説明

凝集物及び当該凝集物を溶媒に分散してなる分散液

【課題】酸化グラフェンとカチオン性脂質との複合体の凝集物及び当該凝集物を溶媒に分散してなる分散液を提供する。
【解決手段】酸化グラフェンとカチオン性脂質との複合体の凝集物は、酸化グラフェンの水分散液とカチオン性脂質の水溶液とを反応させ、得られる沈殿物をろ過、乾燥して得られ、当該凝集物を、適当な手段で各種溶媒に分散させることにより、当該凝集物の分散液が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子とカチオン性脂質からなる凝集物、特に、酸化グラフェンと長鎖アルキル基を有するカチオン性脂質との複合体の凝集物及び当該凝集物を溶媒に分散してなる分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化黒鉛は黒鉛を特定の方法により酸化することで得られる黒鉛層間化合物の一種である。この酸化黒鉛は2次元的な基本層が積み重なった多層構造体であり、一般に層数の非常に多いものが知られている。さらに、単層レベルまで薄層化された酸化黒鉛も作られており(例えば、非特許文献1参照)、本発明者らも先に、そのような酸化黒鉛の薄膜状粒子を高収率で製造する方法を見出している(特許文献1参照)。
【0003】
最近では、単層レベルまで薄層化された酸化黒鉛を酸化グラフェンと呼ぶことが多い。厳密には単層構造の酸化黒鉛を酸化グラフェンと定義すべきであるが、層数が10層以下(一般に知られている酸化黒鉛の層間距離0.83nm(層間に水を保持した場合)から換算すると平均厚み8.3nm程度)の酸化黒鉛も広義に酸化グラフェンとして扱われている。このようなことから、本発明における酸化グラフェンは厚みが10nm以下の酸化黒鉛を意味するものとする。
【0004】
酸化グラフェンは、加熱還元など簡便な還元処理により導電性を付与できるアスペクト比の高いナノ材料であり、透明導電膜など各種コーティング用途や導電インキなどの機能性材料に適用可能な材料として注目されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このように酸化グラフェンは優れた特性を有し、産業への応用も期待される材料であるが、酸化グラフェンは一般的に水分散液として得られるため、上記コーティング用途への展開の可能性を更に広げていくためには、酸化グラフェンの有機溶媒分散液が調製できることが望ましい。
【0006】
ところが、酸化グラフェンの有機溶媒分散液を調製する際には、以下に示す二点の問題がある。第一の問題点としては、酸化グラフェンはその形状がシート状のため、水分散液から水を留去して得られる粉末の酸化グラフェンは、面同士が強固に凝集しており、その溶媒への再分散が非常に困難であることが挙げられる。
【0007】
更に、第二の問題点としては、酸化グラフェンは表面に水酸基、エポキシ基、カルボキシル基など親水性の官能基を多数有しているため、水への分散性は優れるが、一方で有機溶媒にはほとんど分散しないことが挙げられる。
【0008】
ところで、酸化グラフェンの水溶媒を有機溶媒の分散液に溶媒置換する方法としては、水分散液に有機溶媒を添加して、沸点差を利用して水のみを留去するという方法が考えられるが、この手法では水より低沸点の有機溶媒に置換することができず、さらに単層酸化グラフェンは極性の低い有機溶媒には分散しないことから、溶媒置換に使用できる溶媒としては、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)のような高極性で高沸点の溶媒に限られる。
【0009】
一方で、中嶋らは、カーボンナノチューブの有機溶媒分散液を調製する方法として、カチオン性脂質のトリデシルメチルアンモニウムクロリドを用いた手法を開発している(例えば、特許文献3参照)。即ち、一旦カーボンナノチューブの水分散液を調製後、この水分散液にトリデシルメチルアンモニウムクロリドを添加してカーボンナノチューブと複合体を形成、凝集させ、この凝集物をろ別し、所望の有機溶媒に再分散させるという手法である。
【0010】
上記のように、カーボンナノチューブの場合は一旦その水分散液を調製する必要があるが、酸化グラフェンは通常水分散液として得られるため、本手法を酸化グラフェンに適用することができれば、プロセスが単純化され、プロセス的なメリットは大きい。
【0011】
これまでに、酸化グラフェン水分散液の有機溶媒への溶媒置換技術が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。酸化黒鉛の希アルカリ水分散液にカチオン性脂質としてオクタデシルトリメチルアンモニウムクロリドを添加して、凝集物を生成させ、この凝集物をクロロホルムなどの有機溶媒に分散させるという手法である。
【0012】
しかしながら、非特許文献2は多層酸化黒鉛層間化合物に関するものであり、酸化グラフェンと比較してアスペクト比が小さく薄層化が不十分で、重量の割に表面積が小さく、広がりに欠けるので、例えば、酸化グラフェンを透明導電膜等に用いた場合と同等の導電度を得るためには多量の多層酸化黒鉛層間化合物を使用しなければならず、透明導電膜等への用途展開は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−53313号公報
【特許文献2】特開2009−259716号公報
【特許文献3】特開2009‐13004号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】N. A. Kotov et al., Ultrathin Graphite Oxide-Polyelectrolyte Composites Prepared by Self-Assembly: Transition Between Conductive and Non-Conductive States, Adv. Mater., 8, 637 (1996)
