系凝集剤とをあげている。PACにより、濁水3が含む浮遊懸濁物の電荷を中和して、互いに凝集するよう図った上で、凝集が進んだ浮遊懸濁物に対して高分子系凝集剤を作用さてフロックを形成し、濁度低減を図るのである。こうした凝集剤10の採用例はあくまで一例であり、濁水の性状や求められる凝集効果等に応じて、採用する凝集剤は様々である(勿論、1種類の凝集剤のみ使用する場合もある)。また、濁水3のpH調整のため、例えば炭酸ガスを搬送ライン4に供給する構成としてもよい。図1に示す例では、濁水3のpHが高い場合に備えて、炭酸ガスの供給機構12およびpH測定装置13を配置している。よって、供給機構12は、pH測定装置13から濁水3のpH測定値を取得し、このpH測定値が所定基準以上である場合に、所定量の炭酸ガスを搬送ライン4に供給することとなる。
【0021】
また、シックナー5は、フィルタープレス等の脱水手段を備えており、濁水3に含まれるフロックをフィルタープレスの濾布等で濾しとってケーキを生成し、これを外部に排出することとなる。またシックナー5で濁水3から分離された水分は、処理水槽40に送られ、所定の管理基準(水質汚濁防止法、各自治体の条例等)を満たす水質とされた上で河川等に放流される。
【0022】
−−−凝集剤添加管理の手順−−−
続いて、凝集剤添加管理の手順例について説明する。図2は本実施形態における凝集剤添加管理方法の処理手順例を示すフロー図であり、図3は本実施形態における掘削サイクル例を示す図である。ここでは濁水発生現場の一例として、山岳トンネルの掘削現場をあげる。図3に示すように、山岳トンネルの掘削サイクルは、掘削機等による切羽の掘削、坑外へのズリ出し、切羽など壁面へのコンクリート一次吹付作業、鋼製支保工の建て込み作業、コンクリート二次吹付作業、ロックボルト打設作業、を繰り返すものとなる。また、コンクリート二次吹付作業の後、坑外においてはバッチャープラント及びトラックミキサー車の洗浄作業がなされる。このうち特に、掘削、ズリ出し作業時に生じる泥水、ロックボルト打設作業に伴う削孔水、コンクリート吹付作業後や機械整備時に生じる各種機器の洗浄水、バッチャープラント及びトラックミキサー車の洗浄水などは、濁水3の原水となりやすい。また当然ながら、上記サイクルのうち作業毎に異なる濃度の濁水が生じる。
【0023】
そこで例えば、工事対象箇所であるトンネル地山において、上記サイクル中の所定作業時に取り扱われる岩石や土砂等のサンプルを採取し、このサンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成する(s100)。濁水作成に際しては、例えば、地山から採取した岩石塊を破砕装置に投入して所定径まで粒径サイズを低減して粉体を生成し、ある量の粉体に所定量の水分を加えることで所定濁度の濁水となす。勿論こうした濁水生成の手法は一例であるから、現場状況や用意できる装置等に応じて適宜なものを採用すればよい。なお、前記サンプルの採取は、工事対象箇所の地山に関する地質図に基づいて、異なる地質性状の各領域について実行するとすればより好適である。この場合、前記各領域について、前記サンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成することとなる。
【0024】
上記ステップs100で生成した異なる濁度の濁水については、所定基準(例:2ppm)まで濁度を低下させるべく凝集剤の添加を行って、その必要量を測定し(s101)、濁度と凝集剤の必要量との相関式を前記各領域について推定する(s102)。この場合、例えば、ある濁度の濁水に対し、凝集剤10を一定量ずつ添加していき、その際の濁度変化を測定、観察する。そして、所定基準の濁度となった時点での凝集剤10の添加量合計を、「必要量」と特定する。
【0025】
なお、濁度計25で得られる測定値すなわち濁度は、懸濁物質濃度(いわゆるSS濃度)と相関関係を有しているものとして、一例としてその相関式を図4中に示すように求めた。図の例では、相関式としては、懸濁物質濃度=0.7005×濁度+46.634、となっている。従って、濁度計25の測定値たる濁度の値をこの式に代入することで懸濁物質濃度が算定できる。予め、濁度計25の演算装置や演算プログラム等に上記相関式を設定すれば、濁度計25として出力する測定値が懸濁物質濃度の値となる。
