説明

凝集沈殿が改善された水懸濁用キトサン含有緑葉組成物

【課題】緑葉やキトサンが本来持っている機能性を損なわずに、緑葉と共にキトサンを含有した懸濁液としても、服用時まで、凝集沈殿を殆ど起こさないように改善された飲料用に適するキトサン含有緑葉組成物を得ること。
【解決手段】嵩密度が0.20〜0.90g/mlであり、且つ粒子径が300μm以下のキトサン及び粒子径が300μm以下の緑葉末を含有することを特徴とする水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のキトサンを用いることにより、緑葉にキトサンを含有しても凝集沈殿を殆ど起こさないように改善されたキトサン含有緑葉組成物、特に飲料用に適する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりとともにケールなどの青物野菜の緑葉の搾汁液、すなわち「青汁」が多くの人に食されるようになってきた。青汁はビタミン・ミネラル・食物繊維などの成分の他、クロロフィル・フラボノイド類などを豊富に含み、食生活が欧米化し野菜不足である日本人の栄養補給や食生活の改善が期待できる。青汁に使用される野菜はケールが最も多く食されているが、近年にケールに追従するかたちで、食物繊維やミネラルが豊富で味も良いイネ科植物の緑葉、例えば小麦緑葉や大麦緑葉等を原料とした青汁が食されるようになってきた。イネ科植物、例えば麦類(例えば大麦や小麦)及びイネ等は主食として世界各地で食されてきた代表的な穀物であり、これらの緑葉、特に小麦緑葉や大麦緑葉等はビタミン類、ミネラル類、食物繊維などに富んでいることから健康食品の素材として注目を浴びている。
このような健康食品素材に更なる保健機能を付与することを目的に動物性食物繊維のキトサンを含有する緑葉飲料の開発が着目されてきている。即ち、キトサンは天然の食物繊維の中で唯一アミノ基を有する塩基性食物繊維であり、青汁と同時に摂取することで、保健機能が大いに期待できる。
【0003】
例えば、キトサンとイネ科植物等の緑葉を飲料に加工する場合、直ちに緑葉の水溶性成分とキトサンで凝集沈殿を発生し、食品の外観並びに食感を著しく低下させる事が一般的に知られていた。これは、キトサンが廃水処理や河川汚泥の凝集剤として使用されているように、高分子の凝集作用を有することによるものである。そのような凝集沈殿を防止するためには重炭酸ナトリウムなどを用いてpHをアルカリ性にすることが考えられるが、これらのアルカリ性の素材はナトリウムやカリウムを含むため塩辛い味となり飲料に向かない。
また、緑葉微粉末の分散性を向上させる方法として澱粉、グアガム又はプルランなどの多糖類を添加して凝集沈殿を防止する方法も知られており(特許文献1参照)、一応の効果を上げているが、緑葉微粉末とキトサンとの併用において、効果的な凝集沈殿を防止する方法は知られていない。
これらの技術的問題により、キトサンと緑葉を含有する飲料若しくは飲料用組成物は現在製品化されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−334046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者らは、緑葉、好ましくはイネ科植物(より好ましくは大麦)、セリ科植物又は/及びヒルガオ科植物等の緑葉及びキトサンの両者を含み、かつ、両者が本来持っている生理的機能性を損なうことなく、更に、pH調整剤や分散剤などの添加物を含まなくても、少なくとも服用までの間は凝集沈殿を殆ど起こさないように改善された、飲料用に適するキトサン含有緑葉組成物、特に味や香りの好ましいキトサン含有緑葉組成物を開発することを課題として本研究開発に取り組んだ。
本発明の課題は、キトサンと緑葉を含有する飲料用に適する組成物、特に服用のために水懸濁組成物としたときに、服用までの間に凝集沈殿を生ずることなく均一な分散液として存在しうるキトサン含有緑葉組成物を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、種々検討の結果、キトサンの嵩密度及び粒子径が、上記の凝集沈殿に大きく関係すること、更に好ましくは、キトサン粒子の表面状態及び/又はキトサンの分子量(粘度)等も関係することを見いだし、本発明を完成した。即ち本発明者らの検討によれば、特定の嵩密度及び粒子径を有するキトサン、好ましくは特定な水処理乾燥したキトサン粒子、更に好ましくは特定な分子量(粘度)を有するキトサンが緑葉微粉末と共に水懸濁されたとき、比較的安定な水懸濁液として存在すること、緑葉やキトサンが本来持っている機能性も損なわれないこと、風味や舌触りなども良好であること及び該組成物は飲料用に適することを見いだして本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)嵩密度が0.20〜0.90g/mlであり、且つ粒子径が300μm以下のキトサン及び粒子径が300μm以下の緑葉末を含有することを特徴とする水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