【非特許文献2】Y. Matsuo, TANSO, No. 228, 209-214 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、導電性、透明性など有用な特性を発揮する酸化グラフェンの有機溶媒への分散性を改良した、酸化グラフェンを含む凝集物、及び該凝集物を溶媒に分散させた分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために、酸化グラフェンを他の化合物で修飾して有機溶媒への親和性を向上させる方法の確立を目指し、酸化グラフェンの端部に多数存在するとされているカルボキシル基の利用に着目して鋭意検討を重ねた。
【0017】
その結果、本発明者等は、カチオン性脂質と酸化グラフェンとで前記カルボキシル基を利用して複合体を形成させれば、この複合体は容易に有機溶媒に分散することを見出し、以下の発明を完成するに至った。
【0018】
即ち本発明は、以下の通りである。
(1)酸化グラフェンとカチオン性脂質とから得られる複合体が凝集してなる凝集物。
(2)5nm以下の厚みの酸化グラフェンを80%以上含有する前記(1)記載の凝集物。
(3)1.5nm以下の厚みの酸化グラフェンを60%以上含有する前記(1)記載の凝集物。
(4)カチオン性脂質がトリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、トリメチルデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクチルアンモニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド及びベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(3)記載の凝集物。
(5)カチオン性脂質がトリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド及びトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(4)記載の凝集物。
(6)酸化グラフェンの割合が20重量%から80重量%である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の凝集物。
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の凝集物を、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド及びジメチルスルフォキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散してなる分散液。
(8)溶媒がジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(7)の分散液。
(9)前記(5)記載の凝集物を、炭素数1〜3の飽和脂肪族アルコール及び炭素数3〜5のケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散してなる分散液。
(10)炭素数1〜3の飽和脂肪族アルコールがメタノールである前記(9)記載の分散液。
(11)炭素数3〜5のケトンがアセトン又はメチルエチルケトンである前記(9)記載の分散液。
(12)凝集物の占める割合が0.05重量%から5重量%である前記(7)〜(11)のいずれかに記載の分散液。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、酸化グラフェンを水以外の溶媒に均一に分散させることが可能となり、酸化グラフェンの幅広い用途への展開が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の「酸化グラフェン」においてはできるだけ厚みが薄いものほど有機溶媒に分散させたときの酸化グラフェン粒子のアスペクト比を大きくできるため望ましい。好ましくは、5nm以下の厚みの酸化グラフェンを80%以上含有しているもの、1.5nm以下の厚みの酸化グラフェンを60%以上含有するものであるとさらに好ましい。厚みの評価は原子間力顕微鏡を用いて次のような方法で行うことができる。希釈した酸化グラフェン粒子の水分散液を基板(マイカ)の上に滴下し、原子間力顕微鏡により重なりのない孤立した粒子を見つけ、原子間力顕微鏡で測定される基板と孤立粒子の高さの差が粒子の厚みとなる。粒子にしわが形成されている場合、しわの部分は厚さを反映していないので、しわのない部分と基板との高さの差で厚みを評価するようにする。吸着水の影響もあるため、厚みが1.5nm以下は酸化グラフェンの層数が1層と考えられる。
【0021】
本発明の凝集物のもととなる酸化グラフェンの原料には、層構造が発達した結晶性の高い黒鉛が望ましい。このような黒鉛は、各基本層が大きく、また隣接している2つの基本層の間を繋ぐシグマ結合の存在頻度が極めて低いために、酸化反応の後で薄膜状粒子に分離し易い。逆に、層構造が未発達で結晶性の低い黒鉛では、酸化は生じるが、層の分離が極めて悪い。より具体的には、粒子内部の最も面積が広い基本層の直径が粒子の直径にほぼ等しく、粒子全体で単一の多層構造を持つ黒鉛が望ましい。このような黒鉛として、天然黒鉛(特に良質なもの)、キッシュ黒鉛(特に高温で作られたもの)、高配向性熱分解黒鉛が知られている。天然黒鉛とキッシュ黒鉛の各基本層はほぼ単一の方位を持つ単独の結晶であり、高配向性熱分解黒鉛の各基本層は異なる方位を持つ多数の小さな結晶の集合体である。これらの黒鉛や、これらの黒鉛の層間を予め広げた膨張黒鉛を原料に用いるのが好ましい。
