説明

処理されたアルミナ水和物粒子状材料およびその粒子状材料の用途

【課題】分散性のある粒子状材料を提供する。
【解決手段】アルミナ水和物懸濁液に、酸化された金属アニオンを含有した無機塩を添加し、更に酸性化剤を添加することにより、金属酸化物層をアルミナ水和物粒子上に沈殿させた金属酸化物被覆アルミナ水和物を含んで成る粒子状材料である。この粒子状材料は少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、処理されたアルミナ水和物粒子状材料およびその粒子状材料の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子状材料は、複合材料を生成するために、通常、ポリマー材料と混合される。たとえば、熱的に安定で高強度のポリマー複合体を生成するために、熱硬化性樹脂のポリマーとそのような無機粒子状材料を混合することができる。別の例では、強化エラストマー複合体を生成するために、硬化性エラストマー樹脂とそのような無機粒子状材料を混合することができる。
【0003】
したがって、無機粒子状材料は、フィラーとして使用され、そして、補強材、着色剤または放射吸収材としての機能を果たすことができる。たとえば、ジルコニアおよびチタニアは、通常、白色化剤および紫外線吸収材として使用される。別の例では、カーボンブラックは、主として紫外線に耐える濃い色の複合体を生成するために使用される。特定の例では、無機粒子状材料は、タイヤを製造するためのエラストマー複合体に使用される。カーボンブラックに加えて、沈降シリカが、転がり抵抗を低くするために、たとえば、ガソリン消費および湿式面力を減少させるためにしばしば使用される。
【0004】
燃料消費を減少させるために、タイヤ生産者は、低い転がり抵抗をともなったタイヤを得るための試みを行ってきた。さらに、タイヤ製造業者は、濡れた状態および乾いた状態の両方で改良されたグリップおよび耐摩耗性を望んできた。したがって、製造業者は、共役ジエン共重合体および芳香族ビニル化合物の熱−機械的作用によって得られ、および特別高分散性沈降シリカを使用して強化された硫黄−加硫ジエンゴム組成物へ一般的に移ってきている。球形1次粒子の高分散性沈降シリカが作製され、それは、相互に凝集している。これらの1次粒子は概して低アスペクト比を有し、一般に約1である。
【0005】
いわゆる「グリーンタイヤ」は、欧州およびより最近では北米の乗用車市場で著しい商業的成功を収めてきている。しかし、トラック向けのグリーンタイヤの開発は、主にカーボンブラックを使用して強化された従来のトラックタイヤよりも耐磨耗性が低いために、より難しくなっている。
【0006】
アルミナ材料に変える場合、ベーマイト材料と高分子マトリックスとの間の高表面適合性のために、ナノ−ベーマイト粒子をナイロン重合体マトリックスの中に容易に分散させることができる。しかし、タイヤ調合物向けのジエンゴム組成物のような非極性マトリックスにナノ−ベーマイト粒子を分散させることは困難である。たいてい、ナノ−ベーマイト粒子のアスペクト比が高くなると、ゴムに分散させることがより困難になる。
【0007】
非極性重合体における高アスペクト比の無機ナノ−粒子の分散を改良するために、たくさんの解決策が提案されてきた。たとえば、重合体により適合させるために、粒子の表面の化学的性質を変更する有機表面処理剤が提案されてきている。そのようなアプローチは、たとえば、第四級アンモニウムを有機表面処理剤として使用してナイロンまたはポリプロピレンにナノ−粘土を分散させるために使用されてきた。しかし、有機剤を使用した場合であっても、特にフィラーの充填が高い(体積当たり10%を超える)場合、そのような無機微粒子の所望の分散に達することが難しい場合が多い。さらに、タイヤ調合物の場合、有機表面処理は望ましくない。たとえば、合成工程の間、強化フィラーの表面が多硫化シランカップリング剤と反応するのは望ましいかもしれないが、その後、有機表面処理剤によって不動態化することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、分散性のあるフィラーおよびそれらの生成された複合材料が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の態様では、粒子状材料はアルミナ水和物を含む。該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0010】
別の態様では、粒子状材料は、金属酸化物被覆アルミナ水和物を含む。該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0011】
さらに別の態様では、粒子状材料はアルミナ水和物を含む。該粒子状材料は、少なくとも約3.0の累積細孔体積比を有する。
【0012】
さらにつけ加えた態様では、粒子状材料はアルミナ水和物を含む。該粒子状材料は、少なくとも約3.0cc/ccのHg累積細孔体積指数を有する。
【0013】
別の例示的態様では、粒子状材料は種晶添加アルミナ水和物を含む。該粒子状材料は、約5以下の等電点を有する。
【0014】
さらに例示的態様では、粒子状材料を作製する方法は、アルミナ水和物懸濁液に酸化された金属アニオンを含有した無機塩を添加する工程を含む。該方法は、アルミナ水和物懸濁液に酸性化剤を添加する工程をさらに含み、それにより、金属酸化物層が、アルミナ水和物懸濁液のアルミナ水和物粒子上に沈殿し、粒子状金属を生成する。
【0015】
さらに別の例示的態様では、粒子状材料を作製する方法は、アルミナ水和物に無機ケイ酸塩を添加する工程を含む。その方法は、アルミナ水和物懸濁液に酸性化剤を添加する工程と、アルミナ水和物懸濁液のアルミナ水和物粒子上にシリカ層を沈殿するように反応させ、前記粒子状材料を生成する工程とをさらに含む。
【0016】
別の好ましい態様では、粒子状材料は遷移アルミナを含む。該粒子状材料は、少なくとも約3.0cc/ccのHg累積細孔体積指数を有する。
【0017】
さらに別の例示的態様では、粒子状材料は遷移アルミナを含む。該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0018】
さらにつけ加えた例示的態様では、粒子状材料はαアルミナを含む。該粒子状材料は、少なくとも約3.0cc/ccのHg累積細孔体積指数を有する。
【0019】
別の例示的態様では、粒子状材料はαアルミナを含む。該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0020】
さらに別の例示的態様では、触媒は、粒子状材料および粒子状材料の表面の触媒物質を含む。該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0021】
さらに例示的態様では、インクジェット用紙は、紙基体および該紙基体の少なくとも1方の側に配置された被覆材を含む。該被覆材は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する粒子状材料を含む。
【0022】
別の例示的態様では、複合材料は、重合体マトリックスおよび該重合体マトリックス内に分散された粒子状材料を含む。該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0023】
さらに、別の例示的態様では、複合材料は、重合体マトリックスおよび凝集体を含む。該凝集体は、少なくとも約3.0幾何学的アスペクト比をともなった粒子を含む。さらに、該凝集体は、少なくとも94%の分散指数を有する。
【0024】
別の例示的態様では、粒子状材料は、複合材料は凝集体を含む。該凝集体は、少なくとも約3.0の幾何学的アスペクト比をともなった粒子を含む。さらに、該凝集体は、少なくとも約94%の分散指数を有する。
【0025】
さらにつけ加えた例示的態様では、粒子状材料は、金属酸化物で被覆されたアルミナ水和物を含む。該粒子状材料は、少なくとも約90%の分散指数を有する。
【0026】
別の好ましい態様では、物品を製造する方法は、粒子状材料を重合体樹脂に混合する工程を含む。該粒子状材料はアルミナ水和物を含む。さらに、該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【0027】