(2)キトサンが、粉砕キトサンを含水させた後、キトサン粒子に運動を与えて乾燥して得られたものである前項(1)に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
(3)キトサン含有緑葉組成物中のキトサン含有量が1~80質量%である前項(1)又は(2)に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
(4)キトサンの粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)が20〜400mPasである前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
飲料用である前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
)緑葉末が大麦若葉末である前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
)緑葉末がアシタバ茎葉末である前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
)緑葉末が甘藷の茎葉末である前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
(9)用時溶解用の乾燥顆粒製剤又は粉末製剤である前項(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキトサン含有緑葉組成物は、緑葉微粉末とキトサンの両者を含有するにもかかわらず、pH調整剤や分散剤などの添加物を使用しなくても、水懸濁液としても3分間以上、より安定なものにおいては10分以上にわたって凝集沈殿を殆ど起こさず、かつ緑葉やキトサンが本来持っている機能性を保持するもので、飲用し易く、飲料用の健康食品等として適するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のキトサン含有緑葉組成物は、固形、液状いずれでもよいが、用時溶解用の乾燥顆粒製剤又は粉末製剤が好ましい。用時溶解用の本発明組成物を水に分散した時、3分間以上にわたって殆ど凝集沈殿を起こさず懸濁分散状態を保持する。又、その殆どが10分間以上にわたって懸濁分散状態を維持して飲み易い状態を確保することが可能である。
【0010】
本発明のキトサン含有緑葉組成物に用いられるキトサンは、嵩密度が0.20〜0.90g/ml程度、好ましくは0.20〜0.50程度、更に好ましくは0.20〜0.40程度で、粒子径が300μm〜5μmのものがよい。また、好ましくは粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)が通常20〜400mPasのキトサンである。
このようなキトサンは、ジェットミル等の適当な粉砕器で、嵩密度及び粒子径が上記の範囲になるようキトサンを適宜粉砕し、必要に応じて後記する改質のための水処理を行うことにより得ることができる。また、後記するように、改質のため粉末キトサンの水処理を行うときは、改質後のキトサンの粒度及び嵩密度が上記の範囲内にあれば良い。原料として使用するキトサンは例えば上記の粘度範囲にあるキトサンを使用するのが好ましい。
【0011】
更に詳しくは、本発明のキトサン含有緑葉組成物に用いられるキトサンの粒子径は、300μm以下で、あれば特に問題は無いが、好ましくは180μm(80メッシュ)以下で平均粒径130〜80μm、より好ましくは100μm(150メッシュ)以下で平均粒径100〜80μmが良く、粒子径の下限は特に限定されなくてもよいが、微粉化のコスト等を考えると、通常5μm程度である。
【0012】
また、発明のキトサン含有緑葉組成物に用いられるキトサンの粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)は、通常20mPas以上のキトサンであれば特に問題は無いが、好ましくは100mPas以上の高分子量キトサンが良く、上限は400mPas程度であり、通常は350mPas以下、より一般的には300mPas以下のものが使用される。このような粘度を有する本発明で使用するキトサンは前記粉砕用原料キトサンとして、例えば上記の粘度範囲にあるキトサンを使用することにより得ることが出来る。
【0013】
本発明のキトサン含有緑葉組成物に用いられるキトサンは上記の粒度及び嵩密度のものであれば使用できるが、好ましくは、ジェットミル等の適当な粉砕器で得られたキトサン粉末を更に、改質のために水処理するのが好ましい。改質処理はキトサン粉末に含水させ、運動を与えながら若しくは与えた後、乾燥処理すればよい。改質処理によるキトサン粉末の改質機構は明確ではないが、この改質処理により、通常嵩密度が適当な範囲になると共に、本発明組成物を水懸濁液としたとき、懸濁安定性が更に向上する。たぶんこの改質処理により、粉砕物に多く見られる粒子表面毛羽立ち等が減少し滑らかに改質され、懸濁安定性が向上するものと思われる。