【0022】
黒鉛中の金属元素などの不純物は、予め約0.5%以下に除去されていることが望ましい。不純物が多いと、多層構造の分離が阻害される可能性がある。
【0023】
黒鉛の粒子径は、生成する酸化グラフェンの平面方向の大きさに反映されるため、合成したい酸化グラフェンの大きさで選択すればよく、数mmまたはそれ以上の広がりを持つ酸化グラフェンも本質的に合成可能である。ただし、粒子径が大きくなるにつれて、酸化に要する時間が長くなる。また、生成する酸化グラフェンの平面方向の形状を例えば正方形のように規定したい場合には、黒鉛原料の段階で予め正方形に切断しておいてもよい。ただし、切断の際には、結晶の方位を認識しておく必要がある。
【0024】
黒鉛の酸化には、公知のBrodie法(硝酸、塩素酸カリウムを使用)、Staudenmaier法(硝酸、硫酸、塩素酸カリウムを使用)、Hummers−Offeman法(硫酸、硝酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムを使用)などを利用できる。これらのうち、特に酸化が進行するのはHummers−Offeman法(W.S.Hummerset al.,J.Am.Chem.Soc.,80,1339(1958);米国特許No.2798878(1957))であり、この酸化方法が特に推奨される。
【0025】
これらの黒鉛の酸化方法では、まず、酸化剤のイオンが黒鉛の層間に侵入し、層間化合物を生成する。その後、水を加えることで、層間化合物が加水分解されて、酸化黒鉛となる。これらの反応のうち、層間化合物の生成は、特に時間を要し、黒鉛の粒径に依存する。そのため、黒鉛の粒径により酸化剤と共存させる時間を変化させ、黒鉛粒子の内部にできるだけ酸化剤のイオンを侵入させておくことが望ましい。Hummers−Offeman法の場合には、20℃付近において、1時間当たり約10μm以上のイオンの侵入が認められたことから、黒鉛の粒径10μm当たりで少なくとも30分以上、できれば3時間以上の酸化時間で、黒鉛を酸化することが望ましい。
【0026】
以上の黒鉛の酸化方法では、反応液中に残存する酸化剤または酸化剤が分解されて生じるイオンやイオン由来の成分を除去して精製する必要がある。公知の酸化方法では、この精製を水やアルコールなどによる洗浄で行っている。本発明では、この精製段階において、反応液中または層間に残って層の分離を妨害する可能性のある成分をより積極的に除き、薄膜状粒子への分離を促進する。すなわち、液中に共存する分散媒以外の低分子や小さなイオンを可能な限り除くことで、酸化黒鉛の各層に存在する酸性の水酸基のイオン解離度を高め、イオン性の大型粒子と見なせる各層の間の静電的反発を強めることで、多層構造の分離を促進する。
【0027】
例えば酸化黒鉛の濃度約1重量%以下において、硫酸の濃度が約0.05重量%以下になると、多層構造の分離が急速に進行する。硫酸のイオン解離を1段までとして計算すると、反応液中の酸化黒鉛由来(酸化黒鉛のイオン解離で生じる水素イオンを含む)以外の小さなイオンの濃度は約10mol/m以下となる。そこで、この濃度以下となるように生成物を精製することが望ましく、一般にこの精製を進めるほど層の分離が進行する。具体的には、水を加えてから、小さなイオンと共に水を除く。用いる水は高純度のものが望ましい。
【0028】
他方、イオン性の大型粒子である各層の分離を進めるためには、精製時の液中の酸化黒鉛粒子の濃度を低くして、各層のイオン解離度を高めることも重要である。そこで、水を加えて粒子を均一に分散させた段階の酸化黒鉛の濃度を約5重量%以下、より望ましくは1重量%以下とする。
【0029】
Hummers−Offeman法では、通常、加水分解後に過酸化水素を加えて過マンガン酸イオンをマンガン(IV)イオンに分解してから水で洗浄して、他の硫酸イオンやカリウムイオンなどと共に除去する(W.S.Hummerset al.,J.Am.Chem.Soc.,80,1339(1958))。しかし、中性になるとマンガンイオンの溶解性が低下し、マンガンの水酸化物などとなって層間に残存する可能性がある。そこで、水による洗浄の前に、硫酸水溶液または硫酸と過酸化水素の混合水溶液で十分に洗浄することが望ましい。
【0030】
具体的な洗浄による精製操作には、デカンテーション、濾過、遠心分離、透析、イオン交換などの公知の手段を用いればよい。ここで、原料黒鉛の粒子径が小さいほど、また、層の分離が進んで酸化グラフェンが増えるほど、さらには、小さなイオンなどの除去が進むにつれて、酸化グラフェンの単位体積当たりの電荷が増す。その結果、粒子間の反発が強くなり、また、分散媒を保持(水であれば水和)する程度も高くなるため、いずれの精製操作も困難になっていく。この場合、精製効率の比較的高い操作は遠心分離、透析、イオン交換であり、特に比較的短時間で精製可能な操作は遠心分離である。他方、デカンテーションやろ過は、沈降が遅いことや酸化グラフェンによる閉塞により、酸化グラフェンの直径が小さくなるほど困難となる。なお、粒子間の反発を一時的に低下させるために、誘電率の低い他の溶媒の使用や塩析などを適宜組み合わせてもよい。
【0031】
精製時において、多層構造の分離は自発的に生じる。これに加えて、小さなイオンと共に水を除いた後で、再度水を加えて均一の分散液とする際に、振とうなどの撹拌操作が加わるため、分離がさらに促進される。また、超音波照射も利用可能であるが、層の分離と共に各層の基本構造が破壊されて小さくなる傾向があるため、特に小さな径の酸化グラフェンを生成したい場合に用いることが望ましい。