さらにつけ加えた例示的態様では、複合材料は、シリコーンマトリックスおよび該シリコーンマトリックス内に分散された粒子状材料を含む。該粒子状材料はアルミナ水和物を含む。さらに、該粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特定の態様では、粒子状材料は、シリカ被覆アルミナ水和物などの処理されたアルミナ水和物を含む。1つの例では、粒子状材料は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比(固体を500psiで圧縮した場合の固体の体積に対する空気の体積の体積比)を有することができ、比較的高い空隙率および比較的高い圧縮強度を示す。さらに、粒子状材料は、約3.0cc/ccのHg累積細孔体積指数(粒子状材料の特定の密度で乗算された、10nmと1000nmとの間の範囲の細孔サイズの空隙率)を有することができる。特定の態様では、粒子状材料は、アルミナ水和物がベーマイトを含み、およびシリカ被覆材が粒子状材料の重量で約10%〜約50%を構成するところのアルミナ水和物を含む。
【0029】
例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料を製造する方法は、アルミナ水和物微粒子の存在下で、無機塩溶液(ケイ酸ナトリウムまたはタングステン酸ナトリウムなど)を酸性化剤と反応させ、その後、アルミナ水和物微粒子上に金属酸化物層を沈殿させて金属酸化物被覆アルミナ水和物材料を生成する工程を含む。さらに、前記方法は、過剰の塩を除去するために金属酸化物被覆アルミナ水和物材料を洗浄する工程と、乾燥粒子状材料を得るために金属酸化物被覆アルミナ水和物材料を乾燥する工程とを含むことができる。金属酸化物被覆アルミナ水和物の被覆材を生成する金属酸化物は、約6.0以下の等電位点を有することができる。別の態様では、金属酸化物の被覆の前に粒子の凝集の制御をよりよく行うために、無機塩溶液の添加の前にアルミナ水和物粒子の溶液にクエン酸などの添加剤を添加してアルミナ水和物粒子の等電位点を低くする。
【0030】
さらにつけ加えた例示的態様では、複合材料は、重合体マトリックスおよびその重合体マトリックス内に分散された金属酸化物被覆アルミナ水和物を含む。金属酸化物被覆アルミナ水和物は、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比、または少なくとも約3.0cc/ccのHg累積細孔体積指数を有することができ、比較的高い空隙率および比較的高い圧縮強度を示す。
【0031】
追加の例示的態様では、物品を作製する方法は、粒子状材料を重合体樹脂と混合する工程を含む。粒子状材料は、金属酸化物被覆アルミナ水和物を含む。さらに、その方法は、カップリング剤をその重合体と混合する工程を含むことができる。あるいは、その方法は、カップリング剤を使用して粒子状材料を前処理する工程を含むことができる。さらにその方法は、重合体樹脂を成形する工程および重合体樹脂を硬化させる工程を含むことができる。
【0032】
アルミナ水和物微粒子
一般に、アルミナ水和物微粒子は、不純物を除いて、一般式、Al(OH)ab(式中、0≦a≦3、b=(3−a)/2)にしたがう水和されたアルミナを含む。特定の態様では、1≦a≦2である。例として、a=0の場合、その一般式は、アルミナ(Al23)に対応する。一般に、アルミナ水和物粒子状材料は、重量で約1%〜約38%の水含有量、たとえば、重量で約15%〜約38%などの水含有量を有する。
【0033】
特に、アルミナ水和物微粒子は、ギブサイト、バイヤーライトもしくはボーキサイトとして通常知られている鉱物の形態で、ATH(アルミニウム三水酸化物)などの水酸化アルミニウムを含むことができ、または、ベーマイトとも呼ばれているアルミナ一水和物を含むことができる。そのような鉱物形態のアルミナ水和物は、微粒子を生成するのに役立つアルミナ水和物粒子状材料を生成することができ、または、以下に詳述される種晶添加水熱処理などの次の工程のための、アルミナの前駆体として使用することができる。
【0034】
特にアルミナ水和物粒子の形態に関して、針状、楕円状、小板状粒子などの異なる形態が利用できる。たとえば、もっとも長い寸法対もっとも長い寸法と直角をなす2番目に長い寸法の比として決定される1次アルペクト比、および2番目に長い寸法対2番目に長い寸法と直角をなす3番目に長い寸法の比として決定される2次アルペクト比に関して、針状の形態を有する粒子をさらに特徴付けることができる。針状形状の1次アスペクト比は、通常、2:1よりも大きく、好ましくは3:1よりも大きく、そしてより好ましくは6:1以上である。2次アルペクト比は、通常もっとも長い寸法と直角をなす平面での粒子の断面形状の特徴を述べる。針状形状の粒子の2次アスペクト比は、通常約3:1以下、一般に約2:1以下、または1.5:1以下であり、約1:1であることもよくある。
【0035】
別の態様によれば、アルミナ水和物粒子を、一般に伸長された形状である板状または小板状粒子にすることができる。しかし、小板状粒子は一般に対向する主要表面を有し、対向する主要表面は一般に平らで、および一般に相互に平行である。さらに、針状粒子の2次アスペクト比よりも大きな2次アスペクト比、一般に少なくとも約3:1、たとえば、少なくとも約6:1など、または、少なくとも約10:1を有するとして、小板状粒子を特徴付けることができる。主要表面または面と直角をなす、一般にもっとも短い寸法もしくは縁の寸法は、一般に50ナノメーターよりも小さく、たとえば、約40ナノメーターより小さく、または約30ナノメーターよりも小さい。
【0036】
別の態様によれば、小板状粒子の集合体は、針状粒子に関して上述した1次アスペクト比を有する、一般に伸長した楕円構造を生成する。さらに、約2:1以下の、約1.5:1以下の、または約1:1の2次アスペクト比を有するとして、楕円状集合体を特徴付けることができる。
【0037】
一態様によれば、アルミナ水和物粒子は、もっとも長い寸法の、直角をなし、より短い2つの寸法の積の平方根に対する比として決定される幾何学的アスペクト比、通常少なくとも約3.0、特に、少なくとも4.5、たとえば、少なくとも6.0、を有する。一般に、針状粒子は、同等の大きさの小板状粒子および楕円状粒子に比べて高い幾何学的アスペクト比を有する。
【0038】
アルミナ水和物粒子状材料の形態を粒径そして、とりわけ平均粒径によってさらに決定することができる。本明細書で使用されているように、「平均粒径」は、アルミナ水和物粒子のもっとも長い寸法の、または長さの寸法の平均を示すために使用される。一般に平均粒径は、約1000ナノメーター以下であり、たとえば、約30〜約1000ナノメーターである。たとえば、平均粒径を、約800ナノメーター以下にすることができ、約500ナノメーター以下にすることができ、約300ナノメーター以下にすることができる。細かい粒子状材料の状況では、態様は、250ナノメーター以下、たとえば、225ナノメーター以下の平均粒径を有する。ある態様の工程の制約のために、もっとも小さい平均粒径は、一般に少なくとも約30ナノメーターであり、たとえば、少なくとも約50ナノメーターであり、または少なくとも約100ナノメーターである。特に、平均粒径を約30〜約1000ナノメーターにすることができ、たとえば、約50〜約250ナノメーターにすることができ、または100ナノメーターから約200ナノメーターにすることができる。
【0039】
キャラクタリゼーション技法は、粒子は球状またはほぼ球状であるという仮定に一般に基づいているので、粒子の伸長された形態のために、従来のキャラクタリゼーション技法は、平均粒径を測定するのに一般に不適当である。したがって、複数の代表試料を取り出し、代表試料に基づく粒径を物理的に測定することによって、平均粒径を決定する。走査型電子顕微鏡(SEM)などの様々なキャラクタリゼーション技法によってそのような試料を調べることができる。平均粒径の用語は、また、分散の形態、凝集体の形態または凝集塊の形態にかかわらず、個々を同定できる粒子に関連する1次粒子径を示す。凝集体の用語は、1次粒子の群を示し、それらは相互に強く結合しており、凝集塊の用語は、凝集体の群を示し、それらは相互に弱く結合している。一般に、凝集する前に1次粒子の大きさを測定することは容易である。通常、凝集体および凝集塊は、比較的大きな平均粒径を有する。たとえば、凝集体は約250〜約2000nm、たとえば、約300〜1000nm、または、さらに約300〜約600nmの平均粒径を有することができる。別の例では、凝集塊は、約2000nmよりも大きな、たとえば、約10ミクロンよりも大きな、さらに100ミクロンほどの大きさを有することができる。
【0040】
特定の態様では、一般式Al(OH)ab(式中、0≦a≦3、b=(3−a)/2)で、aが約1の場合、アルミナ水和物材料はベーマイトに対応する。さらに、一般に、本明細書では、「ベーマイト」の用語は、ベーマイト鉱物を含有し、通常、はAl23・H2Oであり、そして、擬ベーマイトと同様に15重量%オーダーの水含有量を有し、もしくは、15重量%よりも大きな、たとえば、20〜38重量%の水含有量を有するアルミナ水和物を示すために使用される。たとえば、「ベーマイト」の用語は、15〜38重量%の水含有量、たとえば、15〜30重量%の水含有量を有するアルミナ水和物を示すために使用されるであろう。ベーマイト(擬ベーマイトを含む)は特定のおよび同定できる結晶構造を有し、したがって、特有のX線回折パターンなどで、他の水和されたアルミナを含む他のアルミナ材料から識別されることを特筆する。