この改質処理は例えば粉砕したキトサン10質量部に対して水3質量部以上、好ましくは5質量部以上を添加し、キトサンに含水させた後、適当に混合し、キトサン粒子に運動を与えながら、又は与えた後、乾燥すればよい。例えば、コニカルドライヤー、ナウター乾燥機などを用いて、その回転混合により、回転運動をキトサン粒子に与えながら乾燥したものが良い。また、含水したキトサンを混合パンなどで回転運動を与えた後に、棚式乾燥機で乾燥するなど、回転運動と乾燥工程を別々に行っても良い。
キトサンに含水させる水の量はキトサン粒子を濡らすのに充分な量であればよく、過剰にあっても効果的には大差ないので、エネルギー消費を少なくするという観点から見るとキトサン10質量部に対して水50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
この改質処理に使用する粉砕キトサン(キトサン粉末)は本発明で使用する粒度と嵩密度を有するものが好ましいが、通常のジェットミル等で得られる上記の粒度のものは、嵩密度が本願発明で使用するものより大きいので、それを水処理し、処理後のものが本発明で使用する粒度と嵩密度を有するものになっていれば特に支障はない。
【0014】
本発明のキトサン含有緑葉組成物に用いられる緑葉末は、緑葉を粉砕したものであれば何れでも良い。該緑葉としては、例えばイネ科植物(例えば、大麦、小麦、えん麦、ライ麦等の麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきび等)の緑葉、キク科植物(例えば、ヨモギ等)、セリ科植物(アシタバ、パセリ、セロリ等)、クワ科植物(例えば、クワ等)、ドクダミ科植物(例えば、ドクダミ等)、シソ科植物(例えば、シソ等)、アブラナ科植物(小松菜、ケール、キャベツ、ブロツコリー等)、ユリ科植物(例えば、アスパラガス等)、シナノキ科植物(例えば、モロへイヤ等)、ヒルガオ科植物(例えば、甘藷の茎葉など)、アカザ科(例えば、ホウレンソウ等)のような緑色植物の緑葉が挙げられ、これらに限定されない。好ましい緑葉としてはイネ科植物(好ましくは大麦)、セリ科植物(好ましくはアシタバ)、アブラナ科植物(好ましくはケール)、ヒルガオ科植物(好ましくは甘藷の茎葉)又はキク科植物(好ましくはヨモギ)等を挙げることができ、より好ましくは大麦若葉、ケール、甘藷の茎葉、アシタバの茎葉、ヨモギ等が挙げられる。
【0015】
これらの植物の緑葉から緑葉末を製造するには、これらの植物の緑葉(本発明において緑葉と言った場合、特に断りのない限り植物の茎なども含む概念で使用される)を、適当な大きさに切断し、必要に応じて、ブランチング(熱水)処理等の変色防止処理を施し、必要に応じて乾燥し、ついで適当な大きさに粉砕すればよい。
より具体的に述べれば、例えば、大麦の緑葉の場合は、分けつ開始期から出穂開始期に収穫した緑葉を水等で洗浄し、適切な長さ(例えば、10cm)に切断した後、必要に応じて、素材の変質(緑色の槌色や風味の変化)を防ぐために、ブランチング(熱水)処理、マイクロウェーブ処理などを施し、そして必要に応じて乾燥し、次いで、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの当業者が通常用いる任意の機械または道具を用いて粉砕することで得られる。栄養分保持の観点からは、ブランチングは短時間であることが好ましい。
また、乾燥する場合は、凍結乾燥、あるいは70℃以下の低温加熱乾燥(例えば、温風乾燥)であることが好ましい。得られる緑葉末は、緑葉を搾汁することなくそのまま乾燥粉末化しているために、緑葉の有効成分をそのまま含んでいる。また、緑葉を採取した後、水、アルコール等の溶媒と共にミキサーでホモジナイズし、その後熱風乾燥や凍結乾燥やスプレードライで乾燥して、緑葉末を得ても良い。
また、本発明のキトサン含有緑葉組成物に用いられる緑葉末の粒子径は300μm以下であれば特に問題は無いが、緑葉末の90%以上が、180μm(80メッシュ)以下であることが好ましく、より好ましくは75μm(200メッシュ)以下でる。粒子径の下限は特に限定されなくてもよいが、通常5μm程度である。そして、粒径300μm以上のもの、好ましくは250μm以上のもの、更に好ましくは150μm以上のものは実質的に含まれない方が好ましい。
大麦以外の植物の緑葉末も上記に準じて製造することができる。
【0016】
本発明におけるキトサン含有緑葉組成物中のキトサン量は、キトサンの機能性が発揮できる量が含有されていれば特に問題は無い。また、単回使用分の製剤量、製剤形態等にもよりキトサン含量は異なるので一概には言えないが、該組成物がそのまま飲む水懸濁液飲料組成物の場合を除けば、製剤組成物中のキトサン量は、製剤全量に対して通常1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは3〜70質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