【0032】
以上のように精製することで、多くの粒子内部で層の分離が進むが、多層構造の分離が不十分な、薄膜状でない粒子もわずかに残存する。これは、原料中の不純物(分離困難な黒鉛や他の無機物)や、酸化時と精製時に混入した異物などである。これらは一般に沈降し易いため、精製時にデカンテーションや極めて緩やかな遠心分離で除くことが可能である。
【0033】
以上の操作で、多くの粒子内部で層の分離が進む。他方、分離していない層同士の部分でも分離の可能性が高まるが、大きな粒子であるために粒子内部の層間に水素結合などが数多く存在し、実質的には短時間での分離が困難になっている可能性がある。そこで、さらに層の分離を促進する方法としては、精製の終了した分散液を希釈してから、さらに分散媒の分子運動や酸化グラフェンの運動を強めることが考えられる。具体的には、分散液への超音波照射や加熱などがある。ただし、超音波照射では、前記のように層の分離と共に各層の基本構造が破壊されて小さくなる傾向がある。また、加熱では、イオン解離度が高まることも期待できるが、特に高温の場合に粒子が部分的に還元される可能性があるので、あまり高温にしないことが望ましい。具体的には50〜150℃が好ましい。
【0034】
さらに層の分離が進んだ酸化グラフェンを選択的に得るには、分散性の違いにより分別すればよい。例えば、デカンテーションや比較的緩やかな遠心分離を行い、非沈降部分を用いればよい。
【0035】
以上の各操作により、酸化グラフェンが水に分散した分散液を製造できるので、そのまま、或いは希釈してカチオン性脂質との複合体の凝集物の製造用原料として使用する。
【0036】
酸化グラフェンと凝集物を形成するカチオン性脂質は、アンモニウム基を有し、該カチオン性部位に、1〜4本の長鎖アルキル基(炭素数8〜18のアルキル基)が結合したものであり、本発明においては、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、トリメチルデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクチルアンモニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド及びベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン性脂質が好ましい。
【0037】
酸化グラフェンとカチオン性脂質との複合体の凝集物の分散液の製造に使用する溶媒との親和性を考慮すると、カチオン性脂質としてはトリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドがより好ましい。
【0038】
上述のカチオン性脂質の所定量を水に溶解させることにより作製する。水への溶解性の乏しいカチオン性脂質の場合には必要に応じて超音波を用いることも可能である。一般的な濃度は0.1重量%〜10重量%であるが、0.5重量%〜5重量%がより好ましい。
【0039】
前記酸化グラフェンの水分散液を水で所定の濃度に希釈する。酸化グラフェンの濃度は0.05重量%〜5重量%であるのが好ましい。
【0040】
カチオン性脂質は、水溶液中で二分子層(bilayer)を形成していると考えられる。この水溶液を酸化グラフェンの水分散液と混合することにより、酸化グラフェンのカルボキシルアニオン基とカチオン性脂質のカチオン性部位のイオン対が形成されて複合体が生成し、水分散液中では凝集物が形成される。この凝集物を必要に応じてろ過や遠心分離等の分離手段を用いてこの凝集物を回収する。凝集物中に占める酸化グラフェンの割合は、一般的には20重量%〜80重量%であるが、40重量%〜60重量%が好ましい。
【0041】
複合体の凝集物をデカンテーション、遠心分離等で適宜回収し、回収後の複合体の凝集物は温度40℃〜100℃の乾燥機で、1時間〜10時間乾燥する。
【0042】
得られた凝集物をジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド及びジメチルスルフォキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒、好ましくはジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散させることにより分散液が得られる。分散液中の複合体の割合は0.05重量%〜5重量%であることが好ましい。複合体の凝集物を分散液に分散させるための手段としては、凝集物の分散の難易度にもよるが、必要に応じて超音波を用いることも可能である。
【0043】
複合体の製造に使用するカチオン性脂質がトリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド及びトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である場合には、溶媒として、更に炭素数1〜3の飽和脂肪族アルコール及び炭素数3〜5のケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散させ、分散液を製造することも可能である。中でも炭素数1〜3の飽和脂肪族アルコールとしてはメタノールが好ましく、炭素数3〜5のケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。分散液中の凝集物の割合は0.05重量%〜5重量%であることが好ましい。上記と同様に、凝集物を分散液に分散させるための手段としては、凝集物の分散の難易度にもよるが、必要に応じて超音波を用いることも可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(酸化グラフェンの合成例)