【0041】
種晶添加処理過程を経てアルミナ前駆体などのアルミナ鉱物を処理することによってベーマイトを得ることができ、望ましい形態および粒子特性が提供される。種晶添加処理を経て生成されたアルミナ水和物粒子は、以下に記述するように、処理されたアルミナ水和物の凝集塊の生成に特に適する。そのような種晶添加処理は、有利なことに、望ましい粒子形態を提供し、そして、そのような処理によって生成された粒子は、粒子が生成されたその場の溶液などの溶液から粒子を除去することなく次の処理を行うことができる。
【0042】
種晶添加アルミナ粒子状材料が製造される工程の詳細に向けると、概して、ギブサイトおよびバイヤーライトなどの、ボーキサイトの鉱物を含むアルミナ材料の前駆体は、共有特許である米国特許第4,797,139号明細書に一般に記載されている水熱処理を受ける。さらに具体的に言えば、懸濁液中で前駆体および種結晶(所望の結晶相および組成を有する。たとえば、ベーマイト種結晶。)を混合し、原材料の種結晶組成への転換を起こさせるために、その懸濁液(あるいは、ゾルまたはスラリー)に熱処理を受けさせることによって粒子状材料を生成することができる(ベーマイトの場合)。種結晶は、前駆体の結晶転換および結晶成長のための型を提供する。加熱は、一般に、処理の間、高圧が発生するような自発環境下、すなわち、圧力がまの中で行われる、懸濁液のpHは、7未満または8より大きな値から一般に選択され、ベーマイト種結晶材料は、約0.5ミクロンよりも細かい、好ましくは100nm未満、そしてさらにより好ましくは10nm未満の粒径を有する。種結晶が固まっているような場合、種結晶の粒径とは、種結晶の1次粒子径を言う。一般に、種結晶粒子は、ベーマイト前駆体の約1重量%よりも大きな、一般的には少なくとも2重量%、たとえば、2〜40重量%、より一般的には5〜15重量%の量で存在する(Al23として計算して)。前駆体材料は、一般的には60%〜98%の、好ましくは85%〜95%のパーセント固体含有量で添加される。あるいは、固体材料の全添加は、約10%〜約50%であり、たとえば、約15%〜約30%である。
【0043】
加熱は、約100℃よりも高い、たとえば、約120℃よりも高い、または、さらに130℃よりも高い温度で行われる。一態様では、処理温度は150℃よりも高い。通常、処理温度は、約300℃よりも低く、たとえば、約250℃未満である。処理は、一般に、高圧の、たとえば、約1×105〜8.5×106ニュートン/m2の圧力がまの中で行われる。一例では、圧力は、自発的に発生し、だいたい約2×105ニュートン/m2である。
【0044】
比較的純粋なボーキサイトなどの前駆体材料の場合、その材料は、源ボーキサイトの採掘工程から残っているケイ素およびチタンの水酸化物ならびに残りの不純物などの不純物を水で洗い流すために、脱イオン水を使用した水洗などの洗浄が行われる。
【0045】
比較的低い種結晶量および酸性のpHと組み合わされた延長された水熱状態で、粒子状アルミナ材料を製造することができ、結果として1軸または2軸に沿ったベーマイトの好ましい成長が起こる。さらにより長いおよびより高アルペクト比のベーマイト粒子をまたはより大きな粒子を生成するために、一般により長時間の水熱処理を利用することができる。時間の期間は、通常、約1〜24時間の範囲の時間、好ましくは1〜3時間に及ぶ。
【0046】
熱処理および結晶の転換に続いて、液体内容物は、好ましくは、凍結乾燥、スプレー式乾燥または余分な凝集を防止するその他の技法などの、水を排除する際のベーマイトの粒子の凝集を制限する工程を経て一般に除去される。ある状態では、水を除去するために限外ろ過処理または熱処理を使用してもよい。その後、必要ならば、結果物の集合体を、たとえば100メッシュまで粉砕することができる。本明細書で記載されている微粒子の大きさは、ある態様で残っているかもしれない凝集体または凝集塊よりはむしろ、一般に、処理を経て生成された1つの結晶子を表すことを特筆する。
【0047】
あるいは、粒子状アルミナ材料は、懸濁液の中に保存することができ、コロイド状の懸濁液を生成する。たとえば、粒子状アルミナ材料を、その場生成のゾルの中で保存することができる。別の例では、粒子状アルミナ材料が懸濁している液体内容物を、洗浄、液体−液体交換、またはアルミナ材料がコロイド状懸濁液に結果として残る他の分離技法を経て入れ替えることができる。特に、そのようなコロイド状に懸濁された粒子状アルミナ材料は、さらに処理される場合に有利な点を提供する。
【0048】
望ましい形態をもたらすための粒子状材料の処理の間に、変数のいくらかを変更することができる。これらの変数は、重量比、すなわち、前駆体(すなわち、供給源材料)の種結晶に対する比、処理の間に使用される酸もしくは塩基の、特定の種類もしくは化学種(ならびに相対的なpH)、および系の温度(自発水熱環境下で圧力に直接比例する。)を特に含む。
【0049】
特に、他の変数を一定に維持している間に重量比が変更される場合、ベーマイト粒子状材料を生成する粒子の形状および大きさは変更される。たとえば、処理が、180℃で2時間、2重量%の硝酸溶液で行われる場合、90:10、ATH:ベーマイト比(前駆体:種結晶の比)は、針状粒子(ATHはベーマイト前駆体の化学種)を生成する。それに比べて、ATH:ベーマイト種結晶比が80:20の値まで減少した場合、粒子はより楕円状になる。なおいっそうさらに、その比が60:40までさらに減少する場合、その粒子は、ほぼ球状になる。したがって、もっとも典型的なベーマイト前駆体対ベーマイト種結晶は、約60:40以上、たとえば、70:30または80:20以上である。しかし、望まれている細かい微粒子の形態を促進するために適切な種晶添加のレベルを確実にするため、ベーマイト前駆体対ベーマイト種結晶の重量比は、一般に約98:2以下である。上述に基づくと、重量比が増加すると、一般にアスペクト比も増加する。一方、重量比が低下すると、一般にアスペクト比も減少する。
【0050】
さらに、他の変数を一定に維持している間に、酸または塩基の種類を変更した場合、粒子の形状(たとえば、アスペクト比)および大きさが影響を受ける。たとえば、180℃で2時間、90:10のATH:ベーマイト種結晶比で2重量%の硝酸溶液で処理が行われる場合、合成された粒子は、一般に針状である。これに比べて、1重量%またはそれ未満のHClでその酸を置き換えた場合、合成された粒子は、一般にほぼ球状になる。1重量%のギ酸では、合成された粒子は小板状になる。さらに、1重量%KOHなどの塩基性の溶液を使用すると、合成された粒子は小板状になる。1重量%KOHおよび0.7重量%硝酸などの酸および塩基の混合物を使用した場合、合成された粒子の形態は小板状になる。注目すべきことに、酸および塩基の上記の重量%の値は、それぞれの固体懸濁液またはスラリーのみの固体含有量に基づき、スラリーの全重量に基づかない。
【0051】
好適な酸および塩基は、硝酸などの無機酸、ギ酸などの有機酸、塩酸などのハロゲン酸ならびに硝酸アルミニウムおよび硫酸マグネシウムなどの酸性塩を含む。有効な塩基は、たとえば、アンモニアを含むアミン、水酸化カリウムなどのアルカリ水酸化物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類水酸化物および塩基性塩を含む。
【0052】
なおいっそうさらに、他の変数を一定に維持しながら温度が変更された場合、概して、粒径において変化が明らかにされる。たとえば、90:10のATH:ベーマイト種結晶の比で、2重量%の硝酸溶液の中で、150℃で2時間、処理が行われる場合、XRD(X線回折キャラクタリゼーション)からの結晶の大きさは115オングストロームであることがわかった。しかし、160℃では、結晶の大きさは143オングストロームであることがわかった。したがって、温度が増加すると、平均粒径もまた増加し、平均粒径と温度との間の直接的な比例関係を表す。
【0053】
本明細書に記載された態様によれば、望ましい形態を粒子状材料にうまく処理するために、比較的有力でおよび柔軟な工程方法を使用することができる。特に重要なことに、本態様は、種晶添加処理を利用し、結果として、費用効率のよい、望ましい細かい平均粒径ならびに制御された粒径分布を結果として生ずる工程制御の高い度合いをともなった処理ルートになる。(i)重量比、酸および塩基の化学種および温度などの工程方法における重要な変数を認定して制御すること、(ii)種晶添加ベースの技法、の組み合わせは、特に重要であり、繰り返すことが可能で制御可能な、望ましい粒子状材料形態の処理を提供する。
【0054】