本発明におけるキトサン含有緑葉組成物中の緑葉末含有量は、単回使用分の製剤量にもよるが、緑葉の栄養成分が十分摂取できる量であれば問題ない。該緑葉末含有量は製剤形態等にもよるので一概には言えないが、該組成物がそのまま飲む飲料組成物の場合を除けば、通常製剤全量に対して1〜99質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
キトサンと緑葉末の両者の含有割合は特に制限がないが通常キトサン1質量割合に対して、緑葉末0.5〜20質量割合、好ましくは1〜10質量割合、更に好ましくは1〜5質量割合である。
本発明におけるキトサン含有緑葉組成物は上記キトサン及び緑葉末以外に、その他の添加物、例えば製剤用添加物例えば担体、増量剤、粘着剤、崩壊剤、分散剤等や、味覚調整剤(調味料等)等を必要に応じて適宜含有することができる。それらの製剤全体に対する含量はキトサン及び緑葉末を除いた残量であり、通常0〜98%の範囲内であり、好ましくは0〜87%であり、より好ましくは0〜77%である。
【0017】
緑葉末とキトサンは混合してから、錠剤や粒状、ースト状、液状、ゲル状など目的に応じた造粒、製剤化処理を行って組成物を得ても良いし、この緑葉末とキトサンをそれぞれ単独で前記製剤化処理を行い、それらを混合して組成物を得ても良い。又、生の緑葉とキトサンを混合後、水などの分散剤を加えて粉砕した後、乾燥することによって本発明のキトサン含有緑葉組成物を得ることも出来る。特に、本発明のキトサン含有緑葉組成物をペースト状、ゲル状にした場合は、凝集沈殿が生じないため、均一に分散したーストやゲルとすることができ、緑葉とキトサンを水へ分散させて湿式造粒した場合においても均一な造粒物を得ることができる。
さらに、本発明のキトサン含有緑葉組成物は、前記のように服用時に飲料用に水懸濁しても、服用時までに凝集沈殿することがないので、適宜水に懸濁して飲料として使用するのに適している。
このようなキトサン含有緑葉組成物は、水懸濁下で凝集沈殿が生じないため、錠剤などの乾燥製剤として摂取した場合においては、口腔内や胃腸内での分散性がよくなり、キトサン含有緑葉組成物中の各成分の機能を発揮しやすくなるといったことも考えられる。
【0018】
本発明における水懸濁したキトサン含有緑葉飲料組成物は、乾燥した緑葉末、前記粉砕キトサン若しくはキトサン粉末、及び必要に応じてその他の添加剤に水を加え水懸濁液とするか、上記の本発明のキトサン含有緑葉組成物を水懸濁させることにより得ることができる。また、生の緑葉に前記キトサン若しくは粗キトサン、必要に応じてその他の添加物及び水を加え、ミキサーでホモジナイズすることでも製造できる。またキトサンを添加する手順としては成分を乾燥状態で混合後、水に懸濁しても、水懸濁時にキトサンを加えても、あるいは、キトサンを除く成分で懸濁液を調整しておき、その後キトサンを加えても良い。
該水懸濁液からなるキトサン含有緑葉飲料組成物中のキトサンの含有量は単回使用分の製剤量にもよるがキトサンの機能性が発揮できる量が含有されていれば特に問題は無く、キトサン量は製剤全体に対して、通常0.05〜8%(質量:以下特に断らないかぎり同じ)、好ましくは0.1〜5.0%、また、緑葉末含有量は、緑葉の栄養成分が十分摂取できる量であれば問題なく、通常0.01〜40%、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.3〜10%、さらには0.3〜5%である。残部は水を含むその他の添加剤であり、水含量は少なくとも、製剤全体に対して少なくとも30%以上、好ましくは52%以上であり、99.94%以下、好ましくは99.4%以下である。残部がその他添加剤であり、0〜40%以下である。
【0019】
本発明のキトサン含有緑葉組成物において、香り付けとして、香料、ハーブ、抹茶、紅茶、コーヒー、ココア、きな粉、などを加えたり、調味料として砂糖などの糖類、蜂蜜、食塩、醤油、味噌、酒類を加えたり更には色素を加えて味や香り、色調の調整をすることもできる。また、製剤化において、水への分散性やハンドリング、包装への充填性を良くするため、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、粒状、茶状、ティーバッグ状、ゼリー状、もしくは飴状などの形態に加工することも可能であり、その際の加工に必要な増粘剤(メチルセルロース、デンプン、ガム質、セラック等)や滑沢剤(タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、卵殻粉末、骨粉、貝殻カルシウム、ドロマイト等)、を使用することができる。これら添加物の配合割合は、特に制限は無いが、キトサン含有緑葉組成物の場合は98%以下、キトサン含有緑葉飲料の場合は40%以下が好ましい。そして、これらの形状は、水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良く、ティーバッグ状などの場合は、成分を浸出させてから飲んでも良い。また、好みに応じて、そのまま食することもできる。