エスイーシー社製天然黒鉛SNO−3(純度99.97重量%以上)10gを、硝酸ナトリウム(純度99%)7.5g、硫酸(純度96%)621g、過マンガン酸カリウム(純度99%)45gからなる混合液中に入れ、約20℃で5日間、緩やかに撹拌しながら放置した。得られた高粘度の液を、5重量%硫酸水溶液1000cmに約1時間で撹拌しながら加えて、さらに2時間撹拌した。得られた液に過酸化水素(30重量%水溶液)30gを加えて、2時間撹拌した。
【0046】
この液を、3重量%硫酸/0.5重量%過酸化水素の混合水溶液を用いた遠心分離と水を用いた遠心分離とで精製して、平板状の酸化グラフェンの水分散液を得た。液の一部を40℃で真空乾燥させ、乾燥前後の重量変化を測定した結果から、液中の酸化グラフェンの固形分濃度は1.3重量%と算出された。また、40℃で真空乾燥させた酸化グラフェンの元素分析で、酸素は42重量%、水素は2重量%であった。
【0047】
(酸化グラフェンの厚さ測定)
水分散液の一部を水で希釈してからマイカの上に滴下して乾燥させ、重なりの無い30個の粒子について原子間力顕微鏡を使って酸化グラフェンの厚みを評価した。観測された厚みは3.5nm,4.5nm,5.5nm,2.4nm,2.7nm,1.5nm,4.3nm,4.2nm,3.6nm,2.7nm,6.3nm,2.2nm,4.5nm,4.6nm,2.3nm,3.7nm,3.5nm,4.2nm,7.5nm,3.4nm,3.7nm,1.8nm,3.3nm,4.3nm,3.6nm,2.7nm,6.6nm,2.5nm,4.8nm,4.3nmであり、5nm以下の粒子が26個で5nmよりも厚い粒子は4個であり、5nm以下の厚みの酸化グラフェンは87%含有されていた。観察した範囲で粒子径は0.1〜10μmであった。
【0048】
上記の1.3重量%酸化グラフェン水分散液を1.0重量%に濃度調整した分散液を以下、「分散液A」と呼ぶ。
【0049】
(実施例1)
トリメチルステアリルアンモニウムクロリド1重量%水溶液を5分間超音波照射し、透明溶液を得た。以下、この分散液を「分散液B」と呼ぶ。
分散液Aと分散液Bとを重量比1:1で混合し、室温で30分間撹拌すると、黒褐色の凝集物の生成が確認された。この凝集物をガラスフィルター(G3)でろ過した後、乾燥機に入れ60℃で5時間乾燥させた。FT-IRスペクトル測定およびラマンスペクトル測定により黒褐色の凝集物が酸化グラフェンとトリメチルステアリルアンモニウムクロリドの複合体であることを確認した。
【0050】
(実施例2)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルラウリルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルラウリルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0051】
(実施例3)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0052】
(実施例4)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルデシルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルデシルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0053】
(実施例5)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルオクチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルオクチルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0054】
(実施例6)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをベンゼトニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとベンゼトニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0055】
(実施例7)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをベンジルトリブチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとベンジルトリブチルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0056】
(実施例8)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0057】
(比較例1)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをテトラブチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例1と同様の操作を行ったが、ゲル状の物質が生成し、複合体の凝集物は得られなかった。
【0058】
(比較例2)
実施例1のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを塩化コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、複合体の凝集物を得た。
【0059】
(実施例9)