【0026】
図5は本実施形態における凝集剤の必要添加量の例を示す図である。上述のような凝集剤10に関する必要量の特定作業を行った結果、図5に示すグラフの如く、PACおよび高分子系凝集剤の凝集剤毎に、懸濁物質濃度(0〜25000)と凝集剤10の必要量(ml/min)の関係が得られた。これらのグラフが示すように、PACおよび高分子系凝集剤のいずれに関しても、原水の懸濁物質濃度の上昇に応じて必要量が上昇することがわかる。当該グラフのデータから濁度すなわち懸濁物質濃度と必要量との相関式を推定すればよい。相関式の推定に当たっては、例えばグラフデータを数式化する既存のプログラム等を利用すればよい。
【0027】
続いて、上記ステップs102で推定された前記相関式を、凝集剤10の添加機構(すなわち凝集剤添加ポンプ8)の制御を行う制御装置(すなわち流量調整弁11の開閉機構を制御する自動制御装置たるコンピュータ20)に対し設定する(s103)。この相関式の設定は、コンピュータ20のメモリ等の記憶手段に相関式のデータを格納する処理となる。
【0028】
以上の工程が実行されたならば、凝集剤添加管理のための事前準備が完了したことになる。そこで、実際に上述の掘削サイクルを回してトンネル掘削作業等を行うとする。こうした作業を行うことで生じた原水1は、所定の配管等を通過して沈砂槽2に導入され、その上澄み水たる濁水3が搬送ライン4に流入する。一方、沈砂槽2には上述の如く濁度計25が設置されており、この濁度計25が沈砂槽2の上澄み水すなわち濁水3の濁度について測定を行っている。
【0029】
また、コンピュータ20は、ネットワークを介して結ばれている工事管理事務所等の端末から、現在工事がなされている箇所がどの領域(の地質性状)に該当しているか通知を受ける(s104)。この領域に関する通知に際しては、工事担当者などが、工事対象箇所における土砂等のサンプルを採取し、当該サンプルを地質図に照合して、この地質図が示す各領域のうち現工事対象箇所が含まれる該当領域について特定し、この情報を端末から入力しているものとする。つまりこうした入力動作で、地盤等を構成する各領域のうち現工事対象箇所が含まれる該当領域についてコンピュータ20への設定がなされる。
【0030】
一方、コンピュータ20は、処理対象となる濁水3の濁度を濁度計25より取得する(s105)、またコンピュータ20は、前記ステップs104で通知を受けた該当領域に関する相関式を記憶手段より読み出し、前記ステップs105で得た濁度の値を、該当領域に関する相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定する(s106)。
【0031】
コンピュータ20は、ここで決定した凝集剤の必要量すなわち流量に対応した開度とする指令を、流量調整弁11の開閉機構に通知し、凝集剤10が必要量だけ濁水3に添加されるよう制御を行う(s107)。
【0032】
こうして、濁水3の濁度に応じた必要量だけの凝集剤10が、凝集剤添加ポンプ8から流量調整弁11を介してライン反応器7に供給される。濁水3に含まれる浮遊懸濁物は、その電荷をPACにより中和され、互いに凝集するようになる。また、搬送ライン4において、PACのライン反応器7より後段には高分子系凝集剤のライン反応器7が設置されており、PAC同様、濁水3の濁度に応じた必要量だけの凝集剤10が、凝集剤添加ポンプ8から流量調整弁11を介してライン反応器7に供給されることで、互いに凝集した浮遊懸濁物をさらに合体させ適宜なフロックを形成する。
【0033】
搬送ライン4において適宜なフロックを形成し濁度が低減された濁水3は、シックナー5に流入する。この濁水3に含まれるフロックはフィルタープレスの濾布等で濾しとられてケーキとなり、外部に排出される。またシックナー5で濁水3から分離された水分は、処理水槽40に送られ、所定の管理基準(水質汚濁防止法、各自治体の条例等)を満たす水質とされた上で河川等に放流されることになる。
【0034】