【0020】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、実施例ならびに後に記載する比較例に使用した改質キトサンは表1−1、表1−2に示す方法で製造した。なお、キトサンの粘度は、キトサンを0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液に溶解して、20℃の条件で、ビスメトロン粘度計VDA型(芝浦システム(株)製)を用いて測定した。また、粒度の測定は、以下の方法によって測定した。
使用機器:ミクロ型電磁振動ふるい器M−2型(筒井理化学器械(株)製)
篩:ステンレス製、7.5mmφふるい
ブロッキング防止剤:約5mmφのガラスビーズ
測定方法:
1.測定に使用する各簡にガラスビーズ約9gを乗せ、重量を0.001gの精度で測定
する。
2.受け器の重量を0.001gの精度で測定する。
3.メッシュが細かいふるいが下になる順番で重ねる。
4.一番上の篩に試料2.5gをのせて、蓋をしてメモリ8で10分間振動させる。
5.各篩及び受け器の重量を測定する。
6.5の重量から1及び2の重量を差し引くことで、篩上の試料重量を求める。
かさ密度はカサ比重測定器(筒井理化学機械(株)製)を用い、30ml容ステンレス製の筒に、サンプルを振動を与えないように入れて、余分なサンプルをスパーテルで取り除いた後、1mgの精度でサンプ重量を測定し、1mlあたりの重量に換算することで求めた。
【0021】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、実施例ならびに後に記載する比較例に使用した改質キトサンは表1−1、表1−2に示す方法で製造した。なお、キトサンの粘度は、キトサンを0.5w/v%/0.5%酢酸水溶液に溶解して、20℃の条件で、ビスメトロン粘度計VDA型(芝浦システム(株)製)を用いて測定した。また、粒度の測定は、以下の方法によって測定した。
使用機器:ミクロ型電磁振動ふるい器 M−2型(筒井理化学器械(株)製)
篩 :ステンレス製、7.5mmφふるい
ブロッキング防止剤:約5mmφのガラスビーズ
測定方法:
(1) 測定に使用する各篩にガラスビーズ約9gを乗せ、重量を0.001gの精度で測定する。
(2) 受け器の重量を0.001gの精度で測定する。
(3) メッシュが細かいふるいが下になる順番で重ねる。
(4) 一番上の篩に試料2.5gをのせて、蓋をしてメモリ8で10分間振動させる。
(5) 各篩及び受け器の重量を測定する。
(6) (5)の重量から(1)及び(2)の重量を差し引くことで、篩上の試料重量を求める。
かさ密度はカサ比重測定器(筒井理化学機械(株)製)を用い、30ml容ステンレス製の筒に、サンプルを振動を与えないように入れて、余分なサンプルをスパーテルで取り除いた後、1mgの精度でサンプル重量を測定し、1mlあたりの重量に換算することで求めた。
【0022】
【表1−1】


(注)*表中水投入量はキトサンに対する割合
【0023】
【表1−2】


(注)*表中水投入量はキトサンに対する割合
なお、表中、比較例3における粒子径500μm以下は、具体的には粒子径500〜200μmの範囲内で、平均粒子径が400μmのものを使用した。
【0024】
尚、表1−1及び表1−2において製造した改質キトサン(1)〜(6)、低密度キトサン、低粘度キトサン及び粗粒キトサンの調製は、ベニズワイガニの殻を原料とし、キチン、キトサン実験マニュアル(キチン、キトサン研究会編、技報堂出版、1991)に記載されている方法に準じて、上記の条件で粗キトサンを調製し、水洗後、ジェットミル等により粉砕して調製した。また、その際、塩酸処理温度を10〜50℃にすることで粘度の異なるキトサンを調製した。更にジェットミル等による粉砕を繰り返すことで、粒子径の異なるキトサンを調製した。さらに本発明の効果が発揮される改質処理として、粉砕したキトサンに水を適当量加え、コニカルドライアー等を用いて80℃で減圧乾燥し改質キトサンを調製した。
【0025】
(大麦若葉末の調製例)
背丈が約30〜40cmで刈り取った大麦の若葉を水洗いし、付着した泥などを除去した。この大麦若葉を、約10cm程度に切断し、その10kgを水100リットルに投入、浸漬し、90〜100℃にて3分間加熱(ブランチング処理)した。
【0026】
次いで、ブランチング処理した大麦若葉を、直ちに4℃の冷水にて1分間浸漬し、冷却した。続いて、冷却した大麦若葉を30秒間遠心分離して脱水した。脱水した大麦若葉を、水分量が5%以下となるように乾燥機中、60℃にて10時間温風乾燥した後、粉砕機によって、各粉末中の90重量%以上の粒子径が、180μm以下(大麦若葉末(1))、75μm以下(大麦若葉末(2))に粉砕し、ブランチング処理した大麦若葉末を得た。
また、大麦生若葉は、前記の大麦を刈り取った後、水洗いしたものを用いた。
なお、大麦若葉末の粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業社製)を用いて各粒度以下であることを確認した。