実施例1で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0060】
(実施例10)
実施例2で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0061】
(実施例11)
実施例3で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0062】
(実施例12)
実施例4で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0063】
(実施例13)
実施例5で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0064】
(実施例14)
実施例6で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0065】
(実施例15)
実施例7で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0066】
(実施例16)
実施例8で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0067】
(比較例3)
比較例2で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表1)。
【0068】
【表1】


○:分散している(凝集物なし) ×:分散していない(凝集物あり)
【0069】
分散液Aを40℃を超えないように冷却しながら超音波処理(出力600W、周波数20kHz)を10分間行い、分散液Cを調製した。液の一部を水で希釈してからマイカの上に滴下して乾燥させ、重なりの無い30個の粒子について原子間力顕微鏡により酸化グラフェンの厚みを評価した。確認された厚みは1.1nm,2.2nm,0.8nm,0.9nm,1.7nm,1.5nm,1.1nm,1.8nm,0.9nm,1.0nm,1.6nm,2.2nm,1.1nm,1.0nm,1.3nm,0.9nm,0.9nm,1.2nm,1.9nm,1.4nm,1.7nm,1.8nm,1.0nm,1.3nm,1.1nm,0.8nm,2.0nm,1.4nm,1.8nm,1.3nmであり、厚さ1.5nm以下の粒子が20個で1.5nmよりも厚い粒子は10個であり、1.5nm以下の厚みの酸化グラフェンは67%含有されていた。観察した範囲で粒子径は0.1〜5μmであった。
【0070】
(実施例17)
実施例1の分散液Aを分散液Cに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルステアリルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0071】
(実施例18)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルラウリルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルラウリルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0072】
(実施例19)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドの複合体をの凝集物を得た。
【0073】
(実施例20)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルデシルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルデシルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0074】
(実施例21)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをトリメチルオクチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとトリメチルオクチルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0075】
(実施例22)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをベンゼトニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとベンゼトニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0076】
(実施例23)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをベンジルトリブチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとベンジルトリブチルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0077】
(実施例24)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、酸化グラフェンとベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドの複合体の凝集物を得た。
【0078】
(比較例4)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドをテトラブチルアンモニウムクロリドに変更した以外は実施例17と同様の操作を行ったが、ゲル状の物質が生成し、複合体の凝集物は得られなかった。