種晶添加アルミナ粒子状材料の状況で、種晶添加処理過程が特別に重要である。なぜならば、種晶添加粒子材料を生成するための種晶添加処理が、しっかり制御された(最終生成物において大部分維持されている)前駆体の形態を可能にするのみならず、種晶添加処理ルートによって、従来の非−種晶添加処理過程によって生成された粒子材料と合成的、形態的および結晶的に異なる点を含む最終生成物における望ましい物理的性質が現れると信じられているからである。
【0055】
追加のキャラクタリゼーションの研究が、粒子の形態における種晶添加の効果をより正確に理解するために実行された。種晶添加粒子はノジュラー(nodular)構造を有し、その構造で、その粒子は「こぶだらけ」または「節だらけ」であり、一般に粗い外側の組織を有する。さらに、TEM分析によってキャラクタリゼーションを行うと、SEMによって一体的な粒子と一般に見えたものである粒子が、実際は、小板状粒子の堅く稠密な集合体で形成されていることを発見した。粒子は制御された凝集体の形態を有し、その中で、凝集体は従来の凝集体技法を超えた均一性のレベルを示す。制御された凝集体構造はノジュラー(nodular)構造を生成し、上記で議論した種晶添加アプローチが唯一無比であることが理解されるであろう。
【0056】
硝酸アルミニウムまた硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩の消費を経て原材料を分解するアプローチを含む非種晶添加アプローチが、粒子状材料を生成することがわかっていることが認められる。しかし、これらの金属塩分解アプローチは、種晶添加形態を欠いて、特にノジュラー(nodular)構造を欠いている形態的に全く異なった微粒子を生成する。典型的な非種晶添加形態は、滑らかな、または毛のような外側表面組織を有する。上記の非種晶添加アプローチの例は、米国特許第3108888号明細書、同第2915475号明細書、および特開2003−054941号公報に開示されているものを含む。
【0057】
処理されたアルミナ水和物微粒子
特定の態様では、アルミナ水和物微粒子を、無機被覆材を使用してアルミナ水和物微粒子を被覆するなど、さらに処理することができ、その結果、一般に被覆されたアルミナ水和物粒子の凝集塊になる。特に、金属酸化物などのセラミック酸化物を使用してアルミナ水和物微粒子を被覆することができる。たとえば、シリカ、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化モリブデンまたはそれらの組み合わせのいずれかなどの金属酸化物を使用してアルミナ水和物微粒子を被覆することができる。例示的態様では、約6.0以下の、たとえば、約5.0以下の、または約3.0以下の等電点を有する金属酸化物から金属酸化物を選択することができる。さらに、金属酸化物は塩基性前駆体を有することができ、たとえば、ナトリウムまたはカリウムの酸化された水可溶性アニオンを生成する金属を含む。さらに、金属酸化物は、実質的に水に不溶性でもよい。特定の態様では、コロイド状のアルミナ懸濁液を使用して被覆材を生成することができ、たとえば、種晶添加アルミナ材料を含む。例示的態様では、アルミナ水和物微粒子を、シリカを使用して被覆することができる。
【0058】
金属酸化物被覆アルミナ水和物を製造することができる工程に向けると、アルミナ水和物微粒子は、懸濁液(あるいは、ゾルまたはスラリー)の中で概して提供される。特に、アルミナ水和物微粒子は、たとえば、その場でアルミナ水和物微粒子が生成された溶液の一部に懸濁されているような懸濁液中の種晶添加アルミナ水和物微粒子である。懸濁液の全重量に基づいて約1wt%〜約10wt%のアルミナ水和物微粒子の懸濁液を生成するために、脱イオン水を使用して懸濁液を希釈することができる。もう1つの態様では、乾燥の形態でアルミナ水和物微粒子を提供することができ、少なくとも約20g/lのアルミナ水和物微粒子、たとえば、少なくとも約30g/lのアルミナ水和物微粒子、またはそれどころか少なくとも約40g/lのアルミナ水和物微粒子を有する懸濁液を生成するために、脱イオン水(di−H2O)を添加することができる。さらに、50℃以上に、たとえば約50℃と約99℃との間に、またはそれどころか約80℃と約90℃との間に、特に約80℃と約85℃との間に、懸濁液を加熱することができ、そして、低い速度で撹拌することができる。一般に結果として得られた検索液は、約6以下のpHを有する。
【0059】
任意選択的に、たとえば、アルミナ水和物粒子の等電点を下げるために、アルミナ水和物微粒子の表面を前処理することができる。例示的態様では、弱酸などの表面改質剤をアルミナ水和物懸濁液に添加することができる。たとえば、表面改質剤は、クエン酸またはダーヴァン(Darvan)C(アンモニウムポリメタクリラート、PMAA)を含むことができる。特に、表面改質剤は、アルミナ水和物粒子の等電点を約9.0未満に低下させることができる試薬である。たとえば、表面改質剤は、アルミナ水和物粒子の等電点を約6.0未満に、たとえば約5.0以下に低下させることができる。1つの態様では、アルミナ水和物微粒子の重量当たり1%と10%との間の量でアルミナ水和物懸濁液に表面改質剤を添加することができる。特に、表面改質剤を少しずつ添加することができる。たとえば、約55%の分配されたクエン酸をアルミナ水和物懸濁液に添加し、そして、確実にクエン酸がアルミナ水和物懸濁液によく分散されるように、たとえば少なくとも15分間、懸濁液を混合することができる。その後、残りのクエン酸を懸濁液に添加することができる。別の態様では、クエン酸を3〜5部に分けることができ、そして、1部ずつ添加することができ、それぞれの部が添加された後、少なくとも約5分間撹拌する。それぞれの場合で、懸濁液の粘度に適合させた速度で懸濁液を撹拌することができる。たとえば、粘度を低下させて、そして表面改質剤を分散させるために、より大きな速度で懸濁液を撹拌することができる。
【0060】
追加の例では、塩基、たとえば水酸化ナトリウムの添加を通じてなどで、無機塩を添加する前に、懸濁液のpHを増加させることができる。たとえば、少なくとも約5に、たとえば約5〜約7に、pHを調整することができる。
【0061】
シリカなどの金属酸化物の使用による被覆を促進するために、アルミナ水和物微粒子を被覆するために沈殿させた金属酸化物の量が、結果として処理されるアルミナ水和物材料の重量の約10〜約50%、約15〜約40重量%など、たとえば、約20〜約30重量%になるような、酸化金属アニオン(たとえば、無機ケイ酸塩)を含む無機塩の量を、懸濁液に添加することができる。例示的態様では、無機ケイ酸塩をケイ酸ナトリウム溶液で希釈することができる。あるいは、無機ケイ酸塩は、ケイ酸カリウムなどの第I族金属ケイ酸塩を含むことができる。たとえば、アルミナ水和物懸濁液のpHが、たとえば約6.0と8.0との間、たとえば、7.0と8.0との間に増加するまで、無機ケイ酸塩をゆっくり添加することができる。別の態様では、pHが約8.0と約10.0との間に、たとえば、約8.5と約9.5との間に増加するまで、無機ケイ酸塩を添加することができる。いったん、pHが所望の範囲に増加してしまうと、所望のpHを維持するために、硫酸などの酸性化剤とともに無機ケイ酸塩の残りを添加することができる。少なくとも10分間、たとえば少なくとも20分間、またはさらに約30分間、アルミナ水和物懸濁液を撹拌することができる。
【0062】
例示的態様では、約3.0〜約8.0、たとえば、約4.0〜約7.0、または約5.0〜約6.0の範囲にアルミナ水和物溶液のpHを低下させるために、酸性化剤を添加する。無機酸または有機酸などの酸に酸性化剤をすることができる。1つの例では、無機酸は、硫酸、塩化水素酸、硝酸、リン酸またはそれらの組み合わせのいずれかを含む。別の例では、有機酸はギ酸を含むことができる。特定の例では、酸性化剤を硫酸にすることができる。その工程の結果、処理されたアルミナ水和物材料は、被覆されたアルミナ水和物粒子の小さな凝集体を生成することができる。
【0063】
さらに、塩を除去するために、処理されたアルミナ水和物材料を任意選択的に洗浄することができる。たとえば、懸濁液を脱イオン水で希釈し、混合し、そして沈殿させることができる。上澄みを除去し、見積ったイオンの少なくとも約90%が除去されるまで、その工程(希釈、混合、上澄みの除去)を繰り返すことができる。別の例では、処理されたアルミナ水和物材料を遠心分離で洗浄することができ、または、イオン交換で処理することができる。
【0064】
例示的態様では、望ましくは、水の除去の際の処理されたアルミナ水和物材料の一層の凝集を制限する工程、たとえば、凍結乾燥、スプレードライまたは余分の凝集を防止するのに適合された他の技法を経て、液体内容物を大体除去する。ある状況では、水を除去するために限界ろ過処理または熱処理を使用してもよい。その後、必要ならば、結果物の集合体を、たとえば100メッシュまで粉砕することができる。
【0065】