【実施例1】
【0027】
改質キトサン(1)10kgと大麦若葉末(2)30kgにメチルセルロース0.8kg、水10kgを加え、スピードニーダーで練合した後、60℃で5時間乾燥後、スピードミルで整粒し凝集沈殿が改善された本発明のキトサン含有緑葉組成物を得た。
【実施例2】
【0028】
改質キトサン(2)30gに大麦生若葉300gと水500ml、抹茶粉末10gを加えミキサーで粉砕し、凝集沈殿が改善された本発明のキトサン含有緑葉飲料を得た。
【実施例3】
【0029】
大麦若葉末(2)38kgにメチルセルロース1kg、水20kgを加え、スピードニーダーで練合した後、80℃で3時間乾燥後、スピードミルで整粒し大麦若葉顆粒を得た。更に、10kgに水10kgを加え、コニカルドライアーを用いて80℃で減圧乾燥し、改質キトサン(3)顆粒10kg得た。これら大麦若葉顆粒、キトサン顆粒をそれぞれ質量比で3:1に混合し沈殿が改善された本発明のキトサン含有緑葉組成物を得た。
【実施例4】
【0030】
改質キトサン(4)5kgと大麦若葉末(2)20kgに可溶性デンプン10kg、水30kgを加え、スピードニーダーで練合し、押し出し造粒機で造粒後、60℃で3時間減圧乾燥し凝集沈殿が改善された本発明のキトサン含有緑葉組成物を得た。
【実施例5】
【0031】
大麦若葉末(1)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散縣濁した。その後、改質キトサン(5)1.0gを添加して10秒間縣濁して本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【実施例6】
【0032】
大麦若葉末(1)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散縣濁した。その後、改質キトサン(6)1.0gを添加して10秒間縣濁して本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【実施例7】
【0033】
大麦若葉末(2)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、改質キトサン(5)1.0gを添加して10秒間懸濁して本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【実施例8】
【0034】
大麦若葉末(2)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、改質キトサン(6)1.0gを添加して10秒間懸濁して本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0035】
比較例1
大麦若葉末(1)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散縣濁した。その後、低密度キトサン1.0gを添加して10秒間縣濁して比較用のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0036】
比較例2
大麦若葉末(1)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散縣濁した。その後、低粘度キトサン1.0gを添加して10秒間縣濁して比較用のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0037】
比較例3
大麦若葉末(1)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散縣濁した。その後、粗粒キトサン1.0gを添加して10秒間縣濁して比較用のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0038】
比較例4
大麦若葉末(2)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、低密度キトサン1.0gを添加して10秒間懸濁して比較用のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0039】
比較例5
大麦若葉末(2)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、低粘度キトサン1.0gを添加して10秒間懸濁して比較用のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0040】
比較例6
大麦若葉末(2)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、粗粒キトサン1.0gを添加して10秒間懸濁して比較用のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を得た。
【0041】
試験例