本願発明者らは、本実施形態の凝集剤添加管理方法を実際のトンネル掘削現場に適用した結果、濁水3の懸濁物質濃度、凝集剤10の添加量、および処理水槽40での処理水の濁度、のそれぞれの時間的変化を、図6に示す各グラフ600〜620として得た。図6の各グラフが示すとおり、濁水3の濁度変化(グラフ600)に対して、コンピュータ20からの凝集剤添加ポンプ8への指示すなわち凝集剤の添加量(グラフ610)は、かなり忠実な相関関係をもって追随しており、その結果、処理水の濁度(グラフ620)も約2ppm前後とほぼ一定の低水準に維持されているのが分かる。つまり濁水3に対して、その濁度に応じた過不足無い凝集剤10の添加が実行され、処理水の濁度も低水準に一定化されたと言える。
【0035】
なお、参考のため、本実施形態の凝集剤添加管理方法と従来方式(濁度によらず一定量の凝集剤添加)との比較試験を行った。その結果、従来方式での濁水処理に比べ、凝集剤使用量を効果的に低減できることが判明した。ゆえに本実施形態の凝集剤添加管理方法の有効性は明らかである。
【0036】
以上、本実施形態によれば、濁度に応じて低コストで無駄なく凝集剤を作用させることが可能となる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 原水
2 沈砂槽
3 上澄み水(シックナーに流入する濁水)
4 搬送ライン
5 シックナー
6 圧送ポンプ
7 ライン反応器
8 凝集剤添加ポンプ
9 凝集剤タンク
10 凝集剤
11 流量調整弁
12 炭酸ガスの供給機構
13 pH測定装置
20 コンピュータ
25 濁度計
40 処理水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事対象箇所における土砂等のサンプルを採取し、前記サンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成する工程と、
前記作成した異なる濁度の各濁水に関して、所定基準まで濁度を低下させる凝集剤の添加量を測定し、濁度と凝集剤の必要量との相関式を推定し、凝集剤の添加機構の制御を行う制御装置に対して、前記推定した相関式を設定する工程と、
前記制御装置により、処理対象となる濁水の濁度を濁度計より取得し、当該濁度を前記相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤が濁水に添加されるよう前記添加機構の制御を行う工程と、
を含むことを特徴とする凝集剤添加管理方法。
【請求項2】
請求項1において、
工事対象箇所に関する地質図に基づいて、異なる地質性状の各領域について前記サンプルの採取を行って、前記各領域について、前記サンプルから互いに濁度が異なる濁水を複数作成する工程と、
前記各領域に関して作成した異なる濁度の各濁水に関して、所定基準まで濁度を低下させる凝集剤の添加量を測定し、濁度と凝集剤の必要量との相関式を前記各領域について推定し、凝集剤の添加機構の制御を行う制御装置に対して、前記各領域について推定した相関式を設定する工程と、
前記各領域のうち現工事対象箇所が含まれる該当領域について前記制御装置に設定し、当該制御装置により、処理対象となる濁水の濁度を濁度計より取得し、当該濁度を前記該当領域に関する相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤が濁水に添加されるよう前記添加機構の制御を行う工程と、
を含むことを特徴とする凝集剤添加管理方法。
【請求項3】
請求項2において、
工事対象箇所における土砂等のサンプルを採取し、当該サンプルを前記地質図に照合して、前記各領域のうち現工事対象箇所が含まれる該当領域について特定する工程と、
前記特定した該当領域について前記制御装置に設定し、当該制御装置により、処理対象となる濁水の濁度を濁度計より取得し、当該濁度を前記該当領域に関する相関式に当てはめて凝集剤の必要量を決定し、当該決定した必要量の凝集剤が濁水に添加されるよう前記添加機構の制御を行う工程と、
を含むことを特徴とする凝集剤添加管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−24673(P2012−24673A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164160(P2010−164160)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(392000408)サンエー工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】