処理されたアルミナ水和物材料をベーマイト形態で使用することが望ましいが、処理された材料のアルミナ水和物の部分の結晶構造を変えるために、その材料を熱処理することができる。例示的態様では、遷移相アルミナまたは遷移相の組み合わせへの転移が起こるのに十分な温度での仮焼で、処理されたアルミナ水和物材料を熱処理する。通常、約250℃よりも高いが1100℃よりも低い温度で、仮焼または熱処理を行うことができる。250℃未満の温度であると、もっとも低い温度の形態である遷移アルミナ、γアルミナへの転移が起こらないことになる。ある態様によれば、400℃を超える温度で、たとえば、約450℃以上温度で仮焼を行うことができる。最大仮焼温度を、1100℃未満または1050℃未満にすることができ、これらの高い方の温度になると、通常、遷移アルミナのもっとも高温の形態であるθ相アルミナがかなりの割合になる。
【0066】
1100℃よりも大きな温度では、通常、前駆体はα相へ変わることになる。未処理のベーマイト材料とは逆に、仮焼工程の間、アルミナの結晶成長を妨げることができる金属酸化物アモルファス被覆材の結果として、ナノ構造を失うことなく、金属酸化物被覆アルミナ水和物材料を高温で加熱することができる。
【0067】
別の態様では、処理されたアルミナ水和物材料を、かなりの含量のδアルミナを生成するために950℃より低い、たとえば、750℃と950℃との間の範囲内の温度で仮焼することができる。特定の態様によれば、主にγ相への転移を引き起こすために、約800℃未満、たとえば約775℃未満または750℃未満の温度で仮焼を行う。
【0068】
一態様によれば、処理されたアルミナ水和物材料は高い細孔体積を有する。HgポロシメトリーおよびBET法を含む様々な方法で細孔体積を測定することができる。Hgポリシメトリーは、DIN 66 133によって測定された。Hg累積細孔体積、約300nm未満の細孔の全体積を求めるために、Hgポロシメトリーの結果を使用することができる。例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料のHg累積細孔体積は、大体少なくとも約1.50cc/gであり、特に、少なくとも約1.65cc/gであり、たとえば、少なくとも約1.75cc/gである。
【0069】
さらに、Hg累積細孔体積指数を求めるために、Hgポロシメトリーの結果を使用することができる。Hg累積細孔体積指数は、粒子状材料の特定の密度(たとえば、HDシリカに関して2.1g/cc、アルミナ水和物に関して2.9g/cc、25wt%のシリカを使用して処理されたアルミナ水和物に関して2.7g/cc、15wt%のシリカを使用して処理されたアルミナ水和物に関して2.78g/cc)で乗算された、cc/gで測定された10nmと1000nmとの間の細孔の全体積である。例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料のHg累積細孔体積指数は、大体少なくとも約3.0cc/ccであり、特に少なくとも約4.0cc/ccであり、たとえば、少なくとも約6.0cc/ccであり、または、それどころか少なくとも約6.5cc/ccである。
【0070】
ISO 5794によって、BET細孔体積を測定することができる。BET累積細孔体積、約300nm未満の細孔の全体積を求めるために、BET細孔体積の結果を使用することができる。処理されたアルミナ水和物材料のBET累積細孔体積は、一般に少なくとも約0.3cc/gとすることができる。
【0071】
さらに、累積細孔体積比は、Hg累積細孔体積とBET累積細孔体積との間の比である。例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料の累積細孔体積比は、大体少なくとも約3.0であり、特に少なくとも4.0であり、たとえば、少なくとも約5.0である。
【0072】
さらに、ISO 5794によって、BET表面積を測定することができる。m2/ccの値を得るために、m2/gで測定されたBET表面積の値を、粒子状材料の特定の密度で乗算する。たとえば、処理されたアルミナ水和物材料のBET表面積は、大体少なくとも約150m2/ccであり、たとえば、少なくとも約300m2/ccである。
【0073】
さらに、空洞の体積で除算され、材料の密度(たとえば、HDシリカに関して2.1g/cc、アルミナ水和物に関して2.9g/cc、25wt%のシリカを使用して処理されたアルミナ水和物に関して2.7g/cc、15wt%のシリカを使用して処理されたアルミナ水和物に関して2.78g/cc)で再び除算された、圧縮しないで空洞を満たした凝集体のグラムの量として、圧縮前疎充填密度(LPD)を定義することができる。たとえば、処理されたアルミナ水和物材料のLPDを、大体約0.06cc/cc以下、そして、特に、約0.05cc/cc以下、たとえば、約0.04cc/cc以下にすることができる。別の態様では、処理されたアルミナ水和物材料を予備圧縮して、少なくとも約0.10cc/ccの、たとえば少なくとも約0.13cc/ccの圧縮後LPDに達するようにし、粒子状材料の輸送および取り扱いを容易にする。
【0074】
一態様によれば、処理されたアルミナ水和物材料は圧縮に対して高い抵抗力を有する。例示的試験では、材料は空洞の中に配置され、そして圧縮される。材料の重さ(g)を測定し、そして材料の密度(たとえば、HDシリカに関して2.1g/cc、アルミナ水和物に関して2.9g/cc、25wt%のシリカを使用して処理されたアルミナ水和物に関して2.7g/cc、15wt%のシリカを使用して処理されたアルミナ水和物に関して2.78g/cc)で除算することによって固体の体積(cc)を求める。空気の体積(cc)は、空洞の体積(cc)と固体の体積(cc)との間の差分である。100psiで固体を圧縮した場合における空気の体積の固体の体積に対する比として、100psi圧縮体積比を定義することができる。例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料の100psi圧縮体積比を大体少なくとも約6.0cc/cc、特に少なくとも約8.0cc/cc、たとえば、少なくとも約10.0cc/ccにすることができる。
【0075】
さらに、500psiで固体を圧縮した場合における空気の体積の固体の体積に対する比として、500psi圧縮体積比を定義することができる。例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料の500psi圧縮体積比を大体少なくとも約4.0cc/cc、特に少なくとも約5.0cc/cc、たとえば、少なくとも約6.0cc/ccにすることができる。
【0076】
pHの関数として材料の電荷を測定することによって等電点(IEP)を求めることができる。特にIEPは、材料の正味の電荷が約0の場合のpHである。たとえば、処理されたアルミナ水和物材料のIEPを、約5.0以下、たとえば、約2.0以下、特に、約1.5以下にすることができる。
【0077】
処理されたアルミナ水和物材料の特定の態様は、特定の用途における有利な点を提供する改良された特性を示すことができる。たとえば、処理されたアルミナ水和物材料の特定の態様は、凝集力を示す高い圧縮体積比、および大きさが1ミクロン未満の細孔の高い数を示す高い累積細孔体積を開示する。そのような凝集力および空隙率により、たとえば、重合体マトリックスの中の分散を改良することができる。さらに、処理されたアルミナ水和物微粒子の態様における表面特性により、分散性を改良し、液体の吸収を改良し、そして被覆材への受容性を改良する。
【0078】
重合体中での分散
特定の態様では、重合体マトリックスの内部にシリカ被覆アルミナ水和物材料を分散することができる。特定の態様では、重合体マトリックスはエラストマー重合体を含む。エラストマー重合体は、適度に変形(伸ばしたり、ねじったり、つまんで伸ばしたり、切断したりなど)された場合、通常、弾性力で元の形状に戻るような重合体である。1つの例示的エラストマーは、軽く架橋した天然ゴムである。別の例示的エラストマー重合体は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ジエン、シリコーン、フルオロエラストマー、ならびに共重合体、ブロック共重合体もしくはそれらの混合物を含む。例示的シリコーンは、液状シリコーンゴム(LSR)または高粘度ゴムを含むことができる。エラストマー材料として調合できる特定の重合体は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、エチレンプロピレンジエン単量体ゴム(EPDM)、フルオロエラストマー、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、二トリルブタジエンゴム(NBR)、またはそれらの組み合わせのいずれかを含むことができる。
【0079】