実施例5、6、7、8及び比較例1〜6で得られたキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を用いて、沈殿発生時間を指標として凝集沈殿改善効果を評価した。各飲料は調製後直ちに静置した。そしてそれぞれの縣濁液の成分が凝集沈殿により分離し、澄明な層が5ml以上になる時間を測定した。測定結果を表2に示す。判定は、製品として流通した際、消費者が若葉飲料を飲み干す時間を考慮し10分以上凝集沈殿が生じないものを良好とし、凝集沈殿が生じ外観が損なわれたものを不良とした。
【0042】
表2 改質したキトサンの大麦若葉飲料添加時の凝集沈殿発生時間
【表2】

【0043】
表2の結果から明らかなように、密度が0.20〜0.90g/mlかつ粒子径が300μm〜5μmの粉砕キトサンに水を含浸させた後、キトサン粒子に運動を与えて乾燥したもの及び大麦若葉末の粒子径が300μm〜5μmであるキトサン含有大麦若葉飲料は沈殿発生時間が10分以上に改善されており、均質化された飲料が得られた。
【実施例9】
【0044】
実施例5の大麦若葉末(1)の代わりにアシタバの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を調整した。これを用いて、試験例1と同様にして凝集沈殿改善効果を評価した。本実施例のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)は沈殿発生時聞が10分以上に改善されており、均質化された飲料が得られた。
【実施例10】
【0045】
実施例9のアシタバの乾燥粉末の代わりに甘藷茎葉の乾燥粉末(粒子径が180μm以下)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を調製した。これを用いて、試験例1と同様にして凝集沈殿改善効果を評価したところ、沈殿発生時聞が10分以上に改善されており、均質化された飲料が得られた。
【実施例11】
【0046】
実施例9のアシタバの乾燥粉末の代わりにヨモギの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、本発明のキトサン含有緑葉組成物の水懸濁液(飲料)を調製した。これを用いて、試験例1と同様にして凝集沈殿改善効果を評価したところ、沈殿発生時聞が10分以上に改善されており、均質化された飲料が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩密度が0.20〜0.90g/mLであり、且つ粒子径が300μm以下のキトサン及び粒子径が300μm以下の緑葉末を含有することを特徴とする水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項2】
キトサンが、粉砕キトサンを含水させた後、キトサン粒子に運動を与えて乾燥して得られたものである請求項1に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項3】
キトサン含有緑葉組成物中のキトサン含有量が1〜80質量%である請求項1又は2に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項4】
キトサンの粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)が20〜400mPasである請求項1〜3のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項5】
飲料用である請求項1〜のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項6】
緑葉末が大麦若葉末である請求項1〜のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項7】
緑葉末がアシタバ茎葉末である請求項1〜のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項8】
緑葉末が甘藷の茎葉末である請求項1〜のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。
【請求項9】
用時溶解用の乾燥顆粒製剤又は粉末製剤である請求項1〜8のいずれか一項に記載の水懸濁用キトサン含有緑葉組成物。

【公開番号】特開2010−68814(P2010−68814A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1952(P2010−1952)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【分割の表示】特願2005−124265(P2005−124265)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(596015527)日本化薬フードテクノ株式会社 (6)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】