【0079】
(比較例5)
実施例17のトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを塩化コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)に変更した以外は実施例17と同様の操作を行い、複合体の凝集物を得た。
【0080】
(実施例25)
実施例17で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0081】
(実施例26)
実施例18で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0082】
(実施例27)
実施例19で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0083】
(実施例28)
実施例20で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0084】
(実施例29)
実施例21で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0085】
(実施例30)
実施例22で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0086】
(実施例31)
実施例23で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0087】
(実施例32)
実施例24で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0088】
(比較例6)
比較例5で得られた複合体の凝集物に濃度が0.1重量%となるように有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール(MeOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はN-メチルピロリドン(NMP))を加え、25℃で1時間超音波処理(出力200W、周波数35kHz)して調製した分散液の分散性を目視で評価した(表2)。
【0089】
【表2】


○:分散している(凝集物なし) ×:分散していない(凝集物あり)
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によって得られる酸化グラフェンとカチオン性脂質からなる複合体の凝集物は、種々の有機溶媒に分散可能であり、透明導電膜など各種コーティング用途や導電インキなどの機能性材料への応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化グラフェンとカチオン性脂質とから得られる複合体が凝集してなる凝集物。
【請求項2】
5nm以下の厚みの酸化グラフェンを80%以上含有する請求項1記載の凝集物。
【請求項3】
1.5nm以下の厚みの酸化グラフェンを60%以上含有する請求項1記載の凝集物。
【請求項4】
カチオン性脂質がトリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、トリメチルデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクチルアンモニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド及びベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の凝集物。
【請求項5】
カチオン性脂質がトリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド及びトリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の凝集物。
【請求項6】
酸化グラフェンを20重量%から80重量%含有する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の凝集物。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の凝集物を、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド及びジメチルスルフォキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散してなる分散液。
【請求項8】
溶媒がジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7記載の分散液。
【請求項9】
請求項5記載の凝集物を、炭素数1〜3の飽和脂肪族アルコール及び炭素数3〜5のケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散してなる分散液。
【請求項10】
炭素数1〜3の飽和脂肪族アルコールがメタノールである請求項9記載の分散液。
【請求項11】
炭素数3〜5のケトンがアセトン又はメチルエチルケトンである請求項9記載の分散液。
【請求項12】
凝集物を0.05重量%から5重量%含有する請求項7〜請求項11のいずれかに記載の分散液。

【公開番号】特開2012−153590(P2012−153590A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16557(P2011−16557)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】