特定の態様では、エラストマー重合体は、ジエンエラストマーを含む。ジエンエラストマーまたはゴムは、少なくとも一部(すなわち、単独重合体または共重合体)がジエン単量体(共役しているか否かにかかわらず、2つの炭素−炭素二重結合を持つ単量体)から生じるエラストマーを意味する。
【0080】
例示的ジエンエラストマーは、(a)4〜12の炭素原子を有する共役ジエン単独重合体の重合によって得られた単独重合体、(b)一緒にまたは8〜20の炭素原子を有する1種または2種以上のビニル−芳香族化合物と共役した1種または2種以上のジエンの共重合によって得られた共重合体、(c)6〜12の炭素原子を有する非共役ジエン単独重合体をともなった3〜6の炭素原子を有するα−オレフィン、エチレンの共重合によって得られた3元共重合体、たとえば、特に1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンなどの前記タイプの非共役ジエン単独重合体をともなったプロピレン、エチレンから得られたエラストマー、(d)イソブテンおよびイソプレン(ブチルゴム)の共重合体、ならびに、さらに、このタイプの共重合体のハロゲン化された、特に塩化もしくは臭化されたバージョン、を含む。
【0081】
不飽和ジエンエラストマー、特に上述のタイプ(a)またはタイプ(b)のそれらは、タイヤのトレッドの使用に一部適応できる。例示的共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3ブタジエン、または、たとえば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘクサジエンもしくはそれらの組み合わせのいずれかなどの2,3−ジ(C1−C5アルキル)−1,3−ブタジエンを含む。例示的ビニル−芳香族化合物は、たとえば、スチレン、オルソ−、メタ−およびパラ−メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ−tertブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンまたはそれらの組み合わせのいずれかを含む。
【0082】
別の態様では、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエン−スチレン共重合体(SBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体(BIR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(NBR)、イソプレン−スチレン共重合体(SIR)、ブタジエン−スチレン−イソプレン共重合体(SBIR)またはそれらのエラストマーの混合物から成る高不飽和ジエンエラストマーの群からその組成のジエンエラストマーを選択することができる。
【0083】
例示的態様では、処理されたアルミナ水和物材料および重合体マトリックスを一緒にして混合し、処理されたアルミナ水和物材料を十分分散させる。たとえば、少なくとも約2分間、重合体マトリックスを混合することができる。カップリング剤を重合体マトリックスに添加することができる。あるいは、処理されたアルミナ水和物材料を、カップリング剤を使用してさらに前処理することができる。
【0084】
通常、カップリング剤は、エラストマーと反応する少なくとも1つのゴム反応官能基を含み、そしてフィラーと反応する少なくとも1つのフィラー反応官能基を含む。一般に、カップリング剤は、強化フィラーとエラストマーとの間の化学的または物理的結合を確立することができる。さらに、カップリング剤は、エラストマー内のフィラーの分散を容易にすることができる。特定の例では、カップリング剤は、シランベースのフィラー反応官能基を含む。
【0085】
例示的態様では、重合体を硬化させることができる。加硫などの架橋を経てエラストマー重合体を硬化させることができる。特定の態様では、エラストマー重合体は、元素状態の硫黄、多硫化物、メルカプタンまたはそれらの組み合わせのいずれかの少なくとも1つなどの硫黄ベースの試薬を使用して硬くなる。別の態様では、金属過酸化物、有機過酸化物またはそれらの組み合わせのいずれかなどの過酸化物ベースの試薬を使用してエラストマーは硬化する。別の態様では、白金触媒を使用してエラストマーは硬化する。さらにつけ加えた例では、アミンベースの試薬を使用して調合物は硬化する。
【0086】
特に、重合体および処理されたアルミナ水和物材料を含む複合材料は、重合体の重量に基づいて約20〜約400%、たとえば、約30〜約200%の添加量で、処理されたアルミナ水和物材料を含むことができる。一般に、処理されたアルミナ水和物材料を含む複合材料は、より低い全フィラー添加量の高分散シリカを含む複合体に関して改良された特性を提供する。
【0087】
重合体マトリックス中で粒子状材料がどの程度よく分散しているかということは、結果として得られた複合材料の特性に影響を与えることができる。たとえば、ASTM2663によって重合体中の凝集塊の分散を測定することができる。例4でより詳しく記載されている手順に引き続いて、典型的な乗客タイヤ組成物の中の凝集塊の分散として分散性指数を定義することができる。1つの態様では、処理されたアルミナ水和物材料の分散性指数を、少なくとも約90%、特に少なくとも約94%、たとえば、少なくとも約95%にすることができる。
【0088】
有利なことに、処理されたアルミナ水和物を含む複合材料の特定の態様をタイヤで使用することができる。特に、複合材料の態様は、改良された機械的性質および耐摩耗性を提供する。複合材料のそのような耐摩耗性は、トラックのタイヤなどの非常に過酷な用途に特に有用である。耐摩耗性の改良は、さらに、乗用車用タイヤに対しても、転がり抵抗をさらに低下させると同時に、耐用年数を改善したり、または同じ耐用年数を維持するためのトレッド厚を減少させたりして有用にすることができる。
【0089】
他の用途
特定の態様では、処理されたアルミナ水和物材料をインクジェット用紙被覆材の中に分散させることができる。インクジェット用紙被覆材は、ポリビニルアルコール、重合体またはそれらの適切な組み合わせを含むことができる。特定の態様では、被覆材を紙基体の少なくとも1つの側面に配置することができる。インクジェット用紙被覆材は、紙基体を膨潤させることなく、高いインク吸収速度、すなわち、短い乾燥時間および画像耐久性を提供する。処理されたアルミナ水和物材料における特定の態様は、有利なことに、高い多孔構造の中へインクを吸収することができる。特に、高いHg累積細孔体積指数を示す、処理されたアルミナ水和物微粒子は、有利なことに、インクのにじみを防止することができる。
【0090】
別の態様では、処理されたアルミナ水和物材料またはそれらの仮焼された誘導体を含む触媒、および材料の表面に配置された触媒物質に本発明を向けることができる。触媒物質の例は、白金、金、銀、パラジウムまたはそれらの組み合わせのいずれかなどの金属を含む。別の態様では、触媒物質は金属酸化物または吸着されたイオンを含む。特定の態様では、処理されたアルミナ水和物微粒子は、機械的圧力が触媒粒子にかかる工程で望ましい耐久性を示すことができる。そのような耐久性は、高い圧縮体積比に帰することができる。
【0091】
触媒材料は、有利なことに、異方性アルミナ材料を含むことができ、処理されたアルミナ水和物またはそれらの仮焼された誘導体を含む。特に、金属酸化物被覆アルミナ水和物およびそれらの誘導体は、有利な空隙率および機械的性質を示す触媒支持材料を生成することができる。
【実施例】
【0092】
例1
商業的に入手可能なアルミナ水和物微粒子およびシリカから比較試料を生成した。例3で説明するように、これらの比較試料について、空隙率、表面積および圧縮強度の試験を行い、処理されたアルミナ水和物試料と比較した。
【0093】
たとえば、棒状形状および約3の幾何学的アスペクト比を有するアルミナ水和物(CAM 9010−1、Saint−Gobain Ceramics and Plastics Corporationから入手可能)の水性溶液を凍結乾燥し、粉砕して、試料1を調合する。
【0094】
別の例では、小板の形状のアルミナ水和物(CAM 9080、Saint−Gobain Ceramics and Plastics Corporationから入手可能)の水性溶液を凍結乾燥し、粉体粉砕し、試料2を調合する。
【0095】
さらにつけ加えた例では、棒状形状および6〜10の範囲内の幾何学的アスペクト比を有するアルミナ水和物(CAM 9010−2、Saint−Gobain Ceramics and Plastics Corporationから入手可能)の水性溶液を凍結乾燥し、粉砕し、試料3を調合する。
【0096】
追加の例では、試料3からの、棒状形状および6〜10の範囲内の幾何学的アスペクト比を有するアルミナ水和物(CAM 9010−2、Saint−Gobain Ceramics and Plastics Corporationから入手可能)の水性溶液を、粘度を低下させるために水と混合する。約5のpHに達するまで、イオン交換樹脂(Dowex Marathon A OH form)を添加するとき、その溶液を撹拌する。混合物をろ過して樹脂玉を除去する。結果として得られた溶液を凍結乾燥し、粉砕して試料4を調合する。
【0097】
試料5は、商業的に入手可能な高分散性沈降シリカ(Tixosil 68、Rhodiaから入手可能)に由来する。
【0098】
試料6は、商業的に入手可能な高分散性沈降シリカ(Tixosil 43、Rhodiaから入手可能)に由来する。
【0099】
試料7は、商業的に入手可能な高分散性沈降シリカ(Ultrasil 7000、Degussaから入手可能)に由来する。
【0100】
例2
さらに、例1の試料と比較する試験のために、処理されたアルミナ水和物材料の試料を調合する。
【0101】
たとえば、イオン交換樹脂を使用して処理された(試料4と同じ処置)アルミナ水和物懸濁液(CAM 9010−2、Saint−Gobain Ceramics and Plastics Corporationから入手可能、棒状形状および6〜10の範囲内の幾何学的アスペクト比を有する)から試料8を調合する。2リットルステンレス製反応容器の中で、そのアルミナ水和物懸濁液を5重量%までdi−H2Oで希釈する。好ましくは約200rpmで、85℃に加熱してその懸濁液を撹拌する。アルミナ水和物粒子の等電点を下げるために、溶液中のアルミナ水和物粒子の重量の約5.2%に等しい量のクエン酸を添加する。最初に、クエン酸の約55%を添加し、続いて、残りの量のクエン酸を添加する前に15分間撹拌する。確実にクエン酸がよく分散するように撹拌速度を調節する。(その使用の前に、pHを約5に調節するために、NaOHでクエン酸を部分的に中和する。)
【0102】
沈殿したシリカの重量が、凝集塊になった固体の全重量の23〜28wt%の範囲内に、好ましくは約25wt%に等しくなるような量のケイ酸ナトリウムを添加する。pH9〜9.5に達するまで、希釈されたケイ酸ナトリウムの溶液(1体積のケイ酸ナトリウムおよび1体積のdi−H2O)を混合物にゆっくり添加する。8.5と9.5とのおおよそ間に、そして、好ましくは9と9.5とのおおよそ間に反応容器内のpHを維持するために、同時に残っているケイ酸ナトリウムに硫酸を添加する。添加後、懸濁液を30分間撹拌し、撹拌速度を800〜1600rpmの範囲内に、好ましくは約1200rpmにする。温度をおよそ81〜82℃にする。6以下に好ましくは5と6との間にpHを下げるために、硫酸を懸濁液に添加する。
【0103】
di−H2Oを懸濁液に混ぜ、沈殿させる。上澄みを除去し、そして、溶液中の見積もられたイオンの少なくとも90%を除去するまでその工程を繰り返す。懸濁液を凍結乾燥し、粉砕して試料8を得る。
【0104】
試料8に関して記載されたのと同じ方法で、アルミナ水和物懸濁液(CAM 9010−2、Saint−Gobain Ceramics and Plastics Corporationから入手可能、棒状形状および6〜10の範囲内の幾何学的アスペクト比を有する)を使用して試料9を調合し、試料8と反対にイオン交換樹脂を使用して処理を行わない。ナノ−ベーマイト分散を反応容器に導入し、そしてdi−H2Oを使用して5wt%の濃度まで希釈した後、水酸化ナトリウムを使用して溶液のpHを約5に調節する。
【0105】
アルミナ水和物懸濁液を1.5wt%の濃度まで希釈することを除いて、試料8に関して記載されたものと同じ方法で試料10を調合する。
【0106】
クエン酸溶液を使用してアルミナ水和物を5wt%まで希釈し、クエン酸の量をアルミナ水和物の重量の約5.2%にすることを除いて、試料8に関して記載されたものと同じ方法で試料11を調合する。
【0107】
5回の等量のクエン酸を懸濁液に添加することを除いて、試料8に関して記載されたものと同じ方法で試料12を調合する。1〜4回目のそれぞれの添加の後、溶液を5分間撹拌し、最後の添加の後、10分間撹拌する。さらに、懸濁液に添加する前に、di−H2Oを使用して硫酸を希釈する(硫酸1部に対してdi−H2Oを4部)。
【0108】
イオン交換樹脂を使用してアルミナ水和物の懸濁液を処理せず、クエン酸なしで反応を行い、そして、ケイ酸ナトリウムの添加の前に6と7との間の値までpHを増加させるために水酸化ナトリウムを使用することを除いて、試料8に関して記載されたものと同じ方法で試料13を調合する。
【0109】
イオン交換樹脂を使用してアルミナ水和物の懸濁液を処理せず、クエン酸なしで反応を行い、そして、ケイ酸ナトリウム溶液の添加の前に水酸化ナトリウムを使用してpHを約6に調節し、ケイ酸ナトリウム溶液の添加の間、pHを約7のpHに維持することを除いて、試料8に関して記載されたものと同じ方法で試料14を調合する。
【0110】
イオン交換樹脂を使用してアルミナ水和物の懸濁液を処理せず、5%アルミナ水和物までの希釈の後、水酸化ナトリウムを使用してpHを約5に調節し、di−H2Oを使用してクエン酸を希釈し、そしてNaOhを使用してクエン酸溶液のpHを約5〜5.5に調整することを除いて、試料8に関して記載されたものと同じ方法で試料15を調合する。アルミナ水和物懸濁液にクエン酸溶液を5部に分けて添加し、そして、アルミナ水和物懸濁液のpHが約6〜7の間になった後、15wt%のケイ酸ナトリウムを添加する。
【0111】
例3
試料について、細孔体積、充填密度および圧縮下体積の試験を行った。特に、試料について、100psiと500psiとの圧縮体積比、Hg累積細孔体積指数、Hg累積細孔体積、BET累積細孔体積、BET表面積、疎充填密度(LPD)および等電点の試験を行った。
【0112】
たとえば、密度(たとえば、HDシリカに関しては2.1g/ccおよびアルミナ水和物に関しては2.9g/cc)で除算した粉体の重量(g)として固体の体積(cc)を求める。空洞の体積(cc)と固体の体積(cc)との間の差分として空気の体積(cc)を求める。たとえば、100psiで固体を圧縮した場合の空気の体積の固体の体積に対する比として100psi圧縮体積比を求めることができ、そして、500psiで固体を圧縮した場合の空気の体積の固体の体積に対する比として500psi圧縮体積比を求めることができる。
【0113】
【表1】

【0114】
より高い圧縮体積比は粒子状固体の分散に影響を与えると信じられている。それぞれのアルミナ水和物試料(試料8〜15)は、増加された100psi圧縮体積比および500psi圧縮体積比を示す。非処理アルミナ水和物試料(試料1〜4)に関する比よりも高いことに加えて、試料8〜15の比は、また、従来使用されていたシリカおよびより新しい高分散性沈降シリカ(試料5〜7)よりも高い。
【0115】
細孔体積もまた固まった微粒子の分散性に影響を与えることができる。そのように、HgおよびBET技法の両方を使用して、試料を試験する。Hgポロシメトリーによって測定された約300nm未満の細孔の全体積としてHg累積細孔体積を定義する。材料の密度と比較した、Hgポロシメトリーによって測定された10nmと1000nmとの間の細孔の全体積としてHg累積細孔体積指数を定義する。BET技法によって測定された約300nm未満の細孔の全体積として、BET累積細孔体積を定義する。累積細孔体積比は、Hg累積細孔体積とBET累積細孔体積との間の比である。
【0116】
【表2】

【0117】
Hg累積細孔体積指数によると、処理されたアルミナ水和物試料(試料9および12)は、未処理のアルミナ水和物(試料2および3)ならびにシリカ試料(試料5〜7)と同等もしくはより高い空隙率を有しているように見える。特に、処理されたアルミナ水和物試料(試料9および12)は、同程度の疎充填密度を有しているにもかかわらず、Tixosil 43 (試料6)に比べて同等もしくはより高い空隙率を有する。
【0118】
0.3ミクロン未満の細孔径のために、処理されたアルミナ水和物試料(試料9および12)は、他の試料と同等の値を有する。しかし、処理されたアルミナ水和物試料(試料9および12)に関する累積細孔体積比は、他の試料よりも著しく大きく、これをいくつかの用途に役立てることができる。試料14は、高いHg累積細孔体積(0.3ミクロンよりも低い細孔径に関する)を有する。これは、いくつかの用途に対して興味深いことかもしれない。
【0119】
【表3】

【0120】
BET表面積は密度で修正された表面積である。概して、処理されたアルミナ水和物試料(試料9〜12)の修正されたBET表面積は、未処理アルミナ水和物(試料3)に関する値と比較して同等もしくはわずかに高い。特に、処理後に洗浄されたこれらの試料は高い表面積を示す。
【0121】
【表4】

【0122】
処理されたアルミナ水和物試料(試料8〜15)のLPDは、未処理のアルミナ水和物試料(試料2および3)に比べて著しく低い。LPDのそのような減少は、処理されたアルミナ水和物試料中のより開放された凝集塊構造をほのめかすことができ、その凝集塊構造は、重合体マトリックス内の分散の改善へと導くことができる。上述のLPDの値は圧縮前であるが、取り扱いおよび輸送を容易にするためにさらに粒子状材料を圧縮することができ、LPDを変える。
【0123】
【表5】

【0124】
表5で説明したように、処理されたアルミナ水和物(試料8および11)は、未処理の試料(試料3)に比べて低いIEPを示し、それはシリカ被覆材によるかなりの被覆率を示す。
【0125】
例4
試料化合物は、エラストマー樹脂および粒子状試料を使って調合される。
【0126】
たとえば、カーボンブラックおよびシリカを充填した乗客タイヤの典型的な製法に基づいて化合物1を調合することができる。配合を実施するために、バンベリータイプのローターを持ったB350混合ヘッドを有するブランベンダーPL2000サイズ混合機を使用する。混合チャンバーは約380mLの容量を有し、0.7(266mL)の充填率まで使用される。80rpmのローター回転数を使用して循環するオイルを約60℃に加熱する。重合体混合物の最初の半分を混合機に加える。
【0127】
重合体混合物は、103pphのVSL5025(Bayer AGから)、25pphのCB24(Bayer AG)、7pphのN220(Degussaから)を含む。試料1由来のフィラーを混合機に加える。同じ体積のフィラーを含むようにフィラーの密度に基づいて、68pphと95pphとの間で、混合しながら重合体混合物に、フィラーを加える。約1.35の係数でその量に乗算することによってグラムでの量を求めることができる。その後、残りの重合体を混合機に加える。
【0128】
2分間混合の後、5.44pphのSi 69(Degussaから)、6pphのSunpar 2280油、1pphのFlectol H、1pphのNanox ZAおよび1.5pphのSunproof Improved Wax(Uniroyal Chemical Co)を加える。混合物を140℃で3分間維持し、その後、冷却のためにシートの上に薄く広げる。
【0129】
約30℃の2−ロールミル上の混合物に硫黄および加硫促進剤を加える。たとえば、添加されるフィラー量に基づいて217.0pphと244.9pphとの間の複合材料を、2.5pphの酸化亜鉛、3pphのステアリン酸、1.4pphの硫黄、1.8phhのCBS(Bayer AGから)、1.6pphのDPG(Bayer AGから)およびテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)と一緒にし、約30℃の2−ロールミル上で一緒にする。
【0130】
フィラーが試料3粒子由来であることを除いて、試料1に関して記載されたように、化合物2を調合する。
【0131】
フィラーが試料2粒子由来であることを除いて、試料1に関して記載されたように、化合物3を調合する。
【0132】
フィラーが試料7粒子由来であることを除いて、試料1に関して記載されたように、化合物4を調合する。
【0133】
フィラーが試料9粒子由来であることを除いて、試料1に関して記載されたように、化合物5を調合する。
【0134】
フィラーが試料12粒子由来であることを除いて、試料1に関して記載されたように、化合物6を調合する。
【0135】
ISO11345の方法B試験にしたがって、DISPERGRADERを使用して異なる化合物の分散性を測定した。この試験は、フィラーの分散のパーセントを計算する画像解析の光学顕微鏡に依存する。たとえば、0%は非常に悪い分散を示し、そして、100%は比較的完全な分散を示す。沈降シリカに関して集められたデータに基づいて、少なくとも約90%のフィラー分散によって、望ましい磨耗抵抗を達成することができる。上記の化合物に関して記載された乗客タイヤの製造で分散に関連するDISPERGRADERの値として試料の分散性指数を定義する。
【0136】
【表6】

【0137】
説明したように、処理されたアルミナ水和物試料(化合物5および6)から生成された化合物は高分散を示し、少なくとも約89%の分散性指数を有する。特に、化合物6は、シリカ充填化合物(化合物4)の分散性指数よりも大きな分散性指数を示す。そのように分散性を改善すると、耐磨耗性などの特性を改善することができる。
【0138】
全体的な記載または例の中で上述された活動の全てが必要であるというわけではないこと、特定の活動の一部を必要としないようにすることができること、そして、記載されたそれらのものに加えて1つまたは2つ以上のさらに進んだ活動を実施できることに注意してください。さらに、活動が列挙されている順序は、必ずしもそれらを実施する順序ではない。
【0139】
前述の明細書では、特定の態様に関連して概念が記載されている。しかし、その技術分野における通常の技術を有する者は、以下の請求項で説明するような本発明の範囲から逸脱しないで様々な変形例や変更を行うことができることを理解する。したがって、明細書および図面を、制限の意味よりはむしろ説明に役立つという意味で考慮に入れるべきであり、そして、そのような変形例は、発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0140】
本明細書で使用されているように、用語「含む(comprises,)」、「含む(comprising,)」、「含む(includes,)」、「含む(including,)」、「有する(has,)」、「有する(having)」またはそれらの変形は、非排他的包含を含むことが意図される。たとえば、特徴のリストを構成する工程、方法、物品もしくは装置は、これらの特徴にのみ限定される必要はなく、しかし、明示的に列挙されていないまたはそのような工程、方法、物品もしくは装置の固有の他の特徴を含んでもよい。さらに、明示的に反対に述べられない限り、「または(or)」は包括的「または」を指し、排他的「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つを満たす。Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、AおよびBの両方が真である(か、または存在する)。
【0141】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載されている要素および成分を記載するために使用される。これは、単に便宜上のために、および本発明の範囲の一般的な意味を提供するために使用される。この記載は、1つもしくは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、また、他の意味であることが明らかでない限り、単数は複数を含める。
【0142】
特定の態様に関して、利益、他の有利な点および問題の解決策を以上のように記載してきた。しかし、いずれかの利益、有利な点、または解決策を生じさせる、またはよりはっきりさせる利益、有利な点、問題に対する解決策およびいずれかの特徴(複数可)は、いずれかのまたはすべての請求項の重要な、必要な、または必須の特徴として解釈されるべきではない。
【0143】
明細書を読んだ後、当業者は、明確のために別々の態様の内容で本明細書に記載されたある特徴を、1つの態様の組み合わせでもまた提供することができることを理解するであろう。逆に、簡潔さのために1つの態様の内容で本明細書に記載された様々な特徴を、別々にまたはサブコンビネーションでもまた提供することができる。さらに、ある範囲に記載される値への言及は、その範囲内のひとつひとつの値を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物被覆アルミナ水和物を含んで成る粒子状材料であって、
該粒子状材料が、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する粒子状材料。
【請求項2】
遷移アルミナを含んで成る粒子状材料であって、
該粒子状材料が、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する粒子状材料。
【請求項3】
αアルミナを含んで成る粒子状材料であって、
該粒子状材料が、少なくとも約4.0cc/ccの500psi圧縮体積比を有する粒子状材料。

【公開番号】特開2013−67557(P2013−67557A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248006(P2012−248006)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2009−540391(P2009−540391)の分割
【原